○荒舩委員長/伊藤証人の入室を求めます。伊藤証人に対し、まず委員長より所要の事項についてお尋ねをいたします。あなたは二月十七日の本委員会終了後、丸紅の専務を辞任されたと報道されておりますが、それは事実でございますか。その事情をお話し願います。 |
○伊藤証人/お答えいたします。いま委員長がおっしゃいましたことは事実でございます。実は私の軽率なる行為がかように大きな問題になりまして、単に会社の信用を傷つけたのみならず、日本の政界、財界を大変混乱に巻き入れたと申しますか、そういう意味での責任をかねてから痛感をいたしておりまして、私の一身につきましては社長に一任を申し上げておりました。前回の証言の夜にそれが御決定になったということでございます。 |
○荒舩委員長/二月十七日の本委員会であなたはクラッター氏との関係について証言されておりますが、クラッター氏が丸紅大手町ビルに事務所があるのでございまして、あなたが廊下ですれ違った程度にしか面識がない、こう言われておりますが、ちょっと不可解に思うのですが、事実をひとつお話し願いたいと思います。 |
○伊藤証人/お答えいたします。いま委員長が申されたとおりでございまして、先般も申し上げておりましたように、私はお顔をうろ覚えに覚えている程度でございまして、二人で商談はもちろん、個人的ないろいろな用談等もしたことは全くございません。 |
○荒舩委員長/ロッキード・エアクラフト・アジア・リミテッド日本支社というので、鬼俊良という人を知っておりますか。また、鬼君と職務上についていろいろ話し合ったことがありますか。あるいは個人的におつき合いがありますか。お聞かせ願いたいと思います。 |
○伊藤証人/お答えいたします。存じ上げている程度はクラッターさんと同じ程度でございます。鬼さんは長くこちらに御駐在になっておりますので、お顔を存じ上げているという程度でございまして、いま御質問のように会社の用談、ビジネスの商談はもちろんのこと、個人的なおつき合いも全くございません。 |
○荒舩委員長/二月十七日の本委員会であなたの証言、ピーナツ、ピーシズという符号を用いた領収証に四回にわたってサインをされておりますが、そのサインをされるときにクラッター氏は、四回も実はサインをしておるのですが、これでただの一回もこれには立ち会っておりませんか。どうですか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。全く私は、クラッターさんが御依頼に見えましたときにも私は立ち会っておりませんし、私はその席でサインをしたこともございません。 |
○荒舩委員長/クラッター氏とのおつき合いも全然ありませんか。また、パーティーで会うぐらいで、ふだんは何にも話し合ったことはございませんか。お尋ねします。 |
○伊藤証人/パーティーでお会いしたという記憶もございません。ふだんはもちろんのこと、個人的なことについても全くお話ししたことはございません。 |
○荒舩委員長/あなたはそのピーナツとかピーシズ、領収証にサインをされて、社長にも会長にもそれは報告されていないということはきわめて不可思議に思うのですが、全然報告をいたしませんか、社長にも会長にも。また、それは権限外の行為だから報告をしなかったということでしょうか。その辺の事情について納得のできるようなひとつ御発言を願いたいと思うのですが、いかがでございますか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。先日も申し上げておりましたとおり、このサインの依頼を受けました経緯から申しまして、私は全く軽い気持ちで、気軽にサインをいたしたものでございまして、それはまた全く会社との関係もございませんというつもりでおりましたものでございますから、いま御指摘のような会長にも社長にも全く報告もいたしておりません。報告をいたしましたのは、今度の事件がこういうことに相なりましてから説明をし、事情を報告をいたした、こういうことでございます。 |
○荒舩委員長/なお、この領収証のサインをする前後にコーチャン氏と会見をされておりませんか。その点をお伺いします。 |
○伊藤証人/お答えいたします。 私はコーチャンさんとは全くお目にかかったことはございません。 |
○荒舩委員長/これは風説ですから、私の耳に入っておりますが、二百万ドル、すなわち六億余の金があなたの手から政界に流れているのだというようなことをよく言われておりますが、この点についてあなたは自信を持ってその事柄にお答えを願いたいと思いますが、いかがですか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。これはもう前回の証言のときにもはっきり明確に申し上げておりますように、私はさようなことには全く関知いたしておりません。 |
○荒舩委員長/なお、児玉譽士夫氏とあなたはこの二百万ドルの件について話し合ったことは全然ございませんか。ありますか、ありませんか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。全くございません。 |
○荒舩委員長/それでは、小佐野賢治氏とこの問題で話し合ったことはありますか、ありませんか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。これも全くございません。 |
○荒舩委員長/このピーナツ、ピーシズというものは、これは金銭の、金のいわゆる何というか符牒である、符号であるというふうに思われましたか、思われませんでしたか。その点お聞きいたします。 |
○伊藤証人/お答えいたします。私は、その意味するところは、先般も申し上げましたとおり全く存じておりません。 |
○荒舩委員長/これは常識で判断をいたしましても、ピーナツの百個とかなんとかというふうに専務取締役がサインをして、ピーシズってどんなものだかわかりませんが、そういうものに百とか九十とかこうサインをして、これ不思議に思われないということがまことに不思議なんですが、これは何かの符牒であり、これは何かの取引上の符号であるというようなことは少しも感じられませんでしたか。ひとつお答え願います。 |
○伊藤証人/お答えいたします。この点につきましては、前回も委員長殿初め皆皆様から非常に御指摘がございましたところでありまして、今日になってみましたら、私の全くこの軽率な行為ということにつきましてはまことに申しわけない次第でございますが、そのときの状況から申しますと、私の同僚であり先輩でありますところの大久保本部長から、全く丸紅並びにサインをする人には迷惑をかけない、単にロッキード社の社内事情のために必要なものである、用済み後破棄するのだというような御説明を受けましたものでございますから、私は深くも考えずに気楽にサインをしてしまったものでございます。 |
○荒舩委員長/以上で私からの尋問は終わります。委員から発言の申し出がありますので、お約束の持ち時間の範囲でこれを許します。松永光君。 |
○松永委員/お尋ねいたしますが、あなたがサインされた四枚の領収証、これはそれぞれの日付ごろ、大久保さんから頼まれてサインをした。したがって、四回サインをしたという形に前回の証言はなるわけですが、そのとおり間違いありませんね。 |
○伊藤証人/お答えいたします。前回も申し上げましたように、その日付のその日にサインをいたしましたという正確なる記憶はございませんが、そしてまた、決して一回ということは申し上げませんが、四回であったかどうかというのも確かでございませんが、確かに四回サインをしたということは事実でございます。 |
○松永委員/別々の機会にサインをしたというふうに前回はなっているように私は思うのですよね。それからさらに、あなたがサインをした場所です。どこでサインをしましたか。前回は、自分の部屋であったというふうなことを述べておるのですけれども、いかがです。その点はっきりしてください。 |
○伊藤証人/お答えいたします。私は、自分の部屋でサインをいたしたと記憶いたしております。 |
○松永委員/変な領収証にサインをした、四回くらいですね。重ねて聞くけれども、自分の部屋であったという記憶、これは間違いありませんね。重ねて聞いておきます。 |
○伊藤証人/私は間違いないと思っております。 |
○松永委員/じゃ、サインをしたときの状況でございますが、まず第一回目、どういう状況であったか。あなたがサインするまでの間はわずかな時間ですからね。簡単に説明してください。 |
○伊藤証人/いまの松永先生の御質問に対しまして、ちょっと長くなるかもわかりませんが、状況を思い起こしてみまして御説明申し上げたいと思います。実は、前回の証言のときに、私は自分の記憶が正しいと思って、それを信じてお答えしてまいったのでございますが、二、三年前の話でもございますし、そのときそのときの情景につきましては、はっきりと的確な記憶は、正直なところを言って非常にございませんでございました。しかも、あのサインをいたしましたときの当時から見ますと、あの問題が今日かくも大きな問題に発展をしてくるなどというようなことは、実は正直なところ夢にも思っておりませんでした。したがいまして、私のその記憶というものにも記憶違いがあったという点はあったんじゃないかと思うのであります。実は、あの日に、いろいろ御指摘になりましたように、大久保さんの証言と私の証言に、いま先生がおっしゃいましたような点について若干の食い違いがあるということを……(松永委員「そんなことを聞いているのじゃないのです」と呼ぶ)状況を御説明を申し上げているのでございまして、ちょっと御説明させてください。 |
○荒舩委員長/ちょっと待ってください。説明、簡単に願います。 |
○伊藤証人/それで、いろいろ記憶を呼び起こしまして、たどりたどり申し上げますと、確かに大久保さんが私の執務室へいらっしゃいまして、そして、かくかくしかじかの理由で、ロッキード社からこういう書類を作成してサインをしてくれという依頼がございました。 |
○松永委員/そうすると、大久保さんがあなたの部屋に来て、そうしてサインをしてくれ、こう言ったのでサインをした、こういうことにあなたのいまの供述はなるわけですが、その場合に、出した紙にはすでにタイプしてあったのですか。その点です。 |
○伊藤証人/実はその点を御説明申し上げたかったのでございますが、大久保さんが私のところへいらっしゃいまして、先ほど申し上げましたような理由で、ロッキードから書類をこしらえてサインをしてくれと言われましたときには、そのときにはその書類はお持ちになっておりませんでした。それで、ただし文面につきまして私にお話がございました。ワンハンドレッド・ピーナツとかワンハンドレッドフィフティー・ピーシズとかというような文言の御説明はございまして、そして実はこれは私の記憶が定かじゃなかったのでございますけれども、当日、十七日の証言の日の夜に帰りまして、大久保さんとの食い違いがあるということでいろいる記憶をたどりたどりいたしておりましたときに、私のところの秘書課長から、実は確かにあの当時そういうようなタイプをするように私にお申しつけがあったのじゃございませんでしたかという、私の注意を喚起してくれる言葉がございましたものでございますから、大久保さんといろいろその記憶をたどり、正し合いました結果、大久保さんがいらっしゃいまして私にその文言を言われましたのを、私がその私の席で秘書課の者にタイプをさしまして、そしてその席で直ちに私がサインをいたしまして、大久保さんにそれをお渡ししてということが、どうも間違いがないのじゃないかということで、大久保さんとの記憶をたどりながら到達した結論になったわけでございます。 |
○松永委員/時間がないので簡潔にひとつお願いしたい。そうすると、大久保さんが来たときにはまだタイプしたものではなかった、こういうことですね。そしてタイプするのは、あなたが秘書課の者に命じてタイプをさせた、こういうことですか。 |
○伊藤証人/そのように記憶いたしております。 |
○松永委員/そのタイプはどこでしたのでしょうか。あなたの部屋にタイプがあるのですか。別の部屋でタイプをしたのですか。 |
○伊藤証人/当時の私の部屋は、社長室の秘書課とか総務課とかいうのと一緒にございまして、非常に大きな部屋でございまして、その部屋のすみに、まあ皆の共用のタイプといいますか英文タイプがございましたので、多分そのタイプでタイプをいたしたものだと記憶いたしております。 |
○松永委員/あなたの部屋にあるタイプじゃなくして、別のところのタイプじゃないのですか。その点はっきり記憶がないならないでいいのですけれども、大体記憶がないはずはないのですがね。これほどの大問題になっておるのですから、人と相談するのではなくして、あなた自身の記憶がよみがえってないはずはないと思いますが、もう一回、タイプをしたのはどこにあるタイプでタイプさしたのか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。私が秘書課の者にタイプを頼んだことは明確に覚えているのでありますが、いま先生おっしゃいました、どこのタイプであるかということになりますと、確かに定かには記憶しておりません。 |
○松永委員/順序は四回とも、いまあなたが証言をされたような経過、いきさつでタイプがなされ、あなたがサインしたというふうに承っておいていいのですか。 |
○伊藤証人/そのとおりでございます。 |
○荒舩委員長/次に山口敏夫君。 |
○山口(敏)委員/私は発言する前に、先ほど公明党の渡部一郎議員の鬼証人に対する証問中、シグ・片山氏と大平大蔵大臣が親交がある趣旨の投書があることが取り上げられましたが、大平大蔵大臣によれば、大平大蔵大臣とシグ・片山氏とは全然面識もないとのことでありますので、この際、大平大蔵大臣の名誉のために明らかにしておきます。 |
○荒舩委員長/理事会で研究しまして、適当な処置をとります。 |
○山口(敏)委員/伊藤証人にお伺いしたいわけですが、あなたが再度証人喚問になった、こういう経緯につきましてはあなた自身が一番よく御承知だと思います。しかし、その第一回の証人喚問のときにあなたは、丸紅とまた世間に対する名誉回復のためにロッキード社に対して告訴も辞せず、こういう一つの見解を明らかにいたしましたけれども、その後どういう手続をとられたか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。実は、私個人といたしましては、まず第一に名誉棄損の問題、これはもう前回証言に立ちます前から非常にその決意といいますか、そのつもりでいろいろ法的な、法技術的なと申しますか、どういうことが可能であるかということを実は検討してもらってまいりましたし、また、日本の弁護人のみならずアメリカの弁護人にも依頼しましてそういうことを検討してみたのでございますが、これはまことに残念ながらと申すよりほかないのでございますが、そういう手続が実は簡単にできないということが判明いたしております。 その点につきまして、実はそれならばどういうことであるか。もちろん会社といたしましては、これは私が現在もう辞任いたしておりますので、私が責任持って申し上げる筋合いではございませんけれども、御承知いただいていると思いますけれども、ロッキード問題の調査対策委員会を結成されまして、社長以下現在その対策に大わらわにやっておられるのが実情でございます。 |
○山口(敏)委員/その告訴の問題と同時に、ロッキード社に対して、丸紅としてもうこうした不信用な相手とは契約できないということで契約解除ということも一時発表されたわけですけれども、その点についてはどうですか。 |
○伊藤証人/その点につきましては、いまも申し上げますとおり私、現在辞任いたしておりますので、責任ある御回答を申し上げる筋合いじゃございませんけれども、もちろん先生が御指摘のように、何らかの形での厳しい対抗措置というものは、当然現在の首脳陣において考えておられるだろうと私は存じております。 |
○山口(敏)委員/この事件が起きました後、丸紅は大久保専務を直ちに派米をしたわけですね。そのときに、この中間報告があなたに入りましたね。 |
○伊藤証人/その中間報告と申しますのは、たしかあの二回目の公聴会でございました。最初はたしかフィンドレーだとかレビンソンがやっておりましたが、二回目の主としてコーチャン氏がやりましたあの公聴会へ出られないという連絡がございました。そのことであったと思います。 |
○山口(敏)委員/大久保専務から伊藤さんのところに中間報告がきた。しかし大久保さんは、そのときにいわゆるピーナツあるいはピーシズがお金であるというコーチャン証言というものを知らなかった。だから自分はこのわび状程度で引き揚げたんだ、こういうことを前回言っておるわけですね。ところが、伊藤さんはすでに日本におって、このピーシズ、ピーナツというものが何であるかということは痛いほど思い知らされた。特に、あなた自身にとっては実業家としての生命も奪われるような厳しい記者の糾弾を受けておったわけでありますから、そういう実態にありながら大久保専務に対してあなたのとられた措置というものは私ははなはだ納得がいかないわけですけれども、その点について御見解はどうですか。 |
○伊藤証人/いま先生がおっしゃいましたのは、私が大久保専務に対してとりました処置がと申されたのでございますか。どういう意味に解釈いたしてよろしいのかちょっと戸惑うのでございますけれども、私は確かに先生が御指摘のように、これは大久保専務から、その当時の大久保本部長から頼まれてやったことでございますけれども、サインをいたしました判断といいましょうか、それは私がいたしたわけでございます。したがいまして、そういうようなことの責任につきまして、大久保さんに全部押しつけるとか、大久保さんに全部背負わせるというような気持ちに私はとうていなれません。 |
○山口(敏)委員/私が申し上げているのは、告訴をすると言ってなかなかむずかしいからできない。また、ロッキードとは契約を解除すると言いながら、その契約も解除しておらない。また、伊藤さん自身が現実に専務をやめられたというくらい丸紅社内においても大きな衝撃であると同時に、これは日本の国にとっても重大な一つの波紋を描いているわけですね。そういう問題に対して、何ら具体的な身のあかしをとられておらないわけですね。ですから、私たちはコーチャン証言よりもいわゆる日本の国会におけるあなたや大久保専務の証言を気持ちとしては信じたいわけでありますけれども、現実の問題としてはこの疑惑をあなた方は何ら解明をしておらないわけでございます。そういう意味で、先ほど荒舩委員長も心配されておりましたように、伊藤さんを通じて二百万ドルという多額な金が実際の問題として日本の政界に流れておるのではないかという疑念が、今日この二十日以上たっておりながらも一向に払拭をされない。そういう立場においてのあなたの御見解はいかがでございますか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。大変私の身にしみるお言葉でございます。実は先生のお言葉を待つまでもなく、私どもとしましても、正直なところを申しまして、自分の軽率な行為に出たものとはいいながら、大変な実は誤解を受け、大変な容疑を受けているわけでございます。何とかこれをひとつ払拭し、身のあかしを立てたいと思っておるわけでございます。そういう意味で私は、前回の証言のときもきょうの証言のときにも同様でございますけれども、私はこういう席には喜んで出まして自分の信じるところを証言申し上げる、それ以外には現在のところ私には、不作為のことを証明するというのは実にむずかしいものであるということをひしひしといま感じている次第でございます。 |
○山口(敏)委員/時間がないので答弁を簡単に願いたいのですけれども、あなたは大久保さんに頼まれて書いた。しかし、丸紅には三十数人の重役がおるわけですね。なぜあなたが選ばれたと思いましたか。 |
○伊藤証人/これは実は私も、大久保さんに頼まれたときに、なぜ私を選んだんでございますかという質問はいたしておりません。恐らく大久保さんのお気持ちの中には、私がロッキードとの関係ということにつきましては直接の担当じゃございませんけれども、比較的古くから承知をいたしておりますということと、それから、比較的会社のお互い同僚でございますから気安くしょっちゅう話しております仲なものでございますし、恐らく大久保さんも非常に気軽な気持ちで私に頼まれ、私もまたそういうような気持ちで応じてしまった。これは、私が応じたということが非常に私は軽率であったと反省している次第でございますが、率直に申し上げましてそういうことでございます。 |
○山口(敏)委員/それは、あなたが身近にいたから、ロッキードに関係ないからあなたに頼んだのではなくて、伊藤さんが丸紅における巷間伝えられる政治部長であるとか、あるいは対渉外関係の責任者だ、そういう意味で、この丸紅の組織の中では処理し得ない一つの問題だという事実認識のもとに、大久保氏があなたにサインを依頼したのではないんですか。 |
○伊藤証人/私は、さようなこととは思っておりません。 |
○山口(敏)委員/これは私も伊藤氏個人をいろいろ勝手な解釈はしたくございませんけれども、日本の政治にとってもきわめて重大な影響を与えておるということは、伊藤証人も御存じのとおりだと思うのです。これを、丸紅社内の大久保氏かあるいは伊藤氏かというような責任のなすりつけといいますか、問題ではなくて、すでにあの証人喚問以来、あなた方はこの事実関係、あくまで不名誉をこうむったのだ、こういう主張でございますけれども、実際司直の手があなた方の会社にも、それからあなた方のおうちにも、書類等々の押収を行っておる。こういう現実に対して、事実に対してどういうお考えをお持ちですか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。実は、先般私どもの会社並びに自宅の強制捜査を受けましたのは、外為法違反という容疑でございまして、私は全くさようなことはないと、会社におきましても、私個人におきましてもないと信じておりますし、でございますが、これはまことに不徳のいたすところと申しますか、まことに残念至極でございます。しかし、先ほど先生がおっしゃいましたように、この証言の場に出まして宣誓をして申し上げるのみならず、事ここに至りましては、当局の御捜査にも進んで御協力を申し上げまして、一日も早く事態の解明ということに御協力申し上げていく、それが私の務めではないかと存じております。 |
○山口(敏)委員/あなたがサインをされた領収証には、H・イトウとそれからヒロシ・イトウと両方ありますね。いま一度確認したいのですが、法務省に届けてあるあなたの署名はどちらが正式なものでございますか。 |
○伊藤証人/これは、この間たしか私間違って法務省と申し上げましたのじゃなかったかと思うのですが、実は商業登記でございまして、御承知のように商工会議所の方でございまして、それには、たしかあれはフルネームで書くことになっていたんじゃないかと記憶いたしておりますが、私、ちょっと正確には記憶いたしておりません。 |
○山口(敏)委員/先ほどの関連ですけれども、大久保さんに頼まれて伊藤専務が書かれた、こういうことですけれども、伊藤専務は長い間いわば社内の中で体制固めの責任を負っておった。大久保さんは機械部長初め航空部長ということで対外的な活躍があったわけですね。もちろん、商社でございますからお二人とも英語は得意でしょうけれども、この領収証を見てみますと、いろいろな書式がそれぞれ四枚四様に違うわけですね。私ども承る限りでは、「アイ レシーブド」ということ、その「アイ」というのが入るということは、普通領収証には「アイ」というものは本来書かない、これがサインの常識である。そういう点で、非常にこの点については、英語等においてむしろなれた人よりもなれてない方がこの文章を作成してつくらせた、こういう見方もできるわけでありますけれども、そういう点では、むしろ大久保氏がつくったということよりも、伊藤さん自身がつくられたのではないかと思うわけですが、いかがでございますか。 |
○伊藤証人/確かにおっしゃるように、私もそのときそのときには全く記憶はございませんでしたけれども、四通のコピーを見ますと、さようなことになっております。ただ、そのピーナツとかピーシズという言葉、それからその数字でございます。これにつきましては、私が自発的にどうこうということじゃございません。大久保さんがクラッター氏からの依頼を私に申し伝えられたわけでございまして、いまの、どれが本式でどうだということになりますと、私はそのときにどういうようにいたしましたか、私は言われたとおりを口述をして打たしたというふうに記憶しているのでございまして、特にその相違については、私ははっきりとした理由といいますか、あれは承知いたしておりません。 |
○山口(敏)委員/そのタイプを、先ほど伊藤さんのところで打たした。そのときの原稿はだれが書いたわけですか。 |
○伊藤証人/たしか、非常に簡単な文章でございますから、別に原稿を書いて渡したんじゃなかったと思うのでございまして、口頭で伝えまして打たしたんじゃないかと、かように記憶いたしております。 |
○荒舩委員長/次いで、渡部恒三君。 |
○渡部(恒)委員/もう時間が四分しか残されておりませんので、はしょってお聞きしますが、この問題の出発は、アメリカのチャーチ委員会でコーチャン・ロッキードの副会長が、あなたの会社に二百万ドルを送って、そしてそれを日本におけるロッキード売り込みの政治工作に使ったという発言。しかも、その発言が、今度あなた方がやられたピーナツとかいろいろな領収証の数字と合ってきたものですから、いわゆるあなたの、伊藤さんと大久保さんの領収証というのが一種のコーチャン発言に対する事実裏づけみたいなことになって、これほどの大きな問題になっちゃったんですね。あなた方はそれに対して、いままでの答弁では、領収証は書いたけれども、しかし一切金なんかは受け取っていないんだということを言い張っているんですね。これはなかなか理解しにくいことなんだけれども、一歩譲って、もしそれがあなた方の証言どおりだということになれば、とにかく領収証は書いておるわけですから、その二百万ドルの金というのは宙に浮いて、あるいはアメリカに戻っているとかあるいは別なルートで別なところで使われておるとかいうことになるんですね。これは非常にこれからその真相を突き詰めていくのにむずかしいことなんですけれども、私たちは日本人ですしね、こういう本当にいまいましい問題なんですから、あなたの証言本当だというふうに信じてあげたいんですね。ところが、なかなか信じられる状況証拠がない。一つの問題にうそがあるとやっぱり全部がうそに思われちゃうんですね。そこで二点だけ、これははっきり答えていただきたいんですが、いま委員長の話で鬼俊良、これは顔見知り程度だという話でしたが、私どもの調べでは昭和三十三年から、ロッキード・丸紅の契約以来十七年間支配人をして、しかも、その支配人をしているロッキードの東京支社は、あなたの会社であなた方の費用で負担しているところにおるわけですね。そしてその鬼が、しかも、大久保さんのある秘書、女の秘書さんから、いつも大久保さんのところにクラッターと一緒に来ておった、ということが証言されているんですね。そこで私はもう一遍、その鬼俊良なる男をあなたはどういうふうに判断しているのか、また、いまのピーナツの証文を書いたときにおったんじゃないかと私は思うのですよ。鬼俊良氏がおったかおらなかったか。それからもう一つ、大変な問題があるのですが、児玉譽士夫、この方はいまの政府高官の疑問の方と別に、これは現実に大変な悪をやっていることがいま判明して検察の手に入っているのです。それに対してもあなた方、何か知らないと言っているのですね。これもちょっとわれわれすぐ納得できないのです。あなた方は児玉譽士夫とどの程度の関係があるのか。この二つをしっかりとお答えいただきたいと思います。 |
○伊藤証人/いまの先生の御質問に対して、明確にお答え申し上げます。私は、鬼さんは、先ほど申し上げましたように、お顔はうろ覚えと申しますか、実はきょうも一緒に入ってまいりましたのですから、うろ覚え程度というのもあれかもわかりませんが、とにかくお顔は存じている程度でありまして、一つも、いわゆる用談、商用の用談あるいは個人的な用談につきましてお話を申し上げたようなことは全くございません。それから、いまの児玉さんとの件でございますが、これにつきましては、実は最近、昨晩もそうでございましたが、非常に出所の明らかでない怪情報と申しますか、そういうものが報ぜられまして、私自身全く迷惑をいたしております。先般も申し上げましたとおり、特にいま申されました三十三年からというのは鬼さんとの件でございましたけれども、何か昨日のやつで、三十三年から私が児玉さんと云々――あの当時は私はまだ一介の平社員でございまして、しかも大阪に勤務いたしておりまして、そういうときに児玉さんと御同席するはずなんていうことはとうてい考えられません。また、私は、何回も申し上げますとおり、御高名は存じておりますけれども、お目にかかったことは全くございません。これは先生の御質問に対して明確にお答え申し上げておきます。 |
○渡部(恒)委員/では、これで終わります。 |
○荒舩委員長/これにて松永君、渡部君、山口君の発言は終了いたしました。次に大出俊君。 |
○大出委員/大出俊でございます。きょうは、私の伊藤さん、あなたに対する質問のあなたのお答え、また同僚の楢崎委員の質問に対するあなたのお答えがいわば正反対に食い違うところがございます。したがって、そこらの食い違いは一体どういうことなのか。私は、質問の結果、なお大きく食い違うのであれば、大久保さんとあなたと二人出ていただいて質問をさせていただきたいのであります。この点は、結果がそうなれば委員長にそうお願いしたいわけです。そこで、まず第一に承りますのは、伊藤さん、あなたが社長室長におなりになったのは四十四年だと思いますけれども、何年におなりになって、何年までおやりになっておりましたですか。それから、社長室長の前は何をおやりになっておられましたか。簡単にお答えください。 |
○伊藤証人/いま先生の御指摘のとおり、たしか四十四年でございましたと思います。それから終了は、先般辞任するまで、その他の役職も兼務いたしておりましたけれども、社長室長職でございました。それ以前には、社長室の次長とかあるいは人事部の副部長だとかいう役職を兼務いたしておりました。 |
○大出委員/この間、大久保証人に楢崎委員の方から、一体大久保さんは、ピーナツ、ピーシズの領収証についてなぜ伊藤さんのサインをお頼みになったのですかという質問をした。これに対して大久保さんの方は、伊藤君がロ社の仕事のことを大変よく知っておることが第一である。第二に「社長、会長に相談するまでもないことにつきましては常々伊藤君と相談いたしておりましたので、一番気安く頼める相手でございました」。だからあなたにサインをお願いした、こう言うわけです。そこで、あなたはロ社の仕事を大変よく知っていた。この点、まず間違いがないと思うのでありますが、これが一点。もう一つ、常々相談をしたとおっしゃるのですけれども、あなた、いま、社長室長という仕事を四十四年からついこの間までというわけでありますから、六、七年おやりになっている。そうなりますと、この相談の中身――大久保さんは飛行機を売り込む方の責任者であります。その代理店、売り込む利益を求めている中心はロッキードであります。今回のトライスターあるいはP3Cオライオン等であります。そうなりますと、常々相談をしてきた中身というのは一体何か、これを承りたい。 |
○伊藤証人/お答えいたします。まず第一の御質問のロッキード社との関係をどの程度承知しておるかという件であります。これは、私は、昭和三十三年からの非常に古い関係であり、そしてロッキード社とのビジネスの関係におきまして非常に円滑に行われているという点は承知しておりますけれども、先般も御説明申し上げましたように、私の方の会社の組織と申しますのは、それぞれの営業本部がございまして、その具体的なビジネスの内容につきまして私が逐一承知し、またそれを指図したりするような組織ではございませんので、恐らく大久保さんも、そういう古い関係であるということを承知しているという意味でおっしゃったのじゃないかと思います。 〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 次に、私に気安く何でも相談をして、何を相談したか。これはいろいろございまして、たとえば、私は人事の担当もしておりましたから、人事のことで御相談を受けたこともございますし、ちょっといま具体的になかなか思い出しませんけれども、いろいろなことで御相談を受けたことはございます。ただそれは、同じ会社の同僚でございまして、特に大久保さんとだけ何もかも御相談するというような関係でも当然ございませんでした。さように御理解をいただきたいと思います。 |
○大出委員/大久保さんの仕事の中心は、ロッキードの飛行機の売り込みにあったはずです。104等を売り込んで、ようやくこの部門も何とかなった、トライスターを売り込んで、ようやくこの部門はこれで安定する、こういうことが松井さん等から言われている記録があります。そうなると、あなたに常々相談をしたという中身はロッキードにかかわること、こう考えるのが常識ですが、いかがでございますか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。確かに、大久保さんの機械第一本部の重要な一つの仕事がロッキードとの関係であったことは申すまでもございませんけれども、その他にもいろいろな仕事がございまして、決してロッキードだけに専念しておられたわけじゃございません。したがいまして、私が御相談を受けましたのも、ロッキードとの具体的な商談について御相談を受けたということよりも、むしろほかのことの方が多かったのじゃないかというぐらいの感じでおります。 |
○大出委員/あなたがロッキードのことを――楢崎質問によれば、大久保さんと同等の方々はたくさんいる、だが、なぜその方に頼まないで伊藤さんに頼んだのだと言ったら、伊藤さんが一番よくロッキードのことを知っているからと言う。それなら、七年近い長い間、大久保さんが社長に言うまでもないようなことをあなたに相談をしたと言うなら、相当ロッキードの問題は話してなければ、あなたがよく知っているからということが口に出やしない。そうでしょう。常識です、そんなことは。なぜそれを否定されるのですか、素直にお答えになったらどうですか。簡単に……。 |
○伊藤証人/私は、大久保さんがそういう意味で申されたとは必ずしも思っておりません。 |
○大出委員/このやりとりからいたしまして、あなたはなかなか回転の速い方だからほかに持っていこうとなさるけれども、大久保さんが答えられた中身からすると、あなたはロッキードのことをよく知っていなければおかしい。知っているとおっしゃっているのだから、大久保さんが。そうでしょう。ここも食い違います、大久保さんの言っていることとは。だから頼んだと言うのだから。そこで、大久保さんはクラッターさんと商売の相手ですから常時話をしてきておられることは認めておる。だとすると、この長い年月、ロッキード関係の問題を知っているあなたに相談をしてきたのだから、そうならばあなたがクラッターさんにこの間一遍も会ってないということは常識上考えられない。大久保さんの仕事の中心なんだから、その責任者なんだから、東京における。そうでしょう。それをあなたは、顔も見たこともない、私の質問に、廊下ですれ違っただけだ、こう言う。数ある外人の中で忘れていくような顔だとあなたは言う。そういう言い方は通りませんよ。不自然じゃないですか。あなた、おかしいとお思いになりません。いかがですか。 |
○伊藤証人/先般のときにも大出先生からそういう非常に厳しい御質問がございました。これは私、もう本当に申し上げますけれども、私は、クラッターさんとはいま先生がおっしゃいましたような関係でもございませんし、先ほど申し上げましたように、全くお顔をうろ覚えに存じているという程度のことでございます。全くお会いしたことはございません。 |
○大出委員/それじゃもう一点承りたいのですが、シグ・片山という方は、念のためもう一遍承りますが、あなたは全く御存じありませんか。 |
○伊藤証人/全く存じ上げません。 |
○大出委員/この方は、大久保さんが昭和三十六年から三十九年までニューヨークの支店長時代に、このときに副支店長さんがおいでになった、名前がウィリアム・モリ・ジュニアという二世の方。三年余にわたって支店長と副支店長。このウィリアム・モリ・ジュニアさんの御親戚なんですね、シグ・片山さんという方は。常時、車でここに乗りつけて、いろいろなやりとりをここでしておられた。だから大久保さんが御存じないというのは不思議な話ですがね。これは後からはっきりさせますが……。ところで、あなたは大久保さんと長い年月のおつき合いなんだから、常々話してきているのだから、しかもこの御親戚で年じゅう行っておられたシグ・片山さんは東京においでになったのだから。そうなると、あなたが一遍や二回話を聞いてないはずはないと、私はこれまた大変不思議に思うのですけれども、いかがでございますか、念のために。簡単で結構です。 |
○伊藤証人/実は大出先生のおっしゃること、私と大久保さんとの関係、何か非常にビジネスの上においてもその他の点においても、特殊なような御前提の上に立ってのお話のように承りますが、私はこのシグ・片山という方、実は正直なところ申しましてお名前も存じませんでした、今度のことまで。まして全くお目にかかったことはございません。 |
○大出委員/今回のこの問題は、私が前回資料を挙げて問題提起をいたしましたように、ディーク社から金がたくさん国内に入ってきている、クラッターさんあてにですね。二十数億入ってきている。だから金はある。あなた方は受取を暗号でお書きになっている。この現実は間違いがない。さて、受取をお書きになったのだから、後、その金をあなたの手元へ持ってきたのかあるいはどこかほかに置いておいたのか、それはわからぬ。わからぬが、受取を書いているんだから、その間に運ぶ人があってつながりができてくれば問題の焦点がはっきりする。あなたがクラッターさんとうんと近いということになると、これまたはっきりする。しては困るから、あなたは向こうへ行こうとする。そこで、時間の関係がありますから問題を明確にしておきますが、私ども実は大変足でかせいで、苦心をして調べてみた。たくさんの方に会って聞いてみた結果として、こういうことが明確になってまいりました。念のためにあなたにここでもう一遍承っておきますが、いま私が申しましたシグ・片山さんのやっておられる会社がございます。これは本社は当時千代田区の丸の内一丁目一の一番地、通称パレスサイドビル、分室が港区北青山一丁目二の三、実はいまここが本社になっております。ここにある。遠いところじゃないのですけれども、名前はユナイテッド・スチール。聞いたことございませんでしたか。念のため、一言お答えください。 |
○伊藤証人/私はユナイテッド・スチールという会社は全く存じておりませんでした。ただ、今度こういうことにいろいろなってまいりまして、実は先週でございましたか、私の方の会社で調べました。調べてもらいました。そうしましたら、昭和四十六年でございましたか、きわめて少額の取引が私の方の建材課というところでこのユナイテッド・スチールという会社とあったそうでございます。ただ一回だけ。それも私はつい最近になってといいますか、知りましたわけでございまして、それまで私はお名前も会社名も全く存じておりませんでした。 |
○大出委員/このシグ・片山さんのところはロ社との契約があります。あなたの方は一遍だけ取引があった、こうおっしゃる。一遍だけ取引があればだれか知った人がいたはず。だが、表はそうであっても裏の方はこれはわからぬ。そこで、この関係の方々、一々当たって承ってみましたら、実はIDコーポレーションのみならずADコーポレーションというのが出てくる。つまりロッキードと丸紅さんとのこの真ん中で、それをつないでいく業務をやっているのだということ、これが一つ。それからエリオットさんがユナイテッド・スチール社をたびたび訪ねておられる、これが二番目。クラッターさんは、日本に来たときはほとんど毎日のようにというわけで、毎日のように――人に聞いたんですから、毎日のようにシグ・片山さんと昼食をともにしておられる。相当なことがなければ――これはシグ・片山さんについてピックアップパースンズという言葉がチャーチ委員会の資料に載っておりますが、このシグ・片山さんのピックアップパースンズというのは運び人という意味に受け取れますけれども、大変重要なところにおいでになりました。そこで、この片山さんと大久保さんと伊藤さんが何回も電話で話し合っていたことについて関係者の証言がございました。私は、けさほども実はここでもうちょっと明らかにしてもらいたいと思ってお願いをしたが、そこは何とか御勘弁を願いたいというので、ここで実は申し上げられない。そこで、四十八年、片山さんを通じてロ社、丸紅、この二つの会社が何度か会合を開いている。場所はユナイテッド・スチールの分室、北青山です。今日の本社であります。で、どのくらい開いているんだということを確かめましたら、その方が知っている限りで四回程度と言う。そのときは大変厳しく、みんな人払いをしてしまうんだ、人をどけてしまう、おたくの方々がおいでになると。そしてクラッターさんとエリオットさんと一緒のとき、またクラッターさんが一人のとき、こういうふうな形になっている。丸紅の皆さんの方は二人ないし三人でお見えになっている、こういうことなんです。だから、全く知らないなどということはあり得ないのですが、と言う。実はこれは理屈じゃない。調べた結果なんです。だから、あなた電話なさったことがありますか、と聞かざるを得ない。おいでになったことがありますか、と聞かざるを得ない。三人の中には大変大きい体格の方がおったと言うので、私は、これは申しわけないのですけれども、松井さんもお見えになっていたんではないかというように思っている。私は、実は確証を握ったと思っている。あなたが否定されても、私は警察官でもなければ検察官でもない、だから、あなたが否定されれば、ここから先はお任せをする以外に手がない。が、あなたが金をみずから手にしておられないとおっしゃる限りは、本来ならばここは明確にする責任がある。こう思っておりますが、時間がございませんから簡単にお答えください。否定なら否定で結構です。 |
○伊藤証人/私は、先ほど申し上げましたように、シグ・片山さんという方はお名前も存じ上げなかったくらいでございますから、お電話なんか全くしたことがございません。それから、いま先生が御指摘の私の方の者が数人そういう会議に出席しているということがございましたら、これは私はもちろんそんなところに同席いたしておりませんが、どういうことでございますのか、先生にそういう情報を提供されました方に、お差し支えなければ私は会わしていただきたいと思います。 |
○大出委員/これは別な話ですが、いまの話は。そこで、この間の食い違いの中心点に入らしていただきますが、いままで申し上げましたのは、こういう関係だからクラッターさんとあなたが顔見知りでないなんてことは毛頭ない。会っておられるはずだ。私はそういう確信を持ちます。片山さんを知らぬはずはない。私はこういう確信を持ちます。そこで、楢崎委員の質問であなたは、大久保さんの方からの御発言によれば――あなた自身は、私どもの質問に答えて、あなたの部屋でとおっしゃったが、大久保さんの証言というものはきわめてはっきりしている。ここに取り出してありますけれども、ピーナツ、ピーシズ領収証はタイプで打ってあるが、どこで打ったのか、と楢崎質問。大久保さんは、私がクラッター氏に頼まれまして「伊藤君に頼み」――これは伊藤君、伊藤君と、こう出ている。伊藤さんと言わないですね。大久保さんは上司だから。上司を呼びつけて、あなたがサインするというばかなことはないと初めから私は思っているのですが。あなたが行くのが常道だと思うのですよ、先に常務になっておられるのだから。全部調べましたが。そうでしょう。だから伊藤君になっている。私が伊藤君に頼み、私の秘書に打たせました。楢崎委員「伊藤氏に相談してすぐその場で伊藤氏にサインをさせたのですか。それとも何日か前に相談をしてそのタイプを打って、伊藤氏にサインをさせたのですか」。大久保さん「伊藤君に依頼いたしまして直ちにタイプを打ってもらいました」、楢崎委員「相談してすぐですね。その日ですね。そのサインをさせた日はいつですか」。大久保さんがあなたにさせた日はいっですか。四十八年の八月が第一回でございます。楢崎委員「あなたの部屋ですか、それとも社長室ですか」、「私の部屋と記憶いたしております」と大久保さん、きちっと答えておられる。しかも、その上に念を押している。大久保証言とあなたの証言の食い違い。「伊藤氏は、このタイプはクラッター氏が打ったものと思う、こういう証言でありましたが、あなたは自分のところで打たした、あるいは伊藤氏に打たした、こういうことでございますね、これが違っておる。それから伊藤氏は、自分の部屋で、つまり伊藤室長の部屋にあなたがやってきて」、つまり大久保さんが行って、「そこでサインしたと言っているのですよ。あなたはいま何とおっしゃったかというと、自分の部屋でサインさした」とあなたはおっしゃった。大久保さんがおっしゃった。ここが違う。「さらに伊藤氏は、クラッター氏には面識がない、会ったことも、見たこともない。同じ部屋で、三人で――あなたの証言は同じ部屋で三人でおって」、つまりタイプを打って「サインをさした」。こう言っているのだから「これは大変な違いですよ」。クラッター氏が同席したことを大久保さん認めたんです。そうしたら、委員長の言葉が一言入りましたが、楢崎氏がこの三つを並べてこの食い違いを――真実は一つしかないんですから、だからどっちかがうそを言っているんだと言って指摘をしたら、大久保さんの議事録に基づく答弁は「私は虚偽の証言をいたしておりません」ときちっと答えた。それをさっきから聞いておりますと、今度はあなたの部屋の方の話で、しかも秘書課長が物を言ったからあなたのところのタイプで、と言っている。まるっきり違う。真実は一つしかない。もう一遍、簡単で結構ですが、あなたのさっき同僚委員に話したことは間違いないですか。簡単でいいです。 |
○伊藤証人/実はその点につきましてはよく御説明を申し上げたいと思うのでございますが、先ほど松永先生の御質問のときに申し上げましたように、実はいま大出先生が御指摘のとおりに、あの日に私の証言と大久保さんの証言の食い違いというものをはっきり御指摘に相なったわけでございます。そこでこの違いというのは、私は先ほど申し上げましたように、私の記憶に間違いないと思って申し上げておりましたのでございますが、具体的ないろいろな条件につきますとはっきりした記憶がございませんでしたし、またこんな大きな問題になるとも思わなかったものですから、実はまことに簡単にいたしたようなことでございまして、確かに私の記憶違いもございました。しかし、この記憶をたどりたどりながら、たまたま秘書課長もそういう記憶を喚起してくれることがございまして、はっきり申し上げられますことは、私は、クラッター氏が大久保さんのところに依頼に見えましたときも、あるいは私がまたサインをいたしましたときにも、全然クラッター氏とは同席をいたしておりません。それから、これは私の記憶の違いでありましたかと思いますが、私の方でタイプを打たせまして、それを直ちにサインをいたしましてそして大久保さんに渡した、こういうことが、記憶をたどりたどり到達いたしましたこれが真相であろうという結論でございます。 |
○大出委員/私実は一つの記事を見まして、ロッキード特別捜査本部に寄りました。また、そこの本部長をやっておられるのは刑事部長の中平さんでございましたが、わずかな時間会ってもみました。それから、その周辺を何人かの方々に当たってみたわけであります。それはどういうことかといいますと、二十四日におたくに特捜本部が家宅捜索をやった。大変なたくさんのものを持ってお帰りになった。このときに、これは朝日新聞の二月二十五日でございますが、大久保前専務らからの事情聴取で――これは私が聞きましたら、八十人からの方が行ったから、その部屋においでになったら説明を求める場面はあるという、そういう意味です。だから、いわゆる事情聴取じゃありません。ここで「ピーナツ領収証など四枚の暗号領収証は私の部屋へ伊藤前専務を呼んで書いてもらった」という趣旨の説明があった」、こうなっている。これは大久保さんですよ。ここだけで言っているのじゃないのですよ。私はこれがあるから、周辺を洗ってみました。わざわざ行ってみた、雨の中を。あなたいろいろおっしゃるけれども、大久保さんは言い切っているし、ここでまたこうなっているとすると、これはあなたがいまここでお答えになったそれだけでどうも納得できない。だから、どうしてもこれはやはりお二人並んでもらわなければいかぬ。このことを委員長にこの件について申し上げておきます。 |
○正示委員長代理/理事会でよく相談いたします。 |
○大出委員/次に、先ほど金であるか物であるかわからぬ――前回の私どもの質問では金品と言った、ピーナツは。ところが、チャーチ委員会が十三日に出した後からのこの資料には、確かにおたくのこの領収証は上が消えている。消えているのか消したのか、それはわかりません。消えておりますでしょう。こっちは一枚で、わざわざワンハンドレッド・ピーナツをここへ出しておりますけれども、これには何も書いてない。ところが、私がワシントンでいち早く入手をしました資料がここにある。ここにはアイ・レシーブド・ワンハンドレッド・ピーナツなるものの一番上に添え書きがございます。添え書きはオリジナル・ツー・E・H・S。英語に堪能なおたくですからおわかりだと思うのですが、このSを調べたら、ロッキードの本社のミスターE・H・シャッテンバーグさんという会計担当の責任者でございます。重役だそうです。だから、このおたくの領収証原本はシャッテンバーグさんに送れというここに添え書きが入っている。会計担当の責任者である重役にこのおたくの領収証を送るということは、金に間違いがないじゃないですか。別なものを送ったって意味がない。本当にピーナツを送ったって、これはお笑いだ。そうでしょう。はっきりしている。あなたが、そこのところはどういうものが入ってきたか記憶がないとさっきおっしゃるのだから詰めようがないが、あなたがここにサインをされたこの一番上の添え書きは、チャーチ委員会が書いたものじゃない。だから、消してきたという実は疑いもできるけれども、そこまでは申し上げない。明らかにこれは金、そのことがわからぬ丸紅の諸君ではないはずです。そうでしょう。そのことがわからぬ丸紅の方々ではない。しかも、それで領収証にサインをしたとすれば、金は一体どこに行ったのだということにならざるを得ぬじゃないですか。そうでしょう。だから、金はあなたの方が手にされていると見なければ、外為法違反は成立をしない。ディーク社等から入ったやみの金があなた方に入っていると見なければ、警視庁等が、特捜本部等が捜査をする意味の外為法違反は成立をしない。ここのところ、金である。御存じじゃなかったのですか。もう一遍念を押します。 |
○伊藤証人/お答えいたします。いま先生が御提示になりました、私のサインをいたしました書類の上にそういうタイプが打ってあるということは、私は全く記憶も何もございません。恐らく、私がサインをいたしましたときには、さようなものはなかったんじゃないかと思っております。サインをしたときの事情につきましては、何回も申し上げましたように、それが金であるというようなことは全く承知いたしておりませんでした。また、大久保さんからもそういうような説明を受けておりませんでした。 |
○大出委員/時間がもう一問ぐらいしかありませんから、もう一点承っておきますが、このチャーチ委員会の議事録で、四日の日の議事録であります。ここにヒロシ・イトーの領収証がある。この中で、彼ヒロシ・イトーが言っているという場面がございます。イン ホイッチという言葉を使っております。ヒー セズ。で、まあいろいろな訳をしている方がありますけれども、ここに一つの訳がございます。これによりますと、「レビンソン われわれのところに、いま伊藤氏の領収証があります。この中で、彼伊藤宏はID社と関係があると述べているが、そのとおりですか。」という個所があります。「イエスサー」「そのとおりです。」。こうなっている。そうすると、あなたがこれをお書きになるときに何かがなければ、これに書いてあったのかあるいはほかに何かあったのかわかりませんが、何かがなければいまの問題の説明がつかない。彼ヒロシ・イトーは言っている、ということにならない。だから、あなたは何かそこで私どもにおっしゃらぬことがあるのではないか。いまのシャッテンバーグさんのこともそうです。念のために聞いておきます。いかがでございます。 |
○伊藤証人/私は、実はID社という会社のことも全く存じませんし、私の書きましたものが一体どこでどういうことになっているのか、全く不可思議と申しますよりいたし方ないのでございまして、さようなことは私は全く存知いたしておりませんでした。 |
○大出委員/時間が参りましたから交代をいたしますが、やはりこれだけ大きな騒ぎになっているわけでありますから、あなたがどうしても金を手にしていないと言い張られるなら、私は実は大変大きな疑問を持っておりますが、やはり言うべきことは言って――何の説明もなしに領収書にサインはしたが、金は来ているんだがあなたは手にしていないと言われても、納得のしようがないのですから、国民の方々もそうでしょう。だから、前回私は大きな声を出しましたが、あなた、そこのところを説明する責任がありますよ。大久保さん等の問題もありますから、これで終わらせていただきます。 |
○正示委員長代理/これにて大出君の発言は終了いたしました。次に正森成二君。 |
○正森委員/伊藤証人に伺いますが、昭和四十八年八月ないし四十九年二月ごろ、あなたのいつもおられる社長室長としてのお部屋は何階にございましたか。 |
○伊藤証人/十五階にございました。 |
○正森委員/先ほどの御証言で、あなたの部屋は大部屋である、そのすみにたしかタイプが置いてあって、そこでタイプを打たした、こう言われましたが、間違いございませんか。 |
○伊藤証人/私が秘書の者に申しつけたのは間違いございませんけれども、そのタイプであったかどうか、あるいは全部がそのタイプであったかどうかというまでは私は確認いたしておりません。 |
○正森委員/当時、機械第一本部は何階にございましたか。 |
○伊藤証人/たしか六階であったと思います。 |
○正森委員/機械第一本部長の部屋はどこにありましたか。 |
○伊藤証人/同じ六階でございます。 |
○正森委員/そこで私は伺いたいのですが、これが十五階の役員の隣同士の部屋というならまだわかりますけれども、六階からわざわざ十五階までエレベーターに乗っていく、あるいはあなたが十五階から六階へ行くというのは非常に位置が違うんですね。そういうことを間違えるということは普通考えられぬ。しかも大久保証人は二回目の証言の中で、私の部屋に来てもらってタイプを打ってもらった、こう言っておる。そして捜査当局等の捜査によれば、六階の第一機械本部の西ドイツ製のアドラーというタイプが、あなたのその領収証の文字の大きさ等全く一致しておる、こう言っておるのです。そうすると、大久保さんの部屋へ行かれて、あるいは大久保さんの部屋でタイプが打たれて、第一機械本部で、そしてそこであなたが署名したという大久保氏の証言の方が正しいのじゃないか。六階と十五階ですよ。こんなものを間違うわけはないと思うのですね。よく考えて答えてください。 |
○伊藤証人/実はその点につきましては、十七日のこの証言が終わりましてから、二人で記憶をたどりたどりいろいろと思い起こしてみたわけでございます。御承知のように、まことにこういう大事件になるなんということはその当時夢にも思っておりませんでしたものでございますから、非常に記憶があいまいでございまして、私もその記憶が定かでなかった点もございますが、先ほど私が申し上げましたように、大久保さんと記憶をたどりたどり到達いたしました。そのときに確かに秘書課長が、たしかこういうことがあったのじゃございませんか、私もそういう記憶がありますよというふうに言ってくれました等もございまして、私が先ほど申し上げましたのが二人で記憶を整理しました結論であるというふうに思いまして、その要点と申しますか、二つの点でございましたが、一つは、私が、大久保さんのところに依頼に見えましたクラッター氏とは同席をしていないということ、それからサインをいたしましたのが私の席であり、また大久保さんからの依頼を受けましてタイプを打ちましたのも、秘書課の者に私が申しつけたのであろう、こういうことに相なったわけでございます。 |
○正森委員/非常に整理して相なったように私どもとして聞こえるわけですが、しかし、英文のタイプを打たせるのに、原稿なしで口頭で言って打たせるというようなことは通常考えられないんですね。だれが口頭で言いましたか。 |
○伊藤証人/たしか私が申しつけたわけでございますから、私が申し上げたと記憶いたしております。 |
○正森委員/そうだとすれば、タイプは一瞬の間に打てるわけではありません。あなたはタイプを打つタイピストの横に終始おって、そして一字一字言わなければタイプは打てないはずであります。どんなに頭のいい者でも、間違えずに一言言うだけで打てるはずはありません。そうすると、あなたは終始タイピストの横におったということになる。そのタイピストの名前を思い出しませんか。 |
○伊藤証人/十五階にはタイプライターはございますが、タイピストはおりません。秘書課の者でも、総務課の者でも、社長室の者でも、皆それぞれタイプを打ちますものでございますから、皆の共用でそのタイプを使っているわけでございます。しかも、いま先生の御指摘のように、その文面が非常に長いものじゃございません。きわめて簡単なものでございましたので、私は自分で書いてこれを渡したという記憶はございません。 |
○正森委員/それでは、それはあなたが横におって、口頭で言いながらタイプを打たした、こういうように聞いておきます。それ以外にはないでしょう。そこで次に伺いますが、檜山社長、当時です、現在の会長の証言によりますと、ワンハンドレッド・ピーナツというような、そういう書類ですね、サインしたというのを知って、これを非常に異常に感じた、こう言っているのですね。これはあなたも御承知のことだと思うのですね。異常だということは、これは日本語では異例だということと同じ意味だと思うのですが、そうとってよろしゅうございますか。 |
○伊藤証人/実は、私はこのサインをいたしましたときの状況につきましては、るる申し上げているとおり、大して深く気にもせずに、気楽に……。 |
○正森委員/時間がございませんので、簡単に答えてください。私は、異常だということは異例だということと同じことですねと聞いているのです。 |
○伊藤証人/気軽にサインをしたものでございまして、そのときにそう異常だというふうに思いませんでございました。 |
○正森委員/何を言っておるのですか、あなた。何を言っておるのですか、あなた。檜山さんはこのことを知って異常だというように思っているのですね。あなただって、何かサインするときにワンハンドレッド・ピーナツというようなことは例が普通ない、異例だというようなことを思うのはあたりまえじゃありませんか。檜山さんだって現にそう思っている。あなたが軽率にサインしたとかいうようなことは、あなたがおっしゃるのですから。しかし、そのときに普通、常務なりあるいは商社としては例がないことだ、それぐらい思うのはあたりまえでしょうが。なぜそういうことについて素直に返事ができないのです。 |
○伊藤証人/お答えいたします。確かに、先生のおっしゃるような異常と申しますか異例と申しますか、という気はいたしましたけれども、その理由につきましては、先ほど来申し上げますように、ロッキードから頼まれた大久保さんの言葉をそのまま私が理解をいたしましてサインをいたしたものでございまして、後ほどこういうことになりまして会長にも報告を聴取をされ、私も報告いたしましたときに、確かにそういう意味で御叱正を受けました。そのときにまことに申しわけないと申し上げたわけでありますが、そのときには、いま先生がおっしゃるほどまでに思っていなかったということを申し上げたかったわけでございます。 |
○正森委員/あなたはいろいろおっしゃいますけれども、聞いた途端に檜山会長は異常なことだ、こういうぐあいに言っているのですね。あなたのいまの証言も、後にこれがこういう大問題になった、いまほどには思わないけれども異例であると思ったということを間接的にお認めになったと思うのですね。そこで私は伺いますが、あなたの会社は内規がありますね。職務権限規程というのもございますね。お答えください。 |
○伊藤証人/はいございます。 |
○正森委員/その職務権限規程の第十七条には、職務遂行上の原則として「自己ニ決定権限ガアル場合ハ、専決スル。タダシ、重要マタハ異例ノモノニツイテハ専決範囲内デアッテモ上級職位ノ決裁ヲ得ル。」と、こう書いてあります。機械第一本部長かつ常務というのは非常に偉い人であります。そういう人の上級というのは、これは社長以外にはないのではありませんか。 |
○伊藤証人/これは、正式のいわゆる稟議手続等等では先生のおっしゃったような手続で会社の業務の運営がなされておるのでございますが、いま問題になっておりますこの書類と申しますのは、るる申し上げます経緯から御理解いただきますように、会社として正式にそういうものを発行いたしたわけでもございませんし、また私がそのときにそのピーナツなりピーシズなりの詳細なる意味を承知していたわけでもございませんし、単なるサインペーパーぐらいのつもりで、きわめて軽くサインをいたしたものでございます。 |
○正森委員/きわめて軽くサインしたと言われますが、私は、何年かたってこういう問題になっているから言うんじゃない。あなたが五十万円、百万円の領収証にサインされるならあたりまえのことです。しかし、百個のピーナツとか百二十五のピーシズとか、そういうものにサインされるというのは異例であることには間違いがない。しかもそれはあなたにとって、あるいはあなたの会社にとって非常に重要な取引先であるロッキードからわざわざ頼まれたことであります。これを異例でないと感ずるのは非常におかしい。異例であれば自分の上級職の決裁を得る、こういうことになっております。あなた方の内規集を調べてみるとちゃんと書いてあって、重要、異例の取引については社長が決裁をする、こういうようになっております。こういうことを社長室長であるあなたが知らないわけがありません。いいですか。そして、申し上げますが、あなたは軽率にサインをしたという理由として、これはロッキードの社内事情あるいは社内事務規程上必要なことであって、丸紅にも個人にも迷惑をかけない、用済み後は廃棄する、こういうように大久保さんから言われたから気軽にサインした、こういうように言われましたね。そのとおり間違いありませんか。 |
○伊藤証人/そのとおりでございます。 |
○正森委員/用済み後廃棄するということは、ロッキードにとってはこれは秘密にしなければならないことである、こういうことを意味しているのではありませんか。 |
○伊藤証人/当時は、さようなことは私といたしましてせんさくはいたしませんでございました。 |
○正森委員/当時としては――あなたのような明敏な、小学校五年生から直ちに中学校に行かれ、中学四年生から直ちに高等学校に行かれた大秀才にしては、信用することができない。そこで私は伺いますが、このピーナツやピーシズの書類について控えを作成されましたか。 |
○伊藤証人/全然作成をいたしておりません。 |
○正森委員/あなた方の文書管理規程によれば、発信文書はすべて控えを作成するというようになっております。あなた方は正式の文書でないと言われるかもしれませんが、これは正式の文書以上に重要な文書だったんじゃありませんか。だからこそわざわざ大久保専務が、用済み後直ちに廃棄するんだ、だから署名をしてくれ、丸紅にも個人にも迷惑をかけない、こう言ったんじゃありませんか。あなた方の同じく文書管理規程にはどう書いてあるか。機密文書という規定があるでしょう。あなたはよく知っているでしょう。あなたは社長室長であります。こういうのを監視するのが社長室長なんです。それを七年間やってこられた。その第四十六条にはどう書いてあるか。秘密文書は原則として用済み後すべて廃棄する、こう書いてあるじゃないですか。だから、これがまさに秘密文書であり機密文書であるということは、あなたは百も承知しているはずであります。そうでしょう。それなのに、あなた方の職務権限によれば一級上の社長の決裁が要るにもかかわらず、どうしてその決裁を求めなかったのでしょうか。それは本当は求めたんだけれども、求めたことを公にできないわけがあるからではありませんか。 |
○伊藤証人/全然さようなことではございません。いま先生がおっしゃいましたいろいろな諸規程集は、私は各条についていま明確に覚えておりませんけれども、そういうように重大に考えずに、会社の規程に照らし合わせてどうこうというのではなしに、先ほど来申し上げますように非常に軽い気持ちであれいたしましたものですから、控えももちろんとっておりませんし、まして機密文書の取り扱いにいたしたこともございませんし、きわめて軽率なことでございましたけれども、軽くサインをいたしたものでございます。 |
○正森委員/政治献金については、社長室、そこが扱う公的な窓口ですね。 |
○伊藤証人/さようでございます。 |
○正森委員/たとえそれがロッキードであれ、用済み後直ちに廃棄する、公表しない。あなた方は公表された後、抗議に行ったのでしょう。それぐらいのものであれば、商取引の常識として裏念書をとるのが通常ではありませんか。これは書くけれども、用済み後は直ちに廃棄するんだ、公表はしない、丸紅にも伊藤宏にも迷惑はかけないという念書をとるのが商取引の常識ではありませんか。これは全部の商社がそう言っております。念書をとりましたか。とらなかったとすれば、なぜです。 |
○伊藤証人/そういう念書はとっておりません。また、いま先生がおっしゃいますように、これが政治献金につながるとか、また金額がどうのこうのなんというようなことは、私は全く、こういうことが事件になりまして、果たしてそうであったのかと思って、いまもいぶかしく思っているぐらいでございますから、さようなことは私は全然とっておりません。 |
○正森委員/時間が参りましたのでこれで終わりますが、あなたの証言が本当であるかどうかは結局国民が判断するでしょう。とうていあなたの証言は賢明な丸紅の社長室長の答弁とは思えない。 |
○正示委員長代理/これにて正森君の発言は終了いたしました。次に石田幸四郎君。 |
○石田(幸)委員/まず伊藤証人にいろいろお尋ねをする前に、一言申し上げます。先ほど自民党の山口議員がわが党の渡部一郎議員の発言に対しまして、大平大蔵大臣の名誉に関するとのことでシグ・片山氏との関係について言及されましたけれども、渡部議員の発言は、大平大蔵大臣とシグ・片山氏との関係についてユナイテッド・スチール社社員と名のる者の通告によるものでありまして、その内容を鬼氏に確認する意味で行ったものであることを、この際一言申し上げておきたいと思います。早速、それでは伊藤証人にお伺いをいたしますが、今回の事件につきまして、いわゆるアメリカからの金の流れが非常に大きな問題点になっておるわけでございます。捜査当局の調べによりますれば、大久保、伊藤氏らに二百万ドルが渡った容疑が濃厚であるというような、そういうニュースも流れておるわけでございますが、その他報道によりましては、二月二十四日の捜索で伊藤前専務宅から一億数千万相当の株券が発見された、非常に換金性の高いものであるというような報道がなされたわけでございますけれども、これを御所持されていたのは事実ですか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。これは私の個人の資産として、時価に換算しますとそんなに多額になるかどうか、私まだよく存じておりませんけれども、約三十銘柄くらいの有価証券を私は所持しておりまして、私の全くの個人資産でございます。今回の事件とは全然関係がございません。 |
○石田(幸)委員/そうしますと、当然これは所得の一部として税務申告がなされているものと理解してよろしゅうございますか。 |
○伊藤証人/所得と申しますか、各年度の所得のあれにつきましては、税法に従いまして全部申請をいたしております。 |
○石田(幸)委員/政治献金の問題についてお伺いをいたします。先般、公明党の坂井議員より、丸紅関係の政治献金について資料の提出を要請をいたしておりますけれども、まだ当委員会に提出されたことはないように伺っておるわけでございますけれども、さらにまたこの件に関して新聞等の報道によりますれば、丸紅関係の一切の書類が警察当局に押収をされたため、そのためにこの書類の提出ができなかったというふうに言われておるのでございますけれども、証言でお約束されたのが二月の十七日、捜査当局の捜索がありましたのが二月の二十四日、檜山会長はいつでもわかるようになっているというふうにこの点について証言をされているわけでございますけれども、一体、この提出要求資料が提出できなかった理由についてお答えをいただきたいと思います。 |
○伊藤証人/私、御承知のように十七日の夜の取締役会で辞任をいたしておりますので、責任ある御回答というわけにはまいりません。伺っております限りで申し上げさせていただきますが、実はあのときにいろいろな御提出の要請がありました書類がございまして、たしか委員部の方からも御督促をいただいたものもあるようでございます。それにつきまして、そのうちの一部につきましては早速整理をしまして、たとえばロッキード社との口銭の問題等の書類につきましてはお届けを申し上げたようでございますが、それから後、いろいろ整理をしております段階で、いま先生おっしゃいましたような捜査当局の押収がございましたものでございますから、お届けできなかったんじゃないか、かように存じております。 |
○石田(幸)委員/それでは、さらにお伺いをいたしますが、伊藤さんはいわゆる四十四年以来社長室長をおやりになって今日に至っていらっしゃるわけでございますので、当然これは政治献金について熟知していらっしゃると思うわけでございます。そこで、この政治献金に対する献金先あるいは金額などの原案、こういうものはどこで作成し、それがだれの役目であるのか、そうして具体的にはだれが決裁をされるのか、お伺いをいたしたいと思います。 |
○伊藤証人/事務局といたしましては社長室であり、決裁者は社長でございます。 |
○石田(幸)委員/この問題については、常務会あるいは取締役会等に報告されますか。 |
○伊藤証人/必要に応じて報告をされることでございます。 |
○石田(幸)委員/自治省発表の丸紅関係の一覧表を全部チェックしてみますと、この政治献金は政党を除く場合、その政治献金というのは特定の政治家並びに政治団体に限られているように思うわけでございますけれども、この特定の人たちだけが選ばれる理由というのは何ですか。 |
○伊藤証人/特定と申されますとどういうことでございますか、いままで私どもが献金をいたしました先が特定とおっしゃる意味でございますか。そんなに偏ってどうこうとも思っておりませんが、いずれにいたしましても、私どもは正式の政治資金規正法によりましてお届けしている限りの政治献金を分相応にしているわけでございまして、その内容等につきまして、もし委員会におきまして正式に御決定がございました上、委員長からそういう御指示がございましたら、提出さしていただきたいと思います。 |
○石田(幸)委員/私が申し上げました意味は、いわゆる政党関係に対する政治献金というものは、これは明確になっておるわけでございますけれども、いわゆる特定政治家もしくはその後援団体、そういうものに対する政治献金というのは、議員というのは御存じのようにたくさんおるわけでございますけれども、ごく限られた、この自治省の発表になりましたものをチェックした限りにおきましては、大体七、八名の方もしくはその政治団体、こういうふうになっておるわけですね。そういう点から見まして、なぜそういった方々だけに偏っているのか。その理由は何ですか。そういうふうに伺っておるわけです。 |
○伊藤証人/そのようなことにつきまして、私がいまここで申し上げるのが適当であるかどうか判断に迷うわけでございますが、もし委員会において正式に提出せよという御命令でございますれば御提出をさせていただきたい、かように思います。 |
○石田(幸)委員/その問題はまた後ほど検討するといたしまして、時間もありませんから先に行きます。前回伊藤証人は、福田太郎氏との関係におきまして、私は福田さん御自身とはほとんど面識がない、そしてジャパン・パブリック・リレーションという会社については、いわゆる丸紅の英文広報の編集をお願いをしておる、こういうふうにおっしゃっておりますね。そしてその編集については数年前から私の方の広報室が依頼している、そういう関係だ、こういうふうに実は証言をしておられるわけでございますけれども、私は、丸紅とジャパン・パブリック・リレーションとの関係はそう簡単なものではないと思うわけでございます。そのときに伊藤さんは、このジャパン・パブリック・リレーションというのは数年前からの関係であるというふうに証言をされておるわけでございますけれども、この福田太郎氏との関係等については、すでに新聞等においていろいろうわさが出てきた人でございますので、恐らく前回証言に立たれたときは、この福田太郎及びジャパン・パブリック・リレーションの名前については十分事情を聴取された上で証人喚問に応じておられるはずだと思うわけでございます。ところが、私どもは調べてみますと、ただそれだけの関係ではないわけです。ロッキード社との関係についても、社長室長でいらっしゃいますから、当然いろいろな問題を知っていらっしゃると思うのでございますけれども、いわゆる旧本社のありました大手町ビル、この持ち主は三菱地所でございますね。その三菱地所と丸紅とのいわゆる賃貸借の契約内容を見てみますと、このジャパン・パブリック・リレーションという会社は、実に三十三年九月二十日から丸紅関係の関係会社としての同居願がなされておるわけです。その後三十四年七月十四日にパブリック・リレーションズというふうに社名が変更になりまして、四十九年四月十日には同居期間の延長申請がなされて、これが承認をされておるわけですね。そうしてみますと、あなたがおっしゃっているような簡単なそういう役割りではないということがだんだん浮かび上がってきたわけなのですけれども、この点については全然御存じないわけですか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。いま先生が御指摘の点は全くそのとおりでございまして、と申しますのは、私も実はこれは私の方の総務の担当の者から聞いてまいったのでありますが、三菱地所さんの方針といたしまして、非常に小さく分割をしてあの大きなビルを貸さないという御方針がございましたようでございます。御承知のように私の方が非常に大きなスペースをお借りいたしておりましたものでございますから、そのときに私の方のいろいろな関連のある会社なども、私の方の傘下のあれとしてお貸ししたわけでございますが、その当初のいきさつは、それはロッキード社から頼まれたのかどうであるかということは私はつまびらかに存じませんが、お貸ししましたその状況と申しますのは、私の方が三菱地所さんにお払いをする権利金だとか敷金だとか毎月の家賃とかというものはそのままジャパン・パブリック・リレーションズからいただいておりまして、そこら辺にいわゆる不明朗と申しますか、そういう関係は全くございません。 |
○石田(幸)委員/その発言は私どもの調査とはずいぶん違うわけですね。と申しますのは、三十三年ないし四年ごろ、いわゆる大手町ビルに丸紅関係会社として同居した当時、福田さんはその当時の知人に対して、今度大手町ビルに入ることになったけれども、このビルはまるまる丸紅さんからもらったものだ、こういうふうに自慢げに語っていたとか、二、三にとどまらず証言をする人がおります。さらにまた、私は経理関係者にも会いましてこの問題を聞いてみましたところ、やはりこれを裏づける発言がございます。と申しますのは、敷金はその当時は拭っていなかった、敷金を払ったのは、丸紅が現在の本社に移転をされた後であろう、こういうふうに言われておる。また家賃にいたしましても、きわめて安い家賃がいままで支払われておったというような発言を得ておるわけでございます。この問題は、ロッキード社を優遇いたしました昭和四十七年のあの契約ときわめて類似をいたしておるわけです。時間がありませんからその程度にとどめておきますけれども、福田太郎氏との関係を見ますと、今回全貌が明らかになりましたように、福田太郎氏がロッキードと児玉氏との間におきまして重要な役割りを果たしておることはもう明確なわけですね。そういった点から考えてみても、あるいは福田太郎氏が三十六年に日本ロッキード・モノレール会社をつくったときに、丸紅の大久保専務とともに重役に入ってますね。そういった意味におきましても、あるいは前回コーチャン氏がトライスターを日本に持ってきたときに、コーチャン氏と福田太郎が握手をしている写真が掲載されましたけれども、そういう関係からいたしましても、これはロッキードと丸紅との間におきましてきわめて重要な役割りを果たしていたということはもう明白だと思うのです。そこでお伺いしますけれども、今回、まあいままでの経過の中においては、あなたは福田氏は知らなかったとおっしゃいますけれども、今日これだけのいろいろな関係が明かされた時点において、この福田氏の役割り、そういうことをあなたは承知していらっしゃるわけだ。ロッキードと福田、ロッキードと丸紅、ロッキードと児玉、その関係を見ますれば、当然児玉氏が直接間接にこの福田氏を通して丸紅と深いつながりがあったということは浮かび上がってくるじゃありませんか。そういう非難に対してあなたはどのようにお答えになりますか。 |
○伊藤証人/お答えいたします。ちょっとその前に事実関係で申し上げておきたいのでありますが、いま私が総務関係の者から聞いてまいりました福田さんのところとの賃貸借契約につきまして、いま先生の御指摘の点と違っておりますので、これはもう一度私は確かめまして先生に御返答を申し上げます。それから、いまの福田さんを通じまして児玉さん並びにこのロッキードと当社との関係でございます。私は先般も申し上げましたとおり、福田さんとお会いしました記憶というのはございません。私の会社との関係につきましては、先ほど申されましたいわゆる英文のブレティンの編集を依頼しているというだけしか私は承知しておりませんし、いま先生の御指摘のようなことについては、私はなかったのではないかというふうに存じております。 |
○石田(幸)委員/時間が参りましたので、終わります。 |
○正示委員長代理/これにて石田君の発言は終了いたしました。次に永末英一君。 |
○永末委員/伊藤証人に伺います。社長室長という仕事は、それぞれの会社でいろいろな変化はあるかもしれませんが、主として社長のいろいろな万般にわたる職務を補佐するということが重要な職務だと考えます。したがって、あなたがこの前ピーナツとかピーシズとかいう領収証を書かれて、これを社長に知らせなかったということについては、全国の幾万とおられる社長室長にとりましては一つの衝撃であったと思うのです。あなたは社長室長は長いのでございますが、社長室長の任務というものをどう心得ておられましたか。 |
○伊藤証人/確かに先生の御指摘のとおり、この社長室長の任務というものは、社長を補佐し、いろいろ会社の全般的なことを総括するということが非常に大きな任務であるということはおっしゃるとおりであると思います。ただ、私があの書類にサインをいたしましたという件につきましては、これは全く軽率と申しますか、ということでサインをいたしましたのに対して、まあ重要視しておりませんでしたといいますか、気楽にいたしたものでございますから、さようなことは全く報告をいたさなかったわけでございます。 |
○永末委員/檜山会長、当時の檜山社長は、本委員会の証言に立たれた際、コーチャン氏とは二、三回会ったと言われたり、十何年来ずっと何回会ったかわかりませんがと言われたりいたされました。しかし、明確にされましたのは、私のビルのレセプションルームでコーチャン夫妻に御飯を一回ごちそういたしましたと言われておる。この件をあなたは御存じですか。 |
○伊藤証人/私は正確に記憶いたしておりません。 |
○永末委員/あなたの会社と大きな取引をするアメリカの会社の社長夫妻が来られる、これは社長室長としては最も重要な仕事をなすべきときだと私どもは判断いたしますが、なぜ正確に覚えておられないのですか。 |
○伊藤証人/確かにおっしゃるようにこのロッキード社というのは当社の大事な取引先の一社でございますが、私の方のレセプションルームといいますのは、ほとんど毎日のようにいろいろな内外の重要取引先とのいろいろな会合に使われておりまして、そのすべてを私が決裁をし記憶していることはございません。 |
○永末委員/あなたの社長があなたの会社のレセプションルームを使われる場合は、あなたの決裁が要るのと違いますか。 |
○伊藤証人/これは秘書課長から報告を受けておりますけれども、社長がお使いになるのを私が決裁するということはございません。 |
○永末委員/社長の方から言い出されることもございましょう。主導権をとられることもございましょう。しかし、会社の組織体としての動きは、やはりそれは社長室長の方に御連絡があるのが普通の姿ではないか。社長室長としては、社長はきょうどういう重要なお客をレセプションルームに招待しておるかというのは、知らねばならぬ重要な仕事ではないかと思いますが、いかがですか。 |
○伊藤証人/その点につきましては秘書課長からもいろいろ報告がございますし、おっしゃるとおりでございます。 |
○永末委員/私は、あなたがコーチャン氏とは面識がないということを最初に証言せられた余り、こういう点をことさらにやはり言われていないのではないかという疑いを持つわけでございます。そうではございませんか。 |
○伊藤証人/コーチャン氏がいらっしゃいまして、いまのレセプションルームで会食をいたしましたが、私は同席もいたしておりませんでしたし、そしてその前にいろいろ何か話がございましたかどうか、そのいかなる場合にも私は同席したことがございません。そういう意味で、私は存じませんと申し上げたわけでございます。 |
○永末委員/同席しなければ存じないということは、日本人の存じないという言葉の範囲から言えば、きわめて局限された範囲のことを言っておられると思いますが、檜山氏はこのような証言をされました。七、八年あるいは十年ぐらい前、鬼さんがロッキードの人々と来たことがある。一緒に食事をした。あなたは御記憶ございますか。 |
○伊藤証人/記憶がございません。 |
○永末委員/ロッキードは七、八年前から非常に重要な関係になっておった。ロッキードは余り関係ないのですか、あなたは。 |
○伊藤証人/いえ、関係はございますし、非常に重要な取引先でございましたけれども、いま先生がおっしゃいましたときのことは正確に記憶がございません。 |
○永末委員/重要だけれどもときどき忘れるというような状態のようでございますが、いま問題となっておりますあなたのサインをされた状況について、もう少しく明らかにしていただきたいと思います。四回にわたってそれぞれあなたは署名されたと言っておられますが、午前ですか、午後ですか。 |
○伊藤証人/そこまで、先般来申し上げますように、あの日付の日に果たして本当にサインをしたかということも私は明確に記憶をしてないぐらいでございまして、それが午前であったか午後であったかということについては、全くこれは記憶がございません。 |
○永末委員/あなたは、あなたの部屋のタイプをされる人に口述をされてタイプを打たされましたか。 |
○伊藤証人/たしかそのように記憶いたしております。 |
○永末委員/口述をされてやられたといたしますと、大文字、小文字の指定はされますか。 |
○伊藤証人/さような細かい点まで申した記憶はございません。 |
○永末委員/タイプを口述で受け取る方は、その文字が小文字であるか大文字であるかは重大な問題であります。必ず聞き返すに違いない。あなたはそういう記憶はございませんか。 |
○伊藤証人/そういう記憶はございません。 |
○永末委員/あなたは口述されたのじゃないのじゃありませんか。原稿を示して打たしたのじゃありませんか。 |
○伊藤証人/先ほども申し上げましたように、そのときの状況と申しますのは、大久保さんがクラッター氏から依頼をされましたことを私に説明と依頼に参られまして、そのときに私がすぐその場でタイプを打ってもらいまして、すぐにサインをして手渡した記憶がございますものですから、その非常に短い文章を私が聞きまして、メモに書いたり何かしたという記憶が実はないのでございます。多分口述したんじゃないかと思いまして、先ほどさように申し上げておるわけでございます。 |
○永末委員/口述と言われますが、この前あなたにお聞きした場合に、署名の仕方はいろいろあると言われました。あなたの署名されました四枚の領収証は、あなたのお名前はヒロシと書いてある。一枚だけがHと書いてある。そう使い分けされるのですか。 |
○伊藤証人/特にそのときに使い分けをしたという記憶もございません。 |
○永末委員/忘れたことはなかなか、忘却のふちでございますので、われわれも突き上げることはできませんが、先ほど申し上げましたように、大文字か小文字かの指定が、あなたの出されました領収証四枚とも非常にばらついておるのである。ばらついておる。ワンハンドレッドという言葉でも、ワンのOが大文字である場合、小文字である場合、ハンドレッドのHが大文字である場合、小文字である場合、非常にばらついておる。一つずつ違う場合、そして二つとも大文字であったり二つとも小文字であったりする場合、このようにめちゃめちゃになっておるということをわれわれが見た場合に、きわめて作為が行われておる、作為の結果つくられた領収証であると私は判断いたします。そうでしょう |
○伊藤証人/私は、さように存じておりません。 |
○永末委員/大久保さんは、あなたが口述する間、横に立っておりましたか。 〔正示委員長代理退席、委員長着席〕 |
○伊藤証人/一々的確に覚えておりませんが、多分私、立っておられたか座っておられたか、私の席にお待ちいただいていたんじゃないかと思っております。 |
○永末委員/大久保氏はあなたに要件を言われて、そうしてあなたがタイプをあなたの部屋の片すみにある人に口述をされる、そうして打たされる、大久保氏はそのでき上がるのを待っておった、こういうことですね。 |
○伊藤証人/私がそのタイプの置いてあるすみまで参りまして口述をいたしましたかどうかということも、正確に記憶がございませんが、とにかくこういう文面のタイプを打ってくれと、大久保さんに言われたとおりの文面のタイプを打ってくれということを申しつけまして、タイプを打たしたように記憶をいたしております。 |
○永末委員/タイプを打つというのは、きわめて技術的な仕事なんです。あなたは先ほど、あなたの部屋の人はだれでも打てるように、輪番で打っておるように言いましたが、英文タイプを正確に打てる人は、あなたの部屋に何人おられて何人が打てるのですか。 |
○伊藤証人/非常に簡単な文章でございますから、大体、若干の巧拙はございましょうけれども、あの程度のものでしたら、ほとんどみんなが打てるんじゃないかと思っております。 |
○永末委員/ほとんどみんなとは、何人ですか。 |
○伊藤証人/秘書課の全部が多分そうであろうと思っております。 |
○永末委員/私は、何人ですかと伺っております。 |
○伊藤証人/あの当時秘書課員が何人おりましたか、ちょっと定かに覚えておりませんが、そのほとんどがあの程度の英文タイプは打てたんじゃないかと思っております。 |
○永末委員/あなた、重大なところで記憶がこうぼけてくるわけですね。やはり何人ぐらいおって――英文タイプを打てるというのは、そうだれでも打てるものではないわけである。しかも英文タイプにはくせがあるわけです。あなたは自分が口述したわけではないとおっしゃった。であるならば、この文章はあなたがだれかに言われて、あるいは日本語で言われたか英語で言われたか知りませんが、それをもう一遍受け継いでやられた。その文章がことごとく異なり、それから文字のタイプも異なっておる。あるいはもっと調べれば、もっと違うことがわかるかもしれない。私が問題にしておるのは、その違いが、全部が異なっておるところに問題がある、作為が感ぜられるということを申し上げておるのであって、したがって一番簡単なこと、あなたの部屋に英文タイプを打てる者が何人あるかということをあなたはお答えにならない。お答えください。 |
○伊藤証人/私の方の会社は、入社のときから英文タイプの研修だとかいろいろやっておりますから、あの程度の英文タイプですと、ほとんど全部の者が打てるんじゃないかと思っております。 その当時に秘書課に何人勤務いたしておりましたか、ちょっと正確には存じませんので、先生に何人だということをいま的確に言えとおっしゃいましても、実はお答えのしようがないわけでありますが、私はその大久保さんから言われましたときに、秘書課の者に申しましたけれども、それを、その記憶を私に喚起してくれましたのは秘書課長でありますので、秘書課長にもお願いしたことはあろうかと思います。 |
○永末委員/一番重要な点であなたの記憶はぼけておるのですが、あなたが口述されないとするならば、秘書課長かあるいは英語の一番確かな秘書課員かだれかにあなたがお命じになって、そうしてそれをタイプにされた、こうみなさざるを得ませんね。あなたは承認されますか。 |
○伊藤証人/多分そういうことであったと思います。 |
○永末委員/あなたは、大久保氏がクラッター氏からこのことを頼まれたとお聞きになった。しかし、クラッター氏は十五階のあなたの部屋にあらわれなかったんですね。 |
○伊藤証人/さようであります。 |
○永末委員/証言というのは、だんだん思い出していろいろつくられるものではありません。一度言われましたら、また後で思い出したら違うと言うことは許されない。私どもが一番問題といたしておりますのは、この領収証はやはり領収証である、何者かの領収証であるとわれわれは考えておる。にもかかわらず、あなたはそのつくられた状況すら二転、三転しておられる。それはつくられたものだとわれわれは判断せざるを得ない。あなたも、後、大久保証人によく聞きますけれども、その状況が食い違っては困るのでありまして、その点はひとつ十分に心にとめていただきたい。質問を終わります。 |
○荒舩委員長/これにて永末英一君の質疑は終了いたしました。以上をもちまして伊藤証人に対する尋問は一応終了いたしました。伊藤証人には御苦労さまでありました。控え室で待機願います。
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