ホツマは伝える。初めに地球へ降誕した神はミナカヌシ (天御中主神) であった。ミナカヌシは地球に万子を生み、「ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ」の八御子を世嗣として、地上の八方に下らせて治めさせる。その次に「キ・ツ・ヲ・サ・ネ」「ア・ミ・ヤ・シ・ナ・ウ」の、ウマシアシガヒヒコヂ神
(可美葦牙彦舅神) の十一神が世を治める。それを八方のクニサツチ (国狭槌尊) が継ぎ、さらにその御子のトヨクンヌ (豊斟渟神) が世の治めを引き継いだ。彼らは肉体をもった人間として地球に生まれているのだが、現在の人間とは大きく異なっている。まず彼らは男女の区別がなく陽陰両性をを併せ持った人間だった。だから子供を生むといっても男女の結合による生殖ではなく、いわば単性生殖だったのである。また彼らは数百万年の寿命をもっていた。(寿命は時代が下るにつれて短縮していったが。)ミナカヌシからトヨクンヌまでを総称してクニトコタチ (国常立尊) と呼ぶ。また彼らの時代をトコヨ (常世) といい、ミナカヌシ降誕以来3,000万年におよんだ。ここで大きな変化が訪れる。トヨクンヌの世嗣となったウヒヂニ (泥土煮尊) は、陽陰両性ではなく男性として生まれてきたのである。ウヒヂニは、越前国の日野山の山頂の宮に木の実をもって生まれてきた。同じ頃、スヒヂニ
(沙土煮尊) は女性として生まれてきていた。
(注:ウヒヂニ・スヒヂニは、どちらもトヨクンヌの御子だと推測されるが、ホツマツタエには明記はされていない。兄妹だったと考えるべきだろうか。)
ウヒヂニが生まれ持って来た木の実を、宮の庭に植えると三年後の三月三日に、花と実が百々 (たくさんの意) 成ったので、その木を「モモ (百々・桃)」と名付け、ウヒヂニ・スヒヂニの幼名をそれぞれ「モモヒナキ」「モモヒナミ」とした。「モモ
(百々)」は「豊富」の意に加えて「三・三」の意味もある。「ヒナ (雛)」は「未熟」「青春」の意。「キ (木)」と「ミ (実)」は、それぞれ「陽・男」と「陰・女」を意味する。
琵琶湖の南岸地域を治めるスクナミ (少名御神) という守が、初めて酒をつくる。モモヒナキとモモヒナミが成人した後の三月三日、これを御酒 (ミキ)
として献上する。二人は、宮の庭に植えた桃の花の下で、その酒を酌み交わす。器に注いだ酒に逆さの月が映り、優雅な雰囲気を醸し出す。まずモモヒナミが飲み、気分が高揚する。次にモモヒナキが飲む。(三三九度) そして夢心地の二人はついに結ばれるのであった。身も心も燃え上がった二人は翌朝、その熱さを川の水で冷ます。そこでモモヒナキは衣の袖を大きく水に浸して濡らす。モモヒナミは袖を小さく濡らす。これにより二人はそれぞれ、ウヒヂニ
(大浸濡) とスヒヂニ (小浸濡) に名を改めたのである。この時の二人の装束が雛人形のモデルとなっている。男は、冠と大袖と袴。 女は、小袖と上被衣
(うわかづき)。君 (キミ) というのは天皇を指す言葉だが、これの源はモモヒナキとモモヒナミの夫婦である。男女一対で君 (キミ) なのである。また天皇のことをウズ
(珍) とも表するが、これもやはりウヒヂニとスヒヂニが本源なのである。この一対のキミに倣い、諸臣も諸民も結婚するようになった。
世の人に男女が生じたこと、また男女が和合して子を生むということを、人間は当前のことと思っている。雛祭とは、男女が和合でき、しかもそれが繁栄をもたらすいう喜びを、改めて思い起こし、尊ぶ祭なのである。
ずっと時代は下って、雛祭の精神が世から失われつつあった頃、オオナムチと別れたスクナヒコナ (少彦名命) は諸国を巡り、カダカキの演奏に合わせて、美しい雛祭の由来を語り広めた。最後は加太の浦に至り、そこで世を去る (淡島願人・淡島殿)。スクナヒコナと雛祭の関係は、和歌山市の加太淡島神社
(カダアワシマジンジャ) に垣間見ることができる。雛祭にまつわる「桃」「御酒」「三三九度」「雛人形」などが、現在もまったく失われずに残っているというのは、ある意味驚異的だと思う。ウヒヂニ・スヒヂニの時代というのは太古と言える時代であり、2000年や3000年前というレベルでは無いからである。これはスクナヒコナの功績だろうか。
参考サイト:http://gejirin.com/hotuma02.html
天神4代のおふたりは、ヒナルノ岳(現在比定地のひとつ:福井県越前市萱谷町の日野山)の麓にある神宮(日野神社)の庭に二人で木の実を植へ、芽生えて三年後に花を咲かせ夏に実をつけた。たくさんの実がなったので百(もも)の木と名付けられた。桃の節句の由来で御座います。
赤坂研究会代表の今村聡夫は、相模一宮寒川神社のご祭神をウヒチニ・スヒチニの夫婦大神であらうと詳細な論考をあげてをられます。 十数基の神輿が集結し、浜降りの神事をおこなう寒川神社の浜降り祭りは、海の日に開催、今年もまもなくで御座います。
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