【アメリカ特務機関及び国務省の角栄レポート】

 更新日/2020(平成31→5.1栄和元/栄和2).3.8日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ネオ・シオニスト情報機関は、世界中の調査に値する人物に対する入念な調査ファイルを作成している。アメリカの「戦後日本の宰相レポート」が次第に公開されつつあるが、角栄が格別注視されていたことが判明する。それによると、「何をやりだすか分からん男。日本のためには優れた政治家であっても、それがアメリカの利益になるかどうかは未知数である」として、神経を尖らせていた様子が明らかになっている。それは、現代世界を牛耳る米英ユ同盟をして、対日戦略の要諦「遠隔操作」が利かなくなる恐れを抱かせた。そういうことから、角栄に対してまさにリアリズム的に一挙手一投足、気質、性格、政治能力、その特質が分析され続けていた。それは、角栄にとって栄誉でもあろうが、最後まで異分子として見られていたことを意味する。以下、その様を検証する。

 
思えば、「ロッキード事件」は海外それもアメリカからやって来た。凡そ用意周到に練られたシナリオ通りに事が運ばれた臭いがする。とならば、「アメリカ特務機関及び国務省の角栄レポート」は漠然と読むものではあるまい。僅かここにでも垣間見られる角栄観が遂に炸裂して角栄を襲ったことになる、と見るのが普通では無かろうか。この観点をこじ開けていけば現代史が見える。しかし、途方も無く視野が広がることになり、ひとまずは角栄論の世界の中に治めることにしようと思う。

 2003.9.26日再編集 れんだいこ拝


【「国務省・電信機密文書655及び586」考】
 インガソル駐日大使の詳細な「田中角栄レポート」(「日本国首相の極秘ファイル」156P)が公開された。まず相手を知るべきという必要からか、極めて冷静沈着な私情をまじえぬ客観評価をしている。

 「国務省・電信機密文書655及び586」の「タナカ・ザ・マン」(文芸春秋2001.8月号「角栄の犯罪25年目の真実」より一部を抜粋する。
 「福田のライバルであり、個人的には全く波長が合わないのが、現在通産大臣をしている田中角栄である。ぶっきらぼうで荒削りな田中は、十分な教育を受けていないことから軽蔑されている。

 
しかし彼は非常に鋭い感覚を持った政治家で、人を操縦するのが上手く、主要ポストである自民党幹事長として名声を上げた。最近田中の株が急上昇しているが、それはアメリカとの繊維問題や国会での防衛予算審議、といったいくつかの問題に関し、佐藤の代わりに責任を持って解決したということも貢献している」
 「総裁選とその結果として出現する新しい政府は、アメリカに影響を及ぼす。基本的には3人の中で誰が総裁になっても、世界観は前任者と大して違わない。3人のいずれとでも上手くやっていけるだろう。日米関係の行方は、福田が一番良い影響を与えるであろう。大平が一番影が薄い。田中の態度が最も未知数だ。日本の政治家の中では、田中だけが海外との絆を発掘するどころか、海外との接点すら持っていない。彼の素養が最も不明である。また3人の中で一番積極的とはいっても、彼の本質が保守であることには違いない」。
 概要「田中首相は、その経歴や性格、考え方の点で戦後日本における歴代首相とは明らかに異なった人物である。彼の師である佐藤前首相とは全く対照的な率直さの持ち主で、『問題解決人』である」。
 「問題解決者としての田中に関して、彼は一般的な問題よりは個別的な問題、抽象的な問題よりは具体的な問題が得意である。ある問題を自分の理解できる次元で具体的に把握した時には活気を帯び、さらにその問題に詳しくなるとその問題に関わるあらゆる側面を飽くことなく議論し続け、与えられた明確な範囲の中で素晴らしい想像力と創造性を発揮する傾向がある。

 一方、田中は抽象的な問題については、あまり関心を抱かず、すぐにイラツキと退屈を露にする。問題解決に要する時間は短く、時にぶっきらぼうになりがちで、そのような時には、以前覚えたであろう陳腐な決まり文句で済ませることも気にしない」。
 「田中は、海外貿易や物価上昇といった大きな問題の具体的な事柄も、より家庭的な普通に理解できる問題に置き換えるのを得意としている」
 「田中は基本的には理論家ではなく問題解決型である。一般的な東洋の伝統の流れとは違い、具体的な事から一般的な事へと言う形で物事を理解する。それは、帰納的ではなく演繹的である。故に古い神話や決り文句にとらわれることがなく、伝統的な仕組みが変わることをすばやくキャッチすることができ、また柔軟な対応ができる」。
 「彼は意思決定するにあたり、細かい点を上手くまとめて事実を分けて認識し、それを関連付けるすばらしい能力をもっている。彼は新しい問題に直面すると、まるでマシンガンのようにスタッフたちに問題について矢継ぎ早に質問し、それぞれの見解を掌握し、そのインプットに基づいた理論的な解決策を見出す」。
 「田中の決断力は有名であり、自分でもそれを誇りにしている。どんな解答も完璧ではない。そしていかなる行動にも不利な点があると、彼は何度も公式の場で言っている。欠陥が無かったり、それが理想的でないにしても、存在する情報に基づいて最善の解決方法を常に選択すると教訓的に話をするのが得意である。もし政治的な理由でその最善の解決策を取ることができないのなら、次策を受け入れる。つまり決断しないよりは決めたほうが良いということである」。
 「意思決定に関するこの田中の態度は、彼が『官僚的過ぎる』と遠まわしに批判する前任者たちとは明らかに違った態度である。田中からすると、官僚は慎重すぎ、いかなるグループも傷つけないように気を使い、そして一番安全な方法として前例に固執する。田中は行動を起こす前にあらゆる偶発事項を予測するのは、形而上学的に不可能だと信じており、そんなことに苦しむのは時間の無駄だと思っている」。
 「日本における田中の人気の高さは、その多くの部分において、彼が発散する『時代の申し子』というイメージに由来している。同時に、彼の性格の中にある自惚れの強さと横柄さ(それは西洋人にはすぐに見抜けるが、日本人にはそう感じにくい)も、同様に彼の持つ成り金的経歴によるところが大きい」。
 「佐藤ならば、地雷原の境を非常に用心深く迂回していくだろうと思われるのに、田中は目標までの最短の道筋が何であるかを認識した上で、まっすぐに進んでいく可能性が高い。彼のやり方は颯爽としていて最終的に大きな成果を手にする可能性がある一方で、彼の政権に予期せぬような結末をもたらしかねない」。

【「国務省のミーティングの会議録」】
 1974.7.7日の七夕選挙直後に、国務省の日本政治家・リチャード・スナイダーを含めた幹部によるミーティングの会議録が明かされている(徳本栄一郎「『角栄の犯罪』25年目の新事実」)。それによるとスナイダー氏は、選挙分析した後、選挙費用の出所を問題にして次のように語っている。
 「全国区の候補者は平均して党から200万ドル(5億6千万円)を貰っている。資金源は様々だが、主に田中の個人的な友人達からの献金です。いずれも、田中自身も含めて、地価の桁外れの上昇で利益をあげた連中ばかりです」。
 「いずれにせよ、今の彼は本当にまずい状況です。保守のエスタブリッシュメント層は、かねてから彼を教育のない厚かましい浪費屋と嫌ってきた。今後、数ヶ月は田中が権力にとどまれるか否かで、日本の政治は動いていくでしょう」。
 「田中政権がどこまでもつか、非常に厳しい時期に入ります。首相交代を視野に入れて準備を始めるべきです。幸い次期首相と目されるのは福田外相で、田中よりは遥かに信頼できます」。
(私論.私見)  「『角栄の犯罪』25年目の新事実」の著者の不見識考
 この言葉通り、これより3ヶ月後、立花隆、児玉隆也の二人による「田中金脈問題」追求論文が「文芸春秋」に載る。これが退陣のきっかけとなった。この年の11.26日、金脈問題を追及され、田中は退陣を表明する。就任から2年5ヶ月だった。ロッキード事件が発覚するのは、これから15ヵ月後の76.2月のことになる。

 「『角栄の犯罪』25年目の新事実」の著者は、上記の情報に接してなお次のような感想を述べている。
 概要「アメリカ政府の情報収集がいかに的確なものかが分かる。ニクソン政権が田中を見限り、福田に着目していたことが分かる」。

 れんだいこは、隠語で述べているのならともかく、 「『角栄の犯罪』25年目の新事実」の著者の受取りようが解せない。この報告書は、アメリカのエスタブリッシュメントが如何に内政干渉的に田中退陣をリードしたかを物語っている貴重文書と見るべきではなかろうか。これほどのリーク文書を前にして、情報の的確さを論う客観主義的な読み取りをする氏の見識が分からない。彼が正気なら、こういうのを愚頓というのではなかろうか。

 2005.7.15日再編集、2007.2.5日再編集 れんだいこ拝


【鳩山邦夫のスパイ告白】
 2007.10.31日、衆院法務委員会で、民主党の河村議員が塩尻官房長に対し、防衛駐在官に十分な予算を与えて情報収集力をアップさせるべきではないか、と問いかけた最中、指名もされていないのに突然、鳩山議員が「委員長!」と手を上げた。河村議員は「何ですか!?」と驚いたが、鳩山議員がマイクに向かって歩いて来るので、「じゃぁ、しゃべってチョ」と発言を促した。

 鳩山議員が、「思い出を語りたいんですが・・・」と切り出して次のように発言した。
 概要「田中角栄先生の私設秘書になったとき、その時に私のような何も知らないペーペーにもですね、毎月ペンタゴンがやってきて、その、食事をご馳走してくれて、大変美味しい食事を毎月ご馳走になっとった。私なんか何もわからなくても、一生懸命色んな事を聞いとりまして、やっぱりアメリカは凄いなと。ペンタゴンなんか、そういう情報収集もの凄いな、という思いでございます」。

 公式HPによると、鳩山氏は1972.3月に東大法学部を卒業、同年、角栄の秘書となったとある。72年といえば、角栄5月に「田中派」を立ち上げ、6月に大ベストセラーとなった「日本列島改造論」を発表。7月に宿敵・福田赳夫氏を破って自民党総裁となり、第1次田中内閣を成立させた年である。この頃の情報が、鳩山を通じて漏れていたことになる。

 河村議員が、「食事代は全部ペンタゴンが出したんね?」と尋ねると、鳩山議員は、「あの、何でもいいというので、当時私はお金がありませんから『鰻がいい』『てんぷらがいい』と、いつも言っておりました。私は一円も払ったことがありません」。 河村議員が、「鳩山議員のように全部ペンタゴンにカネ出してもらとりゃ、日本がどっちの方向に向いているか、全く危ないじゃないですか!」と述べた。

 鳩山議員の発言意図が定かではないが、自身の経験に鑑み、政界・財界・メディアにおける米国・中国等の工作員の存在を警戒し、日本の機密情報管理を危惧し、日本も他国と同じように外交や防衛の情報収集には予算を潤沢に回して海外の情報を収集することを主張したかったものと思われる。とはいえ、鳩山発言は、田中角栄に対するペンタゴンの情報収集実態が思わず明るみにされることになった点で意味がある。

 2008.5.15日 れんだいこ拝

【怪文書記事「CIAが公開した秘密文書」考】
 2017.2.12日、「意外や意外「CIA」は「田中角栄」元首相を超小物扱いしていた」。
 『CIAが公開した秘密文書』 

 アメリカの中央情報局(CIA)は、1月末、機密解除された文書およそ1300万ページをネットに公開した。公開された文書は1940年代から1990年代にかけてのもの。いったい、どんな秘密文書があるのか。キーワードで「JAPAN」と入れると、3万3640もの文書がヒットする。あまりに多すぎるので、田中角栄(KAKUEI TANAKA)で検索すると、1182件がヒット。そのなかに、田中角栄が首相になった日の最初のレポートがあった。安全保障を担当する大統領補佐官は、毎朝、世界各国の情勢変化を大統領に説明する「プレジデント・デイリー・ブリーフ」と呼ばれるレポートを作っている。その情報源はCIAだ。

 第1次田中内閣が成立したのは、1972年7月6日。前日の選挙で当選が決まっているから、時差の関係で、CIAレポートも6日付になっている。当時の大統領はニクソンである。 文書には「いかに角栄が凄いか」と書かれているかと思いきや、レポートはわずか30行ほどしかない。冒頭には「田中角栄新首相は、外交でも内政でも過激な政策は取らないだろう」とあり、「若さがポイントだが、コンセンサスを重視し、強固な官僚システムによって意思決定される日本社会ではうまく活躍できない」といったことが書かれている。外交関係では、アメリカとの関係は日米安保のなかで「良好なまま」、関心があるのはソ連との経済協力くらいしか書かれておらず、正直、まったく内容のないものだ。「デイリー・ブリーフ」は国際情勢をひと目で分かるようにまとめたものだから、内容がざっくりなのは仕方ない。それにしても、あまりに内容が薄い。 

 首相になって2カ月ほどたった9月、角栄は突如、中国を訪問し、日中国交正常化を実現させ、台湾を切り捨てた。さらに1年後にはソ連を訪問し、日ソ共同声明を発表。オイルショックが起きると、イスラエル支持からアラブ諸国支持に転換するなど、アメリカを驚愕させる政策を次々に断行した。アメリカは角栄の想定外の行動に慌てふためき、ロッキード事件を起こしてハメたという陰謀論まで後にささやかれた。だが、当初、CIAはそうした動きをまったくといっていいほど把握できずにいたことがわかる。

 CIAを擁護すれば、当時はベトナム戦争のさなかで、この日のレポートもベトナム情勢が最初に来ている。日本はベトナムに比べたら、はるかにどうでもいい国だったことは間違いない。とはいえ、CIAレポートの信頼性が低いことは、これまでいくつも実例がある。たとえば、三木武夫首相とフォード大統領が首脳会談した際、大統領は「アメリカはこれまでずいぶんあなたを誤解していた」と語っているし、村山富市首相とクリントン大統領が会談したときも「印象がまるで違う」と語ったことは大きなニュースとなった。CIAレポートのいい加減さがよくわかる話だ。 

 トランプ大統領は、選挙戦で「ロシアが選挙に介入した」という報告書を出したCIAを「ナチス」呼ばわりするなど、敵対姿勢を露わにしてきた。だが、当選翌日にはCIA本部を公式訪問し、「あなた方を1000%支持する」と演説し、融和姿勢を見せた。これでCIA職員の怒りが収まったかどうかはわからない。安倍首相と首脳会談を控えたトランプ大統領は、おそらくCIAの「安倍レポート」を熟読したことだろう。いったいそこにはなんと書いてあったのだろうか?

(私論.私見)

 検索でヒットした本記事を収録しておく。一見して、誰の手になる記事か分からない体裁になっている。記事の内容も、れんだいこの知見と齟齬する角栄軽視論となっている。角栄を重視非常に警戒していた事実を漏らされるのがよほど具合が悪いのだろう。興味を引くのは、「三木武夫首相とフォード大統領が首脳会談した際、大統領は「アメリカはこれまでずいぶんあなたを誤解していた」と語っている」の下りである。「三木武夫首相とフォード大統領が首脳会談録」は公開されていない。それを知り得る側の者の情報となっている。お里が知れるとはこのことだろう。

 2020(平成31→5.1栄和元/栄和2).3.8日





(私論.私見)