安日彦(あびひこ)または安日王。阿部氏の祖である。平泉雑記が伝える安倍氏自身の家伝によれば、神武天皇に殺された畿内の王長脛彦の兄安日彦をその始祖とし、安日彦の津軽亡命をもって安倍氏の発祥としている。安藤系図、藤崎系図にも同様の記述が見られる。奈良桜井市には阿部と云う地名や安倍寺史跡公園、日本三大文殊の一つ安倍文殊院等があり、希代の陰陽師安倍清明氏の出身地とされている。皇極天皇没後斉明天皇(594年~661年)の時阿部比羅夫は越国守として歴史に現れる。その655年(斉明紀元前7世紀には大和、摂津、難波あたりには安日彦、長脛彦兄弟が支配していた。

 摂津は安日彦が住んでいたので安日野と呼ばれていた。現在も大阪府に阿倍野区があるのはそのためで、長脛彦が神武=応神に殺されたのち、安日は北海の浜東日流(津軽)へ逃亡日乃本国を建立したと言う。西の大和国 東に日乃本国(日高見国)が両立したのだ。青森県東北町に「日本中央」の碑があるのはそのためだろう。「ひのもとまなか」と詠む。

 参考 秋田「安東氏」研究ノート 無明出版社 海と周辺国に向き合う日本人の歴史 郁明社 秋田市史 秋田県史