○荒舩委員長/若狭証人の入室を求めます。これより若狭証人から証言を求めます。
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○小林(進)委員/ちょっと議事進行について一言委員長に要望をいたしたいと思います。若狭証人について一言委員長に要望いたしますが、若狭証人は控え室に待機中、食堂へ行ったり、食事をしたりしております。証人として待機中は控え室にいて、テレビを見ることも、生理的要求以外外出することも、固く禁ぜられているのであります。しかるに若狭証人は、特にあなたと対決をする大庭証言の最中にのこのこ部屋を出ていられることは、まことに証人としての厳粛性を失われていると見なければならぬと思うのであります。あなたの前回の証言も含めて、あなたは国会を軽視し、国会の証言を軽視されているというおそれがあるということが議員の中にも声が出ております。厳重にひとつ注意されるよう委員長に御要望いたす次第でございます。 |
○荒舩委員長/ただいま小林君の発言、ごもっともでございます。いずれ調査をいたしまして、適当な処置を講じたいと思います。まず、若狭証人に対しまして、委員長より所要の事項についてお尋ねをいたします。あなたは、去る二月十六日の委員会に出席し、その直後運輸省において記者会見をしたことは事実でありますか。その記事によれば、本委員会の証言と全く相違したごとくとられるような発言がなされたようでありますが、その真意及び発言内容を詳しく説明願いたいと思います。 |
○若狭証人/お答え申し上げます。去る十六日の当院における予算委員会における証言終了後、運輸省におきまして記者会見をいたしました。その際に出た問題の一つは、DC10についての予約があったのではないかという記者団の質問でございます。これにつきましては、当日は私はもちろん、副社長であります渡辺君も同様に、そういう事実は全くありませんということを当院におきまして証言いたしました。しかし、当時記者会見の席上で、そういう問題、あなた方はそう言うけれども、本人はそういうことをやったと言っておるじゃないかというような、そういうような御質問がございました。それにつきまして、それは本人がそういうことを言っておいでになるとしてもわれわれは知りませんということを申し上げましたし、御本人が言っておられることをわれわれが否定するわけにはまいりません、それはわれわれの関知せざるところでございますということを申し上げたことは事実でございます。
さらに、もう一点ございますが、昭和四十七年十月二十四日に田中総理に総理官邸でお目にかかりました。その際、国会では、ロッキードを買ってもらいたいという話は出ませんでしたかという御質問がございまして、私はそれに対しましては、そういう話は一切ございませんということを申し上げました。それで記者団の方から、機種選定についての話というのは一切なかったのかというお話でございました。それにつきましては、私は、大変短い時間でございまして、立ち上がり際に、機種選定についていろいろ新聞紙等に言われておりますけれども、これはわれわれ三年間にわたって事務的に検討してまいっているところでございますし、安全問題を第一にして決定いたしますので、そのように御了解いただきたいということを申し上げまして、安全第一は当然だろう、しっかりやってくださいというふうに言われたことがございますということを記者会見で申し上げたわけでございます。その点について、国会では、ロッキードを買ってもらいたいというお話がございませんでしたかというお話でございましたので、私はそういう話はございませんということを明確に申し上げたわけでございます。 |
○荒舩委員長/あなたは大庭社長と飛行機の購入について全く意見が異なっていた。すなわち、大庭前社長はダグラス社のDC10の購入の仮契約をしており、あくまでもDC10の購入を主張して譲らなかった、こう言われております。これに反してあなたは、これにはあくまでも反対の立場をとられておった。こういうことで、世間で言われると、ずいぶん飛行機の購入について、機種の問題で正面から衝突しておったということが伝えられております。これらの点について、納得のいく説明を願いたいと思います。 |
○若狭証人/先日の証言でも申し上げましたとおり、私は昭和四十五年の二月に全日空の新機種選定準備委員会の調査団長としてアメリカへ参りました。この前も申し上げましたとおり、準備委員会は四十五年一月に結成されておるわけでございますが、二月に担当者十数名をもってアメリカへ参りまして、ボーイング社、それからダグラス社、ロッキード社、三社を回ったわけでございます。そうしまして、二月の末に帰ってまいりまして、三月にはその資料を整理しておりました。これは各班に分かれまして、たとえば機体班であるとか、エンジンの班であるとか、あるいはハンドリングの班であるとか、いろいろな班に分かれまして、いろいろな機種についての検討を進めたわけでございますので、その班ごとに資料の整理をいたしておりまして、その選定準備委員会で具体的な報告に入りましたのは、四月に入ってからでございます。四月から五月にかけて選定準備委員会のアメリカ調査団における報告が行われておりました。そういう段階でございまして、その間に何らかの、たとえばオプション契約があったという新聞の報道がございますが、そういうことはわれわれには全く了解できないことでございます。それからまた、五月末には別の原因によりまして社長が交代いたしましたけれども、その後もわれわれの選定委員会におきましては、ボーイング747SRと、それからダグラスDC10と、それからロッキード一〇一一と、この三機種について厳正な検討を行われておったわけでございます。しかし、現実問題といたしまして、当時はまだダグラスもロッキードもでき上がっておらない段階でございました。飛んでおらないわけでございます。したがいまして、厳正な評価というのはまだできない、いろいろな会社のメーカーの説明についての検討を行っておるという段階で、でき上がっておりましたのはジャンボSRだけでございます。ボーイング社だけでございました。そういう状態で選定作業を検討しておったわけでございます。したがいまして、当時はむしろジャンボにするか、あるいはダグラスがどうだろうか――と申しますのは、ダグラスにつきましては、全日空は以前にDC6なりDC3なりという飛行機をずっと購入いたしておりますので、やはり縁も深かったし、むしろそちらの方に非常な努力を割いて勉強しておったような状態でございます。
ところが、その後、昭和四十六年に至りましてその導入を延期するということが日本航空、全日空両社で話ができ上がりまして、そうして四十八年に最初は延ばされまして、さらにその直後に雫石の大事故が起こりまして、全日空におきましてはとうてい選定作業を進めるという状態ではございませんで、選定作業を全く中断せざるを得ない状態になったわけでございます。このために日本航空と両社相談いたしまして、さらにこれを一年間延ばしていただくということでお願いしておったわけでございます。そうして結局四十九年導入というところへ漸次落ちついたわけでございます。したがいまして、四十七年に入りまして、ことしじゅうにはどうしても決めなければいけないというそのやさきに、四十七年五月、六月、七月と三月続きましてDC10が事故を起こしたわけでございます。第一番目の事故は、貨物室ドアの脱落の事故でございます。これはその翌年パリで三百数十名の人命が亡くなられたわけでございますが、大変深刻な事故でございます。それからその次の六月、七月の事故はDC10のセンターエンジンが脱落する、焼け落ちるというこれも技術的に非常にむずかしい事故でございます。そういう事故が起こりまして、そこで初めてDC10に対する評価というものを根本からやり直さなければならないという状態になったことは事実でございます。それまでの間むしろロッキード問題は、率直に申し上げますけれども、第三番目の候補機種であったことは間違いございません。社長がかわりましたから機種の選定が変わったというような事実は全くございませんので、はっきり申し上げておきたいと思います。 |
○荒舩委員長/ただいまのような理由でおくれたことによって、結局は米国で、コーチャン氏の証言によりますと、ロッキードの時間かせぎという結果になりまして、全日空がロッキードを買うことの結果が生まれたということ、時間かせぎになってしまったということで、いろいろな疑惑もあるわけでございます。こういう点について理解ができるような証言を願いたいと思います。 |
○若狭証人/最初、昭和四十七年四月から導入したいということを一応両社で相談いたしておったことは事実でございます。その後、先日の証言でも申し上げましたとおり、昭和四十五年の万博終了後の輸送需要が急激に低下してまいりました。万博の輸送需要を賄うために、昭和四十五年度には全日空としては十五機のボーイングを導入しているわけでございますが、万博の輸送が終わりますと、そのロードファクターが非常に下がってまいりました。同時に、その年から就航しましたボーイング747の就航がなかなか思うようにならないという二つの事情がありまして、このためにやはりどうしてもおくらした方がいいだろうということを内々社内で議論いたしておりました。日本航空ともお話を進めてまいりました。そして、むしろ日本航空の方が、われわれよりも先にその導入を一年延期しようということを当時の松尾社長が申し出されたわけでございます。われわれもそれに従いまして当然一年延期ということを決定したわけでございます。その原因は、先ほど一つ申しましたダグラスもロッキードも当時はまだ飛んでおらないという状態でございまして、そういう状態で機種を早々に決定して注文を行うということは大変危険であるということが一つの理由でございます。それから輸送需要が非常に減少している段階、それからまた航空界における画期的な大型機の導入という問題がなかなか順調に進んでおらない、ボーイングの747というのは就航率が極度に落ちておるというようないろいろな情勢をあわせて、一年間延期することに決めていただいたわけでございます。
ところが、その決めた直後に、七月になりまして東亜国内航空の「ばんだい号」の墜落事故がございまして、その同じ月の七月三十日には、全日空の雫石事故という当時世界の航空史上最大の百六十二名死亡という大きな事故が起きたわけでございます。したがいまして、全日空社内はもう選定作業に一切手がつかないという状態でございまして、すべて事故対策に忙殺されておるというような現状でございまして、そのために私は日本航空へ参りまして、大変申しわけないけれども、もう一年延ばしてもらいたいということをお願いしたわけでございます。日本航空としてはいろいろな機材の準備もあったようでございますけれども、なかなか難色を示されたわけでございますが、世界最大の航空事故を起こした全日空というものについて同情していただきたいということを私が心からお願いいたしまして、そして真剣に日本航空でもそれに取り組んでいただくということになった結果、翌年になりまして初めて四十九年導入ということが決まったような状態でございまして、何かその裏で工作したためにおくれたということについて、私は何とも言えない怒りを感じているわけでございます。百六十二名のとうとい人命を失ったという私たちの立場というもの、そしてそれに基づいて日本航空も私たちに協力してくれる、私たちもその解決のために全力を挙げておる、そういう事実を全く自分の都合のいいように理解して、私が工作したためにおくれたということを言われますと、私は全くふんまんにたえないわけでございます。 |
○荒舩委員長/以上で私から尋ねることは終了いたしました。次に、委員から発言の申し出がありますので、それぞれ持ち時間の範囲でこれを許します。松永光君。 |
○松永委員/質問に先立ちまして委員長にお願いしたいことがございます。それは、先刻の大庭哲夫氏の証言に関し、大石武一議員、原田憲議員より、同証人の証言中に誤解を招く点があるので、委員長において誤解を解消するための適当な措置をとられたい旨の申し入れがありました。よって、委員長において善処されますようお願いいたします。
大石議員の申し入れ
先刻大庭哲夫氏の証言中に、私が鈴木明良君を大庭氏に紹介したとの供述がありましたが、鈴木氏はかつての同僚代議士であり、落ち目になった友人からの依頼であるので、同氏を単純に名刺で大庭元全日空社長に紹介したにすぎず、問題になった件についての依頼や、その為の紹介では絶対にありません。まして、ロッキード問題とは何ら関係ありません。よって、この点を明確にしてもらいたい。
原田議員の申し入れ
私には、鈴木元代議士を大庭元全日空社長に紹介した記憶はありません。したがって私の紹介はどの様な形で行はれたか明らかにして貰いたい。
以上でございます。善処方お願いいたします。 |
○荒舩委員長/理事会で相談をいたしまして適当な処置を講ずることにいたしましょう。 |
○松永委員/そこで若狭証人にお尋ねをいたしますが、昭和四十五年の六月に大庭哲夫氏が社長を退かれて、あなたが全日空の社長に就任されたわけですが、その際、すなわち大庭前社長が退陣されてあなたが全日空の社長に就任されたときに、大庭さんから、ダグラス社との間にDC10についてオプションをしたから後始末を頼む、こういう事務引き継ぎといいますか、申し入れといいますか、そういったことがありませんでしたでしょうか。〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 |
○若狭証人/大庭さんからDC10に関する話、引き継ぎというものは一切ございません。 |
○松永委員/これは大庭さんの話なんですけれども、自分はDC10以外に全日空が採用すべきエアバスはないんだ、そのことが自分の頭いっぱいであった、そこで、社長をやめて後任社長があなたになったについては、ぜひDC10にしてもらいたいという希望、特にダグラス社との間にオプションをしたということね、このことを引き継ぎをした、こう言うんですよ。オプションをしたということをあなたに伝えて、そして後始末を頼むというふうな趣旨のことをあなたに間違いなく引き継ぎをしたんだ、こういうことをはっきり言っておられるのですけれどもね。どうですか。 |
○若狭証人/先ほども申し上げましたとおり、昭和四十五年二月に調査団がアメリカへ参りまして、今後設計されるべき飛行機についてダグラス、ロッキード両社について詳細な調査をいたしました。ジャンボにつきましてはすでにできておりましたので、その具体的な調査をいたしております。したがいまして、帰りましてその資料を調製しておる段階でございまして、しかも先ほど申しましたようにまだ設計段階でございます。そういうものについてオプションをするとかしないとかということはあり得るはずもございませんし、またそれについて私たちに対して一言の連絡ということも全くなかったということだけは明確に申し上げておきたいと思います。 |
○松永委員/そのオプションという言葉の意味なんですけれども、仮契約とかという趣旨じゃなくして、製造番号を押さえておいたという意味なんだそうです。この製造番号を押さえるためのサインをした。その製造番号を押さえるためのサインをしても、正式の発注をするためには正式の契約をしなければならぬ。その場合には取締役会の承認などの社内的な手続があるんですけれども、大庭さんがそのオプションしたと言う意味は、製造番号を押さえたのだ、押さえるための書類にサインをしたのだ、それはサインをしても取締役会の承認が得られなかった場合には全日空側でキャンセルすることはできるのだ、そういうふうな内容のオプションなんだそうでございまして、これを仮契約というふうに認めるのは適当じゃないんですが、製造番号を押さえる。そのための書類にサインをした。その事実を社長交代のときにあなたに伝えたというふうにおっしゃっておるのですけれども、そういうことはあなたは大庭さんから聞いたことはございませんか。 |
○若狭証人/そういうことを聞いた事実は全くございません。大変恐縮でございますけれども、一言説明さしていただきますれば、私あるいは他のだれか、社内のだれかが聞いておればその実態はわかったわけでございます。先ほど先生もおっしゃいましたように、必ずしも法律的な義務の出るものじゃないというお話でもございますし、われわれも、先ほども申しましたように、DC10というものは初めから候補機の除外して考えるというようなことは毛頭考えておりません。したがいまして、それを聞いておる者はわかるわけでございますが、この前の証言でも申し上げましたとおり、ダグラス社で全日空の飛行機をつくっているといううわさが出ておったということがございましたので、そういうことがどうして行われたのだろうか、どうしても理解ができないということで、何回も確かめた、三井物産にも確かめた、ということを申し上げたわけでございます。それからダグラス社自体にも確かめたわけでございます。したがって、そういう事実は私たちはなかったというふうに考えておるわけでございますが、大庭さんはあったというふうに主張しておいでになるだろうと、この前そういうふうな記事を見たわけでございます。 |
○松永委員/前回のあなたの証書のときにも、ただいまの証言でも出ましたけれども、三井物産にDC10について法的な義務はもちろん、道義的な義務もどうだろうか、あるのだろうかないのだろうかということを確かめられたら、道義的な義務もないというふうなことだったということですけれども、私があなたに聞きたいことは、それならばなぜ三井物産に道義的な義務も含めて、全日空側に義務とか責任があるかないかを確かめられになったか、こういう点なんです。いまあなたはそういう話をどこからか聞いたということですが、どういう方面からあなたの方に入ってきたのですか。そのダグラス社との間に何か関係があるらしいというふうなうわさですか話ですか、そういったものはどういう方面からあなたの方に入ってきて、そうしてあなたが調べるようになったのか、その点をひとつ説明してください。 |
○若狭証人/大庭さんから引き継ぎを受けたことは全くございませんけれども、三井物産の方あるいはダグラスの方から、とにかく全日空の飛行機を注文していただければこういう時期にできますとかというようなことを聞かされたわけでございます。そういう点について、これはおかしいということで、一体何が行われたのか、何かあったら出していただきたい、私たちはこれから真剣に選定作業にかかるわけでございますが、その場合にそういう事実を明らかにして選定いたしませんと非常に困ります、もしそれが事実でございますれば、われわれはそれを前提にしてやはり選定作業をやらなければいけません、それからもし最終的に機体が違った場合には、選考が違った場合には損害賠償の責任に応じなければいけません、そういう点は明確にしていただきたい、ということをお願いしたわけでございます。 |
○松永委員/全日空のこの重要問題といいますか、会社にとっていろいろな問題がある場合に、どういうふうな経路で会社としての意思決定がなされるのか。取締役会とか常務会とかいろいろあると思うのですけれども、全日空のこの組織といいますか、問題を決定する場合の大体の組織はどういうふうになっていますか。 |
○若狭証人/内部的にそれぞれの部局によりまして部局の会議がございまして、社内的には常務会という常設的な、週一回必ずそこへすべての問題をかけるという機関がございます。それから、それで決まったものにつきまして月一回――先ほどの常務会、週一回でございます。それから月一回の取締役会がございます。それに必ずすべての問題をかけておるというのが現状でございます。 |
○松永委員/そうすると、取締役会及び常務会における会議の内容、どういう事柄が議題になったか、どういう事柄が議決をされたか、そういったことについてはそれぞれ会議録ができておるのでしょうか。 |
○若狭証人/それは議事は全部残っております。 |
○松永委員/週一回のその常務会の席で大庭前社長さんの在任中に、次期に採用すべき飛行機は、すなわち新機種はDC10が望ましい、これは安全性その他からいってこれがすばらしいんだ、こういったことが常務会で議題となったことがありましたでしょうか。議題とならずとも、話題になったことがあったでしょうか。 |
○若狭証人/そういうことは一回もございません。大庭さん在任中にはまだDC10はでき上がっておりません。設計段階でございますので、そういう話があるということは考えられませんし、現実に私たちはそういうことを聞いたことは一度もございません。 |
○松永委員/あなたは、常務会の議事録なりあるいはメモというのですか何といいますか、それを確かめた上でそうおっしゃっているのですか。単なるあなたの記憶ですか。確かめられましたか。 |
○若狭証人/私の記憶でございます。しかし常務会の記録を検討した上で、あるいは提出して御検討いただけるということでございますれば、それはすぐわかるわけでございます。決してそういうことが議題になったということはございません。 |
○松永委員/この飛行機購入についての仮発注とか仮契約ではないにしても、先ほど私が申したような製造番号を押さえる、こういったことをする場合には社長が専決できるかどうか。常務会にかけないでも、先ほど言ったような製造番号を押さえるという行為ができるものでしょうか。全日空の組織、機構の上でどうなっておりますか。 |
○若狭証人/外部的に見れば、代表権を持った社長でございますから、そういうことは私は決してできないことではないというふうに考えております。ただ、常識的に新しい機種の選定というのは会社の命運を左右する問題でございますから、大きな組織の中で十分検討した上で結論が出されるべきものであって、軽々しくその製造番号を押さえるというようなことをやるべき問題では私はなかったろうというふうに考えております。 |
○松永委員/昭和四十五年ごろ、大庭前社長さんが退任される数カ月前のことのようでございますが、全日空において特段に資金を必要とするような事情がございましたか。 |
○若狭証人/そのような事情は全くございません。 |
○松永委員/これも大庭前社長さんの供述の中に、証言の中にあったのでございますが、三千億とか何千億ないし何百億という多額の融資を全日空が受けるということに関して、何か念書とかあるいは申込書とかというものが大庭前社長さんの名前である人に渡された、こういったことでいろいろごたごたがあったらしいのでございますが、全日空の常務会で融資問題についての話が出たことがあるでしょうか。 |
○若狭証人/そういう問題が常務会で議論されたことは一度もございません。 |
○松永委員/そうすると、融資の申し込みまたは念書というものが大庭さんの名前で出ておるとすれば、それは常務会などの議を経ずに、大庭さんだけの判断で出された書類、こういうことになるのでしょうね。どうですか、その点は。 |
○若狭証人/そのとおりでございます。 |
○松永委員/先ほどもちょっとあなたの話に出たのでございますが、DC10という飛行機が初めて飛んだのはいつでしたかね。 |
○若狭証人/試験飛行その他は別といたしまして、アメリカ政府の型式証明というものを得られたのは四十六年の七月ごろではないかというふうに考えております。その型式証明をとって初めて外国へ売却できるわけでございます。 |
○松永委員/先ほどあなたの証言の中に、四十五年の二月、三月ごろはまだDC10も飛んでない、飛んでいるのはボーイング747だけだ、こうおっしゃったものですから、そこで飛んだのはいつか、こういうように聞いておるわけなんです。 |
○若狭証人/恐らく最初の実験的な飛行、これは四十五年の暮れに初めてダグラスの場合はできたんじゃないだろうか。ロッキードはそれから二、三カ月おくれてできておるだろうと思います。したがいまして、四十五年の秋までは、先ほど申し上げましたように、ボーイング747だけが候補機種の中では飛んでおったということであろうかと思います。 |
○松永委員/あなたのおっしゃる論理はよくわかるのですよ。DC10が飛んでいない時期だ、その時期に製造番号を押さえるという趣旨のサインすらするのは論理上あり得ないというあなたの言い回し方、これもわかるのですが、大庭さん自身は断言的におっしゃるのですよ、サインをしたと。サインしたという事実をあなたに引き継いだ、こうおっしゃっておるものですから、重ねて、そういう引き継ぎを受けたかどうか、その点をもう一回はっきりしていただきたい。 |
○若狭証人/大庭前社長からそういう引き継ぎを受けた事実は一切ございません。 |
○正示委員長代理/次に渡部恒三君。 |
○渡部(恒)委員/いま松永議員から、先ほど大庭証人が、私はダグラスDC10に航空人としての生命をかけていたぐらいに本気だったのだから、社長をやめるときにあなたにぜひそうするようにということを引き継いだという証言、それに対して、あなたはそういうことを引き継いだことは全くない――非常にこれは一〇〇%証言が食い達っちゃったのですから、いますぐにあなたの方がうそか大庭さんがうそか、これは断定できないものであるけれども、いずれかがこれは偽証をしているということははっきりするわけで、これは後ほど明らかになっていくだろうと思うのですが、もう一つ腑に落ちないのは、大庭さんが社長をしておったときにあなたは副社長として機種選定の委員長をしておられたわけですね。私どもかなり信頼すべき情報によると、そうしてその時代に全日空の調査団がアメリカに行った。そうして帰ってきて、機種選定については大庭社長に一任したということも聞いているのです。いずれにしても、あなたが副社長であって、機種選定の委員長であって、そうして社長が、それこそ航空人としてダグラスのDC10だと言って、生命をかけていたというほど熱心にそれにしようとしておったことを全く知らなかったというようなこと、またこの前は、いまの副社長、その当時の専務の渡辺さんもそういうことを言っているのですが、われわれちょっと信じかねるのですけれども、もう一遍その点についてお伺いいたします。 |
○若狭証人/先ほど申しましたように、二月にアメリカへ参りまして二月末に帰ってまいりまして、三月いっぱいは資料の整理を各担当員がやっておりまして、四月からその具体的な報告が始まったわけでございます。したがいまして、その段階におきましてどの機種がいいというような断定ができるものでは決してございません。私と大庭さんの証言が違うというお話でございますが、私たちには、常識的にそういうことがあり得るということは考えられないということで、現実にまた一切そういう引き継ぎはなかったわけでございますので、改めてそういうことをはっきり申し上げておきたいと思います。 |
○渡部(恒)委員/これは聞けば聞くほど非常に疑問に思うのですが、大庭さんの方を疑えば、たとえ社長であろうとも、副社長なり専務に相談をしないで決めるというようなことは、大きな企業で考えられないですね。その点、私は何度も大庭さんに確認したのです。今度あなたの方で考えるのは、少なくとも社長が、これは全日空の発展のためにはどうしてもダグラスDC10でなければならないと一生懸命やっておることを、副社長であるあなたが、機種選定委員長であるあなたが知らなかったなんていうことはちょっと考えられないのですが、もう一遍。 |
○若狭証人/機種選定に入ったばかりの段階でございますので、そういう結論を社長が持っているとは夢にも考えておりませんでした。 |
○渡部(恒)委員/これはこれ以上同じことを繰り返して言っても仕方がありませんから、話は次に移りますが、私なんかは人間が素直な方だから、本当はこの前の証人喚問のときに、社長と渡辺さんですか副社長が、この飛行機を決めるに当ってはまじめに本気になって、純粋に技術的に選んだと切々と訴えるあなたの言葉を、これはやはりあなた方が言っているのが本当だなと思ったのですよ。ところが、これ、大庭証言によってまた崩れてくる。人間一つうそ言っちゃうと、ほかが全部本当であってもこれは全部疑われざるを得なくなっちゃうんです。だからここが非常に大事なんで、もう一つお伺いしますが、あなたは児玉譽士夫さんなる人物は、名前は知っているけれども、会ったこともないし、電話で話したこともないとおっしゃいましたね。先ほど大庭さんの話を聞きますと、大庭証人は、全日空の社長に就任したときにあいさつに行って一度会っていると言うのですね。恐らくいろいろ社の慣例というのはあると思いますけれども、前の社長のときあいさつに行っておるようなところは、やはり会社にすれば、その次にまた社長就任したときにあいさつに行っているんじゃないですか。これはどうですか。 |
○若狭証人/大庭さんのそういうところへごあいさつに行かれた意味は何であったか知りませんけれども、私はそういうところにあいさつするようなことは一切いたしておりません。 |
○渡部(恒)委員/そういう話ですね。それから、児玉さんがロッキード、これを熱心にやっているということは、これはいまに始まったことでなくて、昭和三十三年、グラマンかロッキードかで大変な騒ぎをしたときに、これは全国的にも有名になった話でありますね。そういうことがあるんですから、あなた方が本当にロッキードを選ぶとき、これはあなたらは潔白に選んだと言っているのですけれども、そのロッキードというのを研究しておるとき、そういう世間周知のようなことを知らないはずないと思うのですね。ただ、だからうそというのは、あなたは児玉さんのそういうものの影響をおれは受けないで、純技術的に決めたんだということを強調したい余りに、何か児玉と一遍でも会っているとか、そういうことを知っていると、何かそれに左右されたと思われたくないという気持ちで言ったとも思うのですけれども、児玉機関が昭和三十三年からあれだけ騒いで、週刊誌や何かに書かれて、ロッキードの推進力になっていることを、ロッキードを社運をかけて選定するあなたが知っておらないなんてこともないのに、知らないと言っているのですね。これはどうなんですか。 |
○若狭証人/ただいまの御質問でございますけれども、児玉さんがロッキード社の秘密代理人であったという事実を知らなかったことはまことに私の不明の至りでございまして、これはむしろ軍用機についての問題ならばともかく、商業機についてそういう秘密な者がいるということは、全くわれわれ考えも及ばなかったことでございます。そういう点で、一度もそういうような影響を受けたこともございませんし、最後までそういうことを知らないできたことは事実でございます。 |
○渡部(恒)委員/どうも腑に落ちない感じですけれども、次に移りますが、先ほど大庭社長の証言の中で、社長を辞任するに至った理由は全くの社内事情だった。その社内事情というのをいろいろ聞いたんですけれども、重役間で意見が合わなかった。それが、恐らくこれはダグラスとロッキードの問題だったと思うのですが、その名前はだれだと言ったら、鈴木さんと渡辺さんと意見が合わなかったということを言っているんですね。これについて、あなた、どう思っていますか。 |
○若狭証人/大庭さん辞任の問題は、機種の選定とは全く関係はございません。それから、意見が違うというような、そういう社内的な意見の相違によって出てきたものじゃございませんで、先ほどお話が出ましたけれども、特別な融資事件についての社会的な責任という意味から、このままでは会社に思いがけない迷惑をかけることになるから辞任したいんだということをおっしゃったのが事実でございます。 |
○渡部(恒)委員/この前のときに野間委員が「この鈴木さんはDC10を推しておった、そして役員会の中でトライスターに決めるという問題が煮詰まったころ、そういう論議をされたころに、それにサインをすることができない、署名を拒否して、そのことでやめられた」。これに対してあなたは「ダグラスを推しておったという事実は全くございません。それからその署名を拒否した、そういう事実も全くございません」と言っているんですね。これはもう一遍それを自信持って証言できますか。 |
○若狭証人/そのとおりでございます。そういう事実は一切ございません。 |
○渡部(恒)委員/時間が参りましたから、これで終わります。 |
○正示委員長代理/これにて松永君、渡部君の発言は終了いたしました。次に稲葉誠一君。 |
○稲葉(誠)委員/若狭さん、お聞きしたいんですけれども、昭和四十七年の九月の初旬に外電で、ロッキードをあなたの方が買うのが決まったということが報ぜられたということがありましたか。 |
○若狭証人/九月の初旬にそういうような外電が入りまして、私は大変驚きましてロッキード社へやはり抗議したということを記憶いたしております。と申しますのは、この前の証言でも申し上げましたとおり、十月の中旬に至りまして……(稲葉(誠)委員「それはわかっている。その話はこの前聞いているからこの前のことはいいです」と呼ぶ)ああ、そうですか。それじゃ。 |
○稲葉(誠)委員/この前話したことはもういいですよ、時間ばかりとっちゃうから。そこで、ロッキードのホートン会長が何を言ったんですか、これは。自分の方のトライスターをあなたの方が買うことに決まったんだというような談話でも何かホートン会長が発表したのですか。 |
○若狭証人/はっきり記憶いたしておりませんけれども、全日空が多分トライスターを買うであろうという談話を発表したんだと思います。 |
○稲葉(誠)委員/それはどういう根拠に基づいてホートン会長が発表したというふうにあなたお考えになりますか。 |
○若狭証人/私は、先ほど申しましたようにダグラスの事故が相次いだという問題、それからデモンストレーションフライトに両機が七月に参りましたけれども、そのときの日本の国内の反響、そういうようなものを踏まえた、そういう結果に立ってロッキードの方が有力じゃないだろうかということを、恐らく自分の身びいきであったのかもしれませんが、そういう発言をしたんではないかと思います。 |
○稲葉(誠)委員/その抗議したというのは、ホートン会長にあなたが抗議したのですか。 |
○若狭証人/ロッキードの支社に対して抗議をいたしました。 |
○稲葉(誠)委員/それはどういう抗議をしたの。 |
○若狭証人/私が直接やったわけではございません。担当者を通じてでございますが、そういうふうな決定は全くされておりませんし、まことに迷惑であるという抗議をしたはずでございます。 |
○稲葉(誠)委員/そういう決定をしていないから迷惑だというふうに、あなたの方から見れば非常に信義に反しているわけですね。そう思いませんか。 |
○若狭証人/そのとおりであろうと思います。 |
○稲葉(誠)委員/信義に反しているのに、なぜそれを継続してロッキードから買うようになったのですか。おかしいのじゃないですか。それだけあなたの方で抗議しているなら、はっきり結末をつけるべきじゃなかったですか。 |
○若狭証人/機種の選定は、先ほど申しましたように、そういう問題とは別に安全性の問題あるいは騒音問題から検討いたしているわけでございますので、そういう結論に従ってやろうということでございます。 |
○稲葉(誠)委員/それでは話を変えますが、十月二十四日に田中総理に会われた。それはセットはどういうふうにして、前もってだれがどういうふうな形でセットしたのですか。 |
○若狭証人/恐らく私の秘書がセットしたと思います。 |
○稲葉(誠)委員/これはだれを通じてどういうふうにしたのですか。 |
○若狭証人/いつも内閣官房の秘書官を通じてやっていると思います。 |
○稲葉(誠)委員/それではそのときの模様を、いま前に荒舩委員長からお話がありましたけれども、よく聞き取れなかった点もあるものですから、ちょっともう少し詳しくお話し願いたいと思うのです。 |
○若狭証人/私の方から、総理・総裁におなりになりましてから、全日空機を国内旅行でチャーターしていただいてありがとうございます。また中国フライトについても協力していただいてありがとうございますということのお礼を申し上げたわけでございます。それで、大変お客が立て込んでおりまして時間がなかったわけでございますが、その際、帰り際に私から、機種選定については三年間にわたって事務的に検討いたしておりますので、安全第一に近く決定するつもりでおりますが御了承いただきたい、ということを申し上げたわけでございます。 |
○稲葉(誠)委員/田中総理になぜそういうふうなことをあなたの方で言われなければならぬ理由があるのですか。そこら辺があなた、おかしいのじゃないですか。そこら辺から問題や疑問が出てくるのですよ。おかしいですよ。なぜ田中総理にそういうことを言うのですか、直接。なぜそういう必要があるのですか。前もって何かなければならないでしょう。おかしいですよ、それは。 |
○若狭証人/別にむずかしい問題があろうとは思いませんで、先ほどから申し上げておりますように、総理の方へ御面会をお願いしましたのは、そのあいさつのためでございます。ただ、当時新聞紙上いろいろなことが言われておりましたので、そういう意味でそういうことには一切関係なしに事務的に結論を出したいということを申し上げたまでのことでございます。 |
○稲葉(誠)委員/だから、田中総理大臣になぜ言う必要があるのですかとぼくは聞いているのですよ。そんなことは運輸大臣に言えば済むことじゃないですか。 |
○若狭証人/そういうお礼のために行っただけのことで、いまおっしゃるとおり全く余分なことを申し上げたというおしかりを受ければ、そのとおりかもしれません。 |
○稲葉(誠)委員/余分なことじゃないのじゃないですか、あなた。そうすると、そういう話をしたら田中さん何と言いましたか。よくわからないのだ。ちょっとそこのところだけでいいですよ。ほかのことはいいですよ。そこのところだけ詳しく話してくださいよ。 |
○若狭証人/それは当然のことです、しっかりやってください――これだけのことです。 |
○稲葉(誠)委員/だから、この前の質問のときには、田中さんの方から頼まれませんでしたかという質問だから、あなたは頼まれないと答えたので、それはそのとおりでいいと思うのですよ。あなたは役人育ちだから、なかなか答弁うまいよ。いやいや、それはうまいうまい、なかなか。わかりますよ。そのときに、あなたは、これはどっかでしゃべったのか知らんけれども、田中さんからニクソンはロッキードを頼むと言っているよという話があった、というふうにどっかでしゃべっていませんか。 |
○若狭証人/そういう事実はございません。 |
○稲葉(誠)委員/そうすると、またよくわからないのですが、田中さんのところでその航空機の選定のことに関連して安全性のことでしゃべったこと、よけいなことか何かわからぬけれども、この前あなたは表敬訪問だと言っていましたね。表敬訪問で何かしゃべった、いま言ったようなことをしゃべったのでしょう。どうもわからないな、なぜそれを田中さんにしゃべったのか。わからないですよ、ぼくには。ぼくは頭が悪いからわからないのかどうか知りませんが、それでは運輸大臣とどういう話をしたのです。いつごろ、どういう話をしたの。 |
○若狭証人/いま申しましたように田中総理につきましては表敬訪問が主体でございます。当然そのために行ったわけでございます。ただ、立ち際に、当時新聞紙上でまあいろいろなうわさがありましたので、これは事務的に決定するものでございますということを、先生は余分なことであるという御指摘がございましたが、あるいはそのとおりであるかもしれません。それから運輸大臣については、これは運輸省にはしょっちゅう行ってまいりますので特別な用があって行ったわけでございませんけれども、やはり選考過程について、運輸大臣については、三年間にわたって検討した結果によって決定いたしますということを申し上げたように記憶いたしております。 |
○稲葉(誠)委員/だから、運輸大臣のところへ行ったのはいつなんですか。どっちが先なんですか。 |
○若狭証人/私はいまはっきり記憶いたしておりませんけれども、恐らく同一の日であるかあるいは翌日であるか、運輸大臣の方が後であったというふうに思っております。 |
○稲葉(誠)委員/その問題を総理大臣に話をしなければならないということは、どうもよく私にはわかりませんね。とかくのうわさがあったというのは、だれがうわさがあったか。どんなうわさがあったのです。 |
○若狭証人/いま先生がおっしゃいましたように、ホートン会長が決めたとかなんとかといううわさがあったり、いろいろな問題がございましたので、そういうことは関係ございませんということを念のために申し上げたということでございます。 |
○稲葉(誠)委員/だから、ホートン会長が決めたということと田中総理大臣とどう結びつくのですか、あなた。そこが問題じゃないですか。あなたの答えはそこは答えてないですよ。そこを答えてくださいよ。そこは国民が一番疑惑を持っておることですよ。 |
○若狭証人/全く余分なことであったと思います。 |
○稲葉(誠)委員/いや、余分なことはわかったよ。余分なことはわかったけれども、なぜ田中さんにそういうことをあなたが言わなければならないのですか。それはあなたの一存ですか。田中さんがそのとき何かうわさの的になっていたのですか。どうなっているの、それ。(「そういうふうに引っかけるんじゃないよ」と呼ぶ者あり)いやいや、引っかけているわけじゃないよ。田中さんにそういうことを言うということがおかしいよ。だれだってこれはおかしく思いますよ。それはぼくだけではないよ。国民みんなそう思うよ。いやいや、ぼくは納得できないですよ。そんなの、おかしいよ。それはおかしい。 |
○若狭証人/御指摘のとおり余分なことでございました。 |
○稲葉(誠)委員/いやいや。では話を少し変えましょう。小佐野賢治という人がいるでしょう。この人はあなたの会社の何ですか。何ですかというのもあれだけれども、まず社賓ですね。社賓というのは何人ぐらい、だれとだれとだれがいるの。それから個人株主ではこれは筆頭株主ですか。 |
○若狭証人/社賓というのは、大体において全日空の創立以来非常にお世話になった方々を社賓としてお願いいたしておるわけですが、十数名であろうと思います。何か特別な用があれば相談をしていただく。相談にこちらからお伺いするということで、一度に集まって何かするというようなことはいたしておりません。 |
○稲葉(誠)委員/それでは、小佐野に創立以来どういうお世話になっているのですか。 |
○若狭証人/先ほどおっしゃいましたように、個人としての大株主ということについて、やはり会社の運用について御相談する場合があるというふうなことで社賓になっていただいたわけでございます。 |
○稲葉(誠)委員/このトライスターの選定というのは社運をかけた問題だとあなたはお話しになりましたね。これはそのとおりだと私も思うのです。そうなれば、社賓なり筆頭株主に対して、その途中の経過をあなたの方からお話しをするというのは、ある程度お話しをするというのはあたりまえのことじゃないですか。それでなかったらあなた、株主総会で大変な騒ぎになって、あなた方退陣に追い込まれてしまうのじゃないですか。これはあたりまえの話ですよ、個人としては筆頭大株主ですもの。あたりまえの話じゃないんですか。 |
○若狭証人/先ほど申しておりますように、機種選定というのはあくまで技術的な問題、安全の問題を中心にいたしております。したがって、その経過を一々個々の株主について報告するというようなことは一切いたしておりません。 |
○稲葉(誠)委員/いやいや、これは個々の株主でも、大変失礼な話だけれども、一株や二株持っている人と言えば言葉は悪いけれども、そういう人に一々話すわけにももちろんいきませんよ。だけれども、大株主や何かについては前もって話をしていかなければ、株主総会であなた、困っちゃうでしょうが。あたりまえの話でしょう。急にこういうふうに決まりましたと言ってやられて、社運をかけた問題でやられて、じゃ株主総会で反対されたらどうするのですか。否決されちゃったらあなた、どうするのですか。おかしいじゃないですか、こんなことは。あたりまえじゃないか、前もって話をしておくのは。小さな株主まで話をしろとは言いませんよ、そんなのは。あたりまえのことですよ。 |
○若狭証人/株主間にもいろいろと各社の利害関係の問題もございましょうし、先ほどから問題になりました、たとえばDC10の代理店というのは三井物産がやっております。三井物産は全日空の第三位の株主でございます。そういうようないろいろな関係もございまして、われわれ事務的に純粋に技術的な結論を出して、その結果を取締役会に報告をいたしまして了承を受ける。取締役会には大株主が相当入っておいでになるわけでございます。そういうことで会社の運営をやっておるのが現状でございます。小佐野さんは、大株主と申されましても個人としての大株主でございまして、株式の保有率といたしましては恐らく一%余りの程度のものではないかというように考えております。 |
○稲葉(誠)委員/そうすると、だけどあなたはほかのところでは、小佐野さんがあなたの方にトライスターならトライスターをやってくれと頼むということはこれは言ってないかもわかりませんよ。いいですか、言ってないかもわかりませんよ。あるいは機種のことについていろいろな話はなかったかもわかりませんけれども、それに似通った話が、その決まるころ、昭和四十七年の八月ごろから九月、十月ごろにかけて、小佐野さんとあなたはあなたの会社で二、三度お会いになっているのじゃないですか。そういうふうなことをあなた言ったことはありませんか。 |
○若狭証人/やはり大株主という関係だけじゃありませんで、たとえば日本航空の株主でもあり、あるいは東亜国内航空の役員もしておいでになりますし、あるいはわれわれの関連事業をやっておりますホテル関係の仕事もしておりますから、そういう関係で何回かお会いしたことがあると思いますが、いま言われたような期間にそういうふうにお会いした機会があったかどうかは私は全く記憶いたしておりません。 |
○稲葉(誠)委員/あなたはほかのところで「小佐野(賢治)さんも、あのころ、たびたび私のところに来ましたよ。そして、いつもトライスターの話です。いつ結末をつけるのかとか何とか。ただ小佐野さんも、トライスターを買ってくれ、とはついにひとこともいいませんでした」、こういうようにどこかで言っていませんか。小佐野さんも買ってくれとは言わないよ、彼もなかなか怪物だから。彼なかなかうまいよ。そうは言わないけれども、機種はどうなったというようなことを小佐野さんもあなたに聞いたことがあるんじゃないですか。そういう程度の話ね。 |
○若狭証人/その週刊誌の記事につきましては現在抗議をいたしておりまして、その表現に非常に誤りがたくさんございます。そのころたびたび会ったとかなんとかという記憶は私にはございません。 |
○稲葉(誠)委員/表現に誤りがあるというのはどういうことなの。 |
○若狭証人/私はその全部を覚えているわけじゃございませんが、そういう個所がずいぶんあったと思います。そういう点で、会社として正式に抗議を申し込んでおります。 |
○稲葉(誠)委員/逆に聞きますけれども、そうすると、八月三十日に何かいろいろな――あなた出席しなかったんですか、あの機種選定委員会か何かね。 |
○若狭証人/これは委員会の総会でございまして、その結果を委員長ほか数名の者から社長に報告するという形式をその後日とったわけでございます。 |
○稲葉(誠)委員/そのときに各機種の長所短所のことについて話が出て、上申書か何か出たんでしょう。ロッキードの短所というのはどういうふうに出てきていましたか。 |
○若狭証人/選定準備委員会は、その名前のとおり準備のための委員会でございまして、具体的な詳細なデータをすべて調べ上げるというところでございます。したがって、それに直ちに評点が何点になるとかなんとかというものではございません。具体的に申しますと、たとえば飛行場へ参りましてお客をおろしてからまた乗せるまでの時間が何分かかる。たとえばダグラスの場合は五十分である、それからロッキードの場合は四十五分であるというような、そういう具体的なデータを調べ上げて提出するところでございまして、その結果を総合的に評価いたしまして、たとえば甲乙丙というような、そういうような評点をつけるところではございません。 |
○稲葉(誠)委員/大庭さんは、もうダグラスでいくんだということが自分に一任されるというふうに思って仕事を進められておったというふうに、もうさっき答えていたんですよ。それはあなたは直接知らないかもしれないとしても、直接話はなかったかもしれませんけれども、あなた自身、そういうふうに大庭さんが考えているということについては推察できましたか。 |
○若狭証人/まだ飛行機もできない状態のときに、DC10でいくんだということをお決めになるということは夢にも思っておりません。 |
○稲葉(誠)委員/それは大庭さんの話と非常に違うのですよ。後で議事録を正式に調べてやらないといけませんけれども、非常に違うのですね。それから、常務会でいろいろ話が出た。あなたも出席していて、機種選定のことについての話が出た。確定的な話かどうかは別ですよ、話が出たということを言っているのですね。だから、当然自分の気持ちというものはあなた方もわかっていてくれたはずだ、こう言うのですが、どうなんでしょうか。あなたは全くわからなかったのですか。 |
○若狭証人/飛行機ができない状態でそういうような予見というものをお持ちになっているとは想像もできないことでございました。 |
○稲葉(誠)委員/いやいや、そうじゃなくて、常務会で話が出たかどうかと言うんですよ。まず話が出たかどうか。それから第二段は、話が出なかったとしても、それに近い話が当然出ていたはずだ、こういうふうに思うのですがね。そこのところどうなんですかと聞いているんですよ。 |
○若狭証人/そういう話は私だけではございませんで、社内のだれ一人記憶いたしている者はないと思います。 |
○稲葉(誠)委員/時間の関係もあって、話をもう一遍田中さんのところに戻しますが、あなた、いやかもわからぬけれどもしようがない。田中さんのところに行ったとき、この前の証言ときょうの証言とは、あなた自身は食い違っているというふうに思うのですか。あるいはそれが修正されたというふうに思うのですか。あるいは食い違っておらないというふうに思うのですか。どっちなんでしょうか。 |
○若狭証人/私は決して食い違っておるとは思いません。 |
○稲葉(誠)委員/その理由は。 |
○若狭証人/この前は、まず何のために総理を訪問したかという御質問、それからその席上でトライスターを買ってもらいたいという話はなかったか、あるいは大型機についてどうするという話はなかったかというような御質問があったと思います。で、それについては、総理からそういう話はございませんでしたということを申し上げたわけでございます。 |
○稲葉(誠)委員/その前に、ことしの二月の六日か七日ごろに新聞社の人に対して、これは楢崎さんが質問していることですが、正直言って昭和四十五年秋までは有力代議士がなんとかできないかとか、いま選定作業はどうなっているかという打診はありました、こういうようにあなたが語ったということで質問を受けているわけですね。そういうことあったでしょう、質問を受けたこと。そのことはどうなんですか、事実は。 |
○若狭証人/昭和四十五年ごろまではという、そういう物の言い方につきまして、ことに有力代議士というような言葉を使うということは絶対にございません。ただ、私が申し上げましたのは、ロッキードについて何らかの代議士さんなり何なり、政治家から何とかしてもらえないかという話は一度も聞いたことがございません。それは絶対にありませんということを申し上げる余り、ほかで何かそれはあるかもしれませんというような、あるいはあいまいな言葉を言ったことが有力代議士とかなんとかいう言葉として表現されたんじゃないだろうかということで、そういうような言葉を使ったことは絶対にございません。 |
○稲葉(誠)委員/だけど、あなたはこの二月十六日に、これは塩谷さんに答えているんですけどね。ロッキード社からはそういうことはなかった。なかったけれども「仮にあったとすればロッキード以外のところであったかもしれない、というようなことを申し上げたというように記憶いたしております」と、こう言っているんだよ。言っているでしょう、あなた。書いてあるよ、これに。ちょっと待ってくださいよ。ロッキードにはなかったんだ、だけどほかのものにはあったんだということをあなた認めているんじゃないの。それで言い足りなかったと言っているんだけど、言い足りなかったんじゃないんだよ。逆よ、むしろ。これはどういうつもりで――こういうことを言ったことはあるの、ないの。 |
○若狭証人/いま申し上げたとおりでございまして、それ以外ならば何かあったかもしれませんがということを申し上げましたけれども、有力代議士であるとか代議士であるとかという言葉は一切言っておりません。 |
○稲葉(誠)委員/いや、有力代議士とか何とか聞いているんじゃないのよ。ロッキードのことはないけれども、ほかにはあったかもしれませんというようなことを言っているでしょう、あなた。言ったか言わないのかどっちなのよ、それは。 |
○若狭証人/それはそういうことを申し上げたかと思いますが、政治とか何とかということじゃございませんで、私にも数多い友人なりあるいは商社の友人もおりますから、いろいろな場合にいつごろ決めるんだとか、どうするんだとかいうことは聞かれた事実はございます。そういうことを申し上げたわけでございまして、政治の問題をそこへお答え申し上げたわけでは決してございません。 |
○稲葉(誠)委員/そんなことはないよ。全体読んでみれば政治家の話じゃないのですか。あなたの話は、非常におかしいのですよね。きょうも出てきているでしょう。軍用機の場合はともかくなんという話が出てきましたね、さっき。あれはどういう意味なの、あなた。どういうことなの、あなた。 |
○若狭証人/私は、軍用機のことは何も存じ上げませんので、軍用機の場合は私の知ったことではございませんけれども、民間機の場合に、そういう秘密代理人という制度があるということは全く存じておりませんでしたということを申し上げたわけでございます。 |
○稲葉(誠)委員/児玉譽士夫の話もさっき出ましたよね。あなたはそういうところへ行く必要ないということを言いました。まあ、そういうところという言葉はどうでもいいですが、行く必要ないというのは、行く必要がなかった理由があるんじゃないの。大庭さんは行ったんですよ。何しに行ったと思いますか。どういうわけで行ったと思いますか。総会屋対策だ、こう言っているんです。あの人はダグラスだから、児玉はロッキードを推していることがわかっているから、株主総会でやられちゃ困るからというので行ったんじゃないですか、これは。あなたの場合は児玉はロッキードをやっているということはわかっているから行く必要がないということじゃないですか。そういう推理が――だからぼくは推理だとこう言うんですがね。推理はそこに成り立つんじゃないですか。それは常識じゃないの。だからそういうところというのはどういうところなんです、何なの。 |
○若狭証人/大変恐縮でございますけれども、大変間違った推理でございます。大変間違った推理ではないかというふうに思いますが、株主総会で機種の問題を決定するというようなことは、私は、私の信念としてはあり得ないことだと思います。機種の決定というのはあくまで安全第一に、技術的な見地によって決定さるべきものでありまして、それが政治的な言動であるとか圧力であるとか、あるいは金銭であるとかということによって決定さるべきものでは絶対にないと私は信じております。 |
○稲葉(誠)委員/いやいや、最終的には株主総会で議決しなければいけないんじゃないの。それは後からでもいいですよ。事後承認でもいいけれども、ちゃんと議案として出さなければならないんじゃないんですか。そのものずばりで出すか、決算の関係で出すか予算の関係で出すか、わかりませんよ。出さなければいけないので、そこで否決されたらあなたはどうなるの。機種選定、それに金がかかるわけでしょう。これだけの金がかかるというのは全部出すんじゃないですか。それはあたりまえのことじゃないですか。だから総会屋対策が必要だ、こう大庭さんが言ってるんですよ。あなたが行かないのは別として、株主総会どうでもいいようなあなたの話はどうもおかしいですな。納得できないですよ。 |
○若狭証人/株主総会を軽視するわけでは決してございませんけれども、株主総会には必要資金をどうするというような問題、配当をどうするというような問題、当然出てくるわけでございます。その内容を分析すれば、どの機種を何機買うというような問題は当然出てくるわけでございますけれども、その機種の内容について、どの機種を決定するかという問題はあくまで社内の技術的な検討によって決定すべきものであるというふうに私は思っておりまして、したがってどの機種を決定しましょうかというようなことを株主総会に付議するということはございません。 |
○稲葉(誠)委員/冗談じゃないよ。それはロッキードならロッキードを買うということを、全部費用を含めて株主総会へ提案するのはあたりまえの話じゃないですか。時間が来ましたからこれ以上あれしませんが、さっきの大庭さんの証言とあなたの証言とはずいぶん違うのですね。それは議事録を調べて、そしてその後で十分あなたにお聞きする必要があると思うのです。それから、最後の田中さんのところへ行って、田中さんに報告をしたというのか話をしたというのか何だかわかりませんけれども、なぜそういう必要があったのか。なぜそういうふうなことをしたのか。単にそれがよけいなことだということでは、これはもう済まないと私は思うのですよ。どうもよくわからない。前に何か伏線がなければ、前に、だれからか知らぬけれども話がなければ、そういうふうに行くわけはないと思うのですよね。ぼくはわからぬな。納得できないですよ。これは国民もそこで疑問を持つのじゃないですか。この前はあなたは、田中さんから何も頼まれなかったからと言っておいて、きょうは、それは頼まれはしないけれども、あなたの方から話をしたということを言っているんですから、なぜその必要があったのか。どういう理由だったのか。ただ言葉が多かったとかなんとか、よけいなことだったとか、そういうことでは国民の疑惑は晴らせないと思うんですよ。私はそういうふうに思いますね。あなたはどう思うか知りませんけれども、私はそういうふうに思う。だから将来の問題としては、いまの議事録を調べて、あなたの言うことが正しいのか、大庭さんの言うことが正しいのか、両方をもう一遍尋問をせざるを得ないということになってくるし、田中さんのところへ行ってあなたが報告をしたというか話をしたということから見て、なぜそれだけの必要性があったのか。どこからそういうことになってきたのか。このことをやはり当委員会として明らかにしなければならぬということを私は最後に申し上げて、時間が来ましたので、私の質問を終わります。 |
○正示委員長代理/これにて稲葉君の発言は終了いたしました。次に三浦久君。 |
○三浦委員/共産党の三浦です。あなたはこの前の証言で、社長就任後に三井物産の副社長や担当常務と会ってオプションの存在、いわゆるオプションがあったのかどうか、このことを確かめた、こういうふうに言われましたね。なぜ三井物産に尋ねて、いわゆるこの契約を結んだ本人である大庭さんには確かめなかったのですか。 |
○若狭証人/大変デリケートな問題でございますけれども、大庭さんはおやめになるときのいろいろないきさつがございまして、私は今後航空界から一切手を引かしてもらいたいということを私にもおっしゃいました。そういうような経緯もございましたので、大庭さんにはじかに確かめなかったわけでございますし、常識的にそういうようなことはあり得ないというふうに信じておったわけでございます。 |
○三浦委員/それは全く理由になりません。おかしいでしょう、あなた。あなた、社長さんになって事務の引き継ぎもしない、そういう段階で、事務の引き継ぎもしないで、そしてそういう社内問題について――あなたの内部の社内問題なんですよ。結局オプション契約があったかなかったのかということを新任の社長が知らないということでしょう。それだから、それを確かめるというのに、取引先である三井物産に行って確かめるなんというのは、これはもう非常に不見識ですね。普通では考えられないことです。普通であれば大庭前社長に問うのがあたりまえじゃないですか。デリケートな問題があるといったって、そんな社内の恥を外部にさらすようなことを何でそんなことを平気でやるのですか。 |
○若狭証人/先ほど三井物産の副社長というお話でございますが、この前申し上げましたように、いまお亡くなりになりましたけれども、若杉社長、それからいまおっしゃいました副社長と、それから担当の常務の方、お三人でございます。それに確かめまして、先ほどから何回も言っておりますように、そういうことは一切なかったということをはっきりしておるわけでございます。改めて大庭さんに確かめるまでもないというふうに思いました。 |
○三浦委員/冗談じゃないですよ、あなた。改めて大庭さんに尋ねるまでもなかったなんて、そんなことがどうして言えるんですか。大庭さんが契約の当事者なんですよ。あなたがなぜ大庭社長に聞かなかったのかと言えば、聞けなかったんですよ、あなたは。お互いに知っていることなんだから。オプション契約が存在したということをあなたはわかっているわけだ。大庭さんもわかっているわけだ。だから、そんなみっともないこと聞けないじゃありませんか。あなたが大庭さんのところへ行って、オプション契約があったんですか、おまえ何とぼけているんだ、こう言われてしまうんで、結局大庭さんには確かめなかったというのが事の真相じゃありませんか。それじゃなければ、そんな社内事情をいきなり三井物産に持っていくなんていうことは考えられないことですよ。そうじゃありませんか。 |
○若狭証人/オプション契約というものは、先ほどから、恐らく大庭さんが御説明なさったと思いますけれども、別に義務を伴うものじゃございません。したがって、それがあったかなかったかということがそれほど私は大きな問題じゃない。したがって、三井物産の方からDC10の購入についての説明がありました際に、そういうようなことを確かめただけのことでございます。 |
○三浦委員/オプション契約が大したことないというのはどういうことなんですか。重大な問題だとあなたは言い続けているでしょう。だから、勝手に単独にはできないんだ、大庭さんが単独ではできないほど重要な問題なんだということをいまここで証言しておって、そのオプション契約が大したことはないんだって、どういうことなんですか、それは。あなた、機種を選定するということなんですよ。もちろん正式契約がなければ、オプションというのは、これは自動的にパアになりますね。一定の時期まで、いわゆるこの輸入の許可であるとか役員会の承認であるとかを得て正式契約を結ぶまでの間は、それは結ばなければ自動的に消滅するものですよ。しかし、少なくとも、オプション契約を結べば相手にはそういう期待権を与えるし、そしてまた売り込みもそれによって激しくなってくるわけで、これは非常に重大な問題ですよ。それを、大したことじゃないからちょっと確かめただけだ、そんないいかげんな答弁じゃ困るんですよ。大庭氏はこう言ってますよ。自分がやめるとき大変頭が混乱しておった、しかし、オプション契約の問題だけは頭にあって、これを処理しなければいかぬと思った、だから、あなたたちに、三井と相談して処理してください、そういうふうに言ったとはっきり証言をされているんですよ。それで、あなたは新任のあいさつかたがた三井物産に行っているんですよ。そして、その三井物産でこのオプション契約の効力について聞いている。その効力について聞いているんですよ、こういうオプションがあるけれども、どうなんだ。それが事の真相じゃありませんか。どうですか。 |
○若狭証人/大庭社長から、DC10のオプションの問題についてはよろしく頼むということは一切聞いておりません。また、私が三井物産へ出かけて、そうしてこのオプションの問題を聞いたという事実も全くございません。 |
○三浦委員/それはあなた、偽証になりますよ。渡辺副社長は、あなたが三井物産の社長さんと会って、社長さんの話だと言っていろいろ聞いて、そして、あのオプションは大したことないんだ、あれは道義的にも法律的にも何にも責任がないんだ、こういうふうに若狭社長から聞いています、とはっきりこの前証言しているんですよ。あなた自身が三井物産に直接出かけていって、そういう話をしてないなんて、それはあなた、渡辺証言と全く食い違うんですよ。どうなんですか。 |
○若狭証人/いま私が申しましたのは、私が三井物産へ出かけてそういうことを申し上げたわけではございません、三井物産の方からわが社へ来られまして、DC10を購入してもらいたいというお話があった際に確かめた問題でございます。ということを申し上げたわけでございます。 |
○三浦委員/それはおかしいんですよ。あなたは確かにこの前の証言では、副社長を呼んで、そして確かめた、こう言っています。しかし、渡辺副社長は、あなたが三井物産の社長から聞いた、そういうふうに証言されているんですよ。三井物産の社長から聞いた話であるけれども、若狭社長は、三井物産の社長がこうこうこう言っておりました、全日空は法律的にも道義的にも責任がない、そういうように三井物産の社長が言っておりました、とはっきり述べておるんですよ。思い出しませんか。 |
○若狭証人/そのとおりでございますが、それは私の会社へ来て、三井物産の社長、副社長及び担当常務が私に対して言われたことでございます。 |
○三浦委員/証言が変わりましたね。あなた、オプション契約というものが存在しないのに、なぜ三井物産が、これについては法律的にも道義的にも責任がありませんなんということをあなたたちに言うんですか。存在しているからこそ、その存在している契約に対する評価として、法律的にも道義的にも責任がありませんよ、と言うんです。もしか、そういうオプション契約があるのかないのかわからない、ないんだということを三井物産が確信しているんなら、いや、そんなものはありませんよ、と言えばそれで済むことじゃありませんか。何にも存在しないものについてまで、いやあなたは法律的にも道義的にも全く責任がありませんよ、なんて、そんな大時代的なことを言わなくたって済むわけなんですよ。 |
○若狭証人/いま先生がおっしゃったとおりでございまして、むしろ、そういうオプション契約があったということをわれわれ知らないわけでございますので、そういう点について、今後選定を正式に始める際に、何かありませんか、いや何もございません、何か全日空として法律的な、あるいは道義的な問題が前社長、あるいは前社長でなくても担当役員でも結構でございますが、何かもしあったらはっきり言ってください、われわれの方はそれについて責任をとりますから、そういう面についてはっきりした上で選定作業にかかりたいと思いますから、はっきり言ってください、ということを、私の会社へ三井物産の社長、副社長及び担当常務がおいでになった際に申し上げたことがございます。ということを申し上げたわけでございます。この証言は、この前と全く変わっておりません。 |
○三浦委員/これは全くでたらめじゃないですか。あなた、オプション契約が存在したかどうかということについて何にも疑いを持たないでいて、それでそういうことを言ったというんですか。何かありましたら責任をとりますけれども、何かあるでありましょうか、そんなことを言うはずないじゃありませんか、あなた。いわゆるオプション契約の存在があるのかないのかということに、あなたたちが疑いを持っているから、だから、どうなんですか、というふうに聞いているんじゃありませんか。この前の証言ではそうですよ。この前の証言をちょっと読んでみましょうか。同僚議員の質問に対して、「オプションと申しますか、いわゆる製造ナンバーを二、三機押さえられたという事実はありませんか」、「そういう事実は全くございません」。そして、さっきあなたが言われた「当時同席しました副社長及び担当常務がおいでになりますが、その人を呼んで、過去にいろいろなことを言われておりますけれども、全日空について何か責任はありましょうか、法律的な責任はありますか、いや、それはありません、」。こうなってますでしょう。過去にいろいろ言われておりますがというのは、オプション契約があるとかないとか、そういうことがいろいろ言われておるがという意味でしょう、これは。そうじゃありませんか。そうでしょう。何にもない、雲かかすみかみたいなものをあなたが指しているのじゃないと思いますよ。 |
○若狭証人/そういう疑いを持った時期があったと思います。 |
○三浦委員/それはおかしいじゃないですか、だから。証言がくるくるあなた変わっているんですよ。具体的にそういうオプション契約があったかなかったかということについて、具体的な疑問をあなたがお持ちになったからこそ、三井物産に飛んでいって聞いているわけでしょう。三井物産に聞くなんというのは大変おかしい話なんです。こんなことは余り論議しても、時間がなくなってしまいますので次に移りますけれども、あなたは、三井物産が法律的にも道義的にも責任がないと言ったからオプション契約は成立しなかったんだ、こういうように断定されていますけれども、これは全く間違いなんですよ。むしろ法律的にも道義的にも責任がないという判断をしたということこそが、その存在を証明しているわけなんです。さっき言いましたように、何にもないところに法律的、道義的な責任がありませんとかありますとか、そんなことを言うはずはないのです。そうでしょう。だから客観的なそういう状況というのは、この前のあなたたちの証言だけ見ても、明らかにオプション契約は存在しておったということを立証しているのですよ。あなた、それでもオプション契約は存在しなかったというふうに言い張るのですか。 |
○若狭証人/オプション契約などというものが、われわれの全く知らないところで行われておるというようなことは、全く夢想にもできないことでございました。 |
○三浦委員/いやいや、夢想だにしなかったということは、存在は認めるという意味ですか、現在は。 |
○若狭証人/そういうものはなかったろうと思っております。 |
○三浦委員/この前は全くありませんでしたと言ったけれども、きょうは少し変わってきていますね、だろうと思いますと。だんだん、確信が揺らいできたようですけれども、ここにこういう本があります。「まるべに」という本です。丸紅の社内報です。一九七四年の五月号です。これに丸紅の亡くなった松井さんの追憶が書かれています。この中にこう書いています。「全日空はすでにダグラスに内定済みとの情報も、実は入手して」おった。だから「セールスは困難を極めた」。こう書いてある。DC10のいわゆる競争機種トライスターの売り込み、それをやっている丸紅ですら、もうDC10に内定済みなんだ、これは大変だ、これからばんばんそれを巻き返さなきゃいかぬ、こういうことをちゃんと書いているのですよ、当時の状況として。丸紅のセールスマンがわかっているのに、あなた、当時の副社長で、そして第一次調査団の団長で、そして新機種選定準備委員会の委員長で、DC10に内定しておったことも知らないとか、オプション契約も知らないとか、そんなことが世間に通用すると思っておるんですか、あなたは。あなた自身は、オプション契約があったということがばれれば、結局はいわゆるそういう内定があったのに、がっとトライスターに変わってしまった。さあその理由を詳細に突かれていくでしょう。そうするとそこに、政界、財界の黒い手があばき出されてくるということを恐れて、あなた自身は真実を言わないんだということが私ははっきりしたと思います。機種選定のさまざまな経過につきましても、機種選定の延期の理由にしても、また安全を、騒音を、これを重点に置いてトライスターを選んだという問題についても、これからまたあなたとゆっくりお話をしたいと思いますけれども、全くあなたの言い分は理由がないんです。また後であなたといろいろお話し合いをする、そういうことを約束して、時間がありませんので私の質問を終わらしていただきたいと思います。 |
○正示委員長代理/これにて三浦君の発言は終了いたしました。次に近江巳記夫君。 |
○近江委員/前回の委員会におきまして、私はこの田中・若狭会談につきましてお聞きしたわけでございますが、そのとき若狭さんは私に対しまして、田中氏を訪問したのは表敬訪問でしたということをおっしゃいましたね。そのとおりですか。 |
○若狭証人/そのとおりでございます。 |
○近江委員/その後あなたは記者会見をしまして、そのときに、田中さんからそうしたトライスターの話がなかったかと言われたので、私はなかった、私の方からは選定の経過等について報告した、こういうことをおっしゃっておるのですね。私はそういう聞き方はいたしておりませんよ。私は、ここに私の発言でございますが、議事録もございますから、そのとおり読んでみますと、「あなたが会われた日にちは十月の二十四日です。総理官邸でお会いになっておる。そのときの内容はどういう内容だったのですか」。私はこう尋ねておる。これは若狭さんから、また田中さんから、両方からどういう話をされたのですか、このことをお聞きしておるのですよ。なぜあなたはそのときに、私の方からはそうした機種選定の経過について御報告しましたということをおっしゃらなかったのですか。 |
○若狭証人/総理への御訪問の主体が表敬訪問でございますので、そのことを御説明申し上げたわけでございます。 |
○近江委員/ですから私は、そのときの話のすべてを、要点をお聞きしておるわけです。あなたの話というのは非常にそのように真実を語っておらないという、そういう感じがいたします。ところであなたは、その日、田中総理と運輸大臣にお会いになっておるわけですね。先ほどからのお話を聞いておりますと、一つは中国のフライト等のそうしたお礼であり、またあなた自身がトライスターの機種選定の経過を報告した、これだけの話なんですね。そうなんですか。 |
○若狭証人/そのとおりでございます。 |
○近江委員/私は、ここに全日空の社報のコピーを持っております。これは十一月号でございます。ここに「おもな動き」としまして、「十月二十四日 日中定期航路への全日空乗り入れを政府に要望若狭得治社長が田中首相と佐々木運輸相を訪ねて申し入れた」。こうなっておるのです。あなたはこういう話をなさらなかったのですか。 |
○若狭証人/そういう話は絶対にいたしておりません。 |
○近江委員/そうすると、この全日空の社報というのは社員にうそを教えるわけですか。おかしいじゃありませんか。 |
○若狭証人/何かの間違いであろうかと思います。 |
○近江委員/あなたは、何かの間違いであるとか、非常にそういうようないとも簡単に言い逃れをいたしておりますが、これはきわめて重大な問題でございます。あなたは真実を語ってないというような、この証拠がここにも歴然と私はあらわれておるように思うわけでございます。少なくともあなたは、ここで証言台におられるわけです。真実を語ることがいま一番大事なんです。この問題は、きわめて重大な問題であると思います。それから、あなたはいわゆる田中総理に報告したとおっしゃっていますが、そのことを他の委員から質問を受け、余分なことをやった、こうした意味のことをおっしゃっておるわけですが、そういう余分なことをなぜなさったのですか。 |
○若狭証人/先ほども申し上げましたけれども、九月にアメリカで全日空がトライスターを決めたという報道が出たり、当時の新聞紙上、どちらに決まるのかというようなことがございましたので、そういうことについて、やはり私としては最後まで事務的に、技術的に決めるんだということを念のために申し上げておきたいと思ったのでございますが、実は大変時間もございませんでしたために、私と同行いたしました副社長も立ち上がり際に話しただけのことであったものですから、副社長自身はそれは覚えておらない、聞いておらないという状態でございました。ただ、運輸大臣のところへ参りましたときにはやはり同じことを申しまして、機種選定をそのうち遠からず決定しなければならないのですが、三年がかりの事務的な結論をもって決定したいというふうに考えておりますということだけ申し上げたわけでございます。ただ、当時私が運輸大臣を訪ねたりなんかしたというようなことがわかって、それをあるいは何かそういうことをお願いに行ったんじゃあるまいかというふうに誤解されたのではないだろうかというふうに私は憶測いたしております。 |
○近江委員/自主決定であるなら何も総理にあなたが御報告なさる必要ないでしょう。非常におかしいです、こういう点は。先ほどの全日空の社内報といい、あなたのいまの答弁といい、あなたの証言についての真実性ということは非常に薄れてきております。偽証の疑いというものが非常に感じられるわけです。次に移りますが、この大型機の選定時期の延期につきましてお伺いしたいと思うのです。あなたはこの前の証言のときに、延期をしたという理由はいろいろとおっしゃっておりますが、それを総合いたしますと、一つは万博後の旅客の減少、二つ、ボーイング初期事故による大型機の成績不振、三、雫石事故等の発生、四、日航との同調、大体この四点をおっしゃったと思うのですが、間違いございませんか。 |
○若狭証人/そのとおりでございます。 |
○近江委員/ところで、機種延期のそうした動きを見てまいりますと、四十六年六月三十日の機種選定準備委員会第八回委員会におきまして、四十五年に計画を立てて以来初めてこの四十八年以降に導入を延期するということが検討されているわけですね。間違いありませんか。 |
○若狭証人/そのとおりであろうかと思います。 |
○近江委員/そこで、この延期をされたという理由について、あなたは四項目のことをそのとおり間違いないということをおっしゃったわけでございますが、一つは、万博後、あなたは乗客が非常に減りたということをおっしゃっておるのですね。私は全日空のデータで乗客数を全部計算してみました。四十六年の六月三十日にあなた方が導入延期を決定された。万国博覧会が終わったのは四十五年九月であります。したがいまして、四十五年十月から四十六年六月までの九カ月間、これと万博の開催の年である四十五年一月から九月までの九カ月間、これを対比してみました。そうしますと、万博開催時の、前の九カ月間は五百七十万六千九百四十七名乗客が利用している。ところが、終了後の、あなた方が導入延期を決定なさった四十六年六月までは六百二十五万一千二百三十三名です。五十四万四千二百八十六人乗客がふえておるわけです。これは理由に当たりませんよ。それからさらに雫石の事故ということをおっしゃっていますが、雫石の事故は、あなた方が導入延期を決定された一月後の七月三十日ですよ、起きておりますのは。さらに三つ目の原因であるいわゆるボーイングの初期事故につきましては、四十四年に非常に起きておるわけですね。しかし、その後エンジンのトラブル等はすべて改良されまして、日本航空が四十五年の七月から導入しております。それからは事故はないわけです。ですから、そうしたトラブルの心配というのはすべてそこで解決されているわけです。第四点の日航との同調の問題につきましては、日航はすでにジャンボを飛ばしておりますし、国際線に投入しておるわけです。いつでも国内に導入はできるわけです。あなた方がいわゆる同調するわけじゃありませんか。そうしますと、この四点の、あなた方が延期をやむを得なかったとおっしゃった原因は、すべてこれは覆るわけであります。おかしいじゃありませんか、この点は。 |
○若狭証人/ボーイングの初期故障の問題は、いわゆる事故という問題じゃございませんで、エンジンのトラブルその他による遅延ということが毎回のように起こったわけでございます。そういう意味で、大変大きなエンジンでございますので、これを使用するには相当の期間がかかるということがわれわれの前に実証されたわけでございます。それから、日本航空との関係につきましては、できるだけ両社協調して同時に導入したいという気持ちを持っておったことは事実でございまして、日本航空ともそういう関係で相談を進めておったわけでございます。それからいま、乗客が非常にふえておるというお話でございますが、私たちはその乗客の増に対応すべく非常な航空機の増強をいたしております。それに比べまして、昭和四十五年から昭和四十六年にかけまして万博終了後の状態は、大体平均して一〇%前後、一五、六%の増強に落ちた。それまでの状態は、たとえば万博の状態を申し上げますと、前年に比べて四〇%程度の増加であったわけでございます。そういうようなことから非常に機材をたくさん増強いたしておりますので、そういう意味で、具体的に申しますと飛行機のロードファクターと申しますが、収容力に対してどの程度お客が乗るかという問題でございます。これが非常に低下してまいったわけでございます。そういうことから導入を延期せざるを得ないというのが現状でございます。(発言する者あり) |
○正示委員長代理/御静粛に願います。 |
○近江委員/あなたの御証言では納得できません。乗客数が減ったと言ったけれども、私が先ほど数値を申し上げたように、このように五十四万もふえておるわけですよね。確かに万博のときは急激な増加率があったということはわかります。だけれども、現実にこれだけの乗客がふえているじゃありませんか。また、このボーイング機の事故にしましても、解決ができているじゃありませんか。この時点であなた方はいわゆる導入延期というものを決定なさっているわけです。こういうようなことから見ていきますと、あなたがおっしゃったそういう四つの原因であるというようなことではなく、延期しましたその原因というものは、全日空の準備のおくれであるということははっきりしておるじゃありませんか。いかがですか。 |
○若狭証人/いま御指摘の面も確かにあると思いますけれども、われわれが四十六年の六月に導入延期を決定する以前に、昭和四十六年二月にもうすでに日本航空は導入延期を決定いたしておるというのが現状でございます。 |
○近江委員/このあなた方が延期をされた四十六年の年、二月二十三日にロールス・ロイスが倒産しておるわけです。それでなくても、トライスター機はボーイングやダグラスに比べて非常におくれておった。そこへもってきて搭載するエンジンのロールス・ロイスが倒産をした。これでおくれることは決定的であるということがあなた方の頭にあったのじゃないんですか。ここに私は、いわゆるこの延期をしたという一番大きな原因があるのじゃないかと思うのです。いかがですか。 |
○若狭証人/ロールス・ロイスの倒産があったから延期したというようなことは全くございません。当時は先ほども申し上げましたように、ボーイングの747とダグラスのDC10とそれからロッキードとこの三機種を検討いたしておりました段階でございまして、むしろ一番おくれておりましたロッキードについては機種としてはやはり第三番目の順序の感じを社内的には持っておったかと思います。ただ、それが非常に違ってまいりましたのは、旅客需要の増加がわれわれの予想したような状態にならない、したがって国内線としてはジャンボを投入することは経済的に無理であるということが明確になってきたということ。それからもう一つは、先ほど申しましたDC10の問題につきましては、ちょうど全日空が機種選定の最終結論を事務的に出さなければならない四十七年の五月、六月、七月の三カ月にわたって連続三回の事故を起こしたという、こういう致命的な問題があったことによって事態が変わってきたというふうに私は考えております。 |
○近江委員/あなた方がこの機種選定を最終決定されたのはこの十月の三十日でございますが、この時点までトライスターとDC10は争っていたわけですか。どうなんですか。 |
○若狭証人/実は十月中旬にダグラス社から、騒音についてもう一度アメリカの航空局の証明をとってくる、そしてそれがもしロッキードに比べてDC10の方が同等であるとかあるいは低いという場合には、ひとつぜひこれを考慮してもらいたいという話がございまして、よろしゅうございます。そういう資料が出ましたら準備委員会をもう一度開きまして徹底的に検討いたします、それが出るまでは機種決定は絶対にいたしませんということを、私はダグラス社の代表に約束したことを覚えております。 |
○近江委員/一点だけお聞きしますが、最初の六機の仮発注は四十七年十月三十日。決定、公表された日。これは仮発注の前にオプション契約はなさっていないのですか。いかがですか。これは非常に重大な決め手になるのです。 |
○若狭証人/恐らく別にオプションというような問題はなかったかと思います。あるいはそれがオプションであったかもしれません。それがオプションではないかと思います。 |
○近江委員/これをもしも結んでいないとすれば、もともとこれはロッキードを決めておったことになるのです。少なくとも生産は十八カ月は絶対必要なんです。六機も大量にいわゆる押さえておくというようなことは、航空会社ではこれはできませんよ。非常に重大な問題です。もう時間が来ておりますから私はやめますけれども、問題提起しておきます。 |
○正示委員長代理/これにて近江君の発言は終了いたしました。次に河村勝君。 |
○河村委員/いまの質問の十月三十一日の段階でオプションがあったかなかったかというのは、これは本当に重大であります。これはもう一遍はっきりお答えをいただきます。 |
○若狭証人/私は、いまその手続的なことを明確にお答えすることができないわけでございますが、恐らくその決定直後にオプション契約をやり、正式契約は四十八年の初めに行ったのであろうというふうに考えております。 |
○河村委員/それはおかしいんですね。十月三十日というのは、これは正式に決定をして天下に公表したわけですね。そうでしょう。それからオプションということは絶対にあり得ないはずです。その点いかがですか。 |
○若狭証人/正式契約は、具体的なスペックを決定する、あるいはいろいろな細かい経理的な問題等もございますので、正式契約の決定というのはやはり何カ月か時間がかかるわけでございます。私たちの場合には恐らく四、五カ月かかって正式契約ができたのではないかと思います。それまでの間はやはりオプションであったと思います。 |
○河村委員/そのオプション、それをオプションと言うのは、それは間違いである。オプションというのは、日本語で言う仮発注という言葉が適当であるかどうかは知らない。しかし、これは必ず買うという契約ではありませんね。ですから、つくる方も相当なリスクを負ってやっておるわけです。だけれども、十月三十日の段階はこれはもはや完全に決定をして、しかも一般に公表している段階ですね。だからこの場合には、もし正式契約ができていなくともそれは完全なる予約であって、それは仮発注というようなものではないはずです。その点、いかがですか。 |
○若狭証人/事実的な問題は、実はもう少し調査の上で御回答させていただきたいと思います。 |
○河村委員/しかし、あなたも責任者として、三年有余検討の結果結論を出されたわけでしょう。自信を持ってつくられ、これを発表された。それでなおかつまだ断るかどうかわからぬというような、正式契約でまた変わるかもしれないというような、そういうような約束をするということはあり得ない、これは常識じゃありませんか。 |
○若狭証人/会社の方針を決定いたしまして、直ちに具体的な契約の準備に取りかかるわけでございます。したがって、その場合には、一機一機何月幾日引き渡しというような問題も全部決定いたしまして、そうしてデザインその他も決定いたしまして契約していくわけですけれども、その準備に非常に手間取りまして、結局正式に調印するまでにはやはり四、五カ月の期間がかかるというわけでございますし、その間の状況をどういうふうに呼ぶか、ファーム契約というふうに言うのかオプションと言うのか、そういう技術的な問題は私はわかりませんけれども、方針を決定して、その線に沿って一機一機、そのデリバリーの時期あるいはそのいろいろな仕様、スペックというものを両社の間で相談いたすわけでございます。 |
○河村委員/あなたの返事には、それは納得ができません。もう一遍、この次の機会にその点を確認したいと思います。次に伺います。先ほどから田中さんとの十月二十四日の会談の内容が議論されております。十月二十四旧という日にちは非常に微妙な日にちであります。実際には、この十月二十四日にはあなたはすでにトライスター導入を決意しておられたのではありませんか。 |
○若狭証人/その時点ではまだ決意をいたしておりません。もちろん、社内的にはダグラスの連続事故というものが大変大きな影響を及ぼしたことは先ほども申し上げたとおりでございますけれども、なおダグラス社から騒音についての新しい証明が出されるということを期待して、決定の最終段階に入ることを猶予しておった、そういう時期でございます。 〔正示委員長代理退席、委員長着席〕 |
○河村委員/トライスターの選定の最終段階の経過を見ますと、すでに九月の中ごろにすべての調査は終わって、そうして十月の初旬から役員会議を何回かやって、それがもうすでに十月二十四日には終わっているはずだと思いますが、いかがですか。 |
○若狭証人/役員会は、その前にももちろん各本部の意見を聞くとか、いろいろなことをやっておりましたけれども、最終的な社内の役員会は十月二十七、八日に行ったというふうに記憶いたしております。 |
○河村委員/それはこの前の証言と食い違うのではありませんか。日航と一緒に、共同で機種の採用を発表したのが二十七日か八日だとあなたはおっしゃったはずですが、そうじゃありませんか。 |
○若狭証人/社内的な最終決定をいたしますと同時に、日本航空と両社入りまして、そして最終的な結論をお互いに話し合って、それを発表したということでございます。 |
○河村委員/それから逆算しますと、とにかく九月の中旬から役員会を二回繰り返してやっておれば、二十四日の段階で結論が出ていないはずはない、私はそう思う。ですから、この二十四日という時期に田中首相を訪問したということが、単なる表敬訪問だとは私には思われない。先ほどからあなたは、三年にわたった機種の選定をやってきて、安全性を中心に最終的な結論を出します、そういう経過か決意かを表明された、こういうことでありますけれども、実際には十月の二十四日という日にあなたが出かけていって、そういう単なる方法論を報告するということはちょっと考えられない。やはりその時期に、その田中さんと会った日に、田中さんが言ったかどうかは別として、その問題は一応別にしましても、やはり最終的にトライスターに決まることになります、あるいはおよそなるであろうというような趣旨の報告をしたんだというふうに考える方がきわめて自然だと思いますが、いかがですか。 |
○若狭証人/実は、先ほど申しましたようにダグラス社から最終の騒音証明を送ってくるというその最終のリミットは、たしか十月の二十五日ないし二十六日であったんじゃないかと思います。したがって、これはダグラス社に対して、もし新しい事実が出れば準備委員会をさらに開いて決定をおくらせる場合がありますということを言っている段階でございますから、そういう段階でこういうものになるであろうとかこういうものにしたいとか、そういうことを外部の方に申し上げるということは絶対にございません。 |
○河村委員/そうしますと、この二十四日の段階では停止条件づきの決定と言ってもいいわけですね。ダグラス社から騒音証明が届いて、それが予定どおりであれば採用する、逆に言えばそういうような決定であったわけですね。 |
○若狭証人/機種選定の最後に残っておった事務的に詰めなければならぬ問題というものは、やはりそういうダグラスの騒音問題ということが、これは選定準備委員会でずいぶん長い間検討してまいりましたけれども、十月中旬になりましてダグラス社から正式に文書をもって全日空に対して新しい騒音証明をとりたいからという、そういう正式の申し出がございましたので、やはりその結果を明確にしてかからなければこれは選定準備作業は終わらないわけでございますから、その前に停止条件づきとかなんとかというようなことを考えるというような状態では決してございません。 |
○河村委員/停止条件づきという言葉が悪ければやめますが、少なくとも大体トライスターに合意ができた、ただ騒音証明という一点についてまだ問題が残っているからそれを確認の上で決めよう、あなたのいまの説明を聞いていますとそういうことになりますが、そう理解するほかはないと思いますが、いかがですか。 |
○若狭証人/選定準備委員会における事務的なデータの問題としてはこの一点だけでございますが、総体的に最終的にどういうふうにするかという問題、ボーイング747の問題も含めましてどうするかという問題は、まだ役員全部を集めて最終的にどうするかという話をしているというような状態ではございませんでした。 |
○河村委員/これは口が腐っても恐らくおっしゃらないでありましょうから、きょうはこれでとどめておきます。オプションの問題について大庭前社長との食い違いの点でありますが、これはいままでさんざん論議されていますが、私はこの前もあなたに言ったのでありますが、あなたも事実としてオプションに基づいたであろうと思われる実際のダグラス社の行動、それが事実としてあるということは認めておられるわけですね。この前あなたは現実にダグラス社でこれをつくっているという情報も得ておるし、また現実にダグラス社から人が来て、あなたの飛行機としてつくっているものがありますよという話を聞いたということもあなたは認めておられるわけですね。ですから、大庭社長があなたに連絡したとかしないとか、そういう問題は抜きにして、事実としてそういうものがあるということだけは知っておったわけですね。 |
○若狭証人/それがオプションというものによって行われたかどうかということにつきましては、先ほどから申し上げておりますように、全く私は知らなかったわけでございます。ただ、何か疑問があるという感じをどこからかわれわれ聞かされておったために、三井物産に対してそういうことを確かめたということも事実でございます。また、この前の委員会でも全日空のための飛行機をつくっているんだぞということな言われて、そんなばかなことはあり得ないんだということでいよいよ明確にそれを確かめなければいかぬという状態になったことは事実でございます。 |
○河村委員/ですから、あなたは三井物産に確かめられて、道義的にも法律的にも責任がないという言質を得たということと、それと実際事実がないということは、これは関係がないんですね。現実に全日空としては前社長がどのような独断的な行動をとったにせよ、社長としての権限でやればできることですから、あなたに責任がないということと現実にオプションというものがあったということは、これは関係がない。だから、それを全面的にオプションがなかったのだと否定する理由はあなたには全くないはずなんですね。それをこの前の証言のときからがんばって、どうしてもオプションはなかったのだと言われるのははなはだ不可解なんですね。だから余りそれをがんばられると結局、一回決まったものを何か不当な理由で軌道修正したという結論に導かれる、そういう後ろ暗いことがあるのではないかという逆の証明にしかならない。私はそう思う。そうならそれでも結構でありますけれども、だけれどもそうでないというならば、事実としてオプションによってつくられているであろうという事実があったということは認める方が私は本当だと思うが、いかがですか。 |
○若狭証人/オプションがあったという事実は、実は私は全く知らなかったことは事実でございます。ただこの選定作業を進めている間に、何かこうおかしいという感じを持つような事態があったということだけは事実でございますので、そういうことでその過程の間に三井物産に対して確かめたということでございます。これは大庭前社長がお答えになった後でございます。正式の選定作業を進める際にそういう疑問が出てきたということで確かめたわけでございます。 |
○荒舩委員長/これにて河村君の発言は終了いたしました。以上をもちまして若狭証人に対する尋問は一応終了いたしました。若狭証人には御苦労さまでございました。控え室で待機願うことといたします。 |