第一は、今回の通貨不安が発生した経緯と理由に対して述べよということでございます。本年に入ってから、イタリアの二重市場制導入、スイスの変動相場制移行に端を発した欧州の通貨不安は、二月一日以降、西ドイツへの大量のドル流入となり、重大な局面に発展をしたのでございます。このことにつきましては、一部の欧州通貨の強い、弱いの問題があっただけではなく、一昨年十二月のスミソニアン協定以降も、米国の国際収支が改善しなかったことが密接に関係しておることは否定できないのでございます。
この間にありまして、米国は、その国際収支改善として、ドルの信認を回復することが国際通貨情勢の安定のための基本的要件であるという認識に立ちまして、まず米国自身が一〇%のドル切り下げを決定し、これに対応して、各国がそれぞれ自国の置かれておる国際環境のもとで適切と考える措置をとることになったのでございます。わが国としましては、欧州主要諸国とともに、今回のドルの切り下げを歓迎するとともに、円の為替相場は当分の間フロートさせることにしたのでございます。
第二は、IMF等、国際的な話し合いによって解決できなかったのかということでございますが、今回の措置も、関係国間の協議によって事態の収拾がはかられたものでございます。また、今回の通貨危機を通じまして、各国とも、長期的な国際通貨制度改革の緊要性をあらためて認識し、今後、IMF二十カ国委員会による通貨改革問題の討議の進展をむしろ早めることになるのではないかと考えておるのでございます。
次は、国際収支の不均衡是正の問題でございますが、政府は一貫して国際収支の均衡を目ざして努力をしてまいりました。昨年十月には第三次円対策を決定し、関税の一律二〇%の引き下げ、輸入ワクの拡大、貿管令による輸出の適正化、大型補正予算による内需の拡大などを行なってまいったことは、御承知のとおりでございます。また、現在審議をお願いしております四十八年度予算及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置きますとともに、国際収支の均衡回復を重要な柱として編成をしたものでございます。
次は、産業構造を転換せよという問題でございますが、戦後のわが国経済政策の基本が輸出及び設備投資主導型であったことは、御指摘のとおりだと思います。これからは、経済社会基本計画で明らかにせられておりますように、生活優先、福祉優先の経済政策へ転換をはかるとともに、産業構造の高度化、知識集約化を推進して、国際分業を進めてまいりたいと考えております。(拍手)
なお、為替レートの調整をもっと柔軟に考えよという趣旨の御発言に対して申し上げます。為替レートの安定が望ましいことは、申すまでもないことでございます。国際経済社会の中にあって、為替レートの変更は必ず他国に影響を及ぼすことになり、特に先進国間にあっては、国際協調の観点からも為替調整は慎重に取り扱わるべきものだと考えます。今回の措置は、米ドルの切り下げに対応し、関係国間の話し合いによって事態の収拾をはかろうとするものであり、わが国といたしましても適切にこれに対応してまいりたいと考えておるのでございます。
フロート後の通貨情勢の見通し等に対して申し上げます。わが国が、切り下げられたドルに対する為替相場を直ちに決定しなかったのは、ここしばらくの間、今回のドル切り下げの効果と国際通貨情勢の推移を慎重に見守った上で、適正な水準を見出すことが適当であると判断をしたからであります。今後、為替市場の動向を見きわめた上で、適当な時期に固定相場制に復帰したいと考えております。輸入価格の引き下げ効果等に対してでございますが、政府としましては、今回の措置による輸入品価格の低下が消費者物価によりよく反映いたしますよう、輸入代理店対策、輸入の自由化、関税の引き下げ、輸入品にかかる流通機構の改善などの各種施策を、強力に展開をいたしてまいりたいと考えます。
輸出関連産業、特に中小企業等に対する問題について申し上げます。政府といたしましては、今回の措置に伴い、輸出関連中小企業が受ける影響の実態を十分把握をいたします。その上、金融、税制、信用補完、為替取引の安定などの面で、適時適切なる対策を講じてまいります。赤字国の責任はどうだという問題でございますが、赤字国である米国が、国際収支改善のため、ドルの切り下げを行なったことは評価すべきであります。わが国が、今後の交渉において、主張すべき点は主張することは当然でございます。
最後に、政府の経済見通しなどの改定は適当でないような御発言をもとにして、四十八年度予算に対してお触れになりましたが、御指摘のとおり、変動相場制下でのレートの水準、変動相場制の期間等、流動的な要因が多いので、現段階で、年度を通じた、経済全体に及ぼす影響や、税収を中心とした歳入の見積もり等に及ぼす影響を把握することは困難であります。したがいまして、このような段階で歳入見積もり等を改定するのは適当でないと考えております。また、変動相場制移行に伴う国内経済面への影響等を回避するためにも、現在御審議を願っております四十八年度予算は早期成立をはかり、予算の空白を生ずるような事態はぜひとも避けなければならないと考えております。以上であります。(拍手) |
第一は、数次の円対策は失敗であるということでございますが、政府は一貫して、国際収支の均衡を目ざして努力をしてまいったわけでございます。昨年十月には第三次円対策を決定し、関税の一律二〇%の引き下げ、輸入ワクの拡大、貿管令による輸出の適正化、大型補正予算による内需の拡大などを行なってまいったことは御承知のとおりでございます。
また、現在審議をお願いしております四十八年度予算案及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置きますとともに、国際収支の均衡を重要な柱として編成したものでございます。この予算案が出ましたときに、代表質問の中で、これは社会福祉を中心としたというけれども、国際収支対策予算ではないかという御質問をいただいたことによっても明らかなとおりでございます。(拍手)
それから、今回の問題は、日本の経済力が低下をして円の切り下げが行なわれたのではなく、各種の処置をいたしてまいりましたが、しかし、日本の国際収支面はだんだんとよくなりつつございますけれども、輸出は依然として伸びております。輸入は増大し、均衡の方向に向かっておることは御承知いただけると思うのでございます。今回は日本が切り出した話ではなく、アメリカ自身が一〇%のドル切り下げを決定し、これに対応して、各国がそれぞれ自国の置かれておる国際環境のもとで適切と考える措置をとることになったのでございます。わが国といたしましては、本日から当分の間、円をフロートさせることにいたしたのでございます。 |
今後とも国際収支を妥当な規模におさめる努力を続けてまいりたいと考えておるのでございます。第二は、いまこそ福祉優先の経済構造に転換すべきであるという御所論でございますが、政府は、経済社会基本計画におきましても明らかにいたしておりますように、輸出優先の経済構造から国民福祉指向型の経済構造へ転換をはかることが基本的に必要であると考えておるのでございます。このため、経済成長の成果がより一そう社会のすべての階層に行き渡り、国民がひとしくゆとりと潤いのある生活ができますように、社会保障の充実、生活関連社会資本の整備、豊かな自然環境の確保などにつとめてまいります。
予算の再編成、経済見通しの修正などについて御発言がございましたが、円の変動相場制に移行後、流動的な要因が多く、現段階で、年度を通じた経済全体に及ぼす影響、したがって税収を中心とした歳入の見積もりなどに及ぼす影響を把握することは困難でございます。
また、変動相場制への移行によりまして影響をこうむる輸出関連中小企業等に対しましては、緊急対策を必要とする場合には、予備費の使用等によって対処することが可能であると考えておりますが、なお、先ほど大蔵大臣が述べましたように、諸般の措置を講じてまいりたいと考えるのでございます。今回の措置が国内経済面に及ぼす影響を回避するためにも、現在御審議をいただいております四十八年度予算につきましてはその早期成立をはかり、予算の空白が生じるような事態はぜひとも避けなければならないと考えておるのでございます。(拍手)せっかくの御協力を切にお願いをいたします。
なお、賃上げ抑制の問題等について御発言がございましたが、賃金問題につきましては、労使それぞれの立場から主張がなされております。基本的には労使の自主的な話し合いによってきめらるべきものでございます。政府としましては、労使が国民経済的な視野に立って合理的な解決をはかることを強く期待をいたしておるのでございます、
なお、変動相場制等に対して相当の責任ということでございましたが、これらの問題については、予算委員会でも申し述べておりますように、日本は諸般の努力を続けてきたことは御承知いただけると思うのでございます。今度は、アメリカが依然としてドル不安から抜け出すことができないので、そして日本を含めた各国に対して一〇%の切り下げを提案をし、マルクはこれを受けたわけでございますし、そのほかのフランやポンドや円は変動相場制に移行したわけでございます。これは切り下げが行なわれる場合と、先般のオーストラリアのように切り上げが行なわれる場合もございます、こういう問題でございまして、日本が国際通貨の問題に取り組むとともに国際収支改善対策に努力を続けなければならぬことは、これは当然のことでございます、これからもなお懸命な努力を続けてまいりたいと思います。(拍手) |
第一は、アメリカのボルカー次官と会って何を相談したかということでございますが、アメリカのボルカー次官とは愛知大蔵大臣が会ったわけでございまして、私は会っておりません。これは、国際通貨全体の問題について話し合いをしたということで、具体的な問題については私は聞いておりませんので、愛知大蔵大臣からお答えをいたします。
それから、固定相場制にはいつ戻るかというようなお話がございましたが、今後、為替市場の動向も見きわめた上で、適当な時期に固定相場制に復帰したいという考えでございまして、これも具体的な問題は大蔵大臣から答弁をいたします。
それから、政府の円対策と責任問題についてお話がございましたが、政府は一貫して国際収支の均衡を目ざして努力をしてまいりました。昨年十月には御承知の第三次円対策、関税の一律二〇%引き下げ、輸入ワクの拡大、貿管令による輸出の適正化、大型補正予算と、御承知のとおりの措置をしてまいったわけでございます。また、現在審議をお願いいたしております四十八年度予算及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置くとともに、国際収支の均衡回復を重要な柱として編成をしたものでございまして、これも国際収支対策の重要な施策の一つでございます。
それから、今回の措置は、国際通貨制度の危機を打開するため、関係国間の協議を通じてドルの切り下げを中心に対応策が講ぜられたものでございます。わが国といたしましても、今後とも国際収支を妥当な規模におさめる努力を続けてまいりたい、こう考えるわけでございます。
それから、アメリカに対して、ドル価値の維持に対して言うことを言っておるかということでございますが、これは一昨年の日米経済閣僚会議の場も、またサンクレメンテの場においても、強く要請をしておるわけでございます。それはアメリカのドルが基軸通貨としての責任を果たせないというようなことだけではなく、ドルが弱くなることは日本自体も影響を受けるのでございます。御承知のとおり、年間百四、五十億ドルも輸出入が日米間にあるわけでございます。今年度は日本からアメリカへの輸出が、アメリカからの輸入に対して四十億ドル以上も出超であるということを考えると、少なくともドルが安定をしてもらわなければならないということは、私が申し上げるまでもないのでございます。その意味でドル価値の維持のためには、アメリカも商売をうまくやってもらうこととか、売り込みに熱心になってもらうとか、それから海外に対する投資を抑制するとか、いろいろなドル価値の維持のために具体的政策をとられたいということを、私からも強く要請をいたしておるのでございます。金とドルとの交換が一日も早くできるように、基軸通貨としてのドルの価値維持ができるようにということを間々要請をしておるのでございまして、今回、しかるにもかかわらず、一〇%のドルの切り下げをしなければならないというような状態であったことは、はなはだ遺憾でございますが、これは事実問題として受けとめ、対処してまいりたい、こう考えるわけでございます。なお、いろいろな問題ございましたが、その他の問題については、関係大臣からお答えをいたします。(拍手) |
政府の円対策は失敗であるということでございますが、先ほどから申し上げておりますとおり、国際収支の均衡を目ざして努力を続けてまいったわけでございます。昨年の十月には第三次円対策をやったり、またずっと引き続いての対策を行ないながらまいったわけでございますし、現在御審議をお願いしております四十八年度予算案及び財政投融資も、国民福祉の向上に重点を置くとともに、国際収支の均衡回復を重要な柱として編成をしたものであることは御承知のとおりでございます。それから、今回の措置は、国際通貨制度の危機を打開するため、関係国間の協議を通じてドルの切り下げを中心に対策が講じられたものでございます。わが国といたしましても、今後とも国際収支を妥当な規模におさめる努力を続けてまいりたい、こう考えるわけでございます。
赤字国の責任という問題、円に責任を転嫁しようとするアメリカに対する態度等についての御発言にお答えをいたします。赤字国でありますアメリカが、国際収支改善のためドルの切り下げを行なったことは評価すべきでございます。わが国が、今後の交渉において、アメリカに対して主張すべき点は主張することは当然でございます。それから、経済見通しと予算案等については、先ほども申し上げたとおりでございますが、いずれにしましても、予算案は一日も早く執行できるような体制にしてもらうこと自体が一つの対策でもございますので、格段の御配慮をお願いしたいと思うわけでございます。
福祉路線の問題については、政府は、経済社会基本計画におきましても明らかにいたしておりますとおり、輸出優先の経済構造から国民福祉指向型の経済構造へ転換をはかります、こう申し上げておるのでございまして、このとおりだと思うわけでございます。なお、経済成長の成果が一そう社会のすべての階層に行き渡り、国民がひとしくゆとりと潤いのある生活ができるよう、社会保障の充実、生活関連社会資本の整備等を行ない、豊かな自然環境の確保などにつとめてまいりたい、こう考えるわけでございます。
中小企業対策については、先ほど通産大臣から申し述べましたが、今回の処置に伴い、輸出関連中小企業が受ける影響の実態を十分把握した上、金融、為替取引安定などの面で、適時適切なる対策を講じてまいりたいと考えるのでございます。
それから、輸入価格の引き下げを消費者価格へ反映させよという御説でございますが、政府としては、今回の措置による輸入品価格の低下が消費者価格によりよく反映するよう、輸入代理店対策、輸入の自由化、関税の引き下げ、輸入品にかかる流通機構の改善などの各種施策を強力に展開をしてまいりたいと考えております。
最後に一言申し上げたいのは、国際収支対策をかかる強力にやってきたにもかかわらず、その効力を発せず、ドルの切り下げが行なわれたではないかということでございますが、これは、輸出振興ということは、比較的いろいろな施策があるにしても、経済力が強くなって、国際競争力が強くなって、輸出がなかなか減らないということに対しては、これは輸出を振興するよりもむずかしい面がございます。
もう一つは、どうしても輸出を内需に振り向けなければならないわけでございまして、そのためには財政主導型の大きな投資が必要でございます。そのために四十七年度の予算の補正として六千五百億の審議をお願いしたときも、国際収支の面ではわかるけれども、こんな大きな予算はインフレ予算じゃないか、今度の予算も、提出をしたときにはそういうふうに見られるわけでございます。
ですから、そういう意味で、輸出力が強くなっておる現段階において、日本だけの力でもってすべての国際均衡を保つということは、たいへん無理な面があるわけであります。ですから、そういう意味で、アメリカ自体としても、赤字国の責任を痛感して、ドル価値が維持するように諸般の政策の実施を求めたわけでございますが、どうしても――アメリカとしてはいろんなことをやったのです。第一回のドルの切り下げを行なったわけです。円平価の切り上げも行なってわずか一年半しかたたないときに、ドルみずからが一〇%の切り下げをしなければならないような状態になったということでありまして、その面からいうと、たいへんに遺憾なことだといわざるを得ません。しかし、国際均衡を保つ国際通貨制度の中で、協調して、アメリカがみずからの責任を痛感し、みずからの責任によってドルを切り下げたということは、評価をしなければならぬわけでございます。
こういうめんどうな問題ではございますが、しかしまあ、円価値が切り下げられるような状態よりも、切り上げられる措置のほうが望ましいことは言うまでもありません。(拍手、発言する者多し)
しかしそれは、切り上げられた場合において中小企業等に大きな影響がありますので、その影響がないように努力をしなければならぬことは言うをまちません。これはひとつ十分考えて配慮してまいります。昭和初年に一ドル対二円であったものが、二円五十銭対一ドルになり、三円対一ドルになり、最後には三百六十円対一ドルになったわけでございますが、ここで何十年ぶりかで円価値が上がっておるというのでございまして、そういうところはやはり評価をせざるを得ないのであります。(拍手) しかも、その円の切り上げによって影響を受ける面に対して万全な配慮をしなければならぬのが、政策遂行の責任だと考えておるわけでございます。(拍手) |
円平価の再調整を迫られるような事態が起こるまでに対しての実効があがらなかったではないかということでございますが、先ほどから間々御答弁を申し上げておりますとおり、政府は、一貫して国際収支の均衡を目ざして努力をしてまいったわけでございます。第一回目の通貨調整というのが多国間で行なわれたわけでございまして、異例な措置として行なわれたわけでございます。また、その後、御承知のとおりの国際収支対策をたくさんやってきたわけであります。臨時国会を開いてさえ、法案や予算の御審議を願ったこともございます。そういうようなことをしながら、日本がなさなければならない国際収支均衡対策に対しては全力を傾けたわけでございますが、いつも御指摘を受けるとおり、黒字国の責任だけでもってこのようなものは解消できないのだ、だから、ドルの価値維持ということに対して赤字国であるアメリカも努力をしなければならないということでございまして、私が先ほど御答弁申し上げたように、アメリカに対しても、ドルの交換性を回復するようにしてもらいたい。それは日本だけでもってできるものではないので、アメリカみずからがドルの価値維持のための諸施策を進められることと相まって日米間の不均衡は解消したい。そのためには、ハワイ会談におきましては、日本の基礎収支の均衡、少なくともGNPの一%以内に経常収支の黒字幅を押えるには三年間ぐらいかかりますよ、こう言っておったわけでございます。
ところが、その後のいろいろな施策において、輸入は拡大をいたしました。一−三月は輸入期であるとはいいながら、史上最高の輸入というふうにもなっております。しかし、国内の景気が非常に上向きになってきて、いま御審議いただいております経済見通しでは、一〇・七%ということで出しておりますが、しかし、御審議の過程において、どうもいまの状態からいうともっと景気は上向くのじゃないか、そうすると五・五%と政府が考えておる物価も、もっと上がるのじゃないかという御質問を受けておるわけであります。ですから、一〇・七%に成長率を押え、五・五%に押えるためには、四十八年度、御審議をいただいておる予算の中で思い切った政策的な措置が必要でございます、そして、五・五%にし、一〇・七%に押えたいと思っております、こう述べておるわけでございます。
そういう状態において、輸出が急激に内需へ転換もなかなかできないということでございます。しかも、現在のような高い成長率であっても輸出はふえるのでございますから、そうすれば、貿管令の適用とか、輸出税とか、いろいろなことを考えざるを得ないのであります。そういう意味で、前の前の国会には、国際経済調整に関する法律の御審議をお願いしたわけでありますが、しかし、国内の情勢を見れば、簡単にあの法律が成立ができなかった事情もございます。ですから、先ほども申し上げたように、輸出を伸ばすことは、税制上とかいろいろな問題でもって的確な効果をあげることはできますが、しかし、日米間の三十億ドル、四十億ドルという日本の出超を一ぺんに直すということはなかなかできないのであります。そういう事情は、日本の産業の力が大きくなり過ぎた、国際競争力がつき過ぎたという見方もありますし、同時に、アメリカや外国の状態が悪くなり過ぎておるということもあるわけであります。そういう両面からの問題がありましてついに今日のような状態に至ったわけでございまして、政府は、私は、これからも長期的に国際収支均衡に対して努力を続けてまいらなければならぬと思います。また、政府はやってまいります。やってまいりますが、今度の問題は日本の問題だけではなく、ドル対マルク、ドル対フラン、ドル対リラ、ドル対英国のポンド、そしてその影響を日本も避けることはできない、ドル対円と、こういう問題になり、主要国間の話し合いでアメリカが自発的に一〇%切り下げる、一〇%切り下げることは、現行レートを維持しておっても、こちらは自動的に一〇%価値が上がったということになるわけでございますが、やはりこれからの平価調整というものは、多国間でやるか二国間でやるかという問題はございますが、これからも日本だけではなく、相手の立場によって変動が起こるということは、これは理解をしていただきたい。
羊毛を輸入しなければならないオーストラリアは、日本に黙って、ぽんと平価を上げておるのであります。そういう問題もございますし、今度は日米だけではきめられません。日本とドルだけではなく、日本とポンドの問題、日本とリラの問題、日本とマルクの問題が出てくるわけでございますから、変動相場制に移行をしながら事態の推移を見なければならない。国益を守るためにはそういう方法しかないのでございますから、そういう意味ではひとつ御理解をいただきたい。その意味では四十八年度の予算案も、国際収支対策ではないかとこの席上から御指摘を受けたぐらいに、三つの目標を持っておりまして、その一つには国際収支対策でございますとお答えをしておるわけでございますから、その意味ではぜひ御審議を賜わりたい、こう思います。(拍手)
それから、中小企業対策につきましては関係大臣からお答えをしますが、私からも基本的な問題はお答えをしなければならないので答えます。今回の処置に伴い、輸出関連中小企業が受ける影響の実態を十分把握をいたしまして、適用する諸施策に万全を期します。これはいまある法律を延長していただかなければならないような、もう、前の国会でもってつくってもらっておる中小企業対策の法律もございます。こういうものを延長していただくとか、それから財政金融の状態で予備費を使用するとか、財投を弾力的に運用をするとか、いろいろな問題があります。こういう問題に対しては完ぺきな、万全の体制をとってまいりたい。これは一ぺんもうやっておりますから、手のうちは大体承知しておるわけでございますから、そういう意味では万全の対策をとってまいりたい、こう思います。
それから輸入物価の引き下げ対策、これは、私が先ほどから申し上げておりますように、円平価が切り下げられるのではないんです。昭和の初年は切り下げられてきたわけです。一ドル対二円、一ドル対二円五十銭、一ドル対三円のときには戦争を始めなければならぬというくらい下がってきたわけでございますが、今度は三百六十円をピークにして、いよいよ何十年ぶりかでもって日本の円とドルとの価格は、円が強くなる。強くなるわけでありますから、輸入品は安く入るわけであります。そういう意味で、輸入品の価格の低下が消費者物価によりよく還元しますように、輸入代理店対策、輸入の自由化、関税の引き下げ、輸入品にかかる流通機構の改善などの各種施策を強力に転換をし、少なくとも物価対策に寄与できるようにしなければいいところはない、こういうふうになるわけでございますから、その意味では十分な配慮をしてまいりたいと思います。(拍手)
それから最後の、国際通貨制度の安定化についてどうするかという問題でありますが、具体的な問題は大蔵大臣からお答えをいたします。しかし、やがて今後の国際通貨問題について、当面の混乱が収拾されたことにより、長期的な通貨改革への努力が推進されなければならないということは当然でございます。いまIMFの二十カ国委員会等がありますから、これを中心として行なわなければならないということでございます。しかし、これは三十九年の東京総会を中心にして国際流動性の問題が起こり、SDRが解決をし、そして今日の段階まで十余年の歳月を経てきておるわけであります。それで、基軸通貨であるドルが金との交換性を失ったというところにまず大きな問題があります。ですから、先ほども御指摘ありましたように、金・ドルの交換性の回復ということは、アメリカのためだけではなく、日本のためでもあり、拡大均衡を保っていく新ラウンドを推進するためにはどうしても必要であります。それができなければ新通貨を考えなければならないという議論が出ておるわけでございまして、私たちは、対米貿易がこれほど大きくなっておるということを考えますと、ドル価値が維持されて、かつての基軸通貨としてのドルの面目を維持してもらうようになってもらいたい、そして金との交換性を回復してもらいたい、そのためには日本も努力をし協力をすると同時に、アメリカ自身の強力な施策も求めていく考えでございます。(拍手) |