旧著作権法

 (最新見直し2008.3.16日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 現行著作権法は極めて煩雑多岐に接木されており、その立法精神も錯綜している。故に、必要事項を簡素に規定している旧著作権法で、本来の著作権法の姿を確認しておく事にする。

 2008.3.13日 れんだいこ拝 

【旧著作権法の特徴考】
 日本に著作権法が導入されたのは、1899(明治32)年である。ベルヌ条約加盟にあわせ制定された(明治三十二年三月四日法律第三十九号)。現在、1970年に旧著作権法を全面改正した著作権法(昭和45年5月6日法律第48号)に合わせて「旧著作権法」と呼ばれている。「(旧)著作権法 」、「(旧)著作権法」その他で確認できる。

 これによると52条と附則から構成されている。総括して云えることは、著作権者の権利(翻訳権を含む)とそれを活用する業者との関係を規制したものであり、エンドユーザーの利用に関する対価請求権などというものはどこにも記されていない。これは重大な事であるように思う。

 もう一つ、第11条で、「著作権の目的とならない著作物」が規定されており、それによると「一 法律命令及官公文書 」、「二 新聞紙又は雑誌に掲載したる雑報及時事を報道する記事」、「三 公開せる裁判所、議会並政談集会に於て為したる演述」は著作権保護対象外の無規制としていることである。

 「二 新聞紙又は雑誌に掲載したる雑報及時事を報道する記事」については更に、第20条で、「時事問題を論議した記事」の項目を設け「新聞紙又は雑誌に掲載したる政治上の時事問題を論議したる記事(学術上の著作物を除く)は特に転載を禁ずる旨の明記なきときは其の出所を明示して之を他の新聞紙又は雑誌に転載することを得」、第20条の2で、「時事問題の公開演述」の項目を設け「時事問題に付ての公開演述は著作者の氏名、演述の時及場所を明示して之を新聞紙又は雑誌に掲載することを得但し同一著作者の演述を蒐輯する場合は其の著作者の許諾を受くることを要す」と釘を刺すようにして確認している。

 この部分は新著作権法でも継承されており、にも拘らず新聞協会見解は全く無視して著作権権益確保を主張していることになる。この誤りを質さねばならない。

 もう一つ、 第18条(著作者人格権)で、「他人の著作物を発行又は興行する場合に於ては著作者の生存中は著作者が現に其の著作権を有すると否とに拘らず其の同意なくして著作者の氏名称号を変更若は隠匿し又は其の著作物に改竄其の他の変更を加え若は其の題号を改むることを得ず。他人の著作物を発行又は興行する場合に於ては著作者の死後は著作権の消滅したる後と雖も其の著作物に改竄其の他の変更を加えて著作者の意を害し又は其の題号を改め若は著作者の氏名称号を変更若は隠匿することを得ず。前二項の規定は第二十条、第二十条の二、第二十二条の五第二項、第二十七条第一項第二項、第三十条第一項第二号乃至第九号の場合に於ても之を適用す」とある。

 これは、著作者の氏名称号、著作物の改竄その他の変更、題号改名が禁止されており、逆に言えば、これを守れば著作物の発行又は興行できるという事になる。当然ネット利用も同じで、これが本来の著作権法の趣旨であることになる。

 第19条(改作物)で、「原著作物に訓点、傍訓、句読、批評、註解、附録、図画を加え又は其の他の修正増減を為し若は翻案したるが為新に著作権を生ずることなし。但し新著作物と看做さるべきものは此の限に在らず」とある。これも重要な規定で、昨今の強権著作権論者の手間隙著作権主張が噴飯ものであることが判明しよう。

 2008.3.13日 れんだいこ拝 



目次
第一章 著作者の権利
第二章 出版権
第三章 偽 作
第四章 罰 則
第五章 附 則

【第一章 著作者の権利】

第一条 〔著作権の内容〕 
 文書演述図画建築彫刻模型写真演奏歌唱其の他文芸学術若は美術(音楽を含む以下之に同じ)の範囲に属する著作物の著作者は其の著作物を複製するの権利を専有す。文芸学術の著作物の著作権は翻訳権を包含し各種の脚本及楽譜の著作権は興行権を包含す

第二条 〔譲 渡〕
 著作権は其の全部又は一部を譲渡することを得。

第三条 〔保護期間−生前公表著作物〕
 発行又は興行したる著作物の著作権は著作者の生存間及其の死後三十年間継続す。数人の合著作に係る著作物の著作権は最終に死亡したる者の死後三十年間継続す。

第四条 〔同前−死後公表著作物〕
 著作者の死後発行又は興行したる著作物の著作権は発行又は興行のときより三十年間継続す。

第五条 〔同前−無名・変名著作物〕
 無名又は変名著作物の著作権は発行又は興行のときより三十年間継続す但し其の期間内に著作者其の実名の登録を受けたるときは第三条の規定に従う。

第六条 〔同前−団体著作物〕
 官公衙学校社寺協会会社其の他団体に於て著作の名義を以て発行又は興行したる著作物の著作権は発行又は興行のときより三十年間継続す。

第七条 〔同前−翻訳権〕
 著作権者原著作物発行のときより十年内に其の翻訳物を発行せざるときは其の翻訳権は消滅す。前項の期間内に著作権者其の保護を受けんとする国語の翻訳物を発行したるときは其の国語の翻訳権は消滅せず。

第八条 〔同前−継続的刊行物〕
 冊号を逐い順次に発行する著作物に関しては前四条の期間は毎冊若は毎号発行のときより起算す。一部分ずつを漸次に発行し全部完成する著作物に関しては前四条の期間は最終部分の発行のときより起算す但し三年を経過し仍継続の部分を発行せざるときは既に発行したる部分を以て最終のものと看做す。

第九条 〔期間の計算〕
 前六条の場合に於て著作権の期間を計算するには著作者死亡の年又は著作物を発行又は興行したる年の翌年より起算す。

第十条 〔相続人の不存在〕 
 相続人なき場合に於て著作権は消滅す。

第十一条 〔著作権の目的とならない著作物〕 
 左に記載したるものは著作権の目的物と為ることを得ず
 一 法律命令及官公文書
 二 新聞紙又は雑誌に掲載したる雑報及時事を報道する記事
 三 公開せる裁判所、議会並政談集会に於て為したる演述

第十二条 〔無名・変名著作物の権利保全〕
 無名又は変名著作物の発行者又は興行者は著作権者に属する権利を保全することを得但し著作者其の実名の登録を受けたるときは此の限に在らず。

第十三条 〔共同著作物〕
 数人の合著作に係る著作物の著作権は各著作者の共有に属す。各著作者の分担したる部分明瞭ならざる場合に於て著作者中に其の発行又は興行を拒む者あるときは他の著作者は其の者に賠償して其の持分を取得することを得但し反対の契約あるときは此の限に在らず。各著作者の分担したる部分明瞭なる場合に於て著作者中に其の発行又は興行を拒む者あるときは他の著作者は自己の部分を分離し単独の著作物として発行又は興行することを得但し反対の契約あるときは此の限に在らず 。本条第二項の場合に於ては発行又は興行を拒みたる著作者の意に反して其の氏名を其の著作物に掲ぐることを得ず

第十四条 〔編集著作物〕
 数多の著作物を適法に編輯したる者は著作者と看做し其の編輯物全部に付てのみ著作権を有す但し各部の著作権は其の著作者に属す。

第十五条 〔登 録〕
 著作権の相続譲渡及質入は其の登録を受くるに非ざれば之を以て第三者に対抗することを得ず。無名又は変名著作物の著作者は現に其の著作権を有すると否とに拘らず其の実名の登録を受くることを得。著作者は現に著作権を有すると否とに拘らず其の著作物の著作年月日の登録を受くることを得。著作権者其の著作物を始めて発行したるときは著作権者又は著作物の発行者は一年内に限り第一発行年月日の登録を受くることを得。

第十六条 〔登録庁〕
 登録は行政庁之を行う。登録に関する規定は命令を以て之を定む。

第十七条 〔差押禁止物〕
 未だ発行又は興行せざる著作物の原本及其の著作権は債権者の為に差押を受くることなし但し著作権者に於て承諾を為したるときは此の限に在らず。

第十八条 〔著作者人格権〕 
 他人の著作物を発行又は興行する場合に於ては著作者の生存中は著作者が現に其の著作権を有すると否とに拘らず其の同意なくして著作者の氏名称号を変更若は隠匿し又は其の著作物に改竄其の他の変更を加え若は其の題号を改むることを得ず。他人の著作物を発行又は興行する場合に於ては著作者の死後は著作権の消滅したる後と雖も其の著作物に改竄其の他の変更を加えて著作者の意を害し又は其の題号を改め若は著作者の氏名称号を変更若は隠匿することを得ず。前二項の規定は第二十条、第二十条の二、第二十二条の五第二項、第二十七条第一項第二項、第三十条第一項第二号乃至第九号の場合に於ても之を適用す。

第十九条 〔改作物〕 
 原著作物に訓点、傍訓、句読、批評、註解、附録、図画を加え又は其の他の修正増減を為し若は翻案したるが為新に著作権を生ずることなし。但し新著作物と看做さるべきものは此の限に在らず。

第二十条 〔時事問題を論議した記事〕
 新聞紙又は雑誌に掲載したる政治上の時事問題を論議したる記事(学術上の著作物を除く)は特に転載を禁ずる旨の明記なきときは其の出所を明示して之を他の新聞紙又は雑誌に転載することを得。

第二十条の二 〔時事問題の公開演述〕
 時事問題に付ての公開演述は著作者の氏名、演述の時及場所を明示して之を新聞紙又は雑誌に掲載することを得但し同一著作者の演述を蒐輯する場合は其の著作者の許諾を受くることを要す。

第二十一条 〔翻訳物〕
 翻訳者は著作者と看做し本法の保護を享有す但し原著作者の権利は之が為に妨げらるることなし。

第二十二条 〔美術著作物の異種複製〕 
 原著作物と異りたる技術に依り適法に美術上の著作物を複製したる者は著作者と看做し本法の保護を享有す。

第二十二条の二 〔著作権の内容−映画化権等〕
 文芸、学術又は美術の範囲に属する著作物の著作権は其の著作物を活動写真術又は之と類似の方法に依り複製(脚色して映画と為す場合を含む)し及興行するの権利を包含す。

第二十二条の三 〔映画の著作権〕
 活動写真術又は之と類似の方法に依り製作したる著作物の著作者は文芸、学術又は美術の範囲に属する著作物の著作者として本法の保護を享有す其の保護の期間に付ては独創性を有するものに在りては第三条乃至第六条及第九条の規定を適用し之を欠くものに在りては第二十三条の規定を適用す。

第二十二条の四 〔同 前〕
 他人の著作物を活動写真術又は之と類似の方法に依り複製(脚色して映画と為す場合を含む)したる者は著作者と看做し本法の保護を享有す但し原著作者の権利は之が為に妨げらるることなし。

第二十二条の五 〔著作権の内容−放送権〕
 文芸、学術又は美術の範囲に属する著作物の著作権は其の著作物の無線電話に依る放送を許諾するの権利を包含す。放送事業者は既に発行又は興行したる他人の著作物を放送せんとするときは著作権者と協議を為すことを要す協議調わざるときは命令の定むる所に依り文化庁長官の定むる相当の償金を支払い其の著作物を放送することを得。前項の償金の額に付異議ある者は訴を以て其の増減を請求することを得。前項の訴に於ては著作権者又は放送事業者を以て被告とす。

第二十二条の六 〔同前−録音権〕
 文芸、学術又は美術の範囲に属する著作物の著作権は其の著作物を音を機械的に複製するの用に供する機器に写調し及其の機器に依り興行するの権利を包含す。

第二十二条の七 〔録音物の著作権〕 
 音を機械的に複製するの用に供する機器に他人の著作物を適法に写調したる者は著作者と看做し其の機器に付てのみ著作権を有す。 

第二十三条 〔保護期間−写真著作物〕
 写真著作権は十年間継続す
 前項の期間は其の著作物を始めて発行したる年の翌年より起算す若し発行せざるときは種板を製作したる年の翌年より起算す
 写真術に依り適法に美術上の著作物を複製したる者は原著作物の著作権と同一の期間内本法の保護を享有す但し当事者間に契約あるときは其の契約の制限に従う。

第二十四条 〔同 前〕
 文芸学術の著作物中に挿入したる写真にして特に其の著作物の為に著作し又は著作せしめたるものなるときは其の著作権は文芸学術の著作物の著作者に属し其の著作権と同一の期間内継続す

第二十五条 〔嘱託による写真肖像〕
 他人の嘱托に依り著作したる写真肖像の著作権は其の嘱托者に属す。

第二十六条 〔写真類似の著作物〕
 写真に関する規定は写真術と類似の方法に依り製作したる著作物に準用す。

第二十七条 〔法定許諾〕
 著作権者の不明なる著作物にして未だ発行又は興行せざるものは命令の定むる所に依り之を発行又は興行することを得。著作権者の居所不明なる場合其の他命令の定むる事由に因り著作権者と協議すること能わざるときは命令の定むる所に依り文化庁長官の定むる相当の償金を供託して其の著作物を発行又は興行することを得。前項の償金の額に付異議ある者は訴を以て其の増減を請求することを得。前項の訴に於ては著作権者又は著作物を発行若は興行する者を以て被告とす。

第二十八条 〔外国人の著作権〕
 外国人の著作権に付ては条約に別段の規定あるものを除く外本法の規定を適用す但し著作権保護に関し条約に規定なき場合には帝国に於て始めて其の著作物を発行したる者に限り本法の保護を享有す。

【第二章 出版権】

第二十八条の二 〔設定〕 
 著作権者は其の著作物を文書又は図画として出版することを引受くる者に対し出版権を設定することを得。

第二十八条の三 〔内 容〕
 出版権者は設定行為の定むる所に依り出版権の目的たる著作物を原作の侭印刷術其の他の機械的又は化学的方法に依り文書又は図画として複製し之を発売頒布するの権利を専有す但し著作権者たる著作者の死亡したるとき又は設定行為に別段の定なき場合に於て出版権の設定ありたる後三年を経過したるときは著作権者は著作物を全集其の他の編輯物に輯録し又は全集其の他の編輯物の一部を分離して別途に之を出版することを妨げず。

第二十八条の四 〔存続期間〕
 出版権は設定行為に別段の定なきときは其の設定ありたるときより三年間存続す。

第二十八条の五 〔出版の義務〕
 出版権者は出版権の設定ありたるときより三月以内に著作物を出版するの義務を負う但し設定行為に別段の定あるときは此の限に在らず。出版権者が前項の義務に違反したるときは著作権者は出版権の消滅を請求することを得。

第二十八条の六 〔継続出版の義務〕
 出版権者は著作物を継続して出版するの義務を負う但し設定行為に別段の定あるときは此の限に在らず。出版権者が前項の義務に違反したるときは著作権者は三月以上の期間を定めて其の履行を催告し其の期間内に履行なきときは出版権の消滅を請求することを得。

第二十八条の七 〔修正増減・再版〕
 著作者は出版権者が著作物の各版の複製を完了するに至る迄其の著作物に正当の範囲内に於て修正増減を加うることを得。出版権者が著作物を再版する場合に於ては其の都度予め著作者に其の旨を通知することを要す。

第二十八条の八 〔消滅の請求〕 
 著作権者は其の著作物の出版を廃絶する為何時にても損害を賠償して出版権の消滅を請求することを得。

第二十八条の九 〔処 分〕 
 出版権は著作権者の同意を得て其の譲渡又は質入を為すことを得。

第二十八条の十 〔登 録〕
 出版権の得喪、変更及質入は其の登録を受くるに非ざれば之を以て第三者に対抗することを得ず。第十六条の規定は出版権の登録に付之を準用す

第二十八条の十一 〔侵害〕
 出版権の侵害に付ては本法中第三十四条及第三十六条の二の規定を除くの外偽作に関する規定を準用す。

【第三章 偽 作】

第二十九条 〔著作権侵害者の責任〕 
 著作権を侵害したる者は偽作者とし本法に規定したるものの外民法第三編第五章の規程に従い之に因りて生じたる損害を賠償するの責に任ず>

第三十条 〔著作権の制限〕

 既に発行したる著作物を左の方法に依り複製するは偽作と看做さず

第一 発行するの意思なく且器械的又は化学的方法に依らずして複製すること
第二 自己の著作物中に正当の範囲内に於て節録引用すること
第三 普通教育上の修身書及読本の目的に供する為に正当の範囲内に於て抜萃蒐輯すること
第四 文芸学術の著作物の文句を自己の著作したる脚本に挿入し又は楽譜に充用すること
第五 文芸学術の著作物を説明するの材料として美術上の著作物を挿入し又は美術上の著作物を説明するの材料として文芸学術の著作物を挿入すること
第六 図画を彫刻物模型に作り又は彫刻物模型を図画に作ること
第七 脚本又は楽譜を収益を目的とせず且出演者が報酬を受けざる興行の用に供し又は其の興行を放送すること
第八 音を機械的に複製するの用に供する機器に著作物の適法に写調せられたるものを興行又は放送の用に供すること
第九 専ら官庁の用に供する為複製すること
本条の場合に於ては其の出所を明示することを要す。

第三十一条 〔著作権侵害物の輸入〕
 帝国に於て発売頒布するの目的を以て偽作物を輸入する者は偽作者と看做す。

第三十二条 〔問題の解答書〕
 練習用の為に著作したる問題の解答書を発行する者は偽作者と看做す。

第三十三条 〔善意無過失による侵害〕 
 善意にして且過失なく偽作を為して利益を受け之が為に他人に損失を及ぼしたる者は其の利益の存する限度に於て之を返還する義務を負う。

第三十四条 〔共同著作物の侵害〕 
 数人の合著作に係る著作物の著作権者は偽作に対し他の著作権者の同意なくして告訴を為し及自己の持分に対する損害の賠償を請求し又は自己の持分に応じて前条の利益の返還を請求することを得。

第三十五条 〔著作者・発行者の推定〕
 偽作に対し民事の訴訟を提起する場合に於ては既に発行したる著作物に於て其の著作者として氏名を掲げたる者を以て其の著作者と推定す。無名又は変名著作物に於ては其の著作物に発行者として氏名を掲げたる者を以て其の発行者と推定す。未だ発行せざる脚本、楽譜及活動写真術又は之と類似の方法に依り製作したる著作物の興行に関しては其の興行に著作者として氏名を顕わしたる者を以て其の著作者と推定す。著作者の氏名を顕わさざるときは其の興行者を以て其の著作者と推定す。第十五条第三項の規定に依り著作年月日の登録を受けたる著作物に在りては其の年月日を以て著作の年月日と推定す。第十五条第四項の規定に依り第一発行年月日の登録を受けたる著作物に在りては其の年月日を以て始めて発行したる年月日と推定す。

第三十六条 〔差止・差押〕
 偽作に関し民事の出訴又は刑事の起訴ありたるときは裁判所は原告又は告訴人の申請に依り保証を立てしめ又は立てしめずして仮に偽作の疑ある著作物の発売頒布を差止め若は之を差押え又は其の興行を差止むることを得。前項の場合に於て偽作に非ざる旨の判決確定したるときは申請者は差止又は差押より生じたる損害を賠償するの責に任ず。

第三十六条の二 〔著作者人格権の侵害〕
 第十八条の規定に違反したる行為を為したる者に対しては著作者は著作者たることを確保し又は訂正其の他其の声望名誉を回復するに適当なる処分を請求し及民法第三編第五章の規程に従い損害の賠償を請求することを得。第十八条の規定に違反したる行為を為したる者に対しては著作者の死後に於ては著作者の親族に於て其の著作者たることを確保し又は訂正其の他其の声望名誉を回復するに適当なる処分を請求することを得。前二項の規定に依る民事の訴訟に付ては前二条の規定を準用す。

第三十六条の三 〔著作権制度審議会〕
 文化庁長官は第二十二条の五第二項又は第二十七条第二項の規定に依る償金の額を定めんとするときは著作権制度審議会に諮問すべし。

【第四章 罰 則】

第三十七条 〔著作権侵害の罪〕 
 偽作を為したる者及情を知て偽作物を発売し又は頒布したる者は二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処す。

第三十八条 〔著作者人格権侵害の罪〕 
 第十八条の規定に違反したる者は五万円以下の罰金に処す。

第三十九条 〔出所不明示の罪〕
 第二十条、第二十条の二及第三十条第二項の規定に違反し出所を明示せずして複製したる者並第十三条第四項の規定に違反したる者は一万円以下の罰金に処す。

第四十条 〔著作者名詐称の罪〕 
 著作者に非ざる者の氏名称号を附して著作物を発行したる者は一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処す。

第四十一条
 削除

第四十二条 〔虚偽登録の罪〕
 虚偽の登録を受けたる者は一万円以下の罰金に処す。

第四十三条 〔没 収〕 
 偽作物及専ら偽作の用に供したる器械器具は偽作者、印刷者、発売者及頒布者の所有に在る場合に限り之を没収す。

第四十四条 〔親告罪〕 
 本章に規定したる罪は被害者の告訴を待て其の罪を論ず但し第三十八条の場合に於て著作者の死亡したるとき並第四十条乃至第四十二条の場合は此の限に在らず。

第四十五条
 削除

【第五章 附 則】

第四十六条 本法施行の期日は勅令を以て之を定む〔明治三十二年七月十五日から施行〕明治二十六年法律第十六号版権法明治二十年勅令第七十八号脚本楽譜条例明治二十年勅令第七十九号写真版権条例は本法施行の日より廃止す。
第四十七条 本法施行前に著作権の消滅せざる著作物は本法施行の日より本法の保護を享有す。
第四十八条 本法施行前偽作と認められざりし複製物にして既に複製したるもの又は複製に著手したるものは之を完成して発売頒布することを得。前項の複製の用に供したる器械器具の現存するときは本法施行後五年間仍其の複製の為之を使用することを得。
第四十九条 本法施行前翻訳し又は翻訳に著手し其の当時に於て偽作と認められざりしものは之を完成して発売頒布することを得但し翻訳物は本法施行後七年内に発行することを要す。前項の翻訳物は発行後五年間仍之を複製することを得。
第五十条 本法施行前既に興行し若は興行に著手し其の当時に於て偽作と認められざりしものは本法施行後五年間仍之を興行することを得。

第五十一条 第四十八条乃至第五十条の場合に於ては命令の定むる手続を履行するに非ざれば其の複製物を発売頒布し又は興行することを得ず。

第五十二条 第三条乃至第五条中三十年とあるは演奏歌唱の著作権及第二十二条の七に規定する著作権を除く外当分の間三十八年とす第六条中三十年とあるは演奏歌唱の著作権及第二十二条の七に規定する著作権を除く外当分の間三十三年とす。第二十三条第一項中十年とあるは当分の間十三年とす。
附 則(昭和三十七年法律第七十四号)
 この法律は、公布の日から施行する。ただし、この法律の施行前に著作権の消滅した著作物については、適用しない。〔昭和三十七年四月五日から施行〕

附 則(昭和四十年法律第六十七号)
 この法律は、公布の日から施行する。ただし、この法律の施行前に著作権の消滅した著作物については、適用しない。〔昭和四十年五月十八日から施行〕


附 則(昭和四十二年法律第八十七号)
 この法律は、公布の日から施行する。ただし、この法律の施行前に著作権の消滅した著作物については、適用しない。〔昭和四十二年七月二十七日から施行〕
附 則(昭和四十四年法律第八十二号)
 この法律は、公布の日から施行する。ただし、この法律の施行前に著作権の消滅した著作物については、適用しない。〔昭和四十四年十二月八日から施行〕


 



(私論.私見)