れんだいこの暴対法論

 更新日/2020(平成31→5.1栄和改元/栄和2).8.23日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 刑法犯罪に対して没思想的理論的に免責条項を適用し、重罪を犯しても不相当に軽罰される方向での弁護活動が目立ってきている。死刑廃止運動がこれに連動しているように見受けられる。今、現代的罪刑法定主義が陥ったこの仕掛けが問題になりつつある。れんだいこは、現代刑法の免責規定に対して思想的理論的考察せねばならないと思うようになった。この問題の格好教材として「山口県光市母子殺人事件」が発生した。以下、これを検証しつつ「罪刑法定主義の新視点考」を考察する。

 2006.6.21日、2007.9.21日再編集 れんだいこ拝


 鈴木 智彦 「若い衆を撃ち殺し、自分の頭を撃ち抜いて死んだヤクザが残した最後の一言」その他参照。

 1991年、暴力団対策法が制定された。その直前の聴聞会にかなりのヤクザ団体が出席し「我々は暴力団ではない。任俠団体だ」と主張した。しかし、暴力団排除条例制定の流れは止まらなかった。以来、暴力団は反社会勢力と呼ばれるようになり、国家をあげてその弱体化・壊滅を目指した取り締まりが行われている。暴対法施行以降、「お前らに人権はない」が罷り通るようになり、ヤクザは一般的な生活を送るのも困難になった。った。暴力団という職業は斜陽産業になった。

 暴力団を辞め5年経てば、建前上、一般人と同じ権利を得られるのだから、これが差別にあたると考えるのは妥当ではない。  

 2007年4月20日、神奈川県相模原市内の路上で極東会系組員が殺人事件を起こし、自宅である町田市の都営アパートに立て籠もった事件が発生した。その暴力団員に対し住宅の明け渡しを要求する事例が相次いだ。このとき問題となったのが、日本国憲法第14条の第1項だった。

 「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」 。

 暴力団という特定の団体に所属しているだけで公営住宅を追い出されるのは、憲法14条に違反しているとの主張だ。これを巡って、明け渡しに応じない組員に対し、広島県広島市側が訴訟を起こし、2008年10月21日、広島地裁は組員に明け渡しを命じた。その際、憲法14条問題に触れ次のように判決している。

 「地方自治法の該当条項に照らせば、市営住宅の適正な供給とその入居者ないし、周辺住民の生活の安全と平穏の確保という観点から、暴力団であることを理由として市営住宅の供給を拒絶することは相当であって不合理な差別であるということはできない」。

 この判例は広く全国のスタンダードとなり「広島市営住宅判例」と呼ばれている。暴力団側の反訴は今のところ皆無である。

 憲法第25条問題もある。暴力団排除条例が、あくまで条例として各地で制定されている理由がわかる。

 1982年7月7日の最高裁判例が基準とされている。暴力団であっても最低限度の生存権はあるので、公営住宅からの追い出しは、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という部分に抵触するのではないか?という意見だ。判決は以下のようになっている。

 「憲法第二十五条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き、裁判所が審理判断するのに適しない事柄であると言わなければならない」 。


 こうした社会情勢の中、組員の数が激減している。かっての組員が普段は居酒屋のマスターをしていたり、タクシーの運転手をしながらヤクザの構成員となっている兼業暴力団員が年々増えている。組員不足を補うため不良少年たちがアルバイトとなるケースも多い。警察発表の半分以下のところまで落ち込みつつある。
一方で、暴力団は急速な勢いで海外に進出している。フィリピン、マカオ、中国、インドネシア、マレーシアにそれなりの“支部らしきもの”ができている。海外支部の名刺を作っている団体もある。中国には暴力団の一行を専門に扱う旅行社すらある。政府関係者に対する賄賂の仲介も行っている。マニラには日本の暴力団が国内のような縄張りを作っている。インドネシアでは入国も税関もフリーパスで、空港から白バイがサイレンを鳴らしながらホテルまで先導している。日本から締め出されたヤクザが海外に新天地を見つけつつある。


 「生死を懸けた闘争をくぐり抜けてきた誇りはそれぞれにある」。「我々は悪だが必要悪だ。それにヤクザには一定のモラルとルールがある」。








(私論.私見)