利益が過大と指摘されている財団法人・日本漢字能力検定協会(京都市下京区、大久保昇理事長)に対し、9日に実地検査する方針を固めた文部科学省。注目しているのは「もうけすぎ」だけでなく、相次ぐ指導に応えなかった協会の体質そのものだ。担当者は「法人の法令順守意識、運営の在り方そのものが問われている」と厳しい姿勢を示し、検査での「四つのポイント」を挙げる。【木下武】
<1>利益15億円超
国の「公益法人の設立許可及び指導監督基準」は「収支の均衡を図り、健全な運営に必要な額以上の利益を生じないようにすること」と規定している。
約270万人が受検する日本漢字能力検定(漢検)など協会の公益事業は、会計基準変更後の06、07両年度だけで約15億4000万円もの利益を上げた。文科省は「一般の感覚として、どうか」と指摘。協会側が「対策」とした検定料値下げなども「利益が抑えられたとは言い難い」と評価は低い。
<2>利益相反取引
文科省は昨年10月、主な所管法人に対し、関係者が私腹を肥やすような利益相反行為がないか調査。協会の支出先企業として浮上したのが理事長や、長男の副理事長が代表を務める不動産・出版の「オーク」と情報処理の「日本統計事務センター」、広告の「メディアボックス」だった。
年間支出額は、オーク=協会本部ビル賃貸料など約1億6000万円▽日本統計事務センター=精算事務委託費約4000万円▽メディアボックス=機関誌制作などの事務委託料2億円以上。これらが適正かどうかも既に調査を始めている。
<3>不動産購入
協会は03年7月、京都市左京区の閑静な住宅街に、邸宅(延べ1348平方メートル)付きの土地3969平方メートルを約6億7000万円で購入した。「漢字資料館にする」としているが、用途は住宅のまま変更されていない。
04年2月には天龍寺(右京区)の塔頭(たっちゅう)に供養塔を建てた。費用は350万円。文科省は現況を調べる予定だ。
<4>運営の在り方
こうした問題を抱えながら、協会の最高意思決定機関である理事会、更にチェック役の評議員は何をしていたのか。文科省は「チェック機能が働かず、法令順守の意識も低かった可能性がある」との疑念を持っている。
協会は「文科省の実地検査は事前に予定されていたものだ。検査には全面的に協力し、その結果を報告すると共に今後の運営計画に反映していく」としている。