スウェーデンの新党「海賊党」考 |
(最新見直し2009.8.18日)
(れんだいこのショートメッセージ) |
2008.7.25日付け読売新聞13面の「特許・著作権なんてすらない 『海賊党』勢力拡大」記事を確認する。 2009.5.14日 れんだいこ拝 |
【「スウェーデン海賊党の著作権論」考】 | |
2008.7.25日付け読売新聞13面の「特許・著作権なんてすらない 『海賊党』勢力拡大」記事によれば、スウェーデンで、「特許の廃絶」を公約に掲げ、インターネット規制に反対する新党「海賊党」が支持を集めている。先月行われた欧州議会選で7.1%、初の1議席を獲得した。海賊党は、2006.1月、元ITコンサルタントのクリスティアン・エングストロム氏(49歳)がネット愛好家と結党した党で、欧州議員となった。 同党は、特許廃絶、著作権法の改正、ファイル共有ソフトの自由化を公約に掲げ、「好みの音楽や映画を無料でダウンロードする権利は、今や基本的人権だ。若者から奪うことは許されない」、「現行の法律では、著者の死後70年も著作権が認められる。デジタル時代にそぐわない」と訴え、ウェブサイトを通じた党員登録を増やしつつある。結党当初の2006.9月のスウェーデン総選挙では得票率0.6%の泡沫政党だたが、約2年半後、欧州議会に代表を送るまでに成長している。 党躍進の背景に2009.4月の著作権をめぐる判決があった。この裁判は、ファイル共有サイト「パイレット・ベイ」を運営する4名が、著作権を侵害したとしてワーナー・ブラザーズ、EМIなどメディア大手十数社から訴えられたもので、ストックホルム地裁は、4被告に対し禁固1年、罰金3000万スウェーデン貨(約3億6750万円)の有罪判決を下した。4名は控訴。同サイトを利用し、音楽やDVD、ゲームをダウンロードしていた若者たちから批判の声が高まり、同党が4名の支援運動を展開した。「著作権は時代遅れ、判決は不当」と主張して、急速に支持を拡大した。3月末には1万700名だった党員が、判決から1週間後に4万2千名、7月現在約5万名に膨らんでいる。同党は、来年秋に予想される総選挙でも議席獲得を目指す構えを見せている。支持者の半数は35歳以下の若者で、スウェーデンに続き、ドイツやフランスなど欧州各国に飛び火し、結党が進みつつある。 記事は末尾で、ストックホルム大のヤン・ローゼン教授(著作権法)の批判的コメントを紹介している。
ここからが、れんだいこ見解となる。ヤン・ローゼン教授の謂いは正論だろうか。れんだいこには、海賊党の理論の方が本来の著作権法見解に近いと考える。なんとならば、本来の著作権法が規制したのは、著作権者と著作権管理者、専属出版社、同業他社の関係であり、広い意味での著作権者に対する配慮を欠いた営利的利用を咎めるものであった。それは、流通論で云うところの川上規制に当たる。留意すべきは、川下的な人民大衆個々の著作物享受、利用を規制するものではないことを知ることである。著作権法制定当時、川上と川下の峻別が為され、川下不適用とされていたが、そういう形にせよ権利導入化が進むや、いつの間にか(というより利権的狙いで強権的に)ユダヤ商法的に儲けの対象とされ、聖域なき構造改革の対象となって川下適用され猛威をふるっているというのが実際である。 この観点に照らすとき、ヤン・ローゼン教授見解の方が脱輪しており、海賊党の方が原則論を唱えていることになる。海賊党の実際の著作権論までは分らないが、同党の「やみくもな著作権法規制に反対」精神の背景にあるのは、この見立てではなかろうか。著作権乱舞は、スウェーデンその他米欧に限らず日本にも共通する頭痛の種となっている。今こそ、「あるべき抑制の効いた著作権法の在り方」を確認すべきではなかろうか。 2009.8.18日 れんだいこ拝 |
(私論.私見)