れんだいこ撰日本神話譚その6、海幸彦山幸彦神話考

 更新日/2019(平成31→5.1栄和改元).7.10日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 日本神話は、「天地創造譚(元始まり譚)」、「国土、諸神創生譚」、「高天原王朝、天照大神譚」、「国譲り譚」、「天孫降臨譚」に続いて「海幸山幸譚」を記す。ニニギの命とが結ばれ、海幸彦のホデリの命、中頃にホスセリの命、火勢の弱まる頃に山幸彦のホオリの命兄弟を生んだ。ホオリ(火遠理)の命又の名をアマツヒコホホデミ、その又子の鵜茸草茸不合の命(ウガヤフキアエズの命)、そしてその子の神倭伊波礼毘古の命(カンヤマトイワレ彦の命=神武天皇)の神話譚が遺されている。これを仮に「日本神話その6、海幸山幸譚」と命名する。これは2編より成る。

 2006.12.4日 れんだいこ拝 


【日本神話その6、海幸山幸譚その1、海幸彦山幸彦譚】
 「日本神話その6、海幸山幸譚その1、海幸彦山幸彦譚」。
 兄のホデリの命は釣りを生業としたので海幸彦と云われた。弟のホオリの命は狩りを生業としたので山幸彦と云われた。或る時、今日一日だけ道具をとりかえましょうという話しになり、海幸彦が狩りに、山幸彦が釣りに行くことになった。ところが、山幸彦は、大切な釣り針を魚に取られてしまった。海幸彦は怒り、釣り張りを返せと言い張った。山幸彦が大事な剣を壊してたくさんの釣り針をつくって供したが受け取ろうとせず、あの釣り針を返せと言い張った。

 山幸彦が海辺で悩んでいる時、シオツチの神がやってきて、小さなかご船つくり、ワタツミの神の宮殿へ行くよう示唆した。「その庭にある井戸のそばで待ちなさい、ワタツミの神の娘が現れて、良い方法を教えてくれるでせう」。山幸彦は教えられた通りに向った。井戸の傍に立つ桂の木の上で待った。はした女が水を汲みに来た時、井戸に高貴な若者が映った。ワタツミの神の娘豊玉姫に伝えられ、豊玉姫が現れて目と目を見つめ合わせると恋の虜になった。山幸彦は宮殿に招かれ、歓待された後、豊玉姫が妻として差し出された。山幸彦はこうして宮殿で暮らし始めた。

 いつしか3年の月日が流れた。或る日、釣り針の件を思い出し大きなため息を一つついた。豊玉姫がそれを聞きつけ、父のワタツミに相談した。ワタツミがため息の訳を問いただし、山幸彦が釣り針の経緯を話した。ワタツミの神は、海中の魚を集め、釣り針を飲み込んでいる魚の情報を集めた。タイが釣り針を飲み込んでいることが分かり、これを抜き取り、山幸彦に渡した。山幸彦は遂に帰ることになった。ワタツミの神は、釣り針の返し方の祝詞「貧(まず)チ、滅びチ、落薄(おとろえ)チ」を教え、兄がいじわるをした時の潮満つの青玉、謝った時の潮枯れの赤玉という二つの玉を渡した。

 山幸彦はワニの背に乗って帰った。ワタツミの神に教えられた通りに海幸彦に釣り針を渡した。ニセモノだと言い張ったが取り合わなかった。この後、海幸彦は田を高いところへ作っても低いところへ作っても実りが悪かった。山幸彦の方はいつも豊作だった。三年後、海幸彦が山幸彦を攻めてきた。山幸彦が潮満つの青球をかざすと海幸彦は水に溺れた。苦しくなって助けを求めてきた時、潮枯れの赤球をかざしたころ水が引いた。海幸彦は詫び、以降は護兵隼人として天の御子に仕えるようになった。
 シオツチの神=塩椎神。ワタツミの神=綿津見神。豊玉姫=豊玉比売。
(私論.私見)
 「海幸彦と山幸彦譚」は、天孫族の海幸彦山幸彦兄弟の仲違いを伝えている。これは、天孫族の内部対立を語っているものと思われる。山幸彦が、ワタツミの神の娘豊玉姫と結婚したことも伝えている。これは、天孫族がワタツミの神系と同盟関係に入ったことを伝えているのだと悟らせていただく。これが次の同盟となった。

【日本神話その6、海幸山幸譚その2、ウガヤフキアエズの命譚】
 「日本神話その6、海幸山幸譚その2、ウガヤフキアエズの命譚」。
 山幸彦が海の宮殿で結ばれたワタツミの神の娘豊玉姫がやって来て、「あなたの御子を宿している。天の神の子を海で生むことは出来ないのでやって参りました」と云う。海のなまざに産屋を建てかやぶきの小屋をつくった。豊玉姫は、山幸彦に、「異郷の人が出産するときには、すべて本の国の姿になってしまうので出産の姿をご覧にならないで下さい」と伝えて小屋に入った。山幸彦が禁を破って覗いたところ、大きなワニが赤ちゃんを産もうとして、腹ばいのままのたうち回っていた。その姿を見られた豊玉姫は恥じ、産殿に御子を残したまま海へ帰った。

 山幸彦は、歌で呼びかけた。
 「沖つ鳥 鴨着く島に 我がい寝し 妹は忘れじ 世のことごとに」。
 (沖のかもの寄り付くあのわだつみの島で、添い寝していた君を忘れられない。私の命のある限り)

 御子はウガヤフキアエズの命と名付けられた。豊玉姫は、我が子が不憫で堪らず、歌を添えて妹の玉ヨリ姫を育ての叔母として送ってきた。
 「赤玉は緒さえ光れど 白玉の 君が装し 貴くありけり」
 (赤玉は玉ばかりでなく、その緒(紐)まで光輝きますが、白玉のような君のお姿が一層貴く恋しく思われます)

 ウガヤフキアエズの命が玉依姫(タマヨリ姫)と結婚し、イツセノの命、イナヒの命、ミケヌの命、ワカミケヌの命の4人の子を生む。その末の子がカンヤマトイワレ彦命となり後の神武天皇と称されることになる。
 ウガヤフキアエズの命=鵜茸草茸不合の命、天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命。玉より姫=玉依昆賣。イツセの命=五瀬命。イナヒの命=稲氷命。ミケヌの命=御毛沼命。ワカミケヌの命=若御毛沼命、カンヤマトイワレ彦命=神倭伊波礼毘古の命、神武天皇。
(私論.私見)
 「ウガヤフキアエズの命譚」は、山幸彦が結婚したワタツミの神の娘豊玉姫の子供であるウガヤフキアエズの命が天孫族の皇統を継承した事を伝えているのだと悟らせていただく。





(私論.私見)