IOC論

 (最新見直し2012.8.6日)

 ワシントン・ポスト紙名物コラムニストの警告「IOC貴族に日本は搾取されている

 ジェンキンス氏は、これまで12冊の書籍を執筆し、AP通信により、トップスポーツコラムニストに4度選ばれるなど、数々の賞も受賞したスポーツジャーナリズム界の重鎮的存在だ。そのジェンキンス氏がワシントン・ポストでバッハ会長について表現した言葉「ぼったくり男爵」が日本で流布している。ジェンキンス氏は、5月5日付のワシントン・ポストのコラム「日本は損切りして、略奪するつもりならよそでやれとIOCに言うべきだ」で、開催都市とIOC(国際オリンピック委員会)の関係性をこう書いた。
 〈ぼったくり男爵、トーマス・バッハ会長とそのお供たちには、開催都市を破滅させるという悪癖がある。まるで王侯貴族が旅行先の地方で小麦の束を食べ尽くし、切り株だけ残していくかのようだ〉。

 IOCは東京だけではなく、ロンドンやリオ・デジャネイロでもやりたい放題。開催都市にオリンピックにかかる莫大なコストのほとんどすべてを負担させる一方、オリンピックから得られる利益の大半をむさぼっている。オリンピックコストをさらに膨らませるコストもある。それは「ぼったくり男爵」やそのお供たちをおもてなしするためのコストである。日本のメディアによると、IOCの幹部たちは5つ星ホテルに宿泊する。その中の一つ、「The Okura Tokyo」には一泊300万円という日本で最も高いスイートルームがある。開催都市契約で彼らにチャージされるのは一泊最大400ドル。差額は東京五輪組織委員会が負担する。これまでも彼らは、オリンピックを開催した都市で最高級ホテルに宿泊し、差額は開催都市に負担させてきた。IOCの役員たちは、文字通り現代の王侯貴族になっている。

 東京五輪を中止した場合、莫大な賠償金が生じるという問題が懸念されているが、もし、中止にしたとして彼らは東京を訴えることができるか? 国際警察や軍隊を日本に送り込んで開催を強制するだろうか? そんなことが起きるはずがない。もし、そんなことをすればIOCの評判はガタ落ちになる。今後、開催都市を探すのにいっそう苦労することになる。最終的な開催中止を決められるのはIOCだけだという指摘もある、私はそうは思わない。新型コロナウイルスの感染が拡大する緊迫した状況の中で、日本が五輪は実行不可能だと判断したとして、IOCはそれに対していったい何が言える? バッハや調整委員長のコーツ氏が自分たちに決定権があると主張し、開催しなければならないと訴えているが、彼らは日本の空気が読めていない。開催するか否かは、あくまでも日本の人々がすべきである。バッハも含め、アウトサイダーは日本の判断を尊重しなければならない。では、バッハやコーツ氏はどうすべきなのか? 彼らは本来、日本政府や組織委員会にこういうべきなのです。「日本は今、新型コロナウイルスの感染が拡大し、危機的な状況にありますが、我々IOCに何ができますか? 日本が五輪を中止したいことは理解できます。中止するにしても延期するにしても、一緒に解決法を模索して行きましょう。日本を助けさせて下さい」。それなのに、彼らには、日本を助けようという姿勢が微塵も感じられない。それどころか、日本に命令し、日本に重荷を背負わせようとする高圧的な態度を取っている。
 
 彼らの莫大な利益が絡んでいる。IOCの利益の9割以上は米国で五輪放映権を持つNBCなどからの放映権料と各社からのスポンサー料で、この利益を失いたくない。オリンピックには非論理的ともいえる莫大なコストもかかっている。そもそも、私は、IOCがオリンピックにかかるコストについて、開催都市を騙していることに憤りを覚えている。東京やこれからオリンピックを予定しているロサンゼルスの人々にこのことを理解して欲しい。開催都市が負担するコストは、トンネルや巨大ダムを工事するのにかかるコストをはるかに超えるため、開催後には、莫大な負債が残ることを知っておいて欲しい。




(私論.私見)