文節仕分け文「魏志倭人伝」(三国史.魏書.東夷伝.倭人の条) |
(最新見直し2009.8.29日)
(れんだいこのショートメッセージ) |
原文は、句読点もなく、章や節などに分けられていない。意訳では、全体の構文をつかみ易くする爲、章や節などに分け、見出しをつけた。 |
【倭国俯瞰】 | ||
1―@ | 倭の方位、位置関係 | 倭人は、(朝鮮の)帯方(郡)の東南の大海の中に在り、 |
1―A | 倭の地勢 | 山島に依りて国邑を為している。 |
1―B | 倭の歴史 | 旧は百余国から成り立っていた。 |
1―C | 倭の中国との外交史 |
漢の時代の頃、朝見する者有ったが、 |
1―D | 倭の中国との現代史 | 今、使訳通ずる所は三十国である。 |
【郡から狗邪韓国】 | ||
2―@ | 行程 | 郡より倭に至るには、 |
2―A | 経由 | 海岸に循ひて水行し、韓国(南鮮の三韓)を歴て |
2―B | 方位 | あるいは南へあるいは東へ折れながら、 |
2―C | 國名 | その北岸狗邪韓国に到る。 |
2―D | 距離 | この距離は七千余里である。 |
【狗邪韓国から對島国】 | ||
3―@ | 行程 | 始めて一つの海を渡ること |
3―A | 距離 | 千余里で |
3―B | 國名 | 對島国に至る。 |
3―C | 官吏 | その大官を卑狗(彦)と曰い、副を卑奴母離(日の守、ひぬもり.ひのもり)と曰う。 |
3―D | 地理、地勢 | 居る所は絶島で、 |
3―E | 面積 | 方四百余里可りからなる。 |
3―F | 自然 | 土地は山険しく、深林多く、道路は禽や鹿の径の如し。 |
3―G | 戸数 | 千余戸有る。 |
3―H | 産業 | 良田はなく、海の物を食べて生活し、船に乗って南北に市糴す。 |
【對島国から一大国】 | ||
4―@ | 方位 | 又、南へ |
4―A | 経由 | 瀚海と呼ばれる一つの海を渡ること |
4―B | 距離 | 千余里にして、 |
4―C | 國名 | 一大国に至る。 |
4―D | 官吏 | 官を亦卑狗(彦)と曰い、副を卑奴母離(日の守)と曰う。 |
4―E | 面積 | 方三百里可りからなる。 |
4―F | 自然 | 竹木叢林多く、 |
4―G | 戸数 | 三千許りの家有る。 |
4―H | 産業 | 田有り、食うに足らずということさらさらなし。亦南北に市糴す。 |
【一大国から末盧国】 | ||
5―@ | 方位 | 又、 |
5―A | 経由 | 一つの海を渡ること |
5―B | 距離 | 千余里にして、 |
5―C | 國名 | 末盧国に至る。 |
5―D | 戸数 | 四千余戸有る。 |
5―E | 地理、地勢 | 山海の水ぎわに居る。 |
5―F | 自然 | 草木が茂盛し、行くに前の人が見えず。 |
5―G | 産業 | 人々は魚や鰒を捕らえるのがうまい。水の深い浅いなく、皆沈没して之を取る。 |
【末盧国から伊都国】 | ||
6―@ | 方位 | 東南へ |
6―A | 経由 | 陸行すること |
6―B | 距離 | 五百里にして、 |
6―C | 國名 | 伊都国に到る。 |
6―D | 官吏 | 官を爾支と曰う。副は泄謨觚.柄渠觚と曰う。 |
6―E | 地理、地勢 | |
6―F | 戸数 |
千余戸有る。 |
6―G | 政体 | 世々王有るも、皆女王国に統属される。 |
6―H | 外交 | 郡使が往来するとき常に駐まる所である。 |
【伊都国から奴国】 | ||
7―@ | 方位 | 東南へ |
7―A | 國名 | 奴国に至る |
7―B | 距離 | 百里。 |
7―C | 官吏 | 官を咒馬觚と曰い、副を卑奴母離(日の守)と曰う。 |
7―D | 戸数 | 二万余戸有る。 |
【奴国から不弥国】 | ||
8―@ | 方位 | 東へ行くと |
8―A | 國名 | 不弥国に至る |
8―B | 距離 | 百里 |
8―C | 官吏 | 官を多模と曰い、副を卑奴母離(日の守)と曰う。 |
8―D | 戸数 | 千余家有る。 |
【不弥国から投馬国】 | ||
9―@ | 方位 | 南へ |
9―A | 國名 | 投馬国へ至る |
9―B | 距離 | 水行二十日。 |
9―C | 官吏 | 官を弥弥と曰い、副を弥弥那利と曰う。 |
9―D | 戸数 | 五万余戸ばかり有る。 |
【投馬国から邪馬壹国】 | ||
10―@ | 方位 | 南へ |
10―A | 國名 | 邪馬壹国に至る。 |
10―B | 首府 | 女王の都する所である。 |
10―B | 距離 | 水行十日、陸行一月。 |
10―C | 官吏 |
官を伊支馬(いしま)と云い、 次を弥馬升(みましょう みまかくし)と云い、次は弥馬獲支と云い、次を奴佳て(ぬかて)と云う。 |
10―D | 戸数 |
七万余戸ばかりからなる。 |
11 | 女王国より以北は、其の戸数.道里を、略載することができるが、其の余の旁国は遠絶で、詳しくは分からない。 |
次に斯馬国有り、 (しま國) | |
次に巳百支国有り、 (しおき、きはくき、きひやつき、いはき国) | |
次に伊邪国有り、 (いや国) | |
次に都支国有り、 (とき、たき国) | |
次に彌奴国有り、 (みな国) | |
次に好古都国有り、 (こうこと、ここと、こかた国) | |
次に不呼国有り、 (ふと、ふこ国) | |
次に妲奴国有り、 (そな国) | |
次に對蘇国有り、 (つそ、たいそ国) | |
次に蘇奴国有り、 (そな国) | |
次に呼邑国有り、 (こお、こゆう国) | |
次に華奴蘇奴国有り、(かなそな国) | |
次に鬼国有り、 (き国) | |
次に為吾国有り、 (いご国) | |
次に鬼奴国有り、 (きな国) | |
次に邪馬国有り、 (やま国) | |
次に躬臣国有り、 (くし、くじ、くしん、きゅうしん国) | |
次に巴利国有り、 (はり国) | |
次に支惟国有り、 (しい、きい国) | |
次に鳥奴国有り、 (うな、あな国) | |
次に奴国有り、 (な国) | |
これ女王の境界の尽きた所である。 |
方位 | その南に | |
国名 | 狗奴国有り、 | |
政体 | 男子を王と為す。 | |
大官 | その官に狗古智卑狗有り。 | |
政権 | 女王に属さず。 |
経由 | 郡より | |
国名 | 女王国に至るには、 | |
距離 | 万二千余里となる。 |
風俗 |
男子は大小と無く、皆面と身に黥文す。古より以来、その使が中国に詣でるや、皆、自ら大夫と称す夏后少康の子は、かって會稽に封ぜられ、断髪文身し、以って蛟龍の害を避けた云う。今、倭の水人も、好く沈没して魚や蛤を捕り、文身し亦以って、大魚や水禽を厭ふと云う。後において単に飾りと為すこととなった。諸国の文身は各々異なり、或は左に、或は右に、或は大きく或は小さい。 |
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身分 | 貴卑に差有る。 | |
位置 | その道里を計ると、當に會稽の東治の東に当たっている。 | |
風俗 | その風俗は淫らでない。 | |
衣服 |
男子は皆露かいし、木綿を以って頭に招け、その衣は横幅、但結束し相い連ねており、略々縫うことなし。婦人は髪を折り曲げるように束ねており、衣は単被の如く作り、その中央を穿ち、頭を貫いて衣(き)ている。 |
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産業 | 禾や稲やちょまを種え、養蚕して緝績し、細紵やけん緜を紡ぎ出す。 | |
動物 | その地には牛.馬.虎.豹.羊.鵲なし。 | |
武器 |
兵は矛、.楯、.木弓を用いる。木弓は下が短く、上が長い。竹で作った矢、或いは鐡鏃、或は骨鏃を使う。有無する所はたん耳.朱崖と同じである。 |
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気候 | 倭の地は温暖で、 | |
食物 | 冬夏問わず生菜を食す。 | |
風俗 | 皆、徒跣(はだし)である。 | |
住居 |
家屋には室有り。父母兄弟の寝起き休息は、異なる處でなす。 |
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風俗 |
朱丹をその身体に塗る。中国で用いる粉の如きものなり。 |
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食法 | 食飲にはへん豆を用い、手食す。 | |
葬儀法 | 死には棺有るも槨なく、土で封じて塚を作る。始め、死するや喪を十余日停し、その時は肉を食わず、喪主哭泣し、他人は歌舞飲酒する。葬が已れば、家人はこぞって水中に詣り、澡浴す。練沐の如しである。 | |
霊法 | 海を渡って行来し中国に詣でるには、恒に一人の髪をくしけずらず、蝨を除かず、衣服は垢で汚れ、肉を食わず、婦人を近づけず、喪人の如くにさせる。これを名付けて持衰と為す。若し行く者吉善ならば、共に其の生口.財物をいつくしむ。 若し疾病有り、暴害に遭えば好きなように之れを殺す。其の持衰謹まずと謂へばなり。 | |
産物 | 真珠.青玉を出だす。其れ、山に丹有り。其れ、木には、ゆすらうめ.とち.くすのき.ぼけ.くぬぎ.か や.かし.こうぞ等が在る。其れ、竹には、ささ.やだけ.しゅろちく等がある。他に、しょうが.たちばな.さんしょう.みょうが等が有るも 、以って滋味と為す術を知らない。 | |
動物 | さる.黒っぽいきじ等も居るのが特徴である。 | |
占卦法 | 其れ、事を為す時、外交的な折衝の際には、習慣として、骨を灼いて卜し、以って吉凶を占う。先ず卜するところを告げる。其の辞は令の如し。龜法は火によるさけ目を視て兆を占う。 | |
集会風俗 | 其れ、會同坐起には、父子男女の別無し。人の性質は酒を嗜む。大人を敬する所作は、但、手を搏ち、以って跪拝に當てる。 | |
寿命 | 其れ、人は長生き。或は百年、或は八九十年。 | |
婚姻) | 其れ、國の俗は、大人は皆四五婦、下戸も或は二三婦。 | |
性質 | 婦人は淫らでなく、やきもちもやかず。 | |
法と処罰 |
盗まず、訴訟少なし其れ、法を犯せば、軽い者は其の妻子をなくし、重いものは其の門戸を滅ぼされ、宗族の貴卑に及ぶ。 |
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身分 |
各々差と序有り。相臣服するに足る。 |
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納税 | 租賦を収む。 | |
国富 | 国の邸閣(倉庫)有り。 | |
市場 | 国に市有り、有無を交易し、大倭にこれを監せしめる。 |
【統治】 | ||
女王国より以北には、特に一大率を置き検察す。諸国これを畏れ憚る。 | ||
伊都國で常治し、他の国でも置かれている刺史の如きものである。 | ||
王、使を遣わして京都.帯方郡.諸韓国に詣で、 | ||
及び郡の倭国に使するや、皆津に臨みて現われるを捜し、 |
||
文書を伝送し遺の物を賜ふ。 | ||
女王に詣でて、差錯することを得ず。 | ||
下戸、大人と道路で相遭えば、逡巡して草に入り、 | ||
辞を伝え事を説くときは、或はうずくまり或はひざまつき、両手は地に據り、之を恭敬と為す。 | ||
対応する声は噫と曰う。比するに然諾の如し。 |
【卑彌呼】 | ||
其の國、本亦男子を以って王と為す。 | ||
住こと七八十年、倭国乱れ、相攻伐す。 | ||
年を経て、すなわち共に一女子を立て王と為す。 | ||
名は卑彌呼と曰い、鬼道を事とし、衆を能く惑わす。 | ||
年已に長大なるも夫壻無し。 | ||
男弟有り佐けて國を治む。 | ||
王と為して以来、見た者少なし。 | ||
婢千人を以って自ら侍らす。 | ||
唯、男子一人有り、飲食を給し、出入りして辞を伝える。 | ||
居る處の宮室は樓観であり、城柵を厳かに設け、常に人有り兵を持って守衛す。 |
【その他諸国】 | |
女王国から東へ海を渡ること千余里、復國有り、皆倭種。 | |
又、侏儒國が有って、其の南に在り、人の長は三四尺で、女王国を去ること四千余里。 |
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又、裸國.黒齒國が有って、復其の東南に在り、船行一 年で至る可し。 |
倭地を参問するに、海中洲島の上に絶在し、或は絶え或は連なり、 |
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周旋五千余里可り。 |
【外交史その一】 | |
景初二年六月、倭の女王は大夫難升米等を遣わして郡に詣で、天子に詣でて朝獻することを求む。太守劉夏、吏を遣わして送って行き、京都に詣らしむ。 | |
その年十二月、詔書は倭の女王に報じて曰く、「卑彌呼を親魏倭王に制詔す。帯方太守劉夏、使を遣わして汝の大夫難升米と次使都市牛利を送り、汝が獻ずる所の男生口四人.女生口六人.班布二匹二丈を奉り、以って到る。 汝の在る所ははるかに遠きも、すなわち使を遣わし貢獻す。是れ汝の忠孝なり。我甚だ汝を哀れみ、今、汝を以て親魏倭王と為し、金印紫綬を假し、装封して帯方の大守に付し假授せしむ。汝、其れ種人を綏撫し、勉めて孝順を為せ。汝の來使難升米と牛利は遠くを渉り、道路勤勞す。今難升米を以って率善中郎将と為し、牛利を率善校尉と為し銀印青綬を假し、引見してねぎらい、遣還を賜う。今、こう地交龍錦五匹.こう地すう粟けい十張.せんこう五十匹、紺青五十匹を以って、汝が献ずる所の貢の直に答う。又、特に汝に紺地句文錦三匹.細班華けい五張.白絹五十匹. 金八兩.五尺刀二口.銅鏡百枚.真珠鉛丹各五十斤、皆装封し て難升米と牛利に付す。還り到らば録受し、以って汝の國中の人に悉く示すべし。国家が汝を哀れむを知らすことに使え。故に汝の好物を鄭重に賜うなり」と。 |
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正始元年、大守弓遵は建中校尉梯しゅん等を遣わし、詔書.印綬を奉りて倭国に詣で倭王に拝假し、並びに詔をも たらし、金帛.錦けい、刀.鏡、采物を賜う。倭王、使によりて上表し、恩詔を答謝す。 | |
その四年、倭王復た使大夫伊聲き.やく邪狗等八人を遣わし、生口.、倭錦、.こう青 .緜衣.、帛布、丹.木ふ、.短弓矢を上獻す。やく邪狗等、率善中郎将の印綬を壹つ拝す。 | |
其の六年、詔して倭の難升米に黄どうを賜い、郡に付して假綬す。 | |
其の八年、大守王き、官に到る。 |
【外交史その二】 | |
倭の女王卑弥呼、狗奴國の男王卑弥弓呼と、素より和せず。倭のさいしうえつ等を遣わし、郡に詣でて、相攻撃する状を説く。 |
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さいそうのえんし張政等を遣わし、因って詔書.黄幢をもたらし、難升米に拝假し、檄を為して之を告喩す。 |
【卑弥呼の塚】 | |
卑弥呼死す。大きな塚を作る。徑百余歩。徇葬者は奴婢百余人。 |
【卑弥呼の宗女壹與の登場】 | |
替わって男王を立てたが、國中服さず、こもごも相誅殺す。当時千余人を殺す。 |
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復た卑弥呼の宗女壹與、年十三才なるを立てて王と為す。 國中遂に定まる。政等、檄を以って壹與に告喩す。 |
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壹與、倭の大夫率善中郎将掖邪狗等二十人を遣わし、政等の還るを送り、因って臺に詣で、男女生口三十人を献上し、白珠五千孔.青大句珠二枚.異文雑錦二十匹を貢ぐ。 |
(私論.私見)