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昭和五十九年四月二十日 午後二時 本会議 ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件
厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び職業安定法等の一部を改正する
法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑 午後二時四分開議
○議長(福永健司君) これより会議を開きます。 ―――――・―――――
厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び職業安定法等の一部を改正
する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(福永健司君) この際、内閣提出、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案及び職業安定法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生大臣渡部恒三君。
〔国務大臣渡部恒三君登壇〕
○国務大臣(渡部恒三君) ただいま議題となりました厚生年金保険法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。厚生年金保険の事務を初めとする社会保険関係事務は、地方においては都道府県の地方事務官によって処理してきたところでありますが、この地方事務官制度は、人事権及び予算権が厚生大臣に、業務上の指揮監督権が都道府県知事に属するという変則的な制度であるため、その改革についてさまざまな議論が行われてまいりました。さきの臨時行政調査会の答申におきまして、地方事務官制度はこれを廃止し、社会保険関係事務については、大部分は国において処理し、地方公共団体が完結的に処理し得る福祉年金関係事務は都道府県において処理するという方針が示されたところであります。本法律案は、この答申の趣旨に沿い、村会保険関係地方事務官制度を廃止するため、社会保険各法その他関係各法律について所要の改正を行おうとするものであります。
次に、法律案の内容について御説明申し上げます。第一に、社会保険関係事務につきましては、老齢福祉年金関係事務を除き、都道府県知事への委任を廃止し、これらの事務は、社会保険庁の地方支分部局の長に委任することができることとしております。第二に、社会保険庁の地方支分部局として統括社会保険事務所及び社会保険事務所を置くこととしております。統括社会保険事務所は厚生省の社会保険関係事務の一部を、社会保険事務所は統括社会保険事務所の所掌事務の一部をそれぞれ分掌することとしておりますが、これらの機関はいずれも都道府県の保険課及び国民年金課並びに現行の社会保険事務所の所管がえであります。なお、これに伴い、都道府県に置かれていた地方社会保険医療協議会は統括社会保険事務所に置くこととしております。第三に、これらの改正に伴い、地方事務官たる職員は、老齢福祉年金関係事務に従事し地方公務員となる者を除き、その大部分が統括社会保険事務所または社会保険事務所の職員となることとしております。第四に、国の職員となる者が国家公務員等共済組合法に基づく共済組合に加入することとなることに伴う経過措置等を講ずるとともに、関係法律について所要の改正を行うこととしております。最後に、この法律の施行時期は、施行のための準備に相当の期間が必要であることを考慮し、公布の日から起算して三年を超えない範囲内で政令で定める日としております。以上が厚生年金保険法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手) ―――――――――――――
○議長(福永健司君) 労働大臣坂本三十次君。
〔国務大臣坂本三十次君登壇〕
○国務大臣(坂本三十次君) 職業安定法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申します。近年、我が国の労働問題をめぐる経済社会の環境は著しく変化しつつあります。これに対応する労働行政組織のあり方につきましては、行政改革の一環として、また、関係労働施策を総合的かつ効果的に実施する観点から、その改善を図ることが重要な課題となっております。すなわち、その一は、地方事務官制度の廃止の問題であります。職業安定行政では、これまで国の機関である公共職業安定所長に対する指揮監督等の事務を都道府県知事に委任しており、これらの事務に従事する職員の身分は地方事務官となっております。この地方事務官制度につきましては、人事権及び予算権が国に、業務上の指揮監督権が都道府県知事に属するという変則的な制度であるため、その是非がかねてから問題とされてきたところであり、その廃止が関係各方面から求められております。
その二は、地方労働行政体制の再編整備の問題であります。労働行政のうち、労働基準行政及び婦人少年行政の地方事務については、それぞれ地方支分部局として都道府県労働基準局及び都道府県婦人少年室を設けて処理しており、また職業安定行政の地方事務については、地方事務官制度により都道府県において処理いたしております。このような体制について、労働行政を総合的、効率的に推進する上で必ずしも十分でない面がある等の指摘がなされてきたところであり、それに対応して再編整備をすることが必要とされてきたところであります。これらの問題につきましては、臨時行政調査会は、昨年三月、長年の懸案であった地方事務官制度を廃止し、職業安定関係事務は地域性、独自性の強い事務等を除き国で処理することとすること、及び都道府県労働基準局と婦人少年室を統合するとともに、地方事務官制度の廃止に伴い国に移管される職業安定関係事務を吸収して、都道府県労働局とすることを答申したところであります。政府は、この答申の趣旨に沿って鋭意調整を進め、関係法律案を今国会に提出する旨閣議決定いたしておりましたが、今般成案を得ましたので、中央職業安定審議会等関係審議会にもお諮りの上、本法律案を提出することといたした次第であります。
次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。第一は、職業安定法を初めとする職業安定関係法律の一部改正であります。現在都道府県知事に委任している公共職業安定所長に対する指揮監督の事務等はこれを都道府県労働局で処理することとし、この措置により、職業安定関係の地方事務官制度を廃止することといたしております。なお、緊急失業対策法等の職業安定関係法律につきましても、所要の規定の整備等を行っております。第二は、雇用対策法の一部改正であります。国と地方公共団体は、公共職業安定所の行う職業紹介等の事業と地方公共団体の講ずる雇用に関する施策が密接な関連のもとに円滑かつ効果的に実施されるように相互に連絡し、協力するものといたしております。第三は、労働省設置法の一部改正であります。労働省の地方支分部局については、都道府県労働基準局及び都道府県婦人少年室を廃止するとともに、それらの組織と国に移管される職業安定関係事務を行う組織を統合して、新たに都道府県労働局を設置することといたしております。また、労働基準法等関係法律につきまして、都道府県労働局の設置に伴う所要の規定の整備等を行っております。最後に、この法律の施行につきましては、そのための準備に相当の期間が必要であることを考慮し、この法律は公布の日から起算して三年を超えない範囲内で政令で定める日から施行することといたしております。また、職業安定関係地方事務官は相当の都道府県労働局の職員となること等所要の経過措置を講ずるとともに、関係法律について所要の改正を行うことといたしております。以上が職業安定法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手) ―――――・―――――
厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び職業安定法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(福永健司君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。元信尭君。
〔元信尭君登壇〕
○元信尭君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました厚生年金保険法等の一部を改正する法律案並びに職業安定法等の一部を改正する法律案について、総理大臣及び関係諸大臣に質問し、その見解をただすものであります。質問の本題に入るに先立ち、私は、国会における審議、とりわけ本会議における答弁のあり方について私の考えを申し上げ、国会における論議がきちんとかみ合い、実りあるものとなるよう、各閣僚の注意を喚起したいと思います。私は、昨年末の総選挙で初めて議席をいただきました新人議員でございます。いまだ四カ月ばかりの国会経験しかございませんが、本会議における各党代表の質問に対する閣僚諸君の答弁を聞くにつけ、これが一体国権の最高機関たる国会における行政の最高責任者たちの真摯な発言と受け取れるか、まことに疑問を抱いているのであります。その原因は、大きく分けて二つあると考えます。第一は、総理、あなたの政治姿勢にあると思うのです。すなわち言行の不一致、いやむしろ言行の背馳と言っても言い過ぎではありますまい。あなたは、選挙の公約には減税を掲げ、選挙が終われば大増税を断行されました。総選挙における自民党の半数割れとの厳しい国民の審判の前には、田中影響排除を神妙に誓いながら、無所属、新自由クラブを抱き込んで過半数を回復するや、人のうわさも七十五日と数えたのか、七十六日目には二階堂副総裁を強引に実現されました。口では平和、軍縮を唱えながら、手では軍備拡張に余念のないことなど、言動と行動の背反はまことに枚挙にいとまがないのであります。
総理、かつてあなたは、戦後政治の総決算などと随分勇ましい発言を繰り返しておられましたが、それが災いしてか選挙に大敗されてからは、一転して心中期するところと口にするところを全く裏返しにすることにされたのですか。その場、その時を口先でかわしさえすれば、後は権力を握ってやりたいほうだいというのでは、国会の論議がまともにかみ合うはずはないのであります。(拍手、発言する者あり)総理、あなたを初め今次内閣には、能弁をもってみずから任ずる士が多数おそろいと承っております。しかし、いかに弁が立つとは申せ、その言葉に魂が込められていなければ、言の葉はむなしく議場にこだまするばかりで、聞く者の胸を打つ言論の実りはありますまい。総理、かつてあなたのことを、かんなくずのようにぺらぺらとと表現された女性がありましたが、私もまことに同感を禁じ得ないのであります。その弁の立つところを頼んで、羊頭を掲げて狗肉を売るはまだしも、サギをカラスと言いくるめるたぐいの言辞は、もはや雄弁ではなく、ためにする詭弁と言わなければなりません。
閣僚諸君の答弁がむなしく響くいま一つの原因は、しばしば見受けられる官僚作文の棒読み答弁にあろうと思います。官僚の作文を読むだけであれば、アナウンサーの方がもっと上手に読むことであって、閣僚のあえてなすべきところではありません。高度の政治的見識を発揮し、意を尽くし、あるいは当意即妙の答弁があってこその閣僚の答弁ではないでしょうか。総理並びに閣僚の皆さん、どうか国会を言論の府として、また国権の最高機関として、十分議会政治の真髄を発揮すべく、この機会に政治家としての信念を率直に吐露されんことを強く期待して、以下、質問に入ります。
第一に、地方自治の本旨並びに地方自治法の関連について質問をいたします。そもそも、地方事務官なるものが極めて過渡的なものであることは、憲法及び地方自治法の制定の趣旨及び施行経過を見れば明らかであります。すなわち、憲法の定める地方自治の本旨に基づいて制定、施行された地方自治法によって、かつての国の官吏は、原則として地方公務員に身分を切りかえられました。その際、例外として、都道府県の事務のうち政令で定める特定の事務に従事する都道府県職員については、当分の間これを国家公務員とすることとされました。これが地方事務官なる極めて中途半端な制度のそもそもの始まりであります。しかしながら、当時地方事務官とされた警察、消防、教育関係の官吏が順次地方公務員とされた事実に加え、何よりもその法的根拠規定が地方自治法附則に置かれたことは、地方事務官の身分が極めて過渡的な措置であったことの何よりの証明と言えましょう。
以来三十七年間、我が国における地方自治の歩みは着実に国民生活に根をおろし、今日に至っているのであります。地方自治法の制定において、知事及びその部下の職員の身分は、これを名実ともに地方自治体の職員とし、地方団体の住民及び議会に対して責任を負担し、住民の福祉の増進に努めさすこととしたと述べた当時の植原国務大臣の意図は、今日ますます意義あるものとなっているのであります。
しかるに、今回の法案は、これら制定のいきさつを政府みずから覆すものであり、憲法及び地方自治法の本旨に反するものであると言わなければなりません。(拍手)総理並びに自治大臣の明確な御答弁をいただきたいと存じます。
質問の第二は、今回の改正手続の問題であります。これまで地方事務官については、昭和三十九年の臨時行政調査会答申を初め、四十年の地方制度調査会、同四十一年の行政監理委員会を初め、あらゆる審議会、調査会において、地方事務官制度を廃止し地方公務員とする決議、勧告、答申がなされております。加えて、全国知事会、数多くの都道府県議会、市町村議会においても、地方移管が繰り返し決議されていることは、皆さんもよく御存じのところでございます。また、昭和四十九年五月、第七十二国会において、「昭和五十一年三月三十一日を目途として地方公務員とする」との決議がなされたことは、総理もまたその一員として十分御承知のことと思われます。
当該事務に携わっている自治体はもとより、国権の最高機関としての国会における意思をも踏みにじって、全く逆行する内容の改正案を提案することは、民主主義国家の政府として一体許されるものでありましょうか。まして、同じ総理の諮問機関たる地方制度調査会の意思よりも、第二次臨時行政調査会答申を優先した今回の提案は、現代行政に重要な位置を占める諮問行政のあり方にも重大な赤信号をともすものと言わざるを得ません。総理の答弁をいただきたいと存じます。
第三は、政府の進めている行政改革との関連であります。行政改革に求められる今日的課題の最重要ポイントの一つは、行政国家とも言える行政権の肥大化、とりわけ行政の立案、執行過程における官僚の専横を排することにあったはずであります。地方事務官問題の歴史的経緯は、まさにこの官僚の専横に反対し、現地性、統合性、民主性という行政三原則を実現する運動であり、それは単なる身分の帰属を超えて我が国行政のあり方を問う問題であると言えます。であればこそ、大阪府知事は、三月二十三日の一日行政改革審議会で、臨調答申は本質を見誤っている、地方の手の届かない過度の中央集権の打破、地方分権化こそ臨調の責任であり、臨調委員は中央省庁官僚に丸め込まれているとして、地方事務官の国家公務員化をまさにナンセンスの一言で片づけたのであります。
総理も、かつて行政管理庁長官の職にあったときに、地方事務官については行政の三原則に沿った改革の方向を示していたはずであります。にもかかわらず、官僚のセクショナリズム、縦割り主義を助長する改正案を今回提案したことは、政府の行政改革がその本来の目的を逸脱したばかりか、官僚主義に屈服したことの証明にほかなりません。地方事務官という地方自治法に突き刺さったとげを放置し、今それを行政改革の名において除去しようとして、地方自治の本旨はもとより、行政の普遍的原理である三原則をも否定する今回のやり方は、中曽根総理にもはや行政改革を語る資格なしと断言しても決して言い過ぎではありません。総理並びに行政管理庁長官の率直な答弁をいただきたいと思います。
ところで、今回の改正案を見ますと、地方労働局及び統括社会保険事務所を各県に設置することにいたしております。現在では都道府県庁舎において事務執行がなされており、これらを地方労働局及び統括社会保険事務所として統合することは、新たな庁舎を建設する等に一定の財政支出を余儀なくされることは明らかであります。本来無用な支出であるものが、今回の改正によって新たな財政支出を伴うことになるわけでありますが、六十五年度を目指して財政再建を公約している政府にあって、このような支出が一体許されていいものでありましょうか。まして、約二万人に及ぶ地方事務官を新たに国家公務員とすることは、国家公務員の総定員を拡大することとなり、政府の言う行革方針とは本来相入れないものであると考えますが、いかがでございましょうか。行政管理庁長官並びに厚生、労働大臣のお考えをしかと承りたいと存じます。
第四は、今後の高齢化社会あるいは地域経済との関連であります。一部には、地方事務官が従事している事務は、本来国が責任を持って全国的に統一し実施すべき性質の事務であり、自治体に委任するよりも国が直轄事務として執行することが望ましく、効率的であるとの意見もありますが、果たしてそうでありましょうか。高齢化社会の到来が指摘され、核家族が多くなっている中で、医療、年金はもとより、老人福祉や障害者福祉、さらには住宅環境や雇用、地域経済対策など、地域社会において自治体が中心となり総合的行政が展開されることがますます強く求められております。国の法律において全国的な統一性を持ったにしても、その具体的執行は自治体にゆだねられるべきであり、それこそが今後の社会経済を先取りする改革のあり方であろうと思うのであります。
地方事務官の身分移管は厚生、労働行政の地域社会における効率的な展開を可能とする必要条件であり、これを国家公務員とすることは、こうした可能性を否定するものと言わなければなりません。そればかりか、地方事務官の従事している行政事務だけを国に引き揚げることは、既に自治体で行われている福祉、衛生、医療、雇用の政策に一層の二重行政を持ち込むこととなり、行政の効率性を著しく低下させることは明らかであります。とりわけ、地域経済の振興が叫ばれている今日、地域経済と職安行政は一体的なものであることを考えれば、これを自治体から切り離すことは、我が国経済の発展にも大きく悪影響を与えるものと言わざるを得ません。厚生大臣、労働大臣の答弁をいただきたいと存じます。
○議長(福永健司君) 元信君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。簡単に願います。
○元信尭君(続) 最後に、今回の改正法案と地方自治法との関連についてお尋ねいたします。今回、政府は、地方事務官制度の基本たる地方自治法については全く触れないままに個別事務法ごとの改正案を提案してきておりますが、このような改正形式こそ地方自治の否定以外の何物でもありません。地方自治法の規定を別法をもって空洞化し、既成事実を積み重ねることによって後から地方自治法の規定を削除しようというのでありましょうが、このようなやり方は現在の自衛隊の存在と全く同じやり方であります。地方自治の基本法とも言うべき地方自治法を別法をもって空洞化する今回の改正について、自治大臣がこれを許容することは、自治大臣たる資格をみずから否定するものではありませんか。自治大臣の見解を承りたいと存じます。
○議長(福永健司君) 元信君、簡単に願います。簡単に願います。
○元信尭君(続) 以上をもって質問を終了いたします。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 元信議員の御質問にお答えをいたします。閣僚は誠心誠意御答弁していると思います。どうぞ御質問もわきにそれずにまともな御質問をお願いいたしたいと思います。まず、地方事務官制度は地方自治の歩みに逆行するものではないか、こういう御質問でございます。この地方事務官制度は、暫定的かつ異例の制度として実は制定されたものであります。臨時行政調査会は、それぞれの事務の性格と実態に即して事務配分をすることによって問題の解決を図ることが必要であると判断をして、このような答申をしたものでございます。政府といたしましては、この臨調答申を最大限に尊重するという立場からこの法案を提出いたしましたが、現段階におきまする事務の合理的再編の一環といたしまして地方自治の本旨に反するものではないと考えております。
次に、地方制度調査会との関係いかんという御質問でございます。我々は地方制度調査会の答申もあくまで尊重してまいるつもりでございます。臨調答申と地方制度調査会の答申、この関係をどう処理するかということでございましたが、政府といたしましては、両方の答申をよく検討いたしまして、その意向をよく勘案をいたしまして、政府の責任において最終的な判断を決めたというところでございます。
次に、地域性や総合性、民主性という面から見て、地方分権の観点から、このような改革はいかがであるかという御質問でございます。この問題は、長年の懸案に終止符を打つとともに、行政の総合的かつ効率的な執行体制を確保するという観点から十分検討した上でこのように決定いたしたものでございまして、御理解をお願いいたしたいと思います。残余の答弁は関係閣僚からいたします。(拍手)
〔国務大臣渡部恒三君登壇〕
○国務大臣(渡部恒三君) 地方事務官制度の廃止に伴う庁舎整備についてのお尋ねでありますが、今回の改正は、さきの臨調答申の趣旨に沿い、多年の懸案であった地方事務官問題の解決を図ることを目的とするものであります。この改正により、都道府県保険課及び国民年金課の地方事務官は、統括社会保険事務所に所属することとなりますが、そのための庁舎については、既存の社会保険事務所庁舎や合同庁舎を活用すること等により、できるだけ効率的に対処する所存でございます。
次に、今回の改正が二重行政や効率性の低下等の問題をもたらすとのお尋ねでありますが、国が保険者となっておる社会保険事業は、全国を一つの保険集団とし、一律の基準で保険料を徴収し保険給付を行う事業であり、その運営に当たって地域性を考慮する余地のないものであります。また、社会保険の給付は他の福祉施策に優先して行われるものであります。したがって、これを国が直接実施することによって地方における行政の総合性を阻害したり、二重行政や効率性の低下という問題を生ずるおそれはないものと考えております。(拍手)
〔国務大臣田川誠一君登壇〕
○国務大臣(田川誠一君) まず、地方自治の本旨と今回の法案との関連につきましてお答えを申し上げます。地方事務官制度は当分の間の暫定的な制度でありまして、その廃止は長い間の懸案事項でございました。この問題の解決を図るために、臨調としても、これまでの地方制度調査会の答申を含めて、地方事務官制度の廃止に関するあらゆる論議を踏まえまして、論議に論議を重ねた結果、事務の性格と実態に即して事務の配分を行ったのでありまして、そしてそれに応じて地方事務官の身分を振り分けるとの考え方のもとに、御承知のような答申が取りまとめられたのでございます。結果的に地方公共団体の主張とは異なる結果となりましたけれども、政府としては、臨調答申を全体として尊重するという立場から十分な調整を尽くし、法案を提出するに至ったものでございます。地方自治尊重の観点からは、いろいろな御意見もあると思いますけれども、これをもって直ちに憲法の定める地方自治の本旨に反するものではないのでございます。ただ、国と地方に関する問題については、地方制度調査会から長年の間貴重な答申なり御意見をいただいているところでありますので、今後は同調査会の御意見が行政改革の上で十分反映されるように願っている次第でございます。次に、今回の法案と地方自治との関連についてお答えをいたしますが、地方事務官制度の根拠は地方自治法附則八条に置かれておりますが、今回これを改正するようなことはしておりません。これは単に立法技術的な理由によるものでございまして、地方自治法の規定は、現行のそれぞれの部門の地方事務官の根拠規定を規定しておるものでありますので、今回の関係法案により地方事務官がすべて廃止されることになった時点で改正されるべきものでございます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣後藤田正晴君登壇〕
○国務大臣(後藤田正晴君) お答えを申し上げます。御質疑の趣旨は、地方事務官制度を廃止をして、これを国の行政機関の職員として、したがって総定員法をそれだけふやすということは国家公務員をふやすことになるのじゃないか、これは行政改革の趣旨に反する、こういう御質問だと思います。しかしながら、御案内のように、現在の地方事務官というのは、都道府県に属する職員ではありますけれども、国家公務員でございます。したがって、行政改革の対象として、定員管理の対象として、厳しく今まで削減をしておるわけでございます。したがって、総定員法の枠内に取り込みましても、それは国家公務員がふえるというわけではございません。従来から国家公務員でございますから、単なる根拠法規を変えたというにすぎないわけでございます。従来どおり厳しく、今回総定員法の枠内に入れましても、定員管理の断行をして、定員の削減をやっていくつもりでございますから、御安心を願いたい、かように思うのでございます。(拍手)
〔国務大臣坂本三十次君登壇〕
○国務大臣(坂本三十次君) 都道府県労働局の庁舎の問題につきましては、いままでありまする既存の都道府県労働基準局の庁舎を活用いたしましたり、国の出先にあります合同庁舎への入居など、そういうふうにいたしまして、新しきお金をできるだけ使わないように、財政の負担を増大をしないように、一生懸命努力をしてまいりたいと思っております。それから、職業安定行政の分離によって地域経済へ悪い影響がないかというお尋ねでございました。ただいま私が御提案申し上げましたこの法律案の中には、国の職業紹介事業と都道府県の雇用に関する施策が密接な関連のもとに相互に連絡協力して運用されるよう云々と書かれておりまして、従来同様職業安定行政が地域経済にもお役に立てるものだと信じており、また、そのように私ども最大の努力をしてまいりたいと思っております。
○議長(福永健司君) これにて質疑は終了いたしました。 ―――――・―――――
○議長(福永健司君) 本日は、これにて散会いたします。 午後二時四十四分散会 ―――――・――――― |