青山 |
「日本に獣医師の不足はないから、愛媛県今治市に加計学園が新たに獣医学部をつくることは行政をゆがめることであるという趣旨で発言していると思うが、(獣医師をめぐる)実態はご存じか」。 |
前川 |
「違います。獣医学部の新設について一律に申請を受け付けないという告示があるが、告示に対して特例を設けるかどうか、あるいは告示の撤廃を考えるかどうか、獣医学部の入学定員について定員管理をするというポリシーを捨てるか捨てないか、これは政策論議をすべき問題で、それは国家戦略特区を舞台にして議論することもできるでしょうし、一般論として議論することもできる。 この規制緩和をすべきかという問題と、結果として加計学園に獣医学部の新設を認めるかどうかは次元の違うことで、私がゆがめられたと思っている部分は、規制緩和の結果として加計学園だけに獣医学部の新設が認められるに至ったプロセスだ。その部分が問題であるし不公平な部分があるのではないか、不透明な部分があるのではないか。そこの解明が必要だ」。
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青山 |
「前川参考人がおっしゃったことは予想した通りだ。加戸(守行・前愛媛県知事)参考人は自治体の最前線で獣医師不足に直面していた。どのような実態だったのか。また前川参考人の答弁をどのように聞いたか」 。 |
加戸 |
「お答えいたします。まずあの、参考人でお呼びいただいたことに心から感謝を申し上げます。もう10年前に愛媛県知事として、今治市に獣医学部の誘致を申請しましたが、構造改革特区の名のもとに申請した当時のことを思い返しまして、ええ、洟(はな)も引っ掛けかけていただかなかったこの問題が、こんなに多くの関心を10年後に持っていただいているということに、不思議な感じがいたしております。
当時、愛媛県知事として、たくさんの仕事を預かりながら、県民の生命身体財産、畜産業の振興、食品衛生、その他で一番苦労しましたのが、鳥インフルエンザ、あるいは口蹄疫の四国への上陸の阻止、あるいはBSEの問題の日本への波及の阻止、言うなれば四国という小さな島ではありますけれど、こういった感染症対策として一番防御が可能な地域と言う意識もございましたし、そしてアメリカがこの問題に狂牛病の体験を受けて、戦端切って国策として、これからはライフサイエンスと感染症対策をベースとした獣医学の教育の充実ということで、大幅な獣医学部の入学者の増加、そして三つの獣医科大学の新設と言う形で、懸命に取り組んでいる姿を横で見ながら、なんと日本は関心を持っていただけない国なんだと。
私は少なくても10年前に愛媛県民の、そして今治地域の夢と希望と関心を託してチャレンジ致しました。厚い岩盤規制で跳ね返され跳ね返され、やっと国際戦略特区という枠の中で実現を見るようになった今、本当にそれを喜んでもおります。先ほどの、話がございました(前川氏の)「行政が歪められた」という発言は、私に言わせますと、少なくとも獣医学部の問題で、強烈な岩盤規制のために10年間我慢させられてきた岩盤に、ドリルで国家戦略特区が穴を明けていただいたということで、『歪められた行政が正された』と言うのが正しい発言ではないのかなと私は思います」。 |
青山 |
「(獣医学部は)現在930人の定員だが、1200人まで水増し入学が行われている。これで需要が均衡しているともしも文科省が判断しているのであればこの点からもおかしいのではないか。文科省は現在、大学の定員超過の是正に取り組んでいるとも聞いた。もし獣医学部の水増しが正されれば年間270人、4分の1もの新しい獣医師が減ることになる。これは獣医師の教育が現状の学校では十分ではないという証拠でもあり、学校が足りないという証左ではないか」。 |
前川 |
「獣医師の需要がどのくらいあるのか、それに対してどのくらいの獣医学部の入学定員が望ましいのか、これは政策的に考え、定員管理を政策的に行っていくということが当面正しい方法だと思っていて、いっぺんにこれを撤廃することは望ましくないと思っている。ただ獣医師に関しても今後、養成を増やす必要があるのであれば、それは既存の大学の定員を増やすという方法もあるし、既存の大学には十分なスタッフがそろっている場合もあるし、十分な教官組織をさらに充実させることもあると思う。 真っ新に新しく獣医学部をつくる方がよほど困難で、そこの教員をどこから連れてくるかということは非常に難しい問題であるはずだ。既存の大学から新しい学部に教員を連れてくるのであれば既存の大学の教員組織が弱体化する。そこをどうするかという問題があるので、単に養成数を増やすというのであれば、普通は既存の大学の定員を増やす方がよりコストがかからない方法。実際、医師についてはそういう方法をとって供給数を増やしている。そういった選択も含めて政策的に考えるべき問題だと考える」。
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青山 |
「要は既存の体制の強化でやりたいと。それができるならいいが、それだったら今の水増しのような事態が起きるはずがない。加戸参考人はいかがか」。 |
加戸 |
「特区の申請をしてから何回も門前払いをくらいました。色々な方策で模索しましたが、一番強い反対は日本獣医師会でありました。当時、あの、直接接触はございませんでしたけど、ホームページでは専務理事が、まあ今治の獣医学部新設に関して、けちょんけちょんの論陣を張ってられまして、その中でも、要するに「養成はちゃんとするから余分なことはするな」と言うのが基本でありました。
で、当時から私が大変疑問に思いましたのは、まず獣医師の養成が、私はこういう言葉を使いましたけども、箱根の関所から東は関東と言ってました。箱根の関所から東で8割の入学定員があり、箱根の関所から西の方には2割の入学定員しかなくて、しかも私学は水増し入学をしますから、実質的には養成される獣医師の数は箱根の関所から東は80数%、場合によっては90%近くがそちらで挑戦致します。
四国は空白区で、獣医師が確保できない、県知事としていろんな対応をしても、とにかく例えば地方公務員は競争試験が原則ですけども、獣医師はもう無試験でもいいから、どうぞそうぞと言っても来ていただけない。で、獣医師会の反対は何かといったら処遇しないからだと、じゃあ愛媛県だけは、あるいは四国は獣医師の給与体系を、国家公務員の獣医師を上回る体系を作ることはできるのか。それは、じゃあ獣医師が充足されたときは給料を下げるのか、という給与の問題の良し悪し見れば、給料が安いから行かないんだよだとか、奨学金出さないから行かないんだよ、全部東京に来て養成したら帰すからと、そういうことでいいのかなって事が一つ、それから、新しい学部はできないと言って、それが反対されながら見てました。 |
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「同時並行で鳥インフルエンザ、狂牛病、口蹄疫等々の関係で、何とか公務員獣医師が足りない、来てもらえない、この状況。四国の空白地。研究機関もないなか何とかしなければという思いがある中、私の指南役であるけど、アメリカで獣医学部発祥の地といわれているコーネル大学に留学にし、その後ジョージタウン大学の客員教授として6年間勤務した方が、アメリカと往復してまさにアメリカは国の政策として、国策として人畜共通感染症の防止。アメリカは牛で食べている国ですから、畜産業は生命線ということもあるから、国策として取り組んで獣医学部の増員を図り新設を認めている。こんな歴史の流れの中に日本は遅れているんだよねと」。
コーネル大学は、農学、獣医学などは世界最高峰と評されて、細菌兵器(生物化学兵器)研究で高名だ。超右翼カルト勢力「日本会議」を支持母体とする安倍晋三首相、加計孝太郎理事長、加戸守行前愛媛県知事は、コーネル大学に範を取り、何をするつもりなのか? |
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でも、自分たちはどうであったのかと申し上げますと、大変恐縮ですけども、大学教授の定員は10年前と今日と変わらないままで、アメリカは必死にやっているのに、据え置いたままで新しいのは作るな作るなと、で、今回のケースにしましても、はるかに多い獣医学の教官を作って感染症対策なり、あるいはライフサイエンスなり、あるいは動物実験による創薬の研究なりと、幅広い学問をやるスタッフを揃えようと思っても、それをブレーキをかけるというのは私には理解できない。それならば自分たちで何故、この10年の間にアメリカに遅れないように、スタッフを揃えないんですか、今のままで置いておいて今治には作るな作るなと言う、これは余りにも酷いではないかと言うのが私の思いでありました。 |
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少し時間を頂戴してよろしければ、私の知事の任期の終りのほうに、民主党政権が誕生して、『自民党じゃできないので私たちがやる』と言って頑張ってくれました。対応不可の門前払いから、実現に向けての検討とレベルアップしました。ああ、良かったね、で私は次の知事にバトンタッチしました。ところが、自民党政権に返り咲いても何も動いていない。何もしないでいて、ただ今治にだけブレーキをかける。それが既得権益の擁護団体なのかっていう悔しい思いを抱えながら参ってまいりました。
そして国家戦略特区で取り上げられ、私も昔取った杵柄で今、今治市の商工会議所の特別顧問っていう形で、この応援団の一員として参加しております。それを眺めながら、大切なことは欧米に後した先端サイエンスと感染症対策と封じ込めと、私たち日本人の生命がかかるこの問題を、欧米に遅れないような獣医師を養成しなければならない事に手を加えないでおいて、今治はダメ、今治はダメ、加計ありきと言うのはなんでかなと思います。
私は加計ありきではありません。加計学園がたまたま、愛媛県会議員の今治選出の議員(註、本宮勇議員のこと)と加計学園の事務局長が、お友達であったからこの話が繋がれてきて飛びつきました。これもダメなんでしょうか?お友達であればすべてダメなのか? そんな思いで眺めながら、今日やっと思いの一端をこの場を借りて申し上げさせていただきました」。 |
青山 |
「愛媛県今治市に新設することについては閣議決定や国家戦略特区をめぐる議事録、公に公開されているものを丹念に調べていけば経緯ははっきりしている。経緯について現職の時に詳細にご存じだったか」 。 |
前川 |
「私が現職で仕事をしている中でも見えない部分がたくさんあった。どうして30年4月開学が大前提なのか。ここについては合理的な説明はどこにもない。結局は官邸の最高レベルがいっていること、総理のご意向であるというような説明しかなかったということがあって。内閣府の方で説明いただかなければならない部分だが、文科省からはあずかり知らない部分はたくさんあるので私が承知していないことは多々ある。 しかし日本再興戦略改訂2015で、平成27年6月に閣議決定された4条件がある。これは閣議決定である以上、内閣の一員として守らなければならないもの。この閣議決定の中で4つの条件があるわけで、文科省としては4つの条件を満たす必要があるということをずっとこだわった。文科省としては4条件に照らして今治市から出てきた提案は条件を満たすものではないということを主張しているが、そこから先の議論になっていない。そこから後はとにかく決めると。4条件は満たしたと誰かが決めてしまったと。文科省としてワーキンググループで条件を満たしていないという主張をしていることは(議事録を)読めば分かる。
これをもって挙証責任うんぬんといわれるのはおかしい。まず政府内での議論の中でどちらが先に必要性を述べるかというのは、挙証責任をまずどちらに負わせるかというのはあるかもしれないが、その結果として内閣府が勝った、文科省が負けた、だから国民に対して説明しろと。これでは国民に対しての説明にはならない。挙証責任があるかということと国民に対する説明責任は全く別。国民への説明責任は政府一体で負わなければいけない。議論に負けたから文科省が説明するんだと、こういう議論にはならないはずだ」。
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青山 |
「本音のところで前川さんを信用したいが、今の話は非常に不可思議な話。挙証責任を持つということと国民に説明するということは別だという話をしたが、別だったら民主主義は終わり。何のためにこの審議をやっているのかも分からない。話をすり替えたのは前川さんの方であって。そういうことは何かの志を持って話しているのであればなるべく避けてもらいたい。加戸参考人にもうかがう」。 |
加戸 |
「文科省も時代の進展、国際的な潮流を考え、これでいいのかということは常に自問自答しなければいけない。私自身が今回の問題にタッチして、それがはね返され、年月が経過するたびに、当時、同時並行で、例えば薬学部、これは医薬分業がありまして、いっぺんに入学定員が6000人近く増えました。大学の数も2倍近く増えました。 でも、そのことに関して需要がどうだ、供給がどうだ、挙証責任がどうだ、誰も問題にしていなかったと思います。で、いま、何が起きているかというと、今後何万人という薬剤師の過剰供与、それをどうするかが深刻な問題になっています。かたや獣医学部はびた一文駄目だと。少なくとも私の知る限り提案した時点から東京の私学の獣医学部は45人とか50人とかの教授陣容のままで、時代の進展に対応しないまま、今日に来ています。 その中で今治で計画している獣医学部は72人の教授陣容でライフサイエンスもやります、感染症対策もやりますと、さまざま形での、既存の医学部の一分野でやられているかもしれないが、そういう意欲を持って取り組もうとしているのに、その、なんと言うんでしょうか、イビリばあさんじゃありませんが、薬学部はどんどんつくってもいいけど獣医学部はびた一文駄目だと。こんなことはこの国際化の時代に、欧米に遅れてはいけない時代に、あり得るんだろうかというのが私の思いで参りました。へ理屈はいいんです。 私は霞が関で30数年、生活した。省庁間折衝がある。自分の思いを省を代表して激しい言葉も使い、場合によって虎の威を借るキツネのような発言もあり、でも事柄が決着した後は酒を酌み交わして、決まったことは次の施策に向かっていく。これが霞が関の文化だった。今回は霞が関の文化が感じられない。時代が変わったのか。少なくとも国民にとって時代の潮流の中で、どこが何を求めているのか、それに対応するにはどうすればいいのかを考えることであって、私は本質の議論がされないままにこんな形で獣医学部がおもちゃになっていることを甚だ残念に思う」。
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青山 |
「獣医師養成の機関を含めて学校の許認可権はすべて文科省にある。だから学校は天下りの文科官僚を受け入れ、文科省は次官以下が学校への天下りを法を犯してでも進めたから、前川氏もこの(天下り)問題で辞任した。既存の学校だけを守ろうとする姿勢と天下り問題は密接につながっているのではないか。既得権益をありとあらゆるところが一体で守ろうとする日本の闇につながっているのでないか。妥当な規制緩和であってもやらないというのが今の文科省の姿なのではないか」。 |
前川 |
「国家戦略特区の今治市における獣医学部の設置の問題、この問題をめぐる議論と天下り、再就職規制違反にかかる問題、これを結びつけて議論するのはおかしいと思う。仮に結びつけるのであれば具体的内事例は木曽(功)理事の問題。木曽理事は内閣官房参与の身分を持ったまま加計学園の理事になっていて、2つの肩書を持った状態で私のところに来て、加計学園の獣医学部の新設に向けて働き掛けをされた。こういうOBによる現役に対する働き掛けは天下り問題の弊害の一つの端的な例だと思っている」。 |
青山 |
「結びつけなければいけないと思っている。文科省はこのほど文部科学白書を発表した。冒頭の3ページに異例の言葉が入っていて、組織的な天下りの問題について省を挙げて猛省する。国民に謝罪して3人の事務次官経験者は、前川さん、あなたを含めて、斡旋の構造作りや運用に関わっていた責任を極めて重く受け止め停職相当の評価としたと、そう書かれている。後輩の方々が苦しんで書かれた文章を、今の答弁は裏切っているのではないか。加戸参考人、どうぞ」 。 |
加戸 |
「本質の議論がされないまま、こんな形で獣医学部がおもちゃになっていることを甚だ残念に思います」。 |
加戸 |
「ありがとうございます。若干感情が高ぶって思いの丈を申し上げ過ぎました。ただひとつだけ触れていなかったことがございます。様々なことがございましたけども眺めながら、6月13日の国家戦略特区諮問会議の民間有識者の委員の方々が記者会見をして、私は人に知らされてインターネットのユーチューブで1時間半拝見させていただいて感激しました。特に今回の規制緩和に関して、心に一点の曇りもなくやったということで、これが今回の大きな事件の結論だったんだろうなと。これが国民に知ってもらうべき重要なことだなと私は思いました。たくさん今まで私のところへ取材がありましたけれど、都合のいいことはカットされて、私の申し上げたいことは取り上げていただいたメディアは極めて少なかったことを残念に思いますけど、あのユーチューブが全てを語りつくしているんではないかなと思います」。 |
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