「JASRACの音楽著作物利用承諾契約条項考」

 (最新見直し2009.2.4日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 本サイトでは、「JASRACの音楽著作物利用承諾契約条項」を考察する。見たところ非常に小細字で何やら保険の約款を思い起こさせる条項が記されている。人は一般にこういうものを読まず、JASPACの訴訟風聞を聞いて否応なく契約しているのだろう。しかし、JASRACの現在のような加盟強制、「債権取立て」には大いに問題があると考えるれんだいこは、目を通してみた。

 結論から云えば、この条項書によれば契約はあくまで任意であり、そういう書式として行政官庁の認可を受けているのではなかろうか、という気がする。保険約款と体裁が似ているのはまさしくそうで本来任意契約なのではなかろうか、という気がする。それにしてもこれを作成した弁護士はかなり保守的と云うか、近代思想を持たない法匪的技術屋であることを暴露している。

 にも拘らず従来、裁判所見解は、「JASRACの音楽著作物利用承諾契約条項」に何の疑問も湧かさず、JASRACの加盟強制、「債権」取立てを後押ししてきた経緯がある。れんだいこは、裁判長の見識を疑う。弁護士も検察も裁判長も、いわゆる法の番人がこの程度の見識しか持っていないことが分かる。以下、これを確かめる。

 料金支払方法等の実務規定の箇所を省き、最低限知っておくべき条文のみ考察する。れんだいこにはかなり悪質にして今時許されないお上式の奴隷契約になっているように思われるが如何であろうか。「JASRACの音楽著作物利用承諾契約条項」がかようなものである限り、契約拒否こそ嗜みであると自負したい。誰か一度金銭問題ばかりに執着せずに、この問題を法廷で争えば良かろうに。

 2004.8.25日 れんだいこ拝


【第1条(総則)第1項】
 社団法人日本音楽著作権協会(以下、「甲」という。)が著作権を有する音楽著作物(以下、「管理著作物」という。)の利用に関する甲と利用者間の音楽著作物利用許諾契約(以下、「本契約」という。)は、利用者が、甲に対し、甲所定の書式による音楽著作物利用許諾契約書(以下「申込書」という。)を提出し、甲が、申込書記載の申込人である利用者(以下「乙」という。)に対し、音楽著作物利用許諾書(以下「許諾書」という。)を交付することにより成立します。
(私論.私見) 「JASRACC契約」の性質について
 JASRACの「申込書」(以降、仮にこれを「JASPAC契約」と云うことにする)は、これを結ばなければ罰せられる強制法なのか任意法なのか、まずここを識別せねばならない。れんだいこは、第1条の規定からすれば、任意法のように受け取る。

 次に、JASRACの権限は「管理著作物」に及ぶそれであることが判明する。ならば、JASRACは、乙に対し「許諾書」を要求する際には、「管理著作物」と「非管理著作物」の明細、少なくとも「管理著作物」の一覧表、それはネット公開でも構わないがいずれにせよ明らかにする義務があるように思われる、が如何であろうか。

 もう一つの点を確認すれば、なにやらエライもったいぶった契約書であることが判明する。乙が甲に対し契約書を提出し、甲が乙に対し許諾書を交付することにより成立するとある。甲は社団法人格の公益法人であるが、国家機関の認可を得るかの如く体裁であることが判明する。

【第1条(総則)第2項】
 本契約において乙が甲に支払う使用料は、甲が定め文化庁長官に届け出た使用料規定(以下「使用料規定」という。)及び使用料規定取扱細則(以下「取扱細則」という。)による額とします。
(私論.私見) 「JASRACの使用料規定」について
 ここで、JASRACの行政管轄官庁が文化庁であることが判明する。文化庁長官に届け出た「使用料規定」は条項書には明示されていない。「取扱細則」による額とあるが、それも明示されていない。他所で記しているのなら注でその旨記さねばおかしい。なぜなら、文化庁長官に届け出た「使用料規定」ないし「取扱細則」は本契約の重要な箇所である。それを正確に伝えない姿勢は大いに問題があるとれんだいこは考える。

 もう一つの点を確認すれば、「届け出た」とあるばかりで「認可ないしは認証を得た」とは書かれていない。気になるところである。

【第1条(総則)第3項】
 乙が、第1項に係わらず、本契約成立以前に甲の承諾を得ないで管理著作物を利用しているときは、乙は、甲に対し、その利用開始以降の利用に係る使用料相当額の支払債務(以下「遡及分使用料」という。)を承認し、かつ、これを履行することを本契約の成立の条件とします。遡及分使用料に係る合意がその効力を失ったときは、本契約は当然に成立時に遡って効力を失うものとします。
(私論.私見) 「JASRACの遡及分使用料請求権」について
 この第1条3項規定はかなり悪法であると思われる。なぜなら、JASRACに「遡及分使用料請求権」が認められるなら、「JASRAC契約」は行政的な強行(強制)法規であるということになる。だがしかし、「JASRAC契約」の第1条1項規定によれば任意法規のように読み取れる。「JASRAC契約」を強行法規にするのであれば、まず第1条1項規定においてその旨を明らかにせねばおかしいのではなかろうか。

 ちなみに、JASRACは、その権利が認められたと云うところの時点より以前の使用料請求を為しているとも聞く。これも含め明らかに法一般の「不遡及の原則」に違反している。JASPACに限り何ゆえそういう違法が罷り通るのであろうか解せないところである。思うに、こういう徴収を容認した行政管轄官庁たる文化庁の方にも問題があるのではなかろうか。

【第1条(総則)第4項】
 乙が申込書記載の利用場所以外で管理著作物を利用しているときは、乙が、その利用について甲の承諾を受けることを本契約成立の条件とします。
(私論.私見) 「JASRACの乙に対する融通無碍なる絶対的支配権」について
 この第1条4項規定もかなり悪法であると思われる。なぜなら、ひとたび「JASRAC契約」を締結した乙は、何と乙の経営する店舗のみならず例えば花見などで唱歌する場合には、甲の承諾を得なければならないというのだ。こうなると憲法違反の恐れ濃厚な条文ということになろう。

 まさに奴隷契約であり、「JASRACの乙に対する融通無碍なる絶対的支配権授与」であるが、一体全体、文化庁は如何なる根拠でこういう悪法を認可したのだろう。

【第1条(総則)第5項】
 甲が使用料規定若しくは取扱細則を変更したとき、又は法律の改正により消費税率が変更されたときは、乙が甲に支払う使用料は、その変更又は改正に基づき、甲が新たに算定した額に自動的に改正されるものとします
(私論.私見) 「JASRACの料金改定絶対権」について

 これも悪法であろう。JASRACの一方的な料金自動改定に対して、乙は何の抗弁権も無く絶対服従を要求されている。それにしても、料金の甲の一方的改定、乙の無条件承諾による自動的改定なぞ認可されるべきだろうか。こうなると、「死んでもJASRACに入るな」という申し伝えを子孫にしておくのが親の義務だろう。


【第2条(包括的利用許諾・譲渡禁止)】
1項  甲は、乙に対し、甲が交付する許諾書記載の許諾条件の範囲内で管理著作物を利用することを包括的に許諾します。
2項  乙は、前項の許諾に基づく管理著作物を利用する権利を他人に譲渡することはできません。
(私論.私見) 「JASRACの包括的許諾権」について

 何たる奴隷契約、何たるお上意識プンプンであろう。鼻持ちならないとはこのことだ。


【第3条(許諾表示証の交付・表示義務)】
【第4条(使用料の支払義務)】
【第5条(契約保証金の納付義務)】
1項  甲は、乙に対し、本契約及び遡及分使用料に係る合意の確実な履行を担保するため、原則として、規定使用料の3ケ月分以上契約期間分以内の範囲内で甲が定める額の契約保証金を納付することを第2条第1項の許諾の条件とします。

 乙は、甲に対し、この契約保証金を申込提出書と同時に納付するものとします。
(私論.私見) 「JASRACの契約保証金」について
 保証金まで納付せねばならぬとは。ところで、保証金納付は実際に為されているのだろうか。

【第6条(使用料の支払方法)】
【第7条(口座振替)】
【第8条(使用料の減額・免除)】
【第9条(割引の不適用)】
【第10条(違約金)】
 乙が甲に対する規定使用料若しくは割引使用料、又は遡及分使用料の支払いを遅滞したときは、乙は、甲に対し、支払期限の翌日から完済に至るまで、当該債務のほかに年20%(1年を365日とする日割り計算)の割合による違約金を支払うものとします。
(私論.私見) 「JASPACの延滞金利息率」について
 何と年20%だと。制限利息法の目一杯のところまで金利を予定するなぞ公益法人に許されるのだろうか。とにかく下手に契約すると命取りになること間違いない。

【第11条(支払金の充当順序)】
【第12条(利用曲目の報告義務)】
 乙は、甲の請求に従い、その指定する方式により、甲に対し、許諾書記載の利用場所における利用曲目を記録して提出するものとします。
(私論.私見) 「JASRACの乙に対する利用曲目報告請求権」について
 「JASRAC契約」するとこういう手間を課せられるという訳か。

【第13条(利用状況調査の便宜供与義務)
1項  乙は、甲に対し、甲の職員又は甲の指定する者が許諾書記載の利用場所における管理著作物の利用状況等を調査することに便宜を与えるものとします。
2項  甲が、許諾書記載の管理著作物の利用状況等の調査のため、甲の職員または甲の指定する者を乙の事務所等に派遣した場合には、乙は調査に係る書類及びこれらの関係帳票等の閲覧に同意し、かつ、調査に必要な便宜を与えるものとします。
(私論.私見) 「JASRACの乙に対する立入調査権」について

 「JASRAC契約」すると、JASRACは税務署並みの権限を持ち始めるという訳か。


【第14条(許諾条件の範囲を超える利用等の届出義務)
1項  乙が許諾書記載の許諾条件の範囲を超え、又は許諾書に記載の無い利用場所、利用方法若しくは業種等で管理著作物を利用するときは、乙は、甲に対し、あらかじめ甲所定の申込書により届け出て甲の許諾を受けるものとします。
2項  乙の住所、氏名、電話番号、第7条第1項の預金口座その他の事項に変更が生じたときは、乙は、遅滞なく甲に書面により届け出るものとします。
(私論.私見) 「JASRACの乙に対する届出義務請求権」について
 「JASRAC契約」すると、JASRACはあたかも雇用契約並みの権限を持つという訳か。しかし、何が悲しくてこったら契約を結ばねばならないのだろう、笑わせるな。

【第15条(著作者人格権の尊重)】
【第16条(連帯保証人)】
【第17条(契約期間)】
【第18条(契約の更新)】
第19条(契約期間中の解約
 乙が、甲に対し、廃業叉は管理著作物利用の廃止により本契約の解約を書面にて申し出たときは、本契約は契約期間中であっても、甲の承諾により、その申し出た月の末日をもって合意解約されるものとします。
(私論.私見) 「解約時のJASRACの承諾事項」について
 一般に、こうした契約の解約を承諾事項とすべきだろうか。解約は無条件でできるとすべきで、但し解約予告期間ぐらいは定められても良かろう。JASRACの承諾を要す合理的理由はなかろう。

【第20条(契約期間中の解除)】
【第21条(期限の利益喪失等)】
【第22条(契約条項の内容変更)】
 本契約に定める契約条項の内容を変更する場合、甲が、乙に対し、変更内容を書面により通知したのち、乙が2ヶ月以内に書面による異議を述べないときは、乙は、変更内容を承諾したものとします。
(私論.私見) 「契約内容の変更」について
 契約条項の変更さえ一方的にでき、乙が2ヶ月以内に書面による異議を申し出ないと承諾したものとみなすとは尋常ではない。一方的にはできないとするのが普通の契約書だろうが、JASRACの場合なんでもできるようだ。

 ちなみに、料金改定の際には、本条項で認められている「乙の2ヶ月以内の書面による異議の申し出」さえ担保されていないことが分かる。

【第23条(合意管轄)】
 本契約に関する紛争については、甲の本部叉は許諾書記載の支部等の所在地を管轄する地方裁判所を第一審の管轄裁判所とすることに合意します。
(私論.私見) 「管轄裁判所」について
 物件の所在地ではなく、甲の側の管轄裁判所優先規定になっている。手間なことではないか。

【第24条(個人情報の利用目的)】


 



(私論.私見)