政変その後
【韓国首相、外交安保閣僚会議を緊急招集】

 韓国大統領は、北朝鮮と軍事境界線を挟んで対峙(たいじ)する安全保障上の理由から、国軍の統帥権のほか憲法改正提案権や緊急命令権などの強大な権限を持つ。最高権力の空白を避け、代行する首相にも同様の権限が委譲される。高建首相は全羅南道知事や農水相、内相、ソウル市長を歴任し、2003年の首相就任も2度目。手堅い行政手腕には定評がある、との評価を得ている。

 大統領の職務を代行する事態は1979年10月に朴正煕大統領が暗殺されて以来。当時も崔圭夏首相が代行し、その後正式に大統領に就任したが、粛軍クーデター(同年12月)で軍の実権を握り光州事件(80年5月)制圧の指揮を執った全斗煥氏が、同9月に大統領に就任した。 

 韓国の高建(コ・ゴン)首相は12日、大統領弾劾訴追案の可決を受け、「この状況にまで至ったことについて国民に申し訳ない思いを禁じえない」とのコメントを発表した。首相はさらに、「国家的な困難を克服するため、各省は動揺することなく非常なる覚悟で国政遂行に臨んでほしい」とした。首相はまた、同日午後1時30分から外交安保閣僚会議を緊急招集する。会議には外交通商相、国防相、法相、行政自治相が参加し、国政運営に混乱が起きないよう対策を協議する。


【盧政権の外交・安保「支障なく進める」…高首相が談話】
 読売新聞情報(2004/3/13/11:35 読売新聞 無断転載禁止)によると、高建首相は13日午前、韓国軍の部隊3000人を4月にイラク北部・キルクークに追加派兵する計画や、北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議など、盧政権の外交・安保政策を「支障なく進める」などとする国民向け談話を発表した。大統領権限の停止という異常事態に伴う混乱を収拾し、内外の懸念を払拭する狙いだ。

 高建首相は、対外信用度の低下を招かないために「金融市場安定に最善を尽くす」としたほか、弾劾訴追案を成立させた野党ハンナラ党や国会を爆破するとの脅迫電話が続出していることなどから、治安対策も強化するとした。4月15日の総選挙での違反も「厳正に取り締まる」とした。また憲法裁判所に対しては、「(弾劾)審判の期間を最大限に短縮することを要請する」と述べた、とある。


韓国国会、26増の299議席に

 朝日新聞(03/09 21:01)によると、韓国国会は9日、国会議員定数を現行の273から299に増やすことなどを盛った選挙法改正案を可決した。4月15日投開票の総選挙では、選挙区は16議席増の243議席になる。また、比例代表は10議席増の56議席になる。議席数と区割りをめぐって与野党の利害が対立していた、とある。


韓国大統領の職務停止、与党議員全員が辞職決定

 【ソウル=豊浦潤一】韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は12日午後5時15分、国会がこの日可決した大統領弾劾訴追の議決書を秘書官を通じて受け取り、大統領権限が正式に停止、高建(コ・ゴン)首相が大統領職務代行に就任した。

 国軍の統帥権を含むすべての大統領権限を首相が代行するという史上初の事態が現実となり、韓国では、全軍に北朝鮮軍に対する監視・警戒態勢の強化が指示されるなど緊張が高まっている。事実上の与党、ウリ党は、弾劾訴追可決に抗議して、同党所属国会議員47人全員の辞職を宣言した。

 盧大統領は12日午後、青瓦台での閣僚との懇談会で、「今後、法的な判断と国民の判断が残っており、2つの判断に期待をかけて結果を待つ」と述べ、4月15日の総選挙でウリ党が勝利することを通じて、国民から間接的な信任を得た上で、憲法裁判所での審判で弾劾が否決されることに期待感を表した。

 憲法裁判所が180日以内に弾劾の是非を判断するまでの間、大統領職務を代行する高建首相は12日午後、全公務員に対し、行政能力の空白を防止し、政治的中立を守るようにとの指示を下した。大統領権限停止に伴う不測の事態に対応するため、チョ永吉(チョ・ヨンギル)国防相は、約50人の軍首脳部を緊急招集して軍務会議を開き、北朝鮮軍の動向などについて報告を受けた。警察庁は、全国の警察に警戒強化を指示した。(チョ永吉の「チョ」は「曹」のタテの「|」が1本)

 一方、弾劾訴追の議決書は12日午後、憲法裁判所にも送付され、同裁判所は、審判を統括する「主審」に検事出身の周善会(チュ・ソンフェ)裁判官(金大中大統領=当時=により指名)を選定するなど弾劾審判に向けた手続きに着手した。

 弾劾審判は180日以内に決定を出すが、憲法裁判所の尹永哲(ユン・ヨンチョル)所長は、「国家の重大事案であり、法的手続きに従い、迅速、正確に審議を進めていく」と弾劾審判を早期に開催する意向を表明した。

 青瓦台の大統領秘書室は、「今日の結果は、歴史と国民の審判に任せる。国政混乱を最小化できるように憲法裁判所の決定が早期に下されることを望む」との声明を発表した。

 一方、ウリ党は国会内で議員総会を開き、「このような犯罪を行う国会にこれ以上所属できない」として、同党所属の全議員の辞職を決めた。刑事事件での拘置や病気療養などで不在の5議員を除く、42議員が辞表を作成、国会議長に提出した。ただ、国会法で、正式な辞職には、開会中は本会議の議決、閉会中は議長の許可が必要とされており、辞表が今後どう扱われるかは不透明だ。ウリ党は、4月15日の総選挙での勝利に向け、野党を糾弾する姿勢を強めており、政局は一気に流動化している。

 (2004/3/13/03:03 読売新聞 無断転載禁止)

韓国3野党:国政混乱の収拾で一致 大統領弾劾で国民批判受け

 【ソウル堀信一郎】韓国の野党3党は13日、党首会談を行い、大統領権限代行の高建(コゴン)首相に積極的に協力し、国政混乱を収拾させることで合意した。

 ハンナラ党、新千年民主党(民主党)、自由民主連合(自民連)の3党は、高首相が同日の談話で、「困難を克服するため全力を尽くす」と発言したことを歓迎し、政権批判を控えることにした。野党が盧武鉉(ノムヒョン)大統領の弾劾訴追案を可決したことに約7割の国民が「反対」したためだ。

 中央日報の世論調査によると、「弾劾訴追案の可決はよくなかった」と76%が回答。韓国日報の調査では73%、文化日報の調査でも76%が反対している。

 野党3党の合計議席数は、国会定数(273)の8割を占めており、国会の主導権を握っている。今回の弾劾訴追案も混乱があったものの、数の力で可決した。

 だが、国会本会議場を占拠していた与党「開かれたウリ党」を強制排除しての採決だった上、史上初めての大統領不在という事態に社会不安が広がっている。このため、野党の支持率は急落し、韓国日報の調査ではハンナラ党が16%、民主党が7%になった。逆にウリ党には「同情票」も集まり、38%の支持率でトップになっている。

 こうした世論を受けて、野党3党はこれ以上、国政を混乱させるのは得策ではないと判断、異例の「政権支持」を決断した。

 ハンナラ党の崔秉烈(チェビョンヨル)代表は、党首会談前に開いた会議で「盧大統領よりも高首相が国を引っ張っていく方がずっと安定感がある」と絶賛した。

[毎日新聞3月14日] ( 2004-03-14-01:50 )


韓国:大統領弾劾巡り国論二分 各地で大規模集会

 【ソウル堀信一郎】盧武鉉(ノムヒョン)大統領の弾劾訴追案が可決された韓国で、弾劾の賛否を巡り、国論を二分する事態になっている。週末の13、14日夜には、弾劾反対派が各地で大規模集会を開き、ソウル中心部は騒然とした。警察当局は15日、夜間の大規模集会を禁止し、強制排除することを決めたが、市民団体は強行する構えを見せており、憲法裁判所での判決が出るまで混乱が続きそうだ。

 盧大統領の支持勢力は13、14日夜、各地で集会を開き「憲法裁判所は弾劾案を却下しろ」などと叫んだ。ソウルの青瓦台(大統領官邸)近くの大通りでは、数万人がろうそくを持って座り込み、弾劾案を可決した野党を「守旧議会のクーデター」などと非難した。

 集会参加者の多くが、盧政権を誕生させた若年層組織のメンバーだが、40〜50代の年齢層もかなり参加していた。

 これに対抗するように弾劾に賛成する保守系団体も、今週から大規模集会を開催する方針だ。団体関係者は「我々も5万〜10万人規模の集会を開き、対決する」と述べ、弾劾の賛否を巡って、保革対決の構図が鮮明になっている。

 韓国でこうした国論を二分する集会が開かれるのは、02年12月の大統領選前に広がった「反米」と「親米」集会以来のこと。だが今回は、特定の政党や人物を名指しした脅迫事件も発生し、社会不安が広がっている。

 こうした事態を受けて警察当局は、夜間の集会は法律で禁止されていることを確認し、今後は夜間集会に解散命令を出すことを決めた。[毎日新聞3月16日] ( 2004-03-16-02:18 )






(私論.私見)