ふとまに考

 (最新見直し2013.08.21日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、ふとまに歌のbPから39を確認する。「ウィキペディアのホツマツタヱ」、「ほつまつたゑ 解読ガイド」その他を参照する。


 【フトマニ図】
 フトマニは、和歌体の31文字の和歌128首を本文とする。全宇宙の構成を表した元明けに準拠して、アメツチ(天地)の動向を察知する哲理歌となっている。前書きの「フトマニを陳(の)ぶ」から始まり、ア(1〜16)、イ(17〜32)、フ(33〜48)、へ(49〜64)、モ(65〜80)、ヲ(81〜96)、ス(97〜112)、シ(113〜128)の順で8篇128首が編纂されている。「ア、イ、フ、へ、モ、ヲ、ス、シ」の順に編纂されている。その意味は分からない。「ももふそやうた ゑりたまふ」(百二十八歌 選り給ふ)とあるので、参照原本には更に数多くの和歌が記されていたことになる。内容を見るのに凡そ出雲−三輪王朝の御世の編纂であることが窺え、治政論であると同時に帝王学的な御教示文ともなっている。但し、出雲−三輪王朝御世の大和言葉で書かれており、その解読は難しい。「読文百ぺん、意自ずから通ず」で味わうしかない。

 8代アマカミのアマテルカミがアマカミを引退してから最晩年に至った頃、記したと前文にある。今日にいう占いの原初に相当するものである。ホツマツタヱ、ミカサフミの解読において、フトマニの寄与するところは大きい。

 トヨケ神(伊勢外宮祭神)が初めてイサナギとイサナミの両神(フタカミ)に天上モトモトアケ(元元明)のサゴクシロ宮に坐す四十九(ヨソコ)神の座席図を五十一文字で表わし授けた。後にアマテル神(伊勢内宮祭神)は、このフトマニ図で吉凶を占おうと考え自ら編集長となり、八百万(ヤオヨロズ)の神に命じ万葉の情を歌に作らせて添削し、その中から百二十八歌を選んで大占(フトマニ)の紀(フミ)を著して占いの元とした。
  1. 天御祖神(アメミヲヤカミ)
     中心の輪のアウワ神は天地創造のアメミヲヤ(天祖)神。
    アは天、ウは神の最初の一息、ワは地を表す。

  2. 天元神(アモトカミ)、又の名をクニサッチの神
     二番目のトホカミエヒタメ八神は人の魂(タマ)の緒を地上に吹き降ろし魄(シイ・肉体)と結び合わせて寿命を得る。初めて諸国を建国した国常立神(クニトコタチ)の八御子(ヤミコ・八面八降ヤモヤクダリの神)の頭文字。

  3. 天並神(アナミカミ)
     三番目のアイフヘモヲスシ神は、方位と言葉、人の内臓(五臓六腑)を司る。

  4. 三十二神(ミソフカミ)、又の名をタミメヒコの神
     外輪の三十二(ミソフ)神は人の容姿を司り、人の寿命を日夜休みなく守る。

フトマニ図
 フトマニ図
 http://www.hotsuma.gr.jp/futomani.html
 八元神・天並神・三十二神を加えると四十八(ヨソヤ)神で日本語の音韻の数である。日本語の一音一音は神とされ、ここに言霊の観念の発生を見る。各々の神は季節や方位を始め、自然界のあらゆる事象を管掌することから、フトマニ図は占いに用いられるようになった。タカミムスビ家はこの祭祀をタカマの祭りとして、自家で体系化し祭行してきたが、タマギネはイサナギ・イサナミ(両神)と天照大御神に伝授する事によって、これを国家祭祀にまで高めた。タカマの祭りをひと言で言えば、天地創造から万物の生成、人類の誕生、国家創建、そして縄文のあらゆる文化の発展経過を凝縮した思想体系である。

 ふとまに解析

1、アヤマ(あやま)
 あのやまの なかうつろゐか あわのすな     天の山の 中ウツロヰが アワの砂
 こほしのゑなの むねそあみける       九星の胞衣(えな)の 旨ぞ編みける
 (訳) 

 「中の土もがな ウツロヰが アワ海渫え ミオの土と 人担い来て 朝の間に 中峰成せば」
 「中峰の 充てはアワ海 八峰は 裾の八つ湖 三つ埋まり 焼くれど 眺めは 変らじと」

2、アハラ(あはら)          
 あのはらは かみのあつまる ひとのはら     天の原は 神の集まる 人の原 
 しつくにわさの みとそうみける       しつくに業の 凹凸ぞ生みける
 (訳) 

 「御中主 天霧に乗りて 八方に行き 日月の道を 譲り地に 県の組みの 色国と 名付け 天の道 地の道も 葦の如くに 立つ故に」
 「八方の世嗣は トヨクンヌ 君・臣・民と 民も三つ 業分け治む 三件の 神は百二十の 御子ありて」
 「クニトコタチの 八下り子 何クニサツチ 八方主と 成りてトホカミ ヱヒタメの 国に生む子は 三件の 君・臣・民ぞ」

3、アキニ(あきに)          
 あきにとは こちにひもとけ つみのかる     あきにとは 東風に冷も解け つみ逃る 
 つくみこころの はるそきにける      噤み心の 春ぞ来にける
 (訳) 

 「東風に冷も解け 弊逃る 今春なれば 西の空 民疲れなし 好し好しと 御言定まる」

4、アチリ(あちり)          
 あにちりの はなもわかみの うつろゐか     天に散りの 花も我が身の ウツロヰが
 しのひのこえも なりひひくやは       忍びの声も 鳴り響くやは
 (訳)

 「鳴神の 主東北守 ウツロヰの ヲマサ君とぞ」
 「鳴神の 騒る障りの あらん時 東北の一木を 居社に ヱトの六十日に 守り余る ヤナヰカクロヒ 空守る」
 「ウツロヰの神 現れば たとえ鳴神 地搖るも 逸技なして 鎮むべし」
 「言えばウツロヰ  飛び上り 鳴神してぞ  去りにける」

5、アヌウ(あぬう)          
 あぬうなる みはのゆかりは さをしかの      天和うなる 御衣の縁は 直御使(さをしか)の 
 もすそにみつる めくみぬうなり     裳裾に満つる 恵み和うなり
 (訳)

 「常に聞く 直御使八手の 我が冠 衣と裳 民に緒を届け 陽陰を束ねて 日月為す 裳裾を汲めと」
 「胸清く 身は垢付けど 直使が見て 天に告ぐれば 直御使の 八つの聞えに 露れて 斎れもがもと 裳裾の 民を撫でつつ 直御使の 清きに神は ありと断えき」
 「人常に 神に向はば 世の身々の 垢は天元の 直御使に 清め賜ひて サコクシの 映ゆの鏡に 入ると思えば」
 「カスガは君に 奉る 神のヲシテと 直御使の 冠と衣裳は 菊散ぞ」

6、アムク  
 あおむけと たかきのそみの ととかぬも      天を向けど 高き望みの 届かぬも
 なるかみはれて あむくなるなり             鳴神祓れて 上向(あむく)なるなり
 (訳)

 「ハタタ神鳴り 止まざらば ホオコホ騒ぞ 卑直りと 祈り留むる ヲノコリと 童の額 上に押せば 魘われぬ法」

7、アエテ(あえて) 
 あおゑては おもはぬふゆの うらやみも     天を得ては 思わぬ映ゆの 羨みも
 つとめあえては やはりうるなり           努め敢えてば やはり得るなり
 (訳) 

8、アネセ(あねせ)          
 あのねせは ことしろぬしか みほのつり     天の寝せは コトシロヌシが 美保の釣り
 ちちかすすかの みそきなすまて         父が鈴明の 禊なすまで
 (訳) 

 「オホナムチ 応え問わんと ミホサキの 連へ雉子の イナセハギ 天の応えを 問ふ時に コトシロヌシが 笑す顔」(10文 )
 「我涼かにて 父母に ホロロ泣けども 鉤の鯛ぞ 肴と切るも 愚かなり タカマは民の 笑す鯛 いとかけまくぞ 御言宣」(10文 )
 「その時に 西に侍らふ ヒルコ宮 子とヱビスの 正し見て」(ミ逸文)
 「ハタレマの 宝集めて 末消ゆる これ鈴暗ぞ 生きの内 欲を離るる これは鈴明ぞ」(13文 )
 「クシヒコが  諌めの涼か 今解けり 苦しみは何」(13文 )

9、アコケ(あこけ )            
 あのこけは よこやしるやも はさらなせ     陽の痩けば 横屋後屋も ハサラなせ 
 あこけくるまの めくりあらねは         天転車の 回りあらねば
 (訳) 

 「フトマニの アコケ は仕業 ウツヲ神 時御言宣 ウツヲ神 社閉ざして 天に告ぐ」(21文
 「クニトコタチの ムロ屋より 宮殿造る バサラ民 傷め祟るの 折あれば これ除かんと 思すなり」(ミ8文 )
 「敷きます君の 長らえを 守るバサラの 神鎮め これ住寄の 活かすりを ヲコヌの神の 説く法と」(ミ8文 )

10、アオレ(あおれ)          
 あおれとは しらうとこくみ ことははと     天穢れとは シラウド・コクミ 子と母と
 よそめもおかす なおれなるかな           他所(よそ)女も犯す 名折れなるかな
 (訳) 

 「根の国と サホコの国の マスヒトが 内のシラヒト コクミらが 親も犯して 子も犯す」(8文)
 「 聞くや シラウド・コクミ 母犯す 汚名今にあり 君真似て 汚名を被るや」(32文)

11、アヨロ(あよろ)          
 あのよろの ほしおしつめて ありのまま      天の万の 星を鎮めて ありのまま 
 すめばよろこひ ときそありける         住めば喜び 時ぞありける
 (訳)

 「往し天神 星となる これは範 成す」(13文)
 「御中主 八面に生める 人は星 星は種なす 御祖神」(18文)
 「天に還れば 御中主 及びヱヒタメ トホカミも 天に配りて 星となす アメトコタチの 神はこれ」(ミ6文)
 「後 十一の君 キツヲサネ アミヤシナウも 天に還り サコクシロにて 御言宣 皆な星となす」
 「クニトコタチの 七代の神 皆サコクシロ よりの星」(ミ6文) 
 「下に合ては 星を崇めて 長ら 得る 父母に継がえて 茂り 得るなり」(フ71文)

12、アソノ(あその)          
 あそのよの なるかんをかも すみめかも     発(あそ)の代の なるかん陽(を)かも すみ陰(め)かも    
 わけやかえらん たのしきわなり        分けや孵(かえ)らん 楽しき地(わ)なり
 (訳) 原初の時に現れるかん陽(を)かも、すみ陰(め)かもが陽と陰に分かれて誕生したのが我らが楽しい地でございます。

 「背の宗元 日と丸ろめ 妹の鄙元 月と凝り」(14文)
 「天・地・人も 分かざるに 生の一息 動く時 東昇りて 西降り 空洞に回り 泡・泥の 回れる中の 実柱に 離けて陰陽なる」(14文)
 「天地の 開ける時の 一息が 陰陽と分れて 陽は天に 陰は地となる」(15文)
 「陽の空 風生み 風も 火と分かれ 背の宗は 日輪なる 妹の鄙元 月となる 地は埴・水 且つ埴は 山・里となる」(15文)
 「陽は軽ろ清く 天と成り 陰は重り凝る 地の玉 背の宗は 日輪なる 妹の鄙元  月となる」(ミ6文)

13、アユン(あゆん)          
 あのゆんの まめにひらきの むらさきや      天の弓の 豆に柊(ひらき)の むらさきや
 まおうつろゐの はるへひくらん          魔をウツロヰの 祓(はる)へ導(ひ)くらん
 (訳) 

 「年分けの夜は 豆を煎り 穢・鬼遣らふ 門を開き 〆引き塞ぎ」(ミ7文)
 「ヱ元の神の 別る夜は 煎り豆 打ちて 鬼遣らい 柊鰯は モノの垣 穂長譲葉 注連飾り」(ミ9文)
 「ウツロヰの 年越瀬前 大晦日 初六日・十四日 五月の三十日 総べ一年 守る」()
 「もしや汚曲の 障いせば 粗金の埴を ウツロヰの 大将守の マサカリや」(ミ8文)
 「たとい東北魔に 障なすも 穢方より ' 傾ふ方違い 粗金の埴を 篤く錬れば 守の恵みに 適ふなる」(ミ8文)

14、アツル(あつる)          
 あのつるに くらゐもわさも ゆつるとは      天のつるに 位も業も 譲るとは
 しるもしらぬも さためつるかな          知るも知らぬも 定めつるかな
 (訳)         

 「代を継ぐ者は 譲り受け 橋得て 婚ぎ 睦じく 子を生み育て また譲る」(13文)
 「ツ は木の齢 熟に尽きて 枯れる熟の尽ぞ」(23文)
 「茂の尽るば 真栄き華の 功も 篤の病も 元に返つる」(フ78)

15、アヰサ(あゐさ)          
 あのゐさめ きみはとみあり     天の諌め 君は臣あり
 をやはこの ともにたからの めくるなりけり     親は子の 共に宝の 恵るなりけり 
 (訳)            

 「臣・民も 実 安ければや 臣が祖 しいる諌めの 畏れみに 隠れ住み行く 末つ身を」(序)
 「クシヒコが  諌めの "涼か" 今解けり 苦しみは何」(13文)
 「ワニヒコが 上祖 クシヒコ 諌め入る 直きに賜ふ ヤマト神 三代還の直き 功に "直りモノヌシ 守"  賜ふ」(30文)
 「オミケヌシ 諌め申さく "君 聞くや シラウド・コクミ 母犯す 汚名今にあり 君真似て 汚名を被るや」(32文)
 「大御神 陽陰の道 成す 代々の君 継ぎ受け 収む 天地日月 汝が政り 諌めずて 阿り君を 穴にする」(32文)

16、アナワ(あなわ)          
 あのなわの みちもゐもせの なかうとも     天の縄の 道も妹背の 仲人も
 つよきもやわす あなわなりけり            強きも和(やわ)す 天縄(あなわ)なりけり
 (訳)

17、イヤマ(いやま)          
 いやまなる たかきはそひえ おりやせん 偉山なる 高きは聳え 下りやせん
 おりによそうて ゐやまなるへし 下りに装うて ゐやまなるべし
 (訳) 高山の如き貴き者は聳え立ち、決して低まることはない。然るに貴き者が身をやつすことによって礼というものは生れる。

 「謙の熟は 達熟ふ大臣も なお臣と 言う 百・万 聞きに 流れ得るなり」(フ51文)

18、イハラ(いはら)          
 いのはらの みはたねはらむ ひたちをひ     弥(い)の腹の 身は種孕む ひたち帯 
 おひぬつるきの たからふるなり           負ひぬ連(つる)ぎの 宝ふるなり
 (訳)    

 「タマキネの 教えの帯は 己々の果に 品 弁えて 地 治む  帯は五腑の 固めなり」(16文)
 「てれば姫君 障らねど 息為直ちと なす帯ぞ」(16文)

19、イキニ(いきに )          
 いのきにの きつさにとみの あらそひも    勢(い)のきにの 東・西・南に臣の 争ひも 
 つさをはやめて きにやにくらん          西・南長は病めて きにや和(に)ぐらん
 (訳) 臣同士の勢力争いは、君にとっては頭痛の種であるが、意外にも病や老衰によって自然(天地の見えざる手)に解決するもの。

 「勢の鋭りの 争う 充つの 地の殊 君が平へに 引きや散るらん」(フ20 )
 「経の抗の 争う臣の 理を 和せば民の 映ぞ来にける」(フ35 )
 「勢の繁りの 民栄を消す 争ひの 乙が乱れば 主や散るらん」(フ84 )
 「繁の抗の 経矛に充つの 争ひも 上が愚かに 肝や潰むらん」(フ115)

20、イチリ(いちり)          
 いのとりの あらそうみつの くにのこと     いのとりの 争うみつの 国の殊(こと)     
 きみかひらへに ひきやちるらん     君が平へに 引きや散るらん
 (訳)      

 「例えば 曲人 賄ひて 栄い 増さんを 臣も欲し 取引増して 喜べば減り 憎む民 また強く 願えば怒る 朋の臣 迫るを選み 分け返す 恵み喜ぶ 負け憎む 君召す畏れ 直されて 枯るる哀しさ」(17文 )
 「勢の抗の 東・西・南に臣の 争ひも 西・南 長は病めて 抗や和ぐらん 」(フ19)
 「経の抗の 争う臣の 理を 和せば民の 映ぞ来にける」(フ35)
 「勢の繁りの 民栄を消す 争ひの 乙が乱れば 主や散るらん 」(フ84)
 「繁の抗の 経矛に充つの 争ひも 上が愚かに 肝や潰むらん」(フ115)

21、イヌウ (いぬう)         
 いぬうなる とみはほこりて こはおこる 勢伸(いぬ)うなる 臣は誇りて 子は驕る
 はやるほかや ほころひるらん 早る穂萱(ほかや) 綻びるらん
 (訳)

 「篤き恵みの 緩法を 必ず倦むな 早るなよ 早きハタレに 赴かで」(17文 )
 「荒猛心 子に求め 鋭き過ぎ ねぢけ 横しまの ハタレとなるぞ」(17文 )
 「鞭を逃るる 早利きを 褒め喜べば 過ぎねぢけ ハタレとなるぞ」(17文 )
 「オモタルの 民鋭過ぐれ 物奪ふ  これに斧以て 斬り治む」(23文)
 「誇る世は 陽陰の憎みに 雨風の 時も違えば 稲痩せて 民の力も やや尽きて 弥に苦しむぞ  飾りより 驕りになりて 鋭き図る 果てはハタレの 国乱れ 民安からず」( 23文 )
 「もしも司の 驕りにて 民を枯らせば 罪大し ヨコヘに更に 検めて その民活かす 臣・小臣 驕り忍びて 道守れ」(23文)

22、イムク(いむく)           
 いのむくは ほのあやまちと つつしみて 夷(い)の背(む)くは 央(ほ)の誤ちと 謹みて
 のそみもにけの いにやむくらん 望みもにけの 夷にや背(む)くらん
 (訳) "い(忌・穢)" が向いたならば、心に過ちありと留意せよ。されば望みも同じ "い" でも、賑やかな "い(斎・活)" に向かうだろう。

23、イエテ(いえて)          
 いえてねる をきなかしほも めひかみも 気合(いえ)て練る 翁が塩も めひ神も 
 へそめよとめも ゑめやゑるらん    ヘソ姫ヨド姫も 笑めや得るらん  
 (訳)

 「然にあらず 徒に作れば 枯木なり 霊魂あればぞ 例ふれば 潮の味あり 計らねば 味無し 焼けど 塩成らず この天形も 心味入れて 成すなり」(12文)
 「畏れて百日の 物忌し 右目一つで 錬る剣 八振 上ぐれば 詔」(23文)
 「アカ女を褒めて "ヨト姫"と 君は鉤を得て 喜びに シガの守して 返さしむ」(25文)

24、イネセ (いねせ)         
 いのねせは のりにあふるる あおめらや 妹の捩せは 法に溢るる 青(おお)侍(め)らや
 わかめのなたも ゑもりなすらん  若女のなたも 燻(ゑも)りなすらん
 (訳)

 「背の央中に 妹ありと 腹悪し言葉 無かるべし 腹 病めぬ間に 妙に察せよ」(13文)
 「内宮の 青女の燻り 気を冷ます 傍のコトシロ 忠なれば これを冷む女が 恨むなり」(16文)
 「君が恵みも つい忘れ 恨み妬むの 庭桜」(16文)
 「女は一途に 思えども 妬み煩ふ 胸の火が オロチと成りて 子種噛む」(16文)
 「添の捩せば 総ヤマスミの 神 祭れ 妻の操も 妬みねせれば」(フ104)

25、イコケ(いこけ)          
 いもこけの おろちかこりの ひめかむお  妹こけの オロチが凝りの 姫噛むを 
 たつとかくしの はかみなるかな  断つ戸隠しの はかみなるかな
 (訳)

 「女は一途に 思えども 妬み煩ふ 胸の火が オロチと成りて 子種噛む」(16文)
 「ふたオロチ 姫に生まれて 君召せば モチは御子生み スケとなる ハヤは姫生み 内局 内セオリツが 御后に なるをモチコが 殺さんと 妬めばハヤは 君を退い 弟君媚えど 露れて 共に流離ふ アカツチが 姫を弟君に 因むをば ハヤがオロチに 噛み殺す 弟アシナヅが 姫を乞えば 七姫までは 噛み食らふ」(28文)
 「トカクシ曰く 汝今 日三の炎を 絶つべしぞ 我が食食みて 下に居れ 清身を守れば 罪消えて また人成ると 緒を切れば 万の緒絶の 山ぞハコサキ」(28文)

26、イオレ(いおれ)          
 いのおれお さるたかとりて かくらしし いのおれを サルタが統りて 神楽獣(かぐらじし)  
 よこまおはらす よよのかんかせ   汚曲(よこま)を祓(は)らす 代々の神風
 (訳)

 「好むウスメを 賜りて その名顕す 猿部等と 神楽獣の 君の元なり」(24文)
 「鹿島神楽の 獣舞を 問えばトキヒコ これ昔 妙に渡りて 騒しばむを 辻君統りて 奉る 君楽しみの 神楽獣 八万鹿島に ある形 障り無かれと 玩ぶ 猿治の神の 名にし負ふ」(40文)

27、イヨロ(いよろ )          
 いのよろの たねはよわきも なかはしら   いのよろの 種は弱きも 中柱  
 もろもつくみも いよろなるへし 諸も次ぐ身も 弥宜(いよる)なるべし
 (訳) 君は繁栄の種である。たとえ貧弱な君であっても周りの臣や小臣が次第に向上し補って行くものである。

 「嗣子なく 道衰ひて 弁別無」(ミ2文)
 「天の守 嗣無く政り 尽きんとす」(23文)
 「地上の 御柱の随 成る如く 政りほつまに 調ひて」(24文)

28、イソノ(いその)          
 いのそのは やなきさくらの ことよりも 妹の園は 柳桜の ことよりも  
 かすみにももの はなやおそらん かすみに桃の 木や惜(お)そらん
 (訳) 女の園では、見て楽しむだけの柳や桜の類よりも、色と食の材料となるかすみ草や桃の木がもてはやされるに違いない。

29、イユン(いゆん)          
 いのゆんの あたはたちはな めはさくら  忌の弓の 的(あた)は橘 めは桜
 やむもしなとの いゆんなすなり  病むもシナトの いゆんなすなり 
 (訳) 
 不詳。植物の病気や害虫のことを言うか。 ここでの「い」と「め」はどちらも「汚穢」の意と思われるが、違いは区別できない。  "シナトの斎弓" は、シナトの風が汚穢隈を吹き払う事を言うと思われ、これはワカ姫の "押草に煽ぐ祓い" を思い出させる。また橘は右、桜は左を象徴し、これは君の守りの両羽である鏡臣・剣臣を暗示するのかもしれない。

 「南の殿に 橘植えて 橘の宮  東に桜植え 大内宮」(6文)
 「左はタニの サクラウチ 弥の桜の 鳴らし歌 右はヲヲヤマ カグツミの 研き優く橘の 祝歌」(14文)
 「叢雲覆ひ 暗ませば シナトを招き 吹き払ふ」(8文)
 「シナトベの神 現れば 道の明奪ふ 八重雲を シナトの風に 押し払ひ 夜も明け方と 知らすべし」(22文)

30、イツル(いつる)          
 いのつるは はやこかをろち まつられて  忌の連は ハヤコがオロチ 祀られて 
 なるいわなかも みさほおちつる 生るイワナガも 操堕ちつる
 (訳)

 「アカツチが 姫を弟君に 因むをば ハヤがオロチに 噛み殺す 弟アシナヅが 姫を乞えば 七姫までは 噛み食らふ」(28文)
 「時にソサノヲ これを斬り 身をヤスカタと 祭る故 またヤマスミの 姫と生まれ 妹を妬む 罪の鳥」(28文)
 「これソサノヲの オロチをば 連り ヤスカタ 神となし ハヤスヒ姫も アシナヅチ 七姫祭る」(39文)
 「母・姉 恨み 下侍して 妹陥さん 他枕」(24文)

31、イヰサ (いゐさ)         
 いのいさの ことにやわらく ならわせや  初(い)の斎(いさ)の 琴に和らぐ 慣わせや  
 うなひこのふゑ もゐなさふくらん  ウナヒコの笛 陽風(もゐなさ)吹くらん
 (訳)
 フトマニ中に二首ある字余り歌(三十二音)の一つ。

 「七種の 御饗に歌の 日数経る ワカタリヒコと タケウチと 内に参らず 故召して 問えば申さく 愉らく日は 遊び戯れ 異忘る 狂え人あらば 窺はん」(40文)
 「ヒの嘗は 西南にイナサの 初日より 二陽を和せて」(ミ7文)

32、イナワ(いなわ)           
 いのなわの ふみもとほれは いもをせも  意の縄の 文も通れば 妹背も 
 なかにたのみの いなわひくらん 中に頼みの  結縄引くらん
 (訳) 思ひをつなぐ文で心が通ったならば、彼と彼女は間に頼みの仲人を立てることでしょう。

33、フヤマ( ふやま)          
 ふのやまに おもひつくみの とりゑなみ 富の山に 思ひつく身の 捕餌呑み 
 みにいたつきの いるもしらすて  実に労きの 入るも知らずて
 (訳) 欲に心囚われた者は 現し世の罠とも知らず目前の富に喰い付く。     鉤は遂には魂の緒にからみ、人としての来世は無い。

 「ハタレマの 宝集めて 末消ゆる これ鈴暗ぞ 生きの内 欲を離るる これは鈴明ぞ」(13文)
 「陰陽を結びて 人心 世に還る時 直ぐなれば また良く生まれ 汚欲は 敢え還らぬぞ」(13文)
 「右の欲を 羨む人が 交む故に 魂の緒乱れ 辻風の 岐に魄の 苦しみが 獣となるぞ」(13文)
 「他人を惑わす 我が欲も 他人は打たねど 魂の緒に 覚え責められ 長き夢」(13文)
 「直からざれば 人ならず 世に在りながら その業に 産める宝を ただ乞ひて 食らふ狗こそ 大の潰よ」(13文)
 「宝集めて 蔵に満つ 塵や芥の 如くなり 心素直の 人あらば 我が子の如く 取り立てて 満な足す時は 欲もなし」(13文)
 「塵と集めて 余に迫り 羨むモノが 交む故に 魂の緒乱れ みやなくて 末守らぬを」(13文)

34、フハラ (ふはら)          
 ふのはらの みやはたからお はらませて  二の孕の 宮は宝を 孕ませて
 したうほつまの たみそうみける  慕うホツマの 民ぞ生みける
 (訳) タクハタチチ姫の二孕み目の御子のハラの宮(ニニキネ)は、 宝(ニハリの民)を孕ませて、ホツマの民を生むのである。

 「大御神 ハラの央君と 名を賜ふ ニハリの民が 子と慕ふ 振りも分かれて 元民と 水際 別れ」(24文)
 「地上の 御柱の随 成る如く 政ほつまに 調ひて 二万八千経て 三十鈴の 暦なす頃 国の名も 地上ホツマ」(24文)

35、フキニ( ふきに)          
 ふのきにの あらそうとみの ことわりお 経の抗(きに)の 争う臣の 理を 
 やわせはたみの ふゆそきにける   和せば民の 映(ふゆ)ぞ来にける
 (訳) 臣同士が相争うのは長い歴史を持つ必然であるが、それを和せばこそ民は映えるのであるぞよ。

 「勢の抗の 東・西・南に臣の 争ひも 西・南 長は病めて 抗や和ぐらん」(フ19)
 「勢の鋭りの 争う 充つの 地の殊 君が平へに 引きや散るらん」(フ20)
 「勢の繁りの 民栄を消す 争ひの 乙が乱れば 主や散るらん」(フ84)
 「繁の抗の 経矛に充つの 争ひも 上が愚かに 肝や潰むらん」(フ115)

36、フチリ(ふちり)           
 ふちりとは たからうつらの ぬくめとり 太領(ふちり)とは 高らう面の 温(ぬく)め鳥 
 むくいくはらは たみもちるらし  椋活く原は 民も繁るらし
 (訳) 優れた政とは、上層の面々(君・臣)が温め鳥になるようなものである。ちなみに椋鳥が繁殖する所では民も茂ると言うぞ。

37、フヌウ(ふぬう)           
 ふにぬうは めなきもみはの むめのはな  布に和うは 穢なき紅花の 梅の花
 さすらやまひも ふにそぬひける 流離(さすら)病も ふにぞぬひける
 (訳) 布に合せる紋には、穢れ無き紅色の梅の花。 流行り病も布に拭い取ってくれるぞえ。

38、フムク (ふむく)          
 ふにむくは あわのおこりの こえすきお 浮に向くは 陽陰の起りの 声直ぎを 
 しつめくたせは ふみにおもむく  親つめ下せば 文に赴く
 (訳) 向上とは、万象の起源たる陽陰歌に親しみ、それを噛み砕けば自ずと教えや書物に赴く、こんなものである。

 「二神の 天の陽陰歌に 国を生み 地の陽陰歌に 音声成る」(ミ1文)
 「五歳冬 男は袴着る 女は被衣 言葉を直す アワ歌を 常に教えて」(1文)
 「陽陰の歌 カダカキ打ちて 率き歌ふ 自づと声も 明らかに」(1文)
 「二神の オキツボに居て 国生めど 民の言葉の 悉曇り これ直さんと 考えて」(5文)
 「五音七音道の 陽陰歌を 上二十四声 イサナギと 下二十四声 イサナミと 歌い連ねて 教ゆれば 歌に音声の 道開け 民の言葉の 調えば」(5文)
 「下りて共に 婚ぎして 御柱回り 陽陰歌を 詠みて オノコロ 万物を 生みしは」(18文)

39、フエテ(ふえて)         
 ふおえては たみおそこなう をさとみか  富を得ては 民を損なう 長・臣が 
 うそやくすりも ふえてたすらん 嘘や薬も 増えて治すらん
 (訳)

 「力貸す 恵み忘るる 二百座 避るも百座 踏むが五十 掴むの六十で 四百十座 これ 逃るるや」(7文)
 「賂掴み 忠ならず 遂にオロチに 舐められて 法の崩るる 節々に ハタレのモノの 蠢めきて」(8文)
 「例えば曲人 賄ひて 栄い増さんを 臣も欲し」(17文)

40、フネセ (ふねせ)         
 ふのねせは ぬすむたからも おとかわさ ふの捩せは  盗む宝も 劣が業 
 くるしくうせて ねせやふすらん      苦しく憂せて 捩(ね)せや悉(ふ)すらん
 (訳) 二度目の捩せ(心の曲り・逸脱・惑い)に盗みを働き、宝を得たとても、これは愚かなる所業。     心 苦しく憂鬱で、捩せ(態度・言葉・行動に表れる歪み)は、酷くなるだろう。

 「盗みも他人が 知らざれば 宝 得るとぞ 思えども 一度 隠し 二 盗み 三度 損なひ 改めず 天・地・人の 見る所」(17文)
 「隠し盗むも 身に添ふる 風より天に 告ぐるなり 二の盗みは 跼り 抜き足なすも 土の神 恵みによりて まだ告げず 三度損ふ 己が胸 騒ぎあるより 言 震え 見目に表れ」(17文)
 「盗む心端 ミヤビより 五臓に告げて 安からず 見目に言葉に 跼り 抜き足 応ふ」(17文)
 「人見ぬとても 盗むなよ およその人は 知らねども 穢現るる 元の守」(17文)

41、フコケ( ふこけ)          
 ふのこけは はやりおかそう もともとの  振の痩(こ)けば 栄(は)やりを数う 元々の 
 をきなかわさに あみりたすへら    翁が業に あみり養(た)すべら
 (訳)
 不詳。   「元々の大祖が業」とは具体的に何を指すのだろう。「ひふみの祓(振る宣言)」を言うか。

 「天地未だ 成らざるに アメノミヲヤの 成す意気は 際なく動く 天元神」(ミ6文)
 「天元顕れ 生みて乗る ウツロ・シナトに 国を巡り あり様成せば 月の水 海と湛えて」(ミ6文)
 「ミナカヌシ 地球八方に 万子生み 初に大海の 兄弟の子の ヱ御子天に継ぎ 大海治す」(ミ6文)
 「弟のミコト 兄に受け治む これよりぞ 代わる代わりに 代を継ぎて」(ミ6文)
 「天に還れば ミナカヌシ 及びヱ・ヒ・タ・メ ト・ホ・カ・ミも 天に配りて 星となす アメトコタチの 神はこれ」(ミ6文)

42、フオレ(ふおれ)           
 ふのおれは あめのたたりの こほりふむ  ふの生れは 天地の祟りの 氷踏む   
 ことのはしめも ふみやおそれん    事の始めも ふみや恐れん
 (訳) 栄を生む前には、天地の審判の薄氷を踏まなければばらない。 だから物事の最初の一歩を踏み出すには勇気が要るのであるぞよ。

 「天地の報ひは 盗めるも 謗るも打つも 己に返る 人を打てども その時は 痛き報ひも あらざれど 後の病ふは 天地が槌」(17文)
 「風・埴神の 守る故 見る 聞く度に 善し悪しも ひめもす天地に 告げ あれば」(17文)

43、フヨロ(ふよろ)           
 ふのよろは くにうむかみの をしおして  経の万は 国生む神の 御使をして
 わさもよろこふ もうけなりけり   業も喜ぶ 儲けなりけり
 (訳)人の寿命は天元神がその御使をして結ひ和す。長き寿命は人の為す業も優れさす。これは恵みなり。

 「クニトコタチも 和り恵り 堅地に 八方を 何県と 生む国総べて オノコロぞ」(18文)
 「十六万八千の モノ 添ひて 人生まる時 本つ神 そのタエ守が 種下し モノと魂・魄 結ひ和す」(14文)
 「傍にトホカミ ヱヒタメの 八神は人の 魂の緒を 膨み振らせて 永らえを 結び和せば」(フトマニ)
 「世の身々の 垢は天元の サヲシカに 清め賜ひて」(28文)

44、フソノ(ふその)           
 ふのそのは をこぬのかみの こかひして  布の園は ヲコヌの神の 子交ひして  
 なもこゑくにの ふそのゑるなり    名も蚕得国の 富園得るなり
 (訳) "布の園(織物の国)" と呼ばれる所は、大国主神の子のコモリを介して蚕飼を得て、名も"蚕得国(肥え国)"という豊かな園を得たのであるぞよ。

 「モノヌシは 桑好きを見て アサ姫に 蚕飼衣織る 経緯の 道教ゆれば ヲコタマの 神を祭りて 五座治し 衣差し作り 経緯の 道教ゆれば 八方徹り 蚕得国の守 ヲコの里 蚕飼得るなり」(24文)

45、フユン (ふゆん)         
 ふのゆんは たおうけもちの ししかきや  布の斎は 饒ウケモチの しし垣や
 よこまおをそう ふゆんなりけり 汚曲を抑う ふゆんなりけり
 (訳) 斎餞としてウケモチ神に捧ぐ赤白黄の木綿は、神の霊が宿り穢を祓う垣となる。邪を抑える繁栄の結(囲み/木綿)であるぞ。
 「ゆん」:(1) 斎ひ。上げること。捧げること。奉納。 (2) 結ひ。囲み。垣。 (3) 結ひ。結った物。織物。木綿。

46、フツル(ふつる)           
 ふのつるは とみもよひなき とりゑなみ 富のつるは 富もよひなき 鳥餌並み   
 たつはなやかの ゐもやつくらん  立つ華やかの  熟や継ぐらん
 (訳) 富というものも、足り至れば輝きを失い、鳥の餌程度にしか見えなくなる。次に来るのは "目立ち" "華やか"の追求である。
 鳥の別称として「とみ」("飛び" の訛) があることから、「とみ(富)」に掛けて「とりゑ(鳥餌)」をつまらない物の代表としている。

47、フヰサ(ふゐさ)           
 ふのゐさめ あらかねわけて ねりきたえ   鈍の勇め 粗金分けて 錬り鍛え 
 かまもつるきも かそえやわらく     釜も剣も 赤添え柔らぐ
 (訳) "ふにゃふにゃ" を硬くする法。 粗鉱を分類厳選し純度を高めて練り鍛えるべし。     釜も剣も銅が混じると柔になる。 人の心も "赤(華やか)" が混じると柔となる。

 「富の至るば 富も映なき 鳥餌 並み 立つ・華やかの 熟や継ぐらん」(フ46)
 「卑の転の 赤 交さば 垂たひ 金も赤・白と 練るや転けらん」(フ57)

48、フナワ (ふなわ)          
 ふのなわの まつりとほれは いもをせも 文の縄の 纏り徹れば 妹背も
 なかにみちひく ふなわなりけり   中に導く 文縄なりけり
 (訳) 中央政府の経矛の縄の縛りによって遍く世はまとまる。男女は文の縄をつないで一つにまとまる。

49、ヘヤマ (へやま)          
 へのやまは きさきみさほの さわまちて   経の病は 后操の 清全ちて
 まつもおえれは あいもののやま 待つも老えれば 間物の山
 (訳) 経の病とは... 局達は清心を全うして操を保ち、君のお召しを待つも、老いては間物(新鮮でない保存食)の山となる。(初心貫徹の気持ちは尊いが、それがいつしか意地や執念や恨みに摩り替わってしまうことも多い。爽やかな引き様も肝心。)

 「君の心と 我が花と 合ふや合わぬや 敢え知らず てれば恨むな 厭けらるも 上も端も寄らず 求むなり てれば召すとも 幾度も 畏れて 後は 恨みなし 謹みはこれ」(16文)
 「満の花も 人も' 移れば 散る花ぞ 誰 指し恨む 人もなし」(16文)
 「他人を妬めば 日に三度 炎食らひて 身も痩する」(16文)
 「女は一途に 思えども 妬み煩ふ 胸の火が オロチと成りて 子種噛む」(16文)

50、ヘハラ (へはら)          
 へのはらは はたまさゆりに なつらえて  舳の治は 機回揺に 擬えて     
 つきこもわさも はらむなりけり 嗣子も業も 孕むなりけり
 (訳) 君の政は機織りに似る。機を織り綴る如くに次世代を生み育て、機を織り綴る如くに世の業を興し高めるのである。

 「ミカサ社に アマノコヤネの 説く文は 経に緯織る 政り事 四方人草を 治むなり」(ミ1文)
 「君の政りも 速やかに もつれを正す 守の道 形と'努め 満ちと'身 と 四つの教えも ただ一道 ヲコヌの神の この四つを 天地人に統れる 人の身の 四つを謹む 機の道」(ミ1文)
 「照る東西南北の 中にいて 君の治むる 祭り事 万機すべて 四方を備えり」(ミ1文)
 「この三つを 合わす鏡の ヤは社 タは民を治す その君の 万の御機の 政り事 治む八隅の 民は八尺 八民普く 照らさんと ヤタの鏡と 名付くなり」(17文)
 「天法を 民一組が 乱れても 筬巡らねば 機織れず 故治むるは 機の道かな」(23文)

51、ヘキニ(へきに)           
 へのきには つまのふをみも なおとみと  への熟は つまのふ大臣も なお臣と 
 いうもよききに なかれゑるなり  言う百・万聞きに 流れ得るなり
 (訳) 謙譲心の広まり... 錚々たる大臣ですら、なお自らを "トミ" と名乗る。下位にある多くの臣はそれを聞く。 こうして謙譲心の浸透する流れが起るものである。

 「我はトの道に 治む故 オもトミなり」(23文)
 「この心 万の政りを 聞く時は 神も下りて 敬えば 神の御祖ぞ この道に 国治むれば 百司 その道慕ふ 子の如く これも御祖ぞ    この子末 民を恵みて わが子ぞと 撫づれば還る 人草の 御祖の心」(27文)
 「偉山なる 高きは聳え 下りやせん 下りに装うて 礼成るべし」(フ17)

52、ヘチリ(へちり)           
 へのちりは つきほもとみも たみわさも 侍の精(ち)りは 継日も臣も 民業も
 つまのうつくに やみやちるらん       つまのうつくに 病みや散るらん
 (訳) 添者の功... 君でも臣でも民であっても、妻の尽しに闇(病・穢・衰)は退散するだろう。

53、ヘヌウ (へぬう)          
 へにぬうは まつりとるみの むらさきそ 侍に貫うは 政り執る己の むらさきぞ  
 いさめつくせは たみそぬいける   いさめ尽せば 民ぞ伸いける
 (訳) モノノベに徹底して仕込むべきは、"執政者たる自己の向上" である。それを高め尽せば当然に民も伸長するのである。

54、ヘムク ( へむく)         
 へのむくは みくさたからに さかしりて への向くは 三種宝に 栄しりて  
 たみもみなみに むくそとうとき  民も南に 向くぞ尊き
 (訳) 卑の向上育成は、三種の器法があればこそ成る。民とて高みに心向けば尊き者となる。

 「手鍋をさくる 汚きも 磨けば光る 上となる 国守・民の 諭しにも 付離為させる 妹背の道」(13文)
 「横しまが 縦を捩けて 床闇の 斜和して やや統つむ これも三種の 器法  あらで如何んぞ 得ざらんや 兼ねて思えば マス鏡 青人草も 直ぐとなる 人に於けらば 限りなし」(17文)
 「培ふば 卑の葦原も 瑞穂成る 民と成せ臣 臣と成れ民」(17文)
 「かくの教えに 導きて 民も気安く 賑わせて その地保つ 者あらば 末民とても 上の臣 必ずヲシテ 賜ふなる」(17文)

55、ヘエテ(へえて)         
 へのえては みつにあふるる くにまつり  への得ては 充つに溢るる 国政り 
 ねこにめくみの かえてかまるる  猫に恵みの 返て噛まるる
 (訳) 愚かな者が治者の地位を得ても、その手に余る国の政り。猫に小判を与えては、あちらも迷惑、こちらも痛い思いをするだけ。

56、ヘネセ (へねせ )          
 へにねせの みめはいねころ えのいぬお  辺に伸せの 見目は稲頃 厭忌を  
 なつはにすてて いねやおきらん  夏初に棄てて 稲や熾きらん
 (訳) 田の縁に伸びる雑草の景色は田植え頃。エノコ草の類を初夏に取り除いてやれば、稲はすこやかに育つだろう。(口の縁に生える髭の景色は成長の頃。成長の盛りを迎える時に周囲の悪影響を排除しないと、人も真直ぐに育たない。)

 「莠や オノコ草 稲・栗成らず 肖りて 人も生まるる 道忘る 例えば嗜む 枯らし虫 魚・鳥・獣 合い求む」(13文)

57、ヘコケ (へこけ)         
 へのこけの かかさはちたひ をうなむち  卑の転の 赤交さば垂たひ ヲウナムチ 
 かねもかしろと ねるやこけらん    金も赤・白と 練るや転けらん
 (訳) 卑への転落は、華美を追い求めて衰退したオオナムチ。硬い金属も赤(銅)や白(銀)と混ぜれば柔に転じるではないか。

 「富の至るば 富も映なき 鳥餌 並み 立つ・華やかの 熟や継ぐらん」(フ46)
 「鈍の勇め 粗金分けて 錬り鍛え 釜も剣も 赤添え柔らぐ」(フ47)

58、ヘオレ(へおれ)           
 へのおれは まつりみたるる うはなりに への央れば 政り乱るる 上なりに  
 よこしとつれは たみもおそれよ    よこしとつれば 民も恐れよ
 (訳) 卑なる者が中心(メジャーな勢力)となれば、政は乱れる。にわかに脾(民)が力を伸ばすような場合には、民といえども警戒せよ。

 「五腑六臓も 地の道 中臓は君ぞ 肝は臣 脾は民よ 肺垣 腎は平らす 腑副手」(17文)

59、ヘヨロ (へよろ)          
 へのよろは ほこのしつくと みなれくさ  への万は 矛の雫と 水生れ草 
 こふもうみへに なれやよろこふ    昆布も海辺に 生れや喜ぶ
 (訳) 卑人(民)の大方は衣食住が何とか足りればそれで満足し、それこそが人生と思っている。それ以外の何かを求めるということはない。

 「二神は うきはしの上に さくり得る 矛の雫の オノコロに 宮殿造り」(2文)
 「褒衣美味きに 耽る故 稀に生まるも 貧しくて 奴となりて 身を凌ぎ 人楽しまず」(13文)

60、ヘソノ (へその)         
 へのそのは たまにうるほす まつりこと への園は 尊に潤す 政り事  
 かてたるそのは ゆくもやすらか   糧足る園は 結くも安らか
 (訳) 低きを高めるは、貴きがその光を分け与えるという政事であるが、食が足りている国では治めも滑らかなものとなろう。

61、ヘユン(へゆん)          
 へのゆんは うおもこおうみ あきくたる 卑の熟は 魚も子を生み 秋朽る
 のそみのやさき ほしおすこすな  望みの弥咲き 欲しを過ごすな
 (訳) 魚も子を生んで秋にはその一生を終える。卑人の完成もこれである。野心・欲望の度を越してはならない。

62、ヘツル(へつる)        
 へのつるの すすにうるほす をうなむち  卑の連の 末々に潤す
 みやもふくしも つくみしのはな   宮も肺も 噤みしの華
 (訳) 卑の連中の末々までも潤すオオナムチ。皇の宮も瑞垣も色褪せて見える程の栄華であった。

 「己はイヅモに 教ゆるに 一二三六百八十 二俵の ヒモロケ数え 種袋 槌は培ふ 御宝 飢え治す糧も 倉に満つ 雨・風・日照り 実らねど アタタラ 配り 飢えさせず」(9文)
 「出雲八重垣 オホナムチ 満つれば欠くる 理か 額を玉垣 内宮と これ九重に 比ぶなり」(10文)
 「築く九重 玉垣の 内つの宮に 比べ越し」(ミ逸文)
 「五腑六臓も 地の道 中臓は君ぞ 肝は臣 脾は民よ 肺垣 腎は平らす 腑副手」(17文)

63、ヘヰサ (へゐさ)          
 へのいさの ふねはをしゑの をおなむち  舳の美の 船は教えの ヲオナムチ
 うえみぬきぬお かふりゐさめつ      飢見ぬ衣を 被り諫めつ
 (訳) 舳を飾った船(鏡の船)に乗って来たスクナヒコナは、オオナムチを教える。飢を見ぬ衣(染め飾り無き木綿)を着て華美と驕りを諌めつつ。

 「クシキネアワの ササザキに 鏡の船に 乗り来るを 問えど答えず」(9文)
 「クヱヒコが カンミムスビの 千五百子の 教えの結を 漏れ落つる スクナヒコナは これと言ふ」(9文)
 「夏はヌサ 績みて布織 冬はユキ 撚りて木綿織 着る時は 上・下 弥々の 気も安ぐ」(23文)
 「木綿・布・絹を 染め飾る これ為す人は 耕さで 暇欠く故に 田も粗れて たとひ実れど 乏しくて」(23文)
 「飾りより 驕りになりて 鋭き 図る 果てはハタレの 国乱れ  民安からず 故常に 民の気安き 木綿を着る」(23文)
 「昔乱れず 驕らぬを 粗衣を着ては いづくんぞ」(23文)
 「後の世に 弥治まれば 飢え知らで 驕る楽しの 満つる時 飢え遠し頃は 実らずて 真に飢える」(23文)

64、ヘナワ (へなわ)         
 へのなわの つりはゑみすの ほとほとに  への縄の 釣はヱミスの 程々に
 あゐとたゐとの とみそまねける  鮎と鯛との 富ぞ招ける
 (訳) 縄張を広げるのは、ヱミス(クシヒコ)のように程々に。そうすれば天意(神意)と尊意(皇意)の両方の幸を招くであろう。

 「オホナムチ 応え問わんと ミホサキの 連へ雉子の イナセハギ 天の応えを 問ふ時に コトシロヌシが 笑す顔」(10文)
 「我涼かにて 父母に ホロロ泣けども 鉤の鯛ぞ 肴と切るも 愚かなり タカマは民の 笑す鯛 いとかけまくぞ 御言宣」(10文)
 「汝モノヌシ クシヒコよ 国つ女娶らば 疎からん 我がミホツ姫 妻として 八十万守を 司り 御孫を守り 奉れ」(10文)
 「賜ふヨロギは 嘗事の 千草万木の 名を立たす この宮領れば 弱のため 病めるを癒やす 道を分け」(10文)

65、モヤマ ( もやま)         
 もやまとの みちはつきせし ありそうみの  元ヤマトの 道は尽きせじ 荒磯海の  
 はまのまさこは よみつくすとも   浜の真砂は 熟み尽くすとも
 (訳)
 フトマニに二首ある字余り歌(三十二音)の内の一つ。三十二は「みそふ(禊ふ)」に通じ、祓の歌だという。君が代 も三十二音で、なぜか内容も似通っている。『君が代は 千代に八千代に 細石の 巌と成りて 苔の生すまで』

 「磯の地の 真砂は熟みて 尽くるとも ほつまの道は  幾代 尽きせじ」(序)

66、モハラ (もはら)         
 ものはらの ほこにもとつき やわらきて ものはらの 矛に基づき 和らぎて
 よこもすなほに なかれゆくなり    邪も素直に 流れ行くなり
 (訳)

 「かく御心を 尽し生む 一姫三男神 生みて 治の 君・臣の充ち 調の教え 逆り惇らば 綻ろばす」(3文)
 「民を我が子と 育つるに 篤く教えて 人となす 教えても尚 逆らはば 討ち綻ばせ」(17文)
 「剣の元は 天の矛 クニトコタチの 代にはまだ 矛無き故は 素直にて 法を守れば 矛要らず」(23文)
 「また矛も 宝の故は 調の道に 国治むれど その中に 横転く者は 己が実に 合わねば道を 逆に行く」(23文)
 「青人草も 繁に増えて 道を告れても 届き兼ね 来末 破るる 基かや 時矛振らば 速やかに 通らんものと 剣成す」(23文)
 「治むる道の 乱れ糸 切り綻ばす 器物 天の教えに 逆らえば 身に受く天の 逆矛ぞ」(23文)
 「矛の掟は 御恵みに 横曲滅ぼす 端の抜き」(ミ1文)

67、モキニ  ( もきに)        
 ものきにの のりはおろかに あらためす   もの熟(きに)の 法は疎かに 新ためず 
 もとおをこせは われもきにけり    元を熾せば 割れも来にけり
 (訳) 元々あるものを温め直したような法は、通り一遍の疎かなもの。 新たに起草することなく、元法を単純に拡張すれば破綻が起きて当然である。

68、モチリ(もちり)        
 もちりなる はなはよつきの たねまてと  もちりなる 花は世嗣の 種待てど
 わさもうすくて もめやちるらん   業も薄くて 揉めや散るらん
 (訳) ねじれ(妬み・嫉み)が凝り成った花(女)は、世嗣の種を待てど叶わず、所業も浅はかで揉めば散るであろう。

 「恨み妬むの 庭桜 咲かずば知れよ 万民の 恨めん侍殿 万桜 天に植えてぞ 愚か女が 妬むイソラの 金杖に 子種打たれて 流れゆく」(16文)
 「妬む妬まる みな咎ぞ」(16文)
 「謹む綾の 花と花 打てば散るなり」(16文)

69、モヌウ (もぬう)          
 もにぬえる みははたやすく あらためす 裳に縫える 衣は容易く 新ためず 
 もとのわかみに くらへぬうなり  元の我が身に 比べ縫うなり
 (訳) 喪に着る衣はやたらに新調するものではない。新調する場合は元の我が身に合せて縫うべし。 (衣法により、出世すると機の幅が変わるが、常時着るものでもない喪服のサイズには始めの自分を残しておけ。)






(私論.私見)