2022年 |
2022年を迎えると情勢は一層緊迫化した。ウクライナ国境周辺地域を中心にロシア軍がさらに増強されて行った。 |
1.26日、米国はロシアに対し、米国とNATOはNATO拡大の問題についてロシアと交渉しないと正式に回答し、ウクライナ戦争の拡大を回避するための交渉の道を閉ざした。米国は、「同盟への加盟国招請の決定は、すべての同盟国のコンセンサスに基づいて北大西洋理事会が行う。このような審議に第三国が口を出すことはない」というNATOの方針を持ち出した。要するに米国はウクライナへのNATO拡大はロシアには関係ないと主張したのである。 |
バイデンはウクライナ戦争を回避することにではなく、ウクライナ戦争を誘発することに力を注いだ。ウクライナ問題を理解するには歴史事実を踏まえることが必要不可欠である。 |
2.4日、ウクライナ戦争勃発。戦乱が拡大した。ロシア軍によるウクライナ侵攻は、「相手を軍事介入するように仕向けた」米国の「罠」だった。「ロシアの戦車部隊はウクライナ北部から首都、キーウを狙った。しかし侵攻の前年からウクライナには英米の軍事顧問が入り、対戦車兵器ジャベリンの準備をしていた。待ち構えたウクライナ軍がジャベリンで戦車を破壊した。キーウではロシアの戦車隊は数日で撃退された。その後、東部や南部で激戦が果てしなく続くことになった。 |
2.19日、G7外相会合が開催され、緊張緩和に向けた外交交渉が各国間で続けられた。 |
2.21日、これまで内政問題としてこの事態を静観していたプーチンは、ウクライナの攻撃に晒されていた(ロシア系住民の多い)ドンバス地方東部のドネツク州とルガンスク州の二つの共和国の自治政府が国内のロシア系住民の安全を確保するための集団的自衛権行使をロシアに求めた。ロシアは要請に従い、両国の独立を承認し、同日それぞれの共和国と友好協力条約を締結した。ロシアは、これにより国連憲章第51条を発動し、ロシア自身の自衛権と同共和国との集団的自衛権の枠組みで、二つの共和国を支援するための軍事的介入を行うことができる根拠を得て、ウクライナへの軍事侵攻が開始される。
米国はロシアが軍事行動を起こしても介入しない方針を宣言。ロシアの軍事行動を誘導した。
|
2.21日、ロシアの安全保障理事会でセルゲイ・ラブロフ外相が米国の交渉拒否について詳述した。
我々は1月下旬に彼らの回答を受け取った。この回答を評価すると、西側諸国は我々の主要な提案、主にNATOの東方不拡大に関する提案を取り上げる用意がないことがわかる。この要求は、いわゆる門戸開放政策と安全保障を確保する方法を各国が独自に選択する自由があるということから拒否された。米国も北大西洋同盟も、この重要な条項に対する代替案を提案しなかった。
米国は、われわれが基本的に重要だと考え、これまで何度も言及してきた安全保障の不可分性の原則を回避するために、あらゆる手段を講じている。そこから同盟を選択する自由という自分たちに都合の良い要素だけを導き出し、それ以外のすべてを完全に無視しているのだ。それには同盟を選択する際にも、または同盟に関係なく、他国の安全保障を犠牲にして自国の安全保障を強化することは許されないという重要な条件も含まれている。 |
|
2.21日、プーチン大統領はロシア国民向けの演説を行い概要次のように述べている。
その1、歴史的にロシアとウクライナは一体不可分である。ウクライナ独立はロシア帝国以来の過去の全否定に繋がる。ウクライナはレーニンが作った人工国家であり、真の国家たり得たことは一度もない。
その2、ウクライナで過激なナショナリズム・反ロシア主義・ネオナチ主義が高揚しており、2014年のウクライナでの政権交代はそんな過激なナショナリストとネオナチ主義者による違法な国家クーデターだった。NATOの主要国は自らの利害を達成するためにウクライナで過激なナショナリストとネオナチ主義者を支援している。NATOの主要国はウクライナの軍事要塞化を進めている。将来的なウクライナのNATO加盟の可能性もあり、ロシアに本質的な脅威を与えている。2014年にウクライナでの国家クーデターによって政権を握ったこれらの勢力は、ドンバス地域を巡る内戦の停戦・和平に関するミンスク合意を履行する積りはない。むしろ、この国家クーデターに同意しない400万人の住民が大量虐殺(ジェノサイド)の対象となっている。
その3、この「特別軍事作戦」の目的は、2014年から8年間、キエフ・レジームから大量虐殺ジェノサイドに遭ってきた人々の救済である。その為に、ウクライナの非武装化と非ナチ化を目指す。但し、ウクライナ領土の占領が目的ではない。 |
|
2.24日、ロシア大統領ヴラジーミル・プーチンが国民への演説でこう宣言した。ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人は単一のナロードだと主張した上で、ウクライナ政府による「ジェノサイドに晒されてきた人々の保護」、ウクライナの「非軍事化」、「非ナチ化」を追求するとして、「特別軍事作戦」の開始を発表した。ロシアの軍事介入が開始された。事実上の宣戦布告となった。
過去30年にわたり、我々は欧州における平等かつ不可分の安全保障の原則について、NATOの主要国と辛抱強く合意に達しようとしてきた。私たちの提案に対して、私たちはいつも皮肉なごまかしや嘘、あるいは圧力や恐喝の企てに直面し、北大西洋同盟は私たちの抗議や懸念にもかかわらず拡大を続けた。北大西洋同盟の軍事マシーンは動き出し、申し上げたように、まさに我々の国境に近づいている。 |
|
2.24日、ロシア軍が、ドンバスに対する大規模な軍事作戦を始めようとしていたウクライナ軍をミサイルで攻撃した。ドンバス周辺に集まっていた部隊を一気に叩いたほか、ウクライナ側の航空基地やレーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を破壊した。戦乱が拡大した。その直後、イスラエルの首相だったナフタリ・ベネットを仲介役とする停戦交渉が始まり、停戦はほぼ合意に達した。 |
2.28日、ベラルーシ南東部のウクライナ国境付近のゴメリ州でウクライナとロシア間の第1回協議が行われた。ロシア側はウクライナの非軍事化を前提とした中立国としての地位の確定やクリミアのロシアへの帰属の承認などを要求し、交渉の行方は予断を許さない。
2月末、ウクライナがロシアに敗北した。 |
3.5日、ベネットはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領を殺害しないという約束をとりつけた。ベネットはその足でドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会っている。ゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフがウクライナの治安機関SBUのメンバーに射殺されただ。その後、トルコを仲介役とする停戦交渉も行われ、仮調印まで漕ぎ着けている。 |
3.16日、ロシアとウクライナは、トルコとイスラエルのナフタリ・ベネット首相の仲介による和平合意に向けた大きな進展を発表する。報道されたように、合意の基礎には以下が含まれていた。
「キエフが中立を宣言し、軍備の制限を受け入れれば、停戦とロシアの撤退が可能になる」。 |
|
3.28日、ゼレンスキー大統領は、ウクライナがロシアとの和平合意の一環として、安全保障と組み合わせた中立の用意があることを公に宣言した。
「安全保障と中立、わが国の非核地位、その準備はできている。それが最も重要な点だ・・・そのために彼らは戦争を始めたのだから」。 |
|
4.7日、ロシアのラブロフ外相が、西側諸国が和平交渉を頓挫させようとしていると非難し、ウクライナが以前に合意した提案を反故にしたと主張した。ナフタリ・ベネット・イスラエル首相はその後(2023年2月5日)、懸案となっていたロシアとウクライナの和平合意を米国が妨害したと語った。ベネット首相は、西側諸国が協定を阻止したのかと問われ、こう答えた。
「基本的にはそうである。彼らが妨害し、私は彼らは間違っていると思った」。 |
ベネットは、「ある時点で、西側諸国は “交渉するよりもプーチンを潰す “と決めたのだ」と言った。 |
4.9日、イギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令。 |
4.21日、ウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事は「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と国民を脅した。 |
4.30日、ナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪れ、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めたのだ。この後、ロシアの戦闘相手はアメリカ/NATOになったのだが、この戦闘もロシアが勝った。「ウクライナが勝っている」というプロパガンダを続けていた西側の有力メディアも今年に入り、ウクライナの敗北を認める報道を始めた。ニューヨーク・タイムズ紙は今年8月、記事の中で約50万人のウクライナ兵が戦死したと書いている。この数字はほぼ正しいと見られている。なお、ロシア側の推計戦死者はその1割、つまり5万人程度だ。ベン・ウォレス前英国防相は今年10月1日、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると書いている。そのうえでウクライナ政府に対し、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。つまり学徒動員、あるいは少年兵の投入を求めている。 |