上坂昇君にお答えをいたします。まず第一間日は、実質的な円切り上げに追い込まれた原因は、政府の内政面における福祉重点への施策転換が進まなかったことにあるのではないかという趣旨でございますが、さきに閣議決定された経済社会基本計画でも明らかにされておりますように、最近の内外情勢の変化に対応して、従来の成長優先の経済構造から、国民福祉と国際協調を志向した経済構造へ転換をはかることが、基本的に重要であると考えておるのであります。政府としては、今後とも、社会資本の整備、社会保障の充実等の福祉政策を積極的に展開するとともに、公害対策の強化、週休二日制の普及等につとめてまいる考えであります。
第二点は、固定相場制復帰への時期いかんという趣旨の御発言でございますが、政府としては、今後の通貨情勢の推移と、為替市場の動向を見守り、円の相場の適正な水準を見出した上で、適当な時期に固定相場制へ復帰することが望ましいと考えておるのであります。
第三点は、この際、列島改造論による国土総合開発は取りやめてはいかんという趣旨の御発言でございますが、先ほども述べましたように、輸出優先、生産第一から、社会資本の拡充、生活環境の整備、福祉社会の建設、国民福祉の増進へと前進をはかってまいりたいと考えております。自然と人間社会との調和した豊かな環境を、国土全域にわたりつくり上げていくための必須の政策として、列島改造による国土の総合開発は急を要するのでございますから、何とぞ御理解いただきたいと思います。(拍手) |
山崎平八郎君にお答えをいたします。今後の経済成長のテンポ、産業構造の方向及び農業の位置づけ等についてまず申し上げますが、政府は、従来の生産、輸出優先の経済運営を改め、国民福祉の充実を今後の基本的目標とし、産業構造も、重化学工業に傾斜したものから、知識集約化を中心とするものに転換をさせてまいります。また、この過程で、農業と他産業との生産性上昇の格差も次第に縮小し、農業の健全な発展が確保されるものと考えておるのであります。なお、今後五年間の実質経済成長率は、経済社会基本計画において述べておりますとおり、九%を想定しておるわけでございます。
第二は、土地の乱開発に対する対策についてでございますが、乱開発による土地の無秩序な利用は、国民の限られた資源である国土の適正かつ合理的な保全に著しい支障をもたらし、農業、農村の破壊を招くことにもなります。早急に国土全体にわたって土地利用の秩序を確立し、その一環として農林地の適正な保全をはかる必要があるわけであります。新国土総合開発法案におきましては、全国土にわたり土地利用基本計画を作成し、土地売買等の届け出制度及び特別規制地域における土地売買の許可制度を設けることとしておるのであります。また、特定総合開発地域の制度を設け、計画的な開発を推進するための措置を講ずることといたしておるのであります。このような新国土総合開発法の運用とあわせて、農業、農村については、農業振興地域制度の推進、農地制度の適正な運用、農村地域の総合整備等を推進してまいりたいと考えておるのであります。
第三は、いわゆる商品投機に対する政府の基本的対処方針等について言及されましたので、お答えをいたしたいと存じます。一部農産品価格の高騰に対処して、政府としては、輸入の増大、国内生産物の出荷促進、商品取引所における規制措置の強化、商社等に対する要請、警告等、各般の対策を講じてまいったことは御承知のとおりでございます。一部商品においては、すでに値下がりの傾向を見せておるものもあるわけでございます。なお、今後におきましても、投機的な動きに対しましては、必要に応じ、あらゆる手法を活用して、商社等に対する指導等を強化するとともに、今国会に提出をされておる生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案の成立を待ちまして、その活用により、買い占め等の弊害の除去をはかってまいりたいと考えます。
最後に、農産物の自由化に対する基本方針について申し上げます。貿易の自由化につきましては、最近の内外の情勢にかんがみ、一般的にはこれを推進しなければならないと考えておるのであります。農産物の自由化につきましては、種々困難な面があることは十分承知をしております。生産者の理解を得ながら万全の体制を講じつつ、できるものから自由化を進めてまいりたい、こう考えます。(拍手) |
野坂浩賢君にお答えをいたします。第一は、農業と農村の新たな展開のための施策いかんという御発言に対してお答えをいたしますが、農業及び農村は、国民に食料を安定的に供給するだけではなく、国土と自然環境を保全し、健全な地域社会を維持する上で重要な役割りを果たしており、農業と農村の健全な発展なくしては、わが国経済の調和ある発展はないものと考えておるのであります。このため、農産物需要の動向に即した農業生産基盤の計画的な整備や農業団地の形成等を通ずる生産性の高い農業の育成をはかるとともに、農村の生産と生活を一体として、農村環境の総合的な整備を進めてまいりたいと考えております。
第二は、農産物は極力国内で自給するという決意と、自給のための具体策についての御発言でござますが、国際分業論は、工業製品については妥当する面もあります。しかし、食料は国民生活の基盤をなすものでありますから、国内生産が可能なものは、生産性を高めながら、極力国内でまかなうべきであります。安易に外国に依存することは、国の政策としてはとるべきでないと考えておるのであります。
このような観点に立って、主要農産物である米、野菜、果実、牛乳、乳製品、肉類、鶏卵等については、完全自給ないし八割以上の自給率を確保する等、農産物需給の動向に即して農業生産の確保をはかってまいりたいと考えます。このため、新たに土地改良長期計画を策定し、農業生産基盤の計画的な整備を進めるなど、生産、構造、価格、流通の各般の施策を進めてまいりたいと考えます。(拍手) |
津川武一君にお答えをいたします。農村は、申すまでもなく国民に食料を提供するというだけではなく、民族のふるさとであり、心のふるさとであり、魂の安息所であります。この農村が荒廃に帰するような状態で日本のあしたがあるわけはありません。その意味において、農業基本法を中心にしながら、長い展望に立ちながら、よりよい農村づくりを進めておることは御理解をいただきたいと思うのであります。
第二は、オレンジなどの輸入自由化の要請にどう対処するかということでございますが、先ほども申し上げましたように、貿易の自由化につきましては、最近の内外の情勢にかんがみ、これを推進しなければならないと考えております。農産物の自由化は種々困難な問題がありますが、生産者の理解も得ながら、万全の対策を講じつつ自由化を進めてまいりたい、こう考えておるのであります。
列島改造と農村との問題に対して言及がございましたから、この際、簡単に申し上げておきますが、日本は、明治、ちょうど百年前には一次産業比率は九〇%でございました。それが、先ほどから御指摘がございますように一七%を割ったのであります。しかし、アメリカの一次産業比率は四%であります。拡大EC十カ国の平均数字は六%であります。明治から大正、昭和へと百年の歴史を経ながら今日の国民総生産を拡大し、国民所得を拡大してきたことは、歴史が示すとおりであります。その中で、専業農家がアメリカ並みの四%になりつつあるということを考えるときに、農村に対して何をしなければならないかということをまじめに考えなければならないのであります。演説だけで農民はよくならぬのであります。(拍手)
それは米にとってみても、国際価格の倍であります。三倍でも四倍でもいいということにはなりません。そのためには、国際競争力にたえ得るようなものとか、主食としてどうしても国内で確保しなければならないものであったならば、国際価格の倍であろうが二倍半であろうが、ある程度の確保をしなければならないのが政策の限界と考えなければならぬのであります。(拍手)ですから、社会主義体制の国の中で主食にも不足をしておる国の多いことは、如実にこれを物語っておるじゃありませんか。(拍手)でありますので、ただ現在のままに推移を許せば、一次産業比率の減少の部分は大都会に集中をし、さなきだに混乱の都会の環境はなお混乱するのであります。公害も、土地も、物価問題もどんどんと大きくなるのであります。農民であるというかもしれませんが、私も百姓の子であります。(拍手)やがては百姓に返る身であります。皆さん、そういう意味で、列島改造を進めることによって国土の水や、しかも一次、二次、三次産業の労働調整を行なう、そういう状態をはからずして、どうして一体日本の一次産業が、生活向上があるのでありますか。(拍手)
いま兼業農家が多くなり、農業収入と兼業収入との比率が逆転しつつあるのは、これは事実じゃありませんか。それを否定して、いまの津川君のような発言だけでどうして一体農村がよくなるとお思いになりますか。だから私は……(「簡単にやれ」と呼ぶ者あり)簡単じゃありません。こういうことは、もっとちゃんと申し上げなければなりません。ですから、列島改造を行なうことによって農工商三位一体の、全国均衡ある発展をはかる以外に、一次産業や二次産業の均衡をはかることはできないわけであります。そういう意味で、列島改造を非難し、批判をしておって、ただ農村だけをよくしようといっても、それはできない相談であることを御理解いただきたい。(拍手)
それから、農産物の価格保障対策に対して申し上げますと、現在米麦をはじめ畜産物、青果物、畑作物等、大部分の農産物を対象に価格政策を実施しております。今後は、野菜、果実、畜産物等の需要の拡大する部門を中心に価格政策をさらに拡充強化して、価格の安定につとめてまいりたい。以上。(拍手) |
瀬野栄次郎君にお答えいたします。第一は、農業政策のもととされておる農業基本法を再検討せよということでございますが、基本法施行以来、わが国農業は、農業生産の選択的拡大と生産性の向上を実現しつつ、農業従事者の所得と生活水準の向上を果たしてまいりました。他面、農業と他産業との生産性の格差の拡大、兼業化の進展、自立経営農家のシェアの低下等の現象が見られることも事実であります。
しかし、農業基本法に定められている農政の基本的目標、及びその目標を達成するための根幹的施策の方向は、現在の情勢においても同じねらいであると考えられるのであります。したがって、農業基本法を再検討する考えはございません。政府独自の世界の農産物の長期需給見通しを立てよということでございますが、これは必要でございます。
今世紀末になれば、地球上でもって不足のものは何か、水と主食であろうと、いまから予言せられておるのでありますが、それだけではなく、この一、二年間に非常に食糧の不足が告げられておるわけでございます。しかも、食糧の非常に大きな消費国であるソ連においても、アメリカから、両年度において千八百万トンから二千万トンの小麦を買い付けておるというような事情、それが日本やその他の国にまで大きな影響をもたらしておることは事実でございます。それだけではなく、もっと大きな消費国が非常に食糧に困っておるという事実は指摘するまでもないのでございまして、国際的に見た食糧の長期需給見通しを立てなければならないということは、御指摘のとおりでございまして、検討を進めてまいりたいと思います。
第三点は、輸入の自由化問題でございますが、自由化がアメリカとの関係だけで行なわれるというようなことをお考えになっておるわけではないこともよく承知しておりますが、この際、一言いたしておきたいことは、南北問題いわゆる北側の持てる国と南の開発途上国との間を調整しなければならない人類の悲願、言うなれば世界の人類の平和を守るためにどうしても行なわなければならない南北問題の解決には、一次産品の無税化ということが大前提になっておることを、ひとつ知っていただきたいと思うのでございます。ケネディラウンドの推進、今年度から新国際ラウンドの推進が行なわれるわけでございますが、主要工業国といわれるような日本は、食糧の自給度を上げなければならないという要請と、同時に南北問題に大きく貢献をしなければならないのだという事実の調整が必要であることを、十分御理解賜わりたいのでございます。
しかし、自由化に対しては、国内にも困難な問題がありますので、生産者の理解を得ながら万全の体制を講じた上で自由化を逐次進めてまいりたい、こう述べておるのであります。
それから、農産物の投機的買い占め等に対しての御発言がございましたが、御承知のとおり、出荷の促進、商品取引市場における規制措置の強化、商社に対する要請や警告等々の措置を行ない、値下がりも行なわれておるのでございますが、今国会に提出をしております生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律、これはもうぜひ、いっときも早く通していただきたいのです。私がこういうところで、こうして国会で御審議をいただいておる過程におきましても、この法律は、ほんとうに一日もいっときも早く必要である。(拍手)そうすれば、それだけ物価が下げられるのです。国民大衆の要請に応じられるのです。私は、そういう意味で、心からお願いをいたします。(拍手)
それから、あとは農林大臣からお答えをいたしますが、最後に、出かせぎの問題を申し上げますと、これはお互いが、政党政派を越えて解決をしなければならぬ問題であります。この出かせぎの現状は、政党政派は別にしても、この事実に目をおおうことはできないのでございます。
それは営農規模を拡大するといっても、日本の地形、地勢上の制限から考えると、おのずから限界が存在するのであります。しかも、日本の半分は、特に米の主産地は、豪雪単作地帯であります。そうすれば、一年間にほんとうに純農業に従事できる月というものは、二カ月間しかないのであります。昔のように、炭を焼くこともできません、俵をつくることもできません、むしろを織ることもできないんです。そうすればどこに行くかというと、結局冬季は、農繁期以外のときは、公共事業に従事するか、公共事業のできない降雪期には大都会に出かせぎを余儀なくせられるのであります。
だから、列島改造論においては、一次、二次産業の調整を行なおうとしておるじゃありませんか。(拍手)農村地帯において列島改造論が高く評価されておるのは、そのゆえんであります。(拍手)事実に目をおおってはいけません。皆さんも、事実を十分御検討いただきまして、列島改造論を推進していただければ、このような悲惨な出かせぎはなくなるのであります。(拍手)どうぞ御理解をいただきたい。(拍手) |
稲富さんにお答えいたします。白書の提出が非常におそくなった、はなはだ遺憾であるという御指摘でございまして、これは、これからできるだけ早く提出をいたしますように努力をいたしますから、ひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。それは、漫然としておってきょうになったわけでないのでございます。社会経済環境の変動に対応しまして、農業及び農村も、きわめて激しい動きを示しております。このような動きを的確に把握して、将来の農政の指針として役立たしめるためには、可能な限り最近時点までの諸統計や情報を収集し、動向分析に万全を期する必要があったためでございますので、これは、両々相まつように努力をいたしますので、御理解をいただきたい、こう思います。
農業基本法を抜本的に改正せよということでございますが、これは、先ほども申し上げたとおり、確かに経済成長が著しかったために、農業と他産業との間の生産性の格差の拡大や、兼業化の問題等が起こっております。しかも、自立経営農家のシェアが低下をしておる現象もあらわれておるのでございますが、しかし、それかといって、いまの農業基本法が必要でないということではないのでございます。農業基本法は、農政の基本的目標、その目標を達成するための根幹的施策の方向は、現在の情勢においてもまだ同じだと考えておりますので、農業基本法をいま改正することは考えておらないということを述べておるわけでございますが、農村の実態、将来的な問題、国際的な情勢からどうしなければならないという具体的な問題については、十分検討を進めてまいりたい、こう考えるわけでございます。
それから、稲富さんは農業基本法がつくられるころからずっと御主張になられておる農業の専門家でもございますから、よくおわかりであろうと思うわけでございますが、農村というのは、ただ農村を保護するという状態だけでは、農村の生活はよくならないわけであります。それは、世界の国々の状態移り変わる歴史をひもとくまでもなく、一次産業を主体としておった人類が、二次産業へ、三次産業へとどんどんと移ってきておるのでございます。それは、先進工業国のみならず、後進国、開発途上国も、先進工業国が歩いたと同じ道をいま歩み続けておるのであります。それは、年に一回とか二回しか生産ができない一次産業というものと、空気からものを取って生産をしようというような二次産業と、それを取り扱おうというような三次産業を比べてみて、その生産性に差のあることはやむを得ないのであります。しかし、二次産業や三次産業の収益の中から一次産業を保護しなければならないというのは、生命を維持するために、一次産業は欠くことのできないものであるからであります。しかし、それにはおのずから限界がございます。
先ほども申し上げましたように、地球上の平和を維持するためには、現に九〇%も一〇〇%も一次産業で生きておる国もあるのでありますから、その一次産業と、われわれ主要工業国の間でお互いに協力をすることによって、それは自然の協力でなければなりません。自然の国際分業でなければなりません。そういう状態においてのみ平和が維持できるのでございますから、新ラウンドの推進が必要であることもまた事実でございます。その中において、日本の農業、日本の一次産業をどう位置づけ、日本全体の産業の中でどうしなければならぬかというのが理想でなければならぬわけであります。ですから、ただに農業だけをどこまでも、一〇〇%自給をするのだということで、国際価格の三倍になっても五倍になっても、そうしなければならないのだという農政は存在しないのでございますから、おのずから限界の中における農政であることを、農民も、またわれわれも十分理解をし合わなければならぬわけであります。それは、農村に生まれ育って、こうして出てこなければならない私が、真に叫んでおるのでありますから、これはひとつ理解をしていただきたい。(拍手)
しかも、農村の青年に希望を持たせなければならない、それはそのとおりであります。魅力のない農村に青年が居つくわけはありませんし、青年の居つかないところに嫁が来るわけはありません。これはまじめなことなんです。そういう意味で、農政というものを二次産業や三次産業と同じ収益にあげるには、いまの二町歩や三町歩や五町歩や十町歩でやれるわけはありません。そうすれば、ほんとうに国際競争力に耐え得るような農村を考えれば、いまの二八%程度の一次産業比率は、十分の一近くなるでありましょう。専業農家はわずか四%なのであります。ですから、そういうことになれば、どうしても二次産業や三次産業へ、さなきだに混乱をしておる大都会に過度に集中をせざるを得ないのです。だから、いま公害や交通や住宅で困っておる大都会から、働く場所を提供し、一次産業と二次産業が労働調整が可能なときに住宅も解決できるし、社会環境も整備されるし、人間生活も確保され、一次、二次、三次産業の調整ができるのだということを申し上げておきます。それが、農村青年に対して夢と希望を与えることであるということをすなおに申し上げておきます。(拍手) |