隅の詰め碁例題/隅の曲がり四の筋

 更新日/2023(平成31.5.1栄和改元/栄和5).1.10日

 (囲碁吉のショートメッセージ)
 ここで、「隅の詰め碁例題/隅の曲がり四の筋」を確認しておく。「万年コウ」と義兄弟の関係にあり、それぞれを正確に理解しておく必要がある。「詰碁」その他参照。

 2005.6.4日 2013.5.22日再編集 囲碁吉拝


【隅の詰め碁例題/曲がり四の筋】
解説図
 上図左が、「隅のマガリ四」(すみのまがりし)の代表的なもの。一見するとセキのように見えるが、白からaに打ち4目にして捨てる手段がある。これが「隅のマガリ四」の名の由来である。白aに対して黒がbに抜くと上図右のようになる。次にaに置かれるとbに放り込まれてコウになる。これを踏まえて、最後の最後に挑まれると黒死が免れがたい。黒からは仕掛けられない。そこで死と決めている。「隅以外のマガリ四」は生きなので「隅のマガリ四」はこれと区別される。

 成文化されたルール上においては、日本棋院囲碁規約(旧規約)では個別的に死に形であると定められていたのに対し、1989年制定の日本囲碁規約によって「隅のマガリ四」が死であることの合理的根拠づけが与えられ次のように規定された。
 日本棋院規約(平成元年4月)第七条-2
 第九条の「対局の停止」後での死活確認の際における同一の劫での取り返しは行うことができない。ただし劫を取られた方が取り返す劫のそれぞれにつき着手放棄を行った後は新たにその劫を取ることができる。
 <解説> 劫がらみの石の死活規定である。同一の劫での取り返しはできない。対局の停止とともに劫の取り返しは停止となり、たとえ「両劫ゼキ」など無限の劫立てがあっても、それを利用して劫を取り返すことはできない。
決定打
 黒4bホウリコみ、白5c抜き。これでコウとなる。しかしこの形は、白からはいつでもコウを仕掛けることができるが、黒からはそれを解消する手段がない。白はまず黒からのコウダテを全てつぶした上でコウを仕掛ければ、黒を取ることができる。

 日本ルールでは、実戦的には死ぬとは限らなくても(「盤面の他の部分に両コウゼキがある」など)、白に一方的にコウを仕掛ける権利があることを重視して、この部分を単独で死にと扱う。なお1989年制定の日本囲碁規約(日本棋院) の 「第七条-2」および「死活確認例」に、「隅のマガリ四目」の形が掲載されている。そこで、死活判定において「コウの取り返しはないものとみなして」お互いが石を置いたとして生きられるかで判断されると定めており、死としている。即ち、白はここに石を追加で打って自分の地を損する必要はない。

 中国ルールでは自分の地に手を入れても損はないため、実戦的に白側が黒石をアゲハマとして打ち上げて解決することが可能である。中国ルールでも「隅の曲がり四目はそのまま死」にしている。よって「隅の曲がり四」の取りかけは省略しても良い。但し、日本ルールでも、隅のマガリ四目を取り囲んだ外部の石に眼がない場合は、コウを実際に仕掛けたりすることによって解決することになる。細かいルールと理論については日本囲碁規約での確認を要する。


【隅の詰め碁例題/曲がり四の筋】
 横3型(隅の三本)  愚形3型(隅の愚形3L)
 「最終図/隅の三本又は隅の愚形3L」へ導くのが良い、と云うことになる。

【隅の詰め碁例題/曲がり四の筋】
曲がり四の例
 これらの形も、最終的にダメが詰まると隅のマガリ四目の形にたどり着くため、単独で死である。
セキの例
 時に誤解されるが、上図のような形は手を詰めていってもコウの形にはならないため、隅のマガリ四目ではない。このままセキとみなされる。

【隅の詰め碁例題/曲がり四の筋】
課題元図

 黒12までが定石。その後、黒が14、16と打ったのが本図。白が手を抜いたところ。外側(黒)先如何。
 →内側(白)「隅の曲がり4」死。

正解初手

 1/キリ(正解初手)。
その後図1
 2/アタリ。
その後図2
 3/二の1置き。
その後図3
 4/ヌキ。
その後図4
 5/外からダメ詰め。3で5にアタリをかけるのは3に打たれて生きる。
その後図5
 6/サガリ。7/一の2ハネ。8/二の2ブツカリ。9/2子アタリ。
その後図6
 10/仮に2子アタリのところのツギ。11/一の1ツギ。これにて「隅の曲がり4」の形ができあがる。
その後図7
 全て打ち終わって仮に黒/一の3と打ち四目とする。白/四目抜き。
その後図8
 黒/抜き後の一の2に置く。白/一の1。黒二の1で白の一の1石取り。この時点で、コウ材がないのが前提になっており白死が証明される。

【隅の生き詰め碁例題/曲り四の筋】
課題元図
 外側(黒)先如何
 内側(白)「隅の曲がり4目」死。
解説
 内側(白)はダメヅマリでaのオシツブシが打てずbトリ。
 外側(黒)/トリカエシ。これで「隅の曲がり4」で白の死形。

【隅の生き詰め碁例題/曲り四の筋】
 「白石勇一の囲碁日記」の「隅の曲がり四目(ルール解説)」参照。
 (以下は、私なりの理解の仕方による整理である)
 「隅の曲がり四目」について
 「隅の曲がり四」は正式には「隅の曲がり四目」と規定されている。「目」と言い「子」と言わないのは取り跡の形を指しているものと思われる。石で見れば「子」であるが取り跡からすれば「目」であり、「目」を中心に考えるからであろう。中手の場合も同様である。
 1図(テーマ図園1)
 例題図はダメ詰めも終わった状態で、左下の黒はどうなるのか?が演題である。現在の日本棋院ルールでは「隅の曲がり四目はそのまま死」と定め黒死としている。よって、終局すると白が黒を無条件で取り上げることになる。
 2図
 この定めがないと、黒はセキを主張できる余地が生まれる。そこで、それを否定する論拠が必要になる。以下がその論拠である。仮に白から黒を取りに行かなければならないとすると白は1、2とダメを詰める。黒はまな板の鯉状態で白1や2に対してパスする。次に白3と黒を当たりにする。
 3図
 黒は4と取る。白5は中手にする為に二の1置き。黒は6とコウに持ち込む。
 4図
 白は7とコウを取る。黒は8にコウ立てを打つ。白9はAと抜く。黒10はBとコウを取り返す。今度は白がコウ立てを考えなければならないことになる。
 5図
 ここで、白1、2と黒の外ダメを詰めた所まで戻る。白は、黒が全く身動きできない状態(黒が隅の白3子を取りに行こうとすると3目中手で死ぬので黒からは手段がない)なので白Aと取りに行く必要はない。終局までこの状態にするのが賢い。
 6図
 終局後の局面で、白が黒に攻め取りを要求されると、予想されるコウに備えて白1~5などと打って、予め黒からのコウ立てを消しておく必要が生じる。その間、黒は常にパスする。この「相手パスの中でのダメ詰め」を邪道(外道、アウトロー)と認めるべきだろう。白の準備が完了した後、白6とアタリを仕掛ける。
 7図
 黒7/白4子抜き。白8/二の1置き。黒9はコウにする。
 8図
 白は10とコウを取る。黒はコウ立てを打たなければならないが、予め白に対策されており有効なコウ立て箇所が1つもない。そこで黒はパスする。白は11で黒石集団を抜くことになる。手間隙は掛かるが、黒勝てず白が勝つ仕掛けになっていることが分かる。であるなら、端(から)から「隅の曲がり四が死」であるとした方が勝負と棋譜が美しいのではないのか。これが「隅の曲がり四が死」とする論拠である。
 9図(テーマ図その2)
 中央にセキの形がある場合は如何。損なだけでAやBのコウ立て着手が禁止されている訳ではないことを確認しておく。
 10図(想定図1-1)
 「隅の曲がり四目はそのまま死」の定めがない場合の、白が黒からのコウ立てを潰してから隅の黒を取りに行った場合の想定図である。実戦では有り得ないかもしれない。この局面では、黒は、大損ではあるがセキのところをコウ立てに使うことができる。
 白は黒のコウ立てを受けざるを得ず白1の抜き。黒は黒2とコウを取り返す。白3はコウ立て。黒はこれを利かず黒4でコウのところを取り上げ黒生きに変じる。白5キリで振り代わり。セキがあると、こういう風にややこしいことになる。但し、実戦では、白から仕掛けず黒からは仕掛けられないので発生しない演習であろう。
 白に対抗して、黒も予め白からのコウ立てを潰しておくとどうなるのか。両者のコウ立ての潰し合いが終わって後、白が隅を取りに行くことになる。
 13図(想定図2-2)
 白が先に取るコウであるが、黒が中央の自殺手をコウ立てにして取り返すと白から1つもコウ立てがないので隅の黒がただ生きすることになる。しかし、これは机上の演習である。あくまで、黒からは仕掛けられない形になっているのがミソである。これらを総合的にどう判定するべきか。現在、「隅の曲がり四は死」と定めていると云う次第である。





(私論.私見)