閣僚答弁5

 (最新見直し2013.05.19日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、角栄の大臣時代の答弁を確認しておく。「田中角栄の衆議院本会議発言一覧」を参照する。

 2013.5.19日 れんだいこ拝


 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第10号(1973/02/23、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 私から四点にわたってお答えをいたします。予算の執行の当否は、決算報告によって明らかになることであります。また、その結果を、新しい予算編成や、執行の適正、合理化に資するものでもあります。政府は、国会での御審議の状況に注目をし、国会の御意見を十分尊重してまいりたいと考えるわけであります。

 第二点は、住宅関連予算の繰り越しが多い等の問題についてでございますが、住宅関係予算の執行上、御指摘の点に隘路があることは否定ができないのでございます。政府といたしましては、地価の抑制に全力をあげることとし、土地利用計画の策定と、土地利用の規制、土地税制の改善、宅地供給の促進等の施策を行なうことといたしましたほか、住宅団地建設に必要な用地の確保をはかるため、用地の先行取得の促進、用地費予算単価の引き下げを行なうことといたしたわけでございます。また、環境整備による地方公共団体の負担を軽減するため、いわゆる関連公共施設の整備につきまして、特に中小学校建設に対する国庫負担率を引き上げますとともに、関連地方公共団体の連絡協議の緊密化をはかり、一そう事業の推進に努力してまいりたいと考えます。

 第三点は、公害行政の統一的実施に関する発言に対して申し上げます。政府は、従来より、環境庁を中心として、一元的な環境行政の推進につとめてまいったのであります。今後も環境庁の行なう環境保全に関する事務の総合調整、環境保全関係経費の見積もり方針の調整、公害の防止等に関する研究費の一括計上などを通じ、総合的な環境保全対策を一そう推進してまいりたいと考えます。

 最後に、行政の機構の問題についての御発言にお答えをいたしますが、行政の合理化、効率化につきましては、従来から努力をしてまいっておるところでございますが、今後とも関係閣僚協議会等の活用を行なう等、国民のための行政の実をあげるように、十分な努力をしてまいりたいと考えます。(拍手)
 内閣成立以来、土地問題に対して何をしたかということでございますが、精力的に努力を続けておることを、ひとつ御理解を賜わりたいと存じます。

 第二は、政府は法人等の土地取引の実態に対してどう考えておるかということでございますが、建設省は、昨年、東京証券取引所第一部及び第二部に上場の会社を対象として、土地取引等に関する調査を行なっておるはずでございますから、調査結果の概要につきましては、担当大臣からお答えをいたします。それから、政府は国土調査の促進をはかり、早急に国土の実態の把握につとめるべきだという意味の御発言でございますが、国土調査につきましては、国土調査促進特別措置法に基づきまして、四十五年度を初年度とする国土調査事業十カ年計画を策定いたしまして、その実施をはかっておる次第でございます。

 それから、新都市計画に関連して線引きの手直しをするといわれておるが事実かというようなことでございますが、新都市計画法によるいわゆる線引きによって土地の乱開発や無秩序な市街化が防止されている反面、住宅及び宅地の供給が停滞するおそれも生じておることは否定できないのでございます。これは市街化区域でなければ宅地ができないというために供給が非常に抑制をせられ、線引きの中は地価が非常に高騰をし、一歩外は異常に地価が安いという事実もございます。したがいまして、市街化区域をある程度拡大をして宅地供給の場をふやすことも有効なのではないかということで、検討をしておるのでございます。もちろん、この場合、十分な調査を行なった上での合理的な線引きの見直しでなければならぬことは言うをまたないわけでございまして、慎重にやらなければならない、こう考えております。

 それから、政府がさきにきめた土地対策について申し上げますが、土地問題の重要性にかんがみ、政府はさきに土地対策の大綱を決定いたしましたが、その内容は、土地について、憲法の認める範囲内で最大限に公益優先の原則を確立しようとするものでございます。政府は、この大綱に基づきまして今国会に所要の法案を提出いたしますが、十分御審議をいただきたいと思うのでございます。また、御言及がありましたとおり、準備中の法案の中には、地域、期間を限定をして土地取引を許可制とすることについても検討を進めておりますことを、念のため申し上げておきます。

 政党法及び政治資金規正法の問題について申し上げますが、政党法の制定につきましていろいろむずかしい問題があることは、専門家である稲葉さん御承知のとおりでございます。ただ、政治資金規正をするという場合に、どのような政治団体を政党としてとらえ、それにどのような役割りを期待するか、また、その場合いかなる選挙制度を考えるかというような点が、当然あわせて検討さるべきものと考えるわけでございます。政治資金規正法改正の問題につきましては、これまでの経緯からいたしましても、今後政党本位の金のかからない選挙制度の実現への動向を踏まえつつ、さらに政党のあり方なども含めて、徹底した検討と論議を積み重ねてまいりたいと考えるのであります。(拍手)
 第一は、政府の南ベトナム経済協力等についてでございますが、わが国の対南ベトナムの援助は住民の民生安定のためでありまして、人道的考慮に基づくものでございます。

 第二は、公共用地の確保等についての御発言に答えます。用地取得難、関連公共施設整備の問題などによりまして、住宅建設に若干のおくれが生じておることは事実であります。これに対しまして、まず抜本的な土地対策を講ずることが先決であり、政府は、先般決定した地価対策閣僚協議会の方針に基づいて、所要の法令を今国会に提出をいたす予定でございます。また、四十八年度におきましては、関連公共施設整備の促進、公営住宅建設上の地元公共団体の超過負担の解消などにより、住宅建設の推進をはかってまいりたいと考えております。

 
列島改造もまた公害の拡散にならないかということでございますが、日本列島改造政策は、工業の地方分散を促進することによって過密の弊害を是正する一方、産業構造の中心を重化学工業から、人間の知恵や知識をより多く使う知識集約的産業に移行させることを基本としております。今後の環境問題も解決の方向を確保してまいりたい、こう考えております。また、日本人の英知や科学技術の進歩を最大限に活用し、住民の生活環境や自然を守りながら、公害の拡散とならないような開発を進めてまいるつもりでございます。そのためには、公害防止技術の開発等、施策を推進いたしますとともに、開発に際しては、計画を作成する段階で、あらかじめ科学的な調査、分析を十分行ない、これを踏まえて、環境に悪影響を及ぼさない開発を進めてまいりたい、こう考えておるのであります。

 経済政策の転換という問題に対してでございますが、対外均衡達成のためには、従来の生産、輸出優先の経済構造を、福祉指向型経済構造へ転換をしていくことが基本的に重要であることは、しばしば申し上げておるとおりでございます。このような考え方に基づいて政府は四十八年度予算を編成したのでありますが、今後とも国民福祉の向上に努力してまいりたいと考えます。(拍手)
 まず第一は、国民に対し財政状況を周知徹底するように有効な措置をとれということでございますが、財政状況をできる限りわかりやすく国民に報告することは、きわめて重要なことだと考えております。政府としては、今後とも一そうこの趣旨に沿って努力をしてまいりたいと考えます。第二は、日航製の赤字の問題、YXの開発等の問題についてでございますが、日本航空機製造株式会社の国産輸送機YS11事業につきましては、技術的には成功をおさめましたものの、経理的には思わしくなく、赤字を計上するに至ったことは遺憾なことと存じます。航空機産業は、典型的な知識集約的産業でございまして、技術波及効果も大きい産業でありますので、政府としましては、次期民間輸送機YX開発について、昭和四十八年度予算に予備調査段階の経費を計上いたしたわけでございます。しかし、YX開発を本格的に進めていくかどうかということにつきましては、四十八年度における事業の結果に基づいて、四十九年度予算編成の際に決定をする考えでございます。

 変動相場制移行とドル建て売り掛け金、予算の変更というような問題についての御発言にお答えをいたします。御指摘のように、YS11売り掛け債権の中にはドル建てのものがあります。これが為替変動によって影響を受けることが考えられますが、現段階でどの程度の影響を受けるかを見きわめることはむずかしい段階にございます。その処理につきましても、今後の推移を見きわめることが先決であると考えておるのでございます。いずれにせよ、日航製株式会社の為替差損が生じたからといって、直ちに同社に対する助成に変更を加えなければならないという性格のものではないと考えております。

 国有林事業の問題についてでございますが、詳細については農林大臣よりお答えをいたしますが、要は、国有林事業の持つ公益的機能と木材生産機能との調和をはかりながら、その改善、合理化をはかることが必要だと考えます。国有財産の管理処分については、国有財産については、従来からその適正な管理につとめておるわけでございますが、詳細は大蔵大臣より答弁いたします。御指摘の点にも顧み、今後管理に万遺漏なきを期してまいりたいと考えております。

 決算を単なる報告だけにとどめず、予算と同じように議案化すべきではないかという問題に対しては、先ほど大蔵大臣からもお答えをいたしましたが、決算は予算の執行の実績であり、重要なものであることは言うまでもございません。その性格は、過去の事実についての計数的な記録でありまして、これを国会の議決案件とするのはなじまないというのが、過去長いこと申し上げておることでございます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第11号(1973/02/27、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 自主財源強化のための抜本的対策、行財政体制の強化についてまずお答えをいたします。地方団体が住民の要請にこたえ、自主的な財政運営を通じて、社会福祉の充実、社会資本の整備など、住民福祉の向上をはかるためには、一般財源の伸長をはかることがきわめて重要であると思います。このため、一つには、地方税等の自主財源の拡充強化、二つには、地方交付税の充実確保について、地方制度調査会等の意見を徴しながら、今後も積極的に取り組んでまいりたいと考えます。

 昭和四十八年度におきましては、地方税の自然増収はかなり多額にのぼるものと見込まれるのでございますが、さらに、土地に対する固定資産税の課税の適正化おおむね四百億円余、交付税特別会計における借り入れ九百五十億円、臨時沖繩特別交付金の交付税特別会計の繰り入れ三百八十八億円等の措置を通じまして、一般財源の充実確保をはかっておるところでございます。なお、地方交付税の税率につきましては、昭和四十一年度から、現行三二%に引き上げて今日に至っておるわけでございますが、その間の経済成長に伴って、地方交付税の総額は、毎年二〇%以上の伸びを示し、地方財源の体質改善に寄与してきたところでございます。もとより、地方財政につきましては、今後の経済情勢や財政環境の推移も勘案しながら、その運営に支障を生ずることのないよう、適切な措置を講じてまいりたいと考えます。

 最後に、土地新税につきましては、土地利用等のほかの措置と相まちまして、実効をあげると確信をいたしておるわけでございますが、詳細は関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 第一は、地方自治の問題でございますが、地方自治体は、自治制度の発足以来、着々と自治の体制を備え、政府と協力して住民福祉の向上に努力しておるところでございます。

 第二は、四十八年度地方財政計画についての御発言に対してお答えを申し上げます。しばしば申し上げておりますとおり、円の変動相場制移行に伴う国内経済への影響につきましては、変動相場制の過程、状況、変動相場制の期間等、流動的な要素が多く、現段階で、年度を通じた経済全体に及ぼす影響を的確に把握することは困難であります。したがいまして、税収を中心とした歳入の見積もり、その他地方財政への影響についても同様の事情がありますが、今後の経済の動向及びその地方財政に与える影響につきましては、十分注視をしてまいりたいと考えます。

 第三は、交付税率の引き上げ、税の再配分等、自主財源の抜本的強化の方向についての御発言に対して申し上げます。地方交付税の税率につきましては、昭和四十一年度以来現在に至る宙で据え置かれてまいりましたが、その間の経済成長に伴って地方交付税の総額は毎年二〇%以上の伸びを示し、地方財政の体質改善に寄与しておるところでございます。もとより、地方財政につきましては、今後の経済情勢や財政環境の推移、特に地方財政需要の動向を見守りながら、その運営に支障を生ずることのないよう適切な措置を講ずることが必要でありますので、今後とも地方税、地方交付税、地方債等を総合的に勘案して、必要な地方財源の充実を期してまいりたい、こう考えます。大都市地域などの民間の投機的な買い占め用地を自治体が適正価格で収用し得る権限等についでの御発言について申し上げます。

 国民に対して居住環堵の良好な住宅用地の供給をはかるため必要な要件を備えた土地につきましては、地方公共団体等の公的機関において、新住宅市街地開発法、新都市基盤整備法等の活用によりまして、一定の区域についで用地を適正な価格で計画的に取得をし、住宅、学校、保育所、公園等の施設の用地として供給をいたしておるのでございます。この場合、民間の投機的買い占め用地であるといなとを問わず、必要な場合には収用権を活用して土地の取得をしてまいりたいと考えるところでございます。

 財政的依存が強化されている現実をどう認識し、転換をするかという問題について申し上げますと、地方自治の本旨を尊重することはもとより、地方財政につきましては、地方団体の自主的な財政運営を通じて、地域の実情に応じで社会福祉の充実、社会資本の整備など住民福祉の向上をはかることができるよう、従来から地方税等の自主財源の充実、地方交付税の確保、国庫支出金の改善、地方債の活用等、地方財源の確保をはかっできたところであります。今後とも、高福祉社会の実現要請にこたえて、地方行財政全般にわたって検討を加え、地方自治及び地方財源の一そうの充実をはかってまいりたいと考えます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第12号(1973/03/01、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 第一は、円平価の再調整が物価安定に役立つように措置をせよということでございますが、円切り上げ等による輸入品価格の低下を消費者に適正に還元するために、主要な輸入物資の価格動向の追跡調査並びに並行輸入の条件整備、それから独占禁止法の厳正な適用、流通機構の近代化等の施策を一そう充実してまいりたいと考えます。

 過剰流動性の問題についての発言がございましたが、お答えをいたします。現在の地価、株価の高騰あるいは商品投機等の背景には、経済の実勢以上に流動性が供給されてきた状態があることは否定できません。金融面における過剰流動性対策としては、本年一月に預金準備率の引き上げを実施しましたほか、土地融資の抑制あるいは商社向け貸し出しの抑制など、各般の措置を可能な限り講じてきたところであります。しかし、最近の情勢にかんがみまして、預金準備率につきましては、再引き上げの方向で検討を行なっておるのであります。また、商社等の手元に存在する過剰流動性を吸収するために、考えられる施策に対しては、現に広範に検討いたしております。商社の行動を把握し、投機的な取引を抑制するために、商社の買いだめ、売り惜しみ等に対する調査、勧告、公表等を含む立法措置等についての御発言について申し上げますが、商社の買いだめ、売り惜しみ等が一部商品の騰貴を招いておるとのうわさがあることにかんがみまして、現在、商社の営業活動の実態についての調査につき、協力を求めておるのであります。

 政府といたしましては、今後とも、きめこまかく商社の実態把握につとめてまいりたいと考えます。それによって、かりに、商社の買いだめ等の活動が物価に悪影響を与えていることが明らかになった場合には、行政指導によって、その是正をはかってまいります。この行政指導を補完するための立法措置につきましても、各方面の意見を聞きながら、現に検討を進めておるわけでございます。
 なお、現に緊急に措置すべきいろいろな問題に対しては、決断と実行をせよとの御激励でございますが、決断と実行をしてまいるつもりでございます。(拍手)
 第一に、現在の木材、大豆、生糸、綿糸等の異常高騰、過剰流動性対策等に対する御質問に対してお答えを申し上げたいと存じます。先ほどもお答えを申し上げましたように、木材、大豆、生糸などの市況商品につきまして価格の高騰が見られることは事実でございます。これに対して政府としましては、緊急輸入の促進、政府在庫の放出、関係業界への協力要請、商品取引所の規制等の措置を講じておるわけでございます。

 また、過剰流動性対策としましては、去る一月以来、預金準備率の引き上げ、土地関連融資の抑制、日本銀行の窓口指導による貸し出し抑制の強化等の措置を講じており、特に商社につきましては、大手商社等に対する日本銀行の手形買い入れ限度額制度の創設、商社向け貸し出しの抑制等の措置を実施しておることは、御承知のとおりでございます。なお、過剰流動性の吸収には今後とも一段と配意をし、投機的活動の排除につとめてまいりたいと考えます。

 第二は、商品取引所制度を根本的に検討し、当面、国民生活物資について取引停止等を断行せよという御発言でございますが、商品取引所制度は、商品の価格の形成、取引の公正化をはかり、商品の生産及び流通を円滑にすることを目的としておることは御承知のとおりでございます。政府としても、この目的を達成するために、従来から商品取引所の運営の健全化につとめておるのであります。

 さらに、この制度の基本的なあり方につきましては、現在産業構造審議会の場において、広く有識者を集め、調査、審議をしておるのでございますが、この結論に基づき、制度の改善をはかってまいりたいと考えます。また、価格騰貴の著しい商品につきましては、これまでもきびしい規制措置を講じてきておるのでありますが、今後の価格の推移によっては、他への影響を配慮しつつ、立ち会い停止の措置を含む万般の対策を機動的に講じてまいりたい、こう考えるわけでございます。

 次は、株式市場について早急に事態の改善をはかれよということでございますが、一昨年来の株式市場の状況にかんがみ、政府としては、秩序ある市場の運営という観点から、できる限り行政措置をとってまいりましたが、今後とも、公正な株価の形成を施策の重点として、国民経済の発展に寄与するような市場の育成につとめてまいりたいと考えます。

 寡占価格を規制せよという問題でございますが、政府といたしましては、自由経済体制のもとにおいて、競争維持政策を通じ、価格形成の適正化をはかることを基本とすべきであると考えております。政府が一般的に企業の価格形成等の競争条件を一そう整備することにより対処してまいりたいと考えます。今回の大豆、飼料、木材等の価格騰貴は、天候不順等による需給の不均衡からきた国際価格の上昇、国内需要の堅調等にその基本的な要因があると考えておるのでありますが、政府は、輸入の円滑化、政府在庫の放出、業界に対する協力要請等の措置を講じてきたことは、先ほど申し上げたとおりでございます。国民生活必需物資に対して公団をつくったらどうかということでございますが、国民生活物資についてある程度の備蓄が必要であるということは事実でございますが、このために公団が必要であるという考えには至っておりません。

 最後に、週休二日制についての問題でございますが、政府は、労働者の福祉向上をはかる見地から、従来より、その普及につとめておるところであります。経済社会基本計画におきましても、大企業の大部分が完全週休二日制に到達し、中小零細企業においてもかなりの程度週休二日制が一般化することにつとめることとしておるのでございまして、今後ともその推進につとめてまいりたいと考えます。(拍手)
 第一に、生活関連重要物資の急騰は、大商社、大企業の投機を目的とした買い占め等によるものではないか、その実態を明らかにせよという問題でございますが、最近、世界的な農産物の不作、需要の動きなどによりまして、大豆、木材等国民生活に密接に関連を有する物資の価格が高騰しておりますことは事実でございます。政府といたしましても、できる限り実態の調査を行ない、必要な対策を実施してまいりたいと考えます。

 第二は、大商社などの反社会的行為を、自由経済体制という口実で放置をしておくのかという問題でございますが、わが国は、これまで自由経済体制のもとで、世界にもまれな経済成長を遂げ、その結果、国民の生活水準は著しく向上してまいったことは事実であります。今後も自由経済体制をとってまいりますが、かりに公共の福祉をそこなうような反社会的行為があったときには、必要な措置を講じて、経済運営に遺漏なきを期してまいりたいと考えます。

 第三は、米に対する物統令の適用を復活せよ、重要物資に対する投機を取り締まる臨時措置の立法化をせよという問題でございますが、米の販売価格に対する物価統制令の適用を廃止をいたしましたのは、良質米に対する消費者の需要が強まっている中で、米の品質に応じた価格形成を進めるとともに、良質米の供給の増大をはかるためでございまして、物統令を復活することは考えておりません。

 なお、生活関連物資についての当面の対策としては、先ほど申し上げましたとおり、緊急輸入の促進とか、政府在庫の放出とか、諸般の措置を講じてまいります。しかも、立法に対しましては、これらの行政措置を補完するための措置として、早急に検討を進めておる次第でございます。
 独禁法を改正し、不況カルテル条項を削除せよとの趣旨の御発言がございましたが、不況カルテルは、需給の不均衡がはなはだしく明らかにコスト割れの事態におちいった場合に、緊急避難的措置として必要最小限に認められるものであります。経済の安定をはかるため、不況カルテル条項は必要であります。また、不況カルテルについての認可を受けないで不況カルテルにまぎらわしい行為を行なう場合には、現行独禁法により規制ができることは御承知のとおりでございます。

 過剰資金の吸収対策、または金融、予算等についての御発言がございましたが、過剰流動性を是正するため、すでに預金準備率の引き上げを行なったほか、特に大手商社等に対する融資については、きびしく規制しておりますことは、間々申し上げておるとおりでございます。

 なお、四十八年度予算についてお触れになりました防衛関係費や国土総合開発関係費についてでございますが、防衛関係費は、さきに国防会議の議を経て決定をした四次防計画に基づき、効率的な防衛力の整備につとめることとなし、必要最小限度の額を計上したものであります。また、国土総合開発関係費につきましては、内閣の重点施策として、その推進をはかっておるところでありますので、いずれの経費についても、その削減を行なうつもりはありません。以上。(拍手)
 今日の異常事態に対する対策、過剰流動性吸収のための具体策、これについてまず申し上げます。先ほどから申し上げておりますとおり、木材、大豆、繊維などの市況商品につきまして、価格の高騰が見られることは事実でございます。これに対して、政府としては、緊急輸入の促進、政府在庫の放出、関係業界の協力要請、商品取引所の規制等の措置を講じてまいったわけでございます。 また、過剰流動性対策といたしましては、去る一月以来預金準備率の引き上げ、土地関連融資の抑制、日本銀行の窓口指導による貸し出し抑制の強化等の措置を講じており、特に商社については、大手商社等に対する日本銀行の手形買い入れ限度額制度の創設、商社向け貸し出しの抑制等の措置を実施しておるのでございます。これら諸般の措置の効果は、次第に浸透していくものと考えておりますが、過剰流動性の吸収には今後とも一段と配慮をし、投機的活動の排除につとめてまいりたいと考えます。

 商社などの投機行為を徹底的に取り締まるべし、特別立法はつくるのかという趣旨の御発言に対しましては、政府としましては、現在の事態に対しては、基本的には行政的措置で対処する考えでございますが、これを補完するための立法措置は、各方面の御意見を聞きながら、現に検討を続けておるのでございます。それから、法人の企業活動、商行為その他に対しての、自由との問題に対しての言及がございましたが、企業活動の自由が確保されなければならないことは当然であります。が、しかし、反社会的な行為が許されるものでないこともまたあたりまえのことだと思うのでございます。正常な商行為が行なわれるよう、政府は適時適切なる措置を講じてまいりたいと考えます。(拍手)
 私から四点にわたってお答えをいたします。まず第一番目は、商品価格の高騰及び投機等に対してでございますが、先刻来申し述べておりますごとく、諸般の措置をとっておりますが、引き続いて事態の推移を監視しつつ、所要の対策を講じてまいりたいと考えます。

 第二点は、商品投機規制法の制定等に対してでございますが、政府といたしましては、現在の事態に対しては、基本的には行政的措置で対処する考えでございます。これを補完するための立法措置につきましても、各方面の意見を聞きながら検討いたしております。本件に関して貴党の熱意は十分承知をいたしておりまして、心から敬意を払っておる次第でございます。

 第三点は、消費者物価の上昇率を五・五%以下に押えられるのかという具体的な御質問でございますが、円の変動相場制移行へのメリットを物価面に反映させるよう、輸入政策をはじめ万般の措置を講じまして、消費者物価の上がりを目標以内にとどめたい、こういう決意でありますことをこの際申し上げておきたいと存じます。

 なお、最後に、インフレ抑制のため、また過剰流動性にプラスが起こらないように、大型予算の実行にあたって十分な配慮を求められた件につきましては、昭和四十八年度予算の執行にあたりましては、景気の動向を見守りながら、十分な配慮を加えてまいりたいと考えます。残余に関しては、関係閣僚から答弁を申し上げます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第13号(1973/03/02、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 新しい情勢に即応して四次防を中止したり防衛二法を撤回したらどうかという趣旨の御発言でございますが、国際情勢に緊張緩和の傾向が見られておることは、わが国にとって望ましいことでございます。一方、四次防は憲法の許容する範囲内でわが国の自衛のために必要な最小限度の防衛力を漸進的に整備するものであります。アジア諸国に軍事的脅威を与えたり、緊張感をもたらすようなものでないことは言うまでもないのでございます。したがいまして、四次防を遂行するために必要な防衛二法はぜひ成立をさせていただきたい、こう考えておるのでございます。(拍手)

 第二は、現行自衛隊法に違反して、沖繩県民の拒否しておる自衛隊を引き揚げよというような趣旨の御発言でございますが、沖繩への自衛隊の配備は、沖繩の本土復帰に伴いわが国が当然負うことになった同地域の防衛及び民生協力の責務を果たすための、自衛隊法及び同法施行令の規定に基づき防衛庁長官の権限に委任された範囲内でなされたものであります。(拍手)

 第三点は、隊員募集についてでございますが、自衛官の募集については、国民の理解と信頼にこたえられる自衛隊とするため、募集の方法については常に留意し、採用する隊員の質の向上につとめておるところであります。詳細につきましては防衛庁長官からお答えをいたします。

 なお、最後に、日米安全保障条約を廃棄せよとの御所論でございますが、日米安全保障体制は、現在のアジアにおける国際政治の基本的なワク組みの重要な柱でありまして、このような意味から、安保体制を維持することは、単にわが国の安全保障のためのみならず、アジア、ひいては世界の平和と安定の維持に寄与するものであり、日米安全保障条約を廃棄する考えは全くありません。(拍手)
 今回の自衛隊の増員は、アメリカの奨励によってやっているのではないかという趣旨のものでございますが、自衛官の増員は、沖繩への部隊の配備や艦艇、航空機の就役に伴い必要となった要員であり、装備の近代化につきましても、米国から求められておるようなものでは全くありません。稚内の基地について申し上げますが、稚内基地の機能は、北海道周辺において艦艇や航空機等の発射するレーダー電波を捕捉することを目的とする受動的なものであって、特定の国を対象とするものではありません。地元との関係も円満に進んでおります。

 第三は、海上自衛隊の増員等についてでございますが、海上自衛隊の増員は、艦艇の就役に伴って必要とされるものでありまして、装備の近代化は海上自衛隊の任務を効率的に達成させるためのものであります。

 第四は、沖繩への自衛隊の配備、南西航空混成団等の問題でございますが、沖繩の本土復帰に伴い、わが国が当然に負うこととなった同地域における防衛及び民生協力の責務を果たすために必要な措置であることは言うをまちません。沖繩の自衛隊も専守防衛に徹するものであります。

 それから、防衛庁の機関として設置をされる防衛医科大学校は、学問研究の自由を侵すというような趣旨の御発言だったと思いますが、防衛医科大学校は、一般の医師を養成する医科系の大学とは別個に、防衛庁の職員である医官の養成を目的とするものであります。行政官庁が、その職務遂行上の必要から独自の教育機関を設置することは、しばしばある例であります。学校教育法上の大学のほかに、このように特別の目的を有する教育訓練機関が設けられることが、学問研究の自由を侵すなどというものでないことは、私が申し上げるまでもないことであります。

 卒業生に適正な医学教育を修得をさせ、医師たり得る学力と技能を有すると認め得るので、医師の国家試験の受験資格を与えても差しつかえない、こう思っております。それから、防衛医科大学は、医療の軍事化を進めるものであるという最後の御質問でございますが、防衛医科大学においては、医の本質にのっとり、一般の医科大学とおおむね同じ内容の教育を行ない、特殊な研究を行なうものではありませんから、医療の軍事化をもたらすことはありません。(拍手)
 お答えいたします。第一は、平和国家にふさわしい国家目標と平和定着のための方策についてお答えをいたします。あらゆる国々とともに友好を通じて平和を享受しようとするのがわが国の国家目標であります。そのためには、互恵平等の立場で話し合いを重ねることが肝要だと思います。また、開発途上国に対しましては、民生の安定に協力することにより平和が定着していくものと念願をしておるのであります。

 平和時の安全保障政策の重点についての御発言に答えます。わが国は、外には平和外交を展開し、内には経済社会の発展をはかり、内外に安定がもたらされるようにしなければなりません。しかしながら、それだけでは十分とは言えず、国を守る体制を維持する必要があることも言うをまちません。四次防は、憲法九条の禁止する戦力に該当しないかということに対してお答えをいたします。憲法第九条は、自衛権を否定するものではなく、自衛のため必要最小限度の防衛力が、同条第二項において禁止されている戦力ではないことについては、政府は一貫して堅持してきた見解でございます。

 治安出動についてお答えをいたします。国内治安の問題は、物心両面にわたる国民生活の安定と向上、国民が心から愛することのできる国土と社会の建設によって、おのずから解決されるものだと思います。安易に自衛隊に治安出動を求めるなどということは、あってはならないと考えておるのであります。他の問題については、関係閣僚からお答えをいたします。(拍手)
 永末君にお答えいたします。日本の防衛をどう考えるかという第一の問題でございますが、自国民の生命と財産を守ることは国の義務であります。そのため、国防の基本方針に基づき、必要最小限の自衛力を漸進的に整備し、日米安保体制を維持してまいります。国際協調のための積極的な外交を展開し、国民が心から愛することのできる国土と社会の建設等の内政政策を推進いたします。これらの努力の総合の上に、わが国の独立と安全が保障されると考えるのであります。(拍手)

 日本の防衛は有事即応体制でなければならず、後方支援体制も整備しなければならないという趣旨の御発言に対して答えます。わが国のようにもっぱら自衛を旨とする防衛力においては、有事即応の体制を高めることが望ましいと言えます。防空機能のようなものを除いて、有事即応の体制は整備されるに至っておりませんが、後方支援体制とあわせて、必要な整備につとめてまいりたいと考えます。

 安保条約は日本の防衛の基調なのか補完なのかという問題に対して、御発言がございました。これにお答えをいたします。わが国の防衛は、米国との安全保障体制を維持しつつ、わが国みずからも有効にして必要最小限の自衛力を保持して、侵略を未然に防止することを基本としております。国防の基本方針においては、将来国連が有効に外部からの侵略を防止し得るに至るまでは、米国との安保体制を基調として対処することになっておることは、御承知のとおりであります。

 私が参議院で述べたことにつきまして御指摘がございましたが、御指摘の答弁は、わが国の自衛力には憲法上の制約があり、安保条約の有無によってその限界が変わることはない旨を述べるとともに、わが国の防衛を保つには、わが国の自衛力と日米安保体制とが相補っていくべきものであることを説明したものでございます。これは、国防の基本に関する問題についても、安保と自衛力とは相補うものであるが、安保なしでは日本の防衛は考えられないという意味で、安保体制を基調とするものである、こう考えたことを思い出していただきたい、こう思うわけでございます。

 なお、諸外国のように民間防衛の整備に力を入れる考えはないか、これはちょっとお触れになったようでございますから申し上げますが、わが国の防衛は自衛隊のみで全うできるものではなく、国民全体が国を守る気概のもとに協力をすることが必要であることは、論をまちません。が、しかし、現在、いわゆる民間防衛体制の整備等の具体的構想は持っておりません。

 文民統制のための国防会議が防衛庁設置法によっているのはおかしい、単行法にしてはどうかという御趣旨かとも思いますが、国防会議がシビリアンコントロールの実をあげるかどうかは、法律の体系の問題ではなく、その内容だと思うのでございます。国防会議は、設立以来運営に支障があったわけでもありませんし、私たちもいろいろな面から考えたのでございますが、現に国防会議は防衛庁設置法の中に記述をしてあるわけでございますので、単独法としてこれを取り出すということよりも、現行の防衛庁設置法の中で改正を行なうことがいいのではないか、このように理解しておるのでございます。

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第14号(1973/03/08、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 江藤隆美君にお答え申し上げます。まず第一は、新しい国鉄の使命をどう考えるかという基本的な問題についてでございますが、国有鉄道は丁国民の足であり、輸送の大動脈であります。明治から百年余、わが国経済の拡大は鉄道の発達とともにありましたことは、歴史の示すとおりであります。戦後復興に果たした鉄道の使命は高く評価さるべきものであります。国鉄の役割りは、都市間旅客の輸送、大都市通勤輸送、近距離貨物輸送の三つといわれておりますが、地形、地勢、降雪地帯が多い等の制約のあるわが国では、鉄道が最も効率的な輸送機関であることは、何人も認めるところであります。特に、東京中央線新宿−四ツ谷間の輸送を見てみるとよくわかるのでありますが、朝のラッシュ時においては、一時間に約十万人の旅客を運んでおるのであります。これを自動車輸送で運ぶと仮定をしまして計算をいたしますと、幅四百メートルの道路を必要といたします。乗用車で計算をしますと、片道六十車線、バスなら片道八車線、幅六十ないし七十メートルの道路を必要とすることが計算をされるのであります。 これは、全く計算上の問題ではありますが、大量輸送機関としては、鉄道が国民生活の上で不可欠のものであることを示すものであり、この健全化は、焦眉の問題であるといわなければなりません。(拍手)

 競合する機関との調整に対して御発言がありましたが、先進工業国では、近距離は陸運により、中距離は鉄道により、遠距離は内国海運によるという区別的政策が行なわれておりますので、日本においても、これらの政策を検討、そしてこれらの政策のいいところを採用するように努力をしなければならない。その意味で、自動車トン税の制度を採用したことは御承知のとおりであります。

 次は、国鉄再建は、日本の総合交通のあり方をきめるものではないかという御指摘でございますが、わが国は、鉄道、道路、内国海運、航空等の輸送機関が存在をいたしますが、昭和六十年を展望するとき、貨物についてだけ計算をしてみましても、最低現在の三ないし四倍程度になると思われるのであります。海運による輸送シェアの現在の四〇%を五〇%に引き上げ、なお、道路整備は、現在五カ年間十九兆五千億という大きな数字でございますが、これを約倍額程度に拡大をしても、鉄道によらざるを得ない貨物は非常に大きいのであります。鉄道がいかに国民生活の上で重大であるかは、御理解されるところでございまして、新幹線網の整備と、在来幹線の複線電化などの整備の急は、このような面から見ても、緊急不可灘のものであると思うのであります。

 次は、今回の国鉄の再建は、労使が一体となって努力をする必要があるとの御説でございますが、全くそのとおりであります。今回の再建計画では、国鉄自身の企業努力、画期的な政府助成とともに、必要最小限の運賃改定を行なうことによって、国民の足としての国鉄の財政再建をはからんとするものであります。このためには、国鉄の労使が十分に理解し合い、相協力し、国民に対する責任を果たさなければならないということを申し上げたいと思うわけでございます。(拍手)

 なお、この案が通過をしなかったときにというような意味の御発言がございましたが、通過をしないことは考えておりません。皆さんの御理解によって、必ず通過をせしめていただかなければならないと考えておるのでございますが、国鉄の累積赤字は一兆二千億に達しておるのであります。国鉄は単なる営利企業ではないという御指摘でございますが、そのとおりであります。国策遂行のために、法により設立されておる機関であります。政府も、国民の税金を投入をしようとしておるのであります。国民の税金を投入し、国鉄の再建をはからんといたしておるのでありますから、今回の再建計画につきましては、国民各位の理解を得て、ぜひともその道を開いてまいりたい、こう考えるのでありまして、成立に対して各位全員の御賛成を心からこいねがいます。(拍手)
 国鉄が赤字に悩んでおることは先ほども申し上げたとおりでございますが、国鉄は国民生活に不可欠の機関であります。しかも、日々数百万人という国民の生命を預かっておる重要な機関でございます。その国鉄の安全を確保するためにも、また国民の大動脈としての国鉄を再建することは、焦眉の急であることに対しては御異論がないところだと思うのでございます。

 ただ、この国鉄再建の方策に対してのいろいろな議論が存在するのだと思います。この国鉄というのは、独立採算制を戦後長くとってまいりましたが、国有鉄道法による国鉄でありますから、もっと政府が財政資金を投入せよということだと思うのでございます。しかし、この問題に対して、国有鉄道は、確かに御指摘のとおり、国の政策遂行のために必要な機関として法律をもってつくられたものでありますから、私企業のように完全な独立採算制を求められる種のものでないことは、言うをまちません。その意味で、独立採算制という方式をとりながらも、国と企業の努力によって国鉄の使命を果たしてまいったわけでございます。今度の再建に対しても、国鉄自体の企業努力と、国民の税金によってまかなう分と、応益者の応分の負担によって国鉄の再建をはかろうと考えておるのであります。

 いまの国鉄と同じような中に郵政事業がございますが、確かに雪の降るときに山小屋まで一通のはがきを配達をしなければならない実質的な費用を考えると、それはいまの郵便代でまかなえるものではないのであります。しかし、どうしても送達をしなければならないという任務のために、国がこの事業を行なっておるのであります。国有鉄道も、そのために私企業としてまかしておるのではないわけでありますから、公益性の高い部面に対して、公の立場で政府が援助をしなければならぬこともまた当然なのでございます。

 そういう意味で、政府も今後十年間に、一般会計三兆六千億円、財投九兆三千億円に及ぶ大幅な財政援助を国鉄に対して行なおうというのでございます。これらの金は、皆さんがいつも申されるように、政府の持つ金というのは、国民の金なのであります。そういう意味で、税金によってまかなわなければならない分と、応益者が負担をしなければならない分に対しては、おのずから調和がとられなければならないということは御理解をいただきたいと思うのであります。(拍手)

 なお、列島改造について、国鉄の再建をはかるような御指摘でございますが、確かに国土の総合開発をはからなければならないということは事実でございますが、昭和六十年を展望しまして、私がみずからの著書で述べたように、年率一〇%というような大きな数字をとらなくても、いまの経済社会基本計画によっても、昭和六十年度における国民が必要とする貨物の量は一兆億トンキロをはるかにこえると思います。そうすれば、いま国鉄でもって運び得るものは、わずか六百億トンキロしかないではありませんか。ですから、先ほども述べましたように、内国海運のシェア四〇%を五〇%にしても、残りの五千億トンキロは何によって運ばなければならないか。それは国民生活を維持するために、最低に必要なのであります。

 そうすると、それをいま概算をいたしてみますと、陸運だけで運ぶとすれば二千万台の車を必要といたします。しかし、昭和六十年度における交通労働者で確保できるものはわずかに三百五十万人であります。そうすれば、鉄道によって運ばなければ、国民生活が事実維持できなくなるではありませんか。そういう事実をもととして、国有鉄道の公益性に対しては、国は国民の税金を集中的に投資をしようと皆さんに申し上げておるのであります。

 同時に、企業努力を求めておりますが、企業努力にも限界がございます。労働者に何倍も働けといっても、それは限界があります。そんなことはできるものではありません。そういう意味で、応益者に応分の負担をお願いしておるのでございますから、これはこの事実を直視せられて、そして政府が三年もかかって皆さまに御審議をお願いしておるものを、ぜひお願いいたしたいと思うのです。昨年案と同じだといいますけれども、昨年案の八兆九千億は十二兆九千億という数字に変わっておるわけであります。しかも、いま財政の中では、社会保障とか、国民の税金自体でまかなわなければならない問題もたくさんあることを十分御理解の上、最小限度の応益負担を求めておる政府の意思を御理解、御賛成賜わらんことを切に願います。(拍手)
 貨物の赤字を旅客に負担させるのはおかしいという意味の御発言でございますが、国鉄運賃の決定原則である総合原価主義は、現在でも妥当性を持つ原則であると考えておるのでございます。したがいまして、貨物部門が赤字であるからといって、一度に大幅な貨物運賃の改定を行なうことは、物価への影響という面から考えても、また、競争の激しい貨物輸送の分野における国鉄のサービス水準の面からいっても、不可能なのでございます。

 国鉄の貨物部門の赤字の原因は、一口に言えば、貨物輸送の体質改善のおくれにもあるわけでございますが、体質改善のために、貨物輸送体制の抜本的な近代化に努力しておりますが、現在の段階で大幅な貨物運賃の改定を行なうことは、他の輸送機関に対する競争力等を一そう低下させることになりまして、かえって国鉄全体の収支悪化を招くことになるわけでございます。それから、割引等を行なっておりますのは、生鮮食料品の問題とか国民生活に及ぼすものに対して割引をしておるのでございまして、この実態に対しては運輸大臣からお答えをいたします。先ほども申し上げましたように、貨物というものは、鉄道だけで考えてはどうにもならないのであります。

 西ドイツはどのような制度をとっておるかといいますと、西ドイツは、先ほども申し上げましたように、短いところは陸運、中距離は鉄道、それから長いところは海運ということにしております。でありますから、自動車に対しては、トン税を、日本の約十倍というような高い税金を取っておるわけでございまして、ある一定距離以上のものは鉄道に自動的に移るような政策をとっておるわけであります。しかも、中距離以上のものは鉄道で運ぶ。現在、日本国有鉄道は長距離逓減制度をとっておりますが、逆に逓増制度をとっておるわけであります。一定の距離以上は、逓増制度をとっておるために、海運に自動的に貨物が移るようになるのであります。

 そういう政策を合わせないで、運賃体系の中でこの問題を解決しようとすると、競合が大きくなって、できなくなるのであります。ただできなくなるというだけではなく、先ほども申し上げましたように、日本列島改造論を前提にしなくとも、年率五%、一〇%ずつでも、五%でも三%でも国民生活はよくならなければなりません。そういう状態で、最低に見ましても、六十年には、国内で動く貨物の量は一兆億トンキロをこすわけであります。その荷物を確保しなければ、国民生活の向上はないのであります。何によって運ぼうとするのでありますか。(拍手)政治は、具体的な政策を国民に示さなければならないのです。その意味においては、海における四〇%のシェアを五〇%に上げても、残り半分は何とかして運ばなければなりません。そうすれば、トラックで運べば二千万台のトラックが必要なのであります。二千万台のトラックは、すなわち二千万人の運転手を必要とするわけでありますが、それはできないのであります。ですから、鉄道で運ばざるを得ないのです。そういうことを理解をして国鉄の再建方策と取り組まなければならぬことは事実でございます。今度の国鉄再建政策が、大企業本位だなどという考え方で国鉄の再建ができるものじゃありません。(拍手)

 それから最後に、鉄道運賃法を撤回すべしという問題でありますが、私はここで申し上げます。新幹線の建設や在来線の強化が大企業中心であるなどという考え方よりも、まず現実に、鉄道の現実はどうして起こったのだろうという事実を考えていただきたい。それは、私たちにも責任がありますから、私は申し上げます。米価は、昭和十一年を一として五〇四であります。はがきは六六七であります。鉄道運賃は四十六年度二六九であります。国民生活と物価を押えるために、公共料金の基本である鉄道料金をうんと押えた、こういうところに今日の状態があることを知らなければならぬのであります。そういう意味において、公共負担が一つ、第二は企業努力、第三番目には応益負担を求める、それも最小限に応益負担を求める、ということ以外に解決の方法はないではありませんか。その意味において、本改正案を取り下げる気持ちはありません。(拍手)
 石田さんにお答えいたします。まず第一に、国鉄の赤字要因は何かということでございますが、わが国が近代国家として発展を遂げる過程において、国鉄が果たした役割りはきわめて大きいことは、先ほど申し述べたとおりでございます。特に、戦後の荒廃の中で、鉄道が輸送の動脈として国民生活をささえてきたことは、われわれの記憶に新たなるものがございます。その後経済の高度成長の過程におきまして、国鉄の占める地位は変貌を余儀なくされました。それは、自動車、航空機、海運等他の輸送手段の発展に伴い、国鉄の競争力は相対的に低下し、その輸送に占めるシェアは減少してまいったのでございます。このような背景のもとに、国鉄は、大都市における通勤通学輸送、都市間旅客輸送、中距離輸送の面でその特性を発揮すべく経営努力を続けてきたのでございますが、巨額の投資に伴う資本費の増高、人件費の大幅な上昇などにより、経営の悪化を余儀なくされたものであります。

 これが、いままで政府が公式に述べてきたものでございますが、私は、率直に申し上げると、まだこのほかに触れなければならない直接の原因があると思います。それは、戦時中に非常に膨大もない輸送に従事をした人たち、その人たちを国鉄はかかえておりました。そして、大陸に出ておった鉄道関係の従事者も、すべて戦後の国鉄の財政の中に組み込まれてきたわけでございます。こういう事実をやはり無視はできないのであります。そういうために国鉄の抱かなければならない人員が非常に大きかったということは、私はすなおに認めていいと思います。

 もう一つは、国鉄も運賃是正をやってきたわけでございますし、その過程においては給与の是正もやってまいったわけであります。昭和十一年を基準にして考えますと、東京都における消費者物価指数は六一四であります。先ほども申し上げましたように、消費者米価は五〇四であります。はがきは六六七にあって、鉄道は二六九に押えられてきたというところに、私は大きな問題があると思うのであります。

 しかし、それかといって、その部分は全部公共負担でまかなえという議論が起こるかもしれませんけれども、国がやっておった三つの仕事は、戦後三公社に移っておるわけであります。その一つは申すまでもなく専売公社であり、その二つは電電公社であり、その三つ目は国鉄であります。三公社五現業という制度に移ったわけでありますが、この過程において、国有企業から、少なくとも公社という独算制を加味できるものに、すなわち料金を主体にする経営体制に移されたことは事実でございます。しかも、それよりも、これを民営に移せという議論があったことも事実ではありませんか。そういう意味で、いまの状態で、専売公社に対しては、税金から投入する道はありません。電電公社に対しては、財政投融資によって援助をしておるだけであります。国有鉄道に対しましては、いま述べたような原因もあるのでありますから、当然国が負担をしなければならない部分に対しては税金をもって負担をしようというのが、今度の再建案でございます。

 しかし、あくまでも三公社制度に移行した理想を考えてみても、独算制そのものを強行することはできないにしても、利用者が一部負担をしなければならぬことは、この制度上当然のことであることもまた理解をしていただきたいと思うのでございます。(拍手)そういうような状態でございまして、政府は、今度の対策で赤字解消だけをやろうとしておるのではありません。赤字解消も一つの目標ではございますが、長期の視野に立って、国有鉄道が国民生活確保のために果たさなければならない公益性を確保するために、ぜひとも必要な施策として今次提案を行なっておることを理解していただきたいと思うのであります。どんなお考えでも、二十五年前に三公社に移って、民営にしたほうがいいというものを、もとの鉄道省に逆戻りをせよという御議論ではないだろうと思うわけでございます。

 それから第三は、貨物部門の赤字をなぜに旅客、利用者に負担をさせなければならないかということでございますが、これは先ほどから申し上げておるとおりでございまして、国鉄が試算をした旅客、貨物別の原価計算によると、貨物の収支が悪化しておることも事実でございますし、また、旅客部門では、在来線の赤字を新幹線の黒字によってカバーしておるというのも現状でございます。しかし、この貨物の運賃を一挙に引き上げるということは逆な効果になるのでありまして、先ほども述べましたように、陸運と鉄道と海運との調整を別な政策をあわせて行なうことによって、鉄道が公の責任を果たすような政策を加味することが望ましい、こう考えておるのでありまして、現在の点において、貨物部門の赤字を急激に解消するために運賃の引き上げを必要とするものではない、こう理解しております。(拍手)
 内閣としては、初めての通常国会を迎えるわけでありますし、特に物価問題が最重点的な問題として取り上げられておるときに、なぜ国鉄再建法、運賃改定に関する法律を提案したのかという問題に対して、私の気持ちをただされましたので、率直に申し上げます。

 私も、物価の抑制が重大であるということを十分承知いたしております。しかし、もうすでに、との国鉄の再建法は、三年目を迎えておるわけでございます。私も、かつて池田内閣時代、佐藤内閣時代、物価抑制のために、まっ先に公共料金の安定に対して努力もしたわけでございますが、先ほどから申し上げておりますとおり、非常に高度成長を続けておるときに、ある程度運賃の改定をしなければならなかったにもかかわらず、そういうときに押え過ぎたのではないかというような面も確かに感じられるのであります。しかも、それだからといって、このような重要な時期に再建法案を提出するというのではないのであります。国有鉄道の持つ重要性、公共性を考えるときに、政治的な配慮で、何らかの処置をすることによって、一年間おくれるということそれ自体が、国鉄の安全性や国鉄の将来の公共性を守るゆえんではないというために、公の責任を果たすために、あえて提案に踏み切ったわけでございます。(拍手)

 それから、国鉄の赤字そのものに対しては国がもっと大きく補てんしなければならないということでございまして、私もその意味では、先ほど申し上げましたように、三公社のうち他の二公社のような状態で国鉄が再建できるものではないという考えであって、少なくとも国有鉄道再建のためには国庫の支出、国庫の援助、企業合理化と努力、それから利用者負担、こういう三つの問題と正面に取り組んでいくことによってのみ、国有鉄道の再建が可能である、こう考えたわけでございます。

 河村さんは国鉄の重要な地位に長くおられた方でありますし、特に戦後鉄道省から日本国有鉄道に企業が移管されたときに、占領下にあって独立採算制を強く求められ、非常に苦労された方であることは私もよく承知をしております。そういう立場でお述べになっておるのでありますから、私も言外に何をお述べになられるかを承知をいたしておるつもりでございます。私はそういう意味で、国有鉄道というものの性格を考えてみても、少なくとも旧鉄道省に戻るんだ、国庫がすべてを負担するのだという考えに立っての御発言ではない、こう思っておるのでございまして、少なくとも国庫支出がもっと合理的であり、もっと指摘されるようなところにウエートを置かなければならないというならば、審議の過程において十分御指摘を賜わりたい、こう思うわけでございます。

 道路においてもしかりでございます。無料公開の原則に立つ道路も、有料道路制度を採用いたしました。しかも、一般公共事業でまかなっておった港湾も特別会計に移り、しかも外貿埠頭公団の制度も発足をしたわけでございますし、ダム特別会計から水の会計も移っておるわけでありますから、応益負担制度が取り入れられるということ、その調和がとられるということによって、公の立場で果たさなければならない低所得者や、また不幸な人たちや、社会保障に全額負担というような制度が拡充されるわけでございまして、その意味においても、国有鉄道に対して政府が企図し、御提案を申し上げている考え方は、一つの現時点における、最良とは申し上げません、最良とは申し上げませんが、練りに練った結論であるということは御理解いただけると思うのでございます。(拍手)

 それから、一万キロにのぼるローカル線の撤去、赤字補てんという問題、これも承知でお述べになっておられると思うのでございますが、これはもうからなければならないというならば私鉄でいいのでございまして、もうからなくとも政策目的達成のために必要であるから国有鉄道法という法律に基づいておるのでございます。そういう意味であって、(「赤字はどうした」と呼ぶ者あり)赤字だから撤去するというなら、悪い例かもしれませんが、北海道の鉄道は敷設以来赤字であります。現在も赤字であり、将来もまた当分赤字であります。では、全部撤去しなさいと言ったら、それは鉄道の累積赤字の何百倍も何千倍も、鉄道が北海道に敷かれたために北海道の国民総生産は向上しておるのでありまして、政策目的が達成されるために国有鉄道法が存在するんだということは、私が申し上げるまでもなく、鉄道に奉職された河村さん、十分御承知のとおりでございます。(拍手)

 赤字だから撤去せよというなら、東京の地下鉄が最も赤字でございます。建設費の二分の一を補助しても、なお運営ができないということでございまして、赤字論争というものと国有鉄道法の論争は基本的に違うことであるということは、私が申し上げるまでもないのであります。(拍手)

 しかも、先ほども申し上げましたように、地形、地勢上、しかも四九・五%の地域は雪が降るのであります。そこは道路で除雪をしたほうがいいのか、鉄道を敷設したほうがいいのかというのは、国民の公共負担という面からも計算をしなければならぬのであって、一鉄道の単一な会計だけで議論できる問題ではないことは論をまたないところでございます。(拍手)A、B線をどうして拡大をしたかというのは、いま申し上げた理由によるものでございます。

 最後に、河村さんは、先ほど申し上げたとおり、戦後の困難な日本国有鉄道再建のために全力を傾けてこられた方でございます。鉄道の再建の必要性については特に痛感をせられておるものと理解をいたします。この法案の成立を初めから阻止するなどということではなく、貴重な御意見を寄せられ、成立のために御協力あらんことを切望し、答弁を終わります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第15号(1973/03/09、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 山田芳治君にお答えを申し上げます。第一は、超過負担問題等についてでございますが、政府は、従来から地方公共団体の超過負担につきましてその解消につとめてまいったわけでございます。昭和四十七年度におきまして、公立文教施設整備等六事業について実態調査を行ない、その結果に基づいて、四十八年度に引き続き四十九年度において所要の是正措置を講ずることといたしておることは、御承知のとおりでございます。また、最近の建設資材の価格の急騰に対処いたしますために、四十九年度予算では、公立文教施設整備費等の予算単価を引き上げる等の措置を講じておるわけでございます。

 次は、地方財政計画についての御発言でございますが、昭和四十九年度の地方財政計画は、総需要抑制の見地から歳出を極力圧縮しておることは、御承知のとおりでございます。また、財源の重点的配分と支出の効率化につとめて、地域住民の生活の安定と福祉の充実をはかるための施策を推進することを基本といたしておるのであります。したがいまして、教育、社会福祉、生活環境施設等地域住民の生活に直結した施設の整備にかかる単独事業費につきましては、その拡充をはかることにいたしております。

 第三点は、国庫支出金の予算編成にあたって、自治大臣の権限を強化せよという趣旨の御発言についてでございますが、国と地方との間の事務配分、財源配分が適切に保たれ、国の財政と地方財政との間に適切な財政秩序が確立さるべきであることは言うまでもありません。政府といたしましても、従来からこの点について特に配意し、予算編成をはじめとして、機会あるごとに自治省及び関係省の間で隔意なき意見交換を行なっておるところであります。これを通じまして地方団体の意見は国の財政運営に適切に反映されておるものと確信をいたしておるのでございます。残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 坂本君にお答えいたします。第一は、経済社会基本計画において示されました経済成長率九%と、列島改造論における一〇%成長率との関連についてでございますが、「日本列島改造論」は、巨大都市への人と文化と経済の流れを地方へ転換をさせて、住みよい豊かな地域社会を全国土にわたって実現をするための私の所見であります。その中で示しました経済成長率は、論旨を具体的に展開をするための一応の前提といたしまして、仮に想定をした数値でございます。この中には、御承知のとおり、一〇%の場合には、国民総生産三百四兆円、また八・五%の場合は二百四十八兆円、このように書いてあるわけでございまして、想定をした数値であることを御理解賜わりたいと存じます。経済社会基本計画は、工業再配置、全国交通通信ネットワークの形成、地方都市の整備等、改造論に示された考え方を取り入れつつ、活力ある福祉社会を目ざす、今後五年間の基本的な政策体系を提示をしたものであります。これら政策と整合のとれた経済成長率として九%程度と見込んだのでございます。

 第二は、縦割り体制を見直し、開発関係の行政機構全体の改革が必要であると思うが、どうかという御所論でございますが、現下の重要問題である過密過疎対策、環境の保全、社会資本の充実等の諸問題に対処するためには、国土総合開発に関し、十分な企画調整権能を持った行政機構が必要であると考え、国土総合開発庁の設立を提案したものであります。なお、今般の国土総合開発庁の設置は、昭和三十九年の臨時行政調査会の答申及び昨年十二月の行政監理委員会の意見の趣旨に沿ったものでございます。

 第三点は、国土総合開発公団と産炭地域振興についてでございますが、産炭地域振興施策は、国土総合開発の一環をなすものであり、今後とも、その充実をはかる必要があることは申すまでもないことであります。工業再配置・産炭地域振興公団を改組、拡充して設けます国土総合開発公団におきましても、産炭地域振興業務が従来どおり引き継がれ、さらにその強化につとめてまいらなければならないことは当然でございまして、全力を傾けてまいりたいと考えます。残余の問題に対しては関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 三谷秀治君にお答えをいたします。第一は、国庫補助単価についてでございますが、国庫補助単価につきましては、超過負担の実態調査をもとにして是正をはかっておるわけでございます。特に、最近における物価の上昇に対処するため、単価の改善を行ない、実態に近づけるよう努力をしておるところでございます。今後とも国庫補助単価の改善につとめ、これにあわせて地方交付税及び地方債の単価を是正したいと考えておるのであります。

 次は、地方交付税の減額についてでございますが、今回の地方交付税の減額調整措置は、当面する物価問題に対処し、中央、地方が相協力して、歳出規模を圧縮し、総需要の抑制をはかる必要からとられた措置でございます。明年度の地方財政は、地方交付税の減額調整後においても、これに地方税、地方譲与税を合わせた地方一般財源は、前年度を上回る増加となるものと見込まれており、国の財政の基調に準じて地方財政が運営せられる限り、その運営が困難になる心配はないものと考えておるわけでございます。

 なお、今回減額する千六百八十億円という金額は、交付税特別会計の借り入れ金の残高に相当する額でありまして、いわば地方の借り入れ金を繰り上げ返済したのと同様であり、これをもって地方交付税制度の本質に反するとは考えておらないのであります。

 次は、事業税についての御発言でございますが、所得金額課税を収入金額課税方式に改める場合には、各企業の負担に相当の変動が生ずることになり、とりわけ経営基盤の脆弱な中小企業に及ぼす影響が大きい等の問題がありますので、これらの点につきましては、税制調査会の審議をわずらわしつつ、慎重に検討してまいりたいと考えておるのでございます。

 次は、事務所事業所税についてでございますが、事務所事業所税の創設につきましては、今回の税制改正にあたりまして、種々検討を重ねたところでございます。昭和四十九年度は、御承知のとおり法人税率や法人住民税率を引き上げましたので、法人の負担の適正化をこのようなことによってはかったわけでございます。また、昨年の秋以来、経済情勢に急激な変動があったことなどから、諸般の情勢から、今度の事務所税や事業所税ということの実現には至らなかったわけでございます。この問題は、今後引き続き検討してまいりたいと存じます。残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 小川新一郎君にお答えいたします。 第一は、住民の立場に立つ財政計画についての御発言についてお答えいたします。昭和四十九年度の地方財政計画は、総需要抑制の見地から、歳出を極力圧縮いたすことにいたしておるわけでございます。このような中にありましても、地域住民の生活安定と福祉充実をはかるための施策につきましては、福祉優先の見地から、引き続きこれを重点的に推進してまいりたいと考えております。このため、生活保護、児童福祉、老人福祉等、社会福祉施策の充実をはかるとともに、地方団体における消費者行政の推進等をはかるための施策を拡充しておるのであります。国と地方の事務、財源配分についての御発言でございますが、国、地方を通ずる税財源の配分のあり方につきましては、事務再配分等の問題もあわせ総合的に検討すべき問題でございますから、地方制度調査会、税制調査会等の意見も伺いながら、今後も研究を続けてまいりたいと考えます。

 次は、地方交付税についてでございますが、四十九年度に地方交付税交付金について千六百八十億円を減額調整することといたしておりますのは、先ほども申し述べましたように、総需要の抑制をはかるため、中央、地方が相協力して歳出の規模を圧縮する必要があることによるものでございます。四十九年度には、地方税が三割近い伸びを示すなど、一般財源の増加が見込まれる情勢にあることは、御承知のとおりでございます。また、歳出面では、国の公共事業費等にかかる地方負担の増加が著しく小さいなど、歳出規模の拡大がおのずから小幅にとどまる要因がありますほか、各地方団体におきましても、行政需要の抑制、繰り延べ等につとめることが期待せられますので、これらの事情を総合すれば、地方交付税の減額が四十九年度の地方財政に支障となるとは考えられないのであります。

 次に、国債の一定割合を交付税に上乗せしてはどうかとの御発言でございますが、さきの質問に自治大臣から申し述べましたように、国の公債収入を租税収入と同一視して、国、地方聞の財源配分に調整を加える必要があるとする考え方には問題があります。その意味で、にわかに賛同しがたいのであります。

 次は、超過負担についてでございますが、政府は、従来から、地方公共団体の超過負担についてその計画的な解消につとめてきたことは、さきにも申し述べたとおりでございます。また、最近の建設資材の価格の急騰に対処するため、昭和四十九年度予算においては、公立文教施設整備費等の予算単価を引き上げるなど、各般の措置を講じておるわけでございます。

 最後に、地方債についてのお尋ねでございますが、地方債の許可制度は、資金の公平な配分と財政の健全性の確保の見地から設けられておるものでありますから、その廃止は考えておりません。また、地方債に充てる資金については、従来から政府資金の重点的な配分につとめておるところでございます。昭和四十九年度においては、地方債計画に占める政府資金の比率は六〇・三%でございまして、一兆四千百億円となっておるわけでございます。残余の質問については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。
 私から四点にわたってお答えをいたします。第一点は、医療制度改革に対する基本方針を明らかにせよということでございます。医療制度につきましては、医学、医術の研究開発、医療施設の体系的整備、医療従事者の養成及び資質の向上など、広範にわたり課題が山積をしておるのであります。これらの課題を計画的に解決していくため、目下、社会保障長期計画の策定を急いでおりますので、医療供給体制の整備を最も重要な柱と考えて策定を急ぐつもりでございます。

 第二問は、今回の改正案が、十分な給付改善を行なう点に主眼を置いたので、値上げ法案のそしりは当たらないと思うがいかん、こういう御質問でございますが、今回の改正案は、御指摘のとおり、福祉政策の一環として、実現可能なものから段階的に制度の改善に着手するという立場で、家族医療給付率の引き上げなど、給付改善をはかりますとともに、財政の健全化に必要な諸施策を講じて制度の充実強化をはかり、国民の福祉水準の向上に資することを目的といたしたものであることは、御指摘のとおりでございます。

 第三点は、家族給付率については、国保ではすでに七割給付を実施しておるので、健保でも、ぜひ七割以上に引き上げるべきではないかという御意見を交えての御発言に対してでございます。家族給付率の引き上げは、医療保険の内容の充実のため、最も重要な課題でありますが、三千億円にものぼる累積赤字をたな上げしながら、あえて制度創設以来初めての改善を行なおうとするものでありますので、今回は、とりあえず六割まで引き上げることといたしたわけであります。

 最後の問題は、政府は、この健康保険法案を不退転の決意で、今国会において成立させる決意があるのか、こういう御激励を含んだ御発言に対してでございますが、国民医療の充実を期するために、その中核をなす医療保険を国民の要望にこたえ得るよう改善することが目下の急務であることは、お説のとおりでございますので、その意味におきまして、今回の改正は、今国会においてぜひとも成立させたいと考えておるのでございまして、各位の御理解を特に求めたいのであります。(拍手)
 今回の、医療制度の抜本改正に手をつけなかった理由は何か、抜本改正に対する決意と構想はどうかという問題に対してお答えをいたします。医療需要の増大、高度化に対応し、政府としては、医師等の確保、医療施設の整備など、医療供給体制については、総合的かつ計画的整備を早急にはかる必要があると考えておるのであります。第六十八回国会に提案をしました医療基本法案につきましては、各方面からいろいろ意見もありましたので、時間をかけて練り直すことにいたしたわけでございます。また、同法案が目的としておりました医療供給体制の整備につきましては、先般閣議決定をいたしました経済社会基本計画を受けまして、現在厚生省において長期計画の策定を急いでおるわけでございます。この長期計画の策定に基づきまして、今後総合的な施策を講じてまいる所存でございます。(拍手)
 まず第一番目は、医療供給体制について年次計画を立てて抜本的な対策を立てよという御議論でございますが、医療に関しては、休日夜間の急患の診療の確保、無医地区における医療の確保など、問題は山積をいたしており、医療供給体制の整備は、目下策定を急いでおる社会保障長期計画の重要な柱と考えておるのでございます。国民医療の確保のため今後最大限の努力を払い、計画的にこれらの問題の解決に当たってまいりたいと考えます。

 第二は、赤字を理由に掛け金を上げるのはなぜかという意味の御質問でございますが、今回の改正では、政管健保の三千億円にのぼる過去の累積赤字をたな上げするほか、新たに給付費の一〇%の定率国庫補助を設けるなど、政管健保の被保険者の負担軽減に着目して、国としても相当思い切った援助を行なうことといたしたわけでございます。なお、被保険者につきましても若干の負担増を求めておりますが、これは、給付の大幅な改善との見合いで相応の負担を求めたいという趣旨によるものでありまして、理解がいただけるものと考えておるのでございます。

 第三点は、弾力条項は国会軽視ではないかという問題でございますが、保険料率の調整については、その上下限が法律で定められておること、その保険料率の決定に際して、法律上社会保険審議会の意見を聞くこととされておりますので、国会軽視ということにはならないと考えておるのでございます。残余の問題については関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 第一は、今回の改正案は、全体の医療保障体制の中でどのような位置づけをし、改革をするのかという問題でございますが、わが国は昭和三十六年に国民皆保険体制を確立し、これを中心に医療保障を推進してきたのでございますが、今後とも、この基本方針のもとに国民医療の確保につとめてまいりたいと考えます。今回の健康保険の改正も、この方針に沿って、家族医療給付の改善を中心として、あわせて、保険の運営上重要な問題である保険財政の恒常的な安定を確保するための諸施策を講じようとするものであります。医療問題は、関係者の利害が複雑に錯綜し、その解決に時日を要するものが少なくないのでありますが、今回の改正はこのような点も考慮し、当面急を要し、かつ実現可能と考えられるものから着手したものでございます。この改正によりまして、懸案の抜本改正への第一歩が踏み出せるものと確信をいたしておるのでございます。

 第二は、政管健保と他の保険との間に格差が生じているが、政管健保加入者のみの間での相互扶助の原則を貫こうとするのは問題があるのではないかという御指摘でございますが、医療保険制度は、被保険者相互間の連帯意識を基調として、各自の負担能力に応じた保険料を負担することによってその給付費をまかなうのがたてまえであることは申すまでもありません。しかしながら、それぞれの制度を構成する被保険者の階層によっては、保険料の負担能力が低く、このたてまえを貫くことが困難な場合もありますので、その財政体質の状況等を総合的に勘案し、必要なものについては、応分の国庫補助の措置を講ずべきものと考えておるのであります。この意味で、政管健保について三千億円に及ぶ累積収入不足をたな上げするほか、給付費の一〇%に及ぶ定率国庫補助を新設し、財政体質の強化をはかることにしたものでございます。

 最後に一点申し上げますが、抜本的な改正案を出すのが先だと言われておるのでございますが、この問題に対して、政府も、抜本的な改正案を出したいという熱意に対しては同じ考えを持っておるのでございますが、過去の例に徴してもおわかりになるとおり、非常に錯綜しておる問題がありますので、当面改正を必要とするものに対しては、これを改善をはかろうとしておるのでございますから、その間の事情を御理解の上、御理解賜わりたいと思うのでございます。(拍手)
 第一点は、医療制度の抜本改正についての基本姿勢についてでございますが、先ほども申し述べましたように、医療制度につきましては、医学、医術の研究開発、医療施設の体系的整備、医療従事者の養成及び資質の向上など広範にわたり課題が山積をしております。医療供給体制の計画的整備は、現在作業を進めている社会保障長期計画の最も重要な柱として考えておるのでございます。国民医療の確立のため、今後最大の努力を払い、計画的にこれらの問題の解決に当たってまいりたいと考えます。

 次は、大学医学部への入学者をどう認識し、いかに対処するつもりかという問題でございますが、人命を預かる医師には、他の職業に比べて高い資質と専門職業人としてのモラルが要求されることは言うまでもないことでございます。国としては、資質の高い医師の養成、確保と教育の機会均等をはかるために、私立医科大学の入学時寄付金につきましては、それが入学の条件とされたり、あるいは高額にわたることのないよう、十分指導し、また、その助成について、今後とも一そう配慮してまいりたいと考えておるのでございます。

 次に、国家試験の問題でございますが、医師の国家試験は、国民医療にかかわる重要な試験であるので、その実施にあたっては、厳正を期していることは言うまでもないのであります。また、医師の資質の向上は、単に国家試験のみならず、卒業前の教育、資格取得後の研修を含めた医学教育全体の向上が必要でありますので、医科大学の充実とともに、臨床研修についてもその充実をはかってまいりたいと考えます。残余の問題に対しては、担当大臣から答弁をいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第19号(1973/03/29、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 大学教育の荒廃の現状をどう認識し、また、今後の大学教育のあり方についてどう考えるか、このような第一問に対して、まずお答えを申し上げますと、大学の現状につきましては、御指摘のような問題が数多く存在することは事実であります。広く、高い知識を吸収し、人格の陶冶を求めて大学に学ぼうとする国民の希望に正しくこたえることができるよう、必要な施策は適時適切に考慮を払ってまいりたいと考えます。

 このような観点から、大学教育の正すべき点はこれを正し、これからの激動する社会に適切に対応できるよき社会人を育成する大学とするよう、大学関係者の自主的な努力を促しつつ、大学の教育環境の改善を含めて、大学教育全般の改革を進めてまいりたいと考えておるのでございます。

 筑波大学に世界の優秀な学者を招聘し、研究器材も世界的なものを導入してはどうかとの御指摘でございますが、筑波大学のねらいの一つは、国内のみならず国際的にも開かれた大学とすることにあることは言うをまちません。御指摘の点を含めて、同大学に内外の優秀な学者を招聘し、それにふさわしい研究環境を備えていく必要があると考えておるのでございます。
 それから第三点は、新学園建設調査費を有効に活用して、年次計画を立てて、新しい大学の設置計画を勇敢に進めるべきだということでございますが、現在の大学の大都市集中が、大学の地域的偏在をもたらすとともに、学園環境の悪化を来たしていることはいなめない事実でございます。

 このため、恵まれた自然環境の中に新しい構想の学園を建設することを考え、四十八年度において新学園建設等調査費を文部省に計上し、これによって新学園建設のための基本的事項について調査研究を進めることといたしておるのでございます。この五千万円の調査費はわずかなものでございますが、いま御指摘になったような広い視野に立って、将来の大学はどうあるべきかという立場に立って、全国的な視野で調査を進めてまいりたいと考えておるのでございます。自民党が、かつて正式に党議決定をした都市政策大綱の中にも示してありますように、一つの理想の姿として、明治の初年にわれわれの先覚が乏しい中から官立大学や公立大学を築いたような考えと視野に立って、百年の将来に思いをはせながら、新大学をどうすればいいかという一つの姿として、国有地で大体一校五百万平方メートルないし一千万平方メートル。そうすると、世界で最高の大学機構ができるわけでございます。しかも、建設費は、国有地でありますから土地の購入費というものを考える必要はありません。そうすると、最高水準の大学を築くとしても、一校当たり二千五百億程度でございます。十校の建設を行なうとしても、二兆五千億ないし三兆円であります。このような問題を国民的支持と理解を前提として行なうとすれば、さした困難な問題ではないわけでございます。学債を発行するとすれば、三年ないし五年でこれらが完成できるわけであります。

 そういう立場で、そのような理想的な姿を描きながら、広く環境を求めようというのが、この五千万円計上した調査費の目的でございます。これはただ一つの内閣が行なえるものではありません。国民の支持と理解を求めながら、短い間に、できるならば可及的すみやかに結論を出して、次代の国民のために大きな一歩を踏み出すべきである、このように考えておるのであります。残余の問題に対しては、文部大臣から答弁いたします。(拍手)
 筑波大学の新設に伴う法律の御審議をお願いしておるわけでございますが、この法律案の改正のしかた、また、筑波大学設置の重要な点などは、学問の自由や学園の自治を乱るおそれがあるということでございますが、すなおな考え方で見ていただけば理解が得られると思うのでございますが、大学制度も、戦後四半世紀の歴史を経て、森君が先ほど指摘しましたように、いろいろ改革を要する点があることは事実でございまして、国民は、望ましい大学はどうあるべきかということに対してたいへん心配をしておるのであります。(拍手)大学というものは教師だけのものではないのであります。(拍手)学生だけのものではないのであります。(拍手)日本全体のものなのであります。(拍手)その意味で、次代の望ましい国民を教育するためにふさわしい大学はどうあるべきかということを、いま国民全体は真剣に考えておるのであります。(拍手)今度の筑波大学設置に際して、その理想達成のために幾つかの政策を盛ろうとする姿を理解していただけば、このような大学をつくること、このような法律を御審議いただくことが学問の自由と学園の自治を侵すと考えること自体が、私は、観念的な考えであると思うのであります。(拍手)

 第二は、七〇年代以降の科学技術の研究や教育のあり方についての御発言がございましたが、科学や技術は、日に日に進歩いたしてまいることは申すまでもないのでございまして、大学においても新しい形の研究、教育組織をとることによりまして、弾力的な研究活動を確保し、かつ、多様な人材養成をはかることとしなければならぬことは言うをまたないわけであります。このような要請にこたえ得る体制を整えようというのがこの大学設置の一つの目的であります。また次は、学外者の大学行政への参加は、教育基本法第十条にいう直接教育責任の原則にもとるという考えでございますが、筑波大学に、学外者で構成をする参与会を置くことといたしておりますのは、学外の良識ある意見を同大学の管理運営に適切に反映させようとするものでありまして、国民の意見を大学に反映させる一助となるものでありまして、教育基本法の原則に何ら反するものではありません。学園の中だけの考え方、学園の中におる者の恣意によって大学が運営せられるということを国民は望んでおりませんし、そのような事態で望ましい大学の運営はできないのであります。(拍手)だからいろいろな混乱が起き、国民が心配しておるんじゃありませんか。この事実に目をおおうてはなりません。

 次は、人事委員会の性格と教官の学問、思想、信条の自由についての御発言がございましたが、筑波大学に置かれる人事委員会は、全学的な見地に立って、教官人事が円滑、適正に行なわれることを確保するための学内の教官を中心とする組織と承知をしており、このような組織を置くことは、何ら教官の学問や思想、信条の自由を侵すものでありません。より広い国民的立場から、理想の学園を築き、大学を運営することが、学問の自由と学園の自治を侵すものであるという考えには賛成できません。(拍手)
 大学改革の基本的理念及び本大学設置により、学問の自由が侵され、学園の自治が破られるという考えに対して、まず申し上げたいと存じます。

 戦後の大学教育につきましては、先ほども申し述べましたように、急速な普及と社会の複雑高度化に伴って、大学の内外からさまざまな新しい要請が出ておることは事実でございます。これまでの高等教育に対する考え方や制度的ワク組みでは対応できなくなっておることが多いのでございます。このような観点から、高等教育の大衆化と学術研究の高度化の要請にこたえて、高等教育の多様化、教育、研究組織の合理化、大学の閉鎖性の是正等の措置を講ずる必要があることは、何人も否定できない事実でございます。

 真に学問の自由を守り、学園の自治を守るためには、お互いが現状を把握し直視をしながら、真に守れるような道を、具体的な方策を講じなければならないわけでございます。ただ、学園を放任しておくことによって学問の自由が守れ、学園の自治が守れるのではないのであります。(拍手)そういう意味で、これらの要請にこたえるために、新しい制度の採用を機会に、いろいろな問題に対して具体案を得て御審議をお願いしておるのであります。これらのやり方は、よりよい大学をつくり上げるための必要不可欠のものの一つとして規定をしておるわけでございます。

 御指摘がございました学校の運営に対して、国民の広い立場における良識の参加、副学長を置くというようなことが学問の自由を侵し、学園の自治を乱るという考え方は、これは非常に専断でございます。その意味で、政府が本法案を御審議いただいておる真意を御理解賜わりまして、御賛同のほどを切にお願いいたします。具体的な問題については関係閣僚からお答えいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第21号(1973/04/03、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 近ごろにおける物価の騰貴、買いだめ、売惜しみ等は何によって起こったのかと、基本的な認識を問われたわけでございますが、これらの問題は、海外インフレ要因とか国内景気の上昇等もございますが、御指摘のとおり、過剰流動性が大きな原因であることは否定できないのでございます。

 なぜ、このように金融が緩和されたのかということでございますが、第一回の円平価の調整が行なわれて、いまだ一年半もたたないのでございます。多国間通貨調整という、例のない問題が解決したわけでございますが、大幅な平価調整の結果、国内の経済に影響があらわれるというのは、通説では一年ないし二年、時間がかかれば三年といわれておるのであります。このようなことが行なわれた結果、当然起こり得ることは、世界に類例のないような特殊な状態を持つ、すなわち中小企業や零細企業に大きな影響が与えられると思うので、これを回避するために、諸般の政策を必要とすべしということは、あに与党のみならず、国民的な要請であったことは、指摘するまでもないのでございます。そのために、政府は、財政、金融、税制上、諸般の措置を講じてまいったこともまた事実でございます。

 そのような状態におきまして、過剰流動性の問題が起こったわけでございます。四十六年の一月には外貨準備高わずかに四十五億ドルというのが、一年余の間に百五十億ドル余の外貨の積み重ねが行なわれたわけでございますが、これらの過程において、過剰流動性という一つの現象が生じたことは、御指摘のとおりでございます。

 その意味で、正常な経済活動を確保しながら、これから起こるであろうところの中小企業や零細企業に対する対策に万全を期さなければならないことは言うまでもないのでございます。でございますから、このような状態においてさえ、財投の中小企業や零細企業に対する追加投資を必要としておることもまた事実なのでございます。一面において過剰流動性を吸収しながら、必要な面に対しては適時、適切なる施策を推進していかなければならないという両面的な政策遂行が、現に政府に課せられた使命であることを御理解賜わりたいのでございます。

 経済の正常な発展をもたらすためには、自由経済体制がいいことはもう言うをまたないのでございまして、政府もその基本を堅持してまいっておるわけでございますが、一部において買占めや売惜しみというような事態があることは、はなはだ遺憾でございます。正常な企業活動をしなければならない中で、このような反社会的な行為が行なわれておることをそのままに看過するわけにはまいらないわけでございます。
 そして、第二の問題でございますが、これらを正常に戻すための決意はどういうのかということでございます。そのためには、野党提案のように、放出命令を聞かなかったものに対して罰則を設けてはどうかということでございますが……(「異議なし」と呼ぶ者あり)これは簡単に「異議なし」と言うわけにはまいらないのでございます。

 それはなぜかといいますと、これは二つ問題があります。一つには、放出命令を出す以上は、公的機関によって買い取りを行なうということが前提でなければならないのであります。ですから、その意味におきましては、御審議を願っております土地税制においては、知事が特定な地域を指定して、その中で開発の規制を行なったり、移動を禁止するような私権制限をする場合には、当然、憲法による個人の自由の権利を守るために、公の機関に対して買い取り請求権を認めておるのでございますが、このような状態において、どれが適正なのかということの判断は非常にむずかしいのであります。

 これを、ただ政府の見解において一方的に罰を加えるということはありました。戦時、戦後における物価統制令であり、それは、すなわち、最も一部がきらう総動員法的な性格を持つということでございます。(拍手)このような道を開くと、統制経済に移行する大きな危険をはらむのでありまして、これらの問題は国民が求めておる道ではないのであります。

 そのような意味において、この法律案に書いておりますように、調査、勧告、公表という社会的制裁によって、企業の公的責任を果たさせるよう誘導するととが真の政策であることを御理解いただきたい。(拍手)それは、ある国では、物資が欠乏しておる国は、わずかな品物を買いだめしても銃殺をするという国もございます。そういうような例と現在の日本を直ちに比肩することが望ましくないことは言うまでもありません。

 わが国は、自由主義経済のもとで経済運営を行なっておりますが、各種の規制等を行なうことは、公衆衛生等の諸施策はありますが、そのような意味で、統制を行なわないで、誘導政策を適宜行なうということによって、経済の正常化をはかってまいろうということでございますので、野党提案に賛成をし政府案をひっ込める意思はございません。(拍手)
 第一は、重大災害、新しい職業病等についての御質問にお答えをいたします。政府としましては、これまでも労働災害の防止につとめてきたところでございますが、最近の技術革新の進展に伴い、新しい災害や職業病の発生も見られ、労働安全衛生対策は、福祉優先の理念からも最も重要な問題であると考えておるのであります。したがいまして、今後とも最重点的施策の一つとして、働く人に安全で快適な職場を確保するための施策を積極的に進めていく所存でございます。

 第二問は、現行の労災保険制度は全面的な改正を行なうべきではないかとの趣旨の御発言でございますが、労災保険制度は、制度発足以来数次の法律改正を行なって、給付及び制度の改善につとめてきたところでございますが、今後とも、経済、社会の伸展に即応して、その改善につとめてまいりたいと考えております。以上。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第22号(1973/04/05、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 山田芳治君の御質問にお答えをいたします。まず第一は、都市交通体系と職住の遠隔化に対する対策についてでございますが、都市交通体系は、国土利用計画や都市計画を踏まえて、都市活動によって発生する大量で多様な交通需要に対して、合理的かつ有機的に対応し得ることが必要であります。また、職住の遠隔化の現象に対応して、次のような措置を講ずる必要があると考えます。まず第一に、現在の大都市の持つ求心型の構造を多核分散型に改めるため、副都心、新都心を整備し、都心の業務機能の分散をはからなければならないと思います。第二は、都心部においては高層住宅を積極的に建設をして、職住の近接をはかる必要があります。第三は、都心、郊外を結ぶ効率的な交通ネットワークを整備し、都市交通の機能を高め、快適なかつ効率的な交通の確保をはかってまいります。このためには、都市の再開発を思い切って行なわなければならないわけであります。再開発の実施によって、十分な交通空間や緑地を持ち、大震火災にも耐え得る、近代的な、環境のよい都市の建設が初めて可能になると思うのであります。

 第二は、三大都市圏における宅地並み課税に関しての御質問がございましたから、お答えをいたします。今回の市街化区域内における農地にかかる課税措置は、土地問題の重要性にかんがみ、特に大都市周辺においては宅地と農地の税負担の不均衡が著しいこと及び現に不足しておる宅地の供給の促進をはかる必要があることをも考慮して措置することといたしたものであります。これによってむしろ職住の近接化が促進するものと考えておるのであります。

 第三は、独立採算性の問題でございますが、この問題に対しては、大蔵大臣から詳しく申し上げますが、地方公共団体の交通、水道、病院等の公営企業というものは、やはり利用者がサービス享受の程度に応じて対価を支払い、負担をするという利用者負担の原則によることが、事業経営の効率化に資するものと考えております。また、公平の原則からいたしましても、そうでなければならないと思います。しかし、どうしても地方公営企業の中で応益負担だけで片づかないものがありますれば、それらの分に対しては、区分を明確にしながら、国及び地方公共団体が一般会計から補てんをしてまいるということは、従来もとっておることでございますし、この改正案でもその面を厚くしておるわけでございます。しかし、基本的なたてまえとしては、利用者負担の原則に基づく独立採算性を維持すべきものである、こう考えます。

 それから、必要な財源を確保するために、法人企業から税を徴収してこれをまかなうべしというようなお話でございますが、その経緯と将来の見通しに対して申し上げます。都市税源の充実のため、大都市等に所在する事務所事業所等に対して特別な税負担を求めることにつきましては、事務所事業所税または都市整備税の構想を検討してまいりました。しかし、地方中核都市構想やいわゆる列島改造税制との関連もありまして、昭和四十八年度におきましては実現を見るに至らなかったわけでございます。しかしながら、都市の財政需要はますます増加する傾向にあり、都市税源充実の必要性も一そう強まってきておるところでありますので、今後とも、その実現をはかるよう検討を続けてまいりたいと考えます。また、法人税負担のあり方につきましては、来年四月末に法人税の付加税率、すなわち一・七五%の期限が到来をいたしますので、その機会にこの付加税率を基本税率に織り込むとともに、さらに何がしかの引き上げを行なうことについて前向きに検討してまいりたいと考えます。 以上。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第23号(1973/04/06、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 川俣健二郎君にお答えをいたします。まず第一番目は、五万円年金を受給できるのは受給者の一割五分で、これでどうして五万円年金と言えるかという御趣旨のようでございますが、今回の改正は、厚生年金の標準的な年金額を五万円にしようとするものであります。昭和四十八年度中に新たに老齢年金を受ける二十年以上加入の人について見れば、その三割以上が現実に五万円年金を受けることになるのであります。加入期間の長短、保険料拠出の程度のいかんにかかわらず、すべての年金受給者の年金額を五万円とするような年金制度の設計は、きわめて適切を欠くものだと考えるのであります。標準的な年金生活者の年金額として、現役の勤労者の収入の六割を確保しようとする今回の年金改善は、国際的に見ても遜色のない年金水準を実現する画期的な改正であると考えておるものであります。(拍手)

 第二は、政府案の国民年金は、夫婦五万円ではなく、六千二百円年金なのかというような御発言でございますが、今回の改正では、国民年金の給付水準についても、厚生年金の大幅な給付水準の引き上げに均衡する改正を行なうことに踏み切ったものであります。すなわち、国民年金の本来の資格期間である二十五年加入の場合の年金水準を、附加年金を含め、夫婦月額五万円に引き上げることといたしたわけでございます。

 御指摘のとおり、この年金の支給が実際に始まるのは、かなり先のことになるため、そのときの価格で五万円年金であるかのように言われておりますが、現在の五万円年金の実質的な価値を今後も維持していこうとするのが、今回改正の趣旨なのであります。このことから考えますれば、国民年金における五万円年金が画期的なものであることは、十分理解いただけると思うのであります。
 第三点は、ILO百二号条約の批准についての御言及でございますが、ILO百二号条約の批准につきましては、基準を満たしていない部門の今後の方向を含め、全体についても将来の見通しを立てた上で、態度をきめることが妥当であると考えます。各国の動向も注視しながら、前向きに検討してまいりたいと思います。以上。(拍手)
 石母田達君の御質問にお答えをいたします。まず第一は、政府の福祉政策についてでございますが、社会保障につきましては、昭和四十八年度予算において、年金、老人対策等その充実に特に意を用いたところでありますが、活力ある福祉社会の建設のため、年次計画を立てて、着実にその充実をはかってまいりたいと考えます。

 第二は、賦課方式を採用すべきであるという御主張でございますが、わが国におきましては、今後、人口の急速な老齢化と年金制度の成熟化に伴い、年金受給者が急増することが見込まれておることは、いま御発言にあるとおりでございます。このような状況のもとで、今後二十年、三十年と長期にわたり、急激な負担の増加を避けながら、充実した年金額の支給を確保していくためには、長期的視野に立った財政運営が肝要であり、現行の修正積み立て方式を実情に即した配慮を加えながら維持していくことが適当だと考えておるのであります。また、資金運用部に預託をされた年金積み立て金の運用につきましては、住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、中小企業等各分野にその大部分、すなわち八五%程度が充てられておりまして、大企業本位に使われているとの批判は全く当たらないのであります。

 それから第三は、厚生年金、国民年金に関する四党提案に対する政府の見解を求められたわけでございますが、御提案のような年金水準の引き上げを、保険料負担の引き上げを行なわずに実現することは、今後の年金制度の健全な運営から見ても無理があり、現在提案しておる政府案が最善のものと考えるのであります。以上。(拍手)
 大橋敏雄君にお答えをいたします。五万円年金で国民の期待を裏切った政治責任はどうかということでございますが、今回の改正は、先ほども申し上げましたとおり、厚生年金の標準的な年金額を五万円にしようとするものであります。昭和四十八年度中に新たに老齢年金を受ける二十年以上加入の人についてみれば、その三割以上が現実に五万円年金を受けることとなるわけであります。しかし、加入期間の長短、保険料拠出の程度のいかんにかかわらず、すべての年金受給者の年金額を五万円とするような年金制度の設計は、きわめて適切を欠くものと考えるのであります。標準的な年金生活者の年金額として、現役の勤労者の収入の六割を確保しようとする今回の年金改善は、国際的に見ましても遜色のない年金水準を実現する画期的なものであると、こう考えておることは、先ほども申し上げたとおりでございます。 また、国民年金の給付水準についても、厚生年金の大幅な給付水準の引き上げに均衡する改正を行なうことに踏み切ったわけであります。御指摘のとおり、この年金の支給が実際に始まるのはかなり先のことであることも先ほど申し上げましたが、現在の五万円年金の実質的な価値を今後も維持していこうとするのが今回改正の趣旨であることを御理解賜わりたいと思います。このことから考えれば、国民年金における五万円年金が画期的なものであることは十分理解いただけると思うのでございます。また、現在の方式から賦課方式に転換せよということにつきましては、私からも、厚生大臣からも、間々御答弁を申し上げておりますとおりでございまして、現在の修正積み立て方式を実行することのほうが、よりよい長期的な制度の拡充をはかるゆえんであると、こういうことで御理解いただきたい。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第25号(1973/04/12、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 松永光君に答弁をいたします。まず第一は、この法律案を提出した真意及び施策遂行の決意についてでございますが、人間形成の基本が小中学校で定まることを思えば、義務教育を充実し整備することは、何よりも大切な問題であります。今回、これらの教育職員に対して、給与の増額予算を計上し、法律案を提出をいたしましたのは、子供を導く先生によき人材を得て、先生がその情熱を安んじて教育に傾けられるような条件を、一日も早くつくりたいと願ったからであります。(拍手)この法律案が国会において賛同を得、成立した上は、この法律案の趣旨を体して、必要な施策の遂行に万全を期する所存であります。(拍手)

 第二点は、四十九年度、五十年度において、さらに給与改善措置がなされるものと思うがどうかという御発言でございますが、教員の処遇の改善につきましては、今後とも、その計画的な実現に努力をしてまいる所存でございます。(拍手)

 第三点は、教員は、違法なストライキや国民の信頼を裏切るような行動を慎み、政府も、社会的評価を高めるために努力をせよとの趣旨の発言に対してでございますが、教職員は、次代の国民を育成するという、きわめて公共性の高い職務に従事をしておるものであります。また、教職員は、知育はもとよりのこと、徳育に任ずるものでありまして、みずからの行動をもって範となすべき聖職にあります。(拍手)したがって、法律で禁ぜられた違法なストライキを繰り返し、みずからその社会的評価を低めるようなことは、きわめて遺憾であり、切に自戒を求めたいのであります。(拍手)

 政府としては、教職を魅力あるものとし、すぐれた人材を教育界に誘致するための施策の一つとして、今回、教員の待遇を改善しようとするものであります。これからも、教職員の身分、待遇の改善はもとより、各般にわたり、努力を続けてまいりたいと考えます。以上。(拍手)
 馬場昇君にお答えをいたします。第一は、今回の措置は、教職員給与を押えてきたことに対する反省から出たものかという御指摘でございますが、中小学校の先生の給与が、その社会的な職責に比べて必ずしも十分でないという声も耳にしておるのであります。今回のような措置をとったのは、義務教育の整備充実が何よりも大切であり、ここに人材を得たいと考えたからなのであります。(拍手)

 第二は、この法律案は中教審答申に基づいて立案をしたのかとの趣旨の御発言でございますが、中央教育審議会の答申は、今後の学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について適切な意見を述べており、これを尊重して、国民の合意を得たものから順次実現をしてまいりたいと考えておるのであります。しかし、このたびの教員の給与改善の措置は、子供を導く先生によき人材を得て、先生がその情熱を安んじて教育に傾けられるような条件をつくりたいという、かねてからの考えを実現に移したものであります。

 第三は、教員に優秀な人材を確保するためには、教育の特殊性を勘案し、魅力ある職場をつくることが基本的に必要であるとの趣旨の御発言でございます。職業の選択は、単に給与面からだけではなく、社会的評価、個人の適性、職業観等種々の要因に基づいてなされるものであります。教育職員が安んじてその情熱を教育に傾け得るように、その給与を改善することは、人材確保の最も重要な要件の一つであるものと考えておるのであります。(拍手)このほかにも、たとえば教育職員の海外派遣とか、資質及び社会的地位の向上のための諸施策についても、逐次考慮をしてまいりたいと考えます。しかし、反面、教育職員自身も、職責の重要さに思いをいたし、いやしくも違法なストなどの行動に走って、みずからの社会的評価を低めるようなことがないように、自重自戒をすることを切に期待したいのであります。(拍手)

 最後の問題は、教育行政は国民の合意を得て、話し合いの上に立って実施すべきであると思うが、いかん。そのとおりでございます。教育は、政府のものでも、また教育者自体のものでもありません。国民すべてのものである。全く同感であります。(拍手)教育行政は、国家の将来にかかわる重要な行政であり、当然国民の合意を得て行なわるべきものであります。そのためには、国民各層各界の意見を謙虚に聞き、施策に反映してまいらなければならないと考えますが、今日の議会制民主主義のもとにおきましては、最終的に国民の意思は、議会で制定をされた法律及びそれに基づく政令規則等の規定によってあらわされるものでありまして、一部の団体の意見等によって左右さるべきものでないことは、言うをまちません。(拍手)また、私が、報道によると本法案に対して消極的であったのではないかとの私見が述べられましたが、私は本措置に対し最も強い推進論者でありましたので、念のために申し添えておきます。(拍手)
 清水徳松君にお答えいたします。日本列島改造論が土地の値上がりを刺激したのではないかという趣旨の御発言でございますが、日本列島改造論は、過密過疎の問題、公害、住宅、交通難、地価高騰等の国民の日常生活にかかわる諸問題を抜本的に解決をし、よりよく、より豊かなあしたの日本をつくり上げていくための考え方を提案したものでございます。

 地価高騰の原因は、基本的には宅地需給の不均衡にあると考えられるので、地方開発を推進し、国土の均衡ある利用、発展をはかって、大都市に集中する人と産業の流れを変え、宅地需要の分散をはかることが地価問題解決の抜本策であります。列島改造論もこの趣旨に沿ったものであります。

 ただ、当面の地価高騰の現象は、国民の住宅取得に支障を与え、地方開発の推進をも阻害することとなりますので、政府としては、土地利用基本計画の策定と土地利用規制の強化、土地取引の許可制、土地税制の改善、宅地の供給の促進、あるいは融資の抑制等の緊急措置を講じまして、地価の安定と秩序ある土地利用の確保をはかってまいる考えでございます。

 第二は、土地所有権に対する基本的な考え方いかん、公共優先思想に対してということでございますが、土地所有権は財産権の一つであって、憲法の保障するところでありますが、その内容は、公共の福祉に適合するように法律で定めることになっておるわけであります。私は、憲法の認める範囲内で最大限に公益優先の原則を確立し、広く公正に国民に利用されるようにすべきだと考えておるのでございます。そのために国土総合開発法、都市計画法、区画整理法等の運用によりまして、土地をより公共の用に供し得るようにはかってまいらなければならないと考えております。

 なお、線引き問題に対してどうかということでございますが、今回、三大都市圏の住宅化区域内の特定農地につきまして大幅な減税、融資、利子補給等を総合した宅地化促進のための法案を提出をいたしました。さらに、市街化区域をある程度拡大して、宅地供給の場をふやすことも有効ではないかと考えておるのでございます。しかし、線引きの見直しにつきましては、十分な調査を行なった上、波及する種々の影響を勘案しつつ慎重に行なう必要があると考えております。

 ただ、線引きを行なったために、また線引き内でなければ宅地にしてはならないということで、宅地の供給が押えられておるということは事実でございますので、線引き内の、すなわち市街化区域内の農地を宅地に転用が促進されるようなことをしないで、宅地はふえないのでございますから、その意味では逆に地価を上げることになっておるのであります。口では地価を下げろ下げろと言いながら、宅地転用ができないようなことをしておれば、地価を押し上げておるということになるわけでございますので、この間の事実は十分理解をしていただきたいと思うのでございます。(拍手)また、宅地の需要の最も多いところは、東京、大阪、名古屋であることは、何人も否定できないのでございます。この宅地というものは、自分で所有する宅地と住宅を提供するための宅地の二つに分けられなければなりません。これを混淆しておるところに議論がいろいろ存在するわけでございます。その意味におきまして、最も住宅や宅地を必要とする三大都市圏で宅地を提供するには、また居住面積を拡大するには、どういう方法があるか。二つしかないわけであります。

 その一つは、未利用地を利用することであります。そのためには、宅地並み課税などは認めなければならぬわけであります。これに反対しておって未利用地が利用されるはずはないじゃありませんか。そのほかに何がありますか、皆さん。(拍手)もう一つは、既成市街地の高度化による再利用でございます。いままでは一・七階ないし一・九階平均である既成市街地を、区画整理、再開発をすることによって環境を整備し、その何倍かの住宅面積を提供することができるのであって、土地の高度利用とはかく申すことを言うのでございますから、高層建築に反対をして住宅面積を提供せよ、そうすれば遠いところに住宅を求めるわけでありますが、そこでは、一坪地主などということでは、これはもう宅地問題の解決には全くならぬことを明確にいたしておきます。(拍手)

 第四は、都市計画区域外の原野の乱開発の規制についてでございますが、国土総合開発法案に基づく土地利用基本計画におきましては、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域または自然保全地域等を定めて、乱開発をこの法律によって防ごうとしておるのであります。

 これらの地域につきましては、都市計画法、森林法、農地法等によるほか、自然公園法及び自然環境保全法により、公害の防止、自然環境及び農地の保全、歴史的風土の保全、治山治水等に配意しつつ開発行為の規制を行なうこととしておるのでございますから、乱開発を防止し、より環境保全をはかるためには、どうしても新国土総合開発法を通してもらわなければならぬのでありますから、反対はなさらないようにお願いをいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第26号(1973/04/13、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 上坂昇君にお答えをいたします。まず第一間日は、実質的な円切り上げに追い込まれた原因は、政府の内政面における福祉重点への施策転換が進まなかったことにあるのではないかという趣旨でございますが、さきに閣議決定された経済社会基本計画でも明らかにされておりますように、最近の内外情勢の変化に対応して、従来の成長優先の経済構造から、国民福祉と国際協調を志向した経済構造へ転換をはかることが、基本的に重要であると考えておるのであります。政府としては、今後とも、社会資本の整備、社会保障の充実等の福祉政策を積極的に展開するとともに、公害対策の強化、週休二日制の普及等につとめてまいる考えであります。

 第二点は、固定相場制復帰への時期いかんという趣旨の御発言でございますが、政府としては、今後の通貨情勢の推移と、為替市場の動向を見守り、円の相場の適正な水準を見出した上で、適当な時期に固定相場制へ復帰することが望ましいと考えておるのであります。

 第三点は、この際、列島改造論による国土総合開発は取りやめてはいかんという趣旨の御発言でございますが、先ほども述べましたように、輸出優先、生産第一から、社会資本の拡充、生活環境の整備、福祉社会の建設、国民福祉の増進へと前進をはかってまいりたいと考えております。自然と人間社会との調和した豊かな環境を、国土全域にわたりつくり上げていくための必須の政策として、列島改造による国土の総合開発は急を要するのでございますから、何とぞ御理解いただきたいと思います。(拍手)
 山崎平八郎君にお答えをいたします。今後の経済成長のテンポ、産業構造の方向及び農業の位置づけ等についてまず申し上げますが、政府は、従来の生産、輸出優先の経済運営を改め、国民福祉の充実を今後の基本的目標とし、産業構造も、重化学工業に傾斜したものから、知識集約化を中心とするものに転換をさせてまいります。また、この過程で、農業と他産業との生産性上昇の格差も次第に縮小し、農業の健全な発展が確保されるものと考えておるのであります。なお、今後五年間の実質経済成長率は、経済社会基本計画において述べておりますとおり、九%を想定しておるわけでございます。

 第二は、土地の乱開発に対する対策についてでございますが、乱開発による土地の無秩序な利用は、国民の限られた資源である国土の適正かつ合理的な保全に著しい支障をもたらし、農業、農村の破壊を招くことにもなります。早急に国土全体にわたって土地利用の秩序を確立し、その一環として農林地の適正な保全をはかる必要があるわけであります。新国土総合開発法案におきましては、全国土にわたり土地利用基本計画を作成し、土地売買等の届け出制度及び特別規制地域における土地売買の許可制度を設けることとしておるのであります。また、特定総合開発地域の制度を設け、計画的な開発を推進するための措置を講ずることといたしておるのであります。このような新国土総合開発法の運用とあわせて、農業、農村については、農業振興地域制度の推進、農地制度の適正な運用、農村地域の総合整備等を推進してまいりたいと考えておるのであります。

 第三は、いわゆる商品投機に対する政府の基本的対処方針等について言及されましたので、お答えをいたしたいと存じます。一部農産品価格の高騰に対処して、政府としては、輸入の増大、国内生産物の出荷促進、商品取引所における規制措置の強化、商社等に対する要請、警告等、各般の対策を講じてまいったことは御承知のとおりでございます。一部商品においては、すでに値下がりの傾向を見せておるものもあるわけでございます。なお、今後におきましても、投機的な動きに対しましては、必要に応じ、あらゆる手法を活用して、商社等に対する指導等を強化するとともに、今国会に提出をされておる生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案の成立を待ちまして、その活用により、買い占め等の弊害の除去をはかってまいりたいと考えます。

 最後に、農産物の自由化に対する基本方針について申し上げます。貿易の自由化につきましては、最近の内外の情勢にかんがみ、一般的にはこれを推進しなければならないと考えておるのであります。農産物の自由化につきましては、種々困難な面があることは十分承知をしております。生産者の理解を得ながら万全の体制を講じつつ、できるものから自由化を進めてまいりたい、こう考えます。(拍手)
 野坂浩賢君にお答えをいたします。第一は、農業と農村の新たな展開のための施策いかんという御発言に対してお答えをいたしますが、農業及び農村は、国民に食料を安定的に供給するだけではなく、国土と自然環境を保全し、健全な地域社会を維持する上で重要な役割りを果たしており、農業と農村の健全な発展なくしては、わが国経済の調和ある発展はないものと考えておるのであります。このため、農産物需要の動向に即した農業生産基盤の計画的な整備や農業団地の形成等を通ずる生産性の高い農業の育成をはかるとともに、農村の生産と生活を一体として、農村環境の総合的な整備を進めてまいりたいと考えております。

 第二は、農産物は極力国内で自給するという決意と、自給のための具体策についての御発言でござますが、国際分業論は、工業製品については妥当する面もあります。しかし、食料は国民生活の基盤をなすものでありますから、国内生産が可能なものは、生産性を高めながら、極力国内でまかなうべきであります。安易に外国に依存することは、国の政策としてはとるべきでないと考えておるのであります。

 このような観点に立って、主要農産物である米、野菜、果実、牛乳、乳製品、肉類、鶏卵等については、完全自給ないし八割以上の自給率を確保する等、農産物需給の動向に即して農業生産の確保をはかってまいりたいと考えます。このため、新たに土地改良長期計画を策定し、農業生産基盤の計画的な整備を進めるなど、生産、構造、価格、流通の各般の施策を進めてまいりたいと考えます。(拍手)
 津川武一君にお答えをいたします。農村は、申すまでもなく国民に食料を提供するというだけではなく、民族のふるさとであり、心のふるさとであり、魂の安息所であります。この農村が荒廃に帰するような状態で日本のあしたがあるわけはありません。その意味において、農業基本法を中心にしながら、長い展望に立ちながら、よりよい農村づくりを進めておることは御理解をいただきたいと思うのであります。

 第二は、オレンジなどの輸入自由化の要請にどう対処するかということでございますが、先ほども申し上げましたように、貿易の自由化につきましては、最近の内外の情勢にかんがみ、これを推進しなければならないと考えております。農産物の自由化は種々困難な問題がありますが、生産者の理解も得ながら、万全の対策を講じつつ自由化を進めてまいりたい、こう考えておるのであります。

 列島改造と農村との問題に対して言及がございましたから、この際、簡単に申し上げておきますが、日本は、明治、ちょうど百年前には一次産業比率は九〇%でございました。それが、先ほどから御指摘がございますように一七%を割ったのであります。しかし、アメリカの一次産業比率は四%であります。拡大EC十カ国の平均数字は六%であります。明治から大正、昭和へと百年の歴史を経ながら今日の国民総生産を拡大し、国民所得を拡大してきたことは、歴史が示すとおりであります。その中で、専業農家がアメリカ並みの四%になりつつあるということを考えるときに、農村に対して何をしなければならないかということをまじめに考えなければならないのであります。演説だけで農民はよくならぬのであります。(拍手)

 それは米にとってみても、国際価格の倍であります。三倍でも四倍でもいいということにはなりません。そのためには、国際競争力にたえ得るようなものとか、主食としてどうしても国内で確保しなければならないものであったならば、国際価格の倍であろうが二倍半であろうが、ある程度の確保をしなければならないのが政策の限界と考えなければならぬのであります。(拍手)ですから、社会主義体制の国の中で主食にも不足をしておる国の多いことは、如実にこれを物語っておるじゃありませんか。(拍手)でありますので、ただ現在のままに推移を許せば、一次産業比率の減少の部分は大都会に集中をし、さなきだに混乱の都会の環境はなお混乱するのであります。公害も、土地も、物価問題もどんどんと大きくなるのであります。農民であるというかもしれませんが、私も百姓の子であります。(拍手)やがては百姓に返る身であります。皆さん、そういう意味で、列島改造を進めることによって国土の水や、しかも一次、二次、三次産業の労働調整を行なう、そういう状態をはからずして、どうして一体日本の一次産業が、生活向上があるのでありますか。(拍手)

 いま兼業農家が多くなり、農業収入と兼業収入との比率が逆転しつつあるのは、これは事実じゃありませんか。それを否定して、いまの津川君のような発言だけでどうして一体農村がよくなるとお思いになりますか。だから私は……(「簡単にやれ」と呼ぶ者あり)簡単じゃありません。こういうことは、もっとちゃんと申し上げなければなりません。ですから、列島改造を行なうことによって農工商三位一体の、全国均衡ある発展をはかる以外に、一次産業や二次産業の均衡をはかることはできないわけであります。そういう意味で、列島改造を非難し、批判をしておって、ただ農村だけをよくしようといっても、それはできない相談であることを御理解いただきたい。(拍手)

 それから、農産物の価格保障対策に対して申し上げますと、現在米麦をはじめ畜産物、青果物、畑作物等、大部分の農産物を対象に価格政策を実施しております。今後は、野菜、果実、畜産物等の需要の拡大する部門を中心に価格政策をさらに拡充強化して、価格の安定につとめてまいりたい。以上。(拍手)
 瀬野栄次郎君にお答えいたします。第一は、農業政策のもととされておる農業基本法を再検討せよということでございますが、基本法施行以来、わが国農業は、農業生産の選択的拡大と生産性の向上を実現しつつ、農業従事者の所得と生活水準の向上を果たしてまいりました。他面、農業と他産業との生産性の格差の拡大、兼業化の進展、自立経営農家のシェアの低下等の現象が見られることも事実であります。

 しかし、農業基本法に定められている農政の基本的目標、及びその目標を達成するための根幹的施策の方向は、現在の情勢においても同じねらいであると考えられるのであります。したがって、農業基本法を再検討する考えはございません。政府独自の世界の農産物の長期需給見通しを立てよということでございますが、これは必要でございます。

 今世紀末になれば、地球上でもって不足のものは何か、水と主食であろうと、いまから予言せられておるのでありますが、それだけではなく、この一、二年間に非常に食糧の不足が告げられておるわけでございます。しかも、食糧の非常に大きな消費国であるソ連においても、アメリカから、両年度において千八百万トンから二千万トンの小麦を買い付けておるというような事情、それが日本やその他の国にまで大きな影響をもたらしておることは事実でございます。それだけではなく、もっと大きな消費国が非常に食糧に困っておるという事実は指摘するまでもないのでございまして、国際的に見た食糧の長期需給見通しを立てなければならないということは、御指摘のとおりでございまして、検討を進めてまいりたいと思います。

 第三点は、輸入の自由化問題でございますが、自由化がアメリカとの関係だけで行なわれるというようなことをお考えになっておるわけではないこともよく承知しておりますが、この際、一言いたしておきたいことは、南北問題いわゆる北側の持てる国と南の開発途上国との間を調整しなければならない人類の悲願、言うなれば世界の人類の平和を守るためにどうしても行なわなければならない南北問題の解決には、一次産品の無税化ということが大前提になっておることを、ひとつ知っていただきたいと思うのでございます。ケネディラウンドの推進、今年度から新国際ラウンドの推進が行なわれるわけでございますが、主要工業国といわれるような日本は、食糧の自給度を上げなければならないという要請と、同時に南北問題に大きく貢献をしなければならないのだという事実の調整が必要であることを、十分御理解賜わりたいのでございます。

 しかし、自由化に対しては、国内にも困難な問題がありますので、生産者の理解を得ながら万全の体制を講じた上で自由化を逐次進めてまいりたい、こう述べておるのであります。

 それから、農産物の投機的買い占め等に対しての御発言がございましたが、御承知のとおり、出荷の促進、商品取引市場における規制措置の強化、商社に対する要請や警告等々の措置を行ない、値下がりも行なわれておるのでございますが、今国会に提出をしております生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律、これはもうぜひ、いっときも早く通していただきたいのです。私がこういうところで、こうして国会で御審議をいただいておる過程におきましても、この法律は、ほんとうに一日もいっときも早く必要である。(拍手)そうすれば、それだけ物価が下げられるのです。国民大衆の要請に応じられるのです。私は、そういう意味で、心からお願いをいたします。(拍手)

 それから、あとは農林大臣からお答えをいたしますが、最後に、出かせぎの問題を申し上げますと、これはお互いが、政党政派を越えて解決をしなければならぬ問題であります。この出かせぎの現状は、政党政派は別にしても、この事実に目をおおうことはできないのでございます。

 それは営農規模を拡大するといっても、日本の地形、地勢上の制限から考えると、おのずから限界が存在するのであります。しかも、日本の半分は、特に米の主産地は、豪雪単作地帯であります。そうすれば、一年間にほんとうに純農業に従事できる月というものは、二カ月間しかないのであります。昔のように、炭を焼くこともできません、俵をつくることもできません、むしろを織ることもできないんです。そうすればどこに行くかというと、結局冬季は、農繁期以外のときは、公共事業に従事するか、公共事業のできない降雪期には大都会に出かせぎを余儀なくせられるのであります。

 だから、列島改造論においては、一次、二次産業の調整を行なおうとしておるじゃありませんか。(拍手)農村地帯において列島改造論が高く評価されておるのは、そのゆえんであります。(拍手)事実に目をおおってはいけません。皆さんも、事実を十分御検討いただきまして、列島改造論を推進していただければ、このような悲惨な出かせぎはなくなるのであります。(拍手)どうぞ御理解をいただきたい。(拍手)
 稲富さんにお答えいたします。白書の提出が非常におそくなった、はなはだ遺憾であるという御指摘でございまして、これは、これからできるだけ早く提出をいたしますように努力をいたしますから、ひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。それは、漫然としておってきょうになったわけでないのでございます。社会経済環境の変動に対応しまして、農業及び農村も、きわめて激しい動きを示しております。このような動きを的確に把握して、将来の農政の指針として役立たしめるためには、可能な限り最近時点までの諸統計や情報を収集し、動向分析に万全を期する必要があったためでございますので、これは、両々相まつように努力をいたしますので、御理解をいただきたい、こう思います。

 農業基本法を抜本的に改正せよということでございますが、これは、先ほども申し上げたとおり、確かに経済成長が著しかったために、農業と他産業との間の生産性の格差の拡大や、兼業化の問題等が起こっております。しかも、自立経営農家のシェアが低下をしておる現象もあらわれておるのでございますが、しかし、それかといって、いまの農業基本法が必要でないということではないのでございます。農業基本法は、農政の基本的目標、その目標を達成するための根幹的施策の方向は、現在の情勢においてもまだ同じだと考えておりますので、農業基本法をいま改正することは考えておらないということを述べておるわけでございますが、農村の実態、将来的な問題、国際的な情勢からどうしなければならないという具体的な問題については、十分検討を進めてまいりたい、こう考えるわけでございます。

 それから、稲富さんは農業基本法がつくられるころからずっと御主張になられておる農業の専門家でもございますから、よくおわかりであろうと思うわけでございますが、農村というのは、ただ農村を保護するという状態だけでは、農村の生活はよくならないわけであります。それは、世界の国々の状態移り変わる歴史をひもとくまでもなく、一次産業を主体としておった人類が、二次産業へ、三次産業へとどんどんと移ってきておるのでございます。それは、先進工業国のみならず、後進国、開発途上国も、先進工業国が歩いたと同じ道をいま歩み続けておるのであります。それは、年に一回とか二回しか生産ができない一次産業というものと、空気からものを取って生産をしようというような二次産業と、それを取り扱おうというような三次産業を比べてみて、その生産性に差のあることはやむを得ないのであります。しかし、二次産業や三次産業の収益の中から一次産業を保護しなければならないというのは、生命を維持するために、一次産業は欠くことのできないものであるからであります。しかし、それにはおのずから限界がございます。

 先ほども申し上げましたように、地球上の平和を維持するためには、現に九〇%も一〇〇%も一次産業で生きておる国もあるのでありますから、その一次産業と、われわれ主要工業国の間でお互いに協力をすることによって、それは自然の協力でなければなりません。自然の国際分業でなければなりません。そういう状態においてのみ平和が維持できるのでございますから、新ラウンドの推進が必要であることもまた事実でございます。その中において、日本の農業、日本の一次産業をどう位置づけ、日本全体の産業の中でどうしなければならぬかというのが理想でなければならぬわけであります。ですから、ただに農業だけをどこまでも、一〇〇%自給をするのだということで、国際価格の三倍になっても五倍になっても、そうしなければならないのだという農政は存在しないのでございますから、おのずから限界の中における農政であることを、農民も、またわれわれも十分理解をし合わなければならぬわけであります。それは、農村に生まれ育って、こうして出てこなければならない私が、真に叫んでおるのでありますから、これはひとつ理解をしていただきたい。(拍手)

 しかも、農村の青年に希望を持たせなければならない、それはそのとおりであります。魅力のない農村に青年が居つくわけはありませんし、青年の居つかないところに嫁が来るわけはありません。これはまじめなことなんです。そういう意味で、農政というものを二次産業や三次産業と同じ収益にあげるには、いまの二町歩や三町歩や五町歩や十町歩でやれるわけはありません。そうすれば、ほんとうに国際競争力に耐え得るような農村を考えれば、いまの二八%程度の一次産業比率は、十分の一近くなるでありましょう。専業農家はわずか四%なのであります。ですから、そういうことになれば、どうしても二次産業や三次産業へ、さなきだに混乱をしておる大都会に過度に集中をせざるを得ないのです。だから、いま公害や交通や住宅で困っておる大都会から、働く場所を提供し、一次産業と二次産業が労働調整が可能なときに住宅も解決できるし、社会環境も整備されるし、人間生活も確保され、一次、二次、三次産業の調整ができるのだということを申し上げておきます。それが、農村青年に対して夢と希望を与えることであるということをすなおに申し上げておきます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第27号(1973/04/17、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 小川省吾君の御質問にお答えをいたします。 まず第一は、地方自治に対して基本的にどのように考えておるかということでございますが、住民の福祉に直結する事務は地方公共団体が自主的に処理するようにすることが、地方自治の本旨でもあり、望ましい国民生活を築くゆえんでもございます。したがって、いたずらに中央に権限が集中することは避け、地域における問題は地域で解決できるように配慮しておるわけでございます。地方自治は民主主義の基本であり、その充実強化のため、今後とも努力を続けてまいりたいと考えます。

 第二は、日本列島改造論の中での地方の広域行政の推進並びに府県制度の根本的な検討についての御発言がございましたが、列島改造論で地方自治体について所見を述べておりますことは、御指摘のとおりでございます。府県制度は、明治の時代から長い歴史を持つものであります。しかし、通信、情報、交通等の急速な発展をしております現在、この府県制度に対していろいろな議論が存在をすることは事実でございます。特に、国の出先機関と自治法による府県制度の間には、二重、三重という議論も存在をするのでございます。その意味で、明治の時代に郡制が行政区域として廃止をせられたことにかんがみ、都道府県制度に根本的にメスを入れてみる必要があるのではないかという議論が存在をいたしますので、それらの問題に対して論を試みたわけでございます。なお、一つの議論といたしましては、地方自治体として望ましい姿は、いまの市町村よりも大きな、明治時代の郡制以上のものが望ましい、そうすることが真に地方自治の第一線としての市町村としてふさわしいのではないかという議論が長く続けられておることも、御承知だと思うわけでございます。

 しかし、これらは、あくまでも私見として世に議論を提供したわけでございまして、これらを直ちに実行しようという考えに立っておるわけではございません。世論の趨勢を十分見きわめながら、慎重に検討を続けるべきだと考えておるわけでございます。 あくまでも、府県制度が他のものに置きかえられ、よしんばそれが道州制であり、また国の出先機関との統合等がはかられるにしても、地方自治の基本的精神は守ろうということに対しては、全く人後に落ちないということを明らかにいたしておきます。(拍手)

 それから次は、地方事務官制度を廃止すべきではないかとの御所論でございますが、地方事務官制度の廃止につきましては、行政改革の一環として検討を続けてきておりますことは御承知のとおりだと思うわけでございます。この問題は、各省の地方行政機構のあり方やそこに勤務しておる職員の身分の問題に関連するだけに、なかなか早急に廃止のための成案を見るに至っていないものでございます。しかし、本制度は暫定的な制度でもありますので、できるだけすみやかに結論を得るよう積極的に取り組んでいく方針であります。残余は自治大臣から答弁をいたします。(拍手)
 竹村幸雄君にお答えいたします。まず第一番目は、流通産業の自由化の時期、自由化による影響、対策等について問われたわけでございますが、資本の自由化につきましては、わが国経済の国際化を一そう推進していく見地から、積極的にこれを進めていく方針であり、目下、外資審議会において具体的内容を検討願っておるのでございます。しかしながら、小売業につきましては、小売商数百四十万のうち、家族経営のものが百十万を占めておるのでございます。きわめて零細性が強いという実情にありますので、その資本自由化は、経済的にも、社会的にも混乱が起こらないよう、小売業の近代化施策の進展と歩調を合わせて進める必要がありますので、慎重に対処してまいりたいと考えるわけでございます。

 第二の問題は、アメリカ国内の保護主義とわが国の自由化についての御指摘がございましたが、先般発表されました米国の新通商法案には、若干の輸入制限条項が加えられておりますことは事実でございます。しかし、万が一にも長期的な世界経済の発展にそごを来たすような事態を招くことのないよう、また、これらの条項が成立した場合にも、これが乱用されることのないよう、十分アメリカ側と話をしてまいりたい、こう考えるのでございます。わが国といたしましては、今後、国際経済社会の均衡ある発展のためにも、国内産業の行動の高度化のためにも、資本の自由化や輸入自由化、輸入ワクの拡大、輸出の調整など、やるべきことはやらなければならないのであります。また、アメリカに対しましても、インフレの抑制、輸出競争力の強化、対外投資の問題等、アメリカ自身で努力すべき点は主張してきたところでございますが、これらの問題は、次第に真剣な政策課題となってきておるわけでございます。いずれにしましても、ここ二、三年における日米両国間の経済の変化があまりにも大きかったために、多少の摩擦が存在することは事実でございますが、従来からきわめて緊密な互恵関係にある日米経済関係の基調は、あくまでも不変なものと考えておるのであります。

 第三は、わが国の経済機構に対してのお話でございましたが、輸出第一、生産第一、重化学中心の工業から、社会福祉の充実へ、社会資本の整備、人間環境の充実整備へと、また、構造的には知識集約的産業に転換をしてまいる方向であることは、経済社会基本計画が示すとおりであることで御理解をいただきたいと思います。

列島改造につきましては、いろいろ御批判もございますが、間々申し上げておりますとおり、高度成長の過程において、都市に人口や産業が過度に集中をし過ぎたところに、社会環境が悪化し、公害が拡大をされ、人間生活の環境整備のためには、どうしても新しい手法を必要とする状態にあることは言うをまちません。土地が上がり、住宅が不足し、水が不足をしておる事実を指摘するまでもなく、国土の総合開発が必要であることは、申すまでもないことでございまして、国民の支持と理解を得ながら、列島改造は強力に進めてまいりたいと思います。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第28号(1973/04/19、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 渡辺惣蔵君にお答えをいたします。第一問は、列島改造論についてでございますが、列島改造が必要であるということは、何人もいなみ得ない事実だと思います。それは、現に総人口の三二%余の人々が国土の一%に集中をしておるという現実から、公害問題、住宅の不足、地価の値上がり、物価問題、すべてが起こっておるのであります。この現実を無視して現実の政策は立案できないことを十分御理解いただかなければならぬのであります。(拍手)政治は観念では片づきません。現実をあくまで土台としてよりよき理想の政策を推進せずして、どうして前進があるでありましょう。(拍手)しかも、空気をきれいにしなければならない、一次産業と二次産業との調整を行なうことによって、労働力を活用しなければならないという事実は、日本が当面しておる現実であります。アメリカのカリフォルニア州よりも小さい日本に、一億一千万人近い国民が、世界で二番目の生産をあげておるという事実を前提として考えるときに、国土がすべて前提となって調整され、理想的な姿で改造されなければならぬことは論をまたないのであります。(拍手)しかも、社会資本を蓄積し、生活環境を整備し、そして、真に望まれる社会福祉を完成するためには、国土の総合開発を除いて、現実的政策のないことを私は明言いたします。(拍手)

 ただ、参議院で述べたことはいかなる理由によるかということでございますが、この列島改造論というものは、一つの指数を示したものでございますが、その指数は、国民総生産の指数をとっておるわけでございます。しかし、国民総生産を無制限に拡大しようというのではありません。理想的な社会福祉や社会環境や人間環境を整備するためには、そして一〇%の成長が続けばこのようになるし、八・五%の成長が続けばこのようになるしというような意味で、現実に国土の総合開発を緊急に進めずんば、この理想を達成することはできないという趣旨に出る著書でございますが、列島改造の結果、福祉状態はどうなるか、生活環境はどうなるかという面を強調する面が少なかったので、その分を時期を見て増補いたします、こう述べておるのでございまして、列島改造を否定などはいたしておりません。(拍手)

 それから、商社や不動産会社等の保有しておる土地を放出し、住宅の用に供する等のためにはどうするかというようなことでございますが、これも間々申し上げておりますとおり、法人の土地譲渡益に対する課税の強化、特別土地保有税の新設、国土総合開発法の改正による土地取引の届け出、勧告制、特別規制地域における土地取引の許可制の新設等の施策を講ずることにしておるわけでございます。また、昨年以来土地融資の抑制をはかっておるところでございます。

 また、宅地の供給を促進するためには、市街化区域内の農地の宅地並み課税の措置とあわせて、特定市街化区域農地の固定資産税の課税の適正化に伴う宅地化促進臨時措置法案の御審議を願っておるところでございます。自由民主党や政府は自由を基調といたしておりましたので、いままで規制が不足であったことは事実だと思います。その意味で、このような法律案は、私は国有や公有を前提とする考えには同調できませんが、これこそ渡辺さんからこういうものを提案すべしと言われるような種の法案であるとさえ考えておるのでございます。(拍手)

 第三点は、特別規制地域制度と特定総合開発地域制度との関係いかんという御発言でございますが、特定総合開発地域制度は、関係市町村及び地域住民の意向をただしつつ、新都市の開発などを総合的に行なうための制度でございます。特別規制地域制度は、投機的土地取引による地価の急激な上昇を緊急に防止するための制度でございます。両者は、制度の目的を異にしていますが、密接な関連を有しておるわけでございます。すなわち、新都市の開発などを行なうのに適当な地域につきまして、総合開発計画が最終的に決定されるまでに、投機的土地取引等による地価の急上昇が生じ計画の円滑な推進が阻害されるおそれが強い場合においては、特別規制地域制度を活用しつつ、特定総合開発地域制度を運用していくことになるわけでございます。

 次は、発電所や石油中継基地等の建設にあたって、地元との紛争の多発が予想されておるが、本法案の趣旨をどのように生かしていくかという意味の御発言でございましたからお答えをいたします。本法案におきましては、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全をはかりつつ、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展をはかることを基本理念として、国土の利用、開発を行なうことを明らかにしておるわけでございます。発電所やCTS基地の建設に際しましては、環境保全に十分留意するとともに、都道府県知事を通じて、地方の意向を十分尊重して決定することはもちろんのことでございます。さらに、地元福祉の向上をはかり、あわせて発電所立地の円滑化をはかる措置といたしまして、政府は発電用施設周辺地域整備法案を本国会に提案しておるところでございますので、御理解、御賛成をいただきたいと思うわけでございます。

 総理大臣の知事に対する指示権は地方自治を抑圧するという趣旨の御発言でございます。国土総合開発法案は、土地利用基本計画をはじめ、特別規制地域や特定総合開発地域の指定等については、地方自治尊重の立場に立って、すべてその権限を都道府県知事にゆだねることにいたしておるわけでございます。第十四条や第二十五条の指示権も、特別規制地域や特定総合開発地域の性格に照らして、国土の総合開発に関し国の立場から特に必要がある場合に限り認めることにいたしておるものでございまして、中央集権を考えておるわけではないわけでございます。特に総理大臣の調整権限につきましては、これは必要やむを得ざる場合を想定して規定をいたしたのでございまして、地方自治を乱したりする考えは毛頭ないことは、渡辺さんからも十分御理解がいただけると思うのでございます。国土総合開発の推進が現下急を要しておるということを前提にして考えていただくときには、国も自治体も、お互いに責任を分担し合いながら、急速な解決をはからなければならぬわけでございますので、このような条文の制定を企図したものでございまして、真意を理解いただきたいと思います。(拍手)
 浦井洋君にお答えを申し上げます。本法案は、大資本奉仕、生活環境破壊の政策を新たに推し進めるものではないかとの趣旨でございますが、国土は、現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ諸活動の共通の基盤でございます。本法案は、公共の福祉と自然環境の保全を優先するという原則を前面に押し出して、片寄った国土利用を将来に向かって再編成し、国土の均衡ある発展と健康で住みよい地域社会を形成することを目標にいたしておるのであります。いままでの新産業都市や、それから国土総合開発法というようなものは、値上がりばかりもたらしたものであって、罪悪のごとき感じを述べられたのでございますが、確かに、都市の過度集中等によって、公害等のマイナス面が起こったことは事実でございますが、そうすることによって戦後の復興をなし遂げ、経済成長をなし遂げ、しかも国民所得を増大させ、完全雇用を実現したという事実を忘れてはならないのであります。(拍手)完全雇用も達成せず、所得も上がらず、経済も成長せずして公害が起こっておるならば、その対策はたいへんでございますが、国際競争力が培養され、今日の経済力ができたのでありますから、公害の防除もできますし、しかも国民生活の充実も可能なのであります。政治家は、それに取り組まなければならない責務を有することを自覚いただきたい。(拍手)

 なお、この法案は、民主主義、地方自治の本旨に反するということでございましたが、国土の総合開発は、基礎的な調査を積み重ね、地域住民の意向をただしつつ、地方自治及び議会制民主主義のルールにのっとり実施されなければならないことは、言うをまたないわけであります。また、開発の利益は地域住民の福祉に均てんさせていかねばなりません。国土総合開発法案におきましては、これらの点についてできる限り配意をしておるのであります。さらに、この法案は、国土総合開発の基本法としての性格を明確にし、国及び都道府県の責任を明らかにしておるものでございます。

 第三は、審議会の委員等についての御指摘でございますが、選任につきましては、本法の目的が公正に行なわれますよう慎重な配慮をいたしたい、こう考えます。それから、もう一つ申し上げますと、いままで自由民主党が、また政府が、いろいろな積極政策をやってきたことについての責任問題に言及されましたが、自由民主党は、すでに古い時代に、都市政策大綱の名において、国土の総合開発と都市の改造をきめておるのでございます。この方針をきめながら、非常に大きな広範にわたる制度でございましたので、立法措置等に対しては今日に至ったわけでございますが、国土総合開発法等を含めて、いま御審議をいただいておるものをもう少し早く御審議をいただけば、もっと合理的な成長ができたろう、その意味では少しおそかったと思いますが、しかし、一日も、いっときも早く御審議をいただくことによって、これらの問題を解決していかなければならない、こう基本的に考えております。(拍手)

 最後に、一言申し上げますが、これらの法律案が混乱を増すようなことを前提にお話をしておられますが、日本列島改造政策を推進しないで、大都市への人口、産業の集中を放任するならば、より深刻な公害問題が起こる必然性があるということを十分御理解をいただきたい。(拍手)
 岩垂寿喜男君にお答えをいたします。まず、地方財政問題についてでございますが、地方団体が、地域の実情に応じまして住民の福祉水準の向上をはかっていくためには、長期の財政計画の策定を含め、地方財政全般にわたって検討を加え、地方財源の一そうの充実をはかり、地方自治の基盤の強化につとめる必要があることは申すまでもないことでございます。地方財源強化の方策につきましては、国、地方を通ずる税財政制度の基本的なあり方に関する重要な問題として、地方制度調査会、税制調査会などの意見も聞きながら、鋭意勉強してまいりたいと考えるのでございます。東畑さんの発言につきましては、十分勉強いたします。

 第二の問題は、国庫補助事業、用地難、資材の問題等に対しての御指摘がございましたが、地方公共団体の国庫補助事業の増大は、住民の要望の強い地方道、公園、下水道等の生活関連施設を重点的に伸ばしたことによるものでございます。これらの事業を円滑に施行するために必要な公共用地につきましては、土地基金、公共用地先行取得債等の活用によりまして、先行的に取得をすることにつとめてまいりましたが、今後とも、これらの制度の拡充強化をはかってまいりたいと考えるわけでございます。建設資材につきましては、鉄鋼、木材、セメント等については、諸般の措置を行なっておるわけでございます。

 なお、四十八年度予算の執行につきましては、一般会計のみならず、特別会計、政府関係機関等を通じまして、災害復旧とか生活環境、積雪寒冷地関係というような事業の緊要度と地域の実情を十分勘案をしながら、年度内に弾力的に運用することによりまして、資材が高騰しないようにということを十分調整をしてまいりたいと考えるわけでございます。東京のふるさと計画というものにつきましては、これはもう十分理解をいたしております。自由民主党が作成をしたのでございますから、総裁が理解をしないはずはないのでございます。これは、私は理解をいたしております。私にも郷里はございますが、いままでの一生を通じますと、その三分の二以上も東京に住んでおるのでございます。東京はお互いのふるさとでもあるわけでございますので、東京を理想郷としてこれをつくりたいという考えにおいて、人後に落ちるものではありません。東京をよくしよう、理想的な東京をつくろうという考えに立脚したふるさと運動でございまして、選挙などという狭義に立ったものではないということを十分御理解をいただきたい、こういうことでございます。(拍手)
 小濱新次君にお答えをいたします。まず第一は、住民生活に密着した事務と財源を地方に移譲し、住民本位の行政を確立せよとの趣旨の御発言でございますが、行政はできる限り住民の身近なところで、住民の意思を反映しながら処理されることが望ましいことは言うまでもありません。こうした観点からすれば、地域で処理できるものについてはできる限り地方公共団体に事務の配分を行ない、それに応じて財源措置を講ずることが必要であります。

 一方、全国的な視野に立って地域間の不均衡を是正し、国土の均衡ある発展と国民福祉の向上をはかるという観点もあわせて考慮しなければならぬこともまた当然のことであります。これらの問題は、国、地方を通ずる行財政の基本的な問題でありますから、先ほども申し述べましたように、地方制度調査会、税制調査会等の意見も聞きながら、今後も検討を続けてまいりたいと考えておるのであります。

 第二は、住民福祉優先の税制に転換すべきであるとの趣旨でございますが、電気ガス税、固定資産税等の特例措置は、住民福祉の向上、地域の発展の観点から十分再検討を加える必要があると考えておるのであります。

 第三点は、人口急増市町村に対して、総合的な関連公共施設の整備をはかるため、特別財政措置法のごときものを制定してはどうかという意見を含めての御発言でございますが、今回、児童生徒急増地域における小中学校の校舎建築費にかかる国庫負担率の引き上げを中心として、人口急増地域対策の充実をはかることといたしましたが、この種の問題は、今後とも勉強、検討を続けてまいりたい、こう思います。

 地価上昇の原因は改造論である、地価抑制のための基本法を制定せよとの趣旨でございますが、地価上昇の原因は改造論であるという断定はひとつおやめいただきたい。地価高騰の原因は、基本的には宅地需給の不均衡にありますので、地方開発を推進し、国土の均衡ある利用、発展をはかって、大都市に集中する人と産業の流れを変えて、宅地需要の分散をはかることが地価問題解決の抜本策であります。(拍手)列島改造構想もこの趣旨に沿ったものであることは申すまでもないのであります。他方、当面の地価高騰を抑制し、宅地供給を促進していくために、政府は金融面、税制面等から各般の土地対策を講じておりますことも御承知のとおりであります。また、国土総合開発法案において、土地利用基本計画の作成と土地取引及び開発行為の規制に関する制度の充実をはかることといたしており、これが土地対策の基本的役割りをもになうものと考えておるのであります。一言付言いたしますが、地価の抑制は、土地の効率的利用、たとえば立体化のごときもの、もう一つは未利用地域の利用、それは市街地の未利用地である農地の宅地並み課税等でございます。第三は、大都市に集まっておるものが局地を利用するということになれば、需給がアンバランスになって地価は必然的に上がりますので、国土全体を合理的に利用する、これ以外にないことを十分御理解賜わりたい。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第29号(1973/04/24、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 竹内猛君にお答えをいたします。第一は、今後の森林、林業政策のあり方についてでございますが、政府としては、森林の公益的機能の維持増進と、森林生産力の増大をはかる観点から、今国会に提案している国土総合開発法案におきまして、森林として保全すべき森林地域を定めることといたしておるのであります。また、これと関連いたしまして、森林法改正案において、森林の無秩序な開発行為の防止をはかることを考えております。さらに、森林資源に関する基本計画に基づく適正な森林施策の推進、第四次治山事業五カ年計画に基づく治山事業の計画的推進、林道、造林等の林業生産基盤の整備、林業従事者の福祉の向上と養成確保、外材輸入の円滑化等の諸施策を講じてまいりたいと考えるわけでございます。

 第二は、林業振興決議についてでございますが、林業振興決議のうち、造林事業の積極的拡充、林道整備の促進、自然保護に配慮した森林施業の拡充、国有林治山事業に対する一般会計負担の拡充等につきましては、すでにそれぞれ所要の措置を講じてきたところであります。その他の事項につきましても、最近における森林、林業をめぐる諸情勢の変化等も十分考慮に入れまして、鋭意検討を進め、実現をはかってまいりたいと考えます。他の問題については、所管大臣から答弁をいたします。(拍手)
 米内山義一郎君にお答えをいたします。第一は、森林施策の基本についてでございますが、本件につきましては、先刻竹内君に申し上げましたので、御了承賜わりたいと存じます。国有林につきまして申し上げますと、国有林野の持つ公益的機能を重視し、森林施業を実施するとともに、民有林、国有林を通じまして、治山事業の計画的推進、林道、造林等の林業生産基盤の整備、林業構造の改善、林業従事者の福祉の向上と養成、確保等の諸施策を積極的に進めてまいりたいと考えるわけでございます。

 次は、買い占めや乱開発と列島改造論との関係について申し上げたいと存じます。日本列島改造構想は、過密過疎問題公害、住宅、交通難、地価高騰等国民の日常生活にかかわる諸問題を抜本的に解決するための考えとして提案をしたものでございます。地価上昇の原因は、基本的には宅地需要の不均衡や土地利用の混乱にありますので、地方開発を推進し、国土の均衡ある利用を計画的にはかりて、大都市に集中する人と産業の流れを変え、宅地需要の分散をはかることが問題解決の抜本策であります。列島改造構想もこの趣旨に沿ったものでございます。他方、当面の地価高騰や乱開発の現象は、国民の住宅取得に支障を与え、地方開発の計画的推進を阻害することにもなりますので、政府としては、税制、金融その他各般の土地対策を講じておるところでございます。国土総合開発法案とこれに関連する各種法案の中で、土地利用基本計画の策定と土地取引及び開発行為の規制に関する制度の充実をはかることといたしておりますので、森林法の一部改正案もその一環であると御理解をいただきたいのであります。以上。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第30号(1973/04/26、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 山中貞則君にお答えをいたします。まず、今回の有額回答の問題でございますが、国鉄労使が交渉の場で有額回答が行なわれたわけでございますが、それは昨年の裁定額と同額であり、八百億円余の財源を必要といたしますことは御承知のとおりでございます。昨四十七年度も、国鉄運賃法を提出、御審議をいただいておったわけでございます。国鉄財政の状態からいたしますと、仲裁の実施はしごく困難な状態であったわけでございますが、しかし、国鉄の持つ公益性を考えながら、あえて仲裁を実施をいたしたわけでございます。ともかく、今回の有額回答と合わせれば、ほとんど今年度の運賃値上げ分はそれをもってすべてが終わるというようなものでございます。(拍手)

 そういう状態から考えますと、国鉄当局及び政府が、いかに真摯な態度で対処しておるかは理解ができると思うのでございます。(拍手)それは、国鉄の持つ公共性、国民生活に不可欠なものであるという国鉄の地位を考えながら、政府も誠意をもってこれに対処するとともに、労働者側の良識に訴えておるわけでございます。政府も誠意をもって対処いたしておるのでございますから、組合側の諸君も、その公的責任を十分心から自覚をせられるように期待をしたいのであります。

 次は、スト権奪回を目的とした違法ストについての御質問でございますが、公務員等のスト権の問題につきましては、現在、公労使三者構成の公務員制度審議会において鋭意審議中であり、政府としましては、その結論を待って対処する所存なのであります。関係組合においても冷静な態度でその結論を待つべきだと思うのであります。もっぱらスト権奪還というような、本来国会において審議を尽くし、決定をすべき事項を目的として行なうストライキは、いわゆる政治ストでありまして、議会制民主主義に対する挑戦以外の何ものでもないのであります。(拍手)

 先ほども御指摘がございましたが、最高裁が示した判例についても、自分の目的に沿ったものであればこれを尊重し、自分の目的に沿わないものであればこれを弾圧だというような考えをもととして、民主国家が成立をするわけはないのであります。(拍手)待遇改善など経済的要求に対しましては、政府としては従来から理解を示しておるところでありますが、政治ストに対しましては、特にきびしく対応せざるを得ないのであります。このような、法治国家を否定し、議会制民主主義を無視するような行為は直ちに中止すべきであります。(拍手)

 ストをやった者を処分しないと約束しなければストをやめないという労組の態度等についての御発言でございますが、法律の明文による禁止に違反して争議行為を行なった者に対して、法律の定めるところに従い厳正な処分が行なわれることは、法治国家として当然のことであります。(拍手)国民の足である国鉄のストライキによって、何の罪もない乗客の生活を奪うようなことを続けるならば、労組といえども勤労者から手痛い打撃を受けることは、今回の暴動事件が痛切に教えるところであります。(拍手)組合員諸君の自粛、自戒を重ねて要望したいのであります。(拍手)

 なお、ストにより不足をする生活必需物資の確保及び値上がり防止等の対策についての御発言がございましたが、本日以降、国鉄違法ストの激化が予想されるのでありますが、その場合には生活必需物資等の不足及び価格の上昇等が懸念されます。そのために、昨日政府は、違法スト期間中、必要に応じ、トラックによる生活必需物資の代替輸送を行なうことといたし、運送命令の発動及びこれに伴う所要の補償措置を講ずることにいたしたわけであります。生鮮食料品の需給状況に応じ、タマネギ及び冷凍水産物を放出する等、七項目の対策を取りまとめたところでございます。これらの対策によりまして、生活必需物資等の供給の確保と価格の安定を緊急にはかってまいりたいと考えておるのでありますが、いまからでもおそくありません。ストはやめることが国民生活を維持するために必要なのであります。(拍手)

 次に、連休の夢を砕くストライキをどう考えるかということでございますが、二十四日の自然発生的な暴動事件が示すごとく、国労、動労がたび重なる順法闘争という名のサボタージュを行ない、違法ストを行なえば、国民の反感を買うだけではなく、国民から手痛い打撃を受けることになるのであります。私が申すまでもなく、労働運動は、その掲げる目標だけではなく、手段においても、国民大衆の共感を呼ぶものでなければ、一歩も前進するものではありません。(拍手)国民大衆の連休の楽しい行動プランの実現のためにも、組合員諸君の自戒を要望してやまない次第であります。(拍手)

 最後に、春闘共闘のスト権を実力でかちとろうという態度についての御質問でございますが、公務員等の労働基本権の問題については、先ほど申し上げましたとおり、現在、公務員制度審議会において検討しておる段階でございます。したがって、同審議会の答申によって対処するのが筋であります。力によってスト権を獲得しようとする考え方は、議会制民主主義に対する挑戦であり、きわめて違法性の強いものであることは言うをまちません。これについて、政府としては厳正な態度をもって臨みたいと考えておるのであります。(拍手)
 角屋堅次郎君にお答えをいたします。まず第一は、給与改善について、今後いかに対処するかという問題でございますが、各公共企業体当局は、去る二十三日、昨年仲裁額と同額の有額回答を行なったのでございますが、特に、先ほども申し述べましたように、財政上の困難に直面しておる国鉄当局につきましても、他の公共企業体並みの回答を行なったわけでございます。このことは、各公共企業体当局が賃金問題に対する熱意を示したものであります。

 政府としても、経済的問題については、誠意をもって最大限の努力をしておるところでありますが、すでに賃上げ問題は、公労委の調停段階に入っておるので、労使が公労委の場で事態の早期かつ平和的な解決をはかることを期待しておるのであります。政府が有額回答をいたしたからといって、それが最終的なものではないのであります。公労委の場もあるし、仲裁の場もあるのであります。法制は完備をしておるのであります。労働者の権利は守られるようになっておるのであります。(拍手)これが民主体制下における完備された制度なのであります。でありますから、この制度の運用も待たずしていろいろな行動に訴えられることは、間違いなのであります。(拍手)処遇改善や賃金の引き上げ等の問題に対して理解を示されることに対しては、私たちも理解を示しております。しかし、年金制度やスト権の問題は立法事項なのであります。それは労働行為の中では解決できない問題なのであります。

 その意味で、与野党を問わず、議会制民主主義を守ろうという考えを前提にしておる以上、事を分けて対処しなければならぬことは言うをまたないのであります。(拍手)私は、その意味において、労働組合員の諸君が違法行為を行なわずして、制度の中で理想を達成せられることに努力せられることを切に願いたいのであります。(拍手) 何も労働組合は野党だけのものではありません。日本のよき労働慣行をつくるために、そして労働組合員諸君が安んじて職場に働けるような状態をつくろうというのは、あに野党のみならんや、自民党も人後に落ちないのであります。(拍手)そういう意味で、やはり議院が行なう職務と、労働行為で行なわなければならないこととを、おのずから区別をすべきであるとこの際申し上げておきたいのであります。(拍手)

 第二は、年金制度の問題でございますが、老後保障の柱となる年金制度の充実が最も重要な国民的課題の一つであることは、十分承知をいたしております。国民年金、厚生年金を通じた年金制度の改善については、現に国会に提案をし、改正案を御審議をいただいておるのであります。老後をささえるに足る年金の実現をはかっておるわけでございまして、ストライキと年金の問題をからませることは適当でありません。(拍手)

 労働者代表と率直に話し合いをせよという問題でございますが、公務員等のスト権の問題については、現在、労使公益三者構成の公務員制度審議会において鋭意審議をいたしておるのでございまして、政府としては、その結論によって対処をする所存でございます。関係組合においても、冷静な態度でその結論を待つべきであると考えておるのでございます。

 また、待遇改善など経済的要求に対しましては、先ほどから申し上げておりますとおり、政府は、誠意をもって対処をいたしておるのでございますが、何ぶんにもスト権奪還というような問題は、国会の御審議の問題でございますので、私といえども云々できないのでございます。しかし私は、国民的な利益を守るために、スト回避のためには、可能な限り最善の努力をいたしたいと考えておりますことを申し上げておきます。(拍手)

 それから次には、今回の、上尾事件その他の事件についてのお話でございますが、国鉄順法闘争に伴う一連の事件については、目下警察において鋭意捜査中でありますし、その問題に対しては江崎自治大臣から先ほど詳しく申し上げたから申し上げません。しかし、この際、私は申し上げておきたいことは、上尾事件をはじめ先般の事態等に対しまして、一部の者が意図れたものであるというような考え方や発言は、遺憾なことだと考えておるのであります。(拍手)そういうものの考え方や発言は、ものの解決にはならないのであります。起こった事態を直視をして、なぜこんなことが起こったのか、また、これから起こらないようにするにはどうしなければならないかという問題と取り組むことのみが、国民の支持と理解を得られる唯一の道なのであります。(拍手)政府は、謙虚に真摯な態度でこの問題に対処してまいりたいと考えるのであります。

 最後に、最高裁裁判に対しての問題でございますが、山中君に対してお答えを申し上げたとおりでございますが、与野党の別なく、判示をされた問題に対しては尊重すべきであると思うのであります。従来、政府の発言や政府の考え方と反する判断が行なわれた場合もございますが、政府は、当然のこととしてこの判断に従い、この判示を支持しておるのであります。(拍手)法律や制度を守るということが議会制民主主義を育てる基本であることは、言うまでもないのであります。自分の考え方と違うから、気に食わないからというような考え方で実力行使に訴えるようなことは、民主政治のワク外であることを、この際申し上げておきたいのであります。(拍手)
 津金佑近君にお答えをいたします。労働者の要求にどうこたえるのかとの問題でございますが、政府としましては、勤労者の福祉向上のため、積極的に努力をいたしておるところであり、国民経済の発展に応じて、賃金、労働条件が全体として改善されていくことが望ましいと考えておるのであります。

 しかしながら、具体的な問題については、本来、労使の自主的な話し合いによってきめらるべきものであり、これによって解決することが困難な場合には、労働委員会の調整によって、平和的に解決をせらるべきものなのであります。政府としましては、公企体等における経済問題については最大限の努力をしており、二十三日には誠意を尽くした有額回答を行なったわけでございます。もうすでにこの問題については、公労委の調整段階に入っておるので、公労委の場で事態の早期かつ平和的な解決がはかられることを、期待いたしておるのであります。

 それから、官公労のスト権の問題については、これはもう間々申し上げておりますとおり、公務員制度審議会において審議中なのでございますから、これを待つべきであります。この第三者のものを待てないということは、民主制度を否定することにつながるのであります。(拍手)待つべきなのであります。国会の議決がないからといって、政府がかってにものをやれるわけはありません。ちゃんとした制度の結論を待たないで、どうして一体民主政治が育つのでありますか。

 なお、労働権自体の問題についての御質問がございましたから申し上げますと、勤労者の労働基本権は憲法の保障するところであり、政府としては、今後ともこれらの基本権を尊重してまいることは言うまでもありません。しかし、労働基本権といえども絶対的なものではなく、国民生活全体の利益を確保する要請から、制約を受けるものであります。特に公務員等については、その担当する職務や地位の特殊性に応じて、法律により制約が設けられておることは、言うまでもないことでございます。

 四月二十五日に、最高裁が官公労働者の労働基本権の制約と刑事罰との関係について、明確な判断を示す判決を言い渡したのでありますが、その内容は適切なものと評価をいたしておるのであります。もとより、今回の判決が出たからといいまして、政府がにわかにこれら官公労働者の争議行為を抑圧するようなことは、全く考えておりません。しかし、現行法上看過し得ない悪質重大事犯と認めるときは、厳正な態度で対処してまいりたいと考えます。(拍手)それから、二十四日の暴動状態についての発言がございましたが、先ほどもお答えをしましたとおり、今回の国鉄の順法闘争に基づく一連の事件については、目下警察において捜査中でございます。しかし、いままでの報告によりますと、順法闘争による列車ダイヤの混乱に対する一般乗客のふんまんが爆発したものと考えられるのであります。この国民のふんまんを、一部分子の扇動だとか挑発行動などと断ずることは、善良な国民を侮辱するものではないかと考えるのであります。(拍手)念のために、私の感想を申し述べておきます。なお、問題の根本的解決策につきましては、先ほど申し上げたとおり、労使関係の秩序ある確立に対して、これからも努力を続けてまいります。(拍手)
 沖本泰幸君にお答えをいたします。まず第一に、四月二十四日の事件についてでございますが、わが国の国有鉄道というものは、定時運行で安全であるという点で、世界最高の企業として、長く、高く評価をせられてまいったわけでございます。国民の国鉄に対する評価も、これと同じように、定時で安全であるという評価に立っておるわけでございますが、それが、今度の順法の名による違法ストライキは、出るのか出ないのか、日本人の性格にほんとうに合わないやり方でございまして、(拍手)国民はもう、こういうものは大きらいなのであります。(拍手)そういう意味で、今度のストライキは、過去のストライキよりもきびしく国民に批判をされておるという事態は、われわれは真に認識しなければならないことでございます。(拍手)

 このような事態は、真に遺憾なことでございまして、政府は、このようなことが起こらないように、また、その前提であるストを避けるために、最大の努力をしてきたわけでございます。その意味で、去年も、法律が通らなければ仲裁裁定はできませんと国会に言っておったにもかかわらず、しかし、何とかしてということで、誠意をもって仲裁の実施をしたわけでございます。

 今度も、国鉄運賃法がまだ審議中であるにもかかわらず、有額回答をしておるのでございます。しかも、有額回答が少ないというならば、公労委の場もあるわけであります。その上また、裁定もあるわけでございます。そういう問題に対して政府も国鉄当局も誠意をもってこたえます、こういう姿勢に出ておるにもかかわらず、なぜ違法のストに訴えなければならないのでありましょう。(拍手)

 それは、政府にも全然責任ないとは考えておりません。しかし、その大半の責任というものは、ストライキをやっておる人が負ってもらわなければなりません。政府がほんとうに責任ありとするのは、運賃改正法でも、もっと早く通していただいて、もっと労働者の要求に応じられるようにする努力に欠けたということに対しては、はなはだ遺憾かもわかりませんが、その他の問題は、順法の名において行なう違法ストの当事者が非難をされることは当然のことだと思います。

 また、勤労者の労働基本権の問題につきましては、先ほども申し上げましたとおり、憲法の保障するところでありまして、政府としては、今後これらの基本権を尊重してまいることは当然でございます。しかし、労働基本権といえども絶対的なものではなく、国民生活全体の利益を確保する要請から制約を受けるのであります。国家公務員が制約を受け、官公労働組合が制約を受けるということはやむを得ないのであります。官公労働組合よりも電力や石炭の企業、私企業でありながら、スト規制法のもとにちゃんとして責任を果たしておるじゃありませんか。(拍手)そういうことを考えるときに、公務員である限り、担当する職務や地位の特殊性に応じて法律で制約を受けることはやむを得ないのであります。ですから、その体制の中で、労使がお互いに理解をし合いながら責任を果たす、しかも目的を達成するように努力するのが真の労使の交渉だと私は考えるのであります。(拍手)最後に、私も、ゼネスト回避のためには政府も責任を痛感いたしておりますので、最善の努力をいたしたいと考えます。(拍手)
 塚本三郎君にお答えをいたします。違法ストを直ちに中止せよという問題でございますが、公共企業体におきましては本来すべての争議行為が禁止をされており、これに反して違法な争議行為を行なった場合には、法に照らして処分が行なわれることは御承知のとおりでございます。しかし、これを承知であえて違法ストを行なう者に対して、政府は、これを事前に強制的に中止をさせる有効な手段は持っておらないわけでございます。

 法治国家の国民としては、現存する法律に不満がありましても、御指摘のとおり、これに従って、良識を持つべきであります。政府としましては、関係労組に対し、再三にわたり争議行為の中止を申し入れたところでございますが、これが聞き入れられなかったことはまことに遺憾であり、法に照らして厳正な措置がとられるものと考えておるのであります。先ほどから申し上げておりますが、二つの問題があり、経済行為に対しては誠意をもって対処しておるのであります。なおこれからも対処をすると言っておるのであります。

 しかし、第二の問題は、国会の問題であり、公制審の問題であり、これは、労働行為の範疇にはない問題であります。しかも、それらの問題に対して言うことを聞かなければ、イエスかノーか、これをのまなければストライキをやるんだということに対しては、政府は解決する手段を持っておらないのであります。ですから、良識に訴える以外にはないと申し上げておるのでございます。

 なお、先ほども申し上げましたように、職員の処遇改善等の経済問題につきましては、有額回答を行なったり、公労委に調停をお願いしたり、最大の努力をいたしております。にもかかわらず、闘争を続け、政治目的を有する違法ストを行なうことは、国民の生活権を奪うことになるだけではなく、民主主義体制そのものに対する挑戦であります。スト権を奪うとか奪わないとかいうことではなく、民主主義政治そのものの大本に対する挑戦行為である、そう認めざるを得ないのであります。(拍手)政府もこれを黙って見過ごすわけにはまいりません。

 それは、そんなことを申し上げなくとも十分御理解いただけるとは思いますが、同じ公務員であっても、裁判官には政治活動の自由が禁止されておったり、いろいろ一般国民とは別な制約があるのであります。憲法にも定めておるとおり、国民全体の利益を守るためには、奉仕者である公務員というものは、それ相当の制約を受けるのであります。同時に、官公労、三公社五現業というものは、純民間的なものではないのであります。公益企業であり、公共企業である。そこに職を奉ずるものが、一般労働者よりも限られた制限を受けることはやむを得ないわけでありまして、法律と制度の中で、お互いが理想達成に努力をしなければならぬことは、御指摘のとおりでございます。御発言に敬意を払います。(拍手)

 第三は、国鉄の最高首脳部の責任についてでございますが、国鉄における違法な争議行為に対する国民のふんまんが爆発して暴動事件が発生したことは、真に遺憾であり、政府としても深くこの事態を憂慮しているところでございますが、現段階では、違法ストの回避に全力投球することが責任を果たすゆえんだと考えておるのでございます。

 最後に、正常な労使関係を一部の者が阻害をしておる問題に対してどうするかということでございますが、正常な労使関係を暴力によって阻害したり、職場で暴力行為が行なわれる等のことがあれば、政府は厳にこれを取り締まります。暴力の排除によって、真の理想的な労使関係が確立、育成せられるように努力を続けてまいることを明らかにいたしておきたいと思います。以上。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第31号(1973/05/08、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 渡辺三郎君にお答えをいたします。まず第一に、エネルギー節約政策を打ち出し、電力需要の伸びを規制したらどうかということでございますが、エネルギー需要の増大を緩和し、また、環境を保全する観点からも、エネルギーの効率的利用、エネルギー原単位の改善、産業構造の転換は、わが国にとって重要な課題であります。このため、現在、産業構造の知識集約化を基調とする省資源、省エネルギー政策について検討を進めておるのであります。具体的には、将来の望ましい産業構造についてのビジョンの確立につとめますとともに、その中核となるべき電子計算機産業をはじめとする知識集約的産業の育成、在来型の産業の資源、エネルギー依存度を低める一方、資源の有効利用をはかるための資源再生利用技術のシステムや、廃プラスチック有効利用等が考えられるわけでございます。しかし、御指摘のように、電力は産業用にだけ使われておるのではないのであります。国民生活が向上し、国民所得が向上してまいりますと、水や電力の使用量は飛躍的に増大をしてまいるのでございます。

 一九七〇年の例をとって申し上げますと、アメリカでは、国民一人当たり年間七千四十五キロワットアワーを使用しております。スウェーデンでは六千九百八十四キロワットアワーでございます。現在、日本は、相当程度個人的に消費電力量が増大したとはいいながら、いまだ三千八十八キロワットアワーでございます。ですから、昭和六十年を待たずして、国民一人当たりの電力消費量は、いまの倍をはるかにこすであろうことは申すまでもないのであります。ですから、電力が産業用だけという観点から考えられると間違いが起こるのでございます。国民生活が向上し、所得が向上してまいると、自動的に消費電力や水の量が多くなるということは、いま数字で明らかにしたとおりであります。

 昭和四十六年度の水力、火力、原子力の合計は五千八百二十二万キロワットでございますが、昭和五十二年を展望しますと、その倍以上になるわけであります。五年間で一億二千百五万キロワットということになるわけでございまして、これは低く押えておる数字でございます。先ほど申し上げましたように、従来のような重化学中心の工業から知識集約的産業に移さなければならない、しかもそれだけではなく、アルミ工場や電力を多量に使うものは、海外の現地製錬を行なうというようなことを前提にして計算をしても、五年間で電力消費量は二倍以上にふえるわけでございます。

 そのような状態で現在の電力の状態を直視いたしますと、予備電力は一〇%から一五%あることが望ましいことは、私が申し上げるまでもないのでございます。ところが、現時点において九電力のうち一五%をこしておるものは、北海道電力が一四・八ないし一五・三というところでございます。九州電力が八・一ないし一六・六というのは、四十八年度の計画が終わった場合の状態でございます。ところが、関西電力においてはわずかに一.七でございます。今年八月のピーク時を想定して一.七でございまして、いまのような経済の状態で進めば、もうピンチにおちいる状態にあるということでございまして、電力消費を規制するように努力をしなければならないと同時に、人間が米を最低限量必要であると同じように、電力は確保しなければならないというのが現状でございます。

 第二は、経済社会基本計画を変える必要がないかということでございますが、いま申し上げましたように、電力の基本計画というものは、いま申し上げたような事情で、変える必要はないし、しかも、経済社会基本計画の中で述べております電力量というものは、非常に押えて計算をしたものであるということを御理解賜わりたい、こう思います。

 第三点は、電力料金の値上げ問題についてでございますが、電力料金は低廉、良質であることが望ましいことは申すまでもありません。従来から、政府は極力値上がりを抑制してまいったわけでございます。大規模な電源開発の推進に伴う資本費の増大や、公害対策費の増大とか、燃料価格の高騰とか、原子力発電を推進するために必要な問題とか、また、年々相当大幅の賃金のアップがあるわけでございます。にもかかわらず、昭和二十九年、昭和三十五年からというように、長い間電力料金が押えられてきたという事実は、合理化に全力を傾けておるという結果であることを御理解を賜わりたい、こう思うのでございます。政府としましては、今後とも経営の近代化、合理化等により、料金原価上昇要因の吸収をはかり、料金安定の確保に努力するよう、一そう強力に指導してまいるつもりでございます。なお、料金の見直しがやむを得ない場合におきましても、極力値上げ幅の抑制等に努力をしてまいりたい、こう考えるのであります。

 第四点は、電源立地難の原因等についてでございますが、これは御指摘ございましたように、大気汚染問題、温排水問題、また、原子力発電所につきましては安全性の問題等がありますことは、御指摘のとおりでございます。もう一つ、御指摘はございませんでしたが、ここで申し上げておきたいことは、大電力の消費地は大都会でございます。産業や人口が集中をしておるところはすなわち、即電力の大消費地でございます。大消費地の地域内においては、電源立地を求めることは困難でございます。それは、大阪において電力がピンチになっておるにもかかわらず、姫路の火力発電所を停止しなければならないというような事情や、大阪や京都のために長いこと懸案である新舞鶴の発電所が着工できないというような事情を考えてみれば、私が言うまでもないのであります。(拍手)東京都や大阪や名古屋というような大電力消費地に送る電力が、地域内において立地が見出しがたいので、東北や北陸やその他の地域に求めるわけでございます。自分が使う電力でないものを、大都会に送る電力のために、なぜ公害やその他のものに泣かなければならないかというところに、現地が承諾をしない大きな原因があるのでございます。

 ですから、地元に恩恵が及ぶような施策を付加しなければならないことは言うをまたないのであります。電力の不足は、水の不足や米の不足と同じように、電力がとまった場合には生命に直ちに影響するのであります。どうしても、電源立地地帯の了解を得られるような施策を付加することによって発電を確保しなければならぬことは、申すまでもない重要なことでございますので、野党の皆さまも、どうすれば発電がうまくできて、電力を良質、低廉に安定供給できるかということを御考究いただきたい。(拍手)

 最後には、電源開発基本計画についての御指摘がございましたが、電源開発調整審議会の議を経て慎重にきめておるわけでございまして、新規に着手する発電所を審議会に付議するにあたりましては、公害の防除、環境の保全、安定の確保等について十分に慎重に検討し、万遺憾なきを期しておるわけでございますが、これからも、政府も技術的、科学的に国民各位の理解が得られるように一そうの努力を傾けてまいりたい、こう考えます。(拍手)
 島田琢郎君の御質問にお答えをいたします。まず第一は、今後の日本漁業のあり方についての御質問でございますが、わが国漁業を取り巻く内外の環境がきびしいものであることは御指摘のとおりでございます。これらの諸情勢に対処するために、沿岸海域においては、公害対策の強化による漁場環境の保全、栽培漁業の積極的な展開等による水産資源の維持増大をはかり、沖合い、遠洋海域にありましては、国際協調をはかりつつ、わが国漁業の実績の確保と新漁場の開発につとめてまいらなければならないと考えております。さらに、沿岸漁業構造改善対策の推進や、漁港等漁業生産基盤の整備により、漁業経営の近代化と漁業従事者の福祉の向上をはかってまいらねばならぬと考えます。

 第二は、近海の汚染防止についてでございますが、近海が汚濁せられつつあるということは事実でございまして、政府は、公害対策基本法に基づく環境基準の設定の促進、水質汚濁防止法による排水の規制等公害諸法の効果的な運用をはかることによりまして、浄化、環境の保全をはかってまいらなければならないと考えます。また、必要があれば立法措置も進めてまいりたいと考えます。

 瀬戸内海の問題につきましては、環境庁長官からお答えをいたします。それから、水産物の消費者価格の安定についての御質問が第三点でございましたが、生鮮水産物の価格は、近年上昇の傾向が見られるわけでございますが、これは基本的には中高級魚を中心とした旺盛な需要に対し、これに即応した供給が行なわれていないこと、人件費をはじめとする諸経費の増高、流通コストの増大等に原因があるのでございます。政府としましては、栽培漁業の振興や新漁場の開発等生産対策の拡充につとめますとともに、産地市場、消費地市場等の整備や、総合食料品小売センターの設置等小売り段階の改善を総合的に実施してまいりたいと考えるのでございます。

 陸奥湾でのお話がございましたが、原子力船「むつ」に関してでございます。臨界試験、出力上昇試験の実施につきましては、その試験の性質上、静穏な海上で行なうことが必要であるとの観点から、原子力船事業団は、陸奥湾において行なうべく、関係漁民との間に昨年九月来折衝を重ねてまいっておりますが、今日までのところ、漁民の完全了解を得るに至っておらないわけでございます。関係漁民の問題としている原子力船の安全性につきましては、厳重な安全審査を行なっており、また、関係行政機関の監督のもとに行なわれるものでありまして、全く問題はないと考えております。しかし、陸奥湾内にはホタテガイの養殖がかなり広範囲に行なわれておりますので、漁民の了解を得るべく、さらに努力を続けてまいりたいと考えるわけでございます。

 最後に、ソ連との漁業問題、平和条約の問題に対して言及がありましたのでお答えを申し上げますが、わが国漁船のソ連官憲による拿捕等、北方水域における不幸な事件をなくすためにも、北方領土問題を解決して平和条約を締結することが必要であることは申すまでもないのであります。私は、この問題についてソ連首脳と話し合うため、訪問の日程を検討中であります。以上。(拍手
 中川利三郎君にお答えをいたします。まず第一問は、海洋汚染の防止及び沿岸漁業の振興についてでございますが、政府は、沿岸海域の水質汚濁防止について、海域にかかる環境基準の当てはめを促進いたしますとともに、その維持達成のために、地域の実情に応じた上のせ排水基準を設定し、きびしい排水規制を行なうよう指導しておるのであります。また、沿岸漁業の振興のため、漁場環境の保全につとめるとともに、漁業生産の増大と生産性の向上をはかっておるのであります。具体的には、一つには漁港等漁業生産基盤の整備、二つには栽培漁業の積極的な展開、三つには漁業公害対策の強化、四つには沿岸漁業構造改善事業の推進、五つには漁業金融の拡充等を推進をしておるわけでございまして、以上申し上げたようにやっておるわけでございます。

 第二は、演習による漁場の制限により、漁民が多大の被害を受けておるという御指摘でございますが、わが国は、安保条約の精神に基づき、日本の近傍において米軍の演習を認め、関係漁業者に漁業補償等、所要の救済措置を行なっておることは御承知のとおりでございます。

 第三点は、海外漁業の安定的発展策についてでございますが、わが国は、年間漁獲量一千万トン余、世界における最大の漁業国であることは御承知のとおりでございます。しかし、わが国海外漁業の安定的発展をはかるためには、従来からの公海自由の原則のみでは対応できず、関係国との漁業協力を推進し、相互に漁業の発展をはかるという基本的立場で対処することが必要となってまいりました。

 このため、各国に対するわが国の立場についての理解を深め、国際漁業交渉の場におけるわが国の対処に十全を期してまいりたいと考えておるのであります。特に、発展途上国に対する海外漁業協力を、円滑に実施する体制を整備することも必要でございます。このように、関係国との相互理解及び共存共栄の立場のもとで、わが国漁場の確保をはかってまいりたいと考えております。残余の問題に対しては、農林大臣から答弁をいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第46号(1973/06/26、33期)に於ける田中角榮発」は次の通り。
 林義郎君にお答えいたします。第一は、公害被害の発生を未然に防止するためには、今後どのような措置を講じたらよいかという趣旨の御発言でございますが、水銀、PCB等の環境汚染に見られるように、科学技術は、プラスの効用と同時に、社会的に思いがけない悪影響を及ぼす場合があることを深く認識する必要があります。こうした認識に立って、科学技術のもたらす環境破壊等の悪影響を未然に防止するためには、新技術、新物質の開発にあたって、その技術、物質がもたらす効用と影響を事前に予測、評価するという、いわゆるテクノロジーアセスメントの考え方を、各方面に適用すべきであると考えておるのであります。私は、さきの施政方針演説でもこの点に触れ、先行的に施策を強化しておるところでございます。

 なお、公害研究所も今年には発足をいたしましたし、大学にも公害技術に関する学科の新設を考える必要があるとも考えておるのであります。なお、広範にわたる研究を進めるために、公害学会等の設置についても検討を進めてまいりたいと思うのでございます。なお、今国会には、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律案を提出、御審議を願っておるところでございまして、本法案の成立を待ちまして、化学物質の安全性確保のために遺憾なきを期してまいりたい、こう考えるわけであります。具体的な問題については、所管大臣から答弁をいたします。(拍手)
 土井たか子君にお答えをいたします。第一は、水銀、PCB等について使用しているものの禁止措置をとれとの趣旨でございますが、政府としましては、水銀等汚染対策推進会議を設置いたしまして、対策の総合的な推進につとめておるところであります。基本的には、環境に悪影響を及ぼすおそれのある有害物質は極力使用しないことが望ましいと考えており、PCBについては一部のものを除いて完全に使用を中止させ、安全な代替物質への転換を進めておるのであります。また水銀につきましても、クローズドシステム化の推進、電解ソーダ法の隔膜法への転換等について企業を強力に指導し、汚染が進まないよう万全の措置を講じてまいりたいと考えております。

 次は、水銀、PCBの規制値を保持するため、予算、人員、研究体制、施設を確保せよということでございますが、水銀、PCB等による水質汚濁の防止をはかることの重要性にかんがみ、政府としては、従来から測定機器の整備、公共用水域の水質調査の実施及び排水水質の監視測定について助成する等、監視測定体制の整備をはかってまいっておるのであります。今後においても水質測定の自動化を推進いたしますとともに、研修による技術者の養成等監視測定体制の整備拡充につとめてまいりたいと考えます。

 第三は、瀬戸内海の環境保全についてでございますが、現在排水基準の強化、下水道整備の促進、屎尿処理施設の整備促進等の対策を鋭意進めておるのであります。今後さらに汚染の実態、メカニズムの解明を急ぎ、これらの結果を踏まえて、沿岸地域の環境保全を具体的にどのように進めるべきかを明確にする環境保全マスタープランの策定及び各種対策の強化拡充をはかることにいたしておるのであります。なお、本問題につきましては、各党提案の議員立法もありますし、政府も前向きに検討いたしておるのであります。

 次に、列島改造の問題でございますが、日本列島改造すなわち国土総合開発は、片寄った国土利用を改め、国土全体の均衡のとれた発展をはかり、きれいな空気と水、緑に恵まれた、住みよく暮らしよい地域社会を計画的に建設しようとするものであります。(拍手)これは、今日まさに全国民の要望する政策課題であり、政府としては積極的にこれを推進してまいりたいと考えます。以上。(拍手)
 中島武敏君にお答えをいたします。水等が汚染されるのは一体どういうことかということでございますが、端的に申し上げると、化学工業の発達と新化学物質の発見と使用等によりまして、その効用の反面、公害のあることというものに対して、基準があいまいであったり、長い間の蓄積というものが複合公害として起こるということに対して、制度や基準ができておらなかったというような面がきびしい公害を引き起こしたものであるというふうに理解をいたしております。また、その意味でいろいろな法制を整備し、組織を拡充しておることは御承知のとおりでございます。

 第二は、水銀、PCBなど有害物質により、国民に不安を与えたことについてどのような責任を感じておるかの趣旨の御発言でございましたが、水銀、PCB等の有害物質による魚介類等の汚染問題が広範な海域で発生しましたことはまことに遺憾であります。政府としては、水銀等汚染問題の重要性と緊急性にかんがみ、先般水銀等汚染対策推進会議を設けて、総合的かつ効率的な対策を強力に推進をしておるところでございます。すなわち、国民の不安をすみやかに解消するため、魚介類の暫定的基準を設定し、また、被害漁業者に対し、つなぎ融資を行なうことといたしたのでございます。今後さらに、全国的規模の環境調査、関係工場の総点検、問題地域の住民健康調査、汚染ヘドロの除去事業等各種汚染対策を強力に実施をしてまいりたいと考えます。

 現在の公害関係法を抜本的に改正をしないか、同時に、共産党案を採用しないかということでございますが、政府は、四十五年のいわゆる公害国会におきまして、公害対策基本法外十四法案を改正をするなど公害関係法制の抜本的体系化を行ない、事業者責任の明確化や地方公共団体の権限の強化など、その充実をはかってまいったことは御承知のとおりであります。

 公害対策基本法につきましては、現行規定の運用により十分対処し得るものであり、現在のところ法改正は考えておりません。また、関連個別法及びこれに基づく規制基準等については、従来より必要に応じ改定強化をはかってまいりましたが、今後ともこの方針に沿って改定強化をはかってまいります。よって、共産党案を採用する意思はありません。それから、損失を受けた漁民等に対する補償や援助についてのお話がございましたが、先ほどからお答えを申し上げておりますとおり、生活資金及び経営資金につきましては、天災融資法に準じ緊急つなぎ融資を行なうことにいたしておるのであります。その際国は、利子補給につき高率の助成を行なって、漁業者等の救済措置を講じてまいりたいと考えております。なお、原因者が明確になったときは、原因者負担の原則によってその経費を支弁させることにいたしておるのであります。また、原因者負担については、被害漁業者と原因者との話し合いがすみやかに行なわれますよう、都道府県に対し適切な指導を行なってまいります。販売業者等については、漁業者に対する緊急措置と関連をし、目下関係省において緊急融資措置について検討させておりますので、早急に結論を得たいと思うのでございます。以上。(拍手)
 瀬野栄次郎君にお答えをいたします。まず第一は、公害汚染に対する責任と今後の対策についての御発言についてでございますが、わが国経済の発展過程において、環境破壊など各種のひずみが生じてきたことは否定できません。政府としても、この事実を率直に認識し、その解決に全力を尽くすとともに、長期的、広域的観点から、国民共通の資産である美しい国土、清浄な生活環境の実現に全精力を投入してまいりたいと考えます。このため、今後の環境保全施策の実施にあたっては、発生した環境破壊の事後処理という受動的政策にとどまるのではなく、環境破壊の未然防止を最重点として、各種施策を総合的に推進をしてまいりたいと考えます。列島改造の必要性につきましては、先ほど申し述べましたので、御了承賜わりたいと存じます。

 次は、汚染による漁業対策いかんということでございますが、沿岸漁業に対しましては、政府としては、公害関係諸法のより厳正な実施と監視体制の確立をはかりますとともに、漁場汚染を防止する等、公害対策を強力に進めてまいりたいと考えます。また、汚染漁場と汚染魚種を明確にして、これらの流通を防止する等、生産者及び消費者の不安の解消に最善の努力をいたしてまいりたいと存じます。他方、沿岸漁場の改良、造成と、栽培漁業の推進等の施策を積極的に講ずることによりまして、水産資源の維持増大をはかってまいりたいと考えます。

 県外移住者、水銀体温計をつくる工場の従業員、漁業関係者をも加えた検診調査を実施せよとの趣旨の御発言についてでございますが、水銀等汚染対策推進会議におきましては、全国的にPCB、水銀使用工場周辺の水質、魚介類につきましては、環境調査を実施をすることにいたしておるのであります。また、熊本大学研究班が指摘をしました有明海及び環境調査の結果、問題のある地域につきましては、疫学調査として、住民、とりわけ魚介類を多食する漁民の健康調査を実施をいたします。県外に居住した者の検診問題については、実施面で困難性が多いが、関係県とも協議し、検討してまいります。

 また、水銀体温計をつくる工場の従業員の検診につきましては、職業病検診の観点から、労働省とも協議して、必要の措置を講じてまいりたいと考えます。水俣病の治療方法の究明等についての御発言でございますが、現在、熊本大学その他関係機関において、水俣病の治療方法等の研究を進めますとともに、水俣市立病院等において、患者の治療を行なうかたわら、診断技術の確立等について研究を進めておるのであります。今後とも不知火海一帯の地域の住民の検診を一そう推進し、実態の究明につとめてまいります。さらに、現在未確立の治療方法等の医学的研究を強力に推進するため、学識経験者の意見を聞き、関係機関、県、市とも十分協議し、調査研究体制の充実につとめてまいります。

 それから、水俣湾の堆積汚泥の処理の問題、将来の港湾計画の問題についての御発言がございましたが、いま水俣港に堆積をしておる汚泥の処理を早急に行なう方針のもとに、運輸省、環境庁を中心にして、熊本県を指導いたしておるわけでございます。いずれにしましても、現在のところ、年度内に処理作業に着工できるものと考えておるのでございます。なお、水俣湾の将来計画につきましては、この公害防止のための実施計画の中に港湾の将来計画もあわせて検討しておるのでございます。全部を埋め立てるという案もございますし、一部を残せという案もございますので、慎重に計画を策定いたしたいと考えておるのであります。多々問題がございましたが、残余は関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 小宮議員にお答えをいたします。第一は、環境破壊の政治責任についての御発言でございますが、戦後四半世紀を経たわが国経済は、世界にもまれな完全雇用を達成し、国民総生産、国民所得も増大をいたしたことは御承知のとおりでございます。これは国民全体の力であり、世界に誇り得ることであります。しかしながら、その成長の過程において、環境破壊など各種のひずみが生じてきたこともまた事実であります。政府としましても、この事実を認識し、環境破壊の未然防止を最重点として、規制の強化、社会資本の整備等、各種環境保全施策を総合的に推進をしてまいりたいと考えます。

 第二は、汚染による被害者に対する損害賠償と企業責任についての御発言でございますが、政府としましては、関係各省庁との緊密な連絡のもとに、関係地方公共団体とも協議して、早急に環境調査等所要の調査を実施して、汚染源の追及を行ない、汚染者負担の原則に従い、損害賠償が円滑に行なわれるようつとめておるのであります。

 次は、被害を受けた漁家、販売業者等に対する補償措置の問題でございますが、先ほどから間々申し上げておりますとおり、被害漁業者及び水産業協同組合に対し、その生活資金及び経営資金につき、天災融資法に準じ、緊急つなぎ融資を行なうことといたしておるのであります。国は、利子補給につき、高率の助成を行なって、漁業者等の救済措置を講ずる所存であります。なお、原因者が明確になったときには、原因者負担の原則によって、その経費を支弁させることにいたしたいと考えております。販売業者等につきましては、漁業者に対する緊急措置との関連に配慮しつつ、目下関係省において、緊急融資措置について検討させておりますので、早急に結論を出してまいります。

 最後に、テレビ網等を通じて、権威ある研究者の見解等を紹介をして、公害の情報を国民の前に提供せよ。私もそう考えております。私も、国民に行政の実情を理解してもらうために、活動の強化、拡充につきまして、かねがねその必要性を痛感いたしておったところでございます。その一環といたしまして、ことしの五月一日から、内閣広報室を設置をいたしたわけでございます。御質問の公害に関する情報提供活動につきましては、定期的なラジオ番組として、「環境庁だより」を放送いたすことにいたしております。また、過般の環境週間におきましては、テレビ、ラジオ、新聞等を通じまして、積極的な広報活動を行ないましたが、今後ともその強化、拡充をはかり、公害に関し、公正な認識が得られるための努力を払ってまいりたいと考えます。以上。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第52号(1973/07/19、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 近藤鉄雄君にお答えいたします。まず第一は、中小企業のための基本政策についてでございますが、わが国経済は、内外の諸情勢の激変に対応いたしまして、中小企業のあり方や中小企業政策の進め方も、新しい観点に立っていくことが必要であると考えるのであります。このため、政府は、昨年八月、中小企業政策審議会から、七〇年代の中小企業のあり方と中小企業政策の方向について意見具申を得まして、今後そこに示された基本的な考え方に沿って施策を実施していく所存でございます。

 まず第一に、需要構造の変化への対応など、生産面での合理化だけでなく、いわばソフト面での対策に重点を置く必要があると考えるのであります。中小企業が、国際化の進展、福祉社会への指向、環境尊重などに対応していくには、これまで以上に市場動向に敏感で、また社会的要請に合致した企業経営をしていかなければならないと思うのであります。政府といたしましても、事業転換の円滑化や情報の提供などを通じまして、中小企業を知識集約化していくことが必要であると考えます。

 第二に、中小企業の存在が多様であることを十分に認識して、それぞれの業種、業態に対応して、きめこまかい政策配慮をしていくことが必要であります。次に、中小企業政策が、中小企業に対する指針を示し、中小企業を積極的に誘導していくという役割りを重視していく必要があると考えます。今後、こうした基本的な方向に沿いつつ、具体的な施策の展開を進めてまいる所存であります。

 第二は、平価調整及び国際収支の改善等が迫られておった中での中小企業の問題等に対しての言及がございましたから、お答えをいたします。中小企業、零細企業というものは、世界に例のないほど日本に特色を持つものでございます。また、日本の経済の中で大きなウエートを占めるものであることは申すまでもないのであります。しかも、わずか一年半の間にドルは三百六十円から二百六十五円台に、約三〇%の切り下げが行なわれておるのでございます。しかも、海外のインフレ要因等により、大きな原材料の値上がりに苦しめられておるのが実態でございます。このような中にありまして、国際収支の改善という大きな命題を達成する中における中小企業が困難な状態であり、この状態に対して政府が諸般の政策をとったことは御承知のとおりでございます。そのためには、まず輸出を内需に振り向けるために、景気浮揚政策がとられたこともまた事実でございますし、税制上、金融上、信用補完等に対して、各般の施策が万全に行なわれたわけでございます。その結果、所期の目的はおおむね達成できたと思うのでございます。みごとにというほど、中小企業は対ドル三〇%の切り上げに耐えて、前年度に比較して二〇%ないし三五%の輸出を維持できるようになったことは、慶賀にたえない次第でございます。しかし、そのような結果、国際収支も改善され、中小企業の体質改善も行なわれましたけれども、御指摘のとおり、物価の上昇という一面が起こってまいったことは見のがすことのできない事実でございます。その意味におきまして、物価の上昇というものが、せっかく一年半という短い間に困難な問題に対処し得た中小企業にしわ寄せが行なわれないように、万全な施策を講じなければならぬことは言うをまちません。このような観点に立って物価の抑制をはかるとともに、中小零細企業に対する万全の措置を講じてまいるつもりでございます。

 その一つとして、御指摘の金融引き締めが中小企業にしわ寄せされないように措置せよということでございますが、これまでも金融引き締めの強化にあたりましては、中小企業金融に対して格別の配慮がなされてきたところでございます。最近の動きを見ましても、中小企業向け貸し出しは順調に推移し、健全な中小企業が金融面で行き詰まるというような現象は生じておらないのであります。今後とも、従来と同様、中小企業金融の円滑をできるだけ確保する方針に基づきまして、実態に即してきめこまかい方策を講じていく所存でございます。さしあたりましては、中小企業向け貸し出し比率を少なくとも現在以上に維持いたしますとともに、中小企業に対し歩積み、両建てを要求するようなことのないよう、金融機関に対して強力な指導を行なっておるのであります。全体として金融の引き締まり感が強まっていく中にあって、中小企業の金融が疎通を欠くような事態は起こらないものと確信をいたしておるのであります。

 最後に、工業再配置と中小企業問題に対してお答えをいたします。工業再配置対策は、移転促進地域から誘導地域への工場移転を進めようとしておりますことは、御指摘のとおりでございます。このような工場移転の場合には、遠距離のため各種の大きな障害があることなどにかんがみまして、これを緩和、除去するために助成を行なうものであります。したがって、誘導地域内の地元企業や域内再配置の場合よりも、実体的に優遇しようとするものではないのであります。また、助成に際しましては、誘導地域の地方公共団体の意見を聞く等により、移転先で問題を起こさぬよう、十分配慮いたしておるつもりでございます。誘導地域の地元企業に対しましては、農村地域工業導入促進法等の地域振興法によりまして、金融、税制上の助成措置が講じられておることは御承知のとおりであります。特に、中小企業に対しましては、その存立条件等を考慮いたしまして、今年度から創設をいたしました中小企業過密公害防止移転貸し付け制度等によりまして、誘導地域内の移転についても、実情に応じ助成措置を講ずることにいたしておるわけでございます。以上申し述べましたように、列島改造すなわち工場の再配置等については、地元との不均衡を生じないよう万全の措置を講じておるつもりでございます。(拍手)
 加藤清政君にお答えをいたします。第一は、中小企業関係予算が一般会計のわずか〇・六%にすぎないがという御発言に対してでございますが、本来、中小企業政策は、自由な企業活動の場において、中小企業の種々のハンディキャップの軽減等を通じ、中小企業がその本来の特性を十分に発揮して成長発展することを支援していくという役割りを果たすべきものと考えておるのであります。このような中小企業政策は、金融、税制、診断指導、情報提供など多彩な内容をもって進めなければならないものでございます。こうした各施策は必ずしも一般会計予算の面のみに反映するものではなく、財政投融資、税制拡充のほか経営指導、さらには中小企業相互、あるいは大企業と中小企業との調整などを通ずる環境整備のための施策といった、量的に評価しがたい分野の施策も多いことは御承知のとおりでございます。ただ、一般会計における中小企業対策費につきましても、今後ともその増大につとめてまいる所存でございます。

 通産省から中小企業庁を分離して中小企業省を設置すべしという御議論についてでございますが、中小企業行政につきましては、業種の実態に応じて展開される必要があり、そのため産業行政と一体的に運用されるよう、通産省の外局の中小企業庁を中心として施策の充実強化に全力を傾注してきたところでございます。ただ、中小企業を取り巻く情勢は、最近環境問題の深刻化、物価、流通問題等ますます複雑化し、多元化しておるのでございます。このような新たな情勢の展開を踏まえまして考えますと、中小企業省の設置は十分検討に値する問題であると考えておるのでございます。このような趣旨から関係当局に対して検討を命じたものでございます。

 第三は、予算や権限を地方自治体へ移して、地域社会の実情に応じた中小企業政策を推進せよという意味の御発言に対してでございますが、政府といたしましては、これまでも地域経済の振興を担当する地方公共団体と密接な連絡をとりつつ中小企業行政を進めてきておるのであります。たとえば、中小企業行政でも古い歴史を持つ経営や技術の指導、設備近代化資金融資、さらには中小企業の集団化等を推進する高度化資金融資等を行なうにあたりましては、地方公共団体の協力を得て、その行政機能を十分に生かして施策を実施しておるわけでございます。

 また、最近における国際通貨変動に伴う緊急中小企業対策を実施するにつきましても、産地、中小企業の実情に合った手が機敏に打たれるように、影響調査、緊急融資、あるいは緊急診断の実施には地方公共団体の全面的な協力を得ておるわけでございます。今後とも政府としては、中小企業行政推進の上で、国と地方公共団体との間の最も合理的な、また望ましい事務の分担という観点から的確に判断をしてまいりたいと考えます。

 次は、商社の活動についてでございますが、商社の活動は国内だけでなく、原料、製品等の輸出入から海外プロジェクトの推進まで幅広いものでありまして、その行き過ぎが国民生活等に悪影響を及ぼすようなことはぜひとも避けなければなりません。このような観点から生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律を制定したところでございまして、大手商社との懇談会も発足させております。今後は、これらの方策を通じまして、商社活動のあり方について調査、検討を進めてまいりたいと考えます。なお、商社も行動基準を自主的に作成をし、みずからの健全化につとめておりますことは好ましい状態と考えるのでございます。残余の問題につきましては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 神崎敏雄君にお答えをいたします。第一は、中小企業の基本的な施策についての御発言でございます。中小企業がわが国経済の中で重要な役割りを果たしてきましたこと、及び今後ともその使命の重要性にはいささかも変化がないであろうことは、いまさら申し上げるまでもないことでございます。政府としましては、中小企業がより近代化し、より多様な形で国民経済の発展に寄与し得るよう、中小企業対策を国の最重点施策の一つとして進めておるのであります。

 次は、日米貿易関係についてでございますが、日米間の貿易通商上の最大懸案でございました日米貿易収支のアンバランスも、今年になってから急速かつ顕著に改善が行なわれており、また、資本、輸入の自由化措置等により、日米通商関係は大きく好転したと考えておるのであります。これだけ両国経済の規模が大きくなれば、ある種の調整を要する問題は今後とも起こると思いますが、両国政府は、両国間の貿易経済の拡大均衡を求めるとの基本的立場に立って、問題の円満な解決を双方が相協力して行なうことといたしておるのであります。私の来たる訪米に際しましては、このような見地に立ちまして、両国国民の真の利益になる日米関係のあり方につきまして、建設的な話し合いを行なうつもりであります。

 次は、中小企業の現状についてでございますが、御指摘のとおり、この十年の間に、中小企業の輸出シェアが低下し、また、毎年ある程度の倒産があることもまた事実でございます。しかし、その反面、中小企業が製造業の出荷額や商業の販売額の中に占めるシェアは、この間ほぼ一定水準に推移をいたしておることは御承知のとおりでございます。このことは、経済の急速な拡大の中で、中小企業が確固たる地歩を維持し続けてきたことを意味しておるわけであります。生産性や賃金水準における大企業、中小企業間の格差も、これまで総じて縮小の方向をたどっておるのでございます。

 しかしながら、最近の内外情勢の著しい変化は、中小企業に対してきびしい試練を迫るものでありますので、政府といたしましても、今後とも基本法の理念に沿った適切な中小企業施策の拡充をはかるべく、一そうの努力を傾注してまいります。

 付加価値税の問題でございますが、従来一般的な消費課税を行なっていないわが国におきまして、付加価値税等の一般消費税を導入するかどうかは、その物価に与える影響や、中小企業に与える影響等について慎重な研究をしてからにすべきであると考えておるのであります。ただし、今後における間接税のあり方としましては、所得税を補完しながら、全体としての税体系を適切に維持するという見地から、その地位の低下をできるだけ回避し、その充実につとめるべきであると考えておるのであります。今後における所得税の減税や社会保障の充実のあり方なども考え合わせながら、一般消費税のあり方あるいは付加価値税の導入の是非等については、引き続いて勉強してまいりたい、こう考えるのであります。残余の問題については関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 近江巳記夫君にお答えいたします。第一は、政府の中小企業対策についての基本的態度を示せということでございますが、わが国経済の基盤ともいうべき中小企業が、これまでの経済成長の過程を通じてすぐれた適応を示してきた反面、今日でも多岐にわたる困難な問題に直面しておりますことは、御指摘のとおりでございます。政府としても、基本法制定十周年にあたり、中小企業政策の一そうの充実につとめるべく、決意を新たにいたしておるわけでございます。

 中小企業の今後進むべき方向について長期的ビジョンを示すことは、あらゆる施策の前提として、きわめて重要であります。政府としても、変化と流動性の時代といわれる七〇年代において、中小企業のあるべきビジョンを得るため、さきに中小企業政策審議会に検討をお願いし、昨年八月、七〇年代の中小企業のあり方と中小企業政策の方向についてと題する意見具申をいただきましたことは、先ほども申し述べたとおりでございます。現在、この意見書に示された方向を政策に反映すべく努力をいたしておるところでございまして、今後とも、適切なビジョンの提示のもとに計画的に施策を進めるようつとめてまいりたいと考えます。中小企業省の設置につきましては、中小企業を取り巻く新たな情勢下にあって、十分検討に値する問題であると考えておるのでございます。このような趣旨から、関係当局に対して検討を命じましたことは、先ほども申し上げたとおりでございます。

 次は、今後の商業部門の近代化の方向と流通部門の資本自由化等についての御発言でございますが、消費者の日常生活に密着している中小小売商業の近代化をはかり、国民の豊かな消費生活を確保することは、きわめて重要な政策課題でございます。このため政府は、中小小売商業振興法案を今国会に提案をいたしておりますが、この法案では、中小小売商業者の組織化を促し、商店街の整備、店舗の共同化、ボランタリーチェーンなどの共同事業を推進するとともに、個々の中小小売商業者、特に零細な小売商業者につきまして、その近代化を助成し、経営体質の強化をはかることといたしておるのでございます。なお、小売業の資本自由化につきましては、本年五月の第五次資本自由化措置におきまして個別審査業種に残すことにいたしております。政府としては、経済的、社会的混乱を生ずることのないよう、小売業の近代化施策の伸展と歩調を合わせて、慎重に自由化を進めてまいりたいと考えます。

 次は、工業再配置は零細下請企業の切り捨てにつながりはせぬかということでございますが、工業再配置による工場移転は特に下請企業に大きな影響を与えますので、政府としては、下請企業の経営が困難にならないよう各般の対策を講じておるのでございます。第一に、移転する親企業に対して、下請企業に移転計画を十分説明し、また、用地、資金、取引先のあっせん等できるだけの処置を講ずるよう、指導してまいりたいと考えます。第二に、工場再配置対策に対し、助成に際しましても、下請企業の取引安定を配意しているかどうかを十分審査し、下請企業の基本的な納得を得ていない限り助成を与えることを認めていないわけであります。

 第三に、下請企業振興協会を活用いたしまして、親企業の移転により影響を受ける下請企業に対する取引のあっせんにつとめることとするほか、さらに親企業の移転に関連をして移転する下請企業に対しましては、工配公団、中小企業振興事業団、中小企業金融公庫、国民金融公庫などを活用して助成を行なってまいりたいと考えます。残余の質問に対しては関係閣僚からお答えをいたします。(拍手)
 宮田早苗君にお答えいたします。第一は、今後の中小企業対策の方向についてでございますが、わが国経済は、内外の諸情勢の激変に対応いたしまして、質的にも充実していかなければなりません。その中で、中小企業のあり方や中小企業政策の進め方も、新しい観点に立っていくことが必要でございます。先ほども申し述べましたように、中小企業政策審議会からいただきました意見具申をもとといたしまして、この基本的な考え方に沿って施策を充実してまいりたいと考えております。

 まず第一に、需要構造の変化への対応など、生産面での合理化だけでなく、いわばソフト面での対策に重点を置く必要があると考えます。中小企業が国際化の進展、福祉社会の指向などに対応していくには、これまで以上に市場動向に敏感で、また社会的要請に合致した企業経営をしていかなければならず、政府としても、事業転換の円滑化や情報の提供などを通じまして、中小企業を知識集約化していくことが必要であると考えておるのであります。

 第二に、中小企業の存在が多様であることを十分に認識をいたしまして、それぞれの業種、業態に対応して、きめこまかい政策配慮をしていくことであると思うのでございます。特に中小企業の中でも企業体質の弱い小規模企業に対しましては、とりわけ気を配った施策を十分に講じていかなければならないと考えます。

 第三に、中小企業に対する指針を示し、中小企業を積極的に誘導していくという役割りを重視していくことだと考えます。これまでの施策の推進に加えまして、新しい中小企業のあり方についてのビジョンをできる限り提示し、それに沿って中小企業を積極的に誘導していく施策を組み合わせていくということが一そう重要になってきておると思うのでございます。こうした基本的な方向に沿いつつ、具体的な施策の展開を進めてまいりたいと考えます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第71回国会衆議院本会議第58号(1973/09/07、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 谷川和穗君にお答えをいたします。今事件に対する政府の基本姿勢、今回のような問題にもかかわらず、日韓両国は歴史的に見ても非常に深い関係にある、今後の日韓関係のあり方についての基本姿勢はどうかという意味の御質問にまずお答えを申し上げたいと存じます。今回の事件は、日韓両国にとりまして非常に不幸な事件であり、両国の国民もひとしく憂慮している事件であり、何としても両国民の納得のいく公正な解決をはかりたいと考えておるのであります。また、今回の事件によりまして、日韓の友好関係をそこなわないようにしたいというのが両国民共通の願望でもあると考えておるのであります。この両国民の願望にこたえて、本件の公正な解決をはかるためには、まず何よりも事件の真相を解明し、それを踏まえての解決策を探求してまいりたいというのが政府の一貫した方針であります。

 ところが、この事件は日本で起きた事件でありますが、日韓両国にまたがる国際的な事件であり、真相解明のためには、どうしても韓国側の協力を必要といたしますので、政府は、これまでも韓国側の協力を求めてまいりましたが、今後も引き続いて求めてまいる所存であります。本件の真相解明にあたって、これまで韓国側から提供された資料は、まだ十分とは申せません。また、わが国の捜査当局の捜査線上に出てまいりました人物が、本件に関与しておったかどうかについても、残念ながら、両国捜査当局の判断は食い違っておるのが現況であります。しかし、真実は一つしかないと考えます。政府としましては、今後も韓国側の協力を得てその解明にあたり、公正な解決に努力をしてまいるつもりであります。また、本件について、筋の通った解決をはかりたいと政府が決意をしておりますのは、これらの日韓関係を、対等、平等の独立国間の公正な関係にすることが、日韓の真の友好関係を維持、発展させる基礎だと考えており、この点につきましては、韓国側にも異存はあるまいと考えておるからであります。われわれは、決して日韓間に存在した過去を忘れておるわけではありません。忘れていないからこそ、今後の両国関係を公正なものにしようと努力をしておるのであります。御了承の上、御協力を願いたいのであります。日韓両国が歴史的に見ましても非常に深い関係にありましたことは、また、ありますことは御指摘のとおりであります。韓国は、その急速な経済成長において、世界各国の注目の的となっているほか、最近、韓国政府が打ち出した新外交政策は、高く評価をされておるのであります。日韓関係も、このような現状に即応して、一そうの発展を遂げることを心から希望しておるのであります。

 なお、御指摘のとおり、日韓両国は長きにわたり友好親善を続けてまいらなければなりません。そのためには、両国の間にいささかのわだかまりもあることは許されませんので、政府は、細心、周到な配慮をしてまいるつもりでございます。なお、本件に関し、特使を韓国に派遣すべきではないかという御発言でございますが、政府としては、あくまでも真相の究明につとめることを基本としておりますし、御指摘の点につきましては、将来の状況に応じ、慎重に検討することにいたしたいと考えておるのであります。残余の具体的問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 米田東吾君にお答えをいたします。まず第一は、本件発生以来、国会への報告を怠り、韓国政府への気がね外交に終始をしてきた、韓国政府の内政干渉を許してきたという趣旨の御発言でございますが、政府は、あくまでも真相究明を旨とし、内外に納得のいく公正な解決をはかることを基本として、この問題に対処をしてきたのであります。九月五日金東雲一等書記官の任意出頭を要請したのも、かかる方針に沿ったのであります。また、韓国政府によるわが国に対する内政干渉は考えられないことであります。

 次は、今度の事件はわが主権の侵犯であり、対韓政策の誤りに原因があるのではないかというような趣旨の御発言でございますし、対韓経済援助も有効に利用されておらない旨の発言でございますが、現在捜査中の段階でありますので、現時点では主権侵害があったと断定することはできません。本事件の真相を究明し、公正な解決をはからなければなりませんが、同時に、韓国はわが国の隣国であり、友好な関係の維持増進につとめなければなりません。わが国の対韓援助は、民生の向上と国民経済の均衡ある発展に貢献しようとするものでありまして、一部の者が利益を得ているようなことはありません。

 わが国の主権とは何かという意味の御発言でございますが、国家が主権を有する結果として、他国は、その国の同意なくして、その領域内においてみずからの公権力の行使を行なうことは認められないことは申すまでもありません。もしかかる公権力の行使が現実に行なわれれば、これは主権の侵害であると考えられるものであります。

 問題は、今後の新しい日韓関係をどうするか、日韓関係及び対韓経済援助の打ち切りのような問題に対しての御発言がございましたが、政府は、事件の真相を究明し、内外に納得のいく解決をはかることを基本方針といたしておることは、間々申し上げておるとおりであります。政府は、韓国との友好関係の維持を不可欠と考えており、対韓基本政策を変更する考えはありません。わが国の対韓経済援助は、韓国の民生の安定のために行なっておるものでございまして、特定の政権の擁護のために行なっておるものではありません。(拍手)

 国連は平和的手段により、朝鮮の統一と同地域における国際の平和と安全の完全回復をはかることを目的として活動しておることは御承知のとおりでございます。本年の国連総会における朝鮮問題に対しても、かかる観点より各国と協議しつつ検討してまいりたいと思います。残余の質問は、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 米原昶君にお答えをいたします。第一は、主権侵害の問題でございますが、先ほども申し述べましたとおり、現在捜査中の段階でありますので、現時点で主権の侵害があったと断定することはできません。第二は、真相究明の問題でございますが、政府としては、従来より表明いたしておりますとおり、事件の真相を究明し、公正に筋の通った解決をはかるとの基本方針に変わりはありません。

 第三は、KCIA部員、勝共連合について申し上げますが、現在の段階において、本事件にKCIAが組織的な犯行として関係をしておるかどうかということは、全くわからないのであります。金東雲一等書記官がKCIAのメンバーであるという事実をも確認をしていないのでございます。そういう意味で、KCIA部員を国外に追放せよというような問題については考えておりません。国際勝共連合につきましても、他の団体におけると同様、破壊活動防止法の適用を受ける場合以外は、団体の主義、主張のゆえをもってこれを規制することは、憲法上許されないものと考えておるのであります。

 第四は、韓国は自由と民主主義を奉ずる諸国の中に入るかどうかという問題でございますが、韓国は自由と民主主義を基本目標とした国であると認識をいたしておるのであります。それから次は、日韓条約についてでございますが、政府としては、韓国との友好関係の維持、発展を基本としており、日韓条約を廃棄するというようなことは全く考えておりません。韓国条項と本事件は関係のないことであります。経済援助につきましては、三千三百万韓国民の福祉と繁栄を目ざすために協力をすべきでないとの御意見には遺憾ながらくみし得ません。北朝鮮との交流は、漸次拡大の方向で対処をしておるのであります。在日朝鮮人の処遇につきましては、何ら不当な差別はいたしておりません。

 最後に、国連の問題について申し上げますと、政府としては、韓国、北朝鮮両国民の願望である朝鮮統一が一日も早く平和的に達成をされ、国連の目的である国際の平和と安全が確保されることを希望いたしておりまして、国連における朝鮮問題にはこのような考え方で対処をしてまいりたいと考えます。(拍手)
 沖本泰幸君にお答えをいたします。第一は、今回の事件に対する認識と基本的なわが国の態度についてでございますが、先ほども申し述べましたように、政府としましては、あくまでも真相の究明を旨とし、内外に納得のいく公正な解決をはかることを基本としてこの問題に対処いたしておるのであります。今後とも韓国側の協力を得てさらに真相究明の努力を続けますが、日韓両国の友好関係を基本的にこわすことのないよう配慮することも必要である、こう考えております。また、金大中氏の来日の問題については、政府は真相究明のために来日を要請しておりますことは、御承知のとおりでございます。

 また、主権侵害についてという御発言でございますが、事件は現在捜査中でございまして、いまの段階では主権侵害があったということを前提にして抗議をし、陳謝を要求することは考えられないのでございます。犯人が韓国にいる場合にはどうするのかということでございますが、政府として引き渡しの要求を行なうかどうかは、今後事件の真相を見きわめた上で検討したいと考えております。それから次は、政府は韓国政府に対する無原則、無制限の政策を改めるべきであるというような御発言でございましたが、日韓両国は一衣帯水の地にあり、両国間の友好関係は、朝鮮半島、ひいてはアジアの平和のために緊要であります。わが国の対韓援助は、韓国の民生安定と国民経済の均衡ある発展に貢献することを目的としております。わが国の対韓援助は、無原則に行なわれているものではありません。また、特定の政権のてこ入れを目ざしておるものでもないことは、申すまでもないことでございます。残余の問題に対しては、関係大臣から答弁をいたします。(拍手) 
 渡辺武三君にお答えいたします。政府の主権侵害に対する見解はどうかということでございますが、先ほどから申し上げておりますとおり、主権とは、独立権、領土権等の意味で用いられているように、多義的なことばでございますが、国家が主権を有する結果として、他国はその国の同意なくして、その領域内において、みずからの公権力の行使を行なうことは認められておらないわけであります。もし、かかる公権力の行使が現実に行なわれれば、これは主権の侵害となるわけでございます。今度の事件が主権の侵害になっておるのかどうかということでございますが、これも先ほどからるる申し述べておりますとおり、事件は捜査中でございまして、主権が侵害されたと断定せられる状況にないことを御理解いただきたいと思います。

 第三点は、春日委員長が韓国首脳と約束をした中間報告の問題でございますが、いわゆる中間報告に関しましては、わがほうは、すでに八月の二十七日、後宮大使より金外務部長官に対して要求をした十項目は、御承知のとおりでございます。この十項目に対しましては、二十八日に資料として回答があったわけでございますが、二十九日にあらためて回答を求めたわけでございます。韓国側は、さきに差し上げました資料の中身を中間報告と思っていただきたいということでございましたが、この回答には日本政府は満足をしておらないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。事件の真相究明が真の日韓友好であるというお考えに対しては、私もそう考えておりますし、また、日韓の間の友好を続けなければならないというお考えに対しても敬意を払っております。政府としましては、あくまでも真相の究明を旨とし、内外に納得のいく公正な解決をはかることを基本として、この問題に対処をしてまいります。かかる態度を貫くことこそ、真の日韓友好に資するゆえんであると考えられることは、全く御指摘のとおりでございます。また、各開発途上国に対する経済援助の成果等につきましては、常に調査を行ないまして、効率的に援助が行なわれるよう注意をしてまいりたいと考えます。残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)





(私論.私見)