財団法人日本漢字能力検定協会考

 (最新見直し2009.9.18日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 2009.2月初旬、財団法人・日本漢字能力検定協会(京都市下京区)が公益事業では認められない巨額の利益を得ており、大久保理事長と副理事長を務める父子が財団を私物化運営している疑いが濃厚として、文科省が立ち入り調査に入るという事件が勃発した。公益法人の資質を問う興味深い事件になっているので、これを検証する。
 
 2009.2.6日 れんだいこ拝


【日本漢字能力検定協会の歩み考】
 1975(昭和50)年、大久保理事長らが協会創設。漢字検定がスタート。当初は任意団体で検定の受験者は670名であった。

 1992(平成4)年、旧文部省に財団法人に認定され、検定が、認定技能審査になった。以降、「文部省お墨付きの検定」をうたい文句に急成長し始める。漢検合格者を受験の際に優遇する大学や、人事評定に漢検を導入する企業も増え、さらに人気を集めるようになり、受験者数がうなぎのぼりに増加した。

 1996(平成7)年以降、毎年末に清水寺(京都市東山区)で、その年の世相を一字で表わす「今年の漢字」を始め、師走の風物詩として定着、確実に認知度を上げている。

 2003(平成15)年、京都の古刹(こさつ)・南禅寺に程近い京都市左京区の閑静な住宅地内に約3500uの土地、約1300uの建物に庭園のついた邸宅を約6億7千万円で購入した。

 2004(平成16)年、天龍寺塔頭(たっちゅう)の宝厳院(京都市右京区)供養塔を約345万円で購入。
 2007(平成19)年度の受験者は約270万人に達し、協会の収入も大幅に増加した。文科省によると、18,19年度で約14億円の利益をあげ、19年度決算の総資産は約73億円と云う。

 これの問題は次のことにある。公益法人は、公益性を理由に法人税などを免除されている。これにより、公益法人の事業は、必要以上の利益を出すことができない。これにより、文科省は、過去に検定料の引き下げを3回指導している。

 同省の調査などによると、協会本部が入居する京都市下京区の7階建てビルは、大久保昇理事長が代表を務める出版会社「オーク」の所有。協会は賃借料として同社に対し、07年度は約1億5600万円を払っていた。また、息子の大久保浩副理事長が代表を務める情報処理会社「日本統計事務センター」に漢字検定の受検料の決済業務などを委託し、同年度に約4千万円を支払っていた。協会はこのほか、大久保理事長が代表を務める広告会社「メディアボックス」に広報・広告業務を委託し、06〜08年度に計約8億円を払っていたことが判明している。

 登記簿によると、3社の取締役はいずれも大久保理事長の親族が占めている。文科省はこれらの取引について、「(ファミリー企業に)過度に有利な条件で契約を結んでいるなら、公益法人として是正が必要」とみている。


Re::れんだいこのカンテラ時評533 れんだいこ 2009/02/06
 【円天事件と漢字検定協会事件とジャスラック】

 2009.2.5日、疑似通貨「円天」を発行する等で独特の商法を展開している健康商品販売会社「エル・アンド・ジー(L&G)」(東京都新宿区、破産手続き中)の会長・波和二(かずつぎ、75歳)が久々のマルチ商法がらみで逮捕された。これを仮に「円天事件」と命名する。ここでは、これを問わない。並行して「財団法人日本漢字能力検定協会(以下、単に検定協会と記す)問題」が浮上しており、これを問題にする。

 同協会は、本部を・京都市下京区に置き、検定事業で多額の利益を出している。2006.2007年度に、検定事業などで計約15億円の利益を上げていると云う。同協会の大久保昇理事長の私物化とも思える広告会社への業務委託費(2006−2008年度に計約8億円)を、大久保理事長が代表取締役を務める広告会社「メディアボックス」(同市)に支払っていたことなどが判明している。

 文部科学省は、2.9日にも立ち入り検査を行うことを決めた。文科省によると、協会は必要以上の利益を出すことが認められていない公益法人法違反の疑いがあり、併せて業務委託などで協会の取引などに問題がないかも確認する、と云う。これを仮に「漢字検定協会儲け過ぎ事件」と命名する。

 この事件が興味深いのは、偶然かどうか「漢字検定協会儲け過ぎ事件」と「円天事件」が同時発生していることである。れんだいこは、「漢字検定協会儲け過ぎ事件」から目をそらせる為に「円天事件」が俄か拵えされていると見立てる。なぜなら、「円天の波会長逮捕」はいつでもスタンバイされており、何もこの期に逮捕されねばならない必然性が見当たらないからである。何らかの裏の意図が動いていると読む必要がある。

 では、「漢字検定協会儲け過ぎ事件」がなぜ大騒ぎされてはならないのか、これについて言及しておく。恐らくマスコミは、「漢字検定協会儲け過ぎ事件」よりも「円天事件」の方を大きく採り上げよう。それは丁度、パレスチナでイスラエルの暴挙が開始される時に決まって北朝鮮絡みの拉致事件、テポドン問題が採り上げられる様と構図が同じである。そういう訳で、「漢字検定協会儲け過ぎ事件」は大きな事件にはならない。それはなぜか。

 検定協会にとっては有り難いというべきか、同協会をつつけば同じ公益法人の他の団体に問題が広がりヤブヘビになるからである。同協会が、文科省に対し、俺のところを問題にするなら一桁も二桁も売上が違うあそこの問題はどうなんだと居直れば、収拾がつかなくなるということである。これを逆に云えば、文科省が正義ぶって、より大きな公益法人の不正に向かわず検定協会に限りメスを入れようとするのはなぜかということになる。

 そうではなく、文科省は、検定協会を突破口に、より大物の公益法人の過剰利益問題に立ち向かうのだろうか。それなら辻褄が合うのだが。れんだいこはこれを期待する。恐らく期待倒れになるとの予感を持ちつつも。

 そろそろ「より大物の公益法人」の正体を表わそう。それはジャスラック(日本音楽著作権協会)である。検定協会が仮に50億円規模の売上だとすれば、ジャスラックは2000億円規模と推定される。検定協会が財団法人なのに対して、ジャスラックは社団法人である。れんだいこは、検定協会の漢字教育は社会的に有益と考えるが、これが懲らしめられようとしている。確かに私物化が目に余る面もあるようではあるが。それに比して、ジャスラックは音楽文化擁護を定款に掲げながら実際には営利主義路線を驀進し続けている。いわゆる権利暴力の走りキング的地位にある。

 れんだいこは、ジャスラックは今、先の公取委の初の立ち入り調査に続いてこたびの「漢字検定協会儲け過ぎ事件」勃発でいつ火の粉が飛んでくるか分からないとして戦々兢々に陥っていると読む。なぜなら、同じ論理で立ち入り検査されるのは必定だから。検査されないとしたら狂っていよう。

 この事態だけは何とか避けたいとあちこちに手を回していると読む。マスコミ記者よ、これを嗅ぎつけた方がよほど為になるぞ。ジャスラックの根回しが首尾よく成功するかどうか、文科省の2.9日の立ち入り検査とマスコミの報道振りを見てみたい。誰ぞ熱ペンを奮え。

 2009.2.6日 れんだいこ拝

 2009.2.8日付け毎日新聞大阪朝刊の「漢検協会:『もうけすぎ』 問われる法令順守意識 文科省『チェック機能も働かず』」を転載しておく。

 利益が過大と指摘されている財団法人・日本漢字能力検定協会(京都市下京区、大久保昇理事長)に対し、9日に実地検査する方針を固めた文部科学省。注目しているのは「もうけすぎ」だけでなく、相次ぐ指導に応えなかった協会の体質そのものだ。担当者は「法人の法令順守意識、運営の在り方そのものが問われている」と厳しい姿勢を示し、検査での「四つのポイント」を挙げる。【木下武】

 <1>利益15億円超

 国の「公益法人の設立許可及び指導監督基準」は「収支の均衡を図り、健全な運営に必要な額以上の利益を生じないようにすること」と規定している。

 約270万人が受検する日本漢字能力検定(漢検)など協会の公益事業は、会計基準変更後の06、07両年度だけで約15億4000万円もの利益を上げた。文科省は「一般の感覚として、どうか」と指摘。協会側が「対策」とした検定料値下げなども「利益が抑えられたとは言い難い」と評価は低い。

 <2>利益相反取引

 文科省は昨年10月、主な所管法人に対し、関係者が私腹を肥やすような利益相反行為がないか調査。協会の支出先企業として浮上したのが理事長や、長男の副理事長が代表を務める不動産・出版の「オーク」と情報処理の「日本統計事務センター」、広告の「メディアボックス」だった。

 年間支出額は、オーク=協会本部ビル賃貸料など約1億6000万円▽日本統計事務センター=精算事務委託費約4000万円▽メディアボックス=機関誌制作などの事務委託料2億円以上。これらが適正かどうかも既に調査を始めている。

 <3>不動産購入

 協会は03年7月、京都市左京区の閑静な住宅街に、邸宅(延べ1348平方メートル)付きの土地3969平方メートルを約6億7000万円で購入した。「漢字資料館にする」としているが、用途は住宅のまま変更されていない。

 04年2月には天龍寺(右京区)の塔頭(たっちゅう)に供養塔を建てた。費用は350万円。文科省は現況を調べる予定だ。

 <4>運営の在り方

 こうした問題を抱えながら、協会の最高意思決定機関である理事会、更にチェック役の評議員は何をしていたのか。文科省は「チェック機能が働かず、法令順守の意識も低かった可能性がある」との疑念を持っている。

 協会は「文科省の実地検査は事前に予定されていたものだ。検査には全面的に協力し、その結果を報告すると共に今後の運営計画に反映していく」としている。


【大久保理事長辞任】
 2009.4.10日、財団法人・日本漢字能力検定協会(京都市)は、京都市内のホテルで理事会・評議員会を開き、文科省が一連の問題発覚後に立ち入り検査し、責任の明確化や、理事長らの関係企業との取引などについて抜本的な改善を求め報告するよう指導していたことを受け、以下の事案を決定した。

 1・15日付けで正副理事長の辞任。大久保昇理事長が常勤理事として留任する。長男の大久保浩氏が副理事長と事務局長を辞任し、「現在後任を探索中であり、後任者の就任をもって退任する」として後任決定まで事務局長職にとどまる。新理事長には元日弁連会長の鬼追明夫氏が選ばれた。

 2・常勤理事を拡充する。専横防止の観点から、理事の半数以上を部外者とする。

 3・検定料の引き下げ。6月から1〜2級は500円ずつ、準2級以下を200〜100円値下げすることを承認した。

 4・大久保理事長が代表を務めるファミリー企業2社との取引解消する。

 5・運営をチェックする評議員の選任基準に弁護士や公認会計士を追加、外部監査を導入する。
 

 6・「漢字の資料館」として約6億7000万円で2003年に購入した京都市の土地建物は、9月末をめどに売却する。

 出席者によると、評議員会では、平成18年4月〜20年12月の間に計約66億円が協会から支出されたファミリー企業4社との取引への事後承認を「保留すべきだ」などとする反対意見も出されたが、最終的には原案通り承認された。協会は15日までに、改善報告書として文部科学省に提出する。

 4.15日、漢字検定を受検者数280万人というブランド検定に育て上げた財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市下京区)の大久保昇理事長(73)と長男の浩副理事長(45)は、文科省に報告書を提出後の午後5時過ぎ、弁護士2人とともに同省の記者会見室に現れ、約3時間に及ぶ受け答えに応じた。

 記者会見室には約100人の報道陣が詰めかけ、3か月近くの間に次々と発覚した協会を巡る問題について、質問が相次いだ。大久保理事長は、「協会を私物化していたのでは」との問いに「私物化しているとは思わない。日本の文化を向上させるためにやってきた」、「受検生の支持は今をもっても高い」と持論を展開した。

 協会が関連会社4社に業務委託した総額は2008年度だけで約23億2千万円。金額ベースでその97%が半額以下で別の会社に再委託され、4社は約12億1千万円の差額を得ていた。前理事長が代表を務めている広告会社「メディアボックス」は本店所在地での営業実態がなく看板すらない。前副理事長は一族とは別に社員1名が居ると主張しているが、協会職員が業務を代行していたとされており、ペーパーカンパニーの疑いが浮上している。メ社は、約2億6千万円で受注し、約1音9千万円で再委託している。不動産・出版会社「オーク」は約8億7千万円で受注し約3億6千万円で、、情報処理会社「日本統計事務センター」も、約11億9千万円で受注した採点業務などの99%を約4億8千万円で再委託している。

 協会の調査委員会の調査で、2008年度の4社の純利益は2億8100万円。4社が一族4名に支払った報酬額は計1億7200万円に上り、株式配当として7800万円、不動産賃料としても3600万円を得ていたことが判明している。

Re::れんだいこのカンテラ時評561 れんだいこ 2009/04/17 00:28
 【どうみても小ワルでしかない漢字検定協会叩きに正義ぶるが大ワルのジャスラックには尻尾を振るマスコミ正義を嘲笑せよ】

 2009.4.15日、漢字検定を受検者数280万人というブランド検定に育て上げた財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市下京区)の大久保昇理事長(73)と長男の浩副理事長(45)の記者会見の様子が報ぜられ、マスコミの臭い正義振りが聞かされている。れんだいこが、これに不快の念を表明しておく。

 結論から云って、れんだいこは、正義ぶっているコメンテーターに、漢字能力検定協会程度の不正に目クジラするなら、ジャスラックの大不正をどうするのだと嘲笑しながら問いかけたい。こう云ってもキョトンとして何を云っているのか分からない程度の頭脳の正義マンが多かろう。あるいは、ジャスラックの著作権狂いは正義であり、その為には人肌も二肌も脱ごうとする手合いが多かろう。

 結論から云って、手前は狂っていると宣告しておこう。そう云われて不快なら、漢字能力検定協会を問い詰めた同じ論理でジャスラックにも当たって見よ。漢字能力検定協会が子供かヒヨコに見えるような不祥事がゴロゴロしていよう。なのに立ち向かえないのなら、悪いことは言わん。正義ぶるな。

 考えても見よ。漢字検定協会は、近頃の幼児教育からの英語ブームに対して棹差しているではないか。ろくに日本語が書けない老若男女に対して、日本語熱を喚起しているではないか。検定料が高いと云っても法外な金額ではない。もっと安くなるのは結構なことだが、口角泡を飛ばさねばならないほどのことではない。

 以上を前提にジャスラック論に入る。ジャスラックは社団法人である。社団法人と云えば、各業界の団体がこの資格を持つ。事務局は別にして大概の業界団体役員は手弁当で運営に協力している。これが相場である。ところが、ジャスラックの売上と役員理事の法外の給与と退職金を見よ。漢字検定協会が50億円とすればジャスラックは2000億円で、社団法人中突出した売上を誇っている。漢字検定協会の公益法人性を指摘して不正を質したコメンテーターよ、同じ論理でジャスラックを叩け。途端に尻込みするのは承知せんぞ。

 漢字検定協会は、漢字の普及と咀嚼に貢献している。ジャスラックは、歌謡文化の普及に貢献しているのか棹差しているのか。貢献している方が叩かれ、棹差している方が許されることこそ不正ではないかな。最近は、こういう本末転倒批判が隆盛しており、つまり世の中が狂っているので、頭脳が整理できない善良な市民のうつ病が増えている。これもむべなるかな。

 そのジャスラックはこれまで、音楽を愛好し利用する店舗経営者を見つけては高額料金をふっかけ、応じないとなると裁判に訴え、時に逮捕までさせて一罰百戒の見せしめにしている。著作権正義の如意棒振り回しながら、中小零細店舗を見つけては徘徊している。ホテルやら観光バスなぞに向かうと、その計算式で行くと何せ面積割だから巨額の請求額になり、ジャスラックの方が卒倒して尻込みせざるを得ないのかお目こぼしとなる。何のことはない、弱い者イジメでしかないという話になる。

 そのジャスラックが公正取引委員会の行政指導を受ける立場になった。どうするのかと思っていたら何と、徹底抗戦だと。こうなると、ジャスラックの特異性に気づかざるを得まい。権力を恐れない社団法人ジャスラックとは何ものぞ。何がジャスラックをして元気印にさせているのかと。我らが支援する相手かと。

 止めはこうだ。そのジャスラック理論は、著作権法に照らして違法の可能性が強い。著作権法には、流通論で云うところの川上規制はしているけれども、川下適用までは書いていない。というか、著作権法は人民大衆レベルにまで課金するのを慎重に抑制している気配がある。にも拘らず、法律でもない文化庁に提出した書面認可でしかないものを錦の御旗にして徴収に明け暮れている。

 取り立てたら何ぼと云う歩合給社員を雇って、音楽の奏でる営業スペースと云う空間を見つけては脅し回っている。カセットだろうがBGMだろうが関係ない。音楽の営業的利用そのものが即著作権侵犯と云う独特の教義に基き正義棒を振り回している。これに対して、公益法人にあるまじき行為となじれば、過去に遡っての利息制限法も驚く高額請求書に切り替えて脅しまくる。実際には裁判攻めにされる。既に述べたが逮捕まで要求する。音楽機器は撤去させられ、あるいは見せしめ的に封印される。

 結論。漢字検定協会に正義舌を弁ずるコメンテーターよ、その口をジャスラックに向けたらどうだ。それなら辻褄が合っていよう。現愛媛県知事の加戸守行よ、お前が文化庁次長の時にこういう仕掛けを仕組んだことが判明している。その後ジャスラックの理事長に納まり高額給与と退職金を得て知事選に出向いたことも判明している。扶桑社版(いわゆる「つくる会」教科書)の是非は別にして、これを全国に先駆けて採択せしめたことも判明している。一事万事で、ろくでもないモンはろくでもないことばかりしよる。れんだいこには愛媛の血が半分流れている。愛媛が心配でならん。

 マスコミよ、こいつに経過を糾せ。ジャスラック式著作権論が著作権法に照らしてどう合致しているのか弁明させてみよ。川下徴収が音楽文化をどう愛育発展せしめたのかしゃべらせてみてくれ。漢字検定協会叩きのヒマがあるなら。

 2009.4.16日 れんだいこ拝

【大久保理事長父子逮捕される】
 2009.5.19日、京都地検は、財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市)の前理事長の大久保昇容疑者と(73)と長男で前副理事長の浩容疑者(45)を背任容疑で逮捕した。
 
 逮捕容疑などによると、親子は平成16〜20年度の5年間に、協会の広報委託業務などとして経費を水増し計上し、自身らが役員の下請け企業に業務委託し、協会に約2億5000円の損害を与える一方、報酬などとして利益を得ていたとされる。親子は協会と同社双方の代表者や役員としての地位にある一方、理事会の承認を経ずに取引を決定していた。協会と同社は平成9年度から取引を始め、20年度までの取引総額は約36億3000万円にのぼっているという。

 親子の経営する会社は、18〜20年度で約7億6000万円受注しており、同社は業務の大半を別の会社に再委託し、約2億8000万円の利益を得ていた。このうち「年間プロモーション企画・進行管理」名目の業務(18〜20年度で受注額約2億2800万円)は2人で業務を遂行していたが、協会の内部調査委員会は「2人が(本来協会理事として)行うべき業務であり、同社を介在させる必要性は認められない」と指摘していた。


【大久保理事長父子逮捕される】
 2009.9.18日、財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市下京区)を巡る背任事件の公判が、京都地裁で始まった。両被告はいずれもグレーのスーツにネクタイ姿で入廷。検察官が起訴状を読み上げる間、昇被告はうつむき加減で聞き入り、浩被告は前を見据えていた。捜査段階では起訴事実を認めていた前理事長・大久保昇(73)、長男の前副理事長・浩(45)両被告は一転、争う姿勢を示した。

 罪状認否で、両被告は弁護士から渡された紙を読み上げ、一部無罪を主張。昇被告は「無罪を主張します。背任はしておりません」と淡々と話し、浩被告は「志半ばで去ることになり、慚愧(ざんき)に堪えない。すべて私の慢心や無知で不徳の致すところ。今は懊悩(おうのう)の日々を過ごしている」とはっきりと謝罪の言葉を述べた。退廷前には裁判官と傍聴席に向かい、深々と頭を下げた。

 9.10日、同市南区のホテルで開かれた市立小学校の同窓会で、昇被告は集まった約40人に次のように語った。「一連の事件でお騒がせしていますが、私は間違っていない」、「今回の漢検の問題については、政府(文科省)のやり方がおかしい」。裁判で無罪を主張すると話したという。

 2人は現在も親族企業の役員を務めている。背任事件の舞台となった広告会社「メディアボックス」の登記上の住所となっている同市西京区の4階建てビルは、別の親族企業「オーク」が所有。これまで通り、パン店などを営業しており、従業員によると、昇被告は時折姿を見せるという。浩被告が代表を務める「日本統計事務センター」は同市下京区のビルに入っている。





 



(私論.私見)