「日本神道の歴史について」でも考察する。
出雲思想が大地を地球として認識していたかどうかは定かではないが、連動生命体としてみなし、大いなる調和でもって宇宙を形成していると把握していたことは確かなように思われる。大地に精霊を認め(地霊)、その他自然の万物にアニマ(精霊)が宿っているとしていた。食物連鎖を生命の大いなる循環と捉え、それに即応した狩猟と採集経済を生み出していた。四季の変化を取り込み、二項対立の様々な組み合わせ、あるいは三項の組み合わせで森羅万象を分類し理解した。日月、水火、天地、男女等の差異も、対立関係のみならず相補関係に於いても捉えた。こうして、汎神論的アニミズムに基づく八百万の神々観を生み出した。これを仮に出雲思想式原始共産主義、出雲思想式多神教的共同体主義と命名する。特徴的なことは、神人和楽の且つ世界に珍しい神人協働の開かれた構造に基づく思想であったことであろう。
本居宣長は、「古事記伝」で神について次のように記している。
さて凡てカミとは、古(いにしえ)の御典(みふみ)に見えたる天地(あめつち)の諸々の神たちを始めて、その祀れる社(やしろ)に坐(いま)す御霊(みたま)をも申し、又人はさらに云わず、鳥獣木草の類、海山など、その他何にまれ、世の常ならずすぐれたる徳のありて、かしこき物をカミとは云うなり。すぐれたるとは、尊きこと善きこと、功しきことなどの、優れたるのみを云うに非ず、悪しきもの怪しきものなども、よにすぐれてかしこきをば、神と云うなり。 |
スサノウに始まり大国主で踏み固められた狩猟ー採集経済かせ農耕経済への移行は、出雲思想をそれに相応しいものへの転換を迫った。出雲思想の開かれた構造は、これに即応し得た。農耕経済に伴う血縁共同体から地縁共同体への転換にも即応し得た。こうして生み出されたのが出雲神道である。これを仮に古神道と云う事にする。古神道は偏に「思想の開かれた構造式」に特質が有る。その水準は、世界一等的なもので、他のどのような思想宗教が襲来しようとも受容練成することができることになった。
(以下、略)
2006.12.10日 れんだいこ拝 |