かくて民を治める伯父と叔母がシラヤマ神となった。今後、イサナギは祀っても、弟のクラキネは祀ってはならない。 モチ(もちこ、天照神の局の「ますひめもちこ」)が、クラ姫(くらこ姫、「くらきね」の娘)をカンサヒ(代官)の子のアメオシヒに妻合(めあわせ、結婚)させた。そして、アメオシヒをスケ(すけ妃の「もちこ」)の義兄として、父マスヒト(代官)の政り事を継ぐことになった。
ホツマツタヱ1、アのヒマキ(天の巻)7 |
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ここで、「ホツマツタヱ1、アのヒマキ(天の巻)7、遺し文さかおたつの紋」を確認する。「ウィキペディアのホツマツタヱ」、「7綾目次 遺し文、刑罰(さが)を立法(たつ)綾」、「ホツマツタエ 天の巻 6アヤ アマテル神、中宮セオリツ姫と十二后」その他を参照する。 2011.12.25日 れんだいこ拝 |
【ホツマツタヱ1、アのヒマキ(天の巻)7、遺し文さかおたつ文】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アマテル神の岩戸隠れとソサノオの流浪 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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遺し文 清汚(さか)を立つ文 |
「諸神の 清汚(さか)を立つ時」、「サホコより ツハモノ主が」、「香久(かく)宮に 雉飛ばせて」、「マス人が 民のサシミメ 妻となす」、「クラ姫生めば 慈しみ」、「兄のコクミを 子の如く」、「細矛千足の マス人や 今は副なり」。 |
諸神が集まって刑罰の罰則を取り決めようとしていた。その時、サホコ(山陰地方)のツハモノ主(やそきねの下の弟)が、橘(かく、香久)宮に緊急を知らせる急使が飛んできて、代官のマスヒトが民のサシミメを妻にしている。クラ姫が生まれ大事に育てている。サシミメの兄のコクミをは我が子同然に取り立て、 サホコチタル国の代官に取り立てている」。 |
「クラキネが 罷れる時に」、「シラ人を 根のマス人に」、「クラコ姫 身を立山に 納む後」、「母子を捨てて 西に送る」。 |
クラキネ(いさなぎの弟)が亡くなられた時、シラヒトを根の国の代官(ますひと)にした。(それまではクラキネ代官だった) クラコ姫は身を立山(雄山神社)に移して埋葬を終えた。シラヒトは、母「たみのさしみめ」と、その子ども(自分の結婚相手)「くらこ姫」を捨てて西(つ)に追い出した。 |
「コクミ母子を 犯す罪」、「カンサヒこれを 正さねば 臣これを請ふ」、「御端より 直御使(さおしか)に召す」、「カンサヒと コクミ母子と 高マにて」、「カナサキ問わく コクミ言ふ」、「サシメは真(まこと) 我が妻よ」、「君離りますの オシテあり」、「また問ふ汝 何人ぞ」、「民と言ふにぞ お猛びて」、「獣に劣る 罪人ぞ」、「サシメ 捧ぐる 縁(ゆかり)にて マス人となる」、「御恵みの 君なり母よ」、 |
コクミは、母(たみのさしみめ)と娘(くらこ姫)を同時に犯す罪を犯した。代官のカンサヒはこの悪事を正せなかった。臣がこの問題を採り上げ問うた。 このいまわしい出来事は直ちに伝えられ、朝廷の命により勅使が派遣され、カンサヒとコクミ母子が高マへ呼びだした。カナサキ(住吉の神)が問いただし、コクミが次のように釈明した。 「サシメ(たみのさしみめ)は、実の所、私の妻です。きみ(くらきね)が亡くなる前に書かれた証文があります。 カナサキが、「汝は何者だ(誰の子孫なのだ)」と厳しく問いただした。 コクミが答えるには、「民の出身です」。カナサキが激怒して、「お前は、けものにも劣る罪人だ」と罵詈雑言した。 サシメ(たみのさしみめ)を君(くらきね)に奉げた縁で、お前のようなものがマスヒト(代官)になれた。御恵みの恩を忘れたのかと叱りつけた。 |
「清汚(さか)見れば」、「君を忘るる 百座と」、「母も二十座 犯するも」、「オシテの辱(恥)も 百と百」、「姫蔑(ないがし)ろ 五十座と 総て三百七十」。 |
汝の行なってきた祥禍(さが・善悪、兆し)を申し渡す。1、.君(くらきね)の恩を忘れた罪として百科(ももくら)、2、母の恩を忘れた罪として二十科(ふそくら)、3、.母子を犯す罪、4、オシテ(証文)に対する偽証の罪がそれぞれ百科と百科、5、姫を蔑(ないがし)ろにした罪として五十科(いそくら)。都合合わせて罪状全て三百七十科を申し渡す。 |
「天回り 三百六十度を 経矛法(とほこのり)」、「所を去ると 流浪(さすら)ふと」、「交り去ると 命去る」、「四つ割過ぎて 綻(ほころ)びと」、「ツツガに入れて 根の国の シラ人を召す」、「高マにて カナサキ問わく」、「母を捨て 妻避(さ)る如何」、「答え言ふ 己は避らず 母よりぞ」、「家捨て出づる 姫もまま」、「また本を問ふ 答え言ふ」、「代々の臣ゆえ 事成せり」、「母は民の女 勧めてぞ 君の妻なり」、「御恵み 何忘れんと 唯唯(いい)流す」、「神御ムスビの 叱りてぞ」、「汝飾りて 惑わすや」、「我よく知れり 朋を越え」、「力を貸して 母が上げ」、「政(まつ)り授けて 殊(こと)なすを」、「母に親(した)えば 姫が倦む」、「隠さんために 流し遣り」、「民の目奪ひ 力貸す」、「恵み忘るる 二百座」、「避るも百座 踏むが五十」、「掴むの六十で 四百十座 これ逃るるや」。 |
全天回りの三百六十度を三百六十科とした経矛法(とほこのり)に則った判決を申し渡す。所を去ると流離ふ(さすらう) と交り去ると命去るの四つ割で計算すると、これらを越えている。(経矛法(とほこのり)の法とは、三百六十度を四つに割って、最初の四つ割の一つを九十科で「所を去る」、次の四分の二の百八十度(科)で「流離う」(島流し)、次の四分の三の二百七十度(科)で「人との交わり去る」(追放刑)、四つ割の全て、三百六十度(科)で「命去る」(死刑)と罰則が決められていた。今回の罪は三百七十科もあり、四つ割(三百六十科:死刑)を越えている)。よって、「つつが」(牢獄)に入れよと申し渡された。続いて、根の国の シラヒトを呼び出した。高マにてカナサキが詰問した。「シラヒトよ、汝は母を捨て、妻を追い出したのはどういうことなのだ」。シラヒトが答えて言うには、「自分が追い出したのではありません。母の方から家を出て行ったんです。姫(妻)も一緒について行ったまでのことです」。再びカナサキが、シラヒトの「もと」(生まれ、先祖、家系)を問いただした。シラヒトは答えた。「我が家系は元々の臣故にこういうことになった。母は民の出自の女ですが、勧められて君の妻となりました。君(くらきね)の御恵(おんめぐみ)をどうして忘れられましょうか」。流暢にと言い流した。これを聞いて、カンミムスビ(やそきね、六代たかみむすび)が強い口調で叱った。「汝は自分に都合の良いように並び立てて誤魔化している。我はそち(しらひと)の悪業をことごとく聞きおよんでいるぞ。汝(しらひと)が居並ぶ盟友(とも)を飛び越えて出世できたのも、母(たみのさしみめ)の力添えで抜擢され、すなわち、「くらきね」が慈しんだ愛娘とそち(しらひと)が結婚して、我が子にしたからこそ、そちは代官になれて政事を授かることができたからであろう。それを何と愚かにも娘(妻)の母(たみのさしみめ)に横恋慕して言い寄り、妻(くらこ姫)の眼を盗んで情事を重ね、くらこ姫の思いを踏みにじったあげく、秘め事が見つかり扱いにくくなったので、母娘とも「つ」(西、ここでは宮津宮)に流しやるとは何事ぞ。そのうえ、民の女を漁っては奪い、税(ちから)はかすめとるとは、民の模範ともなるべき益人(代官)が悪事を働いているのはけしからん。罪状は、君・母からの恩を忘れた罪として二百科(くら)、妻を追い出し流浪させた罪として百科、母娘を踏み荒らす(狼藉)罪として五十科、賄賂(わいろ)を掴(つか)む罪として六十科。罪状全てで、四百十科になる。この罪に逃れることができるか!」。シラヒトは返答できず、「牢獄」に入れよという裁定がくだった。 |
「答えねば ツツガに入れて」、「大御神 諸と議りて」、「ヤソキネを 根の国守と」、「イサナギの 産野に叔父と 叔母なれば 」、「祀り絶えずと 詔」。 |
シラヒトは答えることができず、ツツガ(牢獄)に入れられた。 天照神は諸神と評議して、ヤソキネ(六代たかみむすび、かんみむすび)を根の国守の国神に任命する。イサナギの産屋(生家)に照らしてみれば叔父と叔母になる。祀りを絶やすことがなかろうと詔された。 |
「以ちて民治(た)す 叔父と叔母 白山神ぞ」、「イサナギは 祀れど弟(おと)の クラキネは」、「祀らずモチが クラ姫を」、「カンサヒの子の アメオシヒ」、「妻(めあ)わせ典侍(すけ)が 兄となし」、「父マス人の 政り継ぐ」。 |
かくて民を治める伯父と叔母がシラヤマ神となった。今後、イサナギは祀っても、弟のクラキネは祀ってはならない。 モチ(もちこ、天照神の局の「ますひめもちこ」)が、クラ姫(くらこ姫、「くらきね」の娘)をカンサヒ(代官)の子のアメオシヒに妻合(めあわせ、結婚)させた。そして、アメオシヒをスケ(すけ妃の「もちこ」)の義兄として、父マスヒト(代官)の政り事を継ぐことになった。
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「シラヒトコクミ この祝い」、「半ば清(さ)を得て 流浪(さすらい)の ヒ川に遣るを」、「マス人の 我が臣となす」、「ソサノヲは これ調ひて」、「マナヰなる 神に詣でる」。 |
シラヒトとコクミは、すけ妃「もちこ」の計らいによる祝いにより恩赦を得て罪が半減され、ヒカワ(斐伊川、島根県)に流刑となった。その地のマスヒト(代官)の「あめおしひ」が家臣として二人を再登用した。ソサノヲはアメオシヒとクラ姫の結婚の儀を取り仕切ることとなり、全て整ったところで、マナヰの「とよけ」の神に報告を兼ね詣でた。 |
「その中に 嫋女(たおやめ)あれば これを問ふ」、「侍女(まかたち)答ふ アカツチが」、「ハヤスフ姫と 聞し召し」、「雉を飛ばせて 父に乞ふ」、「アカツチ宮に 婚がんと」、「言えど和(みや)なく 大内の折々宿る」。 |
この時、ソサノヲは朝日宮で優美で優しそうな手弱女(たおやめ、嫋女」に目がとまり、どこの誰かと尋ねた。 姫の侍女(まかたち)が、アカツチ(月隅国速見県、現大分県)のハヤスフ姫と聞いていると答えた。ソサノヲは、勅使(きじ)を飛ばしてアカツチ宮の主に姫との結婚を申し込んだ。ところが了解の返事が貰えず、大内宮に折々宿るようになった。 |
「北の局 姉妹(えと)休めとて」、「内宮の トヨ姫召せば」、「北の局(つぼね) 退がり嘆けば」、「ソサノヲが 湛えかねてぞ 剣持ち」、「行くをハヤコが 押し止め」、「功(いさおし)成らば 天が下」、「ハナコ来たれば 矛隠す」、「見ぬ顔すれど 内に告げ」。 |
北(ね)の局の姉妹(えと)(もちこ、はやこ)共に暇を出すから、しばらく休みなさい。後任には内宮(内妃)に「とよ姫」を召すので心配には及ばない。 それを、聞き北(ね)の局の姉妹(もちこ、はやこ)は宮中から下がって激しく嘆き悲しんだ。 その通達に、ソサノヲが怒り堪えかねて剣を持って行こうとしたので、ハヤコがとっさにその場を押し止めた。 ハヤコはソサノヲに、「功(いさおし)成らば天が下」と進言した。 そこへ、何も知らないハナコ(南の局の内妃)が来合せたので、あわてて二人は矛(剱)を隠した。ハナコは何食わぬ顔で見ぬふりをしましたが、中宮の「せおりつ姫」(むかつ姫)に、このことを告げた。 |
「ある日高マの 御幸後」、「モチコハヤコを 内(宮)に召す」、「日に向津姫 宣給ふは」、「汝等姉妹が 御気冷えて」、「筑紫に遣れば 噤(つぐ)み下れ」、「タナキネは取る 男は父に 女は母に付く」、「三姫子も 共に下りて 養(ひた)しませ」、「必ず待てよ 時ありと」、「宣べ懇(ねんごろ)に 諭されて」、「筑紫アカツチ これを承け」、「宇佐の宮居を 改めて」、「モチコハヤコは 新局」、「置けば怒りて 養しせず」。 |
ある日、天照神が高マに御幸された留守の時に、モチコとハヤコ両姉妹を内宮に呼び、「せおりつ姫」(あまさがるひにむかつ姫)がのたまった。「君は汝ら姉妹に対して気が冷えている。ここにはもう居場所はない。筑紫(九州)に行き、誰にもしゃべらず蟄居していよ」。タナキネ(もちこが生んだ皇子)は、こちらが預かって育てます。男の子は父親の元におき、女の子は母親が育てるのが常道。よって、三人の姫皇女も一緒に九州へ連れて行きなさい。(タナキネは後に出雲大社の初代祭主天穂日命(あまのほひのみこと)になる) 暫くそうしているうちに迎えがあるから、それまで待つように」。ている)心静かに待ちなさい。懇(ねんごろ)に諭され、これに従った。 筑紫(九州)のアカツチ翁が、この決定を受けて、お迎えするために、宇佐の宮を新改築して歓迎した。こうして、モチコとハヤコの姉妹は新局に置かれたが、不満をあからさまにして怨みつらみを募らせていった。 |
「内(宮)に告ぐれば トヨ姫に」、「養し奉らし 流浪(さすら)なす」、「二流浪姫 憤り」、「ヒ川に怒り 成るオロチ 弥にわだかまり」、「コクミ等も 仕えて血脈(しむ)を 奪ひ食む」。 |
二人の態度を見かねたアカツチ翁が使者を出して中宮に一部始終を告げた。 中宮は、「とよ姫」に、三人の女の子どもの養育係とするように決定した。そして、モチコとハヤコの姉妹は「えとつぼね」を解任(流離)された。流離(さすら)いの身になった姉妹は憤り、斐伊川に身を隠して怒るオロチ(大蛇)と化して、中宮むかつ姫の仕打ちに「わだかまり」(蛇がとぐろを巻くこと、悪意)を持つようになった。これにコクミ等が仕え、モチコとハヤコが憎んでいた身内の姫を奪い去り、犯しては喰い殺して行った。 |
「ソサノヲ仕業 あぢきなく」、「苗代(なじろ)頻捲(しきま)き 穢(あお)放ち」、「みのらす御衣(みそ)の 新嘗の」、「神御衣織(かんみはお)れば 殿汚す」、「これ糺(ただ)されて ソサノヲが」、 「一人被る 斎衣(いんは)殿」、「閉づれば怒る 太駒(ふちこま)を」、「甍(いらか)穿(うが)ちて 投げ入るる」。 |
一目惚れした「はやうす姫」を殺されたことを知ったソサノヲは怒り狂いなりふり構わず粗暴な振る舞いをした。 苗代(なじろ)に重播(しきまき)したり、穢(あお)を放って稲穂が実らないようにした。新嘗祭で君がお召しになる神御衣(かんみは)を織る斎衣殿(いんはどの)を汚した。これを糺されたソサノヲは一人で斎衣殿(いんはどの)に押し込められ戸を閉ざされた。これに怒ったソサノヲは更に怒り、斑駒(ぶちこま、まだら模様の子馬)を屋根を穿(うが)ちて投げ入れた。 |
「ハナコ驚き 杼(ひ)に破れ」、「神去りますと 泣く声に」、「君怒りまし ソサノヲに」、「汝汚なく 国望む」、「道現(な)す歌に 天が下」、「和して廻る 日月こそ」、「晴れて明るき 民の父母(たら)なり」。 |
斎衣殿(いんはどの)で機織りをしていたハナコが愕き、その拍子に手にしていた梭(ひ、横糸を通す道具)が身体を突き刺してしまい、亡くなってしまった。 この悲痛な声に、君(天照神)は怒り、ソサノヲに対して曰く「汝はこころいやしくも国を望んでいる。アマナリの道になんとかけ離れたことか。 天下を望むのなら、天成る道を教える歌をよく学べ。天(あめ)が下を和(やわ)して巡る日月こそ、晴れて明るき民(たみ)の両親(たら)なり」(地上のあらゆるものに対し、太陽と月が平和に照らし、取り囲み、安心して生活できるように、天下晴れて将来に希望や喜びが持てる国民の親になることが必要なことである)。 |
「ソサノヲは 穢(いわ)を蹴散らし」、「なお怒る 君恐れまし」、「岩室(いわむろ)に 入りて閉ざせば」、「天が下 明暗(かか)も紋(あや)なし」。 |
ソサノヲは益々凶暴になり、岩を蹴散らしても、なお怒りが収まらなかった。君(天照神)は恐れをなして岩室(いわむろ)に入り閉ざした。 この時、地上では突然に暗闇が襲った。(日食現象と思われる) |
「ヤス川の 闇に驚く オモイカネ」、「灯燃(たいまつ)に馳せ 子に問ひて」、「高マに議り 祈らんや」、「ツハモノ主が 真榊の 上枝は熟玉(にたま)」、「中つ枝に マフツの鏡」、「下和幣(しもにきて) 掛け祈らんと」、「ウスメ等に ヒカケを襷(たすき) 茅巻矛(ちまきほこ)」、「朮(おけら)を匂ひ 笹湯花(ささゆばな)」、「神座(かんくら)の外(と)の 神篝(かんがかり)」。 |
やす川(滋賀県守山市野洲川)に居たオモイカネは、突然の暗闇に驚き松明(たびまつ)を掲げて、子供のの「たじからお」に向けて「高マに諮り、祈祷せよ」と指示した。 ツハモノ主が、「真榊木の上枝(かんえ)に勾玉(にたま、まがたま)を掛け、中枝(なかつえ)には真経津(まふつ)の鏡を下げ、下枝には和幣(にぎて)を付けて祈れ」。 ウスメ(女官)達には、それぞれ日陰草(ひかげの蔓)を襷(たすき)掛けにして、茅巻矛(ちまきほこ、機織り機の部品で、織られた部分の織物を巻きとるための木製の円い棒で矛代わり)を持たせ、朮(おけら、疫病草、えやみぐさ)を庭火(神事の庭に焚くかがり火)にして禊ぎの一つである笹湯花(ささゆばな、湯立)を用意した。神座(かんくら)の外では神篝(かんがかり)の篝火(かがりび)を焚いた。 |
「深く謀りて オモイカネ」、「常世の踊り 長咲や」、「俳優(わさおき)歌ふ」、「橘の木 枯れても匂ゆ 萎(しほ)れても好や」、「吾が妻合わ 吾が妻合わや」、「萎れても好や 吾が妻合わ」、「諸神は 岩戸の前に 姦踊(かしまとり、かしま鶏)」、「これぞ常世の 長咲や」。 |
オモイカネは深く考えた末、「常世の踊り」の「ながさきや」という歌を、俳優(わさおき、俳優)に歌わせた。「香久の木(かぐのき、柑橘類の木)は、枯れても良い匂いで。萎(しお)れても良い匂い。私の妻も同じで、萎(しお)れても一番良い。私の妻は天地神」。 諸神は、天照神が隠れた岩戸の前に夜明けを知らせる暁鶏(かしまどり)を放った。これこそ、常世(永遠の世界)の「なかさき」(長く鳴く、鳴く幸)だった。 |
「君笑み細く 窺えば」、「岩戸を投ぐる タチカラヲ」、「御手取り出し 奉る」、「ツハモノ主が 締め縄に な返りましそ」、「然る後 高マに議り」、「ソサノヲの 咎(とが)は千座の 三段枯れ」、「髪抜き一つ 爪も抜き」、「まだ届かねば 殺す時」。 |
君(天照神)が微笑み、そっと外の様子を窺った。その時、タチカラヲが岩戸を投げ捨て、天照神の手を取り出して表に引き出した。ツハモノ主が、岩窟(いわむろ)の入り口に「しめ縄」を張り巡らせて、もう二度と岩窟(いわむろ)の中にお帰りにならないように申し上げた。 その後、高マで、諸神による神議(かみばかり)が招集された。ソサノヲの罪状が言い渡され、罪状は千科に及んだ。三百六十科が死罪のところ三段死(みきだがれ)という三回死ぬ程の惨い死刑を言い渡したことになる。 刑が執行され、髪の毛は抜かれ、爪も剥ぎとられようとしていていたまさにその時。 |
「向津姫より 直御使(さおしか)に」、「活モノ祈り 蘇す」、「ハナコの四百逆 償のえば 清汚(さか)を明せよ」、「ソサノヲが 仕業は血脈の 虫なれど」、「逆(罪) なく恙(処罰、つつが) なからんやわや」。 |
向津姫(中宮、せおりつ姫)の申し出が勅使より告げられた。「活モノに祈ったのでハナコが蘇った。ハナコ殺しの四百科は償われたので、罪を白紙に戻せ。ソサノヲの仕業は血筋のなしたもので、本人には罪がなく、処罰をなしにせよ」。 |
「言宣(ことのり)を 諸が議りて」、「天戻る 重きもシムの 半ば減り」、「交り去る と 空(す)かさ天男 八方這い回む」、「下民の 流離遣らひき」、「大御神 知ろし召されば」、「天照 人の面も 楽しむに」、「満ち清(す)けの歌」、「天晴れ あな面白」、「あな楽し あな清(さ)やけ」、「可笑(おけ) 清やけ 可笑」、「天晴れ 面白」、「清やけ 可笑 あな楽し」。 |
「ことのり」(情状酌量を願う減刑要請)を諸神が審議した結果、天の理に背く重罪ではあるが、身内の好しみにより罪を半減して、「まじわりさる」(追放刑)に処することにした。追放刑になったソサノヲは、頭には菅笠(すげがさ、すがさ)を被り、身体には青い麻蓑(みの)をまとって、生きるために食い物を探し求める下民(したたみ)に落ちぶれて流浪雄になり下がった。 大御神(おおんかみ)は、岩窟(いわむろ)を出て再び政事を執り召された。君のご威光により、天下隈なく照らされて庶民の顔も明るく楽しそうであった。 ここに、「みちすけ」(天道晴明)の歌の通りとなった。「世の中はあはれ(天晴れ、あっぱれ)になり何と面白い、楽しい、爽やかで清々しいことか! 笑いたのしむが良い。清々しくて心地良い。世の中めでたし天晴れで何と面白いことか。清々しく笑顔で楽しめ」。 |
「合共に 手を打ち伸べて」、「歌ひ舞ふ 幸やふるとぞ」、「楽しめば これ神楽(かんくら)に」、「天照 大御神なり」。 |
皆一緒になって手を打ち鳴らして歌って踊った。千岩谷(ちはや)震(ふ)るえるまで、歌って踊って楽しんだので、これが神楽(かんくら)の始まりとなった。これも天照大御神の威徳である。 |
「流浪男は 御言を承けて 根に行かん」、「姉にまみゆる 暫しとて」、「許せば上る ヤス川へ」、「踏み轟(とどろ)きて 鳴り動く」、「姉は本より(生まれ付き) 流浪男が」、「荒るるを知れば 驚きて」、「弟の来るは 清はあらじ 国奪ふらん」、「父母(かそいろ)の 任(よさ)しの国を 棄て置けば」、「敢え窺ふと 揚げ巻きし」、「裳裾を束ね 袴とし」、「五百瓊ミスマル 絡(から)巻きて」、「千乗五百乗 肱に付け」、「弓を振りて 剣持ち」、「堅庭(かたにわ)踏んで 蹴散らして」、「逸のお猛に 詰(なじ)り問ふ」。 |
ソサノヲは流浪雄になり、御言を承けて根の国に行くことになった。その前に姉のわか姫に一旦お目にかかってから行きたいと願い出て許可されたので、姉の居るヤスカワ宮に向かった。この時、大地が轟いて鳴り動いた。姉(わか姫)は、以前から流浪雄(そさのお)が凶暴であったので恐れをなして驚いて、「弟が来るのは良い動機゛はなくて国を奪いにでも来たのだろう」と邪推した。「父母が営々と築いてきた理想の国を手放す訳には行かない」と推理し、髪を総角(古代の少年の髪の結い方の一。髪を左右に分け、両耳の上に巻いて輪を作る)に結い、裳裾を束ねて袴の代用にし、五百もの「みすまる」(御統、玉・勾玉を緒に貫いて輪としたもの)を首から身体に巻き付けて、矢が千本、五百本入った靫(ゆき、矢の入れ物)を両方の肘にくくりつけ、弓弾(ゆはず、弓の端の弦をとめている所)を振りまわし、剣(八柄剣)を持ち、堅庭(堅い地面)を踏みつけ、岩を蹴散らして、激しい勢いで(いつ、厳、稜威)詰(なじ)り問うた。 |
「ソサノヲ曰く な怖れそ」、「昔根の国 行けとあり」、「姉とまみえて 後行かん」、「遥かに来れば 疑わで 稜威(いつ)返しませ」、「姉問わく 素心は何」、「その答え 根に至る後 子を生まん」、「女ならば穢れ 男は清く これ誓ひなり」。 |
ソサノヲ曰く「そんなに恐れることはないですよ。昔、根の国へ行けと言われました。このたびそのつもりです。その前に姉と一度会ってから行こうと思って来ただけのことです。はるばる尋ねて来たのに疑いを掛けられ不愉快です。もっと堂々と威厳をおもちなされれば良いのに」。姉が、「お前の本心は何なのだ」と問うた。ソサノヲの答えは、「根の国へ行って後、結婚して子どもを生んで見せる。もし、女の子が生まれてきたら、私の心が汚れていることを認めよう。もし、男の子が生まれてきたら、私の心は清い。これが誓いである」。 |
「昔君 マナヰにありて」、「御皇(みすまる)の 珠を濯ぎて」、「タナキネを モチに生ませて」、「床酒に ハヤコを召せば」、「その夢に 十握の剣 折れ三割(きた)」、「栄みに醸んで 三瓊(みた)となる」、「三人姫生む タのいみ名」、「我汚れなば 姫を得て」、「共恥見んと 誓い去る」。 |
「昔、君(天照神)がマナヰに居られた頃、御皇(みすまる、御統、玉・勾玉を緒に貫いて輪としたもの)の玉を灌(そそ)いだところ、タナキネがモチの日に生まれた。君(天照神)が床神酒(寝床をともにする、一緒に寝ること)にハヤコ(こますひめはやこ、もちこの妹)を召したとき、その夜の夢に十握(とつか)の剣を三(み)段(きだ)に折って、栄みに噛むと三瓊(みた、三宝)になった。その後、ハヤコが三つ子の娘(タケコ、タキコ、タナコ))を生んだので、実名にタの字を付けた。その故事に照らせば、もし私(そさのお)の心が汚れていたなら姫が生まれることになります。その時は素直に過ちを認めて生涯恥をかいて生きていきます」と言って去って行った。 |
「姫人成りて 沖つ島」、「相模江の島 厳島」、「自ら流浪ふ 流浪男の」、「陰の雅びの 誤ちを」、「掃らして後に 帰ります」。 |
ハヤコが生んだ三つ子の姫が成人してから付けられた名前は、沖つ島姫(たけこ)、相模江の島姫(たきこ)、厳島姫(たなこ)。自ら流離らうソサノヲの浮気の過ちを晴らした後に帰った。 |
「昔二神 遺し文」、「天の巡りの 蝕みを」、「見る真栄瓊(まさかに)の 中濁りて」、「生むソサノヲは 魂乱れ」、「国の隈成す 誤ちぞ」、「男は父に得て 地を抱け」、「女は母に得て 天と寝よ」、「浮き橋を得て 婚ぐべし」、「女は月潮の 後三日に」、「清く朝日を 拝み受け 良き子生むなり」、「誤りて 穢るる時に 孕む子は」、「必ず荒るる 前後」、「乱れて流る 我が恥を」、「後の掟の 占形ぞ」、「必ずこれを な忘れそこれ」。 |
昔、両神(いさなぎ、いさなみ)が、後世のために遺言状を遺された。「天の運行も、時には狂って日食や月食を見ることなる。真栄瓊(まさかに、想定外・予期しない緊急の事態のとき)のように天の運行が濁っていた時に生まれたソサノヲは、まさに霊の緒が乱れて国に隈(災い)が降りかかるという過ちをした。男は父(天)の心を持って、地(は)を抱きなさい。女は母(地)の心を持って、天(あ)と寝なさい。そのときには、必ず仲人をたてて結婚しなさい。女性は月経の終わった三日後に、身を清めて朝日を拝み、日霊(ひる)を受ければ必ず良い子が生まれる。誤って生理中に交わって出来た子は必ず乱暴な子どもになる。先に犯した失敗は、両親とも厄年に生まれた「ひるこ姫」を川に流さなければならなかったことと、2番目に生まれた「ひよるこ」は未熟児で死産であったので、葦舟に乗せなければならなかったという、我が恥です。肝に銘じてこのことを忘れないでください」。 |
(私論.私見)