Java関連の著作権を侵害されたとして米Oracleが米Googleを訴え、90億ドル(約1兆円)の損害賠償を求めていた裁判でGoogleが勝訴した。米メディア(PCWorld、New York Times、Ars Technicaなど)が報じている。米カリフォルニア州サンフランシスコの米連邦地方裁判所の陪審は現地時間2016年5月26日、AndroidにおけるJava使用はフェアユースの範囲内であるとするGoogleの主張を認める評決を下した。
この係争史は次の通り。
2010年、Oracleが、Sun Microsystems買収によって手に入れたJava APIのうち37件について、GoogleがAndroidを開発する際に37件のJava
APIを不正にコピーしたとして、GoogleがAndroid OS内で無断で利用している行為が著作権侵害にあたるとして提訴したことに端を発する。
2012年、米カリフォルニア州サンフランシスコの米連邦地方裁判所(ウィリアム・アルサップ判事)は、Oracleが問題とするJava APIは著作権法の保護対象にならないとの判断を下し、Googleが勝訴した。Oracleがこれを不服として上訴。
2014年、連邦巡回区控訴裁判所で争われた米連邦控訴裁判所二審で、「問題のJava APIは著作権法の著作権の保護対象である」と結論づけ地裁の判決を覆した。この判決を受けて、Oracleは、GoogleがJava
APIの著作権を侵害してAndroid OSを開発することで受けた利益は90億ドル(約1兆円)として、損害賠償を請求した。Googleは控訴裁の判断の見直しを求めて上告。
2015年6月、米連邦最高裁判所がこれを却下した。(関連記事:米最高裁がGoogleの訴えを却下、OracleとのJava著作権訴訟で)
2016年5月10日、再審理が行われた。訴訟内でGoogleは、Java APIの著作権が認められることを前提として、「GoogleによるJava
APIの使用は「フェアユース」であり、著作権制限を受けるため権利を侵害しない」と主張した。Oracleはフェアユースに該当しないと反論。陪審員に訴えるために、画像を多数使ったプレゼン資料まで提出して応戦した。GoogleがAndroid開発でJava
APIをコピーしたことがフェアユースに当たるかどうかが争点となっていた。GoogleとOracleによる訴訟は、多くのソフトウェア開発に携わる人の関心を集めた。
Googleは、法廷審問で、Javaを開発した米Sun Microsystems(2010年にOracleが買収)が誰でも無償でJavaを使えるようにしたいと考えていたと陪審に訴えかけ、GoogleがAndroidにJavaを使っていることをSunが認めていた証拠として、Sunの元最高経営責任者(CEO)であるJonathan
Schwartz氏がAndroidについて賞賛しているブログ投稿を引用した。 一方Oracle側は、GoogleはSunとライセンス交渉を行ったが合意に至らず、Androidの市場投入を急ぐあまり「ライセンスを取得する必要があることを知りながら」Java
APIを使ったと説明。Google共同創業者のLarry Page氏がAndroid開発チームに圧力をかけていることを示すものとして一連の電子メールや会議資料を提出した。
2016年5月26日、サンフランシスコ連邦地裁の陪審員団は、「GoogleによるJava APIの使用は、フェアユースにあたる」として、Googleの主張を全面的に認め、Oraleによる賠償請求を退けた。仮に陪審員がフェアユース規定の適用がないと判断していれば、次に賠償額の判断が行われることになっていたが、著作権侵害が認められなかったため、この審理は行われることなく結審している。女性8人、男性2人で構成された陪審員のうちの4人は、法廷の外の廊下に集まっていた記者団に対してコメントを拒否。残りの6人は裏口からひっそりと法定外に出た。Google全面勝訴の陪審評決について、Googleの社内弁護士のロバート・バンネスト氏は、「私たちは陪審の評決を嬉しく思う。それだけです」と手短に話し、Oracleの弁護士は記者団に対してノーコメントを貫いた。
その後、Googleは、公式に声明を発表し、「AndroidのJava API利用がフェアユースにあたるとの今回の陪審評決は、AndroidエコシステムにとってもJavaプログラミングコミュニティにとっても、そして、オープンソースプログラムを使ってソフトウェアを開発する開発者にとっての勝利です」とのコメントを発表した。
OracleのDorian Daley法務顧問は上訴する意向を示し、「Googleは違法にJavaテクノロジーのコア技術をコピーしてAndroidを開発し、モバイル端末市場に不法な攻勢をかけていたと我々は確信している。当社はGoogleの違法行為を止めるためにこの訴訟を起こした。Googleの行為が違法であることを示す多くの根拠が存在すると信じており、再び法廷で争うつもりです」と述べ上訴する意思を明らかにしました。
Oracle対Googleの6年以上も続くAndroidにおけるJava API使用を巡る著作権侵害訴訟は、Oracleの上訴によってさらに続いていくことになりそうである。
なお、電子フロンティア財団(EFF)も今回の評決についての声明を発表。Googleによるフェアユースとの主張は、Oracleの言う「言い訳」ではないことが明らかになったと述べ、フェアユース規定の適用を認めた陪審員団の判断を評価している。ただし、そもそもAPIが著作権の保護対象ではないという画期的な一審判決こそが正しいのであり、APIに著作権を認めた二審の判断によってソフトウェア開発者に無用な負担を強いている点については批判している。
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