ワクチン接種勧奨論史

 更新日/2020(平成31→5.1栄和改元/栄和2).6.15日

 (れんだいこのショートメッセージ)


 2003.6.15日 れんだいこ拝


 2009年衆院選〜2013年参院選では「公費接種」、「定期接種化」、「制度のさらなる充実」を掲げる  共産党は当初からHPVワクチンに反対していたわけではない。むしろ、最初にHPVワクチンについて触れた「2009年8月の衆院選公約」では、以下のように公費助成を求めている。
 子宮頸がんはウィルス感染を原因とする病気であり、欧米諸国では、ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチンの早期接種による予防がおこなわれています。日本でも「HPVワクチン」の開発をすすめ、接種への公費助成を実現します。(「2009年総選挙分野別政策 社会保障」より)
 2010年よりHPVワクチンは公費助成が始まるが、「2012年12月の衆院選公約」では、公費で接種する定期接種化を目指すと掲げてもいる。
 細菌性髄膜炎の予防のための「ヒブワクチン」「小児用肺炎球菌ワクチン」や、「子宮頸がんワクチン」は、国による公費接種事業が実施されています(事業費の9割を公費負担、国庫負担は2分の1)。国は今年度で事業を終わらせ、来年4月からの無料・定期接種化をめざすとしていますが、現在と同水準の補助が継続される保証がありません。制度の後退を許さず、国の予算による無料・定期接種化をめざします。(「社会保障(2012年総選挙各分野政策)」より)
 2013年4月にはHPVワクチンは定期接種化された。しかし、その約2ヶ月後の同年6月には、接種後の体調不良を訴える声が相次ぎ、積極的勧奨が中止された。その直後に実施された「2013年7月の参院選の公約」では、「接種による副反応の検証など、安全性の確保・向上を進めながら、保護者の負担軽減・無料化など、制度のさらなる充実をめざします」と、まだ肯定的な論調だった。
 保護者や住民の長年の運動がみのり、細菌性髄膜炎の予防のための「ヒブワクチン」、「小児用肺炎球菌ワクチン」、「子宮頸がんワクチン」の公費接種事業が実現しました。接種による副反応の検証など、安全性の確保・向上を進めながら、保護者の負担軽減・無料化など、制度のさらなる充実をめざします。(「医療(2013年参議院選挙各分野政策)」より)
 2014年衆院選から「接種勧奨」再開に反対

 ところが、この姿勢が変わったのが、「2014年12月の衆院選公約」からだ。「副作用の頻度が高く、重い症例もあることが問題となっています」とした上で、「積極的勧奨は再開せず」という言葉が初めて盛り込まれた。
 子宮頸がん予防が重要課題となっていますが、この間、公費接種の対象となったワクチンについては、副作用の頻度が高く、重い症例もあることが問題となっています。接種勧奨は再開せず、疫学調査もふくめた副反応被害の徹底した検証をすすめます。(エボラ、デング熱、新型インフルエンザ、感染症対策(2014年総選挙各分野政策))より
 「2016年7月の参院選公約」、「2017年の衆院選の公約」でも同じ文言で「積極的勧奨は再開せず」と反対の姿勢を示した。
 「2019年参院選の公約」でも、「HPVワクチンが定期接種であることの情報提供を行ないます」「最新の知見を国民にしらせ、接種の在り方について議論をすすめます」としたものの、「接種勧奨は再開せず」と、積極的な勧奨再開には反対する姿勢を取り続けた。
 子宮頸がん予防が重要課題となっていますが、この間、公費接種の対象となったワクチンについては、副反応の訴えが相次ぎ、重い症例もあることが問題となっています。接種勧奨は再開せず、原因の徹底究明、被害者への補償・支援、情報提供など救済策をすすめます。自治体から、疾患への理解を促し、HPVワクチンが定期接種であることの情報提供を行ないます。ワクチンの有効性・安全性、国際社会の動向、疫学調査の結果など、最新の知見を国民にしらせ、接種の在り方について議論をすすめます。(医療:2019参院選・各分野の政策)
 この7年間、積極的勧奨に反対する姿勢を取り続けてきたことについて、党中央委の広報担当者はBuzzFeed Japan Medicalの取材に対し、こう理由を答える。
「定期接種化の実現後、副反応被害の訴えが相次ぎ、医学会や現場医師のなかからも接種のあり方の見直しを求める声が出てきました。それを受け、政府・厚生労働省が、希望者が接種をする場合の公費助成は継続しながら、積極的勧奨を一時中止する施策をとってきたのは、ご承知のとおりです」。
「そうした状況を踏まえ、党としても、HPVワクチンの接種への公費助成は継続しつつ、被害者救済と原因究明を優先して、拙速な積極的勧奨の再開は控えるべきであると発言し、その立場を、2014年衆議院選挙以後の、国政選挙の公約に盛り込むようになりました」。
 岩永直子「PVワクチン政策を公約に掲げてきた共産党 「接種勧奨は再開せず」から「希望するすべての人が接種」に変更した理由」。
 HPVワクチン政策を国政選挙の選挙公約に掲げ続けてきた共産党が、7年間書き続けてきた「接種勧奨を再開せず」という文言を削除し、接種に前向きな姿勢に変わりました。その理由は? 2009年の衆院選以来、HPVワクチン政策に関する選挙公約を出し続けてきた日本共産党が、ここ7年間の積極的勧奨の再開に反対する姿勢を一転し、「今回の衆院選挙公約」では接種に前向きな内容に変更した。積極的勧奨の中止で接種のチャンスを逃した人への救済措置なども盛り込んでいる。BuzzFeed Japan Medicalの取材に対し、日本共産党中央委員会は「医学会・医療界の一致した動きや、そこで示されている知見等を総合的に勘案し、今回の選挙公約では『接種勧奨は再開せず』という記述はやめることにしました」としている。そして、主要各党の動向はどうか。

 ※子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐワクチン。日本では2013年4月、小学校6年から高校1年の女子を対象に公費でうてる定期接種となったが、接種後に体調不良を訴える声が相次ぎ、厚労省は同年6月に積極的勧奨を中止。接種率が激減した。日本では子宮頸がんに毎年約1万人がかかり、約3000人が死亡している。

 2021年衆院選の選挙公約で一転 「接種を希望するすべての人が安全・迅速に接種を」
 今回、HPVワクチンについて公約が書き換えられたのは、2021総選挙各分野政策の中の「コロナ・感染症対策」。2014年12月の衆院選公約以来、書き続けてきた「接種勧奨を再開せず」という文言を、7年ぶりに削除した。そして今回は、「子宮頸がんなど、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染に由来するがんの予防を進めます」から始まる文章で、「この間、副反応被害の訴えが相次いだことで積極的勧奨が中止されていたHPVワクチンについては医学会・医師団体の要望・提言も受け、勧奨再開に向けた検討が進められています」と紹介。「科学的知見に基づいて、HPVワクチンのメリット・デメリットに係る情報提供を行いながら、接種を希望するすべての人が、安全・迅速に接種を受けられる環境の整備を求めます」と、接種に前向きな言葉が盛り込まれた。副反応被害者に対しては、補償や支援、治療体制の整備や原因究明の必要性に言及した上で、「勧奨中止によって接種の機会を逸し、追加接種を希望している人への救済措置なども、検討されるべきです」と、接種の機会を逃した人へ公費で再チャンスを与えるキャッチアップ接種の必要性も盛り込まれた。
 子宮頸がんなど、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染に由来する、がんの予防を進めます。この間、副反応被害の訴えが相次いだことで積極的勧奨が中止されていたHPVワクチンについては医学会・医師団体の要望・提言も受け、勧奨再開に向けた検討が進められています。科学的知見に基づいて、HPVワクチンのメリット・デメリットに係る情報提供を行いながら、接種を希望するすべての人が、安全・迅速に接種を受けられる環境の整備を求めます。引き続き、副反応被害者に対する補償と支援、治療体制の整備、情報提供などの救済策を進め、副反応の原因究明・調査を行います。接種の必要回数(現行3回)の見直しや、勧奨中止によって接種の機会を逸し、追加接種を希望している人への救済措置なども、検討されるべきです。(コロナ・感染症対策(2021総選挙/各分野政策)より)
 再び、接種に前向きな公約を掲げた理由は?

 今回、7年間の態度を一転して「接種勧奨を再開せず」という文言を削除し、希望するすべての人への接種や、うち逃した人への接種の支援まで盛り込んだ理由について、日本共産党はこう回答する。
「現在、HPVワクチン接種の積極的勧奨については、日本小児科学会、日本産科婦人科学会、日本感染症学会などの医学会・医師団体が『早期再開』を求める要望を出し、厚労省の専門部会で『再開を妨げられる要素はない』ことが確認される状況となっています」。
「そうした、医学会・医療界の一致した動きや、そこで示されている知見等を総合的に勘案し、今回の選挙公約では『接種勧奨は再開せず』という記述はやめることにしました」。

 ただ、「HPVワクチンの定期接種を継続し、接種を希望する人は公費で接種を受けられるようにするという点は、従前からの私たちの立場です」と強調。「『科学的知見に基づいて、ワクチンのメリット・デメリットに係る情報提供を行いながら、接種を希望するすべての人が安全・迅速に接種を受けられる環境の整備を進めます』という部分は、その立場を繰り返したものです」と説明した。また、積極的勧奨が中止されてきたこの8年以上の間、お知らせが届かずに接種の機会を逃した人についての救済策を盛り込んだ理由についてはこう回答した。
「『接種の機会を逸した人』に対する救済措置の検討も、希望をする人はすべて公費で接種を受けられるようにする、という従前からの立場に基づき、当事者・保護者からメール等で寄せられてきた要望を踏まえ、今回、盛り込みました」。

 そして今回、現在は3回接種で行われている回数の見直しも掲げている。
 「希望する女子児童にHPVワクチンの接種を行っている現場の医師から、諸外国では『2回接種』を採用している国が少なくないこと、接種を『2回』にして被接種者の負担を減らすことが、副反応のリスクを低減するうえでも有効であること――などの指摘を受け、あわせて、盛り込みました」。

 さらに、副反応被害者に対する「治療体制の整備」についても新たに盛り込んだ理由については、こう説明している。
 「副反応被害を訴える人たちが、症状を理解されずに『詐病』扱いされるなど、治療を受けられていない現実があるとの指摘を受けとめ、今回の公約に追加しました」。
 日本のHPVワクチン政策、どう振り返る?

 日本では副反応疑いをセンセーショナルに伝える報道が続き、積極的勧奨が8年以上も中止されてきたことで、他国で安全に接種されているHPVワクチンが、8年以上も実質中止状態に置かれてきた。この間、接種を逃して将来子宮頸がんのリスクを抱えることになった女性も多いと推定されるが、積極的勧奨の再開に長年反対してきた共産党は、日本のHPVワクチンの政策についてどのように振り返るのだろうか?
 「2013年時点で、積極勧奨を一時中止とした判断は妥当であったと考えますが、その後のHPVワクチンに対する行政の対応や、議論の進められ方の当否については、科学的な知見に基づく検証が求められると考えます」。
 「積極的勧奨の中止が、わが国における子宮頸がんの発症リスクにどれだけ影響を与えたかについても、国内外の知見・データによる全面的な検証と、それを踏まえた対応策の推進が必要になると考えます」。
 「今回の公約にも盛り込んだ、接種の機会を逸して追加接種を希望する人に対する救済策の検討を含め、子宮頸がん予防の強化に向けた措置を求めていきます」。

 他の主要政党は公約で言及なし

 今回の選挙で、自民党、立憲民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党、社民党、れいわ新選組ら他の主要政党はHPVワクチンに関する政策を公約には入れていない。HPVワクチンをめぐっては10月1日、厚労省の副反応検討部会で積極的勧奨再開の方向性が確認された。





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