ラルフネーダー論

 2004.7.22日付毎日新聞(ワシントン支局・佐藤千矢子)に興味深い記事が載っている。タイトルが「04米大統領選:再び旋風起こすかネーダー氏」で、その他見出しが「共和党と奇妙な共闘」、「民主党『選挙妨害』と激怒」となっており、概要として「米大統領選(11月2日投票)に無所属での立候補を表明している消費者運動家ラルフ・ネーダー氏(70)を、共和党保守派が応援するという珍現象が起きている。民主党は、前回大統領選で旋風を巻き起こしたネーダー氏にリベラル票をさらわれれば、同党候補指名が確定しているケリー上院議員に不利になるとあって選挙妨害と猛反発している」とある。これを具体的に次のように検証している。
 最激戦州の一つ、ミシガン州の共和党が今月15日、ネーダー氏を大統領選の投票用紙に載せるために必要な3万人を超える4万3000人分の署名を州当局に提出した。

 共和、民主の2大政党以外から立候補する候補者は、決められた署名数を集めなければ各州で投票用紙に名前を載せることはできない。ネーダー氏は改革党の推薦を得ていることから、ミシガンはじめ、フロリダ、コロラド、カンザス、ミシシッピ、モンタナ、サウスカロライナの計7州で投票用紙への名前掲載を確実にしたと言われてきた。だが、最近になってミシガン州で改革党の内部対立が表面化し、ネーダー氏推薦が微妙な情勢になった。ネーダー氏は、22日の提出期限までに署名を提出しなければ、ミシガン州での立候補の道を断たれる。そこで州共和党が「助け舟」を出したのだ。ネーダー氏は、背に腹は代えられないとばかりに19日、共和党の支援を受け入れることを決めた。

 ◇ブッシュ陣営が署名協力

 「今回の君の立候補は不誠実だ。アリゾナ州で君を投票用紙に載せようとした署名のうち46%は、共和党支持者のものだった。オレゴン州でも、共和党右派が投票用紙に載せようと支援したのを君は受け入れた」。

 全米公共ラジオ(NPR)が9日、行った討論会で、ディーン前バーモント州知事はネーダー氏にこう呼びかけ、立候補を断念して民主党勝利に協力するよう求めた。だが、ネーダー氏がディーン氏こそ「反乱分子だったが、今や民主党の悪弊を隠ぺいする役割を果たしている」と切り返すと、ディーン氏も苦笑せざるを得なかった。

 オレゴン州で、投票用紙に名前を載せるには1日で1000人の署名か、合計で1万5000人の署名を集めなければならない。先月下旬にネーダー氏が開いた署名集め集会には1100人以上が参加した。しかし「オレゴン家族協議会」など保守系2団体、同州共和党、ブッシュ再選対策本部が動員に動いたとして、リベラル派の市民監視団体「責任と倫理を支持する市民」(CREW)が連邦選挙委員会(FEC)に訴えを起こす騒ぎに発展した。署名は現在、審査にかけられている。アリゾナ州では、民主党の訴えを受けて署名の一部が州当局から無効と判断され、必要数を満たさなかった。

 民主党による「汚い策略」と非難しているネーダー氏は、多くの州で投票用紙に名前を載せようと署名運動を進めているが、資金力、動員力の両面で苦戦を強いられている。このため、第3政党「緑の党」のピーター・カメホ氏を副大統領候補に指名し、同党の推薦獲得を狙ったが、同党は6月26日の党大会で、弁護士デービッド・コブ氏の擁立を決めた。コブ氏は、激戦州では運動を控えるなどしてブッシュ再選阻止のためケリー氏を側面支援する方針だ。

 ◇今回は影響「限定的」?

 ネーダー氏と共和党保守派との「奇妙な連合」(米紙ニューヨーク・タイムズ)に、民主党は怒り心頭だ。特にオレゴン、アリゾナなどの激戦州で同氏が立候補すれば、大統領選の勝敗を左右しかねない。ネーダー氏が投票用紙に名前を載せることが確実になっている7州のうちミシガン、フロリダ2州は、最激戦州と見なされており、ネーダー票の行方が注目される。

 ネーダー氏の立候補は今回で4回目。96、00年の大統領選では、第3政党「緑の党」から立候補。前回大統領選では、44州の投票用紙に名前を載せ、約288万票(得票率2・74%)を獲得した。

 大統領選の勝敗を分けたフロリダ州でのブッシュ氏とゴア氏の得票差は537票でネーダー氏は9万7488票を獲得。また、ブッシュ氏が7211票差でゴア氏を降したニューハンプシャー州でのネーダー氏の得票は2万2198票だった。民主党は「ネーダー氏が立候補しなければ両州で勝敗がひっくり返り、ゴア氏が大統領になっていた」と批判している。

 ネーダー氏の支持層は、2大政党制に批判的な無党派層や、民主党に不満な党内左派勢力が中心だ。ネーダー氏は「2大政党には大した違いはない」「民主党はイラク戦争決議を止めるのに失敗し、ブッシュを戦時大統領にした」と非難する。

 ニューヨーク・タイムズ(17日付)の世論調査では、大統領選で誰に投票するかを聞いたところ、ケリー氏45%、ブッシュ氏42%、ネーダー氏が5%だった。

 米誌ナショナル・ジャーナルのチャック・トッド氏は「みんな騒いでいるが、私は今年の大統領選では『ネーダー要因』は極めて限定されたものにしかならないと思う。世論調査では、第3政党や無所属候補への支持は実際より高く出るものだ。それに、ネーダー氏は民主党左派が党候補に満足していない時には抗議票を集めるだろうが、今年は民主党は団結しており、そうならないと見られるからだ」と話す。

 ■ラルフ・ネーダー氏の人物略歴 ◇

 米国の消費者運動の旗手。ハーバード大学ロースクールを卒業し弁護士に。65年、ゼネラル・モーターズ(GM)が乗用車を欠陥車と知りながら販売していることを告発した著書「どんなスピードでも自動車は危険だ」で一躍、脚光を浴びた。以後、大量生産・消費社会に警告を発する運動を続けている。

ネーダー「偽の友」の馬脚あらわす。 れんだいこ 2004/07/22
 2004.7.22日付毎日新聞(ワシントン支局・佐藤千矢子)に興味深い記事が載っている。タイトルが「04米大統領選:再び旋風起こすかネーダー氏」で、その他見出しが「共和党と奇妙な共闘」、「民主党『選挙妨害』と激怒」となっている。

 概要として、「米大統領選(11月2日投票)に無所属での立候補を表明している消費者運動家ラルフ・ネーダー氏(70)を、共和党保守派が応援するという珍現象が起きている。民主党は、前回大統領選で旋風を巻き起こしたネーダー氏にリベラル票をさらわれれば、同党候補指名が確定しているケリー上院議員に不利になるとあって選挙妨害と猛反発している」とある。

これを具体的に次のように検証している。(本文割愛)

 れんだいこが要約すれば次のような記事になる。日本同様に米国の政局も流動化しつつある。2004大統領選で共和党のブッシュと民主党のケリー氏が大接戦模様の選挙戦に突入している。

 これに米国の消費者運動の旗手ラルフ・ネーダー氏が又も割り込もうとしているが、珍現象が起きている。ネーダー氏はこたび大統領選で被選挙人になる為の署名を集めるのに苦労している。これに共和党が組織的に肩入れして資格取得させていることが発覚した。民主党は、「汚い策略」と評して反発している。

 ネーダー氏は何ゆえに苦戦しているのか。それは、ネーダー氏の推薦母体・改革党が内部分裂し、共和党を利するばかりのネーダー立候補に反発していることから発生している。彼らは、接戦州でのネーダー立候補を取りやめさせようとしている。

 しかし、ネーダーは遮二無二立候補しようとしており、第3政党「緑の党」に支持を求めた。しかし、「緑の党」は6.26日の党大会で、ブッシュ再選阻止派の弁護士デービッド・コブ氏の擁立を決めた。

 形勢利あらずのネーダーの苦境に助っ人したのが「真の友」共和党で、「奇妙な連合」(米紙ニューヨーク・タイムズ)が生まれている。

 ネーダー氏の立候補は今回で4回目であるが、2004大統領選でのネーダー立候補は、今まで隠されてきた本質を暴露しつつある。前回大統領選では、44州の投票用紙に名前を載せ、約288万票(得票率2・74%)を獲得し、結果的にネーダー票が命運を分け、ゴア敗退、ブッシュ当選に導いた。それだけに民主党のネーダー立候補に向ける視線には厳しいものがある。

 れんだいこは、この問題を何ゆえ重視するのか。我が国の政局にもよく似た現象が認められるからである。ネーダー氏の二大政党批判、市民運動の旗手性そのこと自体は結構なことだ。それ故、立候補が制限されるには及ばない。

 しかし、社会の漸次的改良を目指す者は、政治の漸次的改良に向けて共同戦線を組まないのは論理矛盾だ。仮に民主党批判するにせよ、その観点からしてもっと激しく非妥協的に共和党批判に向かうはずであるところのその当の相手共和党から支援を受けて良い、などとする論理及び対応は陰謀家が得手とする所業である。普通それを卑劣、無節操と云う。

 加えて、過去のデータからして自身の立候補が共和党を利していることが明白であるにも関わらず、その共和党の梃入れで立候補資格を得るなどということになると、これを無痛で為しえる者とはどういう御仁であろうか。

 我々はネーダー運動の本質を凝視せねばなるまい。「人又はある事象は、窮した時になりふり構わなくなり、正体を顕わす」、「危機の時に立ち現れた姿こそそのものの正体」であろうから。

 れんだいこが何を云いたいのかお分かりであろう、日本でもよく似た現象が起きているのではないのか。民主党も又いかがわしいなる論理で、自民党の助っ人役ばかりする日共運動の本質を疑惑せよ。時に社民党も同じような動きをする。

 これらの口先左翼は、自民党を絶対安定政権与党と前提させつつ、そのおこぼれないしは裏権力としての整序化に耽り、選挙ごとの野党内部の票の出方を楽しんで弄ぶ議会屋を家業としている。そういう意味で「飼われ左翼」でしかない。

 れんだいこには、ラルフ・ネーダーの去就がそういうことを示唆しているように見える。

 末尾で付言しておくが、れんだいこは、米国流二大政党のその大統領候補のどちらかに肩入れしようとしているのではない。政局流動促進派に立つのか現極悪政権是認派に立つのかを廻って、前者の側から意見している。よって、あなたのおっしゃる民主党は云々という野暮なお話はこの際お預け。

 2004.7.22日 れんだいこ拝
 





(私論.私見)