憲法裁判所が盧大統領の職務停止解除判決








(私論.私見)


韓国大統領:
職務復帰で談話 与野党対立の解消を約束

 【ソウル堀信一郎】韓国憲法裁判所の「弾劾棄却」決定で2カ月ぶりに復権した盧武鉉(ノムヒョン)大統領は15日朝、青瓦台(大統領官邸)で国民向けの談話を発表し、弾劾案可決で職務停止されたことについて国民に謝罪した。

 大統領はまず、弾劾問題を招いたことについて「すべては私が至らなかったためだ」と全面的に謝罪した。憲法裁判所で、弾劾が棄却されたものの「政治的責任はすべて私にある」と述べ、自身や側近の不正政治資金問題についても「私が責任を負う」と述べた。

 残り任期4年の国政運営については「政治改革が推進できるよう国政を安定的に管理する。国民は政治改革に動揺しない政府になることを望んでいる。私は政治改革に専念する」と述べた。

 また盧大統領の弾劾案可決の原因にもなった与野党対立を解消するため「(与野党が)互いに生き延びる政治を実践する」と約束した。

 和解の政治を実現するために「野党の意見を良く聞き、譲歩すべきことは譲歩し、妥協もする」と述べ、これまでの野党との対立姿勢を改めることを約束した。

 盧大統領は職務停止されていた2カ月間、青瓦台の公邸で読書や散歩などで過ごした。国民向けに演説をしたのは、3月12日に国会で弾劾案が可決されて以来、初めて。

毎日新聞 2004年5月15日 11時15分
【弾劾棄却】緊張感漂った憲法裁

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領弾劾審判の審理を行った憲法裁判所には、14日午前中張り詰めた緊張感が漂っていた。  
 
 9人の裁判官のうち、同日午前8時20分頃真っ先に出勤した周善会(チュ・ソンフェ)主審裁判官は、肩から重荷を下ろしたような表情でエレベータに乗った。彼は取材陣に「お疲れ様です。近く一緒に夕食でもしましょう」と話した。  
 
 続いて、権誠(クォン・ソン)裁判官や金栄一(キム・ヨンイル)裁判官、金曉鍾(キム・ヒョジョン)裁判官、宋寅準(ソン・インジュン)裁判官、全孝淑(キム・ヒョスク)裁判官、李相京(イ・サンギョン)裁判官が次々と到着した。  
 
 午前8時52分頃、最後に到着した尹永哲(ユン・ヨンチョル)憲法裁判所長は、「法廷ですべてを明らかにする」と短く答えた後、「どうも。これまでご苦労さまでした」と取材陣に最後の挨拶をした。他の裁判官は「特に感想はない」としながら急ぎ足で歩いたり、何のコメントもしなかった。  
 
 憲政史上初の大統領弾劾審判はわずか25分で終わった。予定より2分遅れた午前10時2分、法廷に入ってきた9人の裁判官が着席するや、尹所長は眼鏡をかけ、早速9ページにわたる判決要約文を読み上げた。  
 
 「大統領 盧武鉉(ノ・ムヒョン)に対する弾劾審判。まず、理由の要約を説明いたします」  
 
 国会の弾劾訴追案が適法だとの判断に続き、盧大統領の選挙法違反に対する判断に移るや、尹所長の一言一言に訴追委員側と大統領代理人団側の反応が分かれ始めた。大統領の“過ち”を指摘する部分では訴追委員側の表情が明るくなったが、尹所長が「職務行為による些細な法違反を理由に罷免する場合、憲法上の法益衡量の原則に反する」という部分を読み上げるや代理人団の表情が明るくなった。  
 
 ここ2カ月間、激しい攻防を繰り広げてきた訴追委員側と代理人団側は宣告直後、簡単な挨拶を交わさず法廷を出た。検察の先輩後輩である代理人団の李鍾旺(イ・ジョンワン)弁護士と訴追委員側の朴俊宣(パク・ジュンソン)弁護士だけが握手をして別れた。  
 
アン・ヨンヒョン記者 justice@chosun.com  
琴元燮(クム・ウォンソプ)記者 capedm@chosun.com


盧大統領は憲法裁判決の意味を読むべき

 憲法裁判所は14日、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領に対する弾劾訴追を棄却する決定を下した。盧大統領は大統領権限が停止されてから63日ぶりに職務に復帰することになった。 
 
 まず、幸いなのは大統領弾劾審判という韓国憲政史上初の事件が法の手続きに従って進められ、決着がついたことだ。大統領弾劾に対する立場がどうであれ、弾劾政局の当事者である盧大統領と野党をはじめ、国民は今回の決定を機に憲法の尊厳さと法治主義の重要性を改めて認識し、さらに成熟した民主主義に発展する契機にすべきだ。 
 
 憲法裁は国会が提起した弾劾訴追の理由のうち、「盧大統領の一部の発言と行動が憲法順守義務に背き、選挙法に違反した」と認めたが、側近の不祥事に対しては「大統領が指示、幇助、関与した事実が認められない」として認めなかった。また、経済破綻に対しても「法的判断の対象ではない」として認めなかった。 
 
 憲法裁が大統領の誤りだと認めた選挙法違反の部分が弾劾案発議の直接的なきっかけとなったことから、当時盧大統領がこれに対し国民と野党に適切な謝罪をしたなら、野党がこれほどのことを理由に弾劾を進めることについてもう少し熟慮したなら、世界の関心を集めた今回の弾劾事件は避けられたのではないかと考えざるを得ない。 
 
 つまり、憲法裁は大統領の憲法および法律違反を認めたものの、国民が選挙により大統領に与えた信任を剥奪するほど重大な違反ではないと判断、弾劾訴追を棄却したわけだ。このような憲法裁の決定を盧大統領本人や支持者はもちろん、弾劾を進めた側も恣意的に解釈し、政治的に利用しようとしてはならない。 
 
 今回の憲法裁の決定を最も重く受け止め、今後の国政運営と政治活動を展開するうえで憲法裁の決定の意味を深く認識すべき責任は盧大統領にある。憲法裁は、盧大統領が今年4月15日の総選挙を控え、特定政党への支持を繰り返して積極的に表明したのは選挙中立義務違反に当たると明確にした。 
 
 また大統領のこうした発言が選挙法に違反したという選挙管理委員会の決定を批判した内容は法治国家の精神に反するもので、憲法を順守すべき大統領としての義務に違反したものだと明らかにした。  
 
 これと共に大統領が自身に対する再信任を国民投票の形で問おうとしたことも、憲法により付与された国民投票の付議権を違憲的に行使するケースに該当するものとして憲法的義務に違反したものだと敵視した。これと関連し憲法裁は「韓国憲法で代表者の選出とそれに対する信任は選挙の形態でなされなければならない」と明かし、代議制の憲法的意味を明確にした。  
 
 それにもかかわらず、憲法裁が弾劾審判請求を棄却したのは、大統領のこうした憲法と法律違反行為が自由民主的基本秩序に逆行しようとする積極的な意思を持っており、法治国家の原理を根本的に問題にした重大な違反行為とはいえないという判断の下、罷免は違反行為に対する相応な懲罰の範囲を越えるものだという理由からだ。  
 
 憲法裁が大統領の憲法及び法律違反行為とそれに対する処罰の間で葛藤し苦悩した背景を理解しながらも、一つ疑問が残る。それは大統領が明白に実定法に違反したにもかかわらず、それが罷免する程度の重大な事案でない限り、これを罰したり矯正したりする方法がないのかという点だ。  
 
 憲法裁はこうした法的空白状態の苦悩を判決文の至る所で盧大統領に対する警告や注文、さらには訓戒する表現まで盛り込むことで緩和しようと試みたようだが、このことが根本的な疑問を解いてくれはしない。  
 
 盧大統領が今後、国政遂行において留意すべき一節はこれに終わらない。憲法裁が大統領の政治的中立性を強調しながら盧大統領に「自身を支持した国民の一部や政治的勢力の大統領ではなく国家として組織された共同体の大統領であり、国民皆の大統領だ」と想起させた一節も同様だ。  
 
 盧大統領がノサモ(盧武鉉大統領を愛する会)の集会で行った市民革命発言との関連でも「特定市民団体に対する偏った行動は大統領を支持する国民の集団とそれを支持しない国民の集団とに国が分裂する現象を招来するものであり、国民全ての大統領として国家共同体を統合しなければならない責務とも符合しない」と指摘した。  
 
 憲法裁は特に、今回の棄却決定を明らかにする直前、「大統領の権限と政治的権威は憲法によって付与されたものであり、憲法を軽視する大統領は自ら自分の権限と権威を否定し、破壊するもの」と警告した。 
 
 これに続き「大統領は『法治と順法の象徴的な存在』として、自らが憲法と法律を尊重し順守しなければならないのはもちろん、ほかの国家機関や一般国民の違憲的または違法的な行為に対し断固たる態度で臨むことにより、法治国家を実現し、究極的に自由民主的な基本秩序を守るため、最善の努力を傾けなければならない」と強調した。 
 
 結果的に憲法裁は今回の決定で「法の違反事実より更に重要な問題は、盧大統領の法意識だ」と述べていることになる。盧大統領は今回の決定のこのような裏の意味を正しく読み取らなければならない。憲法裁の決定はまた、国民に模範を示すべき教師や公職者までが法を軽視し、法に対する不服従運動に乗り出す事態に対する厳しい警告でもある。 
 
 憲法裁とは国民の代わりに憲法を守る最終審判機関だ。この憲法裁が「大統領が法律を違反し、憲法順守の義務を違反した」と指摘し、さらに大統領の法意識の軽さを理路整然と指摘したのは、罷免決定がもたらす分裂と混乱を避けると共に、憲法の精神から大統領にはっきりしたメッセージを送らなければならないという切迫感と危機感を感じたからであろう。 
 
 憲法裁の今回の決定は、何よりも大統領が憲法の下にあり、「大統領が法を軽視する時、法治は確立されない」という平凡な原理を改めて確認したということに歴史的な意味がある。 
 
 憲法裁の決定は下されたが、「憲法裁の決定の正当性が歴史的に証明されるか」に関しては、今後、盧大統領の国政運営と政治が憲法裁の決定以前とどれ程違うのかにかかっている。 
 
 このような警告を受けたにもかかわらず、盧大統領が再び同様の憲法違反や違法行為を繰り返すとすれば、憲法裁の今回の決定は後々まで物議をかもすであろうし、結果的に憲法機関としての名誉を傷付けることに終るだろう。 
 
 従って今回の憲法裁の決定を実際に完成させる責任と義務は、盧大統領にかかっているといえる。




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韓国憲法裁 盧大統領の弾劾棄却 2カ月ぶり権限回復 国政正常化へ

 【ソウル14日藤井通彦】盧武鉉大統領の弾劾訴追案を審理している韓国憲法裁判所は十四日午前(日本時間同)、弾劾訴追案を棄却する決定を下した。三月以来停止されていた大統領権限は決定と同時に回復、弾劾手続きによる「大統領不在」という韓国政治史上初の事態に、二カ月ぶりに終止符が打たれた。

 決定を受け、青瓦台(大統領官邸)は「国民と歴史の前に謙虚に決定を受けとめる。新たな決意で政権発足時の(改革)精神を具体化していく」とのスポークスマン談話を発表した。盧大統領は十五日午前、職務復帰に当たり記者会見を開き、国民向け談話を発表する。

 決定で同憲法裁は、訴追理由とされた(1)総選挙に絡む与党・ウリ党支持発言による選挙法違反(2)側近の不正政治資金事件(3)経済破たん―について「与党支持発言は公務員の中立性に反するが、記者の質問に答えただけで計画性はなく、憲法秩序に反する意思はなかった。他も訴追理由とならない」などとして、「棄却が相当」との結論を下した。

 罷免決定には九人の裁判官のうち六人の支持が必要だったが、今回、各裁判官の判断は公開されなかった。

 韓国国会は三月十二日、野党のハンナラ、民主両党が提出した弾劾訴追案について、全議員の三分の二の賛成により可決。大統領は権限を停止され、高建(コグオン)首相が職務代行を務めてきた。

 弾劾訴追案への最終決定を下す憲法裁では、三月十八日に初審理が行われ、七回に及んだ公開弁論では、野党議員らで構成する訴追委員側と大統領の弁護人らが弾劾の当否を主張し合った。

 この間、弾劾反対、賛成が大きな争点となった四月十五日の総選挙では、弾劾の不当性を訴える与党・ウリ党が半数を超える百五十二議席を獲得し、勝利。韓国内では大統領に対し国民の信任が与えられたとして、弾劾審判の行方にも大きな影響を与えるとの見方が支配的だった。(西日本新聞)


韓国憲法裁が大統領弾劾棄却 盧大統領が職務復帰

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領に対する弾劾訴追の是非を審理していた韓国の憲法裁判所は14日、違法行為を一部認めたものの「弾劾に相当するほど重大なものではない」として、訴追を棄却する決定を下した。職務権限停止が続いていた大統領は即日、職務に復帰した。元首の「不在」という2カ月にわたる政治空白は解消し、盧武鉉政権は実質与党・開かれたウリ党が過半数を占める新国会を足場に再スタートを切る。

 大統領は15日に記者会見し、国民向け談話を発表する。当面、内閣の一部改造などを予定しているほか、弾劾をめぐる混乱を早く収拾し、経済安定や改革推進に全力を挙げる構えだ。

 大統領府は棄却の決定を受けて、「新たな決意で政権の出帆精神を具現していく」とコメント。大統領権限代行を務めてきた高建(コゴン)首相は「憲政史上初めての危機を混乱なく克服した。国民の協力に深く感謝する」と述べた。

 韓国憲政史上初の大統領弾劾審判は、憲法裁裁判官9人の審理の結果、弾劾(罷免)すべきだとの意見は成立に必要な6人に達しなかった。

 大統領弾劾案は3月12日、(1)(4月の総選挙を前に)無党籍の大統領がウリ党支持発言を繰り返し法治主義を否定した(2)側近の不正腐敗により国政運営の正当性を失った(3)国民経済と国政を破綻(はたん)させたとして国会で野党ハンナラ党、新千年民主党の主導で可決された。

 最大の争点とされたウリ党支持発言について憲法裁は「大統領は公務員としての選挙中立義務に違反した」と認定。昨年10月に自らの信任をかけた国民投票を提案したことについても「憲法守護義務違反」とした。その上で憲法裁は「大統領弾劾は重大な職務上の違反があった場合に限定される」との判断を示し、今回の違法行為が弾劾に相当するほど重大なものではないと結論づけた。

 側近不正、経済・国政破綻に対する責任論については「側近不正には直接関与しておらず、政策の出来不出来は弾劾理由にならない」とした。一方で憲法裁は「大統領は法治国家と自由民主主義の基本秩序を守る最善の努力をしなければならない」と憲法順守を求め、大統領側にもクギを刺した。

 弾劾の是非が争点になった総選挙は、反弾劾を訴えたウリ党が3倍増の152議席を獲得、訴追の正当性を主張したハンナラ党、民主党に大勝したことで、大統領は政治的復権の足がかりをつかんだ。選挙結果は憲法裁判断に影響を与えたと見られ、この日の棄却決定で大統領は法的な復権も手に入れた。

 憲法裁は3月30日に1回目の公開弁論を開催後、先月30日まで7回の公開弁論を開催。双方の主張を聴き、大統領側近らを証人に招いて事実認定に当たったが、大統領本人は出廷しなかった。

(05/14 11:31)

[5月14日14時49分更新]