ロッキード事件証人喚問劇その1、大庭哲夫)

 (最新見直し2015.06.22日)

 これより以前は、【ロッキード事件の概要1-2(事件訴追史)】、【ロッキード事件の概要1-3(日米合同国策捜査発動)】に記す

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 2015.06.22日再編集 れんだいこ拝


 昭和五十一年三月一日(月曜日) 午前十時四分開議 
出席委員
委員長 荒舩清十郎
理事 井原岸高 小山長規 塩谷一夫 正示啓次郎 山村新治郎 楢崎弥之助 松本善明
山田太郎
伊東正義 上村千一郎 植木庚子郎 江崎真澄 小澤太郎 大野市郎 奥野誠亮
北澤直吉 倉成正 黒金泰美 櫻内義雄 笹山茂太郎 瀬戸山三男 田中龍夫
谷垣專一 西村直己 根本龍太郎 野田卯一 藤井勝志 保利茂 前田正男、
松永光 森山欽司 山口敏夫 渡部恒三 安宅常彦 阿部昭吾 阿部助哉
石野久男 稲葉誠一 大出俊 岡田春夫 田中武夫 多賀谷真稔 堀昌雄
安井吉典 湯山勇 横路孝弘 庄司幸助 林百郎 正森成二 三浦久
新井彬之 石田幸四郎 近江巳記夫 坂井弘一 正木良明 渡部一郎 河村勝
小平忠 永末 英一

 委員外の出席者
証人 大庭哲夫 (全日本空輸株式会社前社長) 
証人 鬼俊良 (ロッキード・エアクラフト・リミテツド日本支社支配人)
証人 若狭得治 (全日本空輸株式会社社長) 
証人 伊藤宏 (丸紅株式会社前専務)
証人 大久保利春 (丸紅株式会社前専務) 
証人 三樹秀夫 予算委員会調査室長
 ―――――――――――――
 委員の異動
 三月一日
 辞任         補欠選任
  谷垣 專一君     山口 敏夫君
  三塚  博君     野田 卯一君
  森山 欽司君     渡部 恒三君
  阿部 昭吾君     稲葉 誠一君
  岡田 春夫君     横路 孝弘君
  栗田  翠君     正森 成二君
  林  百郎君     庄司 幸助君
  山原健二郎君     三浦  久君
  正木 良明君     渡部 一郎君
  矢野 絢也君     坂井 弘一君
  小平  忠君     永末 英一君
 同日
 辞任         補欠選任
  山口 敏夫君     谷垣 專一君
  渡部 恒三君     森山 欽司君
  稲葉 誠一君     阿部 昭吾君
  横路 孝弘君     大出  俊君
  庄司 幸助君     林  百郎君
  坂井 弘一君     石田幸四郎君
  渡部 一郎君     近江巳記夫君
  永末 英一君     小平  忠君
 同日
 辞任         補欠選任
  大出  俊君     岡田 春夫君
  石田幸四郎君     矢野 絢也君
  近江巳記夫君     新井 彬之君
 同日
 辞任         補欠選任
  新井 彬之君     坂井 弘一君
 同日
 辞任         補欠選任
  坂井 弘一君     正木 良明君
    ―――――――――――――
 本日の会議に付した案件
 昭和五十一年度一般会計予算
 昭和五十一年度特別会計予算
 昭和五十一年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――

○荒舩委員長 これより会議を開きます。昭和五十一年度一般会計予算、昭和五十一年度特別会計予算、昭和五十一年度政府関係機関予算に関し、ロッキード問題について証人より証言を求めることといたします。 本日出頭の証人は、大庭哲夫君、鬼俊良君、若狭得治君、伊藤宏君、大久保利春君、以上五君であります。 なお、本日出頭を求めておりました児玉譽士夫君から去る二十八日、福田太郎君から去る二十七日、それぞれ前尾議長あてに、医師の診断書を添え、書面をもって病気のため出頭できない旨の申し出がありました。議長より委員長に通知がありました。 この際、診断書を朗読いたします。

    診 断 書
    児玉誉士夫殿 マル明・大・昭四十四年二月十八日生
 一、病名 (一)脳血栓による脳梗塞後遺症の悪化状態。
       (二)末梢循環不全
    附記
 昭和五十一年二月十三日付の診断書に記載した諸症状は、一時やや改善の傾向にあったが、本朝より脱水症状が明らかとなり、 (二)の状態が(一)に加わった。この現状では国会への出頭は不可能と考えられる。右の通り診断致します
   昭和51年2月27日
 東京都新宿区市谷河田町十番地 東京女子医科大学附属 脳神経センター 医師 喜多村孝一
    …………………………………
    診 断 書
    福田 太郎殿  明・マル大・昭5年6月27日生
 一、病名 肝硬変症(非代償期)、食道静脈瘤、消化管出血後の状態
    附記
  昭和五十一年二月七日、腹部膨満、黒色便などを主訴として入院、安静加療中のところ、二月十一日より下血、同十二日より貧血状態となり同時に腹水貯溜も顕著となる、二月十二日より二月二十日迄の間に、計二、四〇〇ccの輸血を施行すると共に肝庇護治療の結果消化管出血は止み、小康状態を得ているが、なお、就床、安静加療、状態の経過観察を要するものである。 右の通り診断致します
   昭和51年2月27日
 東京都新宿区市谷河田町十番地 東京女子医科大学附属 消化器病・早期癌センター 医師 小林誠一郎

 児玉譽士夫君及び福田太郎君の不出頭の件については、理事会において協議の上、決定いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○荒舩委員長/御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。なお、カール・コーチャン君及び片山シグ君については、米国政府の了承及び本人の同意が得られるならば、証人として出頭を求めることに決定いたしましたが、去る二十六日、委員長より外務大臣に対し、本件に関する連絡並びに意向確認方について依頼いたしましたところ、去る二十八日、外務大臣より、米国政府から本人の同意を得られることを条件に両君に証人として出頭を求めることに異議はない旨回答があり、同日、在ロサンゼルス領事館より両君に連絡をいたしましたところ、両君からそれぞれ出頭しない旨の回答がありました旨、通報がありました。以上、御報告申し上げます。それでは、証言を求める前に証人に一言申し上げます。
 昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことになっております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係にあった者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者がその職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと存じます。それでは、法律の定めるところによりまして、証人に宣誓を求めます。全員起立を願います。
 〔総員起立〕
○荒舩委員長/大庭君、代表して宣誓書を朗読してください。
○大庭証人/宣誓書 良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。 昭和五十一年三月一日  大庭哲夫
○荒舩委員長/それでは、各証人は宣誓書に署名捺印を願います。――御着席を願います。〔証人、宣誓書に署名捺印〕
○荒舩委員長/これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を超えないこと、また、御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときは着席のままで結構でございますが、お答えの際は起立して発言をしていただきます。なお、委員各位に申し上げます。本日は、申し合わせの時間内で国政に係る重要な問題について証人より証言を求めるのでありますから、不規則発言等、議事の進行を妨げる言動のないよう御協力をお願いいたします。証言を求める順序は、大庭哲夫君、鬼俊良君、若狭得治君、伊藤宏君、大久保利春君の順序でお願いいたします。大庭君以外の方は、控え室でしばらくお待ちを願います。 
○荒舩委員長/これより大庭証人に対し証言を求めます。まず、委員長より所要の事項についてお尋ねいたします。その後、委員各位の御発言を願うことにいたします。それでは、私からお尋ねをいたします。あなたは大庭哲夫君でありますか。
○大庭証人/さようでございます。
○荒舩委員長/生年月日、住所、職業を述べてください。
○大庭証人/生年月日、明治三十六年十二月二日生まれ。職業は、現在、東京空港交通株式会社社長でございます。
○荒舩委員長/あなたが全日空へ入社したのはいつでありますか。それはどういういきさつでございましたか。また、その地位はどういうことでありましたか、お尋ねをいたします。
○大庭証人/全日空へ入社いたしましたのは四十二年の六月だと存じています。理由は、そのときまでにいろいろ全日空に事故が続いたものですから、日本航空の社長でありました松尾から、大庭、行って全日空の立て直しをしなさいということでありましたので、私、引き受けまして、全日空に参りました。
○荒舩委員長/証人は住所が抜けておったようですが……。
○大庭証人/まことに申しわけありませんでした。住所は川崎市高津区千九百四十六だと思います。
○荒舩委員長/大庭君にお尋ねいたしますが、多分あなたは日航に専務として就職されておったように聞いておりますが、どういうわけで全日空へお移りになったか、その事情をひとつお話し願いたいと思います。(「それは終わったぞ」と呼ぶ者あり)間違いました。(「まじめにやれ」と呼ぶ者あり)まじめにやっております。また、社長に就任されたときに、ちょうど大型機の購入の選定について、昭和四十五年一月ごろだと思いますが、機種選定準備委員会を発足させ、また同年二月には若狭君を団長とする調査団を米国に派遣したが、その当時、あなたはどういう見通しを持って若狭君をアメリカに調査団長として派遣したか。これらの点についてひとつ詳細にお答え願いたいと思います。
○大庭証人/お答え申し上げます。私が全日空に参りましたのは、先ほどお答えいたしましたように四十二年の四月からだったと思いますが、それ以後全日空の建て直しのために誠意努力してまいりました。四十四年の六月に私社長になったわけでありますが、社長になって以後四カ年計画というものをつくり上げまして、現在持っている機材と、今後需要の見通しに応じ、路線の拡張に応じて必要な機材というものを計画いたしまして、その計画の結果、四十七年の初めに大型機、いわゆるジャンボジェットを入れる計画を立てたわけでございます。しかし、立てた当時の全日空は、まだ私が参りまして二年しかたっていなかったために、いろいろ整備その他について不満足のものがあったわけでありまして、鋭意それの改善、拡充に努めていったわけであります。五カ年計画を立てた当時におきまして、ちょうど四十七年というものは全日本空輸の二十周年に相当する年に相なっているわけでありまして、あらゆる面におきまして全日空の前途を拡充する一つの大きなポイントだという点で、あらゆるものをそこに集中計画を進めていったわけであります。したがいまして、四十四年初めの需要予測というものは随時増加して、四十七年には大体需要は倍になる、五十年には大体三倍になっていくだろうという需要のもとに、現在持っている機材というものをある程度リタイアさせて大型機に切りかえていくという計画を立てて進めていったわけでございます。したがいまして、乗員の需要に応じる訓練の増強と整備力の増強というものをあわせて四十七年に集中していくように、また四十七年の大型機の導入に間に合うように、すべて計画を進めていっていたわけでございます。
○荒舩委員長/そこで、あなたが最初に計画されたのは、ダグラス社のDC10というのを選ばれる気持ちでおられたというふうに聞いておるのですが、なおまた、ダグラス社の日本在住の代表と仮契約というのですか、そういうようなことまで進まれておったというふうに聞いておりますが、この若狭調査団がアメリカに行きまして、いろいろな機種の調査をいたしましたところが、それがロッキード社のトライスターに変わられたというようなふうに私聞いておるのですが、それらの問題等について、何か会社内で意見が一致しなかった点、また、それらが原因であなたが退社されたんだというようなふうにも聞いておりますが、そういうような点についてひとつ明快な答弁をお願いしたいと思います。
○大庭証人/先ほど申しましたように、四十四年に五カ年計画を立てて、四十七年に大型機を導入するということに決めて進んでいったわけでありますが、いまお尋ねの、大庭はダグラスDC10をあらかじめ想定していたんでないかというお尋ねだと存じますが、私は日本航空にいるときから、ジャンボジェットというものにつきましてはあらゆる研究をしていました。したがいまして、私がそのときまでの検討をした結果においては、ダグラスのDC10が一等全日空に適する機材だと考えていたわけであります。したがいまして、機材を購入する順序としまして、まず各メーカーから来ます説明を、あらゆる面において社員に十分説明をさせて勉強をさせたわけであります。その後で、四十五年の一月か二月の初めだったと思いますが、調査団を組織いたしまして、そのときのメーカーでありますロッキード、ダグラス、ボーイングへ調査に出させたわけであります。出さす前には、どういうものを調査して、その状況を十分調べてこいということで調査に出したわけであります。いまお尋ねの団長は若狭君であったと存じます。帰ってからの報告を聞いたわけでありますが、出張する前にいろいろ検討した各項目について、調査員はその調査の報告をいたしたわけでありますが、その結果は甲乙いろいろありまして、三社どちらともつかない結論が出たように私は思っています。したがいまして、私は先ほど申したように、私の考えはDC10にあったわけでありまして、そういう方向に全員をリードして持っていっていたわけであります。と申しますのは、四十二年に入りましてからあらゆる面の改善――もちろん私の担当は大部分は技術面でありますが、乗員の素質の改善、整備の素質の改善、拡充という面において計画的にやってきたわけであります。あらゆる面で私がリードしてきていたわけであります。したがって、調査団を出すにも、その調査団の調査の仕方そのものも全部リードしてきていますし、その報告によって、結論的には優劣なしという結論であったと存じますので、私は私の進む方向に進ましていくべく計画をそのまま実行に移していたわけであります。

 御承知のように、新機種を購入するということになりますと、どうしても四十七年の四月に新機種を入れるということになりますと、一、二機は二、三カ月前に入れて乗員の訓練をいたすわけでありまして、したがいまして、少なくとも四十七年の一月には一番機並びに二番機を入れておく必要がある。そうしますと、それを正式の契約に移してからでは、その日にちに間に合う機材が手に入るかどうかということは、いままでの私の経験からして不可能でございます。したがいまして、飛行機の希望する日にちというものが――手に入れようとすれば、あらかじめその製造番号というものを押さえておかないと、希望する日にちには適当に入らないのが今日の現状でございます。したがいまして、その製造番号を押さえる。あるいは正式の契約にする日にちというものは、各社によってそれぞれ異なることはあるにしても、大体正式契約が十六カ月あるいは二十カ月、製造番号を押さえるのが大体その上の二年近く前から製造番号を押さえておかなければならない、これが一つの常識になっていたわけであります。飛行機の需要が多ければ多いほど、その日限が早く、いわゆる間隔は長くなるわけであります。早くから押さえておかないと、わが社の事業計画である四十七年の四月から実行に移すことは困難になるわけであります。したがいまして、私は調査団の派遣が帰りましてその報告を聞いて、最後には、結論的には社長一任となって、社長に全責任がおっかぶさるわけであります。そのためにはどうしてもDC10の製造番号を押さえておく必要があるというところから、いろいろ情報をとってみますと、あれははっきりした日にちは覚えていませんが、四十五年の三月ごろだったと思いますが、四十七年の一月に一機というものを手に入れるためには、どうしてもいま約束をしていただかぬとむつかしいという状況になりましたので、オプションをしたわけであります。

 オプションという言葉がいま新聞でいろいろ、何と申しますのか、混乱をしている。これ、言葉がいいかわかりませんが、混乱をしているようであります。私の日本航空時代からのオプションという言葉を使っているのは、製造番号を押さえてもらう、そのためには何月まで製造番号を押さえておってもらう。もちろんその間に会社の取締役会の承認を得、国家の外貨枠の承認を得て正式の契約に移す。しかし、先ほど申しましたように、正式の契約をしたときでは、こちらの希望する機材がその日にちには入らないという結果、あらかじめ機材を押さえておく。これは何も法規的な契約ではなしに、どうか機材を押さえておってくれ、承知しましたと。しかし、常時相手からも連絡はありますし、こちらからも常時連絡をすることによって、私の方で、会社の取締役会あるいは国家の為替管理法による購入がむつかしくなりましたら、これはキャンセルをし得ることになりますし、また、相手方のメーカーの方にも、その日にちの製造番号が、他の国から要求があって、その国の方が有利であるということになりますと、相手の方からも連絡があって、いまこういう状況だ、したがっておまえの方何日まで約束しているんだが少し早めてくれぬかどうか、早めなければキャンセルせざるを得ないんだがというように、先方からも話があるわけであります。そういうような製造番号の押さえ方をしたわけであります。これを私自身はオプションと言っているわけですが、この言葉がいいかどうかということにつきましてはひとつお確かめ願いたいと存ずるのですが、日本語で訳して、仮契約というように訳されたので実に困っているわけなんで、これはひとつ御訂正願っておきたいと存ずる次第であります。よろしゅうございますか。
○荒舩委員長/はい。そこで、なおお尋ねいたしますが、昭和四十五年一月に機種選定の準備委員会が発足いたしまして、二月には若狭君が団長でアメリカに行かれた。帰ってきてからオプションを与えたのですか。それともその前にあなたがダグラスのDC10にオプションを与えたのか。どっちですか。
○大庭証人/私の記憶では調査報告を聞いた後だったと思います。したがって、三月の前か後ろかわかりませんが、記憶によると三月だと存じております。
○荒舩委員長/そこで、なお突っ込んでお尋ねいたしますが、オプションを与えたというときには、何かそのオプションに対する書類をダブラス社と取り交わしてあるものですか。あるいは言葉の上だけですか。どういうことですか。
○大庭証人/来た者は、多分ダグラス社から来たのでなくて、こちらにいるダグラス社の人間が本社の意向を受けて来たんでなかったかと思うのであります。したがいまして、製造番号を押さえたという印が欲しいということでサインしたように思うのでございます。しかし、そのサインというものは、先方が書類を本社に送るために必要な私のサインを求めたからサインしたんだと存じているわけでございます。
○荒舩委員長/わかりました。なお、続いてお尋ねをいたしますが、オプションはそれだけであって、いわゆる手金を打つとか契約金を払うというようなことはなかったのですか。あったのですか。どっちですか。
○大庭証人/全然ありません。
○荒舩委員長/そこで、かなりいろいろな問題があるのですが、あなたは、ダグラス社のDC10が、全日空の大型機としてその方がいい。いまでもそういうふうにお考えですか、どうですか。
○大庭証人/ちょっとむずかしい御質問でございますが、あえて御回答申すといたしますと、現在では、全日空としてDC10でなくてロッキードでもやっていけたのではないかとは思います。ということは、DC10を入れるのは四十七年の初めであったために、相当私が計画的にすべてを進めなければできない状態にあったわけです。もしもできないときには、整備において日本航空の援助を求めなければいけない状態は覚悟していたわけでございます。しかし、結果的に今日、全日空がロッキードを四十七年でなしに四十九年に入れた。二年間の進歩は、私は整備その他について相当進歩していたのではないかと思いますから、必ずしもそれが悪かったとは思いませんが、いまだに私自身としては、もしもいればやはりダグラスであったと思います。
○荒舩委員長/そこで、あなたが社長をやめられるについては、機種選定の問題で若狭君あるいは専務の渡辺君と意見の衝突が起こったというようなことも一つ聞いておりますが、いま一つは、何というのですか、特別金融というのですか、何か金融ブローカーのようなものが介在して、そうしてそれが新聞に出た、あるいはごたごたしたというようなことであなたが退社するというような原因をつくられたか、この二つがいわゆるいろいろなうわさを生じて疑問点が起こっているわけでございます。これらについて、忌憚のないその当時の状況、意見等をお聞かせ願いたいと思います。
○大庭証人/お答えいたします。私が全日本空輸をやめたのは、一つにかかって社内的な問題と、もう一つは、いま委員長から御質問を受けました融資の問題とであります。そのときに機材的な問題があったとは私は存じていません。特に、いま御質問になりました機材の購入について、そのときに社内的に問題があったとは私はそのときには思っていませんでした。と申すのは、先ほど御説明申し上げましたように、調査団の報告も、決してどれがいいという報告ではなかったし、そのときの重役にしても社員にしても、どの機材がいいという確たる判別はついていなかったはずだと思います。したがって、私がリードせざるを得ない立場にあったわけでありまして、決して私は機種の問題でやめたとは思っていません。
○荒舩委員長/そこで、なおお尋ねしますが、二つ目の金融の問題等でいろいろなうわさがありましたが、それについてひとつ疑問点を晴らす意味でお答えを願いたい。
○大庭証人/金融の問題につきまして私は会社をやめるようになった次第でございまして、実はその問題につきましては、それ以後私はできる限りこのことを頭から離すように努力していたわけでございます。ところが、たまたま今日、ロッキードの問題から何かその問題が上がってきたわけでありまして、いろいろそのときのことを思い出したわけでございます。しかし、金融の問題は、私が命じたのには何ら間違いはないわけでありますが、特命として私の部下にそれを専任的にやらしていたわけであります。したがいまして、私はそのときどきの報告を聞いてそれに命令を与えていたわけでありますが、この問題は相当時間を要するのではないかと存じますし、私、今日、それを明らかに御説明をしろと申されても、私の記憶の範囲内で明確にお答えすることはちょっと無理かと存じます。したがいまして、もしもそれについて詳細なことをお聞きになりたいというのでありましたら、私が特命をしましたその者にお聞き願えれば詳細のことがおわかりになると存じます。以上でございます。
○荒舩委員長/これらの点については、後、委員の各位からいろいろ御意見等もあると思います。それでは、全日空社長時代に、DC10あるいはトライスター、どちらの機種を選定するかということについていろいろ研究されたと思うのですが、政治家あるいは政府から、これがいいのだ、これを推薦するというような、何かそうした事柄がありましたかどうか、お答え願います。
○大庭証人/私にはどなたからもそういうことはありませんでした。
○荒舩委員長/それでは、なおお尋ねしますが、児玉譽士夫君あるいは小佐野賢治君から、トライスターを買ったらどうかとか、これをひとつ選定してもらいたいというような推薦あるいは誘いといいますか、そういうような話がありましたかどうか、お答え願います。
○大庭証人/両者からそういうお話は承っていません。
○荒舩委員長/また、もう一つ突っ込んで、くどいようですがお尋ねいたしますが、運輸省関係あるいは政府の関係、そういうところからも推薦は全然一度もなかったか、あったか。明確にひとつお答え願いたいと思います。
○大庭証人/いま運輸省からそういう何がなかったかというお話でございますが、私の記憶するところでは、四十四年の秋であったのかと思いますが、政府の方から、幹線に使用する機材はできる限り三社同一の機材を使うようにという御指導があったやに存じます。したがいまして、日本航空としましては、もしも使うとすればDC10だということになっていたと思いますし、私もDC10でございますので、何らそこに私は政府的な何はなかったと思います。
○荒舩委員長/その政府の、政府筋からと言いますか、あるいは監督官庁である運輸省からそういう――いまの三社というのは日本航空、全日空、いま一つどこか知りませんが、その三社ですか。
○大庭証人/私はそういうように存じています。そのときに東亜航空の機材は日本航空が委託運用をしていたわけでありまして、それにまで及ぶのかどうかはわかりませんが、とにかく、幹線に使用する機材はできる限り統一した機材が好ましいというような御指導であったと存じます。したがいまして、私がDC10を好んでいるということは、もう御承知であったはずでございます。
○荒舩委員長/そうすると、その場合においては、DC10かトライスターかというような指示はなくて、まあできるなら三社同じ機種のものが都合よくいきやしないかというようなことで、まあでき得るなら三社が同じ機種を選ぶべきだというような意味で、DC10かあるいはトライスターかというようなことには触れず、いまの答弁どおり、三社が同じものを買ったらどうか、同じものを使ったらどうか、こういう指示があったというふうに解してよろしゅうございますか。
○大庭証人/さようだと存じます。
○荒舩委員長/わかりました。以上をもちまして私からの質疑は終了いたしました。次に、委員から発言の申し出がありますので、それぞれの持ち時間の範囲でこれを許します。松永光君。
○松永委員/まず大庭さんにお尋ねいたしますが、あなたはある雑誌記者に、いま大きな航空機メーカーにはみんな代議士というものがついているわけですよ、こういった発言をして、大きな航空機会社には、その航空機会社の飛行機を売り込むために代議士がついておる、こういった発言をされたことがあるようですが、どうですか。 〔委員長退席、正示委員長代理着席〕
○大庭証人/確かに私として、まことにその件につきましては、相手がどう聞かれたかということについてよりも、私が述べたことは事実でありまして、まことに申しわけない、軽率な発言であったと言っておわび状を出してあるわけであります。
○松永委員/あなたはそういう発言をして、後日わびていらっしゃるわけですね。――後日わびていらっしゃるわけですね。別の機会におわびをしておりますね。
○大庭証人/はい、おわびしてあります。
○松永委員/あなたが大きなメーカーにはみんな代議士がついておるという発言をしたことは事実であるけれども、その発言をしたことについておわびをしたのは、自分の発言が間違っておった、だからおわびをされたのですか、どうですか。
○大庭証人/軽率な発言でありましたと言っておわびしてあります。
○松永委員/確たる証拠なしに発言をしたということですか。証拠があって発言をしたということですか。どっちですか。
○大庭証人/確たる証拠なしに発言をいたしたわけでございます。
○松永委員/確たる証拠なしに軽率に代議士の名前等出すということは非常に不謹慎のそしりを免れないと思うのです。その点をまず申し上げておきたいのですが、そこで、この証言の場では、推測とかそういうのではなくして、あなたが直接経験されたことを話してもらいたいのですね、そこでお尋ねいたしますが、あなたが社長になられて、そして四十五年の一月九日に新機種選定準備委員会、こういったものを全日空の中に発足させたわけですね。この新機種選定準備委員会の役目はどんな役目であったのですか。
○大庭証人/新機種を選定するために調査研究をするという役目でございます。
○松永委員/新機種選定準備委員会を発足させて、そしてその準備委員会の調査がまだそれほど進んでない段階で、あなた自身はDC10にしたいというふうに考えていらっしゃったわけですか。そのDC10が望ましい、それを推進したい、こういうふうにあなたは思っておるとおっしゃったのでございますが、それはあなた個人の考えだったのですか。それとも全日空の他の役員その他にもあなたの意向を打ち明け、相談をしておられましたか。どっちですか。
○大庭証人/社長自身の考えでございます。しかし、それは、私が二年間あるいは三年間にわたりまして全日空をあらゆる面で技術的に改善をしてきたわけでありまして、その機種の選定に当たりましても、いろいろそれまでの間に、私の考え方というものは常務会で常時話していたわけでございます。
○松永委員/この新機種をどれにするか、これは会社の命運にかかわる問題だというふうに聞いておるのですが、そこでこの新機種選定につきましては、あなた個人の独断じゃなくして、いろいろな分野からの検討をしてもらいたいということで選定準備委員会をつくられた、それはわかるのでございますけれども、しかし、総合的な判断をする意味で、役員会等であなたが社長をしていらっしゃるときに活発に論議がなされたという資料が私どもではめっからないものですから、あなたの個人だけの考えであった、したがって、あとの人はよくわからぬ、現在の若狭社長などはそういう発言をしておられるわけで、どれが真実なのか。こういうことで、その点を重ねてお聞きしたい。
○大庭証人/私は、先ほど証言をいたしましたとおりに、技術的につきましては、私が入りましてから全部私の考えで私の方向に進めていってきたわけでございます。したがいまして、私がどういう考えを持っているか、どういう方向に進めているかということについては、社員がある程度のものは承知しておったわけだと私は存じています。
○松永委員/その点が、あなたの後任の若狭氏あるいは渡辺氏とおっしゃることが食い違っている点なんですよ。若狭氏や渡辺氏は、あなたがDC10を積極的に推しておったとか、あるいは先ほどあなたが説明されたような意味合いにおける製造番号の押さえをしたというようなことを全く聞いていない、というふうに若狭、渡辺両氏は言っておられるわけです。そこでお尋ねするのですが、あなたは社長を心ならずもやめられたようでありますが、やめられたときに、いまのDC10につきまして、仮契約とか仮発注という言葉は必ずしも適切な言葉じゃないけれども、先ほどあなたが説明されたような意味合いにおける製造番号の押さえをしてあるということを、若狭後任社長または渡辺氏あたりにその話の引き継ぎをされたかどうか、その点どうですか。
○大庭証人/私がやめるいきさつについては、まだ十分述べてありませんけれども……(松永委員「いきさつじゃないんだ。引き継ぎをしたかどうか」と呼ぶ)  〔正示委員長代理退席、委員長着席〕したがって、最後の、二十九日の六時ごろであったと思いますが、最後に私が腹を決めたわけでございます。そのときに、若狭君と渡辺君は、後に何か急に残すものはないかというようなお話でございましたが、私、頭がそのときは至極混乱をしていたわけでありますが、私の頭に残っていたものは、先ほどのオプションをしたという問題だけでございました。したがいまして、オプションをしたから、ひとつ三井物産とよく打ち合わして始末をしてもらいたい、それだけが私の心がかりだということで、私は退社したと存じているわけでございます。
○松永委員/あなたの頭の中で心残りだということはわかるのですよ。あなたの心残りになっておるオプションをしたということを引き継いだのかどうか。あなたの記憶で、引き継ぎをしたかどうか、話をしたかどうか、それを確認しておるのですよ。頭の中にあることと言ったことと別ですからね。言ったかどうか、それを確認しているのです。
○大庭証人/引き継いだかどうかは、私は相手が引き継ぎを受けたかどうかは知りませんが、私は懸念になる第一がもうそれだけであったものですから、それだけはひとつよろしく善処してもらいたいということを申して退社したわけでございます。
○松永委員/後任社長に、後継者に申し伝えたということは聞きました、わかりましたが、このオプションをするについては、取締役会とか重役会とか、そういったものにあなたは話をかけられたかどうか。会議にかけられたかどうか。あなたの単独でやられたのかどうか。その点を聞いておきたい。
○大庭証人/それは、いま存じているのは、私単独でやったと存じています。
○荒舩委員長/渡部恒三君。
○渡部(恒)委員/大庭証人、いま同僚の松永委員があなたにお聞きして、お答えしたことは、非常に重要な意味があるのです。このロッキード問題が起こって、いまわれわれの国が大変なことになっておる。いま国民は本当のことを知りたい、また私どももいま国民にこの問題についての本当のことを知ってもらうということのために、この証人喚問をやっているわけです。そして、あなたはいま、何事も隠さず、何事もつけ加えないでやるということを誓いました。また、いままでの証人もそれを誓って話しているのです。ところが、いまあなたの話しておられることと、この前の証人喚問で若狭社長、渡辺副社長の話しておることは全く食い違っているのです。で、渡辺証人が、「新しい機種を決めるときに、社長一人が単独で決めるようなシステムは、いままで私の知っている限り、創立以来そういう決め方は一回もしたことがなかった」、また「大庭さんが当時社長でございましたが、三井物産にどういうことを言われたかということは、私どもは大庭さんから何にも言われておらなかったわけです」、こう言っておるんですね。私も常識的に――あなたが社長であっても、会社が物を買うことを決めるとき、それは十万、二十万のその辺の備品の机を買うとかいすを買うくらいの話なら別ですけれども、これだけ大きな買い物をするときに、当時あなたが社長であっても、若狭さんは副社長、また渡辺さんは専務だったんでしょう。こういう人に一切何も相談しないで、たとえオプション契約であろうと、それができるものかどうか、また……(発言する者あり)
○荒舩委員長/静粛に、静粛に。
○渡部(恒)委員/あなたが先ほど話しておられたように、やはりダグラスなんだという情熱を持っておったとすれば、それは社長をおやめになるとき、後任社長に事務を引き継ぐときは、当然何をおいてもこのことを引き継ぐべきであって、それがあいまいであるなんということは考えられない。もう一遍お答えいただきます。
○大庭証人/引き継ぐときには、それ一件だけを引き継いだと存じています。
○渡部(恒)委員/それから、きょうあなたのことをここにお願いしておるのは、先ほども松永委員から少し出ておりましたけれども、何かこの機種決定をめぐる問題のためにあなたの社長交代が行われたのじゃないか、またあなたも何か世間に対してそれを思わせぶるようないろいろな話をしておるのですね。このことがこの問題を非常にわかりにくくしておるのです。もう一遍、委員長からお話がありましたが、あなたの社長交代のいきさつ、またその社長交代に当たって外部の、たとえばロッキードを買わせるためにあなたが邪魔になるということであなたを退陣させるというような動きがあったと思っていらっしゃるのかどうか、お聞きしたいと思います。
○大庭証人/私、決してそのときにはそうは思っていなかったと思います。
○渡部(恒)委員/そのときは思っておらなかったということは大変思わせぶりにまたなるのですが、そうすると、いまはそう思っておるということなんですか。
○大庭証人/いまもそう思っています。――いまもそう思っています。お間違いになったら初めから申しますが、全然機種には関係なしに、先ほど証言いたしましたとおりに、会社内の不統一という問題が一つと、念書の問題が一つと、その二つから私は身を引いたわけです。したがいまして、そのときに機種の問題が関係したとは考えていませんし、いまも考えていません。
○渡部(恒)委員/この問題はロッキード問題を解明するために非常に重大な意味がありますので、ちょっともう一遍伺いますが、あなたがとにかく社長を任期半ばにしておやめになったということは事実ですね。そのおやめになったことは、あなた自身がいま詳しいことはなかなかここで一遍に話すのは困難だそうですけれども、いろいろな問題の責任をとっておやめになったのか、それとも何か外部的な圧力でやめさせられたとか、ということが非常に重大なんですけれども、何かあなたは外部に向かっては、あたかもあなた自身は責任なかったのに、何かトリックにかかってそしてやめさせられたというような印象を与えることをいろいろ言っているのですね。だから、もう一遍ここで、あなたは責任をとっておやめになったのか、または外部の圧力でやめさせられたのか。この点、お答えいただきたい。
○大庭証人/社内からやめさせられたのでありまして、私もそういうことならいままでの努力は何ら報いられないということで、私もいや気がさしてやめたのは事実でございます。
○渡部(恒)委員/社内からやめさせられたということは、何かここに出ている、私がやめた理由については「訳のわからない融資話がきっかけだった。四十四年ごろ何人かの人が次々とエアバス購入にからんで多額の融資話をぼくのところに持ってきた。どうせ本物ではないと思ったが、面白半分に念書を書いた。それが表ざたになり、そんな念書にサインをするような社長ではだめだと言われ、そこへ筆頭株主だった名鉄の会長から辞めろと言われた」、こういうことですか。
○大庭証人/名鉄の社長からやめろということではなかったわけでございます。日本航空の社長でありました松尾さんのところへ文書が来まして、大庭を会長にし、若狭を社長にしなさいということであったわけであります。私としましては、それほどの困難さがあるのであればもうやめる以外ない、またやめたいということで松尾さんと相談した結果、松尾さんが、それでは一時おれに任せろということで任していたわけであります。ところが、三十日の総会の――翌二十六日だったと思いますが、取締役会を開いた席上で、その話が出たもので松尾さんは退席していられるわけです、大庭を会長にするのはいやだと。その後、松尾さんがいろいろ私のために尽力していただきましたが、先ほどちょっと申し上げたと思いますが、二十九日の午後六時前後になりまして、松尾としてはもう手がつかぬ、おまえの意思どおりもうやめた方がいいんじゃないかと思うという意思表示をされたものですから、私はそれによってやめたわけであります。ということは、社長の松尾さんの推薦によって私は全日空へ技術陣容の立て直しに出ていたわけであります。しかし、松尾さんとしてもうやめた方がいいという意思表示をされた以上は、私は全日空に残る意味は何にもなくなるわけであります。また私も、努力しているにもかかわらずいろいろな批判をいただいていることは、もう私としても耐え得ないということで私の意思を決定したわけでございます。いまもそう思っています。
○渡部(恒)委員/大庭証人、いまあなたの話を聞きますと、あなたが社長を退陣するに至った理由は全くの社内事情、社内の人間関係なり仕事のいろいろな関係でおやめになったということでありますね。これは確認してよろしいですね。
○大庭証人/そのとおりであります。
○渡部(恒)委員/そうしますと、これはあなたにここに来ていただいた一番大きな理由は、今度のロッキード問題、この全日空のトライスターの購入についていろいろな政治的な圧力が加えられたのじゃないかということが問題になって、こうしてこれだけ大事な会議を開いているのですよ。その一つの手がかりというか、それはあなたは、全日空の前社長大庭さんはダグラスを支持しているということで有名であった、そのために、ロッキードに変更するためにはあなたが邪魔になったから、そういう外部的ないろんな工作によってあなたが退陣させられたものかどうかということが、この問題の真相解明の非常に重大なポイントになってくるわけでありますね。ですから、これはくどいようですが、あなたの社長退陣に当たっては、そういうような一切の工作というものでなくて全くの社内事情でおやめになったということを、もう一遍念を押しておきます。いいですね。
○大庭証人/先ほどお答えしたとおりに、全然機種については私はやめさせられたとは存じていません。
○渡部(恒)委員/もう一つ、先ほどの中に残っているのですけれども、あなたがたとえ社長であっても、大きな会社ですから、オプション契約を与える場合、あなた一人の考えでこういう飛行機だということで決めるようなわけには恐らくいかなかったと思うのですね。そうすると、当然いろんな機関に相談して決めたことだろうと思うのですね。ところが、この前の証人喚問の席で、あなたが社長の時代の当時の副社長である若狭、また専務である渡辺、このお二人が、一切そういうことの相談は受けたことがないと言っているのですね。そうすると、あなたの証言と向こうの証言の間に非常にわれわれは疑問を感ずるのですが、この点はどうですか。
○大庭証人/先ほど御説明したとおりでございます。
○渡部(恒)委員/これで終わります。
○荒舩委員長 これにて松永光君、渡部恒三君の発言は終了いたしました。次に横路孝弘君。
○横路委員/お尋ねをいたしたいと思いますが、いまお話がありましたオプションの点ですけれども、常務会でいろいろとお話をなされたというお答えがございましたが、この常務会には現在の若狭社長、当時の副社長ですね、それから現在の渡辺副社長、当時の専務ですね、この方はその常務会には出席をされているメンバーですか。
○大庭証人/常務会でありますから当然だと思います。
○横路委員/それでは、先ほど証人が御証言された常務会で話をしたというときには、この二人もおったということになりますね。
○大庭証人/私がいろいろな事情からダグラスが好ましいんだということは、いろいろなチャンスのときに述べていますから、御承知であったのではないかと存じますが……。
○横路委員/それから、その四十五年の二月に若狭さんを団長とする訪米団を送って、帰ってきてからいろいろとその報告があった。先ほどちょっと明確じゃないのですけれども、そういう報告そのものは優劣がなかなかつけがたいというお話だったということですが、そこでどの機種にするかということについては何か社長に一任するみたいな話というのは、そういう常務会の席上とかあるいは選定準備委員会の席上等でお話があったのでしょうか。
○大庭証人/まだその段階では、社長一任ということにはなっていないはずでございます。要するに、計画的に一応調査団を派遣してその報告を聞くというところで、次に進めようとしているときに問題が起きたわけでございますから、まだそこまでいっていなかったと存じます。
○横路委員/先ほど結論的に社長一任だというような何か御発言があったのですが、その結論的にという意味は、社内でそういう常務会の席上等でお話をいろいろしておってみんなが承知をしておるということを、結論的には一任だというような御発言になったのでしょうか。
○大庭証人/そういう意味ではありません。先ほどからときどき、じゅんじゅんと御説明申しましたように、すべては私の計画に基づいてすべてをリードしてきていたのでありまして、したがって最終的には私に一任されるものとして、私は会社の責任を持って行動をしていたわけでございますから、さよう御承知願いたい。
○横路委員/そういう大庭さんの考えに、これは若狭氏も渡辺氏も知っておったと思うのですけれども、特にクレームをつけるということはなかったわけですね、じゃあ。
○大庭証人/クレームをつけられなかったと存じます。
○横路委員/もう一度そのオプションの、今度はサインのことについてちょっとお尋ねしたいのですけれども、このオプションのサインをなさった記憶があるというお話でしたけれども、それはどこでやられたのか、場所は御記憶ございますか。
○大庭証人/社長室だったと存じます。
○横路委員/そのときはダグラス社と、それだけでしょうか。ダグラスの代理店の三井物産の関係の方はおられたでしょうか。
○大庭証人/私は余り英語が話せないものですから、全部代理店の方がついてきて通訳したと思いますので、三井物産の方はどなたかついていたと存じます。
○横路委員/そのときに全日空側として参加されたのは大庭さんだけですか。あとの方はどなたかその署名をなさるときに一緒にいたということはないでしょうか。
○大庭証人/私だけだったと存じます。
○横路委員/このオプションの話をしたのは、全日空の社内に対してしたのは、先ほど社長をやめた引き継ぎのときに後任の社長、つまり若狭氏等にお話をしたという証言がありましたけれども、あなたがやめられるというその引き継ぎの以前に社内の人に話をなさったということはないのでしょうか。
○大庭証人/ありませんです。
○横路委員/その引き継ぎをするときは頭の中がいっぱいでというお話がありまして、このオプションの問題だけが気になっていることだということでしたが、書類を整理して引き継ぎをなさったということはやられなかったのですか。
○大庭証人/そういうことは全然やりませんでした。
○横路委員/そこで、もう一つ別の問題に進みたいというように思いますけれども、あなたは児玉譽士夫と会ったことはございますか。
○大庭証人/一度会ったと思います。
○横路委員/それは全日空の社長になってからですか。
○大庭証人/さようでございます。直後だったと思います。
○横路委員/その児玉譽士夫と会うという話はあなたの方から持ちかけた話なのか、向こうから会いたいと言ってきた話なのか、それはどうでしょうか。
○大庭証人/社長になった直後、いろいろごあいさつを回る中に児玉さんにもあいさつをするという項目があったものですから、こちらから面会を申し込んで会ったと思います。
○横路委員/そうすると、全日空の社長になってあいさつ回りをしなければならぬという項目の中に児玉譽士夫と会うというのがあったわけですね。そうすると、やはり全日空の社長になりますと、一応あいさつをするという、社内的にはそういうことになっておったわけですね。
○大庭証人/それは存じませんです。前の森村さんがどういうようにやられたかについては私は存じていません。私は、私としてやったわけであります。
○横路委員/あいさつの項目に入っておったというのは、あなたの発想なんですか、そうじゃなくて、あなたが社長になったときに、会社の中の秘書室というのですか、そういう社長の日程をいろいろ決めるその中にその日程が入っておったのか。あなたが会いたいと思って入れてくれという指示をしてそれを準備をしたのか。それはどうなんでしょうか。
○大庭証人/それにつきましては、日本航空の方ともよく相談をして決めたように思います。
○横路委員/日本航空と相談をして決めた。そこで、もう一度重ねての質問になりますが、あなたが会いたいと思ったのか。だれかからやはりサゼスチョンがあったのでしょう、会った方がいいんじゃないかと。社長になったらごあいさつに行くもんだというようなサゼスチョンがやはりだれかからあったのでしょうね。どうですか。
○大庭証人/そういうサゼスチョンはあったかどうかわかりませんが、恐らく、ここで申していいかどうかわかりませんが、私の記憶からいたしますと、何というのですか、総会のときにお世話になる方に全部回ったように思います。
○横路委員/書類の中に名前が入っておったというのですから、もう一度くどいようですけれども、あなたの発言じゃなくて、そういう社長のスケジュールの中にもう書いてあったというのですから、社の中でだれかが考えて入れたのでしょうね。それをもう一度、くどいようですが確認しておきます。
○大庭証人/私が聞いた範囲内でスケジュールの中に入れたと思います。
○横路委員/それで、日本航空と相談をしたというのは、そのスケジュールをあなたが見て、そうして日本航空の方と相談をしたという意味ですか。それともスケジュールを組むときに日本航空の方と相談をしてその中に入れておったというのをあなたが後で聞いたのか。その辺はどうでしょう、日航との相談の内容は。
○大庭証人/どういう方にあいさつをしたらいいかということは、私が行って聞いてスケジュールの中に入れたように思います。
○横路委員/その日本航空の相談された方はどなたですか。
○大庭証人/それはいま存じていません。
○横路委員/忘れてしまったのかしら、お答えください。
○大庭証人/それについては、余りはっきりと存じていません。
○横路委員/その相談をした日航の方というのは、いまも日本航空におられる方ですか。
○大庭証人/それが思い出せれば大体名前はわかるわけですが……。
○横路委員/それで、どこでお会いになりました、児玉譽士失と。
○大庭証人/私のいまの記憶では、帝国ホテルの一室だったと思います。
○横路委員/そうすると、総会対策ということで、そういう関係の人ということで児玉譽士夫に会った方がいいということは、全日空の株主総会を取り仕切っているのは児玉譽士夫本人なのか、それは本人の系統なのかわかりませんが、児玉に話をしておくと全日空の株主総会はうまくいくというような意味ですね。
○大庭証人/ちょっと御質問の趣旨がわかりませんが、実は私が社長になるときに、すでに相当にもめたわけでございまして、それは御承知のとおりだと存じますが、したがって社長になる以上はこれらにごあいさつをしておく方がいいということでごあいさつをしたのだと存じています。
○横路委員/あいさつに行ったこの種の人というのは、児玉譽士夫のほかにどなたがおられますか。
○大庭証人/たくさんいたと思いますから、いま一々それをここで挙げるほど覚えていませんです。
○横路委員/そこで、会って話をしていてどんなお話になりましたか。
○大庭証人/ただごあいさつをしただけで、よく覚えていませんが、十分前後で終わったと思います。
○横路委員/そのときは、大庭さんのほかに全日空の方は、どなたかおられましたか。
○大庭証人/私一人だったと思います。
○横路委員/あなた一人というのは、それ以前にも面識があったのですか。
○大庭証人/全然、面識はありません。
○横路委員/しかし、そういう社長就任のあいさつなんですから、普通ですと、たとえば、だれか秘書室のメンバーが一緒についていくとか、役員のだれかがついていくというのが普通じゃないでしょうか。思い出さないかしら。
○大庭証人/それは、あるときにはそうであったし、あるときにはそうでない、いろいろな場合があったと思います。
○横路委員/重ねてお尋ねしますけれども、そのときはお一人だった、向こうも一人だったのですか。
○大庭証人/向こうは一人であったかどうか、わかりませんが、こちらからアポイントメントをとって、そしてルームを指定されてルームに行ったと思います。
○横路委員/しかし、面識がなくて、ロビーで会って、わかりますか。
○大庭証人/ロビーで会ったのでなしに、ルームを指定されてルームに行ったと思います。
○横路委員/社長になったからよろしくという話なんでしょうけれども、エアバスに関連するような、そういう何か飛行機の話ですね、大庭さんは飛行機のことは技術的には専門家であられるというように聞いておりますけれども、ダグラスの話だとかいうような、そういうエアバスの話というのはそのときに全然出ませんでしたか。
○大庭証人/そのときには全然そういう問題は出なかったと思います。
○横路委員/もう一つお尋ねしますが、航空界は大きな金が動くものだというように、今度の事件でわれわれみんなびっくりしているわけですけれども、大庭さんのいろいろな御発言ですと、航空界といいますか、こういう業界でリベートというのは普通なんだというような御発言も、ちょっと新聞等でもって報道されているようでありますけれども、その辺のところはどのようにお考えになっておられるか、お聞きします。
○大庭証人/ポスト誌か何かにあったように思いますが、これも質問に応じて答えたのでありますが、答えた中にそういうようなことを、まあ、それぐらいの金は動くだろう、それがリベートであるということは申してないわけだと思いますが……。
○横路委員/航空界において飛行機を買うときの皆さん方の社会の実態みたいなことについて、もうちょっとお尋ねしたいのですけれども、その言葉をリベートと言うか何と言うかは別にして、大きな金が動くというお話をなさったという、大きな金が動くというのは一体どういうことなのか。その辺のところを、ちょっと御説明いただきたいと思うのです。
○大庭証人/大きな金が動くというのは、ちょっとお答えしづらいのです。大きな金という問題になりますと、それは私にもわかりません。ただ、いわゆる代理店を持ちますと、エージェント代というものが動きますし、それから一機について向こうのPR代というものが先方としてついているわけであります。それに機種の導入について本社のPR費用というものがつくわけですから、いろいろ、その間を総合しますと相当の金額になるということを申し上げたわけでございます。
○横路委員/時間の関係で、大庭さんが最後にやめられた理由について、少しお尋ねをしたいと思うのですが、先ほど会社内の不統一というお話だったのですが、これは大庭さんとだれとの間の不統一のことを指しておられるのでしょうか。ちょっとお答えづらい問題かもしれませんけれども、ぜひ、この問題を解明するために、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
○大庭証人/これは申し上げなければいけないのですか。
○荒舩委員長/知っておられることは、どうぞひとつお話しください。
○大庭証人/それでは申し上げますが、大体、重立っては専務としての鈴木君と渡辺君で、重立ったのは二人じゃないかと思います。
○横路委員/そこで、先ほど余りお答えにならなかった点なんですが、後で、もう一度その辺のところの事情をお尋ねしたいと思いますが、先ほども、いわば金融の問題、融資の問題が、もう一つの理由だということなんですが、この融資の問題というのが大庭さんのところに話が来たのは、いつごろなんでしょうか。
○大庭証人/最初の話が来たのは、六月の終わりか七月の初めごろだったと思います。
○横路委員/最初の話というのは、金額は幾らというようなお話だったんですか。
○大庭証人/最初の話は五百億か何か、そこらでなかったかと思います。
○横路委員 ちょっと書類を確認したいのですが、よろしいでしょうか。
○荒舩委員長/いいです。
○横路委員/ここでちょっと質疑してよろしいでしょうか。
○荒舩委員長/いいです。
○横路委員/ここに全日空の大庭社長の名刺がありますが、これは御記憶ございますか。
○大庭証人/はい。
○横路委員/ここに書いてあることも間違いございませんか。
○大庭証人/それは私が書いたんではないと思います。
○横路委員/先ほど部下に聞けばよくわかるというお話だったんですが、大庭社長の上に長谷村さんという方の名刺がありますけれども、これは長谷村さんのものですか。
○大庭証人/それに特命をしたわけでございます。
○横路委員/彼に命じたわけですね。
○大庭証人/はい。
○横路委員/聞こえないかもしれないので、ちょっと大きい声で。それで、ここに印鑑証明がありますが、これも間違いございませんか。
○大庭証人/これは会社の判だと思います。
○横路委員/会社の判……。
○大庭証人/これは長谷村のであるかどうか、長谷村に聞いていただかぬと私にはわかりませんが、多分、間違いなかろうと思います。
○荒舩委員長/ちょっと、もう少し大きいのでなくちゃ速記がとれない。――もう一度。
○横路委員/ここに全日空の会社の判と、それから、あと長谷村さんの印鑑証明がありますが、これは見覚えございますか。
○大庭証人/これは全日空の判でないかと思いますが、よくはわかりません。
○横路委員/わからないですか。
○大庭証人/はい。それから、これが長谷村君の印鑑であるのかどうかも、長谷村君に聞いてみないとわかりません。
○横路委員/そうですか。ここに四十四年六月十七日付の申込書と念書というのがありますね。これは私たち調べてみても、ちょっとどうも本物かどうかというのははっきりしないのですが、御記憶ございますか。
○大庭証人/申込書というもの、こういう文書でなかったように思います。それから金額の点が、これはこんなにたくさんの金額というものは、私の記憶にはありませんです。
○横路委員/そうですか。はい結構です。
○大庭証人/これが会社の判でないかと思いますね。
○横路委員/判は会社の判ですか。
○大庭証人/これが、はい。
○横路委員/はい、わかりました。書類がたくさんありまして、確認をするのに本人のそばの方が話が早く済むものですから、こういう方法をとらせていただきました。いま、いろいろと文書をお示しをして、若干、金額の点、そのほかが違うようでありますが、あとは大体、印鑑が同じだ。これが最初の話ですね。この最初の話はだれの紹介だったんですか。
○大庭証人/それは最初の話の分ではないんでないかと思います。何かそのときに四組ぐらいあったわけでありまして、その中の、その文書が、どれに当たるのか私もよく存じませんが、前の分は金額が五百億が五千億になっているというのは、ちょっと五千億という数字は私、記憶がありません。それから、後の分の、念書のその横の分の何というのですか、長谷村に特命をして私の代行者と認めたというものは、後の鈴木という分のものでないかと思われるところがありますが、私もよくわかりませんです。
○横路委員/何かいろいろと話があったようでありますけれども、こういう話を信用するというのは、ちょっと私たちの常識では考えられないのですが、大庭さんが信用された、その根拠は一体どういうところにあるのでしょうか。
○大庭証人/私は余り信用はしていないわけです。しかし、そういう金がもしもうまく会社に入るんなら、これにこしたことはない。したがって、私は申し込みはしますけれども、一応、会社に金をお入れなさい、そうしたら会社として正当な契約をいたしましょう、リベートもいたしましょうという念書になっていたと思いますが。
○横路委員/それで、そういう話がいきなりぽんと来たって、完全に信用しないまでも、大体、会って話を聞くということもなさらないだろうと思うのですが、だれか紹介者がおったろう。きょう、新聞でも報道されておりますけれども、それの紹介者は一体だれだったのですか。
○大庭証人/紹介者の名前は、その組が先ほど申したように三組か四組、違った組が来ているわけで、どれがどれに当たるか知りませんのです。ただ、最近新聞に出ていましたような鈴木何がしという者が一つの件を持ってきて、それは三千億でなかったかと思いますが、それの紹介者は多分、大石代議士と原田代議士でなかったかと思います。
○横路委員/原田代議士と大石代議士というのは、現在、自民党に所属されている原田憲代議士と大石武一代議士のことですか。
○大庭証人/そうだったと思っています。
○横路委員/そのとき、原田さんと大石さんというのは何か役職についておられましたか。閣僚であるとか自民党内の役職だとか。
○大庭証人/大石さんはそのときどうであったか知りませんが、原田さんは恐らく、そのときの大臣だったと存じます。
○横路委員/どこの大臣をやっておったんでしょうか。
○大庭証人/運輸大臣であったと思います。
○横路委員/まあ運輸大臣というと、皆さん方の仕事の上で一番関連のある官庁であるということになりますね。それで、時間がありませんので最後にお尋ねしたいのですが、あなたがおやめになったときの株主総会――先ほど、社長になったときもいろいろごたごたをした、一年後やめざるを得なくなったときも、ごたごたしたわけですね。この株主総会をいろいろと取り仕切ったのはだれなんですか。
○大庭証人/私にはわかりませんが、株主総会を取り仕切ったと申すと、だれだったかわかりません。
○横路委員/ともかく児玉譽士夫のところに、あいさつに行ったわけでしょう。そうすると、彼にあいさつすると一体だれのところが押さえられるといいますか――児玉譽士夫本人が株主総会に出てきて騒ぐわけじゃないでしょう。そうすると、あなたがあいさつに行ったというのは、彼のところに行けば、だれかのところにその話が通ずる、その通ずるところは一体どこだったのでしょうか。
○大庭証人/私は、それほど何と申しますか、どこに通ずるとかということではなしに、こういうところへあいさつをしておくべきだということから、したわけでございまして、それがどういうように通じたかということは承知していませんです。
○横路委員/それは、つまり話というのは、いわゆる総会屋というのがいますね。その総会屋を押さえるということで、ともかくあいさつしておこう、こういうことでしょう。
○大庭証人/総会屋を押さえるということで、あいさつをしておくというんでなしに、総会のときには、いろいろ、そういう方々が出ていろいろ意見を述べられるから、それに対しては一応ごあいさつをしておきなさいということであったと思うんです。だから、したがって単にそれをコントロールするとか、どういう意味ではなしに、総会屋に全部あいさつに回ったように思いますよ。
○横路委員/問題があれば――これはやはり日本の企業の体質だと思うのですけれども、本来、何かおかしなことがあれば、たとえば警察に話をちゃんと出して処理をしてもらうというのが筋ですわね。その辺のところに――まあ時間がございませんので、これで終わりにいたしたいと思いますが、非常に率直にお話しいただいたことを、三回目の証人喚問ですけれども、そのように思います。どうも。終わります。
○荒舩委員長 横路君の発言は終了いたしました。次に三浦久君。
○三浦委員/共産党の三浦久でございます。御質問をいたしたいと思いますが、オプション契約を締結をされまして、それは、あなただけが知っているんではなくて、若狭現社長も知っているのだということが、あなたの証言で、はっきりいたしたわけでありますけれども、このオプション契約というものは、ある日突然締結するものじゃありませんね。やはり大きな買い物といいますか、一応順序をとっておくというわけですから、それまでにいろいろな下交渉というものがあると思うのですね。あなただけが電話をかけたり駆けずり回ったりして、締結にこぎつけるというようなものではないと思うのです。それで、そのオプション契約について、まあ、あなたの補助者としてでも、また、あなたの代理人としてでも、いろいろとこの下交渉に当たられた方のお名前ですね、存じ上げておったら御証言いただきたいと思います。
○大庭証人/オプション契約につきまして、私はだれにも相談をしないで私自身でやったわけで、後で若狭君がそれを知らなかったということは事実でないかと存じます。
○三浦委員/判断は証人が単独でおやりになったのかもしれませんけれども、いろいろ相手との連絡であるとか、さあ、どういう内容のオプション契約にするとか、そういうようなことについての下折衝というのは当然あったと思うのですね。そういうあなたのお手伝いをした社員の方とか、そういう方は御存じありませんか。
○大庭証人/先ほど飛行機を購入するときの順序は御説明申し上げたと存ずるのですが、オプション契約というものにつきましては、下交渉なんかは必要ないんでございます。要するに、四十七年の一月に私の方で手に入れようとしますと――実用機をです。実用機を手に入れようとしますと、その途中に本契約とか仮契約というようなものがありますが、その、また前に製造番号を押さえるというオプションというものがないと、契約のときに希望する製造番号を押さえることができないわけでございます。したがって、いろいろ各会社からは、四十七年にどういうように間に合うとか間に合わないとかいう報告は、説明に来ると同時に、いつごろから手に入るというようなことは説明の中に入っているわけでございます。
○三浦委員/わかりました。あなたは先ほどの証言で、私がやめる決心をしたのは、日航の松尾社長さんが、もうやめたらどうか、こういうことを言われたからだとおっしゃいましたね。間違いありませんか。
○大庭証人/間違いありませんです。
○三浦委員/これは大変問題だと思うのですね。あなたは社内事情でおやめになった、こういうように言われているわけですが、これは社内事情じゃないのですね。日航というのは半官半民の航空会社であります。そして、その社長さん、この人事は事実上、政府が握っている。そうすると事実上、政府が握っている日航の社長さん、その人の意向で、あなたがおやめになったということですね。いま、このトライスターの選定をめぐるさまざまな疑惑があるわけですけれども、あなた自身がやめさせられたのは、あなた自身は、はっきり気がついていらっしゃらないかもしれないけれども、外部からのさまざまな働きかけといいますか、そういうものがあったのではないか、こういうふうに憶測をされているわけですね。そうすると、あなたの証言というのは、それをまさに裏づけるような証言になっているわけなんです。あなた自身、やめるに当たって松尾社長さん以外にいろいろな働きかけがあったということはありませんでしょうか。
○大庭証人/松尾社長は日本航空の社長であり、いま御説明がありましたように、半官半民の会社だから束縛を受けていると申しますけれども、私と松尾さんとの間は、いわゆる切っても切れない友達でいるわけであります。したがって松尾さんが話された、また松尾さんにお願いしたものは、日本航空の社長としてお願いしたことでなしに、私の友達としてお願いをしたんでございます。(発言する者あり)
○荒舩委員長/ちょっとお待ちください。――本人が大丈夫だと言うので。座ったままで、どうぞ。では、三浦君の質疑を続行いたします。
○三浦委員/よろしいですか。どうぞお座りください。大変あなたの感情にさわるような御質問をして申しわけないと思うのですけれども、それがまた真相解明にとって欠くことのできない問題になっておるものですから、大変御苦労だと思いますけれども、落ちついてお答えいただきたいと思います。先ほどのあなたの御証言によりますと、御自分が全日空の社長さんをおやめになるとき、いや気が差したからやめようという気になった、こう言われましたね。あなたと一緒に働いている人、この方から私お聞きしたのですが、あなた、おやめになるときには、こんな伏魔殿みたいなところにいられるか、こう言って、おやめになったというふうに聞いております。いや気がしたという、その内容ですが、もう少し詳しくお話ししていただけませんでしょうか。
○大庭証人/そういう言葉を使ったとは思っていないのでございますが、いや気が差したということは、この前の私が社長になるときに、すでに、そのことは起きてきておったわけでございますが、いろいろの話し合いの結果、妥協点を見出して私だけが社長に残ることになったのであります。したがいまして、その一年間にできる限り社内の統一を図るために、若狭君にも来ていただきましたし、私としても、できる限りの努力はいたしたつもりでありますけれども、不徳のいたすところで、社内の融和を十分に図り得なかったということでございます。
○三浦委員/社内の統一ができなかったというふうにおっしゃっておられますが、社内のどんな不統一があったのでしょうか。もう少し具体的にお願いいたします。
○大庭証人/それではお答えいたしますが、運航技術面につきましては、私が当然リードしてきていたために、それについてのとやかくはなかったと思います。ただし、経理とか人事問題について、いろいろ私の思うとおりにならなかったわけでありまして、この点について、いろいろ不和があったという意味でございます。
○三浦委員/あなたは先ほどの証言で、常務会で、いろいろDC10の導入問題について話がなされたと、こう言われましたね。そのときには若狭現社長も出席をしていたはずだ、こう言われましたね。この常務会でDC10の話をするときに、若狭現社長はどういう御意見だったのですか。DC10の方がいいという、あなたと同じような考え方だったのか、トライスターの方がよろしい、そういうような意見をお持ちになっておったのか、お伺いしたいと思います。
○大庭証人/私の記憶の範囲内では、どなたも御意見は持っていなかったと思います。私よりも以上に意見を吐ける人がいなかったはずでございます。
○三浦委員/そうしますと、あなたがおやめになるまで、そういう状態は続いたというふうに承ってよろしいですか。
○大庭証人/そうでございます。
○三浦委員/少し話が戻りますが、あなたが社長さんに就任をされたときに、児玉譽士夫さんのところにごあいさつに行ったと、こういうお話がありましたね。当然、児玉譽士夫さんだけではなくて、ほかのいろいろな政界、官界の方々、また財界の方々にもごあいさつに行かれたと思うのですが、財界の方はちょっとおいて、政界それから官界、どういうような人々のところにそのほかごあいさつに行かれましたでしょうか。
○大庭証人/たくさん行きましたからよく覚えていませんが、また、私は、御承知のように、一面には体育協会の専務理事でもありましたわけでありまして、常時代議士の方その他の方々にもその意味でもお会いしていたわけでありまして、どなたに会ったかということになりますと十分記憶がありませんです。
○三浦委員/またあなたの余り思い出したくない問題にちょっと触れさせていただきますけれども、特別融資の問題ですね。申込書と念書、これが市中に出回りましたね。そのときに当然あなたはそれを早く回収しようというふうに努力されましたね。あなたはだれかにそのお仕事をお頼みになったのではありませんか。
○大庭証人/それは念書にも書いておいたわけでございますが、私が先ほど申したと思うのですが、私の部下の長谷村に特命で命じていたものでありまして、さよう御承知願いたいと思います。
○三浦委員/どういうところからその念書を回収されたのでしょうか。
○大庭証人/それにつきましては私、詳しくは存じていないのでございます。ただ、回収は全部一応終わったわけですが、後からまた何か別のものが起きてきたのは長引いたように報告は聞いていますが、これについても長谷村にお聞きくださる以外、私は、報告でございますから、よくわかりませんです。
○三浦委員/サンケイ商事の高橋豊という人、この人から回収をしたということはありませんか。
○大庭証人/よく名前は覚えていませんです。
○三浦委員/この念書の回収にはお金が必要だったでしょうか。よくこういう事件ですと、念書を返すからお金をよこせ、こういうことが多いわけですね。この事件には、そういうお金と交換でなければ念書を渡さない、そういうような人々がおったでしょうか。
○大庭証人/私の知っている範囲内では、回収はめんどうであったけれども、全部お金を使わずに回収したという報告になっています。
○三浦委員/ここにこの事件の特殊性があるわけですね。普通ですと、お金が欲しいからそういう念書をゆすりに使うということなんですが、この事件の場合には、全然お金を欲しがらない人たちの間を回っておった。そうすると、あなたの信用を失墜させるということだけが目的でこういう事件を仕組んだ、そういうような疑いが非常に濃く出てきているわけでありますけれども、もう時間がありませんから結論だけお話し申し上げますが、あなた自身は、いまからずっと振り返ってみて、現在、この事件があなたに対して何かすっきりしない、そういうような感じをお持ちになっていらっしゃるのじゃないでしょうか。
○大庭証人/わかりませんです。
○三浦委員/終わります。
○荒舩委員長 以上をもちまして、三浦君の発言は終了いたしました。坂井弘一君。
○坂井委員/大庭証人にお尋ねいたしますが、金融事件についてでございますが、先ほどの証言では、最初に五百億の話を持ってきたように記憶をしておる。このときにあなたの秘書の長谷村さんがあなたと一緒にこの話を持ち込んできた人とお会いになったと思いますけれども、御記憶にございますか。
○大庭証人/記憶はあります。
○坂井委員/そのときに大庭さんは融資の申込書にサインされましたですか。
○大庭証人/サインしたと思います。
○坂井委員/長谷村さんはいかがです。
○大庭証人/同時に一緒にしたと思います。
○坂井委員/印鑑証明はお渡しになりましたでしょうか。
○大庭証人/あるものは渡したし、あるものは渡さなかったのでないか。要求はなかったから。
○坂井委員/あるものはといいますと、私、最初の五百億のことについてお伺いしているわけなんですけれども、この場合にお渡しになった印鑑証明書というのはどなたの印鑑証明書でしょうか。
○大庭証人/その印鑑証明書というのは、それは先ほどの御質問では会社の印鑑証明書のように見えたのですが。
○坂井委員/このときにサインをして渡しましたこの融資申込書、これは回収されましたか。
○大庭証人/全部回収いたしました。
○坂井委員/それから次があるのですね。次の融資の申し込みの話のあったのが金額にして三千億。これは先ほど大庭証人がこの経緯についてあらましお述べいただきましたけれども、この三千億の融資につきましては、どこの銀行が融資をするというようなお話だったでしょうか。
○大庭証人/どこの銀行が融資をするということでなしに、何かアメリカの金を融資できるということであったわけで、銀行の問題は、指定する銀行に入れろというだけのことであります。
○坂井委員/外国の金を日本の銀行に入れる、その銀行の名前はそのときには出ておりませんか。
○大庭証人/銀行の名前はこちらで指定したわけであります。
○坂井委員/こちらで指定なさったということですか。それはどこでしょうか。
○大庭証人/覚えていますのは、興行銀行と三菱銀行だと思います。
○坂井委員/では、そのときに融資の申込依頼書に大庭さんがサインをなさって、同時に印鑑は、これは実印でございましょうか。
○大庭証人/それは実印であったか、何であったかよく覚えていませんから、ひとつ長谷村にお聞き願いたいと存じます。
○坂井委員/融資申込依頼書とは別に、金額あるいは期間、手数料、金利だけを書いたもう一枚の用紙、これも渡されたと思いますけれども、御記憶にございますか。
○大庭証人/それがいわゆる念書だと存じるわけですが、それは向こうの希望に従って、二枚とか三枚とかにサインしたように存じています。
○坂井委員/そういたしますと、いままさに問題になっております。その後回収に大変御苦労されたようでございますけれども、この後の分の三千億の融資。この分につきまして完全に回収がついたかどうかという点だろうと思いますが、コピーをされた分もあるというようなことについて、大庭さんはよく御存じと思いますけれども、いかがでございますか。
○大庭証人/先ほども御回答申し上げたと存じますが、サインしたもの、本物は全部回収が終わったという報告でございました。ところが、何カ月かおくれてコピーが出回ったようでございます。それも一応遅まきながら全部回収したという報告になっています。
○坂井委員/ちょっと前後しますけれども、最初の五百億、これは回収されたとおっしゃいましたが、これもコピーされまして、五千億という金額に書きかえられて回っておるというようなことについて、大庭さんは御存じございませんか。
○大庭証人/存じません。先ほどそれを見せられたんだと存じますが、それは私は存じません。
○坂井委員/じゃ、後の分の三千億でございますけれども、これが先ほどの鈴木明良、御承知のとおりでございますが、金融会社の運動資金のことに関連しましてこれが逮捕される。その際に警察に押収された物件の中に、大庭さんがサインをし、かつ全日空の社印を押された、ちなみにこれを実印としましょう、そういうものが警察に押収された、それがやがて全日空に返される。そういう経緯について、大庭さんは御存じございませんか。
○大庭証人/全日空に返ってきたという覚えは覚えていませんけれども、それが何らかの方法でいろいろ出回ったのでないかということは存じています。
○坂井委員/それじゃ、大庭さんは、山田正幸氏を御存じでしょうか。よく御存じと思いますけれども、御関係につきまして、ひとつ簡単におっしゃっていただきたい。
○大庭証人/別に関係というものはありませんが、日本航空にいるときに、あれは松尾さんの秘書のような仕事をしていたわけでありまして、したがってよく存じています。
○坂井委員/この山田正幸氏と小佐野氏が親しいということについても御存じだと思いますが、いかがでしょうか。
○大庭証人/それは彼が選挙に出ているためによく存じています。
○坂井委員/山田正幸氏は、あなたが書かれたこの三千億、サインされました、実印を押されました三千億の念書、これの回収に動かれましたか。
○大庭証人/山田君は全然知らなかったはずでございます。松尾さんも知らなかった。社員で知っているのは長谷村君だけであったと思うのです。
○坂井委員/では、大庭さんは、山田正幸さんは念書の回収には一切動いていない、こう思っていらっしゃるということでしょうか。
○大庭証人/私はそう思っています。
○坂井委員/そうしますと、この際、先ほど申されました、お答えになりましたが、直接やってきたのが鈴木でありまして、紹介状は、当時佐藤内閣の運輸大臣でありました原田憲氏、それから衆議院決算委員長でありました大石武一氏、後の環境庁長官であります。直接持ってきた鈴木明良。この後にこの紹介状を持ってきた二人。その背後といいましょうか、だれかがこのような紹介状をつくって、そしてあなたのもとに鈴木氏が届けた。もともとこの融資の話をあなたに持ち込む、その一番最初の取っかかりになった人、計画をした人、それは、大庭さん御自身、だれだと御判断されておりますか。
○大庭証人/存じませんです。
○坂井委員/鈴木明良氏と田中角榮氏の関係は、あなたは御存じでしょうか。
○大庭証人/存じませんです。
○坂井委員/昭和二十七年に鈴木明良氏が田中土建の後を継いだというようなことについても、御存じございませんか。
○大庭証人/存じませんです。
○坂井委員/わかりました。それでは、オプション契約の際、全日空の社長室でサインをした。この際に、三井物産も来ておったかと思う。ダグラス社は、来られたのはどなたですか。
○大庭証人/名前も、どういう格式であったかもよく覚えていませんが、恐らくこちらのダグラス社の支店の人間でなかったかと思うのでございます。
○坂井委員/このオプション契約の中にはターゲットデー、つまり正式契約の日が入っておりましたか。
○大庭証人/多分、あれは何カ月か先の予約をするわけですから、日にちは入っていたように思います。それがいつのターゲットデーになっていたかということは余りはっきり存じていませんが……。
○坂井委員/いつの日にちかわからないけれども、ターゲットデーは入っておった。そういたしますと、その正式契約の日が参りますと、これは自動的にダグラス社から全日空に問い合わせがあるはずだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○大庭証人/普通であればそうだと思いますが、若狭君の証言にありましたように、三井物産の方を呼んでお聞きしたようでございますので、そこでもうすべて一応は切れてしまったのでないかと思われます。
○坂井委員/ちょっと御記憶を呼び戻していただきたいと思いますけれども、あなたが全日空をおやめになる直前に、机の引き出しをあけまして、そしてダグラス社と結びましたこのオプション契約をお出しになってある人にお見せになった、そういう御記憶はございませんか。
○大庭証人/私はその記憶は全然ないのでございます。ただ、先ほど御説明申し上げたように、引き継ぎのときに、ダグラスにオプションをしているから後始末を頼むということは申したように存ずるわけでございます。それから、あとのことについては、全部秘密というものなしに、机の中に私のものは全部ファイルしてあるから見てくれればわかる、もしも必要であれば電話で聞き合わせてくればわかるということでもう退席して、その後全日空には行っていないわけですから、ひとつ御了承願いたいと思います。
○坂井委員/もう一点だけお聞きしますが、丸紅の関係者、担当者が新機種の件で盛んに全日空にやってきた、あなたに会いたいということでしばしばやってきておるというような形跡がございますけれども、そのことについては、あなたはよく御存じでしょうか。あるいは特命でもってだれかに担当させたか。担当させたならばその人の名前、それだけお聞きしておきたいと思います。
○大庭証人/丸紅にかかわらず、そのときの三井ですか、日商岩井ですか、それらは常時――常時と言っては言葉つきが違いますが、来ていて、私にいろいろな報告をすると同時に、ときどき本社の方から技術者並びに重役が来て、いろいろ私に説明をしに来ましたことは承知しています。
○坂井委員/終わります。
○荒舩委員長/坂井君の発言は終了いたしました。次に河村勝君。
○河村委員/初めに、先ほど証言がありましたけれども、あなたがおやめになるときの経過を念のために確認をさせていただきたいと思います。あなたのさっきの証言では、名鉄の社長から、松尾当時の日航社長に話があって、それが五月の下旬ですかにあって、それがその次に取締役会に諮られた、こういうふうに聞きましたが、大体そういうことでよろしいのですか。
○大庭証人/順序を申しますと、大体総会のための取締役会は五月の十日前後だと存ずるわけで、そこで決算報告と同時に、次の役員人事というものも大体決まったわけでございます。ところが、十四、五日だったと思いますが、先ほどの名鉄の社長の方から松尾さんの方へ書簡が来たわけで、書簡の中に、大庭を会長にして若狭を社長にしなさいというような書簡だったと思っています。
○河村委員/そうしますと、取締役会では一回あなたの留任が決まっておった、それが後から覆された、そういうことになるわけですか。
○大庭証人/恐らく取締役会に名鉄の社長は見えてなかったと思います。欠席していたのだと思います。
○河村委員/欠席されていたかどうかは知りませんが、その取締役会では、あなたの社長留任が決まっておったわけですか。
○大庭証人/そう思います。
○河村委員/そうすると、名鉄の社長はどういう資格でそういう書簡を書かれたのか。だれで、全日空との関係はどういう関係でございましたか。
○大庭証人/大株主でございまして、松尾の方にそういう書簡が行ったのだと思います。
○河村委員/松尾さんは、そのときは全日空では役員をやっていますか。
○大庭証人/取締でございます。
○河村委員/それでは、オプション契約のことについて、少し私の疑問の点を伺いたいと思います。先ほどの証言で、オプションについてダグラス社に対してあなたのサインをしただけだ、したがって書類の取り交わしはないというふうに聞いたのですが、そう理解してよろしゅうございますか。
○大庭証人/その点ははっきり私、いま覚えていないのでございます。取り交わすということでないのでありまして、サインをしたことは覚えているわけですが、その写しが私の手元に残っていたのか残っていないのかはわからないのでございます。
○河村委員/普通の常識でありますと、オプション――仮発注というのが正確かどうかは知りませんけれども、一応契約に準ずるものです。ですから、その場合には書面を、単なる写しではなくて書面を取り交わすということでなければ、こちら側が相手方に対する権利を、ダグラス社に対する権利を証明するものは何もないわけですね。そういうものであるというのはちょっと不思議なんですが、ただサインだけすればよろしいものですか、オプション契約というのは。
○大庭証人/サインと申しますけれども、先ほどから申しましたとおりに、DC10を四十七年の初めに入れるとしますと、その機材を製作にかかる、その製作は番号になっているわけですが、その番号でないとそれまでに合わない、その番号をほかから要求されると、あなたの方では一月に手に入りませんよというのがその製造番号の押さえ方なんでございます。だから、したがって、製造番号を、それではいつまでオプションを待てば行くかということで話し合いは随時なされてきておったわけだと思います。したがって、最終的に四十七年の一月に手に入る飛行機の製造番号を押さえるのは、四十五年の三月であったと思うのです。したがいまして、そこで押さえてもらいたいということで、それについて私がサインをした。そのサインの意味は、先ほども申しましたとおりに、代理人が来ているからその書類を本国に、大庭がこういう製造番号を押さえたんだということを通知するための書類だったと思うのです。
○河村委員/内容はわかっているのですけれども、そうすると、オプションというのは、本来そうした書面の取り交わしなどは必要がない、そういうものだというふうに理解してよろしいのですか。
○大庭証人/私のオプションというものを知っている範囲内では、そうだと存じます。
○河村委員/三井物産との関係をちょっと伺いたいのですが、三井物産の人が通訳として立ち会ったと思う、そういうさっきの証言でありましたが、通常オプションの場合には、商社が、代理店が中に入って、代理店がメーカーとの間にやるのが普通だというふうに私どもは聞いておりましたが、全然三井物産はこの場合には、通訳としては入っていても、正式には間には入っていなかったわけですか。
○大庭証人/入っていなかったと思います。私とダグラスとの間に取り交わしたのでありまして、通訳として立ち会っておったと思います。
○河村委員/このときのオプションで、後でこれがロッキードに変わってしまったために、三井物産が全日空用に押さえてあった飛行機を他の航空会社、たとえばトルコ航空などに転売のあっせんをやっているわけですね。そうしますと、三井物産もやはり責任を負っていたように思われますが、その点はどう理解をすればよろしいですか。
○大庭証人/私は、オプションをして、やめるときに、先ほど御説明申し上げたとおりに、引き継ぎ事項として、三井物産とよく善後策を講じてくれと言って引き継いでいるわけです。その後のことにつきましてはよく存じよりがありませんです。
○河村委員/このオプションをあなたがなさって、社内に対しては話さなかったとおっしゃいましたが、話さなかった理由というのは特別に何かあるのですか。
○大庭証人/いや、話したか話さないかはわからないのでありまして、だからしたがって、話は聞かないとおっしゃるから話さなかったんでないかと思っているわけです。
○河村委員/それでは、融資の問題についてお尋ねをいたします。あなたが念書を入れた対象となっているのは、さっきお話のあった鈴木何がしから話の持ち込まれた三千億、これについてでございますか。
○大庭証人/ちょっといまの意味が……。
○河村委員/念書をお入れになったその相手方ですね、これは鈴木某、鈴木何がしであって、その金額は三千億というものであったわけですか。
○大庭証人/鈴木何がしという者に対してはそうでございました。
○河村委員/そうしますと、鈴木何がしだけではなくて、ほかの者に対してもやはり念書を入れたものがあるわけですか。
○大庭証人/先ほど申し上げたとおりに、三組かそこらあったんじゃないかと思います。
○河村委員/私どもが聞いているところでは、このあなたの念書が相当広範囲にばらまかれて、その中には児玉譽士夫氏の手に渡っていたものもあるということが伝えられておりますが、そういう事実がございますか。
○大庭証人/私は聞いていませんです。
○河村委員/一つだけ疑問の点をお伺いいたしますが、先ほども話がありましたが、あなたが自分で機種選定委員会をおつくりになったのが四十五年の一月ですね。そうして調査団をアメリカに派遣したのが二月、それで三月にはオプションをなさっているわけですね。それで、先ほど二年くらいなければ新しい機種の採用ができないというお話でありましたが、今度のロッキードの決まり方を見ますと、四十七年の十月三十日に機種選定を決定して、それで四十九年の四月に就航しておりますね。そうすると大体一年半でよろしい。そうしますと、そう急がなくても、夏か秋ごろでも十分間に合う、そういう計算になるようでありますが、その点はどうでございますか。
○大庭証人/それは会社によって幾らかは違うわけです。それからもう一つ、これは御存じおき願いたいのですが、ダグラスであろうが、ロッキードであろうが、ボーイングであろうが、製造番号というものは、会社が特別に押さえている番号があるわけです。だから、したがって、特殊事情によっては、その番号を出し得ることは可能だと思うのです。私は、先ほど申し上げたのは一般的に申し上げたわけでございますから、さよう……。
○荒舩委員長/次に、永末英一君。
○永末委員/三井物産にダグラスの代理店になってくれというのは、大庭証人が行かれてお頼みになりましたね。
○大庭証人/私が行って頼んだのではなしに、三井物産の方からそういう話が来たわけでございます。
○永末委員/この鈴木何がし等が持ってきました融資並びに念書を書かれた件に関して、四十四年の十月ごろあなたの方の鈴木専務、渡辺専務にもこの間の問題を鈴木何がしが持っていったという話がありますが、あなたは御存じですか。
○大庭証人/実は先ほど御説明申し上げたように、大体三件ぐらいあったのを全部回収が終わったという報告で一安心したわけでございますが、十月ごろになって、いまのような話が突然持ち上がってきたわけでありまして、それについては後始末は全部私の方でやりました。
○永末委員/同じく四十四年十一月ごろ一つの念書について、これは三井物産の水上社長が立ち会わなければ渡さない、こう言われて、そういう場面ができてその念書が返却された、こう伝えられておりますが、事実でしょうか。
○大庭証人/コピーが流れて、一部のコピーの中にはそういうようなのがあったことは承知しています。
○永末委員/あなたと三井物産との間を引き裂く陰謀がこの件に絡んで行われたと見ますが、あなたはいまどう判断されますか。
○大庭証人/わかりませんです。なかったと思います。
○永末委員/終わります。
○荒舩委員長 これにて河村君、永末君の発言は終了いたしました。以上をもちまして、大庭証人に対する尋問は一応終了いたしました。大庭証人には御苦労さまでございました。お引き取り願って結構でございますが、再尋問の場合があれば連絡いたしたいと存じます。自宅で御静養願うように願います。証人等の関係もありますので、午後一時より再開いたします。以上で休憩いたします。午後零時三十八分休憩

これより以降は、【3.1日/ロッキード事件証人喚問劇その2、鬼俊良】に記す





(私論.私見)