二月二十六日
午前毛零時に、 週番司令安藤大尉の命令で非常呼集をしてから、 歩兵第一聯隊の栗原中尉の下に出発時刻の件に付打合せに行きまして、 出発時刻を歩兵第一聯隊の裏門に午前四時三十分に到着する様に 聯隊を出発する事を打合せて帰り、諸準備を致し、
午前四時二十五分頃歩兵第三聯隊を出発して歩一の裏門に行きました。 栗原中尉は表門から出て来まして、 麻布三河台町赤坂区氷川町福吉町電車通り迄栗原中尉の案内で行き、 電車線路に沿って溜池虎ノ門を経て警視庁に行きました。 ・ 二月二十六日午前五時に、 第七中隊野中大尉と共に警視庁表玄関に行き、 野中大尉は決起の趣意書を受付の者に説明して渡し、 現在、警視庁の最高級の幹部の方にお話したい事があるから 呼んで来て呉れと受付の者に言ふて配備を廻らしましたから、 私 ( 常盤少尉 ) はその幹部の方の出て来るのを待つて居りました。 暫くしてから特別警備隊の小隊長が出て来まして其趣意書を見まして、 私個人としては大変結構なことでありますと述べましたから、 私 ( 常盤少尉 ) は全部に判って貰った方が良いと思ひましたから、 全部一緒に中隊長野中大尉の下にお出でになる様に申しましたる処が、 特別警備隊小隊長横沢某は私一人の方がよいだらうと言ひましたから、 裏門に居る中隊長の下に案内しますと、 中隊長は趣意書の説明をして、 他の目的が達成する迄一時庁舎を借用したいと述べ、 若しや衝突するやうなことがあつてはならぬから、 庁舎内の者を全部纏めて措いて貰ひ度いと申しますと 二、三問答をしましたが、
中隊長より今は議論する時期ではないから兎に角借用さして貰い度いと述べました。 此間、中隊長野中大尉は衝突することを心配して再三衝突を避け様と言ふて居りました。 すると、特別警備隊横沢某は、其要求部所を取るからと言ひまして庁内に行きましたが、 中隊長野中大尉は 私 ( 常盤少尉 ) に 横沢某を監視する様にと言はれましたから 後をついて行きますと、 警備隊の中隊長だと云ふ人に逢ひ、 其方を案内して中隊長野中大尉の処に行きました。 又、中隊長は前同様の事を言って居り、 逐次警戒線を裏庭の線迄つめてその儘夜を明しました。 |