情報には価値がある。確かで速やかな情報となれば、なおさらだ。この鉄則はインターネットの世界でも変わらない。
ネット配信された読売新聞の記事見出しを無断利用して事業化している会社に対し、読売新聞社が損害賠償などを求めた訴訟の控訴審で、知財高裁が、見出しの財産権を認め、賠償を命じる判決を出した。
見出しは、たかだか10〜20文字の短文にすぎない。しかし、記者たちが一刻も速く情報を伝えようと、懸命に取材して書いた記事が結実したものだ。記事の概要がひと目で分かるよう、見出し担当の記者も、短時間で的確な表現を生み出そうと知恵を絞っている。
知財高裁は、こうした見出しが「独立した価値を有する」ことを認め、無断利用についても、「社会的に許容される限度を超えたもの」と判断した。
1審の東京地裁は、見出しの価値をまったく認めなかった。しかもネットに公開しているのだから、商売目的でも他人が自由に使って構わないとした。
ネットを通じて、さまざまな情報が広がって行くことは望ましい。だからこそ読売新聞は、ネット向けのニュース配信にも力を入れている。
通常の利用なら全く問題はない。十分に活用してほしい。そこから多彩な意見が生まれ、人と人のつながりができ、その結果、社会が豊かになればいい。
だが、残念なことに、ネットには、風聞や誹謗(ひぼう)中傷があふれている。だからこそ確かな情報を伝える努力をしたい。
そこにタダ乗りした商売でトラブルが起きれば、見出しを発信した側の責任も問われかねない。
ネット向けのニュース配信をめぐっては、国内外の報道機関の多くが、同様の危機感を抱いている。
技術の進歩で、ネットから自動的に記事を探し出し、大量にコピーすることが可能なためだ。今では、報道機関がネット配信した記事見出しから、一覧を掲載したホームページも容易に作れる。
複数の報道機関と契約を結んだうえでこうしたサービスを提供している会社も多い。だが、商売目的なのに、大規模に無断利用している例もある。
著作権が明確な記事と異なり、見出しの法的な価値が定まっていなかった。今回の訴訟で、読売新聞は見出し一般の著作権も主張した。これは認められなかったが、どこまで権利が守られるか、一定の歯止めは示された。
見出しは、記事の飾りではない。新聞ではなおのこと、ネットでも、確かな情報への道しるべ、と見てほしい。
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