【提言5、市場性社会主義経済論を創造せよ】

 (最新見直し2008.9.3日)

Re:れんだいこのカンテラ時評356 れんだいこ 2008/01/17
【提言5、国有化経済理論を否定し、戦後日本に結実した市場性社会主義経済論に転換せよ】
 「国有化経済理論を否定し、戦後日本に結実した市場性社会主義経済論に転換せよ」、これを「れんだいこの左派運動に対する提言5」とする。これも議論を呼ぶところであろう。日本左派運動は明治維新過程の自由民権運動の失速以降マルクス主義を導入し、今日まで長らく理論的主柱としてきた。マルクス主義の功罪の総合的研究はさて置き、ここでは次のことを指摘しておく。俗流派が拝戴し教条としてきた国有化理論をマルクス主義のミスリードと認め、これを否定すべきではなかろうか。もう一つの考え方として、マルクス主義的経済体理論は本来、国有化論を本質としておらず、正しくは社会化理論であったと理解すべきではなかろうか。

 これを夙(つと)に早くより指摘していたのは広西元信氏であった。広西氏は、1966.12.1日初版で「資本論の誤訳」(こぶし書房、2002.3.30日再初版)を世に問うている。同書で、所有と占有概念の違いを識別し次のように指摘している。
 概容「マルクスは、占有概念で社会主義社会を透視していた。マルクスの言説の中に国有化概念は無く、むしろ資本主義的株式会社を労働者の生産管理的方向(アソシエーション)へ発展させる必要を遠望していたこと。その限りで、ロシアのスターリニズム的国有化政策指導は何らマルクス主義的でないどころか、反対物である」。

 これについては、詳論「市場性社会主義論について」(ttp://www.marino.ne.jp/~rendaico/jinsei/marxismco/marxism_shijyokanriron.htm)に記す。

 
この広西見解は長らく無視されてきた。しかし、ソ連邦が崩壊し、「市場主義的社会主義論」が生み出されつつある折柄にあってはその先見の明を高く評価されねばならない、と筆者は考える。この見地から、レーニンが晩年に気づき指針したネップ理論が大いに検証されねばならないと考える。筆者は、広西氏のアソシエーション理論を「市場主義的社会主義論」の一形態とみなすが、最近はしゃいでいる日共不破の「レーニンと市場経済」は「市場主義的社会主義もどき論」に過ぎず、単なる現下資本主義の修正主義でしかないと思う。

 不破理論の特質はいつでも、問題の在り処を探る才には長けているものの、その考究と称して幅広い知識を披瀝するところまでは良いとしても結局は、マルクス、エンゲルス、レーニンらの言説を捻じ曲げつつ有害無益な右派的理論に到達させてしまうのがいつもの遣り方である。従って、不破理論に対しては、知識を得るところと見解を押し付けられるところとの境目をはっきりさせ、知識を検討し不破見解的箇所は却下せねばならない。不破見解を鵜呑みにするとあらぬところへ誘導される。彼はこの手のマジシャンである。


 全産業、業種の生産及び流通結社の国有化は俗流マルクス主義政策であり、正しくは官民棲み分け及び重要産業に於ける基幹的官営企業による官的采配とそれを取り巻く民営企業との正しい連携こそ、本来の社会主義的経済体理論であったと窺うべきではなかろうか。

 興味深いことに、戦後憲法秩序に於ける重要産業及び分野に於ける親方日の丸国営企業とその衛星的民間企業、その他産業及び分野に於ける民営化こそが、本来の社会主義的経済理論であり、戦後経済秩序はこれを地で執り行っていた素晴らしい制度であったことになる。そういう意味で、最近の親方日の丸企業の徒な民営化は逆行であると云わねばならぬ。中曽根−小泉的民営化路線は、この観点からも批判されねばならないところだろう。

 2008.1.17日 れんだいこ拝




(私論.私見)