現代科学が明らかにする遺伝子研究考

 更新日/2019(平成31).2.20日

【現代科学が明らかにする進化論研究考】

【現代科学が明らかにする遺伝子研究考】

 近年の科学の発展によって、生物の生命が細胞核の中にあるDNA(デオキシリボ酸)と呼ばれる遺伝子によって世代伝授されていることが判明することとなった。ウィルスなどではRNA(リボ核酸)の場合もある。

 1953年、ジェームスD.ワトソンとフランシス・クリック博士との共同研究で、遺伝子DNAの二重らせん構造モデル「ワトソン・クリック理論」を発表、遺伝物質の複製の仕組を解明し、生物学の歴史を変えた。この業績により1962年にノーベル医学・生理学賞を受賞している。

 今日では、電子顕微鏡によってDNAが二本の鎖からなる長いはしごの横棒のような「二重らせん」構造になっていることも明らかにされている。こうして、地球上の全ての生き物がDNAを基にして生きているということが分かってきた。

 近代進化学の父チャールズ・ダーウィンは、進化を「変更を伴う継承」と表現していたが、この言の正しさがDNA研究によって裏付けられた格好になった。DNAは親から子へと連続性を伝授するが、その過程で突然変異的変化を道を残している。まさに、進化とは「変更を伴う継承」と表現することができる。

 このことが、従来の哲学.思想.宗教に対する新しいメッセージを投げかけつつある。生命の発生は約40億年前に遡ることになる。逆から云えば、40億年を経過して今日の生命体に辿りついているということになる。いわば「生命誌」(命の歴史絵巻)となっている。ゲノム(固体のDNAの全体)の解明と関連分析は、今最も注視されている分野である。この研究はこれからますます活発になることが予想され、21世紀は生命科学の時代とも云われている。

 二本の鎖の間のDNAは、糖・リン酸・塩基からなる核酸が繋がった構造をしている。塩基とは、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)という4種類の塩基物質の鎖状の並び方で構成されている。この「塩基配列」が遺伝子情報の姿かたちとなっており、この四種類の塩基の組み合わせが生物の遺伝子の設計図になっている。「塩基配列」の変化は、例えばAATAGCという6個の塩基からなる配列で、3番目のTがCに変わると、AACAGCになる。

 
A、G、C、Tの四種類の中の塩基で一セットをなし、この一セットをコドン(codon/遺伝暗号の単位で、メッセンジャーRNAを構成する4種の塩基のうち3個ずつ配列して一単位となったもの。1個のコドンが1個のアミノ酸に翻訳され、蛋白質が合成される。塩基の配列には4の3乗、すなわち64通りの順列がある。うち61個のコドンが20種類のアミノ酸を指定し、残り3個が読み取りの終止を指示する)という。

 コドンには64通りの組み合わせがあり、その64種類のコドンがあっても、アミノ酸は20種類しかないので、一つのアミノ酸に対して、二つのコドンが対応する事がある。同じアミノ酸に対応する複数のコドンを「同義的コドン」と言うが、これはT・A・TとかT・A・Cというチロシン(tyrosine/蛋白質を構成するアミノ酸の一。酵素による酸化を受け、フマル酸・メラニンなどを生じる)に対応する同義的コドンである。

 
一方、停止信号が三種類ある事により、遺伝子はA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)の鎖(くさり)を一つずつ移動(シフト)させて、三通りの意味を解読する事が出来る。これを考えると、「遺伝子は24の信号が構成する蛋白質遺伝子構成であった事が分かる。この根源には、生物進化の巨大な秘密が隠されている。

 DNAの塩基の並び方(塩基配列)でアミノ酸の並び方が決まり、このアミノ酸が決められた通りに結び付けられて、固有のたんぱく質となる。遺伝子の情報は正確にコピーが繰り返され、分裂した細胞や子孫に伝えられていく。

 遺伝子DNAは、細胞核の染色体に存在する。人間は46本の染色体を持っている。それら全部を合わせると、凡そ30億個の塩基からなる「ヒトゲノム」二セットに対応する。二セットになるのは、人間が精子と卵それぞれからDNAを受け継ぐ「2倍性生物」だからである。

 人間に最も系統的に近いのはチンパンジーとボノボである。ヒトとチンパンジーはDNAレベルでは1%強しか異なっていない。恐らく、この違いは突然変異で生み出されたのであろうが、ゲノムの中のDNA変化が、体の形や脳の機能をも変化させたものと思われる。推定し得ることは、凡そ600万年ほど前の両者共通の先祖のゲノムから、二つの系統が生じ、それぞれが異なった道を歩き始め、片方はヒトに、もう一つはチンパンジーとボノボになっていったのではなかろうか。

 ヒトのDNAも同じで、4種類の暗号文字で書かれていることが判明しており、その仕組みがコンピューターのデータベースに置き換えられ解読されつつある。人間のDNAは約31億個の塩基対からなる。

 2000.6月、日米欧6カ国の生命科学者からなる「国際ヒトゲノム計画」が共同で解読をほぼ完了したことを発表した。人間を人間足らしめている全遺伝子情報(ヒトゲノム)の解読がほぼ終わりつつあるということである。遺伝子の数は、約3万2000個と推定されている。今後はその意味を見つけ、これを利用して何ができるのかに向かうことになる。

 今後は、遺伝子の研究から精密な分子機械としての生命活動の仕組みが解明され、それによって機械の故障として現れる病気の予防や診断、治療が飛躍的に進むことになるであろう。他方、遺伝情報の保護や、その漏洩による差別などの問題も懸念されている。もう一つ、人間を人間たらしめている素性が明らかにされ、最新版の人間の哲学的理解がもたらされることになるであろう。

 長い間生物学の謎となっていた遺伝の仕組みに明快な解答を与えたのは、アメリカの生物学者ジェームズ.ワトソン博士とイギリスの物理学者のフランシス.クリック博士である。1953年、遺伝子(DNA)の構造を解明した二人の論文が、イギリスの科学誌「ネイチャー」に掲載されると世界中に衝撃が走った。この時ワトソン弱冠25才。単純な4種類の塩基が手をつないで作るDNAの二重らせん構造は、誰が見ても理論にかなった単純で美しい構造をしていた。

 量子力学(物質を構成する原子や素粒子と、その構造や原理を解き明かす物理学)の幕開けからほぼ50年、DNA構造の発見は、生命現象を遺伝子や分子レベルから解き明かす生命科学を切り開いた。

 (国立遺伝額研究所教授・斎藤成也「にんげん進化考」2002.4..7日付け日経新聞よりのれんだいこ式理解による加筆要約)。


 ある生命科学者の指摘。人間といえどもDNA(デオキシリボ核酸)機械と考えることに基本的に問題はない。例えば、受精によって誕生した受精卵が、どのように発生していくか、そのアミノ酸合成からたんぱく質合成、そして組織、器官への発展まで、厳密な因果的関係に拠らない場面は全くないと言いきれる。その意味で、受精卵は、その後の発生と発展の厳密なプログラムを宿している存在である。人間一人一人をかけがえのない存在として捉えるのであれば、受精卵こそ、そのかけがえのない「個」の出発点でなくてなんであろう。

 この考え方は、現代科学、特に生命科学が立ち向かっている新しい境地を明示しているように思われる。

 この観点に、村上氏は次のように持論を添える。そのかけがえのない個の出発点である受精卵の生成のメカニズムにおいて、卵の方は、あまり選択の余地なく決まっているとしても、どの精子が辿りついて、着床するのか、それはまさしく偶然としかいえないのではなかろうか。

 何億という精子の中に畳み込まれたDNAの塩基配列は、それぞれが微妙に異なっている。それは卵の場合も同様である。人間のゲノムには30億対程度の塩基が並んでいると言われている。それを全部読み取ろうというのがヒト・ゲノム読解計画で、ほぼ解読されつつある。その結果、わかってきた事は、個人の遺伝的特性とじ結びつくDNA連鎖の差異の中で、特に一つの塩基対だけが違っているために差異が生じている場合を「一塩基多型」と云う。「スニップス」(Single Nucleotide Polymorphisms)の訳であるが、30億の中でただ一つの塩基対が、遺伝的な特性を生み出すことがあるという訳である。

 受精に与る卵と精子の塩基配列の組み合わせの全てを計算するにはどんな高性能コンピューターをもってしても不可能だと言われている。それほど膨大な数の組み合わせの中の、二つとないただ一つが、受精と言う偶然によって実現する。こうして受精卵のかけがえのなさは、人間学的な考慮以前に、生命科学からも保証されつつある。生命科学は、取替えの効かない(かけがえのない)個に光を当て始めた。現代科学の最前線は、生命体の、あるいは人間の根本的な生存の拠り所である個に焦点を合わせつつある。人生哲学で云われてきた「かけがえの無い自分」という概念が、科学の中で意味を裏付けられつつある。 

 (2001.9.11毎日新聞村上陽一郎「新世紀の思考」、「融解する人間」意訳、国際基督教大学・科学史、科学哲学)


 

 「★阿修羅♪ > 雑談・Story41 」のBRIAN ENO氏の 2019 年 1 月 23 日付投稿染色体から考える性別 人間の基本は「女」である!」、「オスはメスのために作られた!? この世界に男と女がいる簡単な理由 稲垣 栄洋 静岡大学農学部教授」、 1 月 28日付投稿「男性器は女性器を出発点としてつくられる 男の本質はそもそもは女である!」、 1 月 30日付投稿「男の性欲の本質と正体は「射精」である!」、2 月 21 日付投稿「女のからだと男の使命」参照。 

 ユダヤ・キリスト・イスラム教の聖典である旧約聖書は、「神はアダムを深く眠らせ、アダムは眠った。神は彼の肋骨を1本取り、そこを肉で塞いだ。そして神はアダムから取った肋骨で女性を作り、彼女をアダムの元に遣わせた」と記している。これによると、「先に男が生まれ、男から女が作られた」ということになる。

 しかし、遺伝子的にはむしろ逆である。
「遺伝子DNAから見る人間の性別」によると、男というのは女から派生している。人間の性別は遺伝子によって決定されている。人間には染色体という遺伝子のかたまりが23対セットの46個あり、性別を決めるのは最後の二つで、受精卵の性染色体が「XX」であれば女性で、Xの染色体を持つ精子が受精したことを意味する。「XY」であれば男性になり、Yの染色体を持つ精子が受精したことを意味する。要するに、Y染色体がない場合は女、あれば男になる。性染色体X、XX、XY、YY、Yの5つのパターンの内、人間が生きていけるのはX、XX、XYだけ。YY、Yでは死んでしまう。Xだけの場合は女性として生きていけるが、Yだけの場合は男性として生きていけるわけではない。これによると、人間の基本は女であることになる。

 性染色体の発見と価値観の大逆転

 性決定機構についての科学的知識が得られたのは、1890年のドイツの生物学者ヘルマン・ヘンキングによるX染色体の発見が最初だとされている。20世紀初頭にはクレランス・マックラングが、X染色体が性決定と関連があるとして「X染色体は男性決定染色体である」と主張した。この考えは間違っていたが、染色体と性決定を結びつける初ものとなった。1905年、ネッティー・マリア・スティーヴンスがコメノゴミムシダマシの幼虫においてY染色体を発見しX染色体と共に性決定に関与することを発見した。X染色体以外に小さな別の染色体があることを見つけ、それを持つ個体の方がオスになることを知った。ネッティー・マリア・スティーヴンスは女性の研究者。「小さな染色体を持つ方がオスになる」という世紀の大発見をした。男にする染色体の方が小さい。遺伝子の研究は男の優位性を証明しなかった。  人間界の男と女、動物や鳥、虫類のオスとメス、植物の雄しべと雌しべにつき、オスとメスとがあるのはけっして当たり前のことではない。38億年前、地球に生命が誕生した頃に誕生した単細胞生物には雌雄の区別はなかった。単純に細胞分裂をして増殖していた。この場合には元の個体と同じ性質を持つコピーを作り続けていくことになる。しかし、すべての個体が同じ性質であるということは、どんなに増えても弱点は同じということになってしまう。そのため、もし環境が変化してしまうと個体が全滅してしまうということが起こりうる。一方、色々な性質の個体があれば、環境が変化しても、どれかは生き残ることができる。そのため、生物が同じ性質の個体が増えていくよりも、性質の異なる個体を増やしていったほうが、生物種として生き残っていくには有利である。

 それでは、どのようにすれば自分とは異なる性質を持つ子孫を増やすことができるのだろうか。自分の遺伝子だけで子孫を作ろうとすれば、自分と同じか、自分と似たような性質を持つ子孫しか作ることができない。自分と異なる子孫を作ろうと思えば、他者から遺伝子をもらうしかない。つまり、遺伝子を交換すれば良い。しかし、せっかく手間を掛けて交換するのであれば、自分と同じような相手と遺伝子を交換するよりも、オスとメスの遺伝子交換の方がバラエティに富む。


 オスの存在の意味、意義。「どうしてオスが必要なのか?」という素朴な問いに対する明確な答えは残念ながら出ていない。
生物にとって子孫を残すことがもっとも大切である。これをメスが担い、オスがサポートする。たとえば、オスは外敵と戦ってメスを守り、メスが安心して子孫を残せるようにする。あるいは、オス同士がメスの取り合いで戦うこともある。クジャクのように必死にメスにアピールするものもいれば、シカのオスのようにメスを巡って争い合うものもいる。ハーレムを作るゾウアザラシは、ハーレムを守るために神経をすり減らし寿命が短くなってしまう。男と女は生物の進化が創り出した発明である。男と女は多様性ある子孫の残すためのものだった。

  受精直後の受精卵が男女どちらかの顕著な性の特徴を持って振舞うのか?といえば決してそうではない。おおよそ受精後7週くらいまでの未胎児の生殖器の構造は男子も女子も未発達の女性器の構造をしている。この時点では男になる予定のXY染色体の胎児にも立派な女性の証であるワレメがある。胎生7週を超えた辺りから、Y染色体にあるSRY遺伝子が作用して未発達の性腺を精巣に「改造」すべく働きかける。一方、女の胎児の方における未発達の性腺はY染色体由来のSRY遺伝子の影響下に晒されないので、そのまま「成り行きまかせ」で卵巣になるようにプログラムされている。この「成り行きまかせ」で性腺が卵巣になるというところがキモである。SRY遺伝子により、性腺が精巣になると精巣から男性ホルモンの分泌が始まりじわじわと男性器(ペニスや睾丸等)が作られる。女の性器はワレメを排尿と生殖の出入り口(尿、ペニス、精子、血液、胎児)にして内部に膣、子宮、卵巣などセックスと生殖に関わる小宇宙を構築させた。男はペニスと睾丸を外部に露出させ、内部には何もない。ひたすら精子をコンスタントに作りひたすらコンスタントにできうる限り射精したがる欲望を創造した。ミジンコなどは、通常は「無性生殖」を行うが、環境が悪化するとオスを産み、そのオスと交尾して「有性生殖」を行う。ミジンコの本質はメスであり、環境が悪化するとオスを産み、そのオスとセックスして子どもを作る。

 この有性生殖の遺伝子的意味は次のことにある。まず、男女とも減数分裂で、女が卵子(1倍体)を創り、男が精子(1倍体)を創り、男の精子が卵子と合体し、受精卵(2倍体)となり成長していく。その大きな目的は、卵子の側の1倍体の染色体と精子の側の1倍体の染色体を対合→交差→組み換えによりDNAの総和をシャッフルして新たな種に変えていく(進化)ことである。ヒトの場合は哺乳類なので、女の体内に卵子を作り保持し、男との性行為で男の精子を女の体内(膣内)に取り込み受精させる手法がとられる。これを体内受精と言う。ヒトの体内受精の場合、必ず男の性器(ペニス)が女の性器(膣内)に挿入されメスの膣内で射精を行わないと受精に至らない。結局は性欲の強度が受精確率を向上させる。

 性によって有性生殖を実現させるための勤め(仕事や役割や役目)が違う。男には、受精、妊娠、出産、授乳、子育てがないので性行為が終了すると、その行程が完結する。男の有性生殖での重要な役割は己のDNAを精子の中に凝縮し格納し、その己のDNAを格納した精子を女の膣内に射精することである。男の使命は、女に膣内射精して己のDNAとその女のDNAをシャッフルして新しいDNAを作ることにある。これが有性生殖としての男の生物学的な使命である。男の性欲は女の卵子に自分のDNAを格納した精子を植え込むことに尽きる。女も当然、己のタイプの男の精子を受け入れ己の卵子と合体(受精)させその男との子どもを潜在的に求めている。

 P.S.
 カマキリやある種の蜘蛛は交尾が終了しオスの精子(DNA)がメスの体内に入ったことが確認されるとオスはその瞬間用済みになりメスに食べられてしまう。メスは受精卵を育む必要があるので、DNAをメスの体内に射精したオスはメスと受精卵の栄養になるのである。昆虫などにおけるオスの存在価値はまさにオスの遺伝子をメスの体内に注入するだけの存在に特化されている。男はDNAの単なる運び屋でしかない。そのDNAを運ぶ運び屋を動かすモチベーションが射精であり性欲なのである。

 生物の本質は生殖活動である。生物の生きる目的も生殖である。人間は通常、有性生殖で生殖を行う。ただ、人工的にある女性の卵子に、別の女性の卵子の染色体を合体しても生殖はできる。生まれるのは女しか生まれないが、人間での実験は倫理的問題があるので行われていないがマウスや他の哺乳類で実験が既に行われ実験は成功している。ということで、有性生殖といってもメスとメスでも染色体が二対になり組み換えが行われ遺伝子のシャッフルが可能なのである。有性生殖の組み換えと遺伝子のシャッフルとほとんど何も変わらない。むしろ、男の染色体であるY染色体やY染色体にあるSRY遺伝子がないことで生物として強くなり長寿になる可能性がある。問題は、セックスでの生殖活動はできないことにある。このように、オスとはほとんど、生殖に関して言えば、セックスがない場面ではまったく存在価値がない。
 「★阿修羅♪ > 雑談・Story41 」のBRIAN ENO氏の2019 年 1 月 24日付投稿「性の進化論――女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?」。
 なぜ人類はパンツを履いた“好色なサル"と云われるのか。セックスに於ける発情、興奮の意味。浮気のセックスを求めるのか。女性はなぜ初めての男性とはオルガスムに達しやすいのか? なぜ女性がエクスタシーの時に大声を出すのか? それは、女性の身体にプログラムされているからである。女性の“オルガスム"は性交を求め易くするために発達しており、人類は性交という生殖戦略によって種としてのサバイバルに成功した。

 本書は、進化生物学・心理学、人類学などの専門分野からの知見をもとに、人類20万年史における性の進化をたどり、性と欲望のあり方の謎に迫った「性の進化論」である。米国でキンゼイ・レポート以来と言われる大論争を巻き起こし、世界21か国で翻訳出版されている。 「かつてダーウィンが『進化論』を発表したとき、人類がサルの仲間から進化してきたというその見解に対して多くの批判が浴びせられた。私たちもまた多くの批判を受けることは覚悟のうえで、『性の進化論』によって、“人類のセクシャリティの本質"が、類人猿と共通の祖先に由来すること論証し、長年にわたって隠蔽されてきた真実を明らかにしたい」。

 ■本書への反響は次の通り。
  「人間のセクシャリティに関する定説の多くに一撃を加えており、本書は、最良の意味で“一つのスキャンダル"である」(ニューヨークタイムズ年間ベストセラー)、「1948年のキンゼイ・レポート以来、人間のセクシュアリティに関して書かれた最も重要な本」(ダン・サヴィジ、作家・評論家)、「ダーウィンも、デスモンド・モリス(『裸のサル』)も、ヘレン・フィッシャー(『愛はなぜ終わるのか』)も、人類の性の進化については、偏見がぬぐえなかったようだ。性に対する認識を改める革命的な本だ」(パブリッシャーズ・ウィークリー誌)

 著者について、著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

 クリストファー・ライアン(Christopher Ryan)
 サンフランシスコのセイブルック大学で、調査心理学の博士号を取得。アラスカ、タイ、メキシコなど世界中をめぐって得た各地の性文化に対する見識を活かして、人間のセクシュアリティの本性に焦点を当てた心理学研究を進め、本書の元となった「先史時代における人類の性の起源」の博士論文を執筆した。現在、バルセロナに在住し、バルセロナ医学大学講師と、複数の病院の顧問をしている。さまざまな雑誌・新聞、TVやインターネットでも活躍している 。

 カシルダ・ジェタ(Cacilda Jetha)
 精神科医。医学博士。モザンビーク生まれ。子供時代に勃発した内戦を逃れ、ポルトガルで教育を受けた。1980年代末、医師として内戦で荒れ果てた故国を癒すために、モザンビークに戻る。北部の僻地で、5万人に1人の医師という環境で、医療活動を7年間行なった。また、AIDS予防のためのWHO性行動調査の責任者も務めた。ほぼ10年間にわたって活動したのち、現在はスペイン・バルセロナの病院で精神科医を務める。

 山本/規雄
 1967年、東京都生まれ。出版社等勤務を経て、現在、翻訳業・編集業に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 目次

 序文 人類の“セクシュアリティ進化”の真実―人類の女性に、なぜオルガスムが発達したのか?
第1部 進化論は“性”をどのように扱ってきたか?
第2部 先史時代の人類の性生活―“エデンの園”は、性の楽園だったのか?
第3部 われわれの祖先の日常生活
第4部 性器とオルガスムの進化論
第5部 人類のセクシュアリティ進化の未来は?





(私論.私見)


利己的な遺伝子