一、 |
上部工作 |
① 磯部の懇請によって森伝が動き、森を通じて清浦奎吾伯をして、宮中方面へ工作せしめること。 |
|
|
---事実、准元老の地位にあった清浦伯は二月二六日熱海より老軀をおして上京、参内している。 |
|
|
② 西田税を通じて小笠原長生子爵に働きかけ、宮中および海軍方面 ( 伏見宮、加藤寛治大将 )に 工作すること。 |
|
|
---事実、小笠原長生子爵は加藤大将らと共に伏見軍令部総長の宮に、海軍の協力などを具申している。 |
|
|
③ 亀川哲也を通じて、真崎大将の出馬、鵜沢聡明を通じての西園寺公工作、また、山本英輔海軍大将を通じて海軍首脳部への働きかけ。 |
|
|
---事実、亀川はその日払暁 真崎邸を訪ねて大将の出馬を要請し、鵜沢聡明をして、この朝品川発興津に向わしめたが、元老不在のため、熊谷執事に、速かに上京し時局収拾として後継首班に真崎大将を奏請せられたき旨の進言を依頼せしめている。また
山本大将もこれがために、しばしば海軍首脳部と会っている。 |
|
|
④ 山口一太郎大尉をして、その岳父本庄侍従武官長を動かしめる宮中工作。 |
|
|
---事実、山口大尉は早朝急便を武官長邸に派し、青年将校蹶起の事実を告げ、速やかなる参内を要請している。 |
二、 |
軍部工作 |
① 栗原中尉を通じ斎藤瀏陸軍少将の出馬により川島陸相ほか軍首脳部への工作。 |
|
|
---事実、齋藤少将は、この日早朝 栗原の電話により首相官邸に赴き、蹶起部隊を激励したあと、陸相官邸に至り、青年将校に代って大臣の決断を要請し、その他
陸軍次官、戒厳司令官らに対しても、それぞれ工作している。 |
|
|
② 村中孝次は 蹶起数日前、秦真次中将を訪ねて非常事態発生せばこれに善処せられたい旨懇請している。 |
|
|
---事実、秦中将は二十七日午前偕行社に軍事参議官を訪ねて、維新断行を具申している。 |
|
|
③ 満井佐吉中佐をして、軍部内支援態勢を確立せしめると共に、軍上層部への強力な工作を行にわしめる。( 磯部、村中らの要請による ) |
|
|
---事実、満井中佐は、かねて、彼等の蹶起し際しては極力強力する旨の密約もあり、事件発生と共に、幕僚群に対して維新への誘導、蹶起将校に代って軍上層部への意見具申など昼夜不断の援助行為に出た。 |
|
|
④ 山口大尉の直接強力、これによって軍部を維新に引きずること。 |
|
|
---事実、山口大尉は小藤大佐の副官役として、蹶起部隊のために縦横無尽の活躍を演じている。 |
|
|
⑤ 皇道派の山下奉文少将、岡村寧次参謀本部第二部長、村上啓作軍事課長、西村琢磨兵務課長、鈴木貞一大佐、小藤恵歩一聯隊長等の中堅幕僚を動かして、軍部内維新態勢確立の工作。 |
|
|
---事実、これらの人々は、彼等のために、それぞれ努力をつづけている。 |
三、 |
部外工作 |
① 齋藤少将をして明倫会総裁田中国重大将は、二七日首相官邸にいたり、決起将校らを慰問激励し、また偕行社に軍事参議官を訪問し、軍を挙げて維新に邁進すべき旨の意見具申を行っている。 |
|
|
② 西田税を中心として民間右翼勢力を糾合して、蹶起に呼応して維新運動の展開。 |
|
|
---事実、西田税は民間同志による大同団結により、決起軍に呼応し一挙に昭和維新を実現しようと、杉田省吾、宮本誠三、佐藤正三、加藤春海らをして、「 昭和維新 」 を発行せしめ、全国の同志を激発した。 |