最近発刊された「大統領宛日本国首相の極秘ファイル」(加瀬みき)によれば、アメリカは、日本の政治情勢について、とりわけ首相のリーダーシップについて、用意周到に一貫して分析し続け「国務省報告」してきているということが判明する。そこでは、米国務省がかくも精密に我が国の歴代の首相に関する情報を取り寄せ、これをもとにアメリカから見てよりベターな関係を維持するために知恵を絞ってきたかというプラグマティック且つリアリズムな手法が明らかにされている。
その「大統領宛日本国首相の極秘ファイル」で、以前以後のどの首相よりもページ数が割かれ、最も注意深く観察されているのが田中角栄である。その異色とも云える有能性をそれとして認識し、警戒している様が見えてくる。以下、そのように捉えられていた角栄の首相時代を考察する。
「日本国首相の極秘ファイル154P」は、国務省資料「日本の国内政治情勢」を引用し、アメリカから見た当時の田中評価を次のように紹介している。
「福田のライバルであり、個人的には全く波長が合わないのが、現在通産大臣をしている田中角栄である。ぶっきらぼうで荒削りな田中は、十分な教育を受けていないことから軽蔑されている。しかし彼は非常に鋭い感覚を持った政治家で、人を操縦するのが上手く、主要ポストである自民党幹事長として名声を上げた。最近田中の株が急上昇しているが、それはアメリカとの繊維問題や国会での防衛予算審議、といったいくつかの問題に関し、佐藤の代わりに責任を持って解決したということも貢献している」。
「総裁選とその結果として出現する新しい政府は、アメリカに影響を及ぼす。基本的には3人の中で誰が総裁になっても、世界観は前任者と大して違わない。3人のいずれとでも上手くやっていけるだろう。日米関係の行方は、福田が一番良い影響を与えるであろう。大平が一番影が薄い。田中の態度が最も未知数だ。日本の政治家の中では、田中だけが海外との絆を発掘するどころか、海外との接点すら持っていない。彼の素養が最も不明である。また3人の中で一番積極的とはいっても、彼の本質が保守であることには違いない」。 |
(別稿「アメリカ特務機関の角栄レポート」で論ずる) |