ファンキー末吉氏の対ジャスラック闘争

 更新日/2017(平成29).7.14日

 『ヤクザのみかじめと同じ』 人気ドラマー・ファンキー末吉がJASRACに激怒!」を転載しておく。
 ファンキー末吉ブログより

 ロックバンド・爆風スランプで活躍し、LOUDNESSの二井原実、筋肉少女帯の橘高文彦らとのバンド・X.Y.Z.→Aのほか、中国でも演奏活動を行うドラマーのファンキー末吉。彼が経営する音楽バー「Live Bar X.Y.Z.→A」に社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)から「著作者の財産を守るため、著作権料を払いなさい」と著作権料の支払いを求める手紙が届き、ファンキーはJASRACの不可解な料金徴収法に激怒。「これではヤクザのみかじめと同じである。ちゃんと著作権者に分配しろよ!!」と憤り、弁護士にも相談し、JASRACと数カ月にも渡る交渉を行っている。

 ファンキーは自身のブログで次のようにその真相を明かした。

 「JASRACから郵送された書類を開けてみると、楽曲リストのひな形なんて陰も形も見えず、ただ『何平米の店舗で月に何時間演奏しているお店は月々いくら払いなさい』という表とその申告書があるだけである。こいつらは数十年もこうやって店から著作権料という名目で莫大な金額を徴収して来たのか?!! これではその店がどんな曲を何回かけたか演奏したか、何よりもそのお金がどの著作権者に支払われるものなのかがわかるはずがない。つまり、これでは絶対に著作権者に還元されるはずがない!!」

 ファンキーの音楽バーでは、彼に縁のあるアーティストがライブを行うほか、BGMとしてX.Y.Z.→Aの楽曲を流しており、その楽曲のリストを作り、提出すればいいと考えたファンキーだが、実際、JASRACから郵送された書類には、リストはなく、店の大きさと演奏時間のみを記入するものだったという。つまり、どのアーティストの楽曲を使用したかが不明なまま料金を徴収しており、還元する使用料も不明確だという。JASRACでは、包括的利用許諾契約として、特定のモニター店でサンプリングしたデータを元に、使用料を還元していると主張するが、ファンキーは「それがちゃんと自分たちに戻って来たという記憶はない」としている。その後も、ファンキーは「いつでも著作権料はお払い出来ます。ただそれをどこに分配するのかちゃんと説明して下さい」と分配の明確化を求めて、JASRAC側と直接交渉を行っており、次のように続ける。

 「3万円払って1円もらったとして、あとの2万9999円はどこにどのように払われたかを知らせる義務もないというもの。こんなんで払えるか? 絶対に中身を見せないブラックボックスに金を入れ、それがどう分配されているかも一切知らせず、都市伝説のように例えその金が天下りの官僚に流れていたとしてもこちらは知る由もない」。

 JASRACは飲食店、ライブハウス、カラオケ店のほか、放送事業者、動画サービスのYouTubeやニコニコ動画とも包括的利用許諾契約を結んでいる。この契約は厳格で、過去にさかのぼって使用料を請求することでも知られている。

 東京・練馬のスナックでビートルズの「イエスタデー」などをJASRACの管理楽曲を許諾を得ずにハーモニカやピアノで演奏していたとして、当時73歳の男性が著作権侵害で逮捕され、東京地方裁判所は2007年1月に、懲役10カ月、執行猶予3年(求刑懲役10カ月)の有罪判決を言い渡している。また、障害者が働く喫茶店や、地方のダンス教室も管理楽曲を使用したとして著作権料を要求され、その支払いのために閉店に追い込まれた例もある。

 JASRAC以外の音楽著作権団体としては、イーライセンスなどがあるが、08年4月にはJASRACが、放送事業者と結んでいる包括契約が同業他社の参入を制限しているとして、独占禁止法違反(私的独占)で排除措置命令を受けた。だが、JASRACは「公取委の事実認定に重大な誤りがある」と指摘し、結論はまだ出ていない。坂本龍一、平沢進などJASRACの管理体制に疑問を抱くアーティストも多く、今回、ファンキーが問題提起しているように管理体制には、明確だと言い難い部分もあり、今後も、JASRACはその点をアーティスト、コンテンツホルダーなどと活発な議論を行い、時代に即した制度に変えていく必要があるだろう。(文=本城零次)

 いったいなんなんだ。

 【関連タグ】  |  |  | 


 2014.11.4日、「ついにJASRACを追い込むか? ファンキー末吉と江川ほーじんの闘いに決定的な新兵器が登場(松沢呉一)」。
 JASRACは払わないでいいお金まで請求してくる 

vivanon_sentence20代の頃、私は音楽業界にいました。著作権を理解しておかないとまずいと思って本を買ってきて勉強をしましたさ。音楽業界を離れてからも、著作権の管理に関わる機会があって、音楽業界時代の体験が大いに役に立ってます。JASRACは意図してなのか、うっかりなのか、本来は払わないでいい金を要求してくることがあります。こちらとしては払うべき金を払う気満々ですけど、払わなくていい金は払いたくない。当たり前のことです。その時に著作権の知識があるのとないのでは大違い。現に「この分の請求はおかしいですよね」と対抗して、払わずに済んだことがあります。それなりに大きな金額の話だったのですけど、払ってしまう人、払えないので使用を諦める人もいるんだろうと思います。著作権の知識がないと損をします。

JASRAC概論―音楽著作権の法と管理

 その時の経験から、専門学校で著作権を教えていたこともあるのですが、昨今のITをめぐる著作権についてはようわからなくなってきています。わからないながらも、メルマガでは昨今の著作権事情についても月に何度かは取り上げています。JASRACも頻繁に登場するのですが、おおむねJASRACを擁護する内容になるのが皮肉です。「カスラック」などとして、ムチャクチャな批判が出回ることが多く、その批判がいかに間違っているのかから始めなければならない。

 音楽著作権については、既得権に胡座をかく大手音楽出版社の問題、そことつながる放送局の問題などなどもあるわけですが、JASRAC自体の問題に関して言えば、徴集した金が正しく分配されないことに尽きます。正しく分配され、その明細が公開されているのであれば、払う側も納得する。正しく配分されていないから、払う側は出し渋る。たとえば「自分の曲をコンサートで演奏しても金を払わなければならない」という不満の声がありますが、スジとしては払うのが当然。すでに財産権の管理は作詞家、作曲家の手元から離れているわけですから。饅頭の製造業者だからと言って、スーパーの店頭にある饅頭を金も払わずに勝手に食っていいわけではないのと同じです。食うんだったら、通常の料金を払って買うのがスジ。この時に、JASRACの取り分や音楽出版社の取り分を除いて、数分の1になるにせよ、確実に自分のところに戻ってくるんだったら、払うことの抵抗感は少ない。卸や小売の取り分を除いて、売上の3掛けでも4掛けでも契約通りに戻ってくれば饅頭屋は納得。しかし、それが戻ってきているのかどうか、いくらになって戻ってきているのかがわからないから不信感が高まる。現実にはその金は作詞家、作曲家に戻ってきていない可能性が高い。これは包括契約によるところが大きい。放送局でもライブハウスでもピアノバーでも月間ナンボ、年間ナンボでまとめて金を払います。私もラジオに関わっていた頃に経験がありますが、ラジオ局では、著作権の調査期間は使用した楽曲についてのシートに細かな書き込みをします。それをサンプルにして包括料金を決定し、配分も決定します。

 正しい分配のために立ち上がったファンキー末吉と江川ほーじん

vivanon_sentence仮にサンプリングによって上位100曲に配分するとなれば、101位以下には金が入ってこない。上位100曲が独占的に使用料をもっていきます。101位以下は使用されているのに分配金はゼロ。100位以上は実際の使用料の2倍にも3倍にもなる仕組みです(こういうシンプルなモデルになっているのではなく、実際には、売れている曲でも、作詞家作曲家にはきれいに分配されていない可能性が高い)。これはやむを得なかったところもあります。使用した曲のすべてをチェックして、すべてを正確に配分していると、人件費が高騰します。そこでサンプルを元にざっくりと配分する。これによって使用する側も煩雑な書類の提出を避けられる。どっちにとってもメリットがありました。しかし、「その面倒を厭わないので、ちゃんと配分しろ」と言い出すのが出てきました。ファンキー末吉です。「自分が経営するライブハウスの使用楽曲を申請するので、正確に配分をしろ。その明細を公開しろ」と。

(私論.私見)

 要するに配分が悪いという角度からのJASRAC批判のようであるが、立論としては稚拙過ぎよう。少なくとも私の論とは全然違う。

 2017.7.14日 れんだいこ拝

 2016/5/25、JASRAC対ファンキー末吉氏の地裁判決文が公開されました」。
 元爆風スランプのドラマーであるファンキー末吉氏が経営するライブハウスの音楽著作権利用料の支払いにつきJASRACが裁判で争っていた。先日、その第一審の判決文が裁判所のサイトで公開された。結論として、特定楽曲(どの曲かは不明)の利用の差止めと利用料相当額(300万円弱)の支払いについて、JASRACの請求が一部認められている。 判決文
 争点(5)(権利濫用等の抗弁の成否)について

 (1)被告らは,原告(栗原注:JASRAC)が,独占禁止法に反する違法な包括的契約を強要し,背信的な交渉を行い,被告A(栗原注:ライブハウスの共同経営者)から使用料を受領しないこと等を理由として,原告の各請求は権利の濫用及び(又は)信義則違反(形式的権利の濫用,優越的地位の濫用,公序良俗違反,禁反言則違反,説明義務違反,誠実交渉義務違反等)に該当するなどと主張する。

 (2)そこで検討するに,そもそも本件全証拠を精査しても,原告が被告らに対し包括的契約の締結を強要した事実を認めるに足りない。確かに,前記1(4)及び(5)の経緯に照らすと,被告らが,使用料が権利者に正確に分配されるものではない包括的契約が不適切であると考えたり,原告が被告らに包括的契約の締結を強要していると感じたり,過去の演奏楽曲についておよそ困難な「社交場利用楽曲報告書」の作成を強いられた上に,揚げ足を取るような指摘をされたと感じて,原告に対し不信感を抱くことは理解できないわけではないものの,原告は,被告らに対し,本件調停前の交渉過程及び本件調停において,包括的契約以外の契約方法があることも説明しているし,包括的契約以外の方法で契約する場合に必要となる「社交場楽曲利用報告書」の書式を交付するなどしているのであるから,原告が,被告らに対し,包括的契約の締結を強要したとは到底認めることはできない。そして,原告は,著作権等管理事業法により,文化庁長官に届出をした使用料規程に基づいて使用料の徴収をするものとされているのであるから,原告管理著作物の利用者に対し,使用料規程に記載された方法での契約を促すことは決して不当なことではない。

 (3) 次に,仮に,原告が被告らに対し締結を求めていた包括的契約が違法なものであると認められたとしても,これをもって被告らの無許諾での原告管理著作物の利用行為が適法な行為に転化するということはできず,無許諾での利用に対する使用料相当損害金の請求や差止請求を制限すべき理由に当たるということもできない。

 作曲家・作詞家への利用料金配方式の不透明性については以下のように判断されています。
 原告が,委託者に対する分配額や分配率を回答しなかったことは,原告と委託者との間の著作権信託契約関係においては不相当といえる可能性が仮にあるとしても,これをもって,利用許諾契約を締結しようとする権利者である原告と利用者である被告らとの間の関係において,原告の態度が被告らに対する信義則違反に当たるということはできない。





(私論.私見)