第085回国会、ロッキード問題に関する調査特別委員会第2号(後半) |
(最新見直し2013.03.04日)
(れんだいこのショートメッセージ) |
2005.3.7日 2007.5.23日再編集 れんだいこ拝 |
○廣瀬委員長 次に、坂井弘一君。 ○坂井委員 福永一臣氏の証人喚問につきましては、公判に支障のない段階ということでありますれば、先ほどお答えございましたが、伊藤、副島の検事調書が採用された段階――これは委員長に確認しておきたいと思うのですが、この両名の検事調書が採用された段階では、公判に支障がないから、したがって懸案の福永一臣氏の証人喚問をやりましょうと、こういうことでしょうか。 ○廣瀬委員長 ただいま伊藤刑事局長の御答弁によりますと、そういうふうに解釈していいんじゃないかというように思うのでございますが、私は、関係の検事調書が裁判所の方で採用が決定した後に時期を選びたいというように考えておるわけです。 ○坂井委員 採用された後で喚問を実現するということですね、喚問されたらば……。 ○廣瀬委員長 それは、あなたたちから前国会で私に一任されておりますように、喚問する方向で、喚問そのもの並びにその時期については委員長に一任するということになっておりますから、その点はそのとおりに私は趣旨を体し進みたいと思っております。 ○坂井委員 この場所はちょっと議論しにくい。理事会等に譲りましょうが、いずれにしましても、喚問する方向、その方向というのは委員長に一任したのですが、その方向が実現するものは何かといいますと、公判に支障のないという前提を置かれたはずだと思いますね。公判に支障のないということは、具体的には伊藤、副島の両検事調書が採用された段階、これは公判に支障なし、したがって喚問、こういうことにならねばならぬ、そう私は解釈をしておりますので、これは場所を改めて……。 ○廣瀬委員長 ちょっとお答えします。 そういうふうには私に一任されておりません。喚問するという方向で、喚問そのもの、喚問するかしないかということですね、並びにその時期については委員長に一任するというように私に一任されたように解釈しております。従来そういう信念で進んでまいっております。 ○坂井委員 場所を改めまして……。 法務大臣に伺いますが、ただいま小林委員から最終報告の問題が出ました。お答えがあったわけですが、やはり今後の公判の進行状況、これを見ながら、最終的には公判が終結をしたそういう時点において初めて国会における最終報告、それは単に公判の全貌等を網羅するということにとどまらず、先ほどお答えのあったとおり、政治的な内容、趣旨等も織り込んで、どこに何があったか、何を反省すべきか等々、そういう問題も含めて最終報告ということになろうかと思いますが、大体のめどをどう考えていらっしゃるのか、及び、かなり先になるとするならば、二回にわたる中間報告があったわけですが、これは中間報告という名に値しない内容だったと私は思うのですが、いままでのような報告じゃなくて、つまりいろんな意味で中身のある、そういう中間、第三次の報告をするというようなことをお考えになっていらっしゃるかどうか、あわせてお答えいただきたい。 ○瀬戸山国務大臣 結論から先に申し上げますが、いまの段階でいつごろということを明確に答えられないのをまことに申しわけないと思います。 先ほど小林委員からもお話がありましたが、当ロッキード委員会は、まさに政治的道義的責任を追及するといいますか明らかにして、将来に禍根を残さないような道を講じようとしてやっておられる、私もさように理解しております。しかし、私ども検察の関係は、政治的道義的責任を追及する立場にはない。でありますから、国会の御要請があれば、その国会の御判断の材料に必要だという問題点を、それを法律その他の条件下において御協力申し上げて御報告をしよう、こういうことでございますから、従来は捜査段階で認めました事実を二回にわたって御報告申し上げた、かような次第になっておりますということを申し上げておるわけでございます。いまのところでは、それ以上、まだこういうことがありますというところまで、こちらでは申し上げる材料がないということを申し上げておるわけでございます。しかし、これはあくまでも捜査段階でこういうふうに認められますということを申し上げておるわけで、それが現在争いになって裁判が進行中でございますから、その裁判の進行を見て間違いない、こういう状況がないと、軽々にこれに間違いありませんというわけには――捜査の立場ではそう思っておりますけれども、しかし、客観的にそうであるかどうかということが現在争われておる。でありますから、もう少し推移を見なければ国会に対して責任を持って御報告ができない、こういう立場で申し上げておるわけでございます。 でありますから、重ねて申し上げますが、当委員会で政治的道義的責任を明らかにして将来にできるだけ禍根のないような方途を見つけ出そう、こういう意味でありますから、それに応ずる材料はできるだけ報告をしなければならない、こういう立場でおる、かように考えております。 ○坂井委員 嘱託尋問調書の証拠採用を決定されたわけですが、この決定書の中には「コーチャン、クラッターら米側関係者の供述を得るまでは国内関係者の取り調べも進展せず、国会による証人喚問もまたその功を奏さない状況にあったのであるから、真相解明のためには嘱託尋問の方法によりコーチャンらの供述を得ることが必要不可欠であった。」とあるようでございますが、法務大臣、あなたの御見解を伺いたい。「国会による証人喚問もまたその功を奏さない状況にあった」、こう言われているようですけれども、これは一体どういう意味なんでしょうか。 ○瀬戸山国務大臣 私はその決定を詳細読んでおらないわけでございますが、結局、嘱託尋問をしなければならないという経過の中で申し述べられておるそうでございます。でありますから、国会の証人喚問だけではこの真相を明らかにすることはできなかったという趣旨で申し述べておるのじゃないか、これは私のそんたくでございますが、裁判の判断でございますから、こちらでとやかく言うべきものではないと思います。 ○坂井委員 功を奏さなかったとおっしゃっているので、どういう意味なんだろうかな、いろいろな意味にとれるわけなんですよ。ですから、検察ないし司法の率直なこれに対する、どういう意図で国会に対してこういう表現をされたのかということをお聞きするならば、われわれ国会としてもこの真相解明のためにさらに工夫すべきは工夫もいたしましょう、努力すべきは努力もいたしましょう。つまり、証人喚問は真相解明のために非常に大きな意味合いがある。少なくとも今日まで当委員会において何人かの方々に来ていただいて証言を得たというようなことは、多かれ少なかれ真相解明への大事なことであった。ただ、残念ながら、言われるとおり功を奏さなかったこともまた確かに事実であろう。したがって、「功を奏さない」とはどういう意図、意味を持ってこう表現されたのか。その辺を聞くならば、また法務大臣の率直な感想でも結構ですよ、おっしゃっていただくならば非常に参考になるという意味でお尋ねをしておるわけなんですが、これはどうなんでしょうか。 もう一つ、国会における証人喚問と刑事事件としての検察、司法、この両者の役割りなり目的というのはおのずから異にしておるわけでありまして、証人喚問によって証言を得たからといって、そのことが直ちに刑事事件の証拠になり得るものではない。したがって、そういう関係からしましても、ここでわざわざ功を奏さなかった、それがゆえに嘱託尋問調書を採用せざるを得なかった、これが必要不可欠であったのだ、ここまでおっしゃっているから、大変重きを置かれたのではないか、この国会における証人喚問ですね。ですから、その意図、真意というものをぜひひとつ伺っておきたい、こういう意味でお尋ねをしているわけであります。 ○瀬戸山国務大臣 先ほど申し上げましたように、私はその決定の全文を見ておりませんので……。ただそのくだりで、いまお話が出ましたが、捜査の段階で、アメリカに対して嘱託尋問をする手続をとるに至った経緯の中で申し述べておるということでございます。 私の所感ということでございますから申し上げますが、あるいは間違っておるかもしれませんが、何も国会の証人喚問が適当であったとか不適当であったとかということでなしに、国会の証人喚問だけで真相を明らかにする段階に至らなかった、こういう趣旨で述べておるのじゃないか。これは全くの私の所感でございます。 検討しておると思いますから、できれば刑事局長から直接お答えするのが適当かもしれません。 ○伊藤(榮)政府委員 ただいまの御指摘の部分は、不起訴の宣明を検察当局がいたしましたことに関連して、これは公訴権の放棄とみなすべきだ――公訴権の放棄というものは軽々に許されるものではないけれども、きわめて特殊例外的に、大きな公益を貫くために必要やむを得ない場合には許される、こういう大前提を置きまして、それから、その当時の状況に説き及びまして、いわゆるロッキード事件の黒い霧と当時言われておったものを解明するのは国民的な一つの課題であった、そういう解明をするという大きな公益のために、他に方法がなかったので証言を得ようとした、またその証言を得るために、ほかに方法がないから不起訴の宣明をした、公訴権の放棄をした、であるから許される、こういう論理を展開しておる部分にあるわけでありまして、当時国会でも一生懸命いろいろな調査の御努力はなさいましたし、それから国内でも捜査当局もいろいろやっておった、しかしながら国民の前に真相を明らかにすることにはならなかった、そういう段階においていわゆる裁判所の言う公訴権の放棄が行われたのだから、これは妥当である、こういうことを言っておるわけでございまして、一般的に国会における御調査の限界とかそういうようなことは一切言っておらないように私は読んだ次第でございます。 ○坂井委員 伊藤刑事局長、あなたのそういう御見解、御認識であればそれはそれで結構だと私は思うのです。ただ、これを読みますと、逆に言いますと、国会における証人喚問がその効を奏しておったならば、いま言われる重要な公訴権の放棄はしなくてもよかったのではないか、こういう感じに読み取れますから、ここのところは、われわれ国会に課せられたこの委員会の本来的な任務あるいはこれに基づくところの真相解明が十分でなかったという反省とともに、これは公訴権との問題において非常に大きなかかわり合いがある、実は私はそういう認識で、これは決して検察あるいは裁判に文句を言おうという筋合いで申し上げているのではないということだけはひとつ御理解をいただきたい。 そこで、いま公訴権の問題が出ましたが、これは確かに検察官に与えられました大変大事な権能である。これを放棄するということはある種の自殺的行為と言っても過言ではないと思うのです。しかるに、公訴権の放棄までせざるを得なかったということでありますが、この場合の、公訴権を放棄することによって失われるところの公益、この公益とは一体具体的にどういう公益を指すのでしょうか。 ○伊藤(榮)政府委員 まず最初にお断りいたしておきますが、検察当局といたしましては公訴権の放棄説をとっておるわけではなくて、不起訴の確約ということでいまでも考えておるわけでありますが、いずれにいたしましても、起訴しないことによって失う公益と得られる公益を対比するわけでございます。失われる公益というのは、本件の場合では、ロッキード社側の贈賄関係者を訴追できないということでございまして、公益という言葉にそのまま当てはめますと、ロッキード社の贈賄関係者を起訴するというのが一つの公益であろう、ただ、その公益は果たすのに非常に困難な状況にあった、日本へやってこなければ訴追ができない、そういう状況であったわけでございまして、そういう公益と、反面では事件の全貌が明らかになるという大きな公益、こういう二つを対比しておったわけでございまして、今度の決定も大体そんなことを言っておるようでございます。 ○坂井委員 そういたしますと、起訴できるかもしれないと思われるロッキード社の関係者に対してその有無、決定をする前の段階でこれを放棄したということになりますと、これはやはりわが国の法秩序を維持していくという機能が侵害された、こういう解釈をしても間違いではございませんか。 ○伊藤(榮)政府委員 現実に公訴提起が可能であるのに、これを漫然放棄するというようなことになれば御指摘のとおりであろうと思いますが、当時検察官がアメリカへ行きまして、任意の供述を得ようとしてもお二人からは得られない。また日本へ来る気もない。さらに当時の日米間の関係では、犯罪人引き渡しの対象にもならない、こういうことでありまして、現実の問題としては公訴を提起できる見通しはゼロに近かった、こういうことでございます。 ○坂井委員 ただ、刑事局長、ここで言っている公益というのは、要するに公訴権を放棄することによって失われる公益というのは、コーチャン、クラッターという私人といいますか、要するに個人の利益、利害ということは公益じゃないでしょう。このことによって失われるかもしれないという公益は何かというと、わが国の法秩序維持、それが侵害されるかもしれないというところの公益、これを捨てましょう、これを捨てて、そして一方において、それでは得られるべき公益とは何かといいますと、事件の真相解明、その真相解明、この嘱託尋問調書を公訴権を放棄して採用するということによって事件が真相解明できる、このことが、日本の民主主義なりあるいは法秩序、日本の法治国家としての体制を維持をしていくということの方が、この公益の方がより大きいのだ、こういう判断で前者の公益、日本の法秩序維持、これを放棄する、侵害されるかもわからないという公益を放棄してでも後者の公益をとろうという、こういうことに理解してよろしいのですか。 ○伊藤(榮)政府委員 当時の検察当局としては、そういう大きなことをもちろん考えたわけではございませんで、そこにどうも事件があるようだ、事件を解明するのにどういう方法があり得るか、そうすると、嘱託尋問をやるよりほかに方法がない、嘱託尋問をやるとどういうことになるかといいますと、コーチャン、クラッター両氏についていわゆる免責を与えるためにその二人は起訴できなくなる、こういうことでありまして、それではその二人を免責しなければ起訴できる可能性があったかというと、もうゼロに近いほどしがなかった、非常に小さい公益であり、かつ大きな公益を助けるためには捨ててもしようがないぐらいの小ささであった、こういう判断であったわけでございますが、私のただいまのお答えは、ただいまのお尋ねに対してぴったりお答えしていることにはならないということを承知しておりますが、いまのお尋ねの中に含まれました問題点は一つの重要な問題点であろうということは私も認識しております。 ○坂井委員 法務大臣、いま刑事局長の御答弁をいただきながら大体わかるのですが、起訴される可能性はほとんどゼロに近い、確かにそういう状況だっただろうと思うのですね。こういう不起訴宣明、これはコーチャンあるいはクラッターが外国人であって日本の法廷にはまずほとんど出れない、状況から見まして一〇〇%に近く出ない、こういうことで非常に特殊な事情であったということが前提にあって、しかもこの事件たるや、これを解明しなければならぬというわが国の、あるいは国民のこの大変な事件に対するわれわれの認識あるいは取り組みがあるということですから、これは許されるとしまして、こういうことを今度国内で適用するというようなことは一〇〇%ない、こう解釈してよろしいでしょうか。 ○瀬戸山国務大臣 この件について私に対して考え方をというお尋ねでありますが、御承知のように、この事件はまさに国内では大事件として国民注視の中にあったわけでございます。それを、国際的に贈収賄という形になっておりますが、贈賄側というのですか、直接贈賄になるかどうか問題でありますけれども、贈賄側というのがアメリカにおる人、アメリカ人である。この場合の具体的な法益は、いわゆる公務員に対する贈収賄でございますから、日本の公務員の廉潔公正を維持するために、そういうことはしてはならないと刑法に書いてある。したがって、そういう公務員の廉潔公正を害するような行為に出た贈賄側も罰する、こういうふうに刑法はなっておると思いますが、その一方がアメリカにおって、なかなかこちらで直接調べることができない、しかし、その事件の真相を明らかにするためにはどうしても贈賄側に立っておるアメリカ在住のアメリカ人から真相を聞かなければわからない、それがなかなか困難である、こういうむずかしい段階に来たと思います。でありますから、この場合は、これほどの大事件の真相を明らかにするためには、日本にはありませんけれども、アメリカに御承知の免責条項がある、こういうことを向こうが主張する、しかしこちらにはない。こちらには起訴不起訴の裁量権がある。微細な事件は時と場合によっては検察の判断によって不起訴ができると、御承知のように、なっておりますから、その立場に立って、将来にわたっても実際上起訴できそうにもない事件でありますから不起訴宣明をした、こういうことでありまして、公益の問題をお話しになりましたが、それを総合判断して、やはりそういう措置をしてもこの真相を明らかにすることがわが国の全体から大事である、こういう判断をしたと私は解釈しておるわけでございます。 ○坂井委員 時間ですから終わります。 ○廣瀬委員長 次に、中野寛成君。 ○中野(寛)委員 私も証人喚問の件についてまずわが党の態度をこの際明らかにしながらお聞きをしておきたいと思います。 福永一臣氏の証人喚問については、野党が一致して今日まで何回となく要求をし、かつ委員長にも御苦労いただいているところであります。私たちの本委員会では、刑事責任とは別に、あくまでも政治責任を明らかにし、それを追及していくということが最大の目的であると思います。そのためにも、真相を明らかにするために刑事責任の問題についても無関心ではいられないということであろうと思うわけであります。そういう観点から、私どもが政治責任を明らかにするために要求をしている証人喚問については、わが党自身は、これは本委員会において多数決をもってしてでも採決をして要求をしていく、決定をしていくということについても、わが党としてはこれを場合によっはやらざるを得ない、やるべきであるという観点に立っていることを明らかにしておきたいと思いますが、しかしながら、今日裁判係属中であるということ、そのことのために司法権を侵害してはならぬ、またその裁判を侵害してはならぬ、この観点と、委員長の大変な今日までの御努力の中で、その時期的な判断を十二分に吟味をして、そして前向きに御検討をいただくというお約束をいただいておりますことを勘案しながら、今日までその時期を待っているわけであります。 委員長としては、そういう意味から最大限前向きに御努力をいただきたいと思うわけでありますし、同時にまた法務省及び検察当局としても、目下われわれが待っておらなければならない要因をいっときも早く取り除くのみならず、それがいっときも早く実現できるための御協力をやはりあわせてお願いをしなければいかぬ、こう思うわけでございます。そのような意味から、その基本的な姿勢についてまず法務省からこの際お約束をいただきたいのと同時に、委員長からも先ほど来、それができる段階に入れば証人喚問をやるかやらないかも含めて検討をするという申し合わせになっている、こういうことの御答弁でございましたけれども、文書は確かにそうなっている、私も承知をいたしておりますが。しかし、委員長の今日までの御発言からすれば、前向きにということがそれ以前についていると思うわけであります。私たちは、その前向きにということを信頼をして今日待っているということでありますので、そのことも含めて、あわせて御答弁お願いしたいと思います。 ○廣瀬委員長 それでは、私から先にお答えいたしたいと思います。 福永君の証人喚問につきましては、ただいまお尋ねがありましたように、在来からのロッキード委員会の理事会の御方針を体しまして証人喚問を実施したいという方向で、いよいよ実施するかどうかについてはまたよく考えてみなければなりませんけれども、そういう方向で御期待に沿うように一ただ時期につきましては、司法権の独立と申しますか、公判に支障のない時期を選んでわれわれも速やかに実施するように努力いたしたいと思っております。 ○中野(寛)委員 あわせて法務省にお尋ねをしますが、ことし春の国会で、やはり私がこの委員会でお尋ねをいたしましたときには、決して年を越すようなことがないであろうという予測を局長からいただいたことを私も記憶をいたしております。確かにまだ年は越してはおりませんが、先ほど来のお話からすれば年を越しそうだ。今日までの裁判の経過として、それでは進捗状況はあの春の時点の予測からして最悪のコースを歩んでいるということになるんでありましょうか。 ○伊藤(榮)政府委員 冒頭に御説明申し上げましたように、丸紅ルート、児玉、小佐野ルートにつきましては、春当時の見込みと同じテンポで進んでおるように思います。ただ、全日空ルートにつきましては、これまた先ほど申し上げましたように、橋本被告人がけがをされたことのために、若干おくれぎみでございましたけれども、最近に至りまして、詰めの段階で他のグループで被告人になっている人たちなどを含めます重要証人を調べておるわけですが、率直に言うと、証言が非常にあいまいもことしたり、変転をしたりしまして、尋問に最初の見込み時間をはるかに超える時間を要しておる。また、反対尋問も非常に細かくやられておる。そういうために若干おくれかげんである、かように思っております。 ○中野(寛)委員 先ほど同僚議員からの質問にもございましたけれども、再確認をしたいと思います。 どの段階で国会証言を私どもは要求し、そして法務省としてはそれを了とできるのか、その条件をもう一度再確認をさしていただきたいと思います。 ○伊藤(榮)政府委員 毎々申し上げておりますとおり、国会でなさいますことについてかれこれ言うべき限りではございませんけれども、検察当局及び私どもの希望といたしましては、全日空ルートに関しますきわめて重要な証拠でございます伊藤外一名の検察官調書、これが裁判所によって採用、取り調べがなされる時点までは、できましたらお待ち願いたい、こういうことでございます。 ○中野(寛)委員 そのことの一日も早く実現せんことをあわせて願望し、かつ要求をし続けたいと思います。 次に、先般の嘱託尋問調書が公判で採用されたわけでありますが、幾らかの割合については採用されない部分があるわけであります。どのくらいの割合であり、どういう内容を持っている部分なのか、またそのことが公判に致命的な支障を与えないものであるのかどうか、そのことについてお尋ねをしたいと思います。 ○伊藤(榮)政府委員 嘱託尋問を実施してくれましたアメリカの当局は、わが国と若干裁判上の事情等も違いまして、したがってコーチャン氏、クラッター氏の証言の中に伝聞の伝聞というようなものが大分入っておりまして、そのまた聞きのまた聞きというような部分を中心に証拠から排除されたわけでございます。その分量は、全体から比べますと〇・何%というような、ごくわずかな部分であろうと思います。 しかしながら、これまた先ほどもお答えしましたように、他のグループで嘱託尋問調書が採用になります場合には、そのうちのある程度の部分はまた採用になるんじゃないかという私ども期待を持っておるわけでございますが、いずれにしましてもごくわずかな部分でございますので、そのことによって今後の立証に支障が生ずるということは万々ない、かように考えております。 ○中野(寛)委員 私どもは、特にそれが証拠に採用される、されないの判断の基準の中に、いまわれわれがやっている政治的道義的責任を追及する上においてきわめて必要であるけれども、刑事責任を追及する上においてはそれが必ずしも必要でないという部分が、今日までのいわゆる灰色高官と言われる人たちの名前も含めてあるのではないかと考えるわけであります。今後そういう部分につきまして、不採用部分が公判に支障を与えないとするならば、これは国民が関心を持っている、その目の前にぜひ明らかにしていただき、そしてたとえ刑事訴訟法上の伝聞証拠として採用されないとしても、それを今度は国会の審議の中で、政治的なまた道義的責任を追及するための審議ができるようにそれを明らかにしていただく。また、それが伝聞証拠であるがゆえに、ただそのままほうっておかれればその該当者の皆さんに不利になるとするならば、その該当者をあえてここに反論をしていただくためにまたあわせて証人喚問をするということもできるわけでありまして、そのことが本委員会の本来の役割りではないかというふうに考えるわけでありますが、そのことについて法務省の御協力の内容について改めてお聞かせをいただきたいと思います。 ○伊藤(榮)政府委員 嘱託尋問調書の全容と申しますか、すべての要旨につきましては、先ほども申し上げましたように、すべての裁判所で採否が決定せられ、証拠調べをなすべきものはされたという段階で、極力御協力申し上げたいと思っておるわけでございます。ただ、ただいまのお尋ねの採用にならなかった部分というのと、それは明らかにならないということとは同意義ではございませんで、現にここに私持っておりますが、今度の児玉、小佐野ルートにおきます決定書の末尾に、だれそれがコーチャンあるいはクラッターに語ったこれこれこれこれいう供述部分は証拠から排除する、こう書いておりますので、決定そのものの別紙をごらんになると排除された内容が出ております。そういう意味で公になっておるということができるかと思います。 ○中野(寛)委員 今後の経緯の中で私どもがある意味では期待をし、またその期待をする部分が外されるということがあることも想定をし過ぎたかもしれませんが、今後ともそれらのことがすべて明らかにされることを原則としていただきたいということをお願いしておきたいと思います。 最後に法務大臣に、これこそ政治的な所感をお聞きしたいと思います。 近日中に中国からトウ小平副総理をお迎えをするわけであります。きわめて全国民の関心を集めた、そして政治的にも外交的にも大きな意味を持つ内容のお客様であります。準国賓としてお招きをするわけでありますが、そのトウ小平副総理の日程の中に、今日われわれが最大の政治的責任を持つものとして、田中元総理が被告としていま裁かれているわけでありますが、その田中元総理との会見が日程の中に組み込まれていると聞いております。国民感情から推してもこのことについては、準国賓としてお迎えする政府がその日程については御遠慮いただきたいとむしろ申し入れをし、そして国民の皆さんにむしろこの行事を純粋に喜んでいただけるという条件をつくることがいまのわれわれの政治的責任なのではないか、私はこのように感じるわけであります。 田中元総理の日中問題に関する功績は功績として私どもも評価をすることにやぶさかではありませんけれども、その評価と今日置かれている彼の立場の問題とは別ものであると考えるわけであります。そういう意味でここに閣僚の一員として、政府の責任者の一員として大臣がどのような所感をお持ちであるのか。このことはいまの政府の立場を国民が判断する上においてきわめて貴重な素材になると考えるわけでありまして、あえてお尋ねをさせていただきたいと思います。 ○瀬戸山国務大臣 中国のトウ小平副首相が近く来日されるについて、その日程の中に田中元首相に会われるというくだりがあるわけでございます。そういうふうになりましたいきさつについて私もちろん承知いたしておりませんが、私の想像といいますか感じ方を言いますと、いまもお話がありましたが、御承知の日中平和条約の出発点を築かれたといいますか国交回復、日中平和条約の共同声明をされた、そのときの直接の当事者であったわけでございます。でありますから、今回時間がかかりましたがいよいよ日中平和友好条約が締結の運びになった、そのために中国から使いとしてこちらに見える。田中元総理に対しては旧知の間柄という感じを持っておられるんじゃないかと思います。その際に、表敬といいますか面会をしたい、これもまた人情といいましょうか、そういうものじゃないかと私は私なりに考えているわけでございます。それがいいか悪いかということを私どもがここでとやかく判断する立場にはない、かように考えております。 ○中野(寛)委員 時間が参りましたから終わりますが、決してそれは個人的なお客様ではない。個人の身分でお見えになることでもない。あくまでも準国賓として国民がお迎えをするわけであります。その観点に立って御判断を、むしろ今後ともまだ余地があるわけでありますから、お願いをしたいと思います。 終わります。 ○廣瀬委員長 次に、正森成二君。 ○正森委員 大臣が三十五分に出られるそうですから、一問だけお伺いいたします。 当委員会というのは刑事責任を追及するところではなしに、真相を明らかにして、特に政治家の場合にはその政治的道義的責任を明らかにするということが本旨であろうと思いますが、いかがですか。 ○瀬戸山国務大臣 そういうことであろうと思います。 ○正森委員 それでは大臣が御退席になりましたが、刑事局長に聞かしていただきます。 九月二十一日に児玉、大刀川、小佐野関係の併合公判で半谷裁判長がコーチャン、クラッター等の供述調書について証拠採用の決定をいたしました。そこで私は伺いたいと思うわけですが、私どもの調べによりますと、この採用された部分の中で中曾根氏に関係する部分が五カ所、二階堂氏の関係する場合が二カ所、橋本登美三郎と佐々木氏がそれぞれ一カ所証拠能力ありとして採用されているはずであります。そこで私はきょうは時間の関係で、別紙一ないし四に中曾根氏の関係する部分が原供述を引用しながら証拠決定されておると思いますが、その五カ所をそれぞれここで明らかにしてください。 ○伊藤(榮)政府委員 次のとおりであります。 別紙一の三十三番、原供述者福田、供述者コーチャン、原供述「小佐野氏が言ったような航空機購入を処理する計画は明らかにありました。しかし、彼がこのことがロッキードにどのようなことをもたらすかを誰かに話をして指摘したところ彼等はその予定された行動の方針を捨てた」、備考に「彼(中曽根)」とあります。それから決定書別紙二から四の部分でありますが、五番の原供述者児玉、供述者コーチャン、原供述「中曽根氏が状況を直したらしい」、備考に「福田を介して」とあります。七番、原供述者児玉、供述者コーチャン、原供述「中曽根氏に電話して、彼に対して私が前の証言で誤解と描写したものを直してくれるよう頼(んだ)」、備考として「私(コーチャン)福田を介して」とあります。それから八番、原供述者小佐野、供述者コーチャン、原供述「中曽根氏が、もしその決定があったとすれば、それに関係したと思われる人達何人かに会ってみようと言った」、決定書別紙五の四番、原供述者中曾根、供述者コーチャン、原供述「それを田中氏に話をした」、備考「児玉、福田を介しそれ(政府決定を直すこと)」、こうなっております。 ○正森委員 いまの点で別紙二の九番が抜けていると思いますが、それを明らかにしてください。 ○伊藤(榮)政府委員 失礼しました。私が最後に読み上げました部分は排除された部分でございます。それで別紙二の九番が抜けております。原供述者児玉、供述者コーチャン、原供述「彼がその午前中、金曜日の午前中に、先ず第一にこれに関係した沢山の人達に会ってみる、そして事情を彼が調べてみて既に提案されていることについて誤りを彼が指摘できるかどうかみてみる」備考に「彼(中曽根)」とあります。 ○正森委員 以上明らかなように、当初刑事局長が読み上げましたうち、最後の、原供述が中曾根氏でコーチャンが供述者でそれを田中氏に話をしたという部分は、これは証拠として採用されておりません。しかし、それ以外はすべてそれぞれの被告との関係で証拠能力ありとして採用されている部分であります。 そこで、私はお聞きしたいのですが、裁判所は、こういう決定をするについて、コーチャンの供述が非常に信用性の置けるものであるということをるる述べていると思うわけであります。たとえば、私が指摘いたしますと、記録の九十丁から九十一丁にかけては、このコーチャンの供述調書というのは、刑事訴訟法三百二十一条一項二号所定の検察官の面前調書よりもはるかにまさることは多言を要しないということを指摘しております。あるいはまた、九十七丁から九十八丁にかけては、これは弁護人が終始コーチャンに付き添って偽証罪を犯さないようにということで自由に活動しておるから、「証言の真実性を担保するに足るきわめて重要な外部的状況と言い得ることになる。」というように指摘しておりますし、あるいは記録の百丁を見ますと、証人らの供述態度について、全体として誠実である、そして、「自らの記憶の忠実な再現に努め、いやしくも記憶のあいまいな部分については推測を述べることを避けて卒直に記憶していない旨供述し、」ということで、非常に正確な供述と考えられるというように指摘していると思いますが、それは間違いありませんか。 ○伊藤(榮)政府委員 大ざっぱにお答えするとそのとおりでございますということになるわけですが、若干補足いたしますと、どの程度の証明力があるかということにはもちろん触れておらないわけで、三百二十一条一項三号にいいます「その供述が特に信用すべき情況の下にされたものである」ということについて、るるただいま御指摘のように述べております。 ○正森委員 私が指摘いたしましたように、検察官の面前調書が、これまでの刑事局長の答弁によりますと、すべてロッキード裁判では特信力ありとして採用されているようですが、当裁判所は、その検察官の面前調書よりもさらにコーチャンの供述調書というのは信用力があるというように言っているわけであります。 そこで、私は遺憾ながら指摘せざるを得ないわけですが、そういうようになりますと、ここで証拠能力ありとして採用された内容というのは、昨年われわれがこの委員会において中曾根氏を証人として喚問して、中曾根氏が答えたこととことごとく違っているわけであります。これは非常に重大な政治的な意味を持つということを私は指摘せざるを得ないというように思います。 次に、伺いたいと思いますが、私は、去年の十月に予算委員会におきまして、金在権氏をアメリカの法典に基づいて嘱託尋問をして、そして証言を得るべきであるということを指摘しましたところ、ここに速記録がありますが、伊藤刑事局長は「まず日本の裁判所で証人尋問の必要性を認めて、そうしてアメリカ合衆国の裁判所へ嘱託をするという手続になりますので、その前段階の疎明資料がどれほどあるか、こういうことがまず問題でございます。」と答えております。そして、その後、私は政府に質問主意書を出しましたが、その中で結局その必要性を明らかにする疎明資料も整っているとは言えないという回答になっているわけです。したがって、嘱託尋問をする場合には、ある程度その存在をうかがわせる疎明資料が必要であるという見解であろうと思いますが、そのとおりですか。 ○伊藤(榮)政府委員 そのとおりだと思います。 ○正森委員 それでは刑事局長に、この裁判所の決定の五十八丁の表の二行目以下裏側まで「昭和五一年五月二二日付証人尋問請求書の記載によれば、本件被疑事実」と、こうありますが、そこのところを朗読してください。 ○伊藤(榮)政府委員 検察官吉永祐介作成名義の昭和五一年五月二二日付証人尋問請求書の記載によれば、本件被疑事実(一部公訴提起済みのものに関しては公訴事実)は、児玉譽士夫に対する所得税法違反、外為法違反、桧山広・大久保利春・伊藤宏・丸紅株式会社・若狭得治・全日本空輸株式会社に対する各外為法違反、右桧山・大久保・伊藤・若狭に対する各贈賄の各事実のほか、「被疑者(氏名不詳)数名(政府の閣僚、高官、国会議員)は、航空運送事業に関する免許、許可等国の行政事務を行う職務権限あるいは日本国政府の購入する各種航空機の選定、購入の決定等に関する職務権限を有するものであるが、ロッキード・エアクラフト社の製造・販売するエア・バスL-一〇一一及び対潜しよう戒機P3Cの販売代理権を有する丸紅株式会社の前記桧山、大久保、伊藤及び全日本空輸株式会社の前記若狭らから、全日空がL-一〇一一を購入しこれを運航することに関し種々便宜な取扱いをしてもらいたい旨、あるいは日本国政府がP3Cを選定、購入するよう取り計ってもらいたい旨の請託を受け、これに関する謝礼の趣旨で供与されることを知りながら、昭和四七年一〇月ころから同四九年中ころまでの間数回にわたり多額の金員を収受した」旨の事実を含むものであることが認められる ○正森委員 はい、結構です。 いま刑事局長がお読みになったところは非常に重大であります。つまり、五月二十二日に嘱託尋問をしました証人尋問請求書の記載では、日本の検察庁は明らかに被疑事実として、政府高官数名というのがし一〇一一だけでなしに、対潜哨戒機「P3Cを選定、購入するよう取り計ってもらいたい旨の請託を受け、これに関する謝礼の趣旨で供与されることを知りながら、」「数回にわたり多額の金員を収受した」、こういうように認めて、アメリカに対して嘱託尋問をしておるわけです。 そして、私が前に断りましたように、こういう嘱託請求をするについては裁判所に決定してもらわなければなりませんから、疎明資料がなければならないということは、答弁しているとおりであります。すなわち、五月二十二日現在においては、金大中事件においてはできなかったのに対して、十分できるほどの必要な疎明資料をもって、P3Cについても贈賄が行われたということを日本の検察庁は認めておったわけであります。そういうことになりますね。 ○伊藤(榮)政府委員 ただいまお読みしましたような被疑事実を頭に置いており、かつそれをある程度疎明したものと思います。 ○正森委員 刑事局長は明白にその事実を認めました。私は、きょうは時間がございませんから伺いませんが、それだのに、なぜP3Cについて贈賄の事実が立証されず、起訴されなかったのかという点こそ、非常に重大な問題がある。五月二十二日には資料があると思われたのに、それが八月、九月の段階では抜けておるわけであります。これをわれわれ国会としては、政治的道義的責任の追及と一緒にやはり明らかにしていかなければならない、こういうぐあいに思います。 時間がございませんので、防衛庁においでいただいておりますので、一言だけお伺いいたしますが、P3Cに関係して、九月二十六日、二十七日の二、三の新聞によると、P3Cにはタクテイカル・サポート・センターという地上支援設備が必要であります。これは大体五カ所に設置しなければならないと言われているそうでありますが、五十四年度概算要求では、一カ所分だけの約三十億円くらいの費用が概算要求されておる、こうなっておるわけです。ところが、これについてもロッキードとユニバック社が非常に争いをいたしまして、ロッキード社が非常に出おくれたのに、いままでの一〇一一とかあるいはP3Cと同じように引き延ばし作戦をやって、そして受注するようにしているとか、あるいはこれについて防衛庁が自民党の政調会の国防部会にもTSCについて説明をしていないとか、あるいは国防会議にも諮っていないとかいう、疑惑が指摘され、防衛庁は異例の調査委員会をつくっておるというようにも報道されておるわけですね。私は自分なりにいろいろ聞きましたら、必ずしもその新聞報道に合致しない面もあるようでありますが、一言だけ、時間がありませんから、防衛庁としての説明を聞かしてください。 ○間淵政府委員 P3Cのシステムを運用するに当たりましては、その飛行機及びその搭載機器というものでなく、地上において音紋、海象その他のデータを整理するシステムと申しますか、これはパッシブ・アコースティック・センターというもの、それからオペレーションのプログラムをつくるプログラム・ゼネレーション・センター、それからそのプログラムをテストしシミュレーションするソフトウェア・デベロプメント・ファシリティーというものと、それから先生御指摘のタクテイカル・サポート・センター、この三つがあるわけでございまして、さきの二つ、プログラム・ゼネレーション・センター及びパッシブ・アコースティック・センターにつきましては、昭和五十三年度の予算でお認め願ったわけでございまして、タクティカル・サポート・センターにつきましては、約三十億円の概算要求を五十四年度といたしまして要求しているところでございます。これは先生御承知のように、非常にコンピューターを中心とした技術的な判断というのが判断の基礎をなすわけでございまして、そういう技術的なデータというものを集めまして、それから海幕におきまして、その機械器具の要目と申しますか、その運用要領といったようなものを決めまして、それに基づきまして各社から競争的に見積もりを出させるわけでございまして、その見積もりが提出されたのは、ユニバック社に関しましてはことしの七月上旬、それからロッキード社に関しては八月上旬でございまして、その間いろいろの事務的な問い合わせ、交換といったようなものはあると思いますが、決してどちらが出おくれたとか、どちらが早く食い入っておったとか、そういうことはございません。 それからまた、異例の審査委員会というお話でございますが、これは技術的に非常に高度な知識を要するということでございまして、主管の課長にそのオペレーションを任してあるわけでございますが、その主管の課長が、コンピューターなどの技術に非常に詳しいというものを集めまして、海幕と協力いたしまして、技術的な詰めを行っておるという、そういう段階でございまして、何かロッキード事件の二の舞かというような書き方ではございましたですが、決して、そういう技術的な詰めということが主要な研究点というものになっておるわけでございまして、またその金額も発注するものに関しましては二十億円弱といったようなものでございまして、純粋に技術的な詰めを行って、純粋に技術的な結果を出したい、そういうふうにただいま努力しておるところでございます。 ○正森委員 国防会議に説明はしてあるのですか。 ○間淵政府委員 それから、国防会議におきましては、P3Cとともに地上施設につきまして国防会議の参事官会議その他におきまして十分説明いたしまして、またその国防会議におきましても、そういう地上施設も含んでおるということを十分述べて、御審議いただいたことでございます。 ○正森委員 終わります。 ○廣瀬委員長 次に、加地和君。 ○加地委員 きょう大臣に対する質問をかなり準備しておったのでございますが、ほかの会合のためにおられませんので、それは次の機会にいたしまして、主に刑事局長に質問させていただきます。 ロッキード裁判で、冒頭陳述書に証拠によって立証すべき事柄がずっと書かれておるわけでございますが、その中でいわゆる灰色高官の名前というのが冒頭陳述書では出ておりませんでしたが、大久保利春証人尋問で、いろいろな雑誌等を見ますと、検察側はかなり執拗に大久保利春に灰色高官の名前が出てくるような質問の仕方をしておられるわけでございますが、このことについて、なぜ冒頭陳述書に出なかった着がこのときにはそうしつこく名前が出てくるような質問の仕方をしたのかということが、政治的な背景的な解釈もついていろいろと巷間取りざたされておるわけでございますが、これはどういう実情であったのでございましょうか。 ○伊藤(榮)政府委員 申し上げるまでもなく、冒頭陳述と申しますのは、証拠によって立証しようとしている事項を必要最小限度において記載するわけでございまして、その意味で全日空ルートの冒頭陳述書には橋本、佐藤両被告人ほか四名の国会議員という表現をとっておりました。冒頭陳述書としてはそれで足りると思います。ただ、公判の段階で、ほか四名、ほか四名という抽象的なことで証言を求めておっても、裁判所に対して与える心証からいいましても、あるいは証言の真実性を担保する意味からいきましても適当ではないわけでして、おのずから実際の証人尋問あるいは検察官調書の採否をめぐっては、その、ほか四名の固有名詞が出てこざるを得ない。そういたしませんと、仮にA、B、C、Dというような番号を振ってそれではやるか、そういうふうにして秘匿しなければならぬというものでもなかろう、こういうふうに思っております。 ○加地委員 そうしますと、その、ほか四名の名前は、仮に証言で出てこなかったとしても、刑事局長としては、検察側の目的は果たし得るけれども、まあ念のためにほか四名の名前をしつこく出さしたということになるのでしょうか。 ○伊藤(榮)政府委員 まず前提として、お尋ねの前提にございますしつこくという言葉について、若干見解の相違があると思いますが、言いたくないというのを裁判所が言いなさいと言えば言いますということで、裁判所の指示を求めたということでございまして、別にしつこいとは思いませんが、いずれにいたしましても、現実の証言と申しますのは、過去にあった事実をなるべく赤裸々に語るということによって裁判所の心証を得るわけでございますから、証人調べの段階におきましては固有名詞はやはり出てこざるを得ない、こういう関係であろうと思います。 ○加地委員 大久保利春氏は、国会での証人のときには、いろいろと、起訴もされておるように、問題があったのでございますが、裁判所の証人としては他の証人と比べて非常に素直な態度での供述が見られるというように報道されておりますが、これから後ロッキード裁判の終結までに大久保利春証人が、大久保利春証人の口によって証明すべき事項というのは、どういう場面でどういうところに大体出てくるのでしょう。 ○伊藤(榮)政府委員 私もただいま御指摘のような問題について、検察当局から詳しく報告を受けておるわけではございませんが、まあそのことを最初にお断りして、その上でお答えするといたしますと、次に必ず大久保供述が出てくるであろうと思われますのは、丸紅ルートにおける被告人質問という形でございます。ただいま御指摘の大久保証言というのは、全日空ルートにおける証言でございまして、丸紅ルートでは大久保被告人の立場でございますので、被告人質問に答えることになると思います。 なお、申し上げるまでもなく訴訟は流動的でありますから、たとえば弁護人側証人として他のルートで出るというようなことも考えられますので、その辺は確定的なお答えはいたしかねる次第でございます。 ○加地委員 副島氏も証人として裁判の方にすでに出てきまして、かなり重要な証言をしておるのでございますが、金を入れた茶色の封筒を実際に渡した人については、議員本人であったかどうかわからないというようなことを言っておるのでございますが、検察官面前調書ではそのことははっきりと議員本人に渡したという供述になっているのでしょうか。 ○伊藤(榮)政府委員 いままさに副島証人の検察官調書をこれから証拠申請をして裁判所にとってもらおうということであろうと思われます。したがいまして、現段階でいわゆる副島調書の内容について申し上げることは、御容赦いただきたいと思います。 ○加地委員 副島調書を申請する時期、その証拠決定がなされる見通し、これは大体いつごろでございますか。 ○伊藤(榮)政府委員 伊藤宏の検事調書と副島氏の検事調書、同じ時期の証拠申請になるのじゃないかと思います。先国会で私がいわゆる達観として申し上げたところは、その証拠申請及び証拠採用、証拠調べ、これが年内にあるのではないか、こういうふうに申し上げたわけでありますが、先ほど申し上げておりますように、全日空ルートの公判が若干スピードが落ちておりますので、それよりややおくれる。少なくとも証拠調べは年を越すかもしれない、こういう状況でございます。 しからば果たしていつ証拠調べ請求をするかということになりますと、訴訟の全体を踏まえております立ち会い検察官が最も効果的な時期を考えて選んで申請をいたしますので、その点は私からいつごろというふうに申し上げる材料がちょっとないわけでございます。 ○加地委員 訴訟進行のテンポがおくれておるとおっしゃいましたけれども、これはすべてのルートの裁判についておくれているのでしょうか、あるいは一部分でしょうか。またおくれておるとすればどのくらいのペースでおくれ、そしてそれはどういう原因でおくれてきておるのでしょうか。 ○伊藤(榮)政府委員 先ほども申し上げましたように、丸紅ルート、児玉ルート、小佐野被告人関係、これはことしの春ごろ検察当局が見込んでおりましたと同程度のテンポで進んでおるようでございますが、全日空ルートにつきましてややスピードが落ちておる、こういうことでございます。 その理由と申しますのは、一つは橋本被告人がけがをされて、その回復にある程度要し、かつ出廷されるようになってからも、そういう病後であるという観点から若干の制約がありましたことと、それから全日空ルートがいよいよ立証の核心段階に入ってまいりまして、他のルートで被告人になっている人とか、あるいは会社の重要関係者が証人に立たれて、その証言が必ずしも明快でないというようなことから、主尋問、反対尋問いずれも当初の見込みよりもよけいかかるというような状況が出ておるわけでございまして、そういうことから若干おくれぎみになっておる、こういうことでございます。 ○加地委員 終わります。 ――――――――――――― ○廣瀬委員長 次に、先ほどの証拠物の要録についての説明の残余について、刑事局長より説明を求めます。伊藤刑事局長。 ○伊藤(榮)政府委員 それでは、理事会から御要望の証拠物の要録についての続き、三以下を御報告申し上げます。 三、昭和四十六年六月三十日付新機種選定準備委員会(第八回)資料ファイルのうち、日航の大型機導入の時期を延期させようとする部分の要録。 この資料は「JALのS四七年B七四七投入に対する当社方針(案)」と題する文書でありまして、全日空の対策として、第一段階では、日航のジャンボ機投入に反対し、第二段階として、右投入阻止が不可能と判断される事態になったときは、その投入時期をあらゆる手段を講じて引き延ばすこととし、第三段階として、日航のジャンボ機就航開始から、全日空の大型機投入までの期間は、日航の減便を要求する等の対策が記載されております。 四、松岡博厚丸紅輸送機械部長名で作成された昭和四十七年九月二十七日付「若狭社長-越後C・I社長会談」報告書のうち、全日空は九月中に機種を決め、十月二十七日に正式決定できるよう運輸省と折衝していくとする部分の要録。 右該当部分には次の記載がございます。 「○全日空の社内としては、今月中に定めて、爾後JAL、MOTにCONTACTする。明日(九月二七日)の常務会にはこの問題はかからない。○正式決定は、一〇月二七日の役員会という事になろう。」 五、丸紅輸送機械部航空機課作成名義の昭和四十七年一月十七日付部内資料のうち、全日空社長が日航「B747」三機の国内線転用には全日空として採算を度外視しても対抗することとしている部分の要録。 これは昭和四十七年七月二十日付の当該資料という御要求でございましたが、一月十七日の間違いであろうと思います。 この資料は「一月度部会資料」と題する文書でありまして、右該当部分には次の記載があります。 「全日空社長は若し日航が昭和四八年度中に現在手持ちの七四七、三機の国内定期運航を開始せば、全日空としては対抗上採算を度外視して早期に大型ジェット導入をせねばならぬと表明されている。」 六、昭和四十七年九月二十五日のコーチャン・渡辺会談議事録のうち、全日空の新機種についての「ある種の結論」に達するとした部分の要録。 右該当部分には渡辺の発言として、次の趣旨の記載があります。 「コーチャンのいつ全日空は機種を決定するのかという質問について若狭社長と話した。全日空は今月中に何らかの結論に達するべく努力している。政府とJALとの話は来月にならぬと出来ない。」 七、昭和四十五年三月二十日付「全日本空輸(株)と東亜航空(株)の合併問題について」と題する運輸省内部文書(稟議書)のうち国内幹線二社体制に関する部分の要録。 右該当部分には、全日空と東亜航空との合併問題については、これ以上遷延することは当を得ないので、昭和四十五年九月末までに合併するか否かの決定及び合併するとすれば条件等を含め、両社間の最終的合意を得させるようにし、これが得られない場合、東亜航空は従来どおりローカル線会社として位置づける旨の記載がございます。 八、昭和四十五年五月二十五日付「航空企業のあり方について(案)」と題する運輸省作成の文書のうち三社体制への方針転換の部分の要録。 証拠物の中に右作成日付、右表題の文書は二通ありますが、右該当部分は全く同文で次のとおり記載されております。 「幹線は、日本航空、全日本空輸及び日本国内航空の三社をして運営させる。ただし、日本国内航空については、体質強化が図られるまでの間、従来どおり日本航空と幹線運営の委託その他業務提携を継続させる。」 九、昭和四十七年三月二十二日及び五月二十六日の自民党航空対策特別委員会の議事メモのうち、佐藤孝行政務次官がまとめた私案に関する部分の要録。 昭和四十七年三月二十二日付議事メモには、昭和四十五年十一月二十日の閣議了解に基づき、航空企業の過当競争を排除し、健全な航空企業の育成強化を図ることとし、日航、全日空、東亜国内航空の三社につき、その持ち場、特徴について規定した「航空企業の運営体制について」の中間報告がなされた旨の記載があり、この報告を支持する方向で数名の出席議員の発言があり、最後にまとめとして、右報告は中間報告として大筋は了承し、この仕上げは佐藤政務次官に任せるが、内容を煮詰めて、結果は党へ報告されたい旨の記載があります。 同年五月二十六日付議事メモには、航空企業の運営体制について、企業側からした意見表明、事情説明が全日空、日航、東亜国内航空の順に記載してあります。全日空の説明は佐藤政務次官提案の骨子に賛成、日航は右提案に部分的には反対、東亜国内航空は右提案は干天の慈雨の観があるということでございました。 ――――◇――――― ○廣瀬委員長 この際、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。 ロッキード問題に関する件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○廣瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 本日は、これにて散会いたします。 午後一時十二分散会 |
(私論.私見)