「JASRAC(日本音楽著作権協会)」とは、その法理論、及び実態

 (最新見直し2008.12.13日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 著作権法が如何に矛盾に満ちており、継ぎ接ぎだらけで次第に規制強化に向って行っているのか。その様は、既得権益でガリバー化するゴジラに似ている。これを象徴するのが音楽著作権であり、JASRACの市街地侵食ぶりであろう。彼らの行くところ音楽の灯が消える。しかし彼らは何の責任も問おうとしない。この法律矛盾、法匪性こそ厳しく弾劾されねばなるまい。心ある専門職は内部からこれを問題にするのが当然だろうに。ここで、ジャスラックとはそもそもどういう団体であるのかを確認しておく。

 2004.9.11日 れんだいこ拝


【JASRACとは】
 日本音楽著作権協会(以下、JASRACと云う)(日本音楽著作権協会ホームページ)の定款からJASRACとは何者か、を見ておく。フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」によれば次の通り。
 「社団法人 日本音楽著作権協会(Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers;略称JASRAC)は、日本および海外の音楽について、作詞者作曲者音楽出版社が持つ音楽著作権を管理する日本の団体である」。

 JASRACは、現存する日本国内の著作権管理事業者としては最も古く、1939年(昭和14年)に設立された大日本音楽著作権協会をその前身とする。


 日本人作家の代理権取得」は次のように記している。
 JASRACの平成17年(2005年度)事業報告書によると、 2005年度の演奏権侵害に対する法的措置の総件数は2995件(3129店)であった。SARAHが権利者団体に配分する補償金の36%がJASRACに分配される。JASRAC以外の分配先には、実演家の団体である日本芸能実演家団体協議会(32%)と、レコード製作者の団体である日本レコード協会(32%)がある。

 2006年度、SARAHがJASRACに分配した補償金は4億1千万円である。私的録音される著作物には、音楽の著作物と言語の著作物がある。そこで、JASRACがSARAHから受け取った私的録音補償金は、音楽の著作物に係るものと言語の著作物に係るものに区分される。2006年度、音楽に区分された補償金は約3億9千万円、言語に区分された補償金は約1700万円(音楽:言語区分比率=34.5:1.5)である。

 音楽の著作物に区分された補償金は、管理手数料(10%)を控除された上で権利者に分配される。ただし、私的録音される音楽著作物はJASRACの管理曲に限られないため、JASRACに著作権管理を委託する者(委託者)のみならず、JASRACに管理を委託していない権利者(非委託者)にも補償金を分配する必要がある。そこで、音楽の著作物に区分された補償金は委託者分と非委託者分に区分され、JASRACとの契約関係を持たない非委託者に対しては、非委託者からの請求を待って分配することにしている[3]。

 非委託者の中には、他の音楽著作権(録音権)管理事業者であるイーライセンスとジャパン・ライツ・クリアランスも含まれる。2006年度には、JASRACからこの2社に対して約411万円が分配されている。

 一方、言語の著作物に区分された補償金は、日本脚本家連盟に分配され、同連盟の分配規程に従って、さらに各権利者に分配される。JASRAC は、私的録音補償金の対象機器の拡大を求めて、行政に対する働きかけを行っている。

 2005年4月28日に行われた文化庁文化審議会著作権分科会法制問題小委員会では、iPod などのデジタルオーディオプレーヤーを新たに私的録音補償金の対象とするように要請した。しかし、プレーヤーを所有しているユーザーのほとんどは、CD の購入やネット配信サービスからのダウンロードなどの方法で正規に入手した音楽データをプレーヤーに複製(いわゆるメディアシフト)しているに過ぎないため、「権利者の損失は無いのではないか」、「著作権料の二重取りである」といった疑問、批判が国会議員や消費者を中心に噴出した。また、私的録音補償金の分配方法の不透明さなど、制度そのものの在り方も疑問視され、2005年9月以降まで結論が先送りされている。

【社団法人考】
 JASRACは社団法人として認可を受けている。ならば当然、社団法人としての縛りを受けていることになる。そういう訳で、「社団法人の縛り」を確認しておく。
 2006(平成18)年法律第498号(「公益法人及び交易財団法人の認定等に関する法律」)
 第1条(目的)

 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業の実施が公益の増進のために重要となっていることにかんがみ、当該事業を適正に実施し得る公益法人を認定する制度を設けるとともに、公益法人による当該事業の適正な実施を確保するための措置等を定め、もって公益の増進及び活力ある社会の実現に資することを目的とする。

 第2条(定義)

 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 
公益社団法人 第四条の認定を受けた一般社団法人をいう。
公益財団法人 第四条の認定を受けた一般財団法人をいう。
公益法人 公益社団法人又は公益財団法人をいう。
公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。

 別表(第2条関係)

 1、学術及び科学技術の振興を目的とする事業
 2、文化及び芸術の振興を目的とする事業
 (以下、23まで続く)

 
 第5条(公益認定の基準)  

 行政庁は、前条の認定(以下「公益認定」という。)の申請をした一般社団法人又は一般財団法人が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、当該法人について公益認定をするものとする。
公益目的事業を行うことを主たる目的とするものであること。
公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること。
その事業を行うに当たり、社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること。
その事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること。ただし、公益法人に対し、当該公益法人が行う公益目的事業のために寄附その他の特別の利益を与える行為を行う場合は、この限りでない。
投機的な取引、高利の融資その他の事業であって、公益法人の社会的信用を維持する上でふさわしくないものとして政令で定めるもの又は公の秩序若しくは善良の風俗を害するおそれのある事業を行わないものであること。
その行う公益目的事業について、当該公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものであること。
公益目的事業以外の事業(以下「収益事業等」という。)を行う場合には、収益事業等を行うことによって公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。
その事業活動を行うに当たり、第十五条に規定する公益目的事業比率が百分の五十以上となると見込まれるものであること。
その事業活動を行うに当たり、第十六条第二項に規定する遊休財産額が同条第一項の制限を超えないと見込まれるものであること。
(10、11、12略)
13 その理事、監事及び評議員に対する報酬等(報酬、賞与その他の職務遂行の対価として受ける財産上の利益及び退職手当をいう。以下同じ。)について、内閣府令で定めるところにより、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めているものであること。
(以下、18まで続く)
 第14条(公益目的事業の収入)  

 公益法人は、その公益目的事業を行うに当たり、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない。
 第15条(公益目的事業比率)  

 公益法人は、毎事業年度における公益目的事業比率(第一号に掲げる額の同号から第三号までに掲げる額の合計額に対する割合をいう。)が百分の五十以上となるように公益目的事業を行わなければならない。
公益目的事業の実施に係る費用の額として内閣府令で定めるところにより算定される額
収益事業等の実施に係る費用の額として内閣府令で定めるところにより算定される額
当該公益法人の運営に必要な経常的経費の額として内閣府令で定めるところにより算定される額

 第16条(遊休財産額の保有の制限)

 公益法人の毎事業年度の末日における遊休財産額は、公益法人が当該事業年度に行った公益目的事業と同一の内容及び規模の公益目的事業を翌事業年度においても引き続き行うために必要な額として、当該事業年度における公益目的事業の実施に要した費用の額(その保有する資産の状況及び事業活動の態様に応じ当該費用の額に準ずるものとして内閣府令で定めるものの額を含む。)を基礎として内閣府令で定めるところにより算定した額を超えてはならない。
2  前項に規定する「遊休財産額」とは、公益法人による財産の使用若しくは管理の状況又は当該財産の性質にかんがみ、公益目的事業又は公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務若しくは活動のために現に使用されておらず、かつ、引き続きこれらのために使用されることが見込まれない財産として内閣府令で定めるものの価額の合計額をいう。
 第17条(寄附の募集に関する禁止行為) 

 公益法人の理事若しくは監事又は代理人、使用人その他の従業者は、寄附の募集に関して、次に掲げる行為をしてはならない。
寄附の勧誘又は要求を受け、寄附をしない旨の意思を表示した者に対し、寄附の勧誘又は要求を継続すること。
粗野若しくは乱暴な言動を交えて、又は迷惑を覚えさせるような方法で、寄附の勧誘又は要求をすること。
寄附をする財産の使途について誤認させるおそれのある行為をすること。
前三号に掲げるもののほか、寄附の勧誘若しくは要求を受けた者又は寄附者の利益を不当に害するおそれのある行為をすること。

【JASRAC定款考】
 JASRACの定款は、「定款」で閲覧できる。これによれば、65条で構成されている。

 第1条で、名称をを次のように自己規定している。
 「本会は、社団法人日本音楽著作権協会と称する。英文では、Japanese Society for Rights of Authors,Composers and Publishers(略称JASRAC)と表示する」。
 つまり、「日本の作曲者や作詞者ら著作権者の権利を守る団体」ということになる。

 第4条で目的について次のように自己規定している。
 「本会は、音楽の著作物の著作権者の権利を擁護し、あわせて音楽の著作物の利用の円滑を図り、もって音楽文化の普及発展に資することを目的とする」。

 つまり、「著作権者の権利を護りつつ音楽文化の普及発展を目指す」立場にあることを明記している。

 第5条で事業内容について次のように自己規定している。
 概要「音楽の著作権に関する管理事業」を始めとするその他関連事業、調査研究を行う」。

 
その活動は国内のみならず、外国の音楽著作権とも管理契約を結んでおり、かくて内外音楽著作物の演奏権・複製権などに関する著作権の管理も行っている。これにより、JASRACは、著作権利者の著作権を管理委託することで、音符、演奏、放送、録音、ネット配信などさまざまな形で利用される音楽に関する著作権利用料金を請求する権利を受託されることになっている。その配分権も獲得しているようである。

(私論.私見)

 何と、著作権に関するJASRAC定款はほぼ以上に尽きる簡素なものであり、以下65条までの規定は内向きの会員及び結社に関するものでしかない。ということは、肝心要のJASRAC定款に照らしてみても、音楽著作権の権利内容については漠然としたまま、ということになる。この状態で、「泣く子も黙るJASRAC著作権の猛威」が振るわれているのは許し難い。

 2004.8.31日 れんだいこ拝

JASRACの音楽著作権法理論考

 JASRACの正式見解かどうかは分からないが、JASRACの音楽著作権法理論は次のように構成されている。

 「音楽著作権」が著作権法により保護されていることは分かる。著作権法第1条は、「この法律は、著作物ならびに実演、レコード、放送および有線放送に関し著作者の権利、および、これに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」と規定しているからして、このことは疑いない。

 問題は、著作物の創作者たる著作者の、この場合は「音楽著作権」の著作者権利が如何にどのようにして保護されるべきか、ということにある。著作権法上の「著作物」とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいう」と規定されているので、音楽著作権が保護されるていることは自明である。

 一般に、著作権法により保護される著作権者の権利には、著作者人格権と著作権の二つの権利が認められている。その概要は著作権法での主要な論争点に記したので参照すべし。

 他にも、「著作隣接権」がある。「著作隣接権」とは、次のようなものである。

◎著作権制度を前提する。

◎著作物を一般公衆に伝達する第一次媒体としての実演と、第二次媒体としての録音および放送に知的価値を認める。

◎著作物の解釈者としての実演家とその伝達者としてのレコード(CD)製作者および放送事業者との関係を合理的に調整するために、これら三者の権利関係を設定する。

 これらから、「音楽著作物使用許諾申請の方法」が次のように定められている。

◎舞台で演奏する場合(著作権の上演権、演奏権):「演奏利用申込書」および「演奏曲目報告書」を主催者が記入し、演奏される場所の近くの日本音楽著作権協会の支部に提出し、規定の料金を支払って許諾が成立する。

◎舞台で既成CD、カセットテープ、レコードを再生する場合(著作権の上演権、演奏権):演奏と同じ申請をして、許諾をとる。

◎舞台でアカペラで歌を歌った場合(著作権の上演権、演奏権):音楽そのものを再生しないでも、アカペラで歌ったり、歌詞を台詞で喋る場合も許諾が必要である。演奏と同じ申請をする。

◎既成のCDやカセットテープなどから、編集しないで他のメディア(MDやCDなど)に記録し、それを舞台で再生する場合(著作権の複製権、上演権、演奏権):日本音楽著作権協会に「録音利用申込書」と、「録音利用明細書」を提出する。追加製造する場合は、「申請書別表」を提出する。規定料金を支払うと「許諾証紙」が交付されるので、それを再生メディアに貼り付ける。そして、さらに演奏と同じ申請が必要である。

◎既成のCD、カセットテープなどを編集をして、他のメディア(MDやCDなど)に記録し、それを舞台で再生する場合(著作権の複製権、上演権、演奏権、翻案権):編集は元の楽曲の変形に当たる(翻案権)ので、編集する楽曲の管理をしている音楽出版社に「変形許諾」の申請が必要である。出版社の許諾をとった後、「コピーして編集しないで舞台再生する」のと同じ申請をする。「演奏」と同じ申請も必要である。

◎舞台公演をVTRに記録し販売する場合(著作権の複製権、頒布権、二次使用権):舞台の公演記録をVTRで販売する場合は、その舞台で使用した楽曲の全てに関して、その楽曲を管理している音楽出版社に二次使用権の許諾を受ける必要である。その上で日本音楽著作権協会に複製権、頒布権の手続きをする。


 「許諾申請をしなくても良い場合」は次のように定められている。
●演出効果を高めるためにオリジナル楽曲を作曲・製作して使用する場合は、許諾申請の必要はない。ただし、作曲家、作詞家がJASRACの会員である場合は上演権の許諾申請が必要である。
●国内で制作された著作権フリー楽曲の場合、基本的には一切の著作権申請の必要はない 。ただし、使用範囲など契約条項の確認が必要である。海外で制作された著作権フリー楽曲の場合も、日本国内で使用するときは基本的に一切の著作権申請は必要ないが、海外で使用する場合に制限がある。これも契約条項の確認が必要で、特に映像に付ける場合には注意が必要である。
●家庭内での「私的使用のための複製」など、個人的に使用するときは申請の必要はない。
●以下の3つの条件を満たしていれば、公に上演、演奏、上映できる。
    営利を目的としない
    聴衆から料金をとらない
    演奏者に出演料を支払わない
(注)旧著作権法においては、演出意図がない場合(劇場における開演前の客入れ、終演後のBGMなど)で、市販のCDを使用すれば申請は不要であったが、2001年1月の改正で利用申請が必要になった。

 「罰則」が次のように定められている。
 著作権、人格権、隣接権、出版権の侵害は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金。なお、侵害を犯した者が法人の場合は1億円以下の罰金。

【音楽著作権法の制定過程】
 JASRACのこのような権利は、1939年に制定された「著作権仲介業務法」に始まる。この経緯には次のような事情があるようである。以下、「ウィキぺディアの『プラーゲ旋風と仲介業務法』」の関連箇所を転載する。

 1931年、旧制一高のドイツ人教師であったウィルヘルム・プラーゲが、主にヨーロッパの著作権管理団体より日本での代理権を取得したと主張して東京に著作権管理団体「プラーゲ機関」を設立した。そして放送局やオーケストラなど楽曲を使用するすべての事業者に楽曲使用料の請求を始めた。

 日本は1899年にベルヌ条約に加盟し、著作権法も施行されていたが楽曲を演奏(いわゆる生演奏の他に録音媒体の再生も含む)するたびに使用料を支払うという概念は皆無であった。プラーゲの要求する使用料が当時の常識では法外であったことや、その態度が法的手段を含む強硬なものであったことから、事実上海外の楽曲が使用しずらい事態に陥った。日本放送協会は契約交渉が不調に終わったことから1年以上にわたって海外の楽曲を放送できなくなった。

 一方でプラーゲは、日本の音楽作家に対しても著作権管理の代行を働きかけ始めた。プラーゲの目的は金銭ではなく著作権の適正運用だったとも言われているが、楽曲利用者との溝は埋めることができず、日本人作家の代理権取得は更なる反発を招いた。

 この事態を打開するため、1939年に「著作権に関する仲介業務に関する法律」、いわゆる仲介業務法が施行された。著作権管理の仲介業務は文化庁の許可を得た者に限るというもので、同年 JASRAC設立、翌年1940年に業務が開始された。これに伴いプラーゲは著作権管理業務から排除され、同法違反で罰金刑を受けて1941年離日した。

 これら一連の事件は「プラーゲ旋風」と呼ばれ、日本の著作権管理のきっかけとなった。こうした経緯から、文化庁は JASRAC をはじめ4団体に仲介業務の許可を与えて他の参入を認めなかったので、音楽著作権の仲介は JASRAC の独占業務となった。

(私論.私見)

 JASRAC設立の経緯は分かった。問題は、JASRACがこの時文化庁に提出した書類文面である。これが公開されていないが、現在のようなNHKの受信料取立てよりも強引且つ恫喝的な請求の仕方はできない内容になっているのではなかろうかと思われる。これを確認したいので、文化庁よ、当時の設立許可基準を明らかにせよ。これをしないとならば、JASRACの利権的保護による行政的癒着を証していることになろう。

 日本人作家の代理権取得」は次のように記している。
 日本は1899年にベルヌ条約に加盟し、同年に著作権法も施行されていたが楽曲を演奏(いわゆる生演奏の他に録音媒体の再生も含む)するたびに使用料を支払うという概念は皆無であった。1931年に、旧制一高のドイツ人教師であったウィルヘルム・プラーゲが、主にヨーロッパの著作権管理団体より日本での代理権を取得したと主張して東京に著作権管理団体「プラーゲ機関」を設立した。そして放送局やオーケストラなど楽曲を使用するすべての事業者に楽曲使用料の請求を始めた。プラーゲの要求する使用料が当時の常識では法外なものであったことや、その手法が法的手段を含む強硬なものであったことから、日本国外の楽曲の使用が事実上困難な事態に陥った。日本放送協会も、プラーゲ機関との契約交渉が不調に終わったことから、1年以上にわたって海外の楽曲を放送できなくなった。さらにプラーゲは、日本の音楽作家に対しても著作権管理の代行を働きかけ始める。プラーゲの目的は金銭ではなく著作権の適正運用だったとも言われているが、楽曲利用者との溝は埋めることができず、日本人作家の代理権取得は更なる反発を招いた。これら一連の事件は「プラーゲ旋風」と呼ばれ、日本における著作権の集中管理のきっかけとなった。

 この事態を打開するため、1939年、「著作権に関する仲介業務に関する法律」(仲介業務法)が施行された。法律の内容は、著作権管理の仲介業務は内務省の許可を得た者に限るというもので、同年にJASRACの前身である大日本音楽著作権協会が設立され、翌年1940年に業務が開始された。これに伴いプラーゲは著作権管理業務から排除され、同法違反で罰金刑を受けて1941年離日した。こうした経緯から、文化庁は大日本音楽著作権協会をはじめ4団体に仲介業務の許可を与えて他の参入を認めなかったので、音楽著作権の仲介は大日本音楽著作権協会の独占業務となった。1980年代後半よりパソコン通信が普及し始めた。個対多の情報発信が容易になるにつれて JASRAC の問題点が指摘され始めた。

(私論.私見) JASRACの排他的独占的著作権管理考
 制定された著作権仲介業務法によると、「権利者は権利委託の際に全作品の著作権を全て信託せざるを得ないことになり、即ち作品や権利を選択することはできなくなっている。作品や権利を選択する自由や、それに対する対価の決定権はJASRACが持つということになっている」(「音楽著作権問題その2)。為に、以降、JASRACが、音楽の「作詞」・「作曲」・「編曲」に関する管理業務を独占することになる。つまり、JASRACによる音楽著作権の排他的独占的集中管理体制が為されていることになる。

 JASRACに排他的独占的著作権管理が認められるようになった経緯については、上述の「プラーゲ機関」とのいきさつがあったとはいえ、戦後の法秩序からすれば独占禁止法に抵触する恐れがある。しかし、この問題は不問に付されつつ今日まで経緯している。こうしたことも含め、JASRACに対しては被請求者のみならず著作権者からの不満も発生しているようである。

 れんだいこが注意を喚起するのは、JASRACが法的に認められた結社であることは良いとしても、その活動はあくまで「もって音楽文化の普及発展に資することを目的」とせねばならないということについてである。民法一般にも公序良俗規定があるように、著作権法にも「文化の普及発展に資する規定」がある。JASRAC活動は、この大綱から外されることは許されないという公理に忠実に営まれなければならない。JASRAC活動の実態は果たしてこの公理に即しているだろうか。

JASRACの独占業務の弊害
 JASRACの独占業務の弊害について、「ウィキぺディアの『独占業務の弊害』」には次のように記されている。これも参考になるための関連箇所を転載する。
 1980年代後半よりパソコン通信が普及し始めた。個対多の情報発信が容易になるにつれて JASRAC の問題点が指摘され始めた。

 著作権法の解釈では文字情報の一部を引用し、出典を明らかにした上で質量ともに十分なコメントを付記した行為が認められている。文芸分野において仲介業務を行っている日本文芸著作権保護同盟はこれを認めているが、JASRAC の見解では一節の引用も許容できないとされた。パソコン通信事業者との話し合いでも主張は平行線を辿った。事業者のひとつである NIFTY-Serve (現在の@nifty) は1997年ごろに独自の解釈をまとめ、会員に文芸作品と同等の引用を許容すると発表した。

 次にDTM の普及で演奏データの配布が可能になると、JASRAC の規定では当時コンピュータ上の送信権がなかったことから使用料が提示されず、手続きの上ではネットワーク上で音楽の送信はできないことになった。実情に対処するため JASRAC は実験という名目でパソコン通信事業者に対して演奏データの蓄積と送信を黙認した。しかしこれも全体の管理者が存在しないインターネットでは全く対処することができず、個人が非商用目的を理由に無断で演奏データや音声ファイルをウェブサイトに掲載する脱法行為が日常化した。

 これらに対して利用者のみならず権利者側からも非難の声が上がり、長い議論の末に200年8月にインタラクティブ配信の利用規定が認可を受けた。2001年には非商用のインタラクティブ配信、主として個人のウェブサイトに対する楽曲の使用許諾を開始した。またインタラクティブ配信におけるネット上の使用許諾窓口としてJ-TAKTがある。

 また、ネット上のMP3や歌詞などの違法ファイルを監視するシステムとしてJ-MUSEがあり、違法ファイルと認められたホームページの管理者には個別に警告メールを送付している (参照リンク (http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0217/special.htm)) 。


仲介業務法の終焉とJASRACの今後
 JASRACの今後について、ウィキぺディアの『仲介業務法の終焉とJASRACの今後』には次のように記されている。これも参考になるための関連箇所を転載する。

 著作権の一元管理は効率の良いシステムとして運用されてきたが、音楽ソフトのデジタル化、ネットワーク化の進展にともなって JASRAC の非効率性が指摘されるようになってきた。カラオケでも使用料や権利者への分配方法が業界や権利者代表との話し合いでも決定しないままビジネスが先行するなどの弊害も生んだ。

 権利者側からも、従来からあった楽譜出版、録音、演奏の権利とゲーム着信メロディー、ネットワーク送信などの権利は別に管理したいのに、JASRAC の著作権信託ではそれができないことを指摘して、これを改めるよう求める動きも活発化した。[1] (http://www.kab.com/liberte/rondan.html)

 こうした流れの中、2000年に著作権等管理事業法が成立、2001年に施行された。仲介業務法と最も異なる点は管理団体の設立が許可制から登録制に緩和されたことであり、これにより60年にわたる JASRAC の独占に事実上終止符が打たれた。しかしこれがすぐに JASRAC に代わり得る管理団体の誕生を意味するものではなく、依然として JASRAC の独占は続いているといった声も根強くある。

 また、1998年からは著作権思想の普及を目的として文化事業を行っている。また、2000年辺りからは集中的な著作権管理システムとして「JASRAC NETWORCHESTRA SYSTEM(ネットワーケストラ)」を運用している。


【JASRACの自己規定】
 JASRAC(日本音楽著作権協会)」は、2004年現在の同社よりの郵送パンフレット文に次のように記している。
 「JASRACは、著作権者から音楽の著作権を預かり管理をしている公益社団法人です。カラオケで歌われる音楽のほとんど全てを管理しているので、お店の経営者の方は、JASPACに手続きをいただくことで、音楽を適法に利用することができます」とある()。

(私論.私見) 「「JASRACの自己規定」について

 ならば問う。

 JASRACが公益社団法人であるなら、JASPACは当然公益社団法人としての制限を受ける筈であり、その活動実態、経理公開を世間向けにせねばならないのではなかろうか。JASPACはこれを為しているのか。
 「カラオケで歌われる音楽のほとんど全てを管理している」と明記しているが、この名目で高額の著作権使用料を請求している以上、ならば、カラオケ本ないしその映像につき、利用客に対し著作権付きのものかそうでないものかの何らかの表示をする義務があるのではないのか。なぜそれをしないのか。
 「お店の経営者の方は、JASPACに手続きをいただくことで、音楽を適法に利用することができます」とあるが、「できます」とは、行政権的な許可の問題であるのか、自主的な加盟問題であるのか明らかにせよ。

【JASRACによる「JASRAC契約」の強制について】
 JASRAC(日本音楽著作権協会)」は、同パンフレット文の「カラオケ利用店の経営者の皆様へ」で、「お店でカラオケを利用される場合は、音楽著作権の手続きが必要です」の見出しで次のように記している。
 「音楽は、作詞家や作曲家など著作権者の財産として著作権法で保護されています。著作権者に無断で音楽を利用することはできません。お店でカラオケをご利用の場合は、日本音楽著作権協会JASPACへの著作権手続きが必要となります」。

(私論.私見) 「「JASRACのカラオケ店に対するJASPAC契約の強制」について

 ならば問う。

 「著作権者に無断で音楽を利用することはできません」なる一般的な表現は問題なのではないのか。人が歌を歌うに付き、著作権者に無断で謳うことはできないなどという法理がいつから認められたのか。この書き出しは大いに問題があろう。「利用」と言い換えているところが曲者であるが、「利用してお金を取ることはできません」という意味ならば、お金を取らず無料サービスしているスナックカラオケ店の場合はどうなのか。
 「お店でカラオケをご利用の場合は、日本音楽著作権協会JASRACへの著作権手続きが必要となります」も然りで、単に「お店でカラオケをご利用の場合は」との一般的な表現は問題なのではないのか。「JASRACの管理する著作権付き音楽を有料で利用する店の場合には、JASRACへの著作権手続きが必要となります」となるべきところではないのか。

 無料サービスしているスナックカラオケ店の場合にもJASRAC契約が義務化される法理を明らかにせよ。第一、カラオケ機械メーカーが既にJASRACへ高額の支払いをしているではないか。そのメーカーからリースしている個別店に対する賦課は二重取りではないのか。店は、そのリース料においてカラオケメーカーに著作権料も含めて支払いをしているとみなされるべきではないのか。
 JASRACの文面からすれば、実際にカラオケを利用し唱歌している顧客その人が受益しているのであるから、受益者負担の原則で当の歌っているその人に対してこそ著作権料を請求するべきではないのか。当のその人がなぜ免責されるのか、その法理を明らかにせよ。

 実務上難しいとすれば、仮に法理論的には有効であっても、実務的に解決されるまで実行し難いとすべきではないのか。

【【JASRCの事務所網】】
 JASRACは、設立が1939(昭和14).11.18日で、本部を/ 東京都渋谷区上原3-6-12に置き、03-3481-2121(代表)で、支部を 全国主要都市に22支部展開している。以下の通りである。
   ■日本音楽著作権協会 http://www.jasrac.or.jp/ 
本  部
03-3481-2121
fax.03-3481-2150
北海道支部
011-221-5088
fax.011-221-1311
盛岡支部
019-652-3201
fax.019-652-4010
仙台支部
022-264-2266
fax.022-265-2706
長野支部
026-225-7111
fax.026-223-4767
大宮支部
048-643-5461
fax.048-643-3567
上野支部
03-3832-1033
fax.03-3832-1040
東京支部
03-3562-4455
fax.03-3562-4457
西東京支部
03-3232-8301
fax.03-3232-7798
東京イベントコンサート支部
03-5286-1671
fax.03-3286-1670
立川支部
0425-29-1500
fax.0425-29-1515
横浜支部
045-662-6551
fax.045-662-6548
静岡支部
054-254-2621
fax.054-254-0285
中部支部
052-583-7590
fax.052-583-7594
北陸支部
076-221-3602
fax.076-221-6109
京都支部
075-251-0134
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大阪支部
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fax.06-6244-1970
神戸支部
078-322-0561
fax.078-322-0975
中国支部
082-249-6362
fax.082-246-4396
四国支部
0878-21-9191
fax.0878-22-5083
九州支部
092-441-2285
fax.092-441-4218
鹿児島支部
099-224-6211
fax.099-224-6106
那覇支部
098-863-1228
fax.098-866-5074

【JASRACの売上高】
 JASRACは、毎年1000億円の売り上げを誇っている。

【JASRACの広報】
 JASRACは、「プレスリリース」で広報している。

【著作権管理事業法施行による民間参入で、現在5社】
 2001.10月、著作権管理事業法が施行され、著作権管理事業が許可制から登録制に変わった。これにより民間参入が相次いだ。現在、著作権管理事業者は5社となっている。


 



(私論.私見)