NHK本局移転問題考

 (最新見直し2008.5.15日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 坂本 衛(さかもと・まもる)氏の「放送批評1994年05月号」の「放送事件史「田中角栄」<後編>―メディア支配構造の完成」が、NHK本局移転問題につき、角栄の口利きを如何にもさもらしく批判している。これを検討する。

 2008.5.15日 れんだいこ拝


 A氏は、「大蔵大臣時代の田中にまつわる事件に、NHKの放送センター用地をめぐる疑惑がある」と書き出す。どういう疑惑かと思いきや、次のような話である。

 NHK本局(代々木放送センター)が千代田区内幸町から現在の渋谷区神南に移転する際に、大蔵大臣田中角栄が深く関与した。
旧陸軍練兵場で、占領軍に接収され米軍宿舎(ワシントン・ハイツ)となっていた現・代々木公園の一部の国有地の払い下げとなったが、第1期と第2期に分割して払い下げられた。第1期は1963.3月で、約1万8000坪が17億円で国から直接NHKへ払い下げた。

 第2期の払い下げに問題が有り、「NHKは13億円でわざわざ千葉県稲毛の埋立地を買い、この土地と代々木の国有地を等価交換するかたちで約5900坪を手に入れた」のだが、「この土地は、千葉県が若松築港なる会社に埋め立てを認可したが、同社は造成のわずか3日後、6億2340万円円で朝日土地興業という会社に売却している。NHKは、同じ土地を半年後に12億9791万円で買わされた」。これに、角栄の刎頸の友の小佐野賢治の国際興業が介在しており、土地転がし疑惑があると云う。

 第1期払い下げの坪単価は約9万4400円、第2期払い下げの坪単価は22万850円で、この差額分が、「小佐野賢治のところにプールされたか、小佐野を経由して田中角栄に還流したと考えるのが自然であろう。いうまでもないことだが、これは田中角栄の錬金術の典型的なパターンである」と推理断定している。

 角栄の金権手法を次のように批評している。

 まず、河川敷や埋立可能な土地、荒れ地など単価の安い土地に目をつける。これを関係する土建屋に造成させる。その後、関係会社(多くはペーパーカンパニー)間で転売を繰り返し、価格をつり上げていく。そして最後に国、自治体、誘致した公的機関などに押しつける。だから、田中や小佐野の関連会社に入る利ザヤ分は、税金からまかなわれることになる。NHKのケースでは、利ザヤを負担したのは受信料を支払う契約者だった。こうして手に入れた資金を、田中は権力の階段を駆け上るのに使ったのである。

 坂本は、よほど角栄が忌々しいらしい。次のように述べている。

 にもかかわらず、NHKは新放送センター用地の手当てでは田中に大変世話になったという思いが残る。田中の放送局に対する影響力がその分増大する。そして田中は、全国紙の本社土地払い下げでも同じように「尽力」する。新聞は田中には大変世話になったと感じる。すると、新聞と同じ系列の放送局に対する田中の影響力が、それだけ増大するというわけだ。

 田中角栄の死去に際して、この種の話が語られることはほとんどなかったようだ。死にゆく者は誰でもとんでもない善人にされてしまうこの国の風土と、納得すべきだろうか。 いま、新生党や日本新党でリーダーと目されている政治家たちが自民党田中派に所属していた頃、稲毛の埋立地を代々木の土地とすり換えたのと同じような手法で田中が手にしたカネが、小分けにされ、盆暮れに配られていた可能性は否定できない。

 新聞やテレビは、そのことを、田中角栄の死とともに忘れ去るべきなのだろうか。

(私論.私見)
 角栄逝去に際して、死してなお鞭打つことを正義弁する坂本に、角栄に成り代わりれんだいこが返歌しておく。

 坂本よ、君が同じ目線で同様の義憤で岸なり中曽根なり小泉の犯罪に言及するならまだしも許そう。君の他の論考は知らぬが、俺が終生闘った軍事防衛利権、原子力利権に勤しむ岸−中曽根らには大甘になり、この問題を推測混じりで断定批判してくれるとは、俗に云うお里が知れる類いの話ではないのか。まっ、第1期払い下げの坪単価が約9万4400円、第2期払い下げの坪単価が22万850円であろうとも、後の地価上昇と、かの時NHK本局(代々木放送センター)が移転した事によるメリットを勘案すれば、そう目くじらされることではないのではないか。功績を見ず、粗探しに興じる君の性格を直して給え。そういう事では大成せんぞ。

 2008.5.15日 れんだいこ拝




(私論.私見)