石の形/好形(「好形を求めよ」)

 更新日/2018(平成30).1.28日

 (囲碁吉のショートメッセージ) 
 ここで、「石の形/好形」を確認しておく。

 2005.6.4日 2013.5.22日再編集 囲碁吉拝


石の形/好形
好形
1 一間トビ
2 ケイマ
3 二立三析、
4 フクラミ
5 ヘコミ
6 コウ
7 本手
8 
9 

【一間トビ】

<一間トビに悪手なし>は、まことに的確に一間トビの働きを表現している。
ナラビ、コスミよりも、いっそう応用範囲が広い。
たとえば、<逃げは一間トビ>というふうに、足の早い打ち方でもある。

【デギリの備えとしての一間トビ】
≪棋譜≫(82頁の1図)
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・これは備えとしての一間トビを示したもの。
(一つの形であることは初級者でも知っている)
・むろん、白い(4, 十五)からのデギリに備えたもの。
※この図は、足が早いとかいうのではなく、堅実な打ち方として推奨される。

これに対して、次の一間トビは、逃げのそれ。
【逃げは一間トビの例】
≪棋譜≫(82頁の2図)
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・白1、3の一間トビは、それこそ逃げる一手の一間トビ。
※このような場合、コスんで逃げるのは足がおそく、ケイマ(たとえば白い(5, 十一、つまり白1の上)などは、傷(黒ろ(4, 十二、つまり白1の左))を残すことになる。



一間トビに関連して、次のような例題が出されている。

【例題Ⅰ】(黒の手番)
≪棋譜≫(85頁)
☆白3のあと、黒は左辺をどう打つか。


【例題Ⅰの正解:正着~一間に備える】
≪棋譜≫(86頁の1図)
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・黒1と一間に備えて、じっくり白への攻めをみるのが好手。
※一つの形として記憶しておくこと。

【失敗:利かされ】
≪棋譜≫(86頁の2図)
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・上図の黒1を省くと、白1からの攻めがきびしい。
・黒は2と応ずるくらいだが、利かされ。

また、この黒2を省くと、次図のようになる。
【黒手抜きの場合】
≪棋譜≫(86頁の3図)
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・白1のツケコシがさらにきびしい攻めである。
・<ツケコシ切るべからず>で、黒2と受ければ、白5までで十分。
※黒は、い(2, 十三)の手入れが必要。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、85頁~86頁)

【ケイマ】
 ケイマは、ご存じのように、将棋の桂馬の動きからつけられた名称である。

ケイマの形はいろいろなケースで活用される。
たとえば、<攻めはケイマ>と格言にいわれるように、相手の石を攻める一つの形にもなっている。地を囲うのに使われる場合もある。
ケイマに関する格言で、<ボーシにケイマ>というのがある。ボーシに対しては、ケイマに受けなさい、と教えてくれるのが、この格言である。
また、相手の石を圧迫していく手法の一つとしてケイマが使われる。

ケイマに関連した例題を2つ出している。
【例題Ⅰ】(黒の手番)
≪棋譜≫(91頁)
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☆こんな形は実戦ではよくみかける。
 黒の3子を助ける工夫をせよ。

【例題Ⅰの正解:ケイマに走るのが正着】
≪棋譜≫(92頁の1図)
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・黒1とケイマに走って連絡するのが正解。
・たとえば、このあと白い(3, 十四、つまり黒1の右)なら黒ろ(2, 十三、つまり黒1の上)で楽に連絡できる。

【正解の続き】
≪棋譜≫(92頁の2図)
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・白が強引に1とサエギろうとすれば、黒に2と切られて、逆に白の2子が取られてしまう。

なお1図で黒1で俗に切ると、どうなるか。
【失敗:俗手の切り】
≪棋譜≫(92頁の3図)
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・黒1と切っていくのは、この場合、簡明に白に2、4とツキ出されても、黒は助からない。
※黒い(2, 十一)なら白ろ(2, 十四)であるし、黒ろ(2, 十四)なら白い(2, 十一)で死形である。



【例題Ⅱ】(白の手番)
≪棋譜≫(91頁)
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☆左下隅のところを白がじょうずに連絡する方法がある。
 有名な問題であるそうだ。

【例題Ⅱの正解:ケイマの形が連絡法】
≪棋譜≫(93頁の1図)
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・知らないとちょっと気づかぬ筋であるが、白1と下からも上からもケイマの形で打つのがじょうずな連絡法。

【正解の続き】
≪棋譜≫(93頁の2図)
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・黒2とハネれば、いったん白3と下から受け、このあと黒い(3, 十六)には白ろ(2, 十七)とワタる。
・なお、黒ろ(2, 十七)は白い(3, 十六)と切られる。

【失敗:分断される】
≪棋譜≫(93頁の3図)
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・直接白1とワタろうとするのは、黒2ないし6と打たれて分断される。
・このあと白い(2, 十四)も、黒ろ(1, 十五)、白は(4, 十五)、黒に(4, 十四)でシチョウに取られるから、連絡はできない。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、88頁~93頁)

【二立三析】

この展開の原則は、1図のように、「2子黒石のタッている石からは黒1と三間にヒラくのが理想的」ということを意味している。
これも一つの形として記憶しておけば、なにかと便利である。
【二立三析の形】
≪棋譜≫(106頁の1図)
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【三立四析】
≪棋譜≫(106頁の2図)
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二立三析の原理を敷延すれば、三立四析となる。3子のタッている黒石からは1までヒラけるというのである。
ただし、三立の場合は、黒い(3, 十七、つまり黒1の下)と三析に打つほうが堅実である。

【一立二析】
≪棋譜≫(107頁の3図)
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また、一立二析も二立三析の原理の応用である。
というよりは、二立三析の基本と考えるべきかもしれない。
第3線にある1子の石(この形では白)よりは、白1と二間にヒラくのがふつうであり、ヒラキの原則とされる。



たとえ、二立三析が理想の形としても、現実にはウチ込まれる不安がなきにしもあらずである。
たとえば、次図の白1がそれである。

【二立三析のウチコミの対策】
≪棋譜≫(107頁の4図)
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・白1の場合、周囲の状況にもよるが、黒2とか黒い(4, 十三、つまり黒2の下)と打って、対処するものと記憶せよ。

次に、三立四析の場合のウチコミの対策はどうなるか。
【三立四析のウチコミの対策】
≪棋譜≫(108頁の5図)
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・三立四析の場合のウチコミ場所は、白1がふつう。
・そのときは、黒2とカケ、白3には黒4とツケコす筋で、サバく。
・黒10までと白を封じ込める。
※途中、白3で5といけば、黒6、白3、黒4で同型にもどる。

次に、実戦で出る形を示しておく。
【実戦で出る形~コリ形】
≪棋譜≫(108頁の6図)
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・黒1とツメ白2とヒラいたとき、黒3とコスミツケる。
・白は2、4の二立と白(3, 十一)の間が狭く、二立二析になっている。
 ⇒白のコリ形
※黒3のコスミツケが許されるゆえんである。

【白の「二立三析」の理想形】
≪棋譜≫(109頁の7図)
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・星の黒に対して、白が1とカカってきたときに、黒2とコスミツケて、白3とタタせるのは、悪いというのが常識。
・白に5と三間にヒラかれ、「二立三析」の理想形をあたえるからである。
(白5では、白い(4, 十、つまり白5の右)もある)

・そこで黒4で、次図の黒1といきなりハサんでいけば、どうなるか?
【白の厚い姿】
≪棋譜≫(109頁の8図)
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・黒1とハサんだ場合、白2のツケ以下、白16までと、白に厚味をあたえることになる。
⇒むろん黒としては不十分。
※要するに、前図黒2のコスミツケが白に理想形をあたえる原因になったのである。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、106頁~109頁)


【フクラミ】
・フクラミは、多くの場合、好形となるといわれる。

【フクラミの形】
≪棋譜≫(154頁の1図)
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・この白1がいわゆる「フクラミ」
⇒これで白の石は安定し、反対に黒の石が窮屈になってくる。
いいかえれば、黒としては白にこの1を許すこと自体に問題があると考えなければならない。
つまり、白が1と打つまえに、黒1と打つべき急所にあたる。

【例題Ⅰ】(黒の手番)棋譜(155頁)
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☆中盤のせり合いがつづいている。局部的には黒はどこが急所か。

【例題Ⅰの正解:フクラむ一手が正着】棋譜(156頁の1図)
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・黒1とフクラむ一手。
・これで白は頭をふさがれるいるから、白2と走れば、たとえ活かしても結構。
・黒3と攻めたてて、上方に黒の厚みを加える。

【参考:白の愚形】棋譜(156頁の2図)
棋譜再生

・上図黒1のあと、白1とマガっている形はいかにもひどい。
・黒にい(6, 九)と攻めたてられてはいけない。

なお、1図の正解図で、黒1のフクラミを省いたらどうなるか。
【参考:フクラミを打たない場合】
≪棋譜≫(156頁の3図)
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・本図白1、3を許しては白が息を吹き返す。
※そのちがいはあとの戦況に大きな差をもたらす。

【例題Ⅱ】(黒の手番)
≪棋譜≫(155頁)
棋譜再生

☆死活の問題にはよく出る形である。
 黒が無条件で活きるには?

【例題Ⅱの失敗:棒ツギは頓死】
≪棋譜≫(155頁の1図)
棋譜再生

・ふつうに黒1と棒ツギするのでは、白より2から6までと打たれて、頓死してしまう。

では、黒はどう打つべきだろうか。
いま一度考え直してみよう。
【例題Ⅱの正解:ヘコミが正着】
≪棋譜≫(157頁の2図)
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・黒1とヘコむことによって、無条件で活きることができる。
※死活にあっては、このヘコミの筋の活躍する場が多いようだ。

【類型】
≪棋譜≫(157頁の3図)
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・この黒1も活きる急所にあたる。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、154頁~157頁)

【コウ】
コウは技術的な問題で、形自体とは別かもしれないが、形におけるきびしさを知るうえでは、ぜひ必要なのでとりあげたという。

たとえば、定石にあらわれる、次のような形を解説している。

【1図:形】
≪棋譜≫(174頁の1図)
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・白はこういうところは十中八九、白1とアテていくのが正しい態度である。
・黒に、い(8, 十八)と切られるコウを恐れてはいけない。
・このあと黒もろ(4, 十四)と備えることになって、一段落。
 ツグのは、これまたダンゴをつくるだけの用しかなさず、絶対に避けなければならない。
※黒も、い(8, 十八)と切ってコウ争いするチャンスをうかがうべきだろう。

【2図:手順】
≪棋譜≫(174頁の2図)
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・上図は、黒1、3のツケオサエ定石からできる形である。
・黒9とポン抜く一手。
※これで、黒い(7, 十八)は、白ろ(8, 十八)を利かされる。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、174頁)

【本手】

いわゆる「本手」ということばを使う意味はいろいろあるが、形が悪い場合にあらかじめ整えておく手を本手と呼ぶ。たとえば、次のような図の黒1が本手である。

【1図:本手の例】
≪棋譜≫(178頁の1図)
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・黒1が本手である
※これは1をすぐ打たなくとも、切られる気づかいはないが(切ればゲタに取れる)、白から1とノゾいて全体の黒をねらってこられる心配がある。
それをあらかじめ防止するのが、黒1の手。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、178頁)




(私論.私見)