JASRAC訴訟その6、週刊ダイアモンド誌の批判記事訴訟考

 (最新見直し2009.2.28日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 JASRACは週刊ダイアモンド記事にいちゃもんをつけ、訴訟に及び勝訴している。我々は、この時の判決に注目せねばなるまい。入手次第検討することにする。

 2006.4.20日 れんだいこ拝


【週刊ダイアモンドがJASRAC特集記事掲載】
 JASRAC問題について、経済誌の週刊ダイアモンドが、「週刊ダイヤモンド2005.9.17日特大号」で「企業レポート 日本音楽著作権協会(ジャスラック) 使用料1000億円の巨大利権 音楽を食い物にする呆れた実態」と題するJASRAC特集を組んだ。「企業レポート、日本音楽著作権協会(ジャスラック)/使用料1000億円の巨大利権 音楽を食い物にする呆れた実態その1」、「企業レポートその2」にサイトアップされている。(2009.2.14日現在で確認したところ、リンク先が消されている。こういうことがあるから、「無通知無承諾引用転載可」にしておかなければならないということになろう。これは貴重な実例となっている.)

 記事は、JASRACが徴収する著作権使用料の用途やその徴収方法、配分問題、文部官僚の役員への天下りなどについてスポットを当てたものであった。使用料の徴収方法について、「JASRACの職員が営業中の店に入り『ドロボー』と大声で叫び営業妨害とも言えるやくざまがいの徴収方法を取った」、「年間の利益が20万円弱の店に550万円もの使用料を徴収した」という事例を紹介している。天下り問題について、文部省(文部科学省)からの役員の天下りが50年以上続いていること、JASRACの役員の報酬を決める役員審議会が非公開であること、法外に高い報酬を受け取っていることを指摘している。(天下り問題については「JASRACの役員と所得一覧」に記す)  この記事は、2005年の「やっぱり雑誌が面白い!!ニュース報道部門賞」の一位に選ばれたとのことである。

【ジャスラックが訴訟に持ち込む】
 この特集に対して、JASRACは次のように対応した。

 2005.8.29日、JASRACは、この特集に対して、ダイヤモンド社に対し厳重に抗議するとともに、記事の誤りの訂正と謝罪広告の掲載を求める通知書を送付した。

 同10.7日、ダイヤモンド社は、JASRACの請求に一切応じる意思がないことを通告した。

 同11.11日、JASRACは、記事の内容は裏づけがなかったり、恣意的に古い情報用いるなどして読者がJASRACに対して悪い印象を持つように誘導していると主張し、出版元のダイヤモンド社と執筆した社員を相手取り、4290万円の損害賠償と名誉回復措置としての謝罪広告掲載を求め、東京地方裁判所に提訴した。

 主な争点は次の通り。
1  ジャスラックの飲食店経営者に対する使用料徴収業務につき、「横暴な取り立て」などと表現した記事が名誉毀損にあたるか。
 ジャスラックの使用料徴収・分配の基準や実態につき、「不透明」、「曖昧」などと表現した記事が名誉毀損にあたるか。
 ジャスラックの組織運営につき、「非民主的」、「まともなガバナンスも働かない」などと表現した記事が名誉毀損にあたるか。

 JASRACは、「株式会社ダイヤモンド社に対する訴訟の提起について」と題して次のように声明している。
 JASRACは、「週刊ダイヤモンド」2005年9月17日特大号に掲載された「企業レポート 日本音楽著作権協会(ジャスラック)」という記事について、発行元である株式会社ダイヤモンド社及び記事の執筆者である記者1名を被告として、平成17年11月11日、不法行為(名誉毀損)に基づく損害賠償の支払と名誉回復措置として謝罪広告の掲載を求めて、東京地方裁判所に訴訟を提起しました。

 この記事は、虚偽の事実または歪曲された事実を記載したり、客観的根拠もなくJASRACの業務遂行の方法を一方的に中傷する表現を用いるなどして、JASRACの著作権管理業務が極めて不適正、不公正に行われているとの印象を読者に与えるものであり、JASRACの社会的名誉と信用とを失墜させ、その業務を妨害しようという意図の下に掲載されたものと考えざるを得ません。

 JASRACは、同社に対し、厳重に抗議するとともに、記事の訂正と謝罪広告の掲載を求めていましたが、同社からこれに一切応じる意思がないとの通告があったため、司法上の救済を求めることにしたものです。

【週刊ダイアモンドのJASRAC特集記事訴訟一審判決】
 2008.2.13日、東京地裁(加藤謙一裁判長)は、JASRACが、「週刊ダイヤモンド」に掲載された記事で名誉が傷つけられたとしてダイヤモンド社と記者に対し損害賠償を求めていた訴訟の判決を下し、JASRAC側の主張を認めた上で、「原告(JASRAC)の名誉を毀損してその社会的評価を低下させるものであり、記事の内容が真実であることの証明がなく、意見・論評としても、その重要な前提について真実との証明がない」と指摘。「取材や判断にかなりの偏りが感じられ、取材・判断や意見・論評が正しいと信じる理由も見当たらない」として、記事による名誉毀損を認め、550万円の支払いを命じた。JASRACが求めていた謝罪広告の掲載については必要がないとして認めなかった。
 判決文一部抜粋。
 本件記事は、原告の名誉を毀損してその社会的評価を低下させるものであり,その内容について真実であることの証明がなく、意見又は論評としてもその前提事実の重要な部分について真実であることの証明がなく、むしろ明らかに真実ではないと認められる事実を摘示したり、それに基づく意見や論評をしているものであり、取材やそれに基づく判断にかなりの偏りが感じられ、被告らがそれを真実であるとか又は意見・論評が正しいと信じる相当の理由も見当たらないものである。そして、本件記事の表現・体裁もかなり一方的かつ独断的であり、調査不足や誤解、更には悪意に基づいて構成されているのではないかと疑念を持たれてもやむを得ないようなものであることに加え、週刊ダイヤモンドの発行部数や影響力、更に本件記事を本件雑誌において発表するのみならずウェブサイトにアップロードする等名誉毀損の態様が広範囲かつ長期間にわたる形態となっている。
(私論.私見) 東京地裁判決のジャスラック迎合について
 東京地裁(加藤謙一裁判長)は、毎度繰り返される司法の奴隷的なまでのジャスラック迎合判決に過ぎない。いつになったらまともな判決に出会うことができるのだろうか、我々の関心はここにある。

 判決は、「週刊ダイヤモンド記事」の総合的検証をせぬまま、意図的に断片的箇所を引き出し、「原告(JASRAC)の名誉を毀損してその社会的評価を低下させるものであり、記事の内容が真実であることの証明がなく、意見・論評としても、その重要な前提について真実との証明がない」と判示している。こういう場合、重要な箇所で重大な誤りが認められるとして該当箇所を指摘するなりするのが真っ当なところ、例えば小野清子の如くな歴代の理事長の高額給与とか高額退職金問題に対して誤りを指摘せねばならないところ、当然ながらできず、あらかじめ結論の決められたシナリオに基く為にする判決でしかない。

 2008.5.17日 れんだいこ拝

【週刊ダイアモンドのJASRAC特集記事訴訟高裁判決】

   2008.8.7日、東京高裁は、日本音楽著作権協会(JASRAC)がダイヤモンド社に対し計約4300万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審で、1審と同じく名誉棄損を認める判決を言い渡した。ただし、賠償額は、計550万円から計320万円に引き下げた。

   同社は、「週刊ダイヤモンド」の05年9月17日特大号で、音楽著作権使用料の徴収や配分に疑惑があると報じていた。寺田逸郎裁判長は、記事の多くが名誉棄損になるとしたものの、一部の記述は事実に基づく意見や論評と認め、違法性がないと判断し、「取材に一応の努力はみられ、悪意を持って誘導しようとした記事ではない」と減額の理由を述べた。

 JASRACによれば、今回の判決は「記事が全体として被控訴人の名誉・信用を毀損するもの」と指摘。その一方で、「一部については違法性を欠くと認められるが、残りの部分につき、控訴人ら(ダイヤモンドと記者1人)は被控訴人に対し名誉毀損によって生じた損害についての不法行為による責任を負うものと判断する」として、大筋でJASRACの主張が認められたという。 JASRACでは、「記事の一部に違法性がないと判断された部分がある」と判断されたことを不服としており、上告も含めて今後の対応を検討するとしている。
(私論.私見) 東京高裁判決の再びのジャスラック迎合について
 東京高裁は基本的に一審判決を支持し、名誉棄損を認める判決を言い渡した。但し、一しか判決と違って、一部の記述は事実に基づく意見や論評と認め、違法性がないと判断し、「取材に一応の努力はみられ、悪意を持って誘導しようとした記事ではない」との判断も示した。これが精一杯と云うところか。

 2009.2.28日 れんだいこ拝

【最高裁の介入による判決確定】
 2008.12.24日、ジャスラックは、「株式会社ダイヤモンド社らに対する訴訟の終結について」と題する次のような声明を発表した。

株式会社ダイヤモンド社らに対する訴訟の終結について

 「週刊ダイヤモンド」2005年9月17日特大号に掲載された記事「企業レポート 日本音楽著作権協会(ジャスラック)」について、発行元の株式会社ダイヤモンド社及び記事を執筆した記者1名に対して不法行為(名誉毀損)に基づく損害賠償を求めていた訴訟の上告審で、最高裁判所は12月19日、JASRAC、ダイヤモンド社ら双方の上告受理申立てを受理しない決定を下しました。

 これにより、ダイヤモンド社らの名誉毀損を認め、同社らに320万円の支払いを命じた東京高裁判決(2008年8月7日)が確定しました。この東京高裁判決は、JASRACの主張をほぼ認めたものです。

(私論.私見) 東京高裁判決の再びのジャスラック迎合について
 これによると何と、「最高裁判所は12月19日、JASRAC、ダイヤモンド社ら双方の上告受理申立てを受理しない決定を下しました」とある。信じられないが、最高裁にはこのような権限があるのだろうか。



 



(私論.私見)