隅の詰め碁例題/万年コウ

 更新日/2024(平成31.5.1栄和改元/栄和6).2.5日

 (囲碁吉のショートメッセージ) 
 ここで、「隅の詰め碁例題/万年コウ」を確認しておく。「隅の曲がり四」と義兄弟の関係にあり、それぞれを正確に理解しておく必要がある。「一合マスのあれこれ:万年コウ」、「【囲碁の万年コウとは】なぜセキが関係するのか?仕組みや形を解説」その他を参照する。私の理解が悪いのでまだまだ何度も書き換えが必要なようである。

 2014.10.28日 囲碁吉拝


 【万年コウの発生過程】
問題図
 白先如何。本図のように「三線四本ハイ&下がり付きの8目地囲い」が万年コウを生む形である。

正解初手
 白1(正解初手)/二の2抱きハサミツケ。
 これより万年コウドラマが始まる。
その後図1
 黒2/渡り止めハネ。白3/ノビ。
その後図2
 黒4/ハネ。白6/押え当り。
その後図3
 黒6/下がり。白7/黒1子取り。黒8/ツギ。これで万年コウができ上がる。目下のところセキ状態である。

【万年コウできあがり図】
課題元図
 変形一合マスの詰め碁に「万年コウ」が出てくる。これを確認しておく。上図の形を万年コウという。黒も白も自分から仕掛けて取りにいくのは無理(厄介)で、お互いが相手が取りに来るのを待つ両者見合いの形になっている。道中で一手をかけて手入れしにくい面があり、最終的には白がどこかでコウを接いでセキにせざるを得ないという仕掛けになっている。そういう訳で、双方がパスして対局の停止となるまで、そのままの形ならば、最後にセキにする権利のある方がコウを取ってセキにする(継ぐ必要はない)というのが相場のコウになっている 

 なお、平成の新規約では、セキにする権利のない方がコウを取った形でもセキという扱いとなるが、それだとセキにする権利のある方がみすみすアゲハマ分、1目損することになるので、必ずセキにする権利のあるほうがコウを取る。  

 これは相場の話であり、セキで終局してしまっては負けが確定してしまう時には不利を承知でコウを仕掛けにいく場合もある。この辺りが接触している外、中、内の石群の中の石群が無条件死として処理される「隅の曲がり四」と異なる。以下、この「万年コウ」の仕組みを確認する

1図
2図
3図
黒の取り掛け事情  黒がセキに満足せず白を取りに行こうとして黒1とダメを詰めた時に、3図の④のコウを白がツゲば五目中で黒死となる。しかし黒が1とダメ詰めしてきた場合の話である。黒が1とダメ詰めしてこなければセキ模様になっている。
白の取り掛け事情  白がセキに満足せず黒を取りにいこうとすると、ダメ空きのところを詰めていかねばならない。前図の状態から白が頑張ってダメを詰めて黒を取りにいったとする。仮に1、2、3、4、5までなったとする。次に黒は図の6と打つことができ三手連打できていることになる。白から見て相手に三手連打させても黒を取るメリットがあるようには思われない。即ち「万年コウ」を取り掛けに行くのは容易でないと云うことになる。

万年コウロード  「万年コウ」を黒側から見た場合
 白がdにつなぐとセキなので両者共に生きている。つまり黒か
ら何もしなくてよい状態になっている。黒は、セキ生きよりも利益がある場合のみ、その必要があるかどうかを自問しつつ白を取りに行くことになる。実際に内側の白を取りに行くには、先に内側の白とのダメを詰めると白にdと接がれてと五目中手で黒死になるので、まずはdとコウを取り返す必要がある。しかし黒はこのコウを接げない。ツグと隅の白3子を取っても中手の自殺手になっているので黒からツグ手段がない。そこで普通は暫くコウの応酬になる。黒は、白にdと継がれるとセキにされるので白にdツギの余裕を与えないコウ立てをし続ける必要がある。その間、損コウを重ねる可能性がある。黒がコウに勝っていよいよcに打ってダメ詰めすると本コウになる。cは「清水の舞台からの飛び下り手」と云えよう。しかしこうなると白も必死であるから厳しいコウ争いになる。黒は二段構えのコウに勝って、最終的に白のコウ立てを無視してコウ勝ちする必要がある。結果的に黒はこの間のコウ争いで相当の代償を払わされている。この難儀なやりとりを評して「万年コウ」と命名されているように思われるる。思えば、元々がセキなのに、生死が問われる本コウ局面に黒側から誘導して行く必要があっただろうか。黒の方からは何もする必要がなく白がセキにするか取り掛けにくるか見守るのが賢明だったのではなかろうか、と云うことになる。これが黒から見た万年コウである。
 「万年コウ」を白側から見た場合
 白が、dのところへ接ぐとセキなので、セキにしたければ接げばよいが一手をかけてセキにする必要があるだろうかと問い、黒からの仕掛けが相当難儀な事を察知してツギを保留し他の好点に着手し続け、黒からの仕掛けを待てば良い。白の事情としては、いつでもセキ生きにできる「白のセキ権利付き万年コウ」なので本コウに持っていく必要はない。黒がコウを取り返した時にのみ反応すれば能く、セキ生きよりも利益がある場合のみ黒を取りに行けば良い。敢えて白から取りに行くとしたら、黒の仕掛け同様に白もかなり難儀なことになっている。まずはa、bと外ダメの数だけダメ詰めせねばならない。この間、黒は他所の好点を打つことができるのでかなりな代償となる。次にコウに勝った状態でcにダメ詰めして本コウに持ち込み、このコウにも勝たねばならない。白からもa、b、cのダメ詰めに加えてコウに勝たねばならないと云う「万年かかる」道中になっている。思えば、いつでもセキにできるのに、生死が問われる本コウ局面に白側から誘導して行く必要があっただろうか。白は何もしないのが賢こかったのではなかろうか。これが白から見た万年コウであるので、そのセキを放棄してまで黒の取り掛けに向かう必要があるのかと云うことになる。
 「万年コウ」は、互いの接点の最後のダメ詰めになるcに打つことで本コウになる。本コウに持ち込んだ方は、持ち込んだ責任で、損コウ覚悟のコウ立てをしてでもコウに勝たねばならない宿命にある。しかしながら取り掛けに向かった方が不利な本コウになっている。本コウになる前も無理を重ねており、本コウに持ち込んでからも無理を強いられる。仕かけた方が自ら招いた禍(わざわい)のコウ立てを続けざるを得ない。仕かけた方が相手のコウ立てに応じればエンドレスのコウになる。最終的に仕掛けた方がコウ勝ちに向かうことになるが、外ダメ詰め、コウ争い、cの詰め、コウ争い、相手石の取り上げまでに得策ではない相当の手数を要している。この苦労を評して「コウを解消するまで万年ほどかかる万年ロードになっている」という意味で「万年コウ」と命名されている。両者とも、セキの形のものを敢えてわざわざコウに持ち込み、コウ勝ちする必要がないのに膨大な手間暇掛けて「万年コウ」解消に向かう功罪が問われることになる。
 万年コウは昭和3年の大手合で、瀬越憲作(白)七段と高橋重行三段(共に当時)との二子局に生じている。

【後手万年コウ/ダメ空き最小事例】
課題元図
 黒先白死。
 この形は黒先コウ。但し、万年コウと呼ばれる特殊な形になる。

正解初手
 1/二の2抱きハサミツケ(正解初手)。
その後図
 2/。3/。4/。5/。ここまでは必然。次に6/。この手が大事な手で、1路右だと本コウになってしまう。
セキの道
 7/ツギはセキとなる。
コウの道
 7(1)/ダメ詰め。8/手抜き。9(2)/ダメ詰め。10/手抜き。11(3)/ダメ詰め。12(4)/コウ取り。これで本コウになる。黒がダメをつめている間、白は他の好点を打ち、しかもコウは白の取り番なので実戦ではセキにする場合が多い。

【後手万年コウ/ダメ空き多い事例】
課題元図
 黒先如何。

正解初手
 1/二の2抱きハサミツケ(正解初手)。
その後図
 2/。3/。4/。5/。6/。これで黒の先手ゼキ。実戦では白は万年コウの形にすることもよくある。

【万年コウ検証】
 「Mr.Kの悩める囲碁日記より」参照。
 このような局面で、黒番。黒はAまたはBと打って白3子を取りたいが、   
 うっかりというか、あえてというか、黒1と取りにいくと、白2とコウを取りかえされて本コウとなってかえって死ぬ可能性ができてくる。
 白がAまたはBと打って黒を全部取りにいくと、

 黒にコウを取り返されて本コウになってしまう。

 そこで白がコウを継いで解消し、セキになるのが相場となる。これが万年コウである。終局面は白が取り返した後の形となる(セキなので取り返した後、白△に継いでも継がなくても勝負には関係ない)。
 黒も1目得になるのでコウを取った後ツギで終局したいところだが、欲張ってツグと、白にAと打たれ4目ナカデにされてしまう。したがってコウを継ぐ権利は白に一方的にある。
 最初の図に似ているが、ダメが空いていると、今度は黒からAやBの点に打つことができる。
 白はオシツブシで取られる。




(私論.私見)