JASRACの天下りと高給所得考

 更新日/2017(平成29).7.24日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 利権集団の巣窟と化したJASRACの天下りと高給所得問題について検証する。


【JASRACへの天下り役員一覧】
 判明する文部官僚又は文教族議員のJASRAC役員は次の通り。
氏名 元役職 役職 在任期間
菊池豊三郎 文部省次官 専務理事 1957.11月〜1965.04月
北岡健二 文部省調査局長 常務理事 1969.06月〜1974.10月
常勤監事 1974.10月〜(退任時期不明)
吉里邦夫 文化庁文化部長 常務理事 1977.10月〜1980.10月
常勤監事 1980.10月〜1982.06月
内山正 常勤監事 1982.08月〜(退任時期不明)
山中昌裕 常勤監事 1986.10月〜(退任時期不明)
久保庭信一 常務理事 1992.10月〜1994.01月
加戸守行 文部省官房長 理事長 1995.11月〜1998.11月
木村豊 常務理事 1995.11月〜2001.10月
小野清子 文教族議員 理事長
吉田茂 文化庁長官、同庁著作権課長 理事長 2000.04月〜

 2006.10月の人事で、事務局出身のプロパーである加藤衛常務理事が理事長に昇任し、2008年現在は天下り人事ではなくなっている。


【高額給与実態考】
 「文化庁からJASRACへの天下り」は全面禁止にすべき」、「企業レポート、日本音楽著作権協会(ジャスラック)/使用料1000億円の巨大利権 音楽を食い物にする呆れた実態その1」その他を参照する。

 週刊ダイヤモンド に「日本音楽著作権協会(ジャスラック)使用料1000億円の巨大利権 音楽を食い物にする呆れた実態」は、JASRACをめぐる巨大利権や天下りの歴史、ASRAC幹部の報酬、横暴な取り立てを告発した。

 小野清子プロフィール。東京教育大学(現・筑波大学)体育学部を卒業後、同郷同窓でのちに東京オリンピックの体操競技で金メダルを得る小野喬と結婚。慶應義塾大学体育研究所に勤務しながら体操の技能を磨き、ローマオリンピックに出場。東京オリンピックでは一男一女の二児の母として出場し、体操競技で団体銅メダルを得た。

 中曽根首相の要請で1986(昭和61).7月の第14回参院選に自民党から出馬して当選。1982.7月の第16回参議院議員選挙で再選、1988年の第18回参議院議員選挙で落選。1999.11月、JASRACの理事長であった文部省からの天下りの加戸守行氏が理事長を退任し愛媛県知事選に出馬したことにより、その後釜としてJASRACの理事長に就任。

 JASRAC理事長してた時の年収は、日本道路公団総裁(2614万円)や日本中央競馬会理事長(3000万円)を凌ぐ3565万円だった。小野氏の前任の加戸氏(現愛媛県知事)は3年間で一億円以上の報酬を得ていたと云われている。ほかの公益法人に比べるとベラボウに高い。常務理事クラスですら2800万円近い報酬を得ていた。(「今週の1枚(05.10.17)」その他参照)

 小野清子に関して、「No Where / Now Here」で次のような証言が為されている。
 「小野清子理事長はその前年の参議院選挙で落選し、浪人中の身だった。就任当初は「腰掛けではなく3年の任期を全うする」と発言していたが、2001年には選挙に出馬するため任期を18ヶ月残してJASRAC理事長を辞職している。その間の年俸は3700万円。退職金は1000万円だったそうだ。

 私は小野新理事長に近づき、話しかけた。どんな人にも名刺一枚で話しかけられるのは記者の特権である。すぐに分かったのは、新理事長が著作権のなんたるかを理解していないということだった。こちらの質問に対する返答に詰まると、お付きのJASRAC職員がこしょこしょと後ろから耳打ちしていた。「まるで二人羽織だな」と私は思った。この人に何を聞いてもニュースは取れないと判断した私は、そこから離れたのだった」。

 ちなみに、小野清子は、「次の選挙への腰掛けでは困る」と念を押され、「絶対にそんなことはない。私はJASRACの発展のために貢献するべく任期を全うする」と明言し引き受けたにも拘らず、2001年、約束を反故して次期参議院選出馬の準備に専念するとし任期を18ヶ月残してJASRAC理事長を退任した。後任にはまたもや文化庁からの天下りで吉田茂が就任した。

 小野はその後、日本オリンピック委員会理事などスポーツ・文教関係の役職を歴任。国際養神会合気道連盟の会長も務めている。第1次小泉第2次改造内閣で国家公安委員会委員長、内閣府特命担当大臣(青少年育成及び少子化対策、食品安全担当)として閣僚入り。


 加戸守行氏は愛媛県知事となり、「つくる会」の歴史教科書を採択させたことでも知られている。
 JASRACの平成16年一般会計貸借対照表によると、役員退職給与引当金が1億5343万8168円、職員退職給与引当金34億5461万5118円とある。社員数499名で退職金引当金が35億を単純計算すると、一人平均700万円になる。役員300人に対して1億5000万円を単純計算すると、一人平均500万円になる。常勤でないことを考えるとおいしい話では有る。他方、徴収した利用料がどれだけ正当の権利者にちゃんと配分されているかを示す資料は見つからない。

 「ジャズ喫茶やピアノバーなどに法外な著作権料の支払いを要求している」、「個人が運営するウェブサイトにまで法外な著作権料を請求して来る」ことで悪名高いJASRACは、「収集した著作権料の大半は天下り役人の法外に高い給料や退職金となって消えている」点でも問題となっている。JASRACは、個人情報を盾にASRACの役員の報酬を決める役員審議会を非公開とし、歴代の天下り官僚の氏名を公表しないが、実に20年もの間ほとんど途切れることなく天下りが続いている。こうして、JASRACは、監督官庁である旧文部省文化庁の役人が、管理される側のJASRACに天下りし、一般常識から見ても際立って高い給料をもらい続けているという構造を見せている。「文化庁からJASRACへの天下り」は今や焦眉の課題になりつつある。

【文化庁ないしは文教族議員のからJASRACへの天下り実態考】
 JASRACには実に延々50年以上ものの間、文部官僚の天下りが続いている。1957年から1965年に在任して菊池豊三郎専務理事が天下ったのを筆頭に、加戸守行理事長、吉田茂理事長らがまさにその典型的な存在。過去に2度(64年におきた汚職疑惑、94年にあった古賀政男音楽文化振興財団に対する巨額融資問題)だけ、文部官僚とJASRACとの癒着が断ち切られたが、その後復活して今でもその関係が続いている。

 (※64年の汚職疑惑とは、数年の間に著作権料から約一億円を簿外処理し、その裏金を使って当時の役人への裏給与や遊興費、文部官僚への接待費などにあててたされたもの。結果、当時の会長と初代天下り官僚の菊池専務理事が背任容疑で書類送検された)。



 



(私論.私見)