石の形/愚形

 更新日/2018(平成30).1.28日

 (囲碁吉のショートメッセージ) 
 ここで、「石の形/愚形」を確認しておく。

 2005.6.4日 2013.5.22日再編集 囲碁吉拝


石の形/愚形
愚形
1 形の能率について
2 コリ形
3 アキ三角
4 陣笠
5 ダンゴ
6 トックリ形
7 頭をぶつける形
8 サカレ形
9 タケフの両ノゾキ

石の愚形/ダンゴ
石の固まっている形をダンゴという。例えば、次図では、黒7子が集まっている。これはダンゴの典型である。
実戦で打っていて、このような形ができるようでは、まず打ち方に欠陥があったとしかいいようがない。
【ダンゴの典型】棋譜(40頁の1図)
棋譜再生



さて、ダンゴ形に関連する例題を2題だされている。
【例題Ⅰ】(白の手番)棋譜(41頁)
☆左の白4子は助からないが、これを利用して、黒をダンゴに導いてほしい。
棋譜再生

【例題Ⅰの失敗】棋譜(42頁の1図)
棋譜再生

・白1、3とふつうにアテていくのでは、シチョウが悪くて、黒2、4と逃げ出されて、どうにもならない。

【例題Ⅰの正解:切ってカケる】棋譜(42頁の2図)
棋譜再生

・白1と切って3とカケるのがシボリの筋。
⇒黒をダンゴに導くうまい手段。
・黒4には白1の1子を犠牲として白5とアテる。

【正解の続き:完全なダンゴ形に】棋譜(42頁の3図)
棋譜再生

・黒はやむなく6と白の1子を取ることに。
・次に白に7を利かされて、黒6、8および黒(3, 十五、つまり黒8の左)、(4, 十六、つまり黒8の下)、(5, 十六)、(5, 十五、つまり黒8の右)の一群が、完全なダンゴ形になってしまった。



【例題Ⅱ】(黒の手番)棋譜(41頁)


☆今度は、黒の取られている石を大いに利用してほしいというテーマである。

【例題Ⅱの正解:ホウリコミから】棋譜(43頁の1図)
棋譜再生

・黒1のホウリコミからいくのがうまい筋。
・白2と取らせて、黒3とアテる。

【正解の続き:アテを利かしてツケる】棋譜(43頁の2図)
棋譜再生

・白4とツゲば、黒5のアテを利かして、さらに黒7とツケていく。
※白はこれだけでも降参といった形であるが……

【さらに続き:白は泣きっ面にハチ】棋譜(43頁の3図)
棋譜再生

・黒9のアテをピッタリ白は利かされる。
・おまけに黒11から15までとサカれる。
⇒白はまさに泣きっ面にハチ。
※前図黒7の筋はたいせつな手。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、40頁~43頁)

【】

頭をぶつける形


「第1章 形の基礎」の「7 頭をぶつける形」では、次のように述べている。
コリ形、アキ三角、陣笠、ダンゴ、トックリ形は、黒の単独の形のうちから、悪いものを選んだ。
本項からの、頭をぶつける形、サカレ形、タケフの両ノゾキは、相手の石との接触において生ずる悪形をとりあげている。

【ツキアタリの形】
≪棋譜≫(48頁の1図)
棋譜再生

・白1と下の黒にツキアタっていく形。
⇒これは多くの場合、悪い形と知るべきである。
(むろん、いつの世にも例外というものはある)

【ナダレ定石】
≪棋譜≫(48頁の2図)
棋譜再生

☆定石を学ぶときに必ずあらわれるナダレ定石。
・黒1の下ツケに対して、白が右方下辺に壁をつくる手段として、2とツキアタり、白4とナダれていくのは、常法となっている。
※このナダレ定石と、他の頭をぶつける形(たとえば、1図白1)とは、区別して考えなければならないという。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、48頁)

一間トビ


<一間トビに悪手なし>は、まことに的確に一間トビの働きを表現している。
ナラビ、コスミよりも、いっそう応用範囲が広い。
たとえば、<逃げは一間トビ>というふうに、足の早い打ち方でもある。

【デギリの備えとしての一間トビ】
≪棋譜≫(82頁の1図)
棋譜再生
・これは備えとしての一間トビを示したもの。
(一つの形であることは初級者でも知っている)
・むろん、白い(4, 十五)からのデギリに備えたもの。
※この図は、足が早いとかいうのではなく、堅実な打ち方として推奨される。

これに対して、次の一間トビは、逃げのそれ。
【逃げは一間トビの例】
≪棋譜≫(82頁の2図)
棋譜再生
・白1、3の一間トビは、それこそ逃げる一手の一間トビ。
※このような場合、コスんで逃げるのは足がおそく、ケイマ(たとえば白い(5, 十一、つまり白1の上)などは、傷(黒ろ(4, 十二、つまり白1の左))を残すことになる。



一間トビに関連して、次のような例題が出されている。

【例題Ⅰ】(黒の手番)
≪棋譜≫(85頁)
☆白3のあと、黒は左辺をどう打つか。


【例題Ⅰの正解:正着~一間に備える】
≪棋譜≫(86頁の1図)
棋譜再生

・黒1と一間に備えて、じっくり白への攻めをみるのが好手。
※一つの形として記憶しておくこと。

【失敗:利かされ】
≪棋譜≫(86頁の2図)
棋譜再生

・上図の黒1を省くと、白1からの攻めがきびしい。
・黒は2と応ずるくらいだが、利かされ。

また、この黒2を省くと、次図のようになる。
【黒手抜きの場合】
≪棋譜≫(86頁の3図)
棋譜再生

・白1のツケコシがさらにきびしい攻めである。
・<ツケコシ切るべからず>で、黒2と受ければ、白5までで十分。
※黒は、い(2, 十三)の手入れが必要。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、85頁~86頁)

ケイマ


ケイマは、ご存じのように、将棋の桂馬の動きからつけられた名称である。

ケイマの形はいろいろなケースで活用される。
たとえば、<攻めはケイマ>と格言にいわれるように、相手の石を攻める一つの形にもなっている。地を囲うのに使われる場合もある。
ケイマに関する格言で、<ボーシにケイマ>というのがある。ボーシに対しては、ケイマに受けなさい、と教えてくれるのが、この格言である。
また、相手の石を圧迫していく手法の一つとしてケイマが使われる。

ケイマに関連した例題を2つ出している。
【例題Ⅰ】(黒の手番)
≪棋譜≫(91頁)
棋譜再生

☆こんな形は実戦ではよくみかける。
 黒の3子を助ける工夫をせよ。

【例題Ⅰの正解:ケイマに走るのが正着】
≪棋譜≫(92頁の1図)
棋譜再生

・黒1とケイマに走って連絡するのが正解。
・たとえば、このあと白い(3, 十四、つまり黒1の右)なら黒ろ(2, 十三、つまり黒1の上)で楽に連絡できる。

【正解の続き】
≪棋譜≫(92頁の2図)
棋譜再生

・白が強引に1とサエギろうとすれば、黒に2と切られて、逆に白の2子が取られてしまう。

なお1図で黒1で俗に切ると、どうなるか。
【失敗:俗手の切り】
≪棋譜≫(92頁の3図)
棋譜再生

・黒1と切っていくのは、この場合、簡明に白に2、4とツキ出されても、黒は助からない。
※黒い(2, 十一)なら白ろ(2, 十四)であるし、黒ろ(2, 十四)なら白い(2, 十一)で死形である。



【例題Ⅱ】(白の手番)
≪棋譜≫(91頁)
棋譜再生

☆左下隅のところを白がじょうずに連絡する方法がある。
 有名な問題であるそうだ。

【例題Ⅱの正解:ケイマの形が連絡法】
≪棋譜≫(93頁の1図)
棋譜再生

・知らないとちょっと気づかぬ筋であるが、白1と下からも上からもケイマの形で打つのがじょうずな連絡法。

【正解の続き】
≪棋譜≫(93頁の2図)
棋譜再生

・黒2とハネれば、いったん白3と下から受け、このあと黒い(3, 十六)には白ろ(2, 十七)とワタる。
・なお、黒ろ(2, 十七)は白い(3, 十六)と切られる。

【失敗:分断される】
≪棋譜≫(93頁の3図)
棋譜再生

・直接白1とワタろうとするのは、黒2ないし6と打たれて分断される。
・このあと白い(2, 十四)も、黒ろ(1, 十五)、白は(4, 十五)、黒に(4, 十四)でシチョウに取られるから、連絡はできない。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、88頁~93頁)

二立三析


この展開の原則は、1図のように、「2子黒石のタッている石からは黒1と三間にヒラくのが理想的」ということを意味している。
これも一つの形として記憶しておけば、なにかと便利である。
【二立三析の形】
≪棋譜≫(106頁の1図)
棋譜再生


【三立四析】
≪棋譜≫(106頁の2図)
棋譜再生

二立三析の原理を敷延すれば、三立四析となる。3子のタッている黒石からは1までヒラけるというのである。
ただし、三立の場合は、黒い(3, 十七、つまり黒1の下)と三析に打つほうが堅実である。

【一立二析】
≪棋譜≫(107頁の3図)
棋譜再生
また、一立二析も二立三析の原理の応用である。
というよりは、二立三析の基本と考えるべきかもしれない。
第3線にある1子の石(この形では白)よりは、白1と二間にヒラくのがふつうであり、ヒラキの原則とされる。



たとえ、二立三析が理想の形としても、現実にはウチ込まれる不安がなきにしもあらずである。
たとえば、次図の白1がそれである。

【二立三析のウチコミの対策】
≪棋譜≫(107頁の4図)
棋譜再生

・白1の場合、周囲の状況にもよるが、黒2とか黒い(4, 十三、つまり黒2の下)と打って、対処するものと記憶せよ。

次に、三立四析の場合のウチコミの対策はどうなるか。
【三立四析のウチコミの対策】
≪棋譜≫(108頁の5図)
棋譜再生

・三立四析の場合のウチコミ場所は、白1がふつう。
・そのときは、黒2とカケ、白3には黒4とツケコす筋で、サバく。
・黒10までと白を封じ込める。
※途中、白3で5といけば、黒6、白3、黒4で同型にもどる。

次に、実戦で出る形を示しておく。
【実戦で出る形~コリ形】
≪棋譜≫(108頁の6図)
棋譜再生

・黒1とツメ白2とヒラいたとき、黒3とコスミツケる。
・白は2、4の二立と白(3, 十一)の間が狭く、二立二析になっている。
 ⇒白のコリ形
※黒3のコスミツケが許されるゆえんである。

【白の「二立三析」の理想形】
≪棋譜≫(109頁の7図)
棋譜再生

・星の黒に対して、白が1とカカってきたときに、黒2とコスミツケて、白3とタタせるのは、悪いというのが常識。
・白に5と三間にヒラかれ、「二立三析」の理想形をあたえるからである。
(白5では、白い(4, 十、つまり白5の右)もある)

・そこで黒4で、次図の黒1といきなりハサんでいけば、どうなるか?
【白の厚い姿】
≪棋譜≫(109頁の8図)
棋譜再生

・黒1とハサんだ場合、白2のツケ以下、白16までと、白に厚味をあたえることになる。
⇒むろん黒としては不十分。
※要するに、前図黒2のコスミツケが白に理想形をあたえる原因になったのである。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、106頁~109頁)

フクラミ・ヘコミ~「第2章 実戦上の形」より


「第2章 実戦上の形」の「11 フクラミ・ヘコミ」について見てみよう。

◇フクラミ


・フクラミは、多くの場合、好形となるといわれる。

【フクラミの形】
≪棋譜≫(154頁の1図)
棋譜再生
・この白1がいわゆる「フクラミ」
⇒これで白の石は安定し、反対に黒の石が窮屈になってくる。
いいかえれば、黒としては白にこの1を許すこと自体に問題があると考えなければならない。
つまり、白が1と打つまえに、黒1と打つべき急所にあたる。

◇ヘコミ


・フクラミに対応するのが「ヘコミ」
ヘコミが急所になるケースも少なくない。
【ヘコミの形】
棋譜再生

≪棋譜≫(154頁の2図)
・白4がいわゆるヘコミの形。
※ヘコミの特質は、眼形が豊富になるところにある。



フクラミやヘコミに関連した次のような例題がある。
【例題Ⅰ】(黒の手番)
≪棋譜≫(155頁)
棋譜再生

☆中盤のせり合いがつづいている。
 局部的には黒はどこが急所か。

【例題Ⅰの正解:フクラむ一手が正着】
≪棋譜≫(156頁の1図)
棋譜再生

・黒1とフクラむ一手。
・これで白は頭をふさがれるいるから、白2と走れば、たとえ活かしても結構。
・黒3と攻めたてて、上方に黒の厚みを加える。

【参考:白の愚形】
≪棋譜≫(156頁の2図)
棋譜再生

・上図黒1のあと、白1とマガっている形はいかにもひどい。
・黒にい(6, 九)と攻めたてられてはいけない。

なお、1図の正解図で、黒1のフクラミを省いたらどうなるか。
【参考:フクラミを打たない場合】
≪棋譜≫(156頁の3図)
棋譜再生

・本図白1、3を許しては白が息を吹き返す。
※そのちがいはあとの戦況に大きな差をもたらす。



【例題Ⅱ】(黒の手番)
≪棋譜≫(155頁)
棋譜再生

☆死活の問題にはよく出る形である。
 黒が無条件で活きるには?

【例題Ⅱの失敗:棒ツギは頓死】
≪棋譜≫(155頁の1図)
棋譜再生

・ふつうに黒1と棒ツギするのでは、白より2から6までと打たれて、頓死してしまう。

では、黒はどう打つべきだろうか。
いま一度考え直してみよう。
【例題Ⅱの正解:ヘコミが正着】
≪棋譜≫(157頁の2図)
棋譜再生

・黒1とヘコむことによって、無条件で活きることができる。
※死活にあっては、このヘコミの筋の活躍する場が多いようだ。

【類型】
≪棋譜≫(157頁の3図)
棋譜再生

・この黒1も活きる急所にあたる。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、154頁~157頁)

コウ~「第2章 実戦上の形」より


コウは技術的な問題で、形自体とは別かもしれないが、形におけるきびしさを知るうえでは、ぜひ必要なのでとりあげたという。

たとえば、定石にあらわれる、次のような形を解説している。

【1図:形】
≪棋譜≫(174頁の1図)
棋譜再生
・白はこういうところは十中八九、白1とアテていくのが正しい態度である。
・黒に、い(8, 十八)と切られるコウを恐れてはいけない。
・このあと黒もろ(4, 十四)と備えることになって、一段落。
 ツグのは、これまたダンゴをつくるだけの用しかなさず、絶対に避けなければならない。
※黒も、い(8, 十八)と切ってコウ争いするチャンスをうかがうべきだろう。

【2図:手順】
≪棋譜≫(174頁の2図)
棋譜再生
・上図は、黒1、3のツケオサエ定石からできる形である。
・黒9とポン抜く一手。
※これで、黒い(7, 十八)は、白ろ(8, 十八)を利かされる。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、174頁)

本手~「第2章 実戦上の形」


いわゆる「本手」ということばを使う意味はいろいろあるが、形が悪い場合にあらかじめ整えておく手を本手と呼ぶ。たとえば、次のような図の黒1が本手である。

【1図:本手の例】
≪棋譜≫(178頁の1図)
棋譜再生
・黒1が本手である
※これは1をすぐ打たなくとも、切られる気づかいはないが(切ればゲタに取れる)、白から1とノゾいて全体の黒をねらってこられる心配がある。
それをあらかじめ防止するのが、黒1の手。
(大竹英雄『囲碁「形」の覚え方』永岡書店、1975年[1984年版]、178頁)






(私論.私見)