八百長メール事件考

 (最新見直し2011.02.07日)

 「テレビ大菩薩峠」の2011.2.3日付けブログ「大相撲八百長メール事件」、「大相撲八百長メール暴露で、改めて相撲取りのガチの強さを実感した件」その他を参照する。
 2011.2.2日、警視庁組織犯罪対策3課が、昨年7月、野球賭博事件の賭博開張図利容疑で相撲部屋など三十数カ所を家宅捜索し、押収した携帯電話から当時十両だった力士数人が大相撲の取組で勝ち星売買などの八百長をしていたとみられる内容のメールが見つかっていたとの情報が漏洩された。携帯メールは賭博疑惑発覚直後に一斉に削除されたが、同課は数カ月かけてメールを復元。賭博の実態解明につながる証拠を集めていた。関係者によると、昨年3月と5月の両場所中、当時十両だった力士数人の携帯電話に、勝ち星の売買や取組内容の事前打ち合わせをうかがわせる十数件のメールがやりとりされていた。文面には売買金額とみられる「20」「30」などの記述もあった。メールは力士同士がやりとりしていたという。

 警視庁は既に警察庁に報告しており、同日午前、日本相撲協会を所管する文部科学省にメールのやりとりを示す物証を提出した。同省は、協会に対し事実関係を調査するよう指示した。文科省から連絡を受けた協会側は放駒理事長(元大関魁傑)、伊藤滋外部理事、吉野準監事、寺澤則忠監事が出向き、八百長の証拠とみられるメールの内容を提示された。その際、公益財団法人化へ向け「こういう問題があると厳しい」と指摘も受けた。


 警視庁に携帯電話を押収されたのは元幕内春日錦竹縄親方と現役十両の千代白鵬関(九重部屋)。メールには「後(あと)20で利権を譲ります」などの記述があり、勝ち星の売買をする八百長を強く示唆している。メールは2人が昨年3〜6月、十両の清瀬海関、三段目の恵那司力士との間で送受信した少なくとも46通。2人を含め親方や幕内力士ら計13人の名前の記載があった。

 2人とメールのやりとりをしていたのは、十両の清瀬海関(北の湖部屋)と三段目の恵那司力士(入間川部屋)だったことも判明。このほかメール内で名前が出ていた力士ら9人も明らかになった。9人は元小結海鵬の谷川親方と幕内の翔天狼関(藤島部屋)、豊桜関(陸奥部屋)、光龍関(花籠部屋)、霜鳳関(時津風部屋)。十両の旭南海関(大島部屋)、若天狼関(間垣部屋)。幕下の白乃波力士(尾上部屋)山本山力士(尾上部屋)。


 「八百長メール」で疑いを持たれ、日本相撲協会に呼び出された力士らは一様に疑惑を否定した。やり取りがあったメールで名前の挙がった力士12人が、午後2時過ぎから続々と東京・両国国技館に集まり、理事会に出席。午後4時過ぎに理事会の事情聴取が終わると、表情をこわばらせたまま会議室から出てきた。モンゴル出身で幕内の光龍関は「自分は何も知らない。迷惑な話だ。自分からそんな(八百長の)話をするわけがない」と強い口調で否定し、同、翔天狼関は「自分は(メールに名前が)載っていないのに呼ばれた。そんなことやっていない、と言った」と不満の色をありありと浮かべた。十両時代、260キロ台の体重で人気を集めた幕内経験のある幕下の山本山力士は取り囲む報道陣の機先を制して「僕はやってませんよ」と潔白を主張。協会側からは事実関係をただされたといい、「時間にして数十秒。『やっていない』と言った。すみません」とだけ答え、決まり悪そうだった。元十両で幕下の白乃波力士は「身に覚えがない。自分はやっていない。潔白だ」と言い切った。「親や友人がいっぱい応援してくれているので悔しい」と疑惑を向けられたことへの不満も口にした。先月の初場所で引退し、親方として再スタートを切ったばかりの竹縄親方(元前頭・春日錦)は表情をひきつらせ、無言のままタクシーに乗り込んだ。谷川親方(元小結・海鵬)が所属する八角部屋には午後7時半ごろ、師匠の八角親方(元横綱・北勝海)が帰宅。暗い表情で「私は中(相撲協会)の人間だから何も話せない。これから(調査)委員会があるわけだから。事実確認はしていない。これから、これから」と語った。さらに報道陣から「谷川親方を信じているか」と問われたが、答えずに自宅に消えた。十両の若天狼関が所属する間垣部屋では、外出先から帰った力士が記者の問いかけに「(若天狼関は)今日のけいこには普通にいた。今はいない」と答え、足早に部屋に入った。幕内の霜鳳関が所属する時津風部屋や、幕内の豊桜関が属する陸奥部屋ではいずれも、インターホン越しで男性が「(取材は)無理です」などと答えた。十両の清瀬海関が属する北の湖部屋でもインターホンで男性が「今はいないっす。(いつ帰ってくるかは)分かりません」と答えた。十両の旭南海関は共同通信の取材に対し「自分には関係ありません。よく分かりません」と説明した。

 日本相撲協会の放駒理事長は、緊急理事会後に会見して「13人のうち12人から事情聴取したが「確証を得ることができなかった」と述べた。

 角界に衝撃が走った大相撲の八百長疑惑。2日午後に緊急に開かれた日本相撲協会の理事会後に会見した放駒理事長は聴取した力士の関与について「確証を得ることができなかった」と苦渋の表情を浮かべた。「過去に一切なかった、新たに抱えてしまった問題」と2度述べて従来の角界に八百長はなかったと強調。「早急に事実関係を確認したい」と繰り返すにとどまった。

 国技館での会見。放駒理事長は「ファンや関係者、相撲界にかかわる諸先輩方、先人に対し少しお話しさせていただきたい」と手元に置いた紙を見ながら神妙に切り出した。「このような会見を行わなくてはならないことに対し大変憤り、心苦しく思っている。協会のトップ、日本相撲協会を代表して、ファンに心からおわびしたい」と10秒弱、頭を下げた。

 疑惑については「ファンの皆さまに真摯(しんし)に対応するのが使命」としつつも、「事実関係を正確に伝えるには少し時間がかかる」と断りを入れた。「今回の問題については、過去には一切なかったこと、新たに抱いた問題と認識している。その点、ファンにははっきりとご理解いただきたい」と訴えた。

 八百長が疑われている場所や取組については「今の時点でははっきりしていない」と答えたが、メールの内容については「間違いないようだ」と話した。

 協会の存亡の機との指摘には「私もそういう認識でいる。相撲を愛してくれたファンに対する裏切りと思うから、仮にそういう事実が判明したら、厳しく処分する」と語気を強めた。

 これまで協会は八百長ではなく「無気力相撲」という言葉を用いてきたが、放駒理事長は「私の認識はある意味(無気力相撲と八百長は)イコールだと思っている」と述べた。

 協会は、同日、特別調査委員会を設置した。 特別調査委員会メンバーは、座長の伊藤滋・協会理事(早大特命教授)、吉野準・協会監事(元警視総監)、山本浩・法政大教授、深沢直之・弁護士、長尾敏成・弁護士、村上泰・弁護士、望月浩一郎・弁護士。報告のめどについては「一日も早くとは考えています」と答えた。疑惑がある13人以外も十両以上を重点的に全力士に対して調査することを明らかにした。
文部科学省は協会の今の公益法人としての認定取り消しを含めて対応を検討する。

 竹縄親方が昨年3月17日、恵那司力士に送ったメールには「俺は誰に借りているかな? 貸しは光龍と山本山だけだよね」との記述があったほか、4月16日には清瀬海関に「後20で利権を譲りますがどうですか?」と送信。5月23日には清瀬海関が竹縄親方に「来場所のことなんですがもらえるならくれませんか? ダメなら20万は返してもらいたいです」と送っていた。(共同通信、2011.2.2)

(一部、固有名詞をアルファベットなどに置き換えています)

<平成22年3月17日>

▽春日錦(現竹縄親方)から恵那司へ「俺は誰に借りているかな? 貸しは光龍と山本山だけだよね。豊(豊桜)さんと天狼(若天狼)と白(白乃波)だよね。海鵬(現谷川親方)は消えてるかな?」

▽春日錦から恵那司へ「とりあえず借りていて無理なら星で返すことになっているよ!!白力士とは当たらないかもしれないね。明日の明日の海鵬と光龍は消しておいた方が良いよね」

▽恵那司から千代白鵬へ「相撲の内容はどんな感じですか」

▽春日錦から恵那司へ「聞いてくれる」

<3月22日>

▽恵那司から千代白鵬へ「今日はまっすぐ思いっきりあたっていきます。宜しくお願いします」(千代白鵬は寄り切りで臥牙丸に負け)

<3月25日>

▽清瀬海から春日錦へ「大丈夫みたいです」

▽春日錦から清瀬海へ「有り難う、助かりました!ではゆっくりと休んでね!お休み。」

<4月8日>

▽恵那司から千代白鵬へ「知ってるけど」

▽千代白鵬から恵那司へ「了解。」

<4月9日>

▽恵那司から千代白鵬へ「五万もないのかな」

▽千代白鵬から恵那司へ「4万しかもってないっす」

<4月11日>

▽春日錦から清瀬海へ「ステーキ屋の・・の手前の橋を渡った所で待っているよ!」

<4月16日>

▽春日錦から清瀬海へ「お疲れ様!!この前は有り難う、光龍に一つ貸しているので後20で利権を譲りますがどうですか?」

▽春日錦から清瀬海へ「了解です!!ではまた」

<5月7日>

▽恵那司から春日錦へ「霜(霜鳳)は厳しいみたいです〜 誰か十両上位と当たったら光龍にこけさせて移行させないといけないですね〜」

<5月10日>

▽清瀬海から春日錦へ「立ち合いは強く当たって流れでお願いします」

▽春日錦から清瀬海へ「了解致しました!!では流れで少し踏ん張るよ。」(翌3日目、春日錦は上手投げで清瀬海に負け)

<5月11日>

▽恵那司から春日錦へ「おはようございます・昨日は良かったですね・今日はどうなってるんですか」

▽春日錦から恵那司へ「今日はコケだよ・昨日お願いされたからとりあえずコケます。」

<5月12日>

 恵那司→春日錦
 昨日は良かったですね。今日はどうなってるんですか

▽恵那司から春日錦へ「お疲れ様です・今日の内容は物言い付けようがないですね〜 南海(旭南海)さんが貸してるのを豊関(豊桜)に移行してもらいたいみたいで、豊関と当たったらコケてもらいたいみたいです。そして新たに南海、天狼、錦関(春日錦)と3人で回したいみたいです。明日、若天狼に勝って○、南海と当たったら負ける●感じです〜 どうでしょうか??」

▽春日錦から恵那司へ「それでも良いよ。宜しくお願いします」

▽恵那司から春日錦へ「相手に叩きはなしで、突っ張るだけ突っ張らして胸で受け止めて最終的には右をさして寄り切りかすくい投げ辺りがベストだと思いますよ〜」(翌5日目、春日錦が若天狼に勝ち)

<5月14日>

▽春日錦から恵那司へ今日の清(清瀬海)と豊(豊桜)さんのはどんな感じになっているかな? もし何もないなら清に貸してある分で消しても良いよね」(豊桜が清瀬海に勝ち)

▽春日錦から恵那司へ「俺も場所後には最低50は作らないとマジでヤバイし」

▽春日錦から恵那司へ「了解致しました」

▽千代白鵬から恵那司へ「C力士はA力士に持ってるんですか」

▽千代白鵬から恵那司へ「A力士は借りてるとこはないんですか」

清瀬海→春日錦

来場所のことなんですがもらえるならくれませんか? ダメなら20万返してもらいたいです
▽清瀬海から春日錦へ「話してみます」
▽清瀬海から春日錦へ「わかりました」

春日錦→清瀬海
▽春日錦から清瀬海へ「悪いね。でも勝ちたいなら別に後でも良いよ!無理では無いし」
▽春日錦から清瀬海へ「了解致しました、宜しく!!」

了解です! もう少しだけ待って、場所後に70万の支払いがあるから、それの精算が終わったら連絡するね

春日錦→清瀬海

じゃ直接返しで良いかな?

清瀬海→春日錦

約束さえ守っていただけるなら直接でお願いします。残りの20は出島関の引退相撲で渡します


恵那司→千代白鵬

お疲れさまでした。翔天狼とはガチ



春日錦→恵那司

悪いけど全然所持金がないから今日の昼に少し立て替えてもらって俺の口座に入れてもらえるかな。三菱東京UFJ(支店名と口座番号)よろしくお願いします

恵那司→春日錦

光龍のが来れば50あるんですが、来る気配がないので、今のところは25は確実に入ります〜 全然足らないですね




<5月17日>

▽千代白鵬から恵那司へ「今日の事で市原(清瀬海)がなんか言ってるから。」

<5月22日>

▽恵那司から春日錦へ「おはようございます〜少し考えてみます」

<5月23日>

▽清瀬海から春日錦へ「お疲れ様です。来場所の事なんですがもらえるならくれませんか?ダメなら20万は返してもらいたいです」

▽春日錦から清瀬海へ「了解です!もう少しだけ待って、場所後に70万の支払いがあるから、それの清算が終わったら連絡するね。」


<5月25日>

▽春日錦から清瀬海へ「じゃ直接返してで良いかな?」

▽清瀬海から春日錦へ「約束さえ守っていただけるなら直接でお願いします。残りの20は・・力士の引退相撲で渡します。」

▽春日錦から清瀬海へ「了解致しました」

▽恵那司から春日錦へ「すいません。こちらこそ宜しくお願いします。」

<5月27日>

▽恵那司から千代白鵬へ「お疲れ様でした。I力士とはガチ」

<6月1日>

▽恵那司から春日錦へ「おはようございます〜A力士のが来れば50あるんですが、来る気配がないので、今のところは25は確実に入ります〜全然足らないですね」

▽春日錦から恵那司へ「悪いけど全然所持金が無いから今日の昼に少し立て替えてもらって俺の口座に入れてもらえるかな・・・銀行・・・支店・・・(口座番号)宜しくお願いします」

<6月8日>

▽春日錦から清瀬海へ「了解です!!」

<6月19日>

▽春日錦から清瀬海へ「お疲れ様!!・・さんには皆が被害にあって大変な事態になっているよね、清瀬海も被害者じゃ無いの?」(NHK、2011.2.2)


 週刊現代があれだけ大々的なキャンペーンを張り、宮城野親方の録音テープという決定的な証拠を出したにも関わらず裁判で負けてしまった大相撲の八百長疑惑がついに白日の下に晒されました。

 証拠となったメールは警視庁が野球賭博事件の捜査で押収した携帯電話から復元されたというこれ以上ないほど完璧なもの。警察発表で民事訴訟を起こされることもなくなった各マスコミは日本相撲協会を総攻撃し、放駒理事長を吊るし上げていました。

 たくさん集めた記事のなかでもやはり特筆すべきはNHK。実際のメールを公開した上に、『ニュース7』ではメールと取組のVTRを照らし合わせて検証していました(下記参照)。そこまでやるかというほど完膚なきまでの叩きっぷりを見るに付け、一連の不祥事によって迷惑を蒙り続けたNHK幹部の怒りを感じます。大相撲中継も今後どうなるか分かりません。

 長年囁かれ続けた大相撲の八百長疑惑。今回のメールによって疑惑ではなく実際に行われていることがはっきりしました。相撲協会も名前が出た力士もWWEみたいにとっととアングル認めればいいのに。往生際悪いよ。


 大相撲の八百長疑惑で、公益法人であることに批判が上がっている日本相撲協会。平成25年の新制度移行後には、大幅な税制優遇措置を受けられる「公益財団法人」という新しい公益法人に衣替えすることを目指しているが、それも認められるかは微妙になってきた。公益法人ではなく、株式会社となった場合は、相撲部屋に課される税金は軽減されないだけでなく、両国国技館まで手放さなければならない規定となっており、協会の存在自体が不可能になる。

 現在の相撲協会は法律上、「特例民法法人」という位置づけ。年6回の本場所の入場料やテレビ放映権料、巡業などの収入については、基本税率30%の法人税を22%に減免される優遇措置を受けている。

 新制度で「公益財団法人」という新しい公益法人に移行できれば、こうした事業のほとんどが非課税となる見通し。現在は親方の個人資産となっている相撲部屋についても、協会直轄の財産と認められれば、税が軽減される。

 もし、移行が認められなければ、「一般財団法人」として存続は可能だが、こうした優遇措置はほとんど得られないことになる。

 文科省では「公益ではないのだから、株式会社にすればいい」という意見もあるが、その場合、規定では平成21年度の決算報告書で39億円に上る預金などの財産や両国国技館の土地、建物も手放さなければならず、実質的に協会の存続は不可能になる。

 高木義明文部科学相は3日、首相官邸を訪れ、大相撲の八百長メール問題への対応について、枝野幸男官房長官と協議した。高木氏は会談後、記者団に対し、「深刻な問題で厳しく対応しなければならないと報告した。とにかく日本相撲協会が組織としてきちんと全容解明ができるかどうかだ」と述べ、協会がまとめる報告内容を見極めたうえで、公益法人の認定取り消しも含めて対応するとの考えを示した。




 大相撲の八百長を巡っては、元小結・板井の板井圭介氏が00年に日本外国特派員協会で行った講演で「(元横綱で当時関脇の)曙に40万円で僕の方から星を売りにいった。故意に負けた」と発言し、八百長の存在を主張した。これに対し、日本相撲協会は板井氏に抗議文を送った。

 また、07年に「週刊現代」で「力士間で八百長の合意や金銭授受があり、協会が放置、黙認していた」と八百長疑惑が報じられた。当時の横綱・朝青龍関ら力士30人と協会は記事で名誉を傷付けられたとして、発行元の講談社や筆者に計約6億1600万円の賠償などを求めて東京地裁に提訴。1審は原告勝訴。2審の東京高裁も「真実と認めるに足る証拠はない」として、計3960万円の賠償を命じた。最高裁は講談社側の上告を棄却し、高裁判決が確定した。

 さらに07年の「週刊現代」では、当時の宮城野親方(元十両・金親、現熊ケ谷親方)が06年名古屋場所で白鵬関が朝青龍関に勝った取組は八百長だと知人女性に告白したと報じられた。親方は協会の聴取に発言を否定したものの降格処分を受けた。この記事を巡る損害賠償訴訟も協会勝訴が確定している。(毎日新聞2011.2.2)




(私論.私見)