■ オープンソースの到来
今から5年ほど前、お客様から、オープンソース、フリーソフトと呼ばれる無料のソフトがあるので調べて欲しいと言われた。その時は、アシストはOracle
やFOCUSを売っているのに、無料ソフトなんてとんでもないというのが私の率直な感想だった。その後、別のお客様からも言われるようになると、これは調べないとまずいのではないかと思うようになり、調査を開始した。
フリーソフトの“フリー”とは、無料だけでなく自由という意味だ。オープンソースのオープンも同様の公開という意味である。インターネットからダウンロードして誰でも使うことができて、改良しても良いがその部分も公開しないといけない、というような程度の決まりはあっても使用における条件はほとんどない。もうひとつのメリットは、ソースが公開されていて中身が透明であること。トロイの木馬のようなものが入っていないかどうかもわかるし、ソースが提供されているので自分のニーズに合わせることも容易にできる。
オープンソースやフリーソフトを調べるほど、私は心配になってきた。なぜならアシストは37年間も有料ソフトの販売だけを行ってきたが、無料のソフトで自分がやりたいことが間に合うのなら、なぜ有料でかつ色々な制限が付いていて、さらにソースコードが公開されていない不透明なソフトを使う必要があるのか、と考えるようになったからである。
オープンソースにはサーバ側とクライアント側で動くものがあり、サーバ側のソフトは基幹業務や大勢の人に影響が出る。そこで私はまずクライアント側、パソコン用のソフトを自分で試すことにした。オフィス・ソフトはOpenOffice、ブラウザはFirefox、メール・ ソフトはThunderbirdといったオープンソースを試したところ、十分用が足せることが判 明した。そして2006年5月、社内に公開ソフト事業推進室を作った。
OpenOfficeを社員に使わせることは大変だった。それは技術的な問題よりも、たとえオープンソースを使っている人でも会社ではMicrosoft
Officeが当たり前という先入観だった。2007年1月、トップダウンで全社でMicrosoft Officeをアンインストールし、 OpenOfficeを使うようにした。全社で使う上で問題はあった。Accessで作られたプログラムは動かないのでAccessのランタイム版(無料)を使用し、またマクロを多く使っているアプリケーションは2人月かけて書き直した。実際に使ってみて大きな問題はそれくらいだった。国際標準であるISOを取得している企業は多いと思うが、OpenOfficeのODF(オープン・ドキュメント・フォーマット)は
ISOの標準フォーマットでもあるので、ISO導入企業は、特定のベンダー製品に依存せずに文書を開けることも今後重要になるだろう。外部とのデータのやり取りもMicrosoft
Office形式で保存することで問題なく行うことができる。現在アシストでは、取り扱い製品の検証やサポート用にMicrosoft Officeが必要な社員以外、OpenOfficeを標準としている。
今回の経験で言えることは、無料で、無条件で、中身が透明なソフトで間に合うのに、なぜ有料で、条件付きで、不透明なソフトを使うか、ということだ。ソフト業界は常に最新機能、最高機能を宣伝文句に製品を売るが、多くのお客様にとってソフトウェアに限らず商売に必要な道具を買う時に、一番機能の多いものと、自分の仕事に十分間に合う機能のある道具だったら、間に合うもので良いという場合も多いのではないか。売り手から見ればたくさん機能があるほど広い市場を対象にできるが、売り手と買い手では立場が違う。また一般に高機能で複雑になるほど、再教育の負担やコンピュータへの負荷は高まる。新機能も場合によっては欲しいが、選択権は自分の手に持ちたいというユーザもいるのではないだろうか。
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