著作権法施行以前の古典の著作権について

 (最新見直し2005.12.8日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 古典著作物に就いては、「権利消滅状態」(「パプリック・ドメイン」)という法律上の概念で、無許可無料利用が可能にされている。この「権利消滅状態」(「パプリック・ドメイン」)という概念の持ち込みは良いとして、この概念が法理論として適正であるかどうかにはやや疑問がある。れんだいこは逆に、「権利排斥状態」にあったとみなすべきだと考えている。その「権利排斥状態」が「権利確認状態」に至る導入法が著作権法であったのではなかろうか。しかして、その本質は、著作物の私有財産制化であったであろう。それは、資本主義の勃興と共に主張され始め、資本主義の発展と共に法規制され、資本主義の爛熟と共に網の目状化されつつあるように思われる。

 2005.12.8日 れんだいこ拝

 「著作物は誰のため? 作品の再利用をめぐる米国の現状」が次のように述べている。貴重な指摘と思われるのでこれを転載しておく。
 白雪姫の物語は、何世紀にもわたって、世界中で語り継がれてきた。

 この有名な物語は、1812年にグリム兄弟が『グリム童話集』の中で発表する以前にも、アイルランドやアフリカ、アジアなどで、さまざまな形で出版されてきた。そしてグリム童話から125年後、ウォルト・ディズニーが物語をもう一歩進めて音楽を付け、長編アニメ映画『白雪姫と7人の小人』を作りあげた。

 このように白雪姫にはさまざまな顔が生まれたが、これには「権利消滅状態」(パプリック・ドメイン)という法律上の概念が一役買っている。この概念のおかげで、芸術家たちは古代ギリシアの詩、シェイクスピアの戯曲、モーツァルトのソナタに至るまでさまざまな芸術作品を利用したり、一部を借用したりすることが認められている。このような作品が生まれたときに著作権が存在しなかったか、すでに著作権の期限が切れているからだ。

 権利が消滅して社会の共有財産(公有)となっている作品群は、偉大な人々が残した宝の山だ。アイディアや思索の数々が、新しい世代の人々に利用してもらえるチャンスが来るのを待っている。

 「われわれの文化は、全く新しいものを発明するのではなく、時代の変化や人間どうしの関係のあり方の変化に応じて、優れた洞察力をもっていくつかのテーマを再利用することによって成り立っている」と、ワシントンDCで活動する知的財産弁護士、クリス・スプリグマン氏は述べている。

 「『ロミオとジュリエット』を例にとって考えてみよう。これはシェイクスピアが、『ローミアスとジュリエット(の悲劇物語)』を元に作り直したものだ。同じ物語が時代を経て、さらに『ウエスト・サイド物語』として改作された。われわれには偉大な作品を選び出して、まねる癖がある」

 作品の権利が消滅して公有になるまで、その使用は著作権法によって規制される。著作権法では、創作した人物が一定期間、自分のアイディアや作品を管理できる。

 米国議会では、著作権の有効期間を頻繁に延長してきた。現在、企業の場合は95年間、個人の場合は本人の存命中と死亡後70年まで著作権が保護される。

 連邦最高裁判所では現在、現行、そして今後発生する著作権の保護期間を20年間延長すると定めた1998年の著作権期間延長法が、合衆国憲法に適っているかどうかを審査するため弁論が行なわれている

 公有となった著作物やアイディアには、重要な価値があるにもかかわらず、公式な管轄機関が存在しない。作品が企業や個人による著作権保護下から公有の領域に移るときも、それが大々的に発表されることはほとんどない。

 いくつかの例外を除いて、著作権による保護は、何かを執筆したり記録したりすると、自動的に効力が発生する。このため、どの時点で権利が消滅するのか、正確な判断が難しいケースが多い。

 大手レコード会社を監視する非営利団体、『音楽の未来連合』のウォルター・マクダーナウ法務顧問は、次のように述べている。「著作権の管理機関は、特許局とは違う。特許局は、どの特許と商標を企業に許可するかを決定しなければならない。特許局は権利を認可するが、著作権管理機関は何がこれまでに制作されたかを記録するだけだ。特許権を認可している特許局は、その権利の期限が切れる時期についての記録も持っている」

 特許の有効期限は20年間で、米特許商標局が厳密に監視している。一方、著作権の所有者のために作品の権利消滅を監視する中心的な機関は存在しない。

 個人は著作権管理機関に料金を支払えば、ある作品が権利消滅扱いになったかどうかを判定してもらえるが、記録を検索しても確実に判定できないこともある。しかも、ある作品の情報がないからといって、その作品の著作権が保護されていないとは限らない。たとえば1978年までは、未発表作品を登録していなくても、普通法の下で著作権保護を主張できた。

 インターネット・アーカイブクリエイティブ・コモンズという2つの組織では、権利の消滅した作品を検索するという面倒な作業を軽減するシステム構築を目指している。

 非営利団体のクリエイティブ・コモンズでは、著作権で保護された作品やアイディアに関する一定の権利を維持しながら、従来の著作権法によるよりも迅速に、創作者が自分の作品を一般の利用に供せるようにするための新しい形式の著作権ライセンスを策定中だ。

 「ある一定の自由を促進するような、公共ライセンスの作成に取り組んでいる。自由といっても、利用作品に(著者の)クレジットを明記することや、創作者の承認を得ずに利用作品から収入を得られないようにすることなど、条件付きのライセンスになる。自分たちの権利をきめ細かく設定するにしても、一切の権利を放棄するにしても、安価で簡単にできる方法を作りだしたいのだ」と、クリエイティブ・コモンズのグレン・オーティス・ブラウン常務理事は述べた。
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 今春発効の著作権条約で世界の著作権は守られるか?(上)」も貴重情報と思えるので転載しておく。
 今春発効する2つの条約により、論議の的となっている米国のインターネット規制法の適用範囲が拡大するかもしれない。

 法律をグローバル化するための政府代表による国際組織、『世界知的所有権機関』(WIPO)は、デジタル海賊行為を取り締まるための新ガイドラインを発表した。今後3ヵ月以内に発効する『WIPO著作権条約』(WCT)および『WIPO実演・レコード条約』(WPPT)は、著作権保護の範囲をコンピューター・プログラムや映画、音楽に拡大するものだ。

 1996年に採択されたWTCとWPPTは、各国が標準となる著作権法を制定するための大枠を提供している。
 しかし、条約の正式発効にはそれぞれ少なくとも30ヵ国による批准が必要だったため、数年を要した。その間に米国では、この条約を基に初のインターネット上の知的所有権保護法である『デジタル・ミレニアム著作権法』(DMCA)が制定された。

 米国内のメディア企業が条約を最も効果的に具体化したものとしてDMCAを絶賛する一方で、いくつかの監視団体は、メディア複合企業や著作権所有者がデジタル配信を過度に管理できるようになると警戒している。

 電子フロンティア財団(EFF)のDMCAに対する最大の不満は、著作権管理の法制化だ。DMCAにより著作権所有者は、デジタルファイルを聴いたり、読んだり、鑑賞したりという人々の行動を指図できるようになる。注目を集めた2つの裁判で、監視団体とメディア企業との戦いは決定的なものになった。

 ハッカー向け雑誌『2600』誌は、ヨン・ヨハンセン容疑者が作成した暗号解読ソフト『DeCSS』の掲載を禁じられた(日本語版記事)。『DeCSS』を使うと、DVD暗号を解読して再配布できるようになる。このソフトウェアはディスクのデジタルセキュリティーを侵すもので、DMCAに定められた著作権保護の迂回禁止条項に違反する。ノルウェーのティーンエージャー、ヨハンセン容疑者は自国の著作権法に違反したとして起訴され、2年の刑を求刑されている。

 ロシア人プログラマー、ドミトリー・スクリャーロフ氏は、2001年7月ラスベガスで逮捕され、25年の刑を求刑された。スクリャーロフ氏は電子書籍の著作権を侵害するソフトウェアを販売したとして起訴され、半年後に釈放された(日本語版記事)。彼の行為は、ロシアの法律ではなく米国のDMCAに違反するものだった。

 EFFの上級専任弁護士、フレッド・フォン・ローマン氏によると、EFFはDMCAの廃止を求めて戦ってきたが、今や同財団の敵は外国にあるという。

 「米国の法律はすでにDMCAに準拠していると論じる人もいる」とローマン弁護士。「プロテクトされた作品を破るためには、まず先にそのコピーを作らなくてはならないが、そのような複製を作る権利はすでに保護されている。だがDMCAの起草者、ブルース・リーマン氏や他の関係者らは、米国を知的所有権保護運動の旗頭にするために著作権所有者の保護範囲を拡大している」

 「DMCAはWCTを満足するものだが、その範囲を拡大しすぎている。実際米国は、国際法が要求するよりずっと先にDMCAを制定し、今度は他の国々に対しDMCAのような法律を成立させるよう説得して回っている」

 EFFは、2つの条約が各国の法律を作り上げるための大枠を提供しているため、他国での法制化を阻止したい考えだ。EFFは電子フロンティア・カナダとともにニュージーランドで意見書を提出し、『英ユーロライツ・オルグ』やドイツのグループとも協力して活動を行なっている。

(3/1に続く) [日本語版:石川あけみ/山本陽一]


 



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