消費税増税の税収増減考

 更新日/2018(平成30).5.19日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、消費税の税収増減問題を考察する。

 2010.02.16日 れんだいこ拝


【消費税と税収の増減相関考】
 俄かに消費税増税論議が始まり、最大党派の民主党と自民党が「消費税10%案」を打ち出しつつある。ここで、「消費税と税収の増減相関」をしておきたいと思う。まともな経済学者が居れば、既に研究されていてもおかしくなかろう。我々には伝わらないだけだろうか。

 橋本政権で郵政大臣をつとめていた自見氏は、次のように証言している。

 「橋本政権のとき、税率を上げたのに、税収は逆に下がっちゃったのです。橋本さんのとき、消費税を2%上げて4兆円の増税に。しかし景気の悪化で所得税と法人税が6兆5千億円減った。結果、かえって歳入は減っちゃった」。

 「最初の発言聞くと、すぐに消費税を実行に移そう、というような話でございましたが、私もこの前テレビで(?)について言わせていただきましたけどもね、橋本大臣、消費税をですね、2%から3%に上げたときの閣僚でございましてね、正にあの時にだーんと、それからあの医療保険の自己負担分ありましたよね、合計国民負担を11兆円増やしたんです。それまで少し景気がいいといってた、これはまあ大蔵省等々いいって言ってたんでね、これがどーんと奈落の底に沈みましてね。まああの、山一證券は崩壊する、北海道拓殖銀行が破綻するっていうような、そういった目にあってますからね。そのいったところは経済の全体の動向を踏まえてですね、国民負担ということはやはり慎重に考える必要があるという風に今日も申し上げましたけどね。

 こういうことはきちっと、経済があって、経済があって税収が増えるわけです。橋本さんのときにね、1%消費税上げましたよね、まああの頃は経済が小さくて2%で4兆円の増税になったんですよ。景気が悪くなりましてね、法人税と個人所得税減りましてね。6兆5千億減ったんですよ。実はね、差し引きで結局歳入減っちゃったんですよ。そういうこともございますからね。常に経済をまあの拡大する、拡大均衡させていくという前提を持ってね、こういう税制を考えていく必要があると私は思っています」。


 「DeLTA Function」の2010.6.27日付けブログ「97年の消費税増税で総税収は増えたのか?答はNo」を転載しておく。

 1997年度の消費税引き上げで消費税収の対GDP比は1.6%から2.7%(+1.1%)に上昇しました。倍率にして1.69倍。3%→5%が1.67倍ですから大体税率引き上げ分と同じぐらい税収が増えています。グラフを見れば分かる通り、所得税や法人税に比べて極めて安定した税収が望めます。増税の議論で消費税が第一に出てくるのは、消費税収の対GDP比が国際的に見て低いこともさることながら(参考:日本の税収はOECDの下から3番目 - DeLTA Function)、この安定性が財政サイドからすれば魅力的であるからでしょう。

 ただ問題なのは短期的には景気に悪い影響を与えるわけですから他の税収が減ります。94~96年度は税収の対GDP比は10.2~10.4だったのが97年度には10.5%に増えています。景気が悪くならなければ10.2+1.1=11.3%に増えているはずなのですが、そうはなっていません。その後この対GDP比を上回ることは一度もなく、最も高かったのが2000年度の10.1%。その後だと2007年度の9.9%が最高です。結果として消費税増税で税収は減ってしまったのです。

 1997年度の引き上げで不幸だったのはアジア通貨危機と三洋証券や山一證券、拓銀、長銀などの大型金融機関の破綻と重なってしまったことです。私としては98年の本格的デフレ突入は消費税引き上げよりこれらの影響のほうが大きかったと考えていますが、デフレ悪化に一役買ってしまったのは確かでしょう。消費税の5%引き上げが固まったのは94年11月で、94~96年頃は比較的景気も良好でした。こういう状況で97年のような金融危機が起こることを予め想定しておけというのは中々厳しい話で、橋本首相(当時)が増税延期に踏み切らなかったのも致し方ないと思います。タイミングが悪かったのは確かです。ただデフレ突入の全ての責任を橋本首相に負わせるのはどうかなと。

 さて、この教訓から得られることは増税はタイミングが大事だということです。不況期にさらにブレーキかけるようなことをすれば増税しても税収は増えません。ただ、下のグラフにある通り、景気が回復してもいずれ増税しなければ財政の悪化は進行していきます(プライマリーバランスが安定的に黒字化したのは、赤字国債の発行が行われた1965年以降で見るとバブル景気のときだけです)。しかし今、増税の話が先行すれば景気をさらに悪化させて税収を減らすだけで本末転倒です。残念なことに民主党も自民党も増税の話ばかりになっています。全く愚かという他ありません。

 税収は増えない中で歳出は順調に増えていっています。特に社会保障関係費です。このまま増えていけば消費税を10%(対GDP比で総税収が最大2.7%増)に引き上げても足りません。増税は必要ですが社会保障関係費の抑制もまた必要です。ちなみに2006年度に印をつけていますが、これはこの年度が近年最もプライマリーバランスの赤字が小さくなっていますが、これは税収増のおかげではなく(税収は減ってます)、大規模な歳出削減のためということを強調するためです。歳出削減が如何に重要かということです。

 好況期では税収は成長率以上に増えて歳出は減るのですが、不況期では税収が大きく減る割りに歳出は減りません。むしろ増えることもあります。そのため中長期的には増税して税収を増やさないと財政の悪化が進んでいきます。ただ大事なのは増税は安定成長の軌道に乗った上での話です。リフレ政策の一環として消費税凍結+数年後引き上げのコミットメントを打ち出すなら分かりますが、財政再建のために増税なんて話は逆に財政を悪化させるでしょう。景気が悪化して税収が増えないのですから。

 
 2010.6.29日付けブログ「89年と97年の消費税増税の影響」を転載する。
 97年は勿論のこと、89年も消費税3%の創設によってバブル景気真っ只中にも関わらず民間消費・住宅が少し落ち込んでいます。これから先、バブル景気のような好景気がそうそう来ないことを考えれば、消費税増税が行われる際には必ずその反動で景気が悪くなることでしょう。そこに97年のように大きなショックが加われれば未曾有の不況に陥ってしまいます。与党は4年後の増税を目指しているようですが、それまでにデフレ脱却のための集中的対応を行っておかなければ97年の再来となるでしょう。

 私は増税の必要性自体は否定しません。ただやるべきことをやった上での増税でなければなりません。90年代のイタリアやスウェーデンは増税に踏み切って一応成功してはいるのですが、それは通貨切り下げや金融緩和、歳出削減もセットで行われたからのことです。増税が第一に来るのでは景気は回復せず、総税収は増えないでしょう。参院選で最も争点になるべきは増税の必要性ではなくデフレ脱却の具体策であるべきです。しかし残念なことに、民主党も自民党も消費税という呪縛に絡めとられているようです。

 以下はグラフが続きます。

 89年と97年の比較

  • 実質成長率
    • 1997年4月の消費税5%引き上げ前は駆け込み需要で民間消費・住宅が大きく伸びるが、引き上げ後はマイナスに落ち込み、97年Q3には成長率もマイナス。後で見るように97年Q3はアジア通貨危機や金融不況の影響がまだ無かった頃。
    • 89年4月の消費税創設時も97年ほどではないが民間消費・住宅が少し落ち込んでいる。ただ他が伸びていたため景気悪化には繋がらず。
  • 消費者物価指数
    • どちらも消費税引き上げ後に価格の転嫁が行われている。増税前の96年度から97年度の物価上昇率のかさ上げ分は平均1.8%。88年度から89年度は+2.2%。(105-103)/103=1.94%、(103-100)/103=2.91%なので概ね適正に転嫁されている。ただ2004年4月から総額表示方式に変わったため、次に消費税を引き上げる際には価格転嫁がし難くなり、物価上昇率は89年、97年ほど上がらない可能性も。
  • 失業率、求人倍率、賃金、労働時間
    • 97年は反動不況の影響で同年9月頃から失業率がやや上昇し、求人倍率や所定外労働時間も低落傾向。そこに97年11月からの金融不況が追い討ちをかけ、翌年4月から失業率は大きく上昇していく。賃金が下がりだすのは少しラグがあって98年5月頃から。
    • 89年は消費税増税の影響は殆どない。バブル崩壊を迎えるまで失業率は一貫して下がり続け、求人倍率、賃金、労働時間は上昇を続けている。

 97年不況の最大の要因は消費税ではなく金融不況

  • 消費者態度指数および日銀短観
    • 97年Q3まではどの指標も左程悪化していない。金融不況が始まる97年Q4から急激に悪くなっている。
  • 国際収支
    • アジア通貨危機の影響で98年Q1からアジア向けの経常収支が減っているが、全体額で見れば左程影響はない。
    • 96年までの円高が97年頃から円安に転じたため、経常収支は概ね好調だった。
  • 日銀の対応
    • 95年9月から政策金利を0.5まで下げてそれなりの緩和は行っていたが、97年4月の消費税引き上げで消費の冷え込みから成長率が落ち込んでも特に動いた形跡はない。
    • 97年11月の危機においても約3兆円の日銀特融を行った程度で、ベースマネーは前年比10%しか増えていない。これを日本と同時期にバブル崩壊に遭っていたスウェーデンの対応と比べると如何に何もしてないかが分かる。(→スウェーデンの果断さと日本の愚鈍さ - DeLTA Function)。
    • そもそも何故バブル崩壊直後に何もしなかったのか!?政治の混乱を踏まえれば日銀だけのせいではないけれど…。

 番外

 1997~98年の主な出来事

 1997年
  • 4月1日:消費税を5%に引き上げ実施。
  • 7月2日:タイの通貨バーツが変動相場制へ移行。
  • 7月15日:韓国、起亜自動車が破綻。
  • 8月11日:IMF、日本等からタイへの国際金融支援決定。総額172億ドル。
  • 8月17日:インドネシアの通貨ルピアが変動相場制へ移行。
  • 8月17日:マレーシアの通貨リンギットが変動相場制へ移行。
  • 11月1日:IMF、日本等からインドネシアへの国際金融支援決定。総額390億ドル。3日:三洋証券が破綻。負債総額3,736億円。4日:群馬中央信用金庫が三洋証券に貸付けていた無担保コール資金約10億円がデフォルト。コール市場のデフォルトは戦後初。17日:北海道拓殖銀行が破綻。負債総額は3兆5,773億円(影響度Dまで含む。参照)。24日:山一證券が自主廃業を発表。負債総額3兆5,085億円。
  • 12月3日:IMF、世銀、日本等から韓国への国際金融支援決定。総額580億ドル。
 1998年
  • 7月13日:IMF、世銀等からロシアへの国際金融支援が決定。総額226億ドル。
  • 8月17日:ロシア政府、対外債務の90日間支払い停止を発表。ロシアの通貨ルーブルは暴落。
  • 10月23日:日本長期信用銀行が破綻。負債総額は11兆7,121億円(影響度Dまで含む)。
  • 12月13日:日本債券信用銀行が破綻。負債総額は4兆4,849億円(影響度Dまで含む)。

 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK254」の赤かぶ氏の2018 年 12 月 05 日付投稿「「消費税を廃止してもおつりがくる」と元国税局員! 」。

 「消費税を廃止してもおつりがくる」と元国税局員!
 https://85280384.at.webry.info/201812/article_53.html

 2018/12/05 22:40 半歩前へ

 ▼「消費税を廃止してもおつりがくる」と元国税局員!

 「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)などの著書がある大村大次郎がすごい話をした。日本の富裕層は米国の富裕層の半分しか税金を払っていない。富裕層が米国並みの税金を払えば、消費税を廃止してもおつりがくると言った。税制の仕組みに問題が隠されていた。彼は10年間の国税局に努めていたというだけあって目の付け所が違う。
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 主要国の個人所得税の実質負担率(対国民所得比)
日本  :7.2%
アメリカ:12.2%
イギリス:13.5%
ドイツ :12.6%
フランス:10.2%
(世界統計白書2012年版より)

 個人所得税は先進国では大半を「高額所得者が負担」している。つまり、日本の金持ちの税負担は、先進国の中で一番低い。2015年度のアメリカの個人所得税の税収は1.55兆ドル。1ドル=110円で170兆5,000億円だ。これに対して同年度の日本は16兆4,000億円。実に10倍以上も差がある。もちろん、日米では経済規模が違う。が、経済規模を調整したところ、米国と日本の名目GDPを比較した場合、米国は日本の約4倍だ。現在の日本の所得税の税収を4倍にしても、65兆6,000億円しかありません。米国の半分にも遠く及ばない。

 繰り返すが所得税は、先進国ではその大半を高額所得者が負担する。だから、所得税の税収が低いということは、高額所得者の税負担が低いということなのだ。ざっくり言えば、日本の金持ちは、米国の金持ちの半分以下しか税負担をしていないということである。仮に日本の金持ちが、米国と同等の所得税負担をすれば約40兆円の税収となる。今よりも24兆円近くも増収になる。現在の消費税の税収は17兆円程度だ。10%に引き上げても20兆円程度にしかならない。日本の金持ちが米国並みの所得税を払えば、消費税増税の中止どころか、消費税を廃止してもおつりがくる。

 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK254 」の赤かぶ氏の2018 年 12 月 06 日付投稿「消費税は元々不要な税制度であり増税などもっての外、軍事費が増えるばかりである(そりゃおかしいぜ第三章)」。

 消費税は元々不要な税制度であり増税などもっての外、軍事費が増えるばかりである
 https://blog.goo.ne.jp/okai1179/e/f5ae51c778186ebbf06874b56f7252bb
 2018-12-05 そりゃおかしいぜ第三章


 来年10月に消費税は10%になる。これは既定路線で最早だれも増税を疑っていない。2%還元されるキャッシュレスについてのことばかりが取りざたされている。消費税の何なるかも論議されずに、国民は「ボーっとして生きている」だけである。消費税の必要性が全く論じられていないのである。パズルのようだと皮肉ったが、報道はカード支払いでポイント還元するのはどうだとか、何が対象になるかとかという事ばかりである。消費税増税を何故しなければならないかも問われることなく、さらには財政悪化への政権側の矜持などが問われるべきである。

 上記を見れば一目瞭然であるが、先ずは消費増税は法人税の言がkの埋め合わせであることが判る。法人が海外に流出すると言われていたが、そうした動きが全くないまま減税されたが、海外移転の率は変わることがない。海外移転の最も大きな理由は人件費であったが、中国などは日本を上回る勢いで人件費が伸びている。そこでベトナムなどに流れているが、それもいずれ同じ現象が起きる。日本人の人件費が落ちていることや、社会不安や社会インフラなどの安定充実していることを考えるとそんな不安などどこにもない。法人税をも元に戻せば、消費税はなくしてもかまわない。

 赤字国債を発行し続けておきながら、ジャブジャブ不要な公共投資を下げんなく繰り返す。安倍晋三が新自由主義を標榜するなら、小さな内閣を目指し健全な予算組に戻すべきである。先ずは国会議員の給与を5分の一程度に落とし、最終的には10分の一程度にするべきである。異様に高い国会議員の給与と公務員給与である。それに何よりも、防衛予算の高騰である。安倍晋三が政権を執ってから23%も伸びている。異様である。その一方で約束していた社会保障費は、自然増にすら追いついていない。消費増税で日本は防衛予算、正確に言えばアメリカの軍事産業から大量購入の費用に充てているといえる。消費税は必要ない。





(私論.私見)