ホツマツタヱ2、ワのヒマキ(地の巻)27 |
(最新見直し2011.12.25日)
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ここで、「ホツマツタヱ2、ワのヒマキ(地の巻)27、御祖神船魂の文」を確認する。「ウィキペディアのホツマツタヱ」、「」、「タマヨリ姫に白羽の矢 神武天皇の誕生」その他を参照する。 2011.12.25日 れんだいこ拝 |
【ホツマツタヱ2、ワのヒマキ(地の巻)27、御祖神船魂の文】 | |
タマヨリ姫に白羽の矢、神武天皇の誕生 | |
みをやかみ ふなたまのあや | 御祖神 船魂の文 |
このときに みつほのみやは | この時に ミツホの宮は |
とよたまの ふたたひのほる よろこひそ | 豊玉の 再び上る 喜びぞ |
あまのこやねと ものぬしと | アマノコヤネと 物主と |
まてにはへりて みちものへ | 左右(まて)に侍りて 三千物部 |
やもよろくさも をさめしむ | 八百万草も 治めしむ |
さきにつみはと たけふつと | 先にツミハと タケフツと |
いふきのみやに ふそよかた してをさめしむ | 伊吹の宮に 二十四県 して治めしむ |
ほつまちは かしまおしくも | ホツマ方は 鹿島オシクモ |
ひたかひこ みしまみそくい はらみやに | 日高御子 三島ミゾクイ 原宮に |
ももゑあかたの もののへと ゆたかにをさむ | 百枝県の 物部と 豊かに治む |
つくしより しかとこふゆえ | 筑紫より 使人請ふ故 |
かんたちお ものぬしとして | カンタチを 物主として |
はてつみと ともにみそふお をさめしむ | ハテツミと 共に三十二を 治めしむ |
かれにつみはお ことしろと | 故にツミハを 事代と |
あすかのみやに はへらしむ | 飛鳥の宮に 侍らしむ |
ふつきゆみはり いせむすひ | 七月弓張り(七日) 伊勢結び |
かもたけすみに みことのり | カモタケズミに 詔 |
きさきおつまに たまふへし こふにまかせん | 「后を妻に 賜ふべし 請ふに任せん」 |
たけつみは こふはおそるる あめのまま | タケヅミは 「請ふは畏るる 天の随(まま)」 |
みほつめもふす | ミホツ姫申す |
そふつほね あれとわかまこ すけもとめ | 「十二局 あれど我が孫 スケモトメ |
うちめいそより しいおりの | 内侍イソヨリ しいおりの |
なかにいそより しるひとそ | 中にイソヨリ 知る人ぞ」 |
ちちにたつねは うなつきて | 父に尋ねば 頷きて |
これたけつみに たまわれは | これタケヅミに 賜われば |
かあひのたちそ うかわみや | カアヒの館ぞ ウカワ宮 |
めとるすせりめ みこおうむ いみなうつひこ | 娶るスセリ姫 御子を生む いみ名ウツヒコ |
これのさき あねたまねひめ はらをきみ | これの先 姉タマネ姫 原央君 |
きさきになして みそくいか いくたまはすけ | 后になして ミゾクイが イクタマはスケ |
いくよりは うちめとなれと たまねひめ | イクヨリは 内侍となれど タマネ姫 |
くにてるみやと たけてると | 国照宮と タケ照と |
うめはなつめか うふきなす | 生めばナツメが 産着なす |
さいわひひしは むかしこの | 幸いひしは 昔この |
うつむろかこむ たけこけて | うつ室(むろ)囲む 竹焦げて |
すつれはおえる またらたけ | 捨つれば生える 斑竹 |
あやにうつして みはのなも | 紋に写して 御衣の名も |
さいあいへしと いせのみは | 幸合しと 伊勢の御衣 |
う ふきにもちゆ もとおりそ | 産着に用ゆ 本居りぞ |
ほそのをきれる たけもこれ | 臍の緒切れる 竹もこれ |
ときにあすかの みやまかる | 時に飛鳥の 宮罷る |
ははちちひめは のちのよお いせにはへれは | 母チチ姫は 後の世を 伊勢に侍れば |
ををんかみ ゐおおなしくす | 大御神 居を同じくす |
つけききて ははのなけきは つきもなや | 告げ聞きて 母の嘆きは 「嗣もなや」 |
かみのをしゑは | 神の教えは |
はらみやの くにてるおつき | 「原宮の 国照を嗣ぎ |
あまてらす にきはやひきみ | 天照らす ニギハヤヒ君」 |
もにいりて しらにわむらの みはかなす | 喪に入りて 白庭村の 御墓なす |
のちにとくさの ゆつりうけ | 後に十種の 譲り受け |
としめくるひも もにいりて | 年廻る日も 喪に入りて |
あすかのかみと まつるなり | 飛鳥の神と 祀るなり |
さきにみこなく かくやまか | 先に御子なく 香具山が |
あめみちひめお ゑゑなして | 天道姫を ゑゑなして |
あにたくりかこ たくらまろ | 兄タクリが子 タクラマロ |
なおことなせと はせひめは | 猶子となせど ハセ姫は |
とみとにくみて すてさしむ | 臣と憎みて(臣下の娘と子だと) 捨てさしむ |
きみまたいかり はせおすつ | 君また怒り ハセを捨つ |
かくやまをきみ ははとめし | 香具山央君 母と召し |
こはめせとこす ふとたまの | 子は召せど来ず 太玉の |
まこみかしやお つまとして うましまちうむ | 孫ミカシヤを 妻として ウマシマチ生む |
なかすねは おものとみなり | ナガスネは 重の臣なり |
みやこには きみむつましく やをかふり | 都には 君睦まじく 八百日ぶり |
つくしのそやと よそゐよろ | 筑紫の十八(万)と 四十五万 |
としへてをさむ あめひつき | 年経て治む 天日嗣ぎ |
ゆつらんために みこおめす | 譲らんために 御子を召す |
すへらをみこは をにふより | 皇上御子は ヲニフより |
みつほにみゆき まみゑすむ | 瑞穂に御幸 ま見え済む |
ときにわかみや なかにます | 時に若宮 中に座す |
こやねはひたり みほひこは みきにはへれは | コヤネは左 ミホ彦は 右に侍れば |
あまきみは みはたのふみお みてつから をみこにゆつり | 天君は 御機の文を 御手づから 上御子に譲り |
まきさきは やたのかかみお ささけもち かすかにさつく | 真后は(トヨタマ姫) ヤタの鏡を 捧げ持ち 春日に授く |
おおすけは やゑかきのたち ささけもち こもりにあたふ | 大スケは 八重垣の太刀 捧げ持ち コモリに与ふ |
きみととみ つつしみうくる | 君と臣 謹しみ受くる |
あまきみと きさきもろとも | 天君と 后諸共 |
しのみやに おりゐてここに かみとなる | シノ宮に 降り居てここに 神となる |
ときよそふすす やもゐそゑ | 時四十二鈴 八百五十枝 |
きわとしねうと はつきよか | 際年ネウト 八月四日 |
きみのもまつり よそやすみ | 君の喪祀り 四十八済み |
みことにまかせ おもむろお | 御言に任せ 骸(おもむろ)を |
いささわけみや けゐのかみ | イササワケ宮 けゐの神 |
ゆえはおきなに けゐおゑて | 故は翁に けゐを得て |
めくりひらける ちおゑたり かとてのけゐそ | 廻り開ける 鉤を得たり 門出のけゐぞ |
かしはては ひめはおもむろ みつはみや | かしはて(膳)は 姫は骸 ミヅハ宮 |
むかしなきさに ちかいして | 昔渚に 誓いして |
みそろのたつの みたまゑて | ミソロの竜の 御魂得て |
なもあゐそろの かみとなる | 名もアヰソロの 神となる |
たみつおまもり ふねおうむ | 田水を守り 船を生む |
きふねのかみは ふなたまか | 貴船の神は 船魂か |
ふねはいにしゑ しまつひこ | 船は古(いにしえ) 島津彦 |
くちきにのれる うのとりの | 朽木に乗れる 鵜の鳥の |
あつみかわゆく いかたのり | 安曇川行く 筏乗り |
さおさしおほえ ふねとなす | 棹差し覚え 船となす |
このおきつひこ かもおみて | 子の沖津彦 鴨を見て |
かいおつくれは まこのしか ほわになすなよ | 櫂を作れば 孫の志賀 帆ワニなすなよ |
かなさきは おかめおつくる | カナサキは オ亀を造る |
そのまこの はてかみのこの | その孫の ハテカミの子の |
とよたまと みつはめとふね | 豊玉と 水侍と船 |
つくるかみ むつふなたまそ | 造る神 六つ船魂ぞ |
みことのり | 詔 |
たかはふたかみ はつのみや | 「多賀は二神 初の宮 |
いまやふるれは つくりかえ | 今破るれば 造り替え |
みつほのみやお うつしゐて | 瑞穂の宮を 遷し居て |
つねおかまんと いしへして | 常拝まん」と 石部して |
ひかせおおやに つくらせて | 曳かせ大屋に 造らせて |
いとなみなりて みやうつし みくらいにつく | 営みなりて 宮遷し 御位に就く |
そのよそい あやにしききて | その装い 綾錦着て |
たまかさり かむりはひくつ | 珠飾り 冠はひ沓(くつ) |
はらののり はなおつくして | 原の法 花を尽して |
そのあすは おおんたからに おかましむかな | その翌日は 大御宝に 拝ましむかな |
きあとなつ みくらいなりて いせにつく | キアト夏 御位なりて 伊勢に告ぐ |
あまてるかみの みことのり | 天照神の 詔 |
とかくしおして わかみまこ | 戸隠をして 「我が孫 |
たかのふるみや つくりかえ | 多賀の古宮 造り替え |
みやこうつせは あにつきて わのふたかみそ | 都遷せば 天に継ぎて 地の二神ぞ |
われむかし あめのみちゑる かくのふみ | 我昔 天の道得る 香久の文 |
みをやもあみお さつくなも みをやあまきみ | 御祖百編を 授く名も 御祖天君 |
このこころ よろのまつりお きくときは | この心 万の政りを 聞く時は |
かみもくたりてうやまえは かみのみをやそ かみのみをやそ | 神も降りて 敬えば 神の御祖ぞ |
このみちに くにをさむれは | この道に 国治むれば |
ももつかさ そのみちしとふ | 百司 その道慕ふ |
このことく これもみをやそ | 子の如く これも御祖ぞ |
このこすえ たみおめくみて | この子末 民を恵みて |
わかこそと なつれはかえる | 我が子ぞと 撫づれば還る |
ひとくさの みをやのこころ | 人草の 御祖の心 |
すへいれて もものをしての なかにあり | 統べ入れて 百のヲシテの 中にあり |
あやしけけれは あちみえす | 紋繁ければ 味見えず |
にしきのあやお をることく | 錦の紋を 織る如く |
よこへつうちに たておわけ | 横ベツウヂに 経を分け |
やみちのとこは あかりなす | 八道の床は 明り成す |
かすかこもりと あちしらは | 春日コモリと 味知らば |
あまつひつきの さかゑんは | 天つ日月の 栄えんは |
あめつちくれと きわめなきかな | 天地暮れど 極めなきかな |
きみうけて しかさるときに みことのり | 君受けて 使去る時に 詔 |
ふゆいたるひに ををまつり | 「冬至る日に 大祭 (大嘗会) |
あまかみとよよ すへらかみ ゆきすきのみや | 天神と代々 皇神 ユキスキの宮 |
やまうみと とみことたまは | 山海と 臣言魂は |
はにすきの なめゑにつけて | 埴スキの 嘗会に告げて |
ひとくさの ほきいのるなり | 人草の 祝(ほぎ)祈るなり」 |
ふたかみは つねにたたすの | 二神は 常にタダスの |
とのにゐて あまねくをさむ | 殿に居て 普(あまね)く治む |
たみゆたか さくすすなれは | 民豊か さく鈴なれば |
うえつきて なすすおよへと なおゆたか | 植え継ぎて 七鈴及べど なお豊か |
よそこのすすの こもそひゑ | 四十九の鈴の 九百十一枝 |
はつほきあゑの はつみかに | 初穂キアヱの 一月三日に |
こやねもふさく | コヤネ申さく |
きみはいま みをやのみちに をさむゆえ | 「君は今 御祖の道に 治む故 |
ひとくさのをや あめつちの | 人草の親 天地の |
かみもくたれは みをやかみ | 神も降れば 御祖神 |
よよのみをやの つきこなし | 代々の御祖の 嗣子なし |
そふのきさきも いかなるや | 十二の后も 如何なるや」 |
ときにあまきみ | 時に天君 |
われおもふ そみすすをいて たねあらし | 「我思ふ 十三鈴老いて 種あらじ」 |
こもりもうさく | コモリ申さく |
よつきふみ ありとてあまの おしくもに | 「世嗣文 あり」とてアマノ オシクモに |
のりしてよつき やしろなす | 宣して世嗣ぎ 社なす |
ときにおしくも なあてなし | 時にオシクモ 「名宛なし」 |
こやねふとまに うらなえは | コヤネフトマニ 占えば |
やせひめよけん やひのゐは なかのやとなる | 「八瀬姫好けん 八一の謂は 中のヤとなる |
しのはらは ははとはらめる やのつほね | シのハラは 母と孕める ヤの局 |
うちめはなかの くらいなり | 内侍は中の 位なり」 |
としもわかはの やせひめお | 年も若葉の 八瀬姫を |
そひのきさきも みないはふ | 十一の后も 皆祝ふ |
おしくもきよめ よつきやに | オシクモ清め 世嗣社に |
いのれはしるし はらみゑて | 祈れば印し 孕み得て |
そゐつきにうむ ゐつせきみ | 十五月に生む 五瀬(いつせ)君 |
やせひめみやに いるるまに ついかみとなる | 八瀬姫宮に 入るる間に 費い神となる |
おちなくて ふれたつぬれは | 御乳なくて 触れ尋ぬれば |
これのさき かもたけすみと いそよりと | これの先 鴨タケズミと イソヨリと |
そみすすまても こなきゆえ | 十三鈴迄も 子なき故 |
わけつちかみに いのるよの | ワケツチ神に 祈る夜の |
ゆめにたまわる たまのなの | 夢に賜わる タマの名の |
たまよりひめお うみてのち | 玉ヨリ姫を 生みて後 |
ひたしてよはひ そよすすに | 養して齢 十四鈴に |
たらちねともに かみとなる かあひのかみそ | タラチネ共に 神となる カアヒの神ぞ |
たまよりは もまつりなして | タマヨリは 喪祀りなして |
たたひとり わけつちかみに | ただ一人 ワケツチ神に |
またもふて ゆふささくれは | また詣で 斎捧ぐれば |
うつろいか うたかひとわく | ウツロイが 疑ひ問わく |
ひめひとり わけつちかみに つかふかや | 「姫一人 ワケツチ神に 仕ふかや」 |
こたえしからす またとわく よにちなむかや | 答え「然らず」 また問わく 「余に因(ちな)むかや」 |
ひめこたえ なにものなれは おとさんや | 姫答え 「何者なれば 威(おど)さんや |
われはかみのこ なんちはと | 我は神の子 汝は」と |
いえはうつろゐ とひあかり | 言えばウツロヰ 飛び上り |
なるかみしてそ さりにける | 鳴神してぞ 去りにける |
あるひまたいて みそきなす | ある日また出で 禊なす |
しらはのやきて のきにさす | 白羽の矢来て 軒に刺す |
あるしのおけの ととまりて | 主の穢気の 止まりて |
おもはすをのこ うみそたつ | 思わず男の子 生み育つ |
みつなるときに やおさして | 三つなる時に 矢を指して |
ちちというとき やはのほる | 父と言う時 矢は昇る |
わけいかつちの かみなりと よになりわたる | ワケイカツチの 神なりと 世に鳴り渡る |
ひめみこお もろかみこえと うなつかす | 姫御子を 諸守請えど 頷かず |
たかののもりに かくれすむ | タカノの森に 隠れ住む |
わけいかつちの ほこらなし | ワケイカツチの 祠なし |
つねにみかけお まつるなり | 常に御影を 祀るなり |
みふれによりて もふさくは | 御触れによりて 申さくは |
ひゑのふもとに ひめありて | 「ひえの麓に 姫ありて |
ちちよきゆえに たみのこの | 乳良き故に 民の子の |
やするにちちお たまわれは たちまちこゆる | 痩するに乳を 賜われば たちまち肥ゆる |
これむかし かみのこなれと | これ昔 守の子なれど |
かくれすむ もりにゐいろの くもおこる | 隠れ住む 森に五色の 雲起る |
いつもちもりと なつくなり | 出雲方(ぢ)森と 名付くなり |
もろかみこえと まいらねは | 諸神請えど 参らねば |
さおしかなされ しかるへし | 直御使なされ 然るべし」 |
ときにいわくら うかかいて | 時に岩倉 窺いて |
つかいおやれと きたらねは | 使を遣れど 来たらねば |
みつからゆきて まねけとも | 自ら行きて 招けども |
うなつかぬよし かえことす | 頷かぬ由 返言す |
わかやまくいか もふさくは | ワカヤマクイが 申さくは |
をしかとならて こぬゆえは | 「御使人ならで 来ぬ故は |
わけつちかみお つねまつる | ワケツチ神を 常祀る |
めせはまつりの かくるゆえなり | 召せば祀りの 欠くる故なり」 |
みことのり | 詔 |
やまくいおして めすときに | ヤマクイをして 召す時に |
ははこのほれは みたまひて | 母子上れば 見給ひて |
うちなおとえは ひめこたえ | 氏名を問えば 姫答え |
をやのたけすみ いそよりか | 「親のタケスミ イソヨリが |
なつくたまより はてかまこ | 名付く玉ヨリ ハデが孫 |
こはちちもなく かみなりそ | 子は父もなく 神生りぞ |
ちちかなけれは いみなせす | 父がなければ 諱(いみ名)せず |
いつものみこと ひとかよふ | 出雲の御子と 人が呼ぶ」 |
ことはもくわし すきとほる | 言葉も美(くわ)し 透き徹る |
たまのすかたの かかやけは | 珠の姿の 輝けば |
みことのりして うちつほね | 詔して 内局 |
ゐつせひたせは みこのなも みけいりみこそ | ヰツセ養せば 御子の名も ミケイリ御子ぞ |
うむみこは いないいきみそ | 生む御子は イナイイ君ぞ |
みきさきと なりてうむみこ | 御后と 成りて生む御子 |
かんやまと いはわれひこの みことなり | カンヤマト イハワレヒコの 命なり |
ときにたねこか たけひとと | 時にタネコが タケヒトと |
いみなちりはめ たてまつる | 諱ちりばめ 奉る |
あまきみみこに みことのり | 天君御子に 詔 |
つつのみうたに これをして | 連(つづ)の御歌に 「これヲシテ |
とよへるはたの つつねにそなせ | 豊へる機の 連根にぞなせ」 |
これのさき はらのおしくも めしのほす | これの先 原のオシクモ 召し上す |
おととひたちは わかきゆえ | 弟ヒタチは 若き故 |
あはのことしろ はへるみや | 阿波の事代 侍る宮 |
はらからなれは にしひかし | ハラからなれば 西東 |
かよひつとめて かなめしむ なもつみはやゑ | 通ひ勤めて 要占む 名もツミハ八重 |
ことしろか みしまにいたり はらにゆき | 事代が 三島に至り 原に行き |
またみしまより いよにゆく | また三島より 伊予に行く |
ついにちなみて みそくいの | 遂に因みて ミゾクイの |
たまくしひめも はらむゆえ | 玉クシ姫も 孕む故 |
わにのりあはえ かえるうち | ワニ乗り阿波へ 帰る内 |
うむこのいみな わにひこは くしみかたまそ | 生む子の諱 ワニヒコは クシミカ玉ぞ |
つきのこは いみななかひこ くしなしそ | 次の子は 諱ナカヒコ クシナシぞ |
あおかきとのに すましむる | 青垣殿に 住ましむる |
さきにつくしの かんたちは | 先に筑紫の カンタチは |
そをのふなつの ふとみみお | ソヲのフナツの フトミミを |
やすにめとりて ふきねうむ | ヤスに娶りて フキネ生む |
のちもろともに かみとなる | 後諸共に 神となる |
おおものぬしは ふきねなり | 大物主は フキネなり |
とよつみひこと をさめしむ | トヨツミ彦と 治めしむ |
のわさをしえて たみおうむ | 伸業教えて 民を生む |
ひとりおさむる おおなむち みつからほめて | 一人治むる オオナムチ 自ら褒めて |
あしのねさ もとよりあらひ | 「葦の根方 本より洗ひ |
いわねこも みなふしなひけ | 岩根方も 皆伏し靡け |
をさむるは やよほにたれか またあらん | 治むるは 八万穂に誰か また現らん」 |
うなはらひかり あらはれて | 海原光り 顕れて |
われあれはこそ なんちその | 「我あればこそ 汝その |
おおよそになす いたはりそ | おおよそに(巧く・幸に)成す 労(いたわり)ぞ」 |
おおなむちとふ なんちたそ | オオナムチ問ふ 「汝誰ぞ」 |
われはなんちの さきみたま くしゐわさたま | 「我は汝の 幸御魂 奇しい術(わざ)魂」 |
さてしりぬ まつるさきたま とこにすむ | 「さて知りぬ 祀る幸魂 どこに住む」 |
いやかみすます | 「否神住まず」 |
なんちおは あおかきやまに すませんと | 「汝をば 青垣山に 住ません」と |
みやつくりして そこにおれ | 宮造りして 「そこに居れ」 |
こなきかゆえに みたるるそ | 「子なきが故に 乱るるぞ |
ことしろぬしか ゑとのこの | 事代主が 兄弟の子の |
くしみかたまお こいうけて つきとなすへし | クシミカ玉を 請い受けて 嗣となすべし」 |
みをしゑに みもろのそはに とのなして | 御教えに 御諸の傍に 殿なして |
こえはたまはる もふけのこ | 請えば賜はる 儲けの子 |
くしみかたまとわかつまの さしくにわかめ | クシミカ玉と 若妻の サシクニワカメ |
もろともに すませてぬしは つくしたす | 諸共に 住ませて主は 筑紫治す |
ひたるのときに これおつく | ひたるの時に これを継ぐ |
ははこいたれは のこしこと | 母子到れば 遺し言 |
このむらくもは あれませる | 「このムラクモは 生れませる |
みこのいわひに ささけよと | 御子の祝ひに 捧げよ」と |
いいていもをせ かみとなる | 言いて夫婦 神となる |
やすにおさめて まつるのち | ヤスに納めて 祀る後 |
つくしをしかの みことのり | 筑紫御使の 詔 |
のちにくしなし かみとなる | 後にクシナシ 神となる |
ははにこわれて をしかすつ | 母に請われて 御使棄つ |
かれにつくしの みゆきこふ | 故に筑紫の 御幸請ふ |
ときにゐつせに みことのり | 時に五瀬に 詔 |
たかのをきみと おしくもと | 多賀の央君と オシクモと |
くしみかたまと まてにあり | クシミカ玉と 左右にあり |
たねこはみこの おおんもり | タネコは御子の 大御守 |
みこたけひとは としゐつつ | 御子タケヒトは 歳五つ |
またいわくらは みやうちの つほねあつかり | また岩倉は 宮内の 局預り |
あまきみは つくしにみゆき | 天君は 筑紫に御幸 |
むろつより おかめにめして うとのはま | 室津より オ亀に召して ウドの浜 |
かこしまみやに みそふかみ | 鹿児島宮に 三十二神 |
みかりおこえは めくりみて | 御狩りを請えば 巡り見て |
すたるおなおし たえおたし | 廃(すた)るを直し 絶えを治し |
みなをさまるも いかつちの | 皆な治まるも イカツチの |
かみのいさおし のこりあり | 神の功 遺りあり |
ととせにたみも にきはひて | 十年に民も 賑わいて |
よろとしうたふ みやさきの | 万歳歌ふ 宮崎の |
きみのみこころ やすまれは | 君の御心 安まれば |
よはひもおひて はやきしの | 齢も老ひて 早雉の |
たかにつくれは おとろきて | 多賀に告ぐれば 驚きて |
みこたけひとと もりたねこ | 御子タケヒトと 守タネコ |
たかよりいてて にしのみや | 多賀より出でて 西の宮 |
おおわにのりて うとのはま | 大ワニ乗りて ウドの浜 |
みやさきみやに いたります | 宮崎宮に 至ります |
みをやあまきみ みことのり | 御祖天君 詔 |
たけひとたねこ しかときけ | 「タケヒトタネコ 確と聞け |
われつらつらと おもみれは | 我つらつらと 思みれば |
ひとくさのみけ しけるゆえ | 人草の御食(みけ) 繁る故 |
うまれさかしく なからえも | 生れ賢しく 永らえも |
ちよはももよと なりかれて | 千代は百代と なり枯れて |
わかやそよろも ももとせも | 我が八十万も 百年も |
よのたのしみは あいおなし | 世の楽しみは 相同じ |
あまてるかみも かえらせは | 天照神も 還らせば |
あのみちまもる ひともなし | 天の道守る 人もなし |
もろともほむる かみもなし | 諸共褒むる 神もなし |
なんちふたりも なからえす いつせはこなし | 汝二人も 永らえず イツセは子なし |
たけひとは よのみをやなり | タケヒトは 世の御祖なり |
たねこらも ゑとむそうちに | タネコ等も ヱト六十内に |
つまいれて よつきおなせよ | 妻入れて 世嗣を成せよ |
たけひとは としそゐなれは わかかわり | タケヒトは 年十五なれば 我が代り |
たねこかたすけ をさむへし | タネコが助け 治むべし |
しらやのをして たけひとに くにおしらする | 白矢のヲシテ タケヒトに 国を領らする |
もものふみ たねこにゆつる | 百の文 タネコに譲る |
わかこころ さきにかかみは おしくもに | 我が心 先に鏡は オシクモに |
またやゑかきは わにひこに | また八重垣は ワニ彦に |
さつくおひめか あつかりて | 授くを姫が(タマヨリ姫) 預かりて |
わけつちみやに おさめおく | ワケツチ宮に 納め置く |
ほつまなるとき おのつから | ホツマなる時 自づから |
みくさのたから あつまりて | 三種の宝 集りて |
みをやとなすか ほつまそと | 御祖となすが ホツマぞ」と |
みやさきやまの ほらにいり | 宮崎山の 洞に入り |
あかんたひらと あかります | アカンタヒラと 上ります |
みこもおつとめ よそやすむ | 御子喪を務め 四十八済む |
みそふあつまり あくるなは つくしすへらき | 三十二集まり 上ぐる名は 筑紫皇 |
このよしお たかにつくれは もにいりて | この由を 多賀に告ぐれば 喪に入りて |
ひうかのかみと まつりなす | 日向の神と 祀りなす |
をにふにまつる かものかみ | ヲニフに祭る 鴨の神 |
あひらつやまは みをやかみ | アヒラツ山は 御祖神 |
のちにたまより かみとなる | 後に玉ヨリ 神となる |
かあひにあわせ みをやかみ | 河合に合わせ 御祖神 |
めをのかみとて いちしるきかな | 陰陽の神とて 著きかな |
御祖神 船魂の文 |
「この時に ミツホの宮は」、「豊玉の 二度上る 喜びぞ」、「アマノコヤネと 物主と」、「左右に侍りて 三千物部」、「八百万草も 治めしむ」、「先にツミハと タケフツと」、 「イフキの宮に 二十四県 して治めしむ 」、「ホツマ方は カシマオシクモ」、「日高御子 ミシマミゾクイ ハラ宮に」、「百上県の 物部と 豊かに治む」、「筑紫より 使人請ふ故」、「カンタチを 物主として」、 「ハテツミと 共に三十二を 治めしむ」、「故にツミハを 事代と」、「飛鳥の宮に 侍らしむ」。 |
「七月七日 伊勢結び」、「カモタケズミに 詔」、「后を妻に 賜ふべし 請ふに任せん」、「タケヅミは 請ふは畏るる 天の随」、「ミホツ姫申す 十二局」、「あれど我が孫 スケモトメ」、 「内侍イソヨリ 繁居りの」、「中にイソヨリ 知る人ぞ」、「父に尋ねば 頷きて」、「これタケヅミに 賜われば カアヒの館ぞ」、「ウカワ宮 娶るスセリ姫 御子を生む」、「いみ名ウツヒコ これの先」、「姉タマネ姫 ハラ央君」、「后になして ミゾクイが イクタマはスケ」、「イクヨリは 内侍となれど タマネ姫」、「クニテル宮と タケテルと」、「生めばナツメが 産着成す」、「幸いひしは 昔この 埋室(うつむろ)囲む」、「竹焦げて 棄つれば生える」、「斑竹 紋に写して 」、「御衣の名も 幸合しと 伊勢の御衣」、「産着に用ゆ 本在ぞ」、「臍の緒切れる 竹もこれ」。 |
7月7日、ヒコホホデミの天君からカモタケズミの結婚(イセムスビ)話が持ち上がった。君の12人おられる后の中から誰なりと好きな后を授けるから願いでるようにとの詔であった。カモタケズミは、「私からは申し上げるのは畏れ多いことでございますので、天君の思し召しに従わせていただきます」とお答えになった。これを聞いたコトシロヌシの妻のミホツ姫が申し上げるには「君の12后の中でも、私の孫であるスケ后のモトメ姫、ウチ后のイソヨリ姫、シイオリ姫の3名のうちの一人がお似合いかと思います。特にイソヨリ姫は、美しくも賢く気立ての優しい姫で、我が家系の自慢の姫でございます。是非おすすめいたしたく存じます」。早速、父神コモリの神に意向をお尋ねしてみますと、にっこりとエミス顔で頷かれた。君は、イソヨリ姫をカモタケズミに賜わり、結婚の儀が河合(カワイ)の館で盛大に執り行われ、二方ともここにお住まいになった。コホホデミと后のトヨタマ姫は、太陽と月のように仲睦まじく、そのお姿はお雛様のようにいつも冠をかぶられ(ヤモの冠)、政を執られた。 ウカワ宮がスセリ姫を娶り御子が生まれた。いみ名ウツヒコ。これより先、姉タマネ姫はハラ央君の后になして。ミゾクイがイクタマはスケ。イクヨリは内侍となれどタマネ姫。クニテル宮とタケテルと生めばナツメが産着成す。幸いひしは、昔この埋室(うつむろ)囲む。竹焦げて棄つれば生える。斑竹 紋に写して、「御衣の名も 幸合しと 伊勢の御衣」、「産着に用ゆ 本在ぞ」、「臍の緒切れる 竹もこれ」。 平和で豊かな年月が流れ過ぎ、天寿の近いことを悟った天君は、天の嗣(あめのひつぎ)をお譲りになるために、皇太子のウガヤフキアワセズの御子に、オニフの春宮からミズホの宮に行幸を要請します。君と若宮は久方ぶりに父子ともに合見えて、睦まじい時を過ごされました。 |
「時にアスカの 宮罷る」、「母チチ姫は 後の世を」、「伊勢に侍れば 大御神 居を同じくす」、「告げ聞きて 母の嘆きは 嗣もなや」、「神の教えは ハラ宮の クニテルを嗣ぎ」、「天照 ニギハヤヒ君」 」、「喪に入りて シラニワ村の 御墓成す」、「後に十種の 譲り受け」、「年回る日も 喪に入りて」、「飛鳥の神と 祀るなり」。 |
「先に御子なく 香具山が」、「アメミチ姫を ゑゑなして」、「兄タクリが子 タクラマロ」、「猶子となせど ハセ姫は」、「臣と憎みて(臣下の娘と子だと) 棄てさしむ」、「君また怒り ハセを棄つ」、「香具山央君 母と召し 子は召せど来ず」、「フトタマの 孫ミカシヤを」、「妻として ウマシマチ生む」、「ナガスネは 重の臣なり」。 |
「都には 君睦まじく 弥日経(やをかふ)り」、「筑紫の十八(万)と 四十五万」、「年経て治む 天日月」、「譲らんために 御子を召す」、「皇上御子は ヲニフより」、「ミツホに御幸 見え済む 」、「時に若宮 中に座す」、「コヤネは左 ミホヒコは 右に侍れば」、「天君は 御機の文を 御手づから」、「上御子に譲り 真后は(トヨタマ姫)」、「ヤタの鏡を 捧げ持ち 春日に授く」、「大スケは 八重垣の太刀」、「捧げ持ち コモリに与ふ」、「君と臣 謹しみ受くる」、「天君と 后諸共」、「シノ宮に 下り居てここに 神となる」。 |
その時、若宮は中央にお坐りになられていて、左に鏡の臣(とみ)のアメノコヤネ、右に剣の臣のコモリ(ミオヒコ)がはべっておられた。天君はその席でミハタの紀(ふみ)(神璽)を、自手(みて)ずから、皇太子(ヲミコ)に厳かに譲られた。正后(まさきさき)トヨタマ姫は、八たの鏡(やたのかがみ)を高くささげ持ち、左大臣のカスガにさずけた。又、大典侍(おおすけ)のモトメ姫は八重垣(やえがき)の剣をささげ持ち、右大臣のコモリに与えた。ウガヤフキアワセズの君と左右両大臣の三人は、三種の神器を慎みてお受けになられた。天君と后諸共がシノ宮に下り居て、ここに神となられた。 |
「時四十二鈴 八百五十枝」、「際年ネウト 八月四日」、「君の喪祭 四十八済み」、「御言に任せ 骸を」、「イササワケ宮 契の神」、「故は翁に 契を得て」、「恵り開ける 鉤を得たり 門出の契ぞ」、「膳は 姫は骸」、「ミヅハ宮 昔渚に 誓いして」、「ミソロの竜の 霊魂得て」、「名もアヰソロの 神となる」。 |
その後、天君と后は夫婦共々、大津のシノ宮で静かに余生を過ごしておりましたが、間もなく、この宮でご一緒に神上がられました。時は、四十二鈴(すず)八百五十枝(え)、キウトの年のことでした。その年の八月四日には、先君の四十八夜の喪も明けて後、遺言通りにご遺体は敦賀のイササワケ宮に祭られ、契の神と称えられた。契の神の名の由来は、ヒコホホデミが、兄の海幸彦から借りた釣針を失って、途方にくれて松原をさまよっていた時、親切なアカツチの老人(おじ)に出合い、翁のお弁当を分けてもらって、共に語らい苦しい胸の内を打ち明けることができ、翁の進言に従って遠く鹿児島宮に居られるハデズミの所に船出したことにより、重苦しい運命が急転直下に解決して、釣針を見つけることができたばかりか、ご生涯を共にするトヨタマ姫とも結ばれる幸運をもたらした、門出のケイ(べんとう)にちなんだ神名である。 |
「田水を守り 船を生む 」、「キフネの神は 船魂か」、「船は往にし方 シマツヒコ」、「朽木に乗れる 鵜の鳥の」、「アヅミ川行く 筏乗り」、「棹差し覚え 船と成す」、「子のオキツヒコ 鴨を見て」、「櫂を作れば 孫のシガ」、「帆ワニ成す七代 カナサキは オカメを造る」、「その孫の ハテカミの子の」、「トヨタマと 水侍と船」、「造る神 六船魂ぞ」。 |
トヨタマ姫のご遺体は、ミズハの神を祭る貴船神社に納められた。その理由は、昔姫が身重の体をおしてカモ船で、君の居られる敦賀に向かう途中、沖合で嵐に見舞われ船が沈む憂き目に合いながらも、お腹に宿した君の子を守らんための一心から、貴船のミゾロの竜に祈り、そのご加護を得て気丈にも渚に泳ぎ着くことができ、君の待つ敦賀で、無事天御子(あめみこ)ウガヤの君をめでたく出産したことによります。又、故あって、恥ずかしい思いからミズハの宮に一時身を隠したこともあり、後にアイゾロの神と呼ばれ、田水を守り船を生む船魂とも呼ばれるようになった縁の深い貴船にお祭りすることになったのです。 |
「詔勅 多賀は二神 果の宮」、「今破るれば 造り替え」、「ミツホの宮を 移し居て」、「常拝まんと 居敷部して」、「平かせ大弥に 造らせて」、「営み成りて 宮移し 御位に就く」、「その装い 綾・錦 着て」、「珠飾り 冠・佩・沓」、「ハラの法 華を尽して」、「その翌日は 大御宝に 拝ましむかな」。 |
ウガヤの君の詔があった。「多賀は両神(ふたがみ)の最初の宮であるが、古くなり破れているので建て替えて、ニニキネの君のお住まいになられたミズホの宮を、タガに移そうと思う。イシベに引越させ、オオヤに再建させ、いつもニニキネの先宮と両神とを、おそばで拝礼できるようにしようと思う」。準備万端整ったところで、君は都をミズホから多賀に移して即位された。即位の礼のお姿は、綾錦(あやにしき)の御衣裳(みはも)を着て、胸には玉飾りを着け八方のヤモ冠をかぶられて、沓を着用されて真に美しく華やかなものであられた。ニニキネの君の定められたハラの儀式に則り、式はおごそかに進められ、それはもう絢爛豪華でおごそかな式典となった。翌日、君は国民の前にお立ちになり、万民から万歳、万歳と歓喜の声をもって迎えられました。 |
「キアト夏 御位成りて 伊勢に告ぐ」、「天照神の 詔」、「トカクシをして 我が孫」、「タガの古宮 造り替え」、「都遷せば 天に継ぎて 地の悉守ぞ」、「我昔 天の道得る」、「橘の文 上祖百編を」、「授く名も 御祖天君」、「この心 万の政を 聞く時は」、「神も下りて 敬えば 神の御祖ぞ」、「この道に 国治むれば」、「百司 その道慕ふ」、「子の如く これも御祖ぞ」、「この子末 民を恵みて」、「我が子ぞと 撫づれば還る」、「人草の 御祖の心」、「統べ入れて 百のヲシテの 中にあり」、「紋繁ければ 味見えず」、「錦の紋を 織る如く」、「ヨコベ・ツウヂに 経を分け」、「八道の床は 明り成す」、「春日コモリと 味知らば」、「天つ日月の 栄えんは」、「天地暮れど 極めなきかな」。 |
即位の儀が無事終わったことを、伊勢に坐す天照神に報告すると、早速天照神から詔が伝えられた。「トカクシをして我が孫のタガの古宮を造り替え、都遷せば 天に継ぎて地の悉守ぞ。私は昔、天成の道(あまなりのみち)を橘(かぐ)の紀(ふみ)によって学んだ。先祖の御祖(みおや)の書き記した多くの紀(ふみ)を、今、カモヒト君に授け、御祖天君と名付けよう。この心で万の政を聞く時は、神も下りて敬えば神の御祖になろう。この教えに添って国を治めれば、百司がその道慕い子の如くに御祖として慕うであろう。代々にわたって我が子の如くに民を慈しみ撫でれば、民も君を慕いこの国は末永く栄えるでしょう。これが人草を治める御祖の心というものである。これら全ての事は百のヲシテの中に記されている。紋が多過ぎるので、なかなか味が分からないだろうが、錦の紋を織る如くにしてヨコベとツウヂに経を分け、八道の床を弁えれば自ずと分かってこよう。春日コモリと味知らば、天つ日月の栄えんは、天地暮れど極めないであろう」。 |
「君受けて 使去る時に 詔」、「冬至る日に 大祭 (大嘗会) 」、「天神と代々 皇守 ユキスキの宮」、「山海と ト尊魂は」、「埴スキの 嘗会に告げて」、「人草の 祝祈るなり」、「悉守は 常にタダスの」、「殿に居て 普く治む」、「民豊か さく鈴成れば」、「植え継ぎて 七鈴及べど なお豊か」。 |
勅使(オシカ)が去って後、君は詔を出し、冬至る日には、悠紀(ゆき)・主基(すき)の宮で大嘗祭も厳かに執り行われ、天神地祗との神事を滞りなく終えて国の栄えんことを祈りました。この後に、両神はタダス殿(下鴨神社)で天下を治めておられ、民は平和で豊かな生活を送っていた。 |
「四十九の鈴の 九百十一枝 初穂キアヱの」、「一月三日に コヤネ申さく 」、「君は今 御祖の道に 」、「治む故 人草の親 」、「天地の 神も下れば 御祖守」、「代々の上祖の 嗣子なし」、 「十二の后も 如何なるや」、「時に天君 我思ふ」、「十三鈴いて 種あらじ」、「コモリ申さく 世嗣文」、「ありとてアマノ オシクモに」、「宣して世嗣 社成す」。 |
四十九の鈴の 九百十一枝 初穂キアヱの新年三日、アメノコヤネが年賀のお祝いの席で申し上げるには、「君は今、御祖の道を守って国民を良く治められております。唯一つ心配なのは、世嗣子(よつぎこ)に恵まれずにいることです。后が十二人いても恵まれません」。「時に天君 我思ふ 十三鈴いて 種あらじ」。右大臣のコモリが進言するには、「コヤネの家には世嗣紀があると聞いております。コヤネの後継者のアマノオシクモに世嗣社(よつぎやしろ)を建てさせ祈らせたらいかがでしょうか」と。 |
「時にオシクモ 名宛無し」、「コヤネフトマニ 占えば 「ヤセ姫好けん」、「八一の謂は 中のヤとなる」、「シのハラは 母と孕める ヤの局」、「内侍は中の 位なり」、「年も若生の ヤセ姫を」、「十一の后も 皆祝ふ 」、「オシクモ清め 世嗣社に」、「祈れば著し 孕み得て」、「十五月に生む ヰツセ君」、「ヤセ姫宮に 入るる間に 費い神となる」、「御乳無くて 告れ尋ぬれば」、 「これの先 カモタケズミと」、「イソヨリと 十三鈴迄も」、「子なき故 ワケツチ神に」、「祈る夜の 夢に賜わる」、「タマの名の タマヨリ姫を」、「生みて後 養して齢」、「十四鈴に タラチネ共に」、「神となる カアヒの神ぞ」、「タマヨリは 喪祭なして」、「ただ一人 ワケツチ神に」、「また詣で 斎捧ぐれば」、「ウツロイが 疑ひ問わく」、「姫一人 ワケツチ神に 仕ふかや」、「答え然らず」 また問わく 余に因むかや」、「姫答え 何者なれば 威さんや」、「我は神の子 汝はと」、「言えばウツロヰ 飛び上り」、「鳴神してぞ 去りにける」。 |
しかし、オシクモの努力にもかかわらず何の兆候も表われなかった。そこで、コヤネがフトマニを占うと、ヤセ姫が良いとの託宣が出て、中宮に立てることにした。「シのハラは 母と孕める ヤの局」。「内侍は中の 位なり」。年若く中宮に立たれたヤセ姫を、他の11人の后達も心からお祝い申しあげた。オシクモが、身を清めて世嗣社に一心に祈ったところ、遂に兆しが表われて「十五ケ月目にめでたくお生まれになったのがイツセの君である。ヤセ姫は宮に入られて間もなくお亡くなりになられた。母乳がないので早速国中にお触れを出し良い乳母を探すことになった。 以前、ヒコホホデミの天君の詔によって結ばれたカモタケズミとイソヨリ姫の間には13年間も子供ができなかった。ある時、ご夫婦そろってワケツチの神に子供が授かるように一心にお祈りしていると、その夜夢の中で、白玉を天から授かり、一年後にお生まれになったのがタマヨリ姫であった。タマヨリ姫はご両親に大切に育てられ、世にも美しい玉のような姫に成長された。姫が14才の時、無事成人されたのを見届けると、姫一人残したまま、ご両親は相共にみまかって、河合(かわい)の神となられた。一人残されたタマヨリ姫は、両親の四十八の喪祭(もまつり)を静かに済ませると、唯一人でワケツチ宮を再び詣でて、ユフを捧げて祈っていると、いつこからかウツロイの神が現われて疑い深げに、姫に問いかけた。「お姫様、たった一人で一生涯ワケツチ神にお仕えするおつもりですか」。姫は答えて、「シカラズ(ちがいます)」。又、ウツロイが問うには、「ヨニチナムカヤ(世間なみに)結婚するおつもりか」。姫は腹だたしげに答えて、「私を侮辱するおまえはいったい何者なのだ。私は神の子ですぞ。名をなのれ」。ウツロイは恐れをなしてゴロゴロと雷鳴を残して去って行った。 |
「ある日また出で 禊なす」、「白羽の矢来て 軒に刺す」、「主の穢気の 止まりて」、「思わず男の子 生み育つ」、「三つなる時に 矢を指して」、「父と言う時 矢は昇る」、「ワケイカツチの 神なりと」、「世に鳴り渡る 姫・御子を」、「諸守請えど 頷かず」、「タカノの森に 隠れ住む」、「ワケイカツチの 祠成し」、「常に御影を 祀るなり」、「御告れによりて 申さくは」、「日似の麓に 姫ありて」、「乳良き故に 民の子の」、「痩するに乳を 賜われば たちまち肥ゆる 」、「これ昔 守の子なれど」、「隠れ住む 森に五色の 雲起る」、「出雲方森と 名付くなり」、「諸神請えど 参らねば」、「直御使 なされ 然るべし」。 |
ある日のこと。河合の森をそっと出て、ワケイカズチの宮に詣でて一人静かに禊(みそぎ)をしていると、どこからともなく白羽矢(しらはのや)が飛んできて宮の軒端にささった。そのことがあって間もなく姫の生理は止まり、ごく自然に男児が生まれ出て育てておられた。子供が丁度3才になった時のこと。その子が、白羽矢を指差して「父」と言った瞬間、矢は天空高く登り消え去った。人々の間にこの話が囁かれ、その矢はきっとワケイカズチの神に違いないとの噂が国中に広がった。美しい姫御子(ひめみこ)の元に諸国の国神からの結婚の申込が殺到したが、姫は頷かなかった。タカノの森に御子共々隠れ家(かくれが)を造り、世間から身を隠して住まわれ、そこにワケイカツチ神の小祠(ほこら)を造り、常に御陰(みかげ)を慕いてお祀りしておられた。この噂が、いよいよ君のお耳にも入り、真実を確かめよとの詔が伝えられた。 ある村老(むらおさ)が申し上げるには、「日枝山(ひえやま)の西の麓に一人の美しいお姫が一児と隠れ住んでおられて、その姫の乳は大変滋養に富んで清く、隣村の痩せ衰えた子供を哀れんで、姫が乳を与えたところ、たちまち肥え太って、今では元気に育っております。この姫は昔からの尊い神の子孫の出生ですが、故あって、深い森の中の隠れ家に子供とひっそり住んでおられます。この森の上には、いつも五色の雲が立ち登り、出雲路森(いずもじもり)と人々は親しみを持って呼んでおります。今まで大勢の神々がお迎えに上がりましたが、誰にも応じません。君にあられましては、是非正式な勅使を立てて丁重にお迎えに上がられるのがよろしいかと存じます」。 |
「時にイワクラ 窺いて」、「使を遣れど 来たらねば」、「自ら行きて 招けども」、「頷かぬ由 返言す」、「ワカヤマクイが 申さくは」、「御使人ならで 来ぬ故は」、「ワケツチ神を 常祀る 」、「召せば祀りの 欠くる故なり」、「詔 ヤマクイをして 召す時に」、「母子上れば 見給ひて」、「氏名を問えば 姫答え」、「親のタケスミ イソヨリが」、「名付くタマヨリ ハデが孫」、「子は父もなく 神生りぞ」、「父がなければ 斎名せず」、「出雲の御子と 人が呼ぶ」。 |
君は、イワクラに要請し、イワクラは勅使を派遣したが姫は来なかった。イワクラ自身が自ら行って招いたが頷かず、結局姫の承諾を得られなかったとの復命があった。それを聞いたワカヤマクイが申し上げて曰く、「君の特命を受けた勅使を出しても来ないのは訳があってのことでございます。実は姫は一人でワケイカズチの神をお祀りしている関係で、君のところに伺うとお祀りができなくなるからです。君が姫を助けて一緒にワケイカズチ神をお祀りされればよろしいかと存じます」。君は早速ワカヤマクイに詔をして、新たに勅使として任命し、姫と子を誠意を持ってお招きすると、今度は素直に上京して君にまみえた。君が親しく姓名(うじな)をお尋ねになると、姫答え、「私の父はタケズミで、母の名はイソヨリと申し、両親が私の名前をタマヨリと名付けました。ハデズミの孫でございます。この子には父はございません。神に授けられた子です。父がなければイミ名もできず、人は出雲の御子と呼んでおります」。 |
「言葉も美し 透き徹る」、「珠の姿の 輝けば」、「詔して 内局」、「ヰツセ養せば 御子の名も ミケイリ御子ぞ」、「生む御子は イナイイ君ぞ」、「御后と 成りて生む御子 カンヤマト」、 「イハワレヒコの 命なり 」、「時にタネコが タケヒトと 」、「いみ名ちりばめ 奉る 」、「天君御子に 詔 」、「」、「連の御歌に 「これヲシテ」、 「豊へる機の 連根にぞなせ」、「これの先 ハラのオシクモ 召し上す」。 |
姫の言葉は上品で、知性がにじみ出て声は透き通って美しく、そのお姿は玉の様に光輝いておられた。君は詔され、姫を内局(うちつぼね)として迎え、イツセ御子を養育されることになり、イツモの御子には、ミケイリ御子と名を賜わった。その後、局の時に産んだ御子の名はイナイイ君ともうします。中宮になられてからお生まれになった御子の名こそ、カンヤマト・イワワレヒコの御子となられ、その時アメタネコがタケヒト君と実名(いみな)を捧げました。タケヒト誕生をたいそう喜ばれた天君も、御子のためにツズ歌を作って贈られました。「これ璽(おしで) 豊経る(とよへる)幡(はた)の つず根にぞなせ」。 |
「弟ヒタチは 若き故 」、「阿波のコトシロ 侍る宮」、「ハラからなれば 西東」、「通ひ勤めて 要占む 名もツミハ八重」、「コトシロが 三島(大阪府三島郡)に至り」、「ハラに行き また三島(静岡県三島市)より」、 「伊予に行く 遂に因みて(伊予三島・大三島)」、「ミゾクイの タマクシ姫も 孕む故」、「ワニ乗り阿波へ 帰る内 」、「生む子の斎名 ワニヒコは クシミカタマぞ」、「次の子は 斎名ナカヒコ クシナシぞ」、「青垣殿に 住ましむる」。 |
「先にツクシの カンタチは」、「ソヲのフナツの フトミミを」、「ヤス(筑前國夜須郡)に娶りて フキネ生む」、「後諸共に 神となる」、「大物主は フキネなり」、「トヨツミヒコと 治めしむ」、「伸業教えて 民を熟む 一人治むる」、「オオナムチ 自ら褒めて」、「葦の根方 本より散らひ」、「岩根方も 皆伏し靡け」、「治むるは 弥万年に誰か また現らん」。 |
「海原光り 顕れて」、「我あればこそ 汝その」、「おおよそに(巧く・幸に)成す 功ぞ」、「オオナムチ問ふ 汝誰ぞ」、「我は汝の 幸霊魂 奇偉業魂」、「さて知りぬ 祀る先魂 どこに住む」、「否神住まず 汝をば」、「青垣山に 住ませんと」、「宮造りして そこに居れ」、「子無きが故に 乱るるぞ」、「事代主が 兄弟の子の」、「クシミカタマを 請い受けて 嗣となすべし」、「御教えに 御諸の傍に 殿成して」、「請えば賜はる 儲けの子」、「クシミカタマと 若妻の」、「サシクニワカメ 諸共に」、「住ませてヌシは ツクシ治す」、「ひたるの時に これを継ぐ」。 |
「母子到れば 遺し言」、「このムラクモは 生れませる」、「御子の祝ひに 捧げよと」、「言いて夫婦 神となる」、「ヤスに納めて 祀る後」、「筑紫御使の 詔」、「後にクシナシ 神となる」、「母に請われて 御使棄つ」、「故に筑紫の 御幸請ふ 」。 |
「時にヰツセに 詔」、「タガの央君"と オシクモと」、「クシミカタマと 左右にあり」、「タネコは御子の 大御守」、「御子タケヒトは 歳五つ」、「またイワクラは 宮内の 局預り」、「天君は 筑紫に御幸」、「ムロツより オカメに召して ウドの浜」。 |
「カゴシマ宮に 三十二守」、「恵りを請えば 恵り回て」、「廃るを直し 絶えを治し」、「皆治まるも イカツチの」、「神の功 遺りあり」、「十年に民も 賑わいて」、「万歳歌ふ ミヤサキの」、「君の御心 安まれば」、「齢も老ひて 早雉の」、「タガに告ぐれば 驚きて」、「御子タケヒトと 守タネコ」、「多賀より出でて 西の宮 」、「大ワニ乗りて ウドの浜」、「ミヤサキ宮に 至ります」。 |
「御祖天君 詔」、「タケヒト・タネコ 確と聞け」、「我 つらつらと 思みれば」、「人草の食 頻る故」、「生れ賢しく 永らえも」、「千齢は百齢と 萎り枯れて」、「我が八十万も 百年も」、「世の楽しみは 合い同じ」、「天照神も 還らせば」、「天の道守る 人も無し」、「諸共褒むる 神もなし」、「汝二人も 永らえず イツセは子なし」、「タケヒトは 弥の上祖なり」、「タネコ等も ヱト六十内に」、「妻入れて 世嗣を成せよ」、「タケヒトは 年十五なれば 我が代り」、「タネコが助け 治むべし」、「白矢のヲシテ タケヒトに 国を領らする」、「百の文 タネコに譲る」。 |
「我が心 先に鏡は オシクモに」、「また八重垣は ワニヒコに」、「授くを姫が(タマヨリ姫) 預かりて」、「ワケツチ宮に 納め置く」、「ほつま成る時 自づから」、「三種の宝 集りて」、「上祖と成すが ほつまぞ」と」、「ミヤサキ山の 洞に入り」、「アカンタヒラと 上ります」。 |
「御子喪を務め 四十八 済む」、「三十二集まり 上ぐる名は 筑紫皇」、「この由を 多賀に告ぐれば 喪に入りて」、「ヒウガの神と 祀りなす」、「ヲニフに祭る カモの神」、「アヒラツ山は 御祖神」、「後にタマヨリ 神となる」、「河合に合わせ 御祖神」、「陰陽の神とて 著きかな」。 |
(私論.私見)