別章【JASRAC訴訟考】

 更新日/2021(平成31.5.1栄和改元/栄和3).6.27日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 JASRACは、音楽著作権料を支払わない店舗に対し、歩合旧社員を雇って摘発し、証拠固めをしてから訴訟に持ち込む。そういうケースが頻発し始めている。これにより閉店を余儀なくされた店舗は数知れずと云うべきだろう。例えばスナックのような店舗は音楽著作権に納得してというよりこの訴訟騒動に恐れをなし支払いに応ずるという仕掛けになっている。ここでは、その実態を確認しておくことにする。

 2007.10.18日 れんだいこ拝


 目次
JASRAC訴訟その1、カラオケ訴訟考
別章【JASRAC訴訟その2、生演奏訴訟考
JASRAC訴訟その3、ラジカセBGM訴訟考
JASRAC訴訟その4、コンサート訴訟考
JASRAC訴訟その5、着うた訴訟考
JASRAC訴訟その6、週刊ダイアモンド誌の批判記事訴訟考
JASRAC訴訟その7、音楽教室訴訟考
別章【かに子の対ジャスラック闘争記
JASRAC訴訟に於ける官僚癒着、司法癒着考
西欧、米国の事例
書評、田口宏睦「JASRACに告ぐ」を評す
小田嶋隆氏のJASRAC批判論考
ジャスラックの恐い話
ファンキー末吉氏の対ジャスラック闘争


 



(私論.私見)

エイベックスの離脱で話題に。JASRACってどんな組織? その弊害は?

音楽大手のエイベックスが、著作権管理を委託していた日本音楽著作権協会(JASRAC)から離脱したことが話題となっています。JASRACとはどのような組織で、エイベックスがJASRACから離脱することにはどんな意味があるのでしょうか。

著作権管理を一手に担うJASRAC

 JASRACは、日本における音楽著作権管理をほぼ一手に担ってきた団体で、70年以上の歴史があります。音楽には著作権があり、これを利用した人は、その使用料を著作者に対して支払わなければなりません。こうした業務を著作者と利用者が個別に行っていては、あまりにも手続きが煩雑になってしまいます。このため、著作者はJASRACのような団体に著作権の管理を委託し、JASRACは著作者に代って利用料の徴収などの業務を行い、利用料の中から一定の報酬を受け取る仕組みになっています。

 こうした組織が作られたのは、事務手続きが煩雑になるという実務面からの要請に加えて、立場の弱い著作者を保護するという意味合いもあります。勝手に楽曲が使われたのに利用料が支払われないといった事態を防ぐために、JASRACのような組織が間に入り、しっかりと管理を行うわけです。JASRACには300万曲を超える楽曲が登録されており、同団体が日本の音楽著作権管理の世界に多大な貢献をしてきたことは事実といってよいでしょう。

独占的事業の弊害、テレビに流れない楽曲

 しかし、日本にはJASRAC以外にこうした業務を行う団体がほとんどなく、事実上JASRACの独占状態となっています。最近では、JASRACが独占的に事業を行っていることに対して弊害を指摘する声も聞かれるようになってきました。

 JASRACによる独占がもたらす弊害のひとつに、テレビ局との包括契約があります。現在、JASRACはテレビ局と包括契約を結んでおり、テレビ局は放送事業収入の1.5%を支払うことでJASRACに登録されている約300万曲が使い放題となっています。テレビ局にしてみれば、非常に便利な契約ですが、これが思わぬ弊害をもたらしています。

 例えば、ある楽曲の著作権を持っている作曲家がJASRAC以外の組織で著作権を管理するということになると、テレビ局は個別に契約を結ばなければなりません。テレビ局としては煩雑な契約作業が必要となりますから、こうした楽曲を使いたがらなくなります。テレビは免許制による独占事業ですから、社会に対する圧倒的な影響力が保証されています。その結果、JASRACに登録されていない楽曲はテレビに流れることがなくなり、事実上、市場から消えてしまうという事態が発生するわけです。この状況に対しては、2009年に公正取引委員会が排除措置命令を出しており、関連した訴訟では最高裁が今年4月、他の事業者を排除する効果があるとの判断を下しました。

 今回、エイベックスがJASRACから離脱した背景には最高裁による判断も大きく影響していると思われます。あらゆる業界に共通ですが、適切な競争環境はサービス品質の向上につながります。著作権管理の団体が適切に競争することによって、柔軟な著作権管理が実現可能となり、著作者の保護という本来の趣旨に沿った活動が行われると期待されます。(The Capital Tribune Japan)

 環太平洋連携協定(TPP)の交渉で、著作権侵害を「非親告罪」に変更する方向での調整が進められていると報じられている。映画、音楽、アニメなどの著作権侵害は、現在の日本の法律では、被害者の「告訴」がなければ起訴・処罰できない犯罪、「親告罪」とされている。著作権侵害が「非親告罪化」した場合、どのような問題が起こりうるのか。また、この問題を考える際の論点は何なのか。演劇、映画、出版など、様々な創作活動の法的問題や著作権にくわしい、弁護士の中川隆太郎氏に寄稿してもらった。

 ここ数年、「非親告罪化」という言葉をメディアで目にする機会も増えています。被害者の告訴がなければ起訴・処罰できない犯罪を「親告罪」といい、日本では現在、著作権侵害は親告罪と定められています。これを被害者(この場合は著作権者)の告訴がなくとも国の裁量で起訴・処罰できるように制度を変えてしまおうという制度変更が「非親告罪化」です。

 きっかけはTPP(環太平洋経済連携協定)

 この「非親告罪化」が一躍有名になったのは、TPP(環太平洋経済連携協定)のメニューとして米国から要求されていると報じられたのが要因でしょう。TPP交渉は今なお秘密協議のまま進められていますが(※1)、ウィキリークスなどのNGOからのリーク資料や多数の報道に加え、2月にはNHKでも「日本も受け入れる方針」と報じられるなど、TPPによる著作権侵害の「非親告罪化」の見通しはますます高まっています。

 しかし、この非親告罪化により、日本社会におけるコンテンツをめぐる『グレーゾーン/暗黙の領域』において決定的な萎縮効果が生じるおそれがあります。

 よく例として取り上げられるのがパロディです。コミケなどの同人文化では既存作品のパロディが人気ですが、これらのパロディ作品の中には著作権侵害に当たるものも少なくありません。それでも表立って「お咎め」を受けることが少ないのは、おそらくは基本的にはファン活動であることに加え、販売方法(場所や期間等)や表現内容などの点で「権利者にあまり迷惑をかけない」「目立ちすぎて怒られない」よう配慮をしていることを考慮し、権利者も「暗黙の領域」としてあえて放置しているケースが少なくないからでしょう。

 また、動画投稿サイトなどを中心にユーザーが二次創作したコンテンツ(User Generated Contents; UGC)が世界中で盛んになるにつれ、例えばYouTubeがJASRACと包括許諾契約を結ぶなど、国内外の様々なプラットホームにおいてUGCの適法化に向けた権利処理の工夫が重ねられていますが(※2)、いまだ手当てがなされていない部分も残っています。そのため、例えばユーザーが、プラットホームと未契約のレコード会社のCD音源を利用した「歌ってみた」や、オリジナリティの高い振付にチャレンジした「踊ってみた」などの動画を投稿する行為も、別途追認されない限り(※3)、形式的には違法の可能性が高いのです。