閣僚答弁6

 (最新見直し2013.05.19日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、角栄の大臣時代の答弁を確認しておく。「田中角栄の衆議院本会議発言一覧」を参照する。

 2013.5.19日 れんだいこ拝


 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第8号(1974/01/21、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 戦後三十年、世界は、いま新しい転換の時代を迎えております。わが国は、戦後の廃墟から立ち上がって、復興経済、自立経済、国際経済へと三段飛びの発展をなし遂げ、いまや主要工業国の一員として、国際的にも確固たる地歩を占めるに至りました。資源と資本に乏しいこの狭い国土に驚異的な高度工業社会を築き上げたのは、わが日本国民の英知と努力のたまものでございます。しかしながら、わが国もまた世界の例外ではなく、先進工業国が直面しておるのと同じように、数多くの矛盾と不均衡が先鋭的にあらわれてきておるのであります。物価、公害、エネルギーの諸問題こそがまさに当面する最大の課題であります。国民の不安と焦燥の原因がここにあることも、私はすなおに受けとめております。国民のためにこそある政治は、いまこそ、これらの課題を最優先に解決するため、外に国際的な連帯と協力を、内に国民の理解と支持を得て懸命の努力をしていかなければなりません。そのために、私は、過去の行きがかりにこだわることなく、反省すべきは率直に反省し、改めるべきは謙虚に改めるなど、思い切った発想の転換と強力な政策を推進してまいります。(拍手)

 物価問題の解決は、当面の政治の最重要課題であります。このため、政府は、昨年来財政金融政策を通じて総需要の抑制に全力をあげてまいりました。すなわち、財政面では公共事業の執行の繰り延べ、金融面では累次にわたる公定歩合の引き上げ等、引き締め措置を強化してきたところであります。また、民間設備投資における新規着工の停止などの措置をとるとともに、個別物資の需給調整のための対策を講じてまいりました。さらに、昭和四十九年度予算及び財政投融資計画の作成にあたりましても、特に需要誘発効果の高い一般会計の公共事業関係費を今年度以下に押えるなど、極力財政規模を圧縮することといたしたのであります。すでに決定せられた国有鉄道運賃及び米の政府売り渡し価格の引き上げの実施時期を半年間延期することとしたのも、物価抑制を最優先の課題と考えたからであります。(拍手)その他の公共料金につきましても、極力抑制する方針であります。

 石油の供給制限と輸入価格の大幅引き上げを契機として、物価情勢はきわめて憂慮すべき事態を迎えております。政府は、正直者がばかをみることのないよう、社会的公正を確保し、経済社会の混乱を未然に防止するため、国民生活安定緊急措置法、石油需給適正化法、生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律の機動的な運用等により、物資の需給調整、価格の適正化、投機的な行為の抑制をはかってまいります。今日の事態は、自由と民主主義にとって大きな試練であります。政府は、この際、企業が目先の利益にとらわれて便乗値上げや投機的行為に出ないよう強く自制を要請するとともに、かりに、これらの不当な行為等によって過大な利益を得た者に対しては、法の厳正な運用をもって対処いたします。(拍手)

 石油自給度の高い米国においてもきびしいエネルギーの消費抑制措置がとられ、また、ヨーロッパ諸国においても産業用よりも民生用需要の抑制に重点を置いた消費規制が行なわれております。わが国においては、国民生活への直接的影響をできるだけ避けるため、民生用需要の充足を最重点に考えつつ、石油、電力等の節減に取り組んでいるのであります。生活必需物資につきましては、石油、電力の配分につき特段の配慮を行なってその必要量を確保し、また、正確な情報の迅速な提供につとめてまいります。当面している事態は、物資の絶対的不足に悩んだ戦中戦後の時代とは本質的に異なり、生産力は飛躍的に拡大しており、流通段階にも相当量の在庫が存在し、生活必需物資の需要には十分にこたえられる態勢にあります。国民各位も、このような現実を正しく理解し、良識ある行動をもって物価の安定に協力されるよう切に望むものであります。(拍手)

 これから春の賃金改定期を迎えます。賃金交渉は、労使の自主的な話し合いによって決定されるべきものでありますが、労使がその影響の重大さを十分自覚し、国民経済的視野に立って節度ある態度をとられるよう強く望むものであります。(拍手)今後における資源・エネルギーをめぐる国際環境は、量の面でも価格の面でもきびしいものがあります。政府は、資源供給の安定化に引き続き努力を重ねる一方、石油偏重のエネルギー体系から脱却し、原子力の開発利用の促進をはじめ、水力、石炭など国内資源について新たな視点から開発の可能性を見直し、また、長期的視野に立って、太陽エネルギーなど豊富で無公害の新エネルギーの利用技術の研究開発を強力に推進してまいります、なお、原子力発電の推進にあたっては、安全性の確保について国民の理解が得られるよう努力を重ねますとともに、発電所の立地が地域住民の福祉向上につながるよう周到かつ強力な施策を講じてまいります。さらに、資源・エネルギーの回収、再生利用など資源利用の効率化と省資源型産業構造への転換もあわせて進めてまいります。

 物価騰貴の最大の弊害は、国民生活の将来への不安を拡大し、所得及び資産の不公平な分配をもたらすことであります。政府は、緊縮財政を貫く中で福祉優先の政策を徹底することとし、社会保障を中心として福祉向上のための諸施策の推進に思い切った財源の投入をいたしました。老齢福祉年金を五〇%増額するとともに、厚生年金及び拠出制国民年金についても物価上昇にスライドして給付額を引き上げるほか、恩給等についても給付額の改善をはかることとしております。また、生活保護世帯に対する生活扶助基準を大幅に引き上げるほか、寝たきり老人、身体障害者等に対する福祉対策の強化や、社会福祉施設入所者の処遇改善等の措置を講じてまいります。さらに、医師、看護婦等の医療従事者の養成確保など医療供給体制を整備するとともに、適切かつ公正な医療が行なわれるよう一そう力を注ぐ考えであります。

 税制面においては、給与所得者を中心とする税負担の軽減、適正化をはかるため、所得税について給与所得控除の抜本的拡充等により初年度一兆四千五百億円にのぼる大幅減税を実施することといたしました。この結果、いわゆる標準世帯給与所得者の課税最低限は、平年分で現行の百十五万円から百七十万円に引き上げられることになり、年収二百万円で七五%、三百万円で五五%、それぞれ所得税負担が軽減されるのであります。(拍手)反面、法人税をはじめ、印紙税や自動車関係諸税について増税措置を行ない、国民負担の適正化と税体系の整備合理化を一そう推進することとしております。

 将来にわたって国民生活の安定と充実をはかるためには、財産づくりを進めることが大切であります。政府は、健全な貯蓄を奨励するため、預貯金金利の引き上げ、利子非課税限度の引き上げを行なうとともに、勤労者財産形成貯蓄に対する優遇措置を強化し、また、事業主の協力が得られるよう勤労者財産形成基金制度を創設することといたしました。(拍手)なお、今後、高齢者社会への移行や石油危機に伴う雇用問題に適切に対応するため、現行の失業保険制度を雇用保険制度に改め、総合的な雇用対策を推進することといたしました。

 今日の異常事態において、中小企業をめぐる環境はきびしさを増しております。政府は、特に小規模零細企業の経営圧迫を防ぐため、無担保無保証の小企業経営改善資金貸し付けの資金量の増加、貸し付け限度額の二倍引き上げ、税負担の軽減など、金融、税制面での施策を画期的に拡充するとともに、経営指導事業の抜本的強化をはかってまいります。

 食糧の確保も重要な課題であります。今後の世界の食糧需給の動向は、気象条件の不安定性、人口増加等の諸条件から見てきびしいものになることが予想せられます。このため、国民の主要食糧のうち国内生産が適当なものは極力国内でまかない、自給度の維持向上をはかることが必要であります。このような観点から、農林水産業の生産基盤の整備を進めるとともに、麦、大豆等の生産の奨励、畜産等の大規模生産基地の建設などを積極的に推進してまいります。また、海外に依存せざるを得ない農産物についても、備蓄政策や国際協力の一環としての開発輸入政策などを進め、その安定的な供給を確保してまいります。

 住宅の建設を助長するためには、土地問題を早急に解決し、宅地の円滑な供給を確保しなければなりません。政府は、宅地開発公団を創設するとともに、宅地の大量供給促進のための制度を整備し、大都市地域を中心として大規模宅地開発事業を推進してまいります。

 土地問題を根本的に解決するためには、全国的に土地利用計画を確立し、これに即して公共優先の立場から、土地の取引、利用にわたる規制、誘導を強化することが急務であります。土地は、いかなる資源にも増して有限であり、計画的かつ効果的な利用の推進が強く要請されるのであります。一億をこえる国民が長きにわたって豊かな生活を享受していくためには、たとえ現下のきびしい情勢のもとにあっても、長期展望に立って国土利用の再編成をはかり、国土の均衡ある発展を進めることをないがしろにすることはできません。土地問題を解決し、総合的かつ計画的な国土の利用、開発及び保全をはかるため、国土総合開発法案及び関連法案のすみやかな成立を期待いたします。(拍手)

 環境保全対策の推進はいささかもなおざりにすることはできません。政府は、公害の防除、自然環境の保護について引き続き施策の拡充強化をはかっていくこととしておりますが、特に大気汚染については、いわゆる総量規制の導入をはかる等規制基準を強化してまいります。

 沖繩については、県民福祉の向上のため、本土との間に格差の見られる医療体制、社会資本等の整備、充実を積極的に進めてまいります。また、開催期日を延期することとした沖繩国際海洋博覧会については、その沖繩振興開発上の重要性や国際的意義にかんがみ、これを成功させるよう努力を重ねてまいります。

 教育は、民族悠久の生命をはぐくみ、日本文化の伝統をつちかう最も重要な国家的課題であります。激動と試練の二十世紀を越えて日本民族の歴史を創造するものは、青少年であります。心身ともにすこやかで、豊かな心情と創造力に富み、広い視野と強い責任感を持った青少年の育成は、国民共通の願いであります。私は、青少年諸君が、強靱な精神とたくましい身体を養うとともに、公共に奉仕する使命感に燃え、国際人としても信頼されるたくましい日本人として成長することを心から期待いたします。(拍手)

 政府は、新たな決意をもって、教育の刷新、充実のための施策を積極的に進めてまいります。(拍手)なかんずく、初等中等教育については、知・徳・体の調和のとれた人間形成の基本の確立をめざして、教育内容を精選し、児童、生徒が責任を重んじ、みずから考え、みずから能力を切り開いていく態度を修得させるように配慮いたします。学校教育の成否は結局個々の教師の力にまつところが大きく、その責務は重大であります。教師に対する社会的信頼の確保こそ、重要な課題であります。教職によき人材を得て、その情熱を教育に傾け得るようにするため、引き続き教員給与の改善を推進してまいります。(拍手)また、高等教育については、大学改革の推進をはかるほか、教育の機会拡大の要請にこたえ、無医大県の解消、新しい構想による高等教育機関の計画的な拡大など多彩な施策を進めてまいります。さらに、理想的な教育の条件と秩序ある学園環境の確立のために、たゆみない努力を傾ける考えであります。なお、先般の国連総会において、国連大学本部の日本設置が決定を見たことは、国際社会における日本の役割りを果たす上でまことに意義深いものがあります。その受け入れに遺憾のないよう万全を期してまいります。

 福祉国家の建設にとって、婦人の参加と活躍は、ますます不可欠の要請となりつつあります。わが国の婦人は、その高い能力をもって、女性固有のものとされている職域はもとより、従来男性の職能分野と見られていた専門的、技術的分野にも活発に進出し、多くの実績をあげておることは、心強い限りであります。今日、看護をはじめ、社会福祉、教育など各種専門分野においても、婦人の進出にさらに大きな期待がかけられております。他方、女性には、家庭においても、母として、次代をになう児童を直接養育する重大な使命があります。いまや、婦人の就業やその家庭生活との関係等につき、新たな観点から、さらに根本的に検討すべきときであります。政府は、専門技術者の養成、家庭婦人の就業促進とそのための社会的環境条件の整備等につき、真剣に努力を重ねてまいります。

 私は、一昨年来の米国、欧亜大陸、東南アジアへの訪問外交を通じ、緊張緩和は、欧州におけると同様、アジアにおいても、現存の国際秩序を踏まえて、そのワク内で達成されつつあるとの確信を深めたのであります。わが国は自衛のための必要とされる最小限度内の防衛力を維持するとともに、引き続き日米安全保障体制を堅持してまいります。政府は、防衛問題に関し、国民の広い理解と支持を得るため一そうの努力を重ねてまいります。

 自衛隊の施設及び在日米軍に提供中の施設、区域の周辺地域における民生安定諸施策を抜本的に強化するため、新たに法律案を今国会に提出するほか、米軍が使用する施設、区域の整理統合についても引き続き真剣に取り組んでまいります。なお、昭和四十九年度における防衛費については、当面する内外の情勢を十分勘案し、総需要抑制の見地からも、必要最小限の経費計上にとどめました

 現下の国際情勢は一そう多様化の度を加え、世界は、政治的にも経済的にも新しい秩序を模索しつつあり、わが国を取り巻く内外の情勢は、戦後かつてないほどに複雑かつきびしいものとなっております。このようなときにあって、各国との相互理解と協力の増進はことのほか重要であります。私がさきの米、中、西欧及びソ連の訪問に引き続き、このたび、アジア五カ国を歴訪しましたのも、世界的視野に立つわが国外交のあり方、国際社会に向けてわが国が果たすべき責任を見きわめるためでありました。

 私は、かねてより、できるだけ早くアジア諸国をたずね、心の通った隣人としての友好を深めることにより、これら諸国とわが国との関係に新しい一ページを開きたいと念願をしてまいりました。私は、今回のアジア訪問を通じ、これら諸国との平和と繁栄を分かち合うよき隣人同士の関係をいかにして育成、強化することができるか探究することに可能な限りつとめました。わが国のアジア諸国との関係や、わが国企業の経済活動に対する不満や批判についてもつぶさに見聞いたしました。私は、その中で、各国、各国民にとって相互理解と協力がきわめて大切であるにもかかわらず、それが言うはやすく実行はまことに困難な課題であることを痛感いたしました。

 国際協調の意味するところを正確に把握し、これを国の施策と国民一人一人の行動に反映させることは、われわれが考えるほどには容易ではありません。一億の日本民族は、単一民族として島国の中で人種的対立もなく、宗教や言語の争いもなく、そのエネルギーをひたすら復興と建設に結集することができました。そのことは、一面で世界各国の中でもきわめて恵まれた点であると考えられますと同時に、他面、国際協調ないし外国との交際においては、いまだ大いに反省し、みずから学ぶ点の多々あるという結果をもたらしております。敗戦直後の荒廃の中で復興に努力する過程では見過ごされ、ある程度正当化されたかもしれない閉鎖的な国益追求の姿勢は、もはや国際的に通用しないばかりか、災いの種ともなりかねないのであります。(拍手)この際、わが国に対する正当な批判にはすなおに耳を傾け、改めるべきところは改め、長期的展望に立つ互恵的な交流関係の維持増進をはからなければなりません。こうして、日本が自分のものさしだけで判断することなく、アジア諸国のよき友人となり、苦楽をともにしてこそ、初めてアジアの永続的な平和の確立に貢献できるのであります。(拍手)

 私は、かように人の面について見直しが必要であることを訴えるものでありますが、物の面では、歴訪諸国との首脳会談を通じ、アジア諸国とは相互補完の関係にあることを一そう感得いたしました。わが国は、アジア諸国の協力を必要とし、アジア諸国もまた、その国づくりのため、わが国の協力に多大の期待を寄せておるのであります。わが国は、アジア諸国の期待にこたえるため、政府開発援助の質的改善を含む援助対策の一そうの転換をはからなければなりません。具体的には、関係国の一般大衆の福祉向上のため、農業、医療、教育、通信等の分野に対する援助を拡充し、政府借款の条件を緩和し、贈与の対象範囲を拡大してまいります。その一環として、政府は国際協力推進のために国務大臣を新たに設けるほか、国際協力事業団を設立し、政府及び民間の協力体制を整えることにいたしました。

 東南アジアを訪問して、今次石油危機がわが国や欧州諸国等に深刻な影響を与えている以上に、アジアの開発途上国が直接的な打撃をこうむっており、特にわが国の経済活動の停滞により、甚大な影響を受けている事実を痛感してまいりました。資源問題の根本的解決は、産出国と消費国との間に互恵互譲の精神に基づく調和ある関係がつくられて、初めて可能であります。政府は、産油国と消費国との会合に言及した石油輸出国機構の声明を歓迎するとともに、国際的な解決をはかろうとする試みに参加し、世界経済の拡大と発展のために積極的に貢献をしてまいりたいと考えております。(拍手)

 政府は、資源確保にあたっては、内にはわが国経済の体質を資源供給の制約という新事態に対応すべく転換しつつ、外に向かっては、その安定供給の確保と供給先の多角化のための努力を鋭意積み重ねてまいりましたが、これらの努力も中東紛争を契機とする新事態に対応し得るほど十分のものではなかったのであります。わが国は、中東における公正かつ永続的な平和が早期に達成されることを期待するものであり、そのためできる限りの寄与を行なってまいります。また、これら諸国との間に、長期的観点から、その工業化の努力に対する具体的な経済技術協力のほか、人的、文化的交流等幅広い友好協力関係を増進するため、最大限の努力を傾ける必要があります。以上の政策を踏まえ、政府はさきに中東問題に関する態度を明確にするとともに、三木副総理をはじめ、政府、党首脳を中東諸国はじめ関係諸国に派遣をしたのであります。資源の共同開発、新エネルギーの研究等に関する国際協力の推進の重要性はますます高まっております。これらの問題については、昨年の各国首脳との会談においても、すでに積極的、具体的な話し合いを行なった次第であります。

 米国とのゆるぎない相互信頼関係は、わが国の多角的外交展開の基盤となるものであります。そのため、政府は、米国との貿易収支の著しい不均衡を大幅に改善せしめたのみならず、広く世界経済全体の発展確保のため、拡大均衡を指向する両国間の互恵的な貿易経済関係の増進に格段の努力を傾けております。

 欧州との間には伝統的な友好関係が存在しながらも、具体的な協力関係は必ずしも密接であったとは申せません。昨年の訪欧の結果、広範な分野にわたり、各国との対話は大いに促進強化されましたが、この成果を踏まえ、今後ともわが国外交基盤の一そうの拡大に資してまいります。ソ連との関係においても、北方領土問題が平和条約の締結によって処理されるべき戦後の未解決の問題であると確認されたことは、きわめて意義あることであり、あわせて、これまでの両国関係の着実な発展を一そう増進する素地ができ上がったことは、わが国益に資するゆえんであると考えます。

 日中間の国交正常化以来その成果は着実に定着しつつあり、わが国外交の幅広い展開は一そう容易になりました。政府としては当面する実務諸協定等の締結を促進し、日中関係の一そうの進展とアジアの平和と安定に寄与してまいる考えであります。

 私は、わが国を取り巻く国際情勢のきびしさと、わが国が果たすべき責任の重さについては十分な理解をいたしております。一昨年来の首脳外交により、世界的視野に立つわが国外交を強力に展開する基盤は固まりつつあると確信をいたしております。私は、今後とも、すでにもたらされている各国首脳の招請にもこたえつつ、多方面との幅広く奥行きの深い外交努力を積み重ね、平和と繁栄を享受できる住みよい人類社会形成のため、着実な国際的貢献を行なってまいる考えであります。われわれの前に横たわる幾多の難問は、先人が経験したことのない種類のものであります。これらの難問を解く処方せんを過去の教科書に見出すことは不可能なのであります。しかし、戦後の窮乏の中にあって、われわれは、乏しきを分かち合いながら苦しい試練に耐え、復興への道を切り開いてまいりました。(拍手)その同じ国民が、当時に比べはるかに物の豊かな今日、たとえそれがいかにきびしくとも、当面する困難を乗り切れないはずはありません。(拍手)自分さえよければという気持ちで目先の利益を相争い、相互不信におちいるようなことがあれば、それは国民にとって大きな不幸であります。このような事態を回避して国民の不安を解消し、難局に対処していくのが政治の責任であります。(拍手)いまこそ、政治が本来の意義と機能を取り戻し、その力を余すことなく発揮すべきときであります。政治は、一政府、一政党のみにかかわるものではありません。国民一人一人の多様な願望と英知が相寄り、国の命運を決定づける力となるのであります。(拍手)政府は、政策目標と個々の政策手段を選択して、それを広く明らかにし、国民の支持と理解を得ながら冷静な判断と敏速果断な行動をもって対処し、その結果については、責任をとってまいります。転換期を乗り切るためには、大きな困難と苦痛が伴います。しかし、議会制民主主義の確固たる基盤に立って、政府と国民が相携えて力を尽くすならば、今日の試練を克服して、協調と連帯の新時代を切り開いていくことは必ずできるものと確信をいたします。(拍手)国民各位の御理解と御協力を心からお願いをいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第9号(1974/01/23、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 成田君にお答えいたします。まず第一は、国民のための政治についてでございますが、申すまでもなく、政治は、一政府、一政党のみにかかわるものではございません。当面する難局を打開するためには、政府も、与野党も、国民も、その総力を結集していかねばなりません。国民のためにこそある政治は、議会制民主主義の確固たる基盤に立って、その指導性を発揮し、その力を振りしぼるべきときであります。私は国民とともに考え、ともに進んでまいる決意でございます。(拍手)

 物価問題についてでございますが、物価問題を解決し国民生活を守ることが当面の最重要課題であることは申すまでもありません。このため、政府は、公定歩合の大幅引き上げ、四十九年度予算の抑制等総需要政策を一そう強化するほか、国鉄運賃及び米の政府売り渡し価格の値上げ実施時期の延期等、物価対策を強化したところでございます。このような総需要抑制に加えて、関係法令の機動的運用によりまして、個別物資対策を活用し、物価の抑制に全力をあげてまいる所存でございます。

 今日のごとき時代においては、物価問題にしても、一国のみで鎮静化を果たせるものではなく、世界各国が直面している諸問題は、国際協調、相互補完によってこそ初めて解決可能なのであります。したがいまして、今後とも首脳外交をはじめ広範な外交活動を一そう強化しなければならないと思っておるのであります。

 第三は、米国の核のかさの下にある問題について言及されましたが、核軍縮のため大きな努力が払われておりますが、その実現が達成されていない現在の国際情勢のもとにあっては、わが国の安全を維持するために日米安全保障条約に依存する必要があることは、政府が間々申し上げておるとおりでございます。このことは国会決議にもとるものではなく、政府としては、核兵器の全面的な禁止という究極の目標に向かって引き続き努力を傾けてまいる所存でございます。

 また、インドネシアやタイにおける問題について、一面からの御批判が述べられたのでございますが、真実を申し上げますと、日本とアジア諸国の関係は相互補完関係にあるのでございます。日本は東南アジア諸国から原材料の供給を受けなければならない立場にあります。そのためには、開発輸入も必要なのでございます。東南アジアの各国は、日本から鉄鋼、塩ビ、肥料その他の生産財の輸入を受けることが絶対不可欠なのでございます。そのような意味で、日本と東南アジア諸国はお互いに利益を享受しつつ繁栄をしていかなければならない立場にあるのでありまして、この関係を断ち切るようなことはできないのであります。

 そして、あのような問題が日本の経済活動だけによると考えることは皮相な見方であります。それは、戦後非常に困難なときにアメリカの資金の援助を受け、そしてアメリカの技術協力を受けて、敗戦経済から自立経済に、そして国際経済に発展をしてきた過程においても、経済の交流が拡大するとともに、日米間にも摩擦があったことは御承知のとおりであります。それだけではなく、インドネシアにおいて起こった自動車をひっくり返した何十倍もの自動車を焼いた歴史もございます。しかし、そういう歴史の上に日本の今日の繁栄は築かれ、日米友好は確立をされてきておるのであります。(拍手)

 いまASEAN諸国にある学生運動の一番の大きな問題は、日本との摩擦が原因というよりも、大学を出ても就職の場もないという問題が最も重点なのでございます。でありますから、石油供給が不足になり、石油の価格が上がることによって、日本から鉄鋼や塩ビやその他の原材料の輸出ができなかったならば、いま稼働しておる生産施設が停止をするおそれがあるのであります。われわれは、その意味で、国内的な需要を満たすとともに、これら開発途上友好国に対して供給しなければならない国際的義務を果たしていかなければならないのであります。(拍手)その意味で、バンカーオイルも、また、日本が必要とするナフサも、東南アジアは日本のためにこれを国内の需要を押えても供給することを約束しておるのであります。

 諸君、このときに、日本から輸出せられる肥料が、もしASEAN諸国に計画どおりに輸出できないとするならば、東南アジアの食糧不足はどうなるでありましょう。(拍手)この事実を前提として、日本と東南アジアの関係の拡大のいかに重要なものかを理解すべきであります。(拍手、発言する者多し)

 また、訪ソの問題に対してお触れになりましたが、私から北方四島の返還を強く要求したことは、新聞に報道されたとおりでございます。四島が日ソ両国の間における未解決な、重要な懸案であるということは、両国首脳会談において確認をせられておることでございます。

 次は、経済見通しが変われば予算案も変わらなければならないという御指摘でございますが、政府の経済見通しについては、国際収支の見直しを中心に手直しを行なっておりますが、全体として見れば微調整の範囲にとどまっておりまして、四十九年度予算については修正の必要はないものと考えておるのでございます。

 また、国民生活の安定をはかり、物価を下げるためには、自衛隊の予算を取りやめてという、いつもながらの御発言でございますが、国の独立と平和、国民の生命と財産を守るために、防衛は不可欠な問題であります。(拍手)しかし、防衛費は最小限度でその任務を果たすべく、最善の努力をいたしておるのでございます。野党第一党の党首の口から、自衛隊廃止論が堂々と述べられることは、心から遺憾に存ずるわけであります。(拍手、発言する者多し)

 諸君、石油が不足であるということは、あに日本だけではありません。アメリカでもヨーロッパ先進諸国でも、石油の供給は削減をされ、石油価格は引き上げられております。しかし、これらの国々においては、民生用を削っても産業用を削らないようになっておるではありませんか。しかし日本は、民生用を確保するために産業用を削っておるのであります。その差はどこから来るかというと、生産面に占める国防生産の率が低いというところに原因をするのであります。(拍手)一般国民の消費を削っても産業用の電力や石油を削れないという理由は、どうしても国民生産の中に占める軍需生産、国防生産を削れないという理由からくることであることをよく理解せねばなりません。わが国の国民総生産に占める防衛生産の比率がいかに低いかは、以上をもっても指摘できるのであります。

 なお、食糧問題に対しての御指摘がございましたが、国民の主要食糧確保のため、国内生産が適当なものは自給度の維持向上をはかることが重要であると考えております。このため、農業の基盤整備を進めますとともに、麦、大豆、飼料作物についての生産奨励措置、未利用地域における畜産等の大規模な生産基地の建設などを進めてまいりたいと考えます。

 農地の転用問題につきましては、公共用地等の需要に応じて必要な用地を円滑に供給し、地価の上昇を抑制するという観点から、三十万ヘクタールを一応の目標といたしまして、一定の期間をかけて計画的に転用をはかってまいりたい、こう考えておるのであります。

 物価と賃金の問題についてお答えを申し上げます。物価上昇は、前にも述べましたように、内外の要因が複合して生じたものであり、賃金コストの上昇がその唯一の要因であるという考えは持っておりません。しかしながら、昨年来の賃金上昇率は二〇%台に達する勢いであります。今後経済の実勢とかけ離れた高率の賃金上昇が続くならば、物価上昇圧力が一段と高まると、深く懸念をしておるのであります。賃金交渉において、労使が国民経済的視野に立って節度ある態度をとられるよう、強く望むものでございます。

 また、企業の不当利得に対しての御発言でございますが、企業の不当利得規制のための原価公表、価格引き下げ命令は、独占禁止法の本来の趣旨とは異なる観点の問題と考えられますので、慎重に検討してまいりたいと考えます。現在、公正取引委員会において、価格協定に対する価格引き下げ命令等を含め、独占禁止法についての研究を進めていると聞いておりますので、独禁法の改正につきましては、その検討結果を待って対処してまいりたいと考えます。

 企業の反社会的行為の規制についてでございますが、政府は、国民生活安定法の運用によりまして、国民経済の混乱と国民生活への影響を未然に防止し、物価の安定と必要物資の安定的供給の確保に全力を傾注してまいりたいと考えます。また、企業の便乗値上げや投機的行為につきましては、強く自省を要請するとともに、かりにこれらの不当な行為等によりまして過大の利益を得たものに対しましては、石油関係二法、買占め売惜しみ防止法、独禁法をはじめとする法の厳正な運用をもって対処してまいりたいと考えます。

 また、新たに住民参加等をしてはどうかということでございますが、政府は、当面、御指摘のような制度を採用する考えはございません。また、国民同士の間に摘発制度をとれというような御趣旨の発言がございましたが、顧みるまでもなく、戦後のより困難な状態の中でも、同一民族が同一国家を形成しておるという特性もありますが、日本人はお互いを理解をしながら、混乱を避けながら、今日を築いてきたではありませんか。いま国民の中に不信感を醸成し、お互いが骨肉相はむような手段は、できるだけ避けなければならぬことは言うまでもない。(拍手)その意味で、政府は、企業の、また国民の理解と支持を求めながら、最大の努力を傾けることによって、物価の安定をはかり、当面の問題に対処してまいりたいと考えます。

 国総法が必要でないというような御発言でございますが、日本は狭いのでございますし、もうすでに、政府が発表いたしましたように、一億一千万人をこしておるのでございます。だから、この狭い日本を合理的に利用しなければ、真に社会保障が確立されたり、真に生活環境が確保されたりはできないのであります。目先のものだけを考えて、あしたのこと、十年後のこと、わが子、わが孫のことを考えないところには、政治は存在しないのであります。(拍手)私は、国総法は絶対に必要である、こういう考えに立っております。

 最後に、政治資金規正法の問題についてでございますが、政治資金規正法の問題については、政党本位の、金のかからない、国民の支持と理解を求められるような法律が一日も早く成立することを望んでおります。しかし、政治資金規正法はこれだけによって解決できるものではありません。二十四年間、識者が検討した結果、選挙制度、定数の問題、政治資金規正法等一体にならなければならないといわれておるではありませんか。しかも、その中には、労働運動の名において行なっておるいわゆる政治資金と同じような問題までどう取り扱うかという広範な問題さえも提示をされておるのであります。政府は、国民の声を聞きながら、慎重に検討してまいりたいと存じます。(拍手)
 小山長規君にお答えをいたします。まず第一は、石油危機の教訓と今後の方向についてでございますが、御指摘の教訓につきましては、私も同様に受けとめておるのでございます。 〔議長退席、副議長着席〕そのために、省資源、省エネルギーの産業構造への転換、原子力の開発利用の促進、水力、石炭などの政策を進めてまいりたいと考えております。また、真の自由社会を維持し発展させていくためには、各種のエゴイズムの対立、行き過ぎた競争から脱却して、新しい協調と連帯の理念を確立していかねばなりません。これこそ、災いを転じて福となす道であると確信をいたしておるのであります。また、企業の不当利益の国民への還元、生産から流通までの追跡調査等についての御発言がございましたが、現下の事態に対処するためには、御指摘のとおり、国民生活必需物資等の需給及びこれらの価格の安定を強力にはかりますとともに、このような物価上昇の過程で企業に不当な利得が生じないよう、機動的に対処することが肝要であると存ずるのであります。このため、政府といたしましては、国民生活関連物資等につき、関係各省をあげて大規模な流通経路追跡調査を早急に行ないますとともに、石油二法等の標準価格、特定標準価格、課徴金、生産指示、売り渡し命令等の規定を適切に運用してまいりたいと考えております。しかし、御指摘のとおり、国民は配給制、公定価格制を望んではおらないということを私も考えております。一日も早く自由と民主主義にとって大きな試練ともいうべき今日の事態を乗り切って、自由と公正な競争原理に立脚した経済運営に戻さなければならない、また、戻るべきものだと考えておるのであります。企業の不当利得に対する臨時利得税のごときものを創設する考えはないかとの御提案でございますが、企業が目先の利益にとらわれて便乗値上げや投機的行為に出ないよう、強く自制を要請するものでございます。かりに不当な行為等によりまして過大な利益を得た者に対しましては、法の厳正な運用をもって対処いたしたいと考えております。さらに、臨時利得税のごときものを創設するかどうかにつきましては、不当値上げによる利益を他の正常な利益と区別できるかどうかなどの技術的な問題をなお詰めてみる必要があると思うのでございます。いずれにせよ、この問題につきましては、政府部内でも検討を続けておりますが、また、野党の中でも、与党においても研究しておられるようでございますので、結論を早急に出したい、また出していただきたい、こう考えておるわけでございます。

 春闘について、積極的に労働団体指導者と接触し、話し合いをしたらどうかという御提案でございますが、物価の上昇など、きびしい経済情勢を背景に、労働組合は大幅な賃上げ要求を掲げ、強い姿勢で臨んでおり、容易ならざる状態であることは私も承知をいたしております。こうした中にありまして、政府は、これまでも労使双方に対し、労使がその影響の重大さを自覚し、国民経済的視野に立って、節度ある態度をとるよう強く要請してきたところでございます。もとより、具体的な賃金交渉は、本来労使の自主的な話し合いによってきめられるべきものであり、政府がとやかく申し上げる筋合いのものではございませんが、このような状態のもとで、大幅な、超大幅な賃金の上昇が行なわれたり、また、御指摘があるように、もうあらかじめ分けてしまおうというようなことが行なわれたり、要求が貫徹しないためにゼネラルストライキに至るというようなことになったならば、それこそ戦後、国民生活のためには最大の危機を迎えるわけでありますので、そういう事態を排除するために政府は可能な限り努力を続けてまいりたい、こう考えるわけでございます。私は、そのためには、直接労働団体の指導者とも会って、平和裏に、合理的に問題を解決するよう呼びかけを行なう必要がありますので、機会を見て実行いたしてまいりたい、こう考えるのでございます。

 それから、国民の消費を規制するほうが先だ、どうも私と意見が違うようなことを小山君申されましたが、意見は全く同一でございます。これは私も先ほど申し上げておりますように、諸外国では国民の消費抑制ということを先に行なっております。そうして産業用の確保をしておるのでございます。これは、最もいい例はアメリカでございます。アメリカは、外国から受けておる石油の量はわずかに四%であります。自国で産出する石油の量が九六%であります。しかも、七二年に比べて七三年は二〇%増産をされておるという数字的指摘もございます。にもかかわらず、現下の国際情勢に対処して、まず国民の消費節約を行なっておること、マイカーの自制自粛や、高速道路の乗り入れの禁止や、切符制度に切りかえておるなどは、これはもう私が指摘するまでもないほど、国民的な需要の抑制を先にしておるわけでございます、また、イギリスやオランダや西ドイツやフランスにおいても、より強い民需の抑制を先にやって、産業のほうは確保するということに重点を置いております。それは、石油の供給が不足すれば電力が不足をする、電力が不足をすれば生産が不足をする、そうすると需要と供給がアンバランスになり、物価が上がる、こういうことでございますから、まず何を考える前に消費を抑制して、生産を上げて、生産と消費とのアンバランスをつくらないようにすることが、これは常道であることは申すまでもありません。ですから、その考えにおいては小山君とは同じなんです。ただ、日本は、急激に国民生活の混乱をもたらしたくないということと、流通段階にも十分品物がありますし、緊急輸入をする外貨もあるし、アメリカのように輸出をとめても物価を押えなければならないというような段階までしたくない、そのためにもまず国民の理解を得ることが先だということで、産業用の抑制をしても、一般消費の抑制はあと回しにしておるわけでございます。そこらは英知ある国民は理解をしていただけると思うのであります。そこらが、まず統制へと向かう考えよりも、国民の自発的な理解と協力、国民の英知をもって解決をしたいという、わが党及びわが党政府の根本的なものの考え方を先行さしておる、こう理解をしていただけばいいのであって、(拍手)これは小山君と私の考えは全く同じでございますから、これはひとつ御訂正のほどを願います。なお、しかし国民の節約を何とかしてもらいたいということでいろいろ御提言がございましたので、まあデパートに対しては、営業時間の短縮とか室温を二十度以下に下げるとか、いろいろなことをやっておりますが、週二日休むということになると消費者との関連もございますので、そこらはもう少し研究してまいらなければならぬと思います。

 テレビの問題に対しては、御承知のとおり、NHKは放送時間を短縮して協力をしていただいておりますし、また、各民放局も、深夜放送を中止したり、深夜の放送時間を短縮するなど、協力をしていただいております。こういう問題に対して、政府は、できるだけ放送局の自主性にまつ。もちろん、放送時間の短縮とかその他は、郵政大臣がいろいろ行政的にも行なえることでございます。放送内容に介入してはならない。しかし、放送時間その他電波行政に関する権限は郵政省にございますが、しかし、これは国民の先端を行くマスコミのまた先端を行っておるわけでございますから、こういう放送局の自主性の御協力にまつということで、政府は自重にまっておるわけでございます。

 中小企業の倒産その他につきましては、これはもう非常に厳重な注意をいたしておりまして、政府は、中小企業が景気引き締め等によって影響をこうむらないように、年末、中小三公庫に対する資金の拡充をはかりましたり、また、選別融資に対しても、中小企業に対しては特別な配慮を行なったり、窓口規制に対しても、中小企業には特別な配慮を行なっておるわけでございます。それだけではなく、品物が入らないという問題に対しましては、あっせん相談所などをつくりまして、中小企業への影響に対しては、可能な限り最大の努力を続けておるわけでございます。

 それから、物価はいつごろ一体下げるつもりかということでございますが、これはもう早いほどいいのでございます。まず、この際一言申し上げておきますが、大体、物価は、過去十年間、アメリカを含めた主要工業国の卸売り物価は三・五%ないし四・五%ずつ平均上がってきたわけでございます。そのときに、日本は一・三%という、アメリカの半分も上がらなかったわけでございますから、その間に日本では輸出力が非常に培養せられたわけでございます。その結果、アメリカと日本との貿易収支は年間四十二億ドルもアンバランスが生じたという結果になったわけでございます。ところが、四十七年の初めから問題が起こってまいりました。それは、一つは、世界の食糧事情であります。もう一つは、ドル問題を含む通貨の不安の問題なのでございます。この一つは、地球上における帯のような大きな幅の状態、ソ連及び中国、インド及び東南アジアという、世界の人口の約半分を占める地帯が、二年間にわたって食糧不足になり、ソ連といえどもアメリカから年間二千万トンの小麦の買い付けをしなければならない、こういう事情がありまして、国際的な食糧事情が全く変わってきたのであります。それを契機にして世界の物価高という問題が急速に起こってまいり、非常に低い状態で押えられてきた日本に対する影響が最も激しくあらわれてきたということは、諸君御承知のとおりでございます。

 ととろが、中国及びソ連において史上最高の豊作である、今度は世界的に物価もおさまると思っておったときに起こったのが、ちょうど第二次戦争後足かけ三十年目、歴史が示すとおり起こったのが中東戦争でございます。でございますので、石油の供給、全世界の石油の産出量三十億トンのうち、その約一〇%、三億トンを使おうとしておる日本の経済の状態に問題があることは申すまでもありません。御指摘のとおり、クリーンエネルギーやいろいろな産業の構造を変えなければならないという問題がございます。日本人の英知は、しばらく時間をかせばこれに対応できる能力は十分ある、これは私は率直に述べられるのでございます。(拍手)
 ところが、突然一五%の削減というこの問題にぶつかったわけでございます。しかし、実際削減をされ、生産が抑制されて、それが最終的な消費段階にあらわれるのは、もっと先のはずであります。いまは削減されなかった時代に生産されたものが流通経路に回るわけでございますから、それは結局売り惜しみ、買いだめとか、そういう事態が排除でき、正常な経済状態と正常な流通経路が確保できれば、物価も押え得るはずでございます。

 そういう意味で、おとといも申し述べましたように、今年の卸売り物価は四・八%、消費者物価は五・二%程度にということを政府は企図しておるわけでございます。一−三月のげたを引けば、年間を通じてはいま申し上げたようになるわけでございますので、それから推測をしていただくと、まず一−三月のげたを引いた分が年間を通じての物価指数でございますので、大体のめどを今年度上期、四−六、まあ七−九までというよりも、一−三、四−六というところにめどを置いておる、こういうふうに御承知をいただきたい、こう思うわけでございます。

 石油二法の運用にあたりましては、従来から主務省において各地方支分部局と一体となって事態に対処してきており、地方公共団体に対しても、関係各法の規定に基づき監視・調査権限を委任し、その協力を求めておるところでございます。また、関係部局においては、常に一般消費者などからの情報収集につとめ、実情に即した適切な対策を講ずるようつとめておりますが、今後ともより一そう協力体制を確立し、その効果的運用をはかってまいりたいと考えておるのでございます。

 将来的展望についての御言及がございましたが、いまも申し上げましたとおり、世界で一年間に産出する石油が現在三十億トンであり、日本が消費しようとするものがその一割の三億トンであるというところに問題があるわけでございますから、まず新エネルギーの開発、それから省資源型産業構造への転換、海外における多国間の協力態勢を新しくつくっていく等、いろいろな問題を強力に進めてまいらなければならない、こう思うわけでございます。しかし、まだ石油の一五%、二〇%、三〇%削減を補う程度の水力発電所の個所も日本には十分存在するわけでございます。なお、原子力発電その他クリーンエネルギーの開発等もあるわけでございますので、ここでひとつ、天が与えた、考え直す、洗い直す好機である、こう考えて、長い展望に立った検討を続けてまいりたい、こう考えるわけでございます。

 それから最後に、食糧の需給その他に対しての御質問がございましたが、これは世界的には人口もふえてまいりますし、なかなかたいへんな事情にあると思います。国連で発表した中で、今世紀末の一番大きな問題は、人類にとって何だろう、それは東西の対立でもなく南北問題でもない、それは食糧と水の不足だろうと、こう指摘をされておるとおりでございますので、わが国もその例外ではないわけでございまして、食糧の自給度を上げるために努力をしなければならぬことは当然であります。しかし、国内では適さない、こういう問題に対しては、やはり国際協力という開発輸入にたよらざるを得ないのであります。何でもかんでも全部日本の国内でまかなうということは不可能に近いわけでありますし、南北問題の解決のために、やはり国際的分業ということも平和のためにはあるわけでございますので、それらを調整しながら、食糧の確保に遺憾なきを期してまいりたい、こう考えるわけでございます。(拍手)
 村山喜一君にお答えいたします。各国首脳とのひざを交えた対話により、お互いに必要とし合っている隣人であることを確認し得たことは大きな収穫であったと思います。よき隣人同士の関係を一そう育成強化するためには、国民の一人一人が国際社会において信頼されるに足る国際人としての資質を備えることが大切でございます。企業につきましても同様であり、国の内外にあって社会的責任を負うに足るものでなければなりません。われわれは、隣人の立場を尊重してこそ、初めて住みよい人類社会の形成のために貢献できると考えておるのでございます。

 私が先般訪問しましたASEAN諸国において起こった問題をとらえて、日本がアジアの孤児になったのではないかというようなお考えを交えての御意見がございましたが、先ほど成田委員長に答えましたとおり、ASEAN諸国と日本とは相互補完の関係にあるのであります。例を申し上げますと、日本は砂糖、木材、石油、ガス、ナフサ、エビ、鉱石、その他どうしても必要なものを輸入しなければなりません。向こうは鉄、塩ビ、肥料、機械、中には、操業しておる事業の九〇%日本から材料を入れておるのがあるのでございます。でございますので、こういう状態を拡大することによって、両国が共存共栄の実をあげていくのであるということでございます。

 そうして、どうも村山君は、デモが起こるのは、日本が悪いからだということだけにしぼってお考えになっておるようでありますが、確かに日本商社や日本の企業に対して正すべきところはございます。しかし、これはお互いの経済交流の幅が広くなり厚くなれば摩擦も多くなるわけでございます。日米間に四十二億ドルというインバランス問題が起これば、あれだけ問題が起こるわけでありますから、確かに正すべきではありますが、私が五カ国の首脳に会って聞いたときに、一番問題になっておるのは何かというのは、日本とお互いがこれほど緊密であり、必要であり、不可欠な間柄にあるのだということを全国民に知らしめる手段に欠けておるということであります。

 一億三千万人の人口を持つインドネシアは、一万三千の島からなっているのであります。三千の島に人が住んでおるのであります。新聞も届かないのです。テレビもないのです。ラジオは断続的に聞こえるにすぎない。しかも、学校を出ても就業の場所がないというようなところにまず原因があります。もう一つは、これは率直に申し上げるのは、あとから申し上げる日本の教育の問題に関係がありますから申し上げると、年齢の高い人よりも、新しい教育を受けた若い人たちの閉鎖的な姿が、若い人とぶつかるのですと、こう言うのです。それは、外国語を理解しない日本人は外国人社会との接触を好まないし、私は、冗談のように、賢者は聞き患者は語るということばもあるので、東洋のことわざを教わっておる日本人は、どうも外国人の中に飛び込んでいってやあやあと言う民族じゃないのだ、そこらを理解してもらいたいと言ったら、それはよくわかりますが、閉鎖的であり、現地と一切交渉を断っておるという、まあその中には、日本は修身教育というのをやめたのですかと、私は何カ国かの首脳に指摘をされておるのであります。だから、閉鎖的な若い人たちというものが若い人たちとの接触をはばんでおるということが、学生間の大きな不満のもとである、これは私だけではなく、あなた方が現地へ行って、現につぶさに考えればすぐわかることでございます。(拍手) だから、日本企業や日本の経済行動に反発をしてできたものだけではないという事実をひとつ十分考えていただきたいと思うのでございます。

 経済の基本的な問題とか、経済見通しを変えるかどうかという問題に対しては、先ほどお答えをしたとおり、いま経済見通しを変える考えはございません。企業の新しいビヘービアにつきましては、わが国は自由主義経済体制を基本として驚異的な経済成長をなし遂げてまいったことは事実でございます。しかし、現下のような緊急時において、企業の社会的責任が問われており、いやしくも買い占め、売り惜しみ等の反社会的な行為によって不当な利益を得るようなことは許すべきでないことは申すまでもないのでございます。

 物価の問題については、先ほど申し上げたとおり、まず、卸売り物価一四・六%、消費者物価九・六%、しかし、年間を通じての卸売り物価は四・八%、消費者物価は五・二%と示しておるのでございますから、一−三月のげたを引けばこうなるわけです。そうなると、まず四−六、上期をめどにして物価の安定をはかっておるということでございます。

 それから、フィリピンやインドネシアの農業基地の問題と国内における三十万ヘクタール問題との関係について言及されましたが、直接関係はございません。しかし、東南アジア諸国は二毛作も三毛作もできるような状態でありながら食糧不足に悩んでおることは、また事実でございます。日本から今年度の契約どおり肥料が輸出ができないとしたならば、これは大混乱が起こるのでございますから、まず一−六月の既契約のものはどんな無理をしても輸出をしたい、その後のものについては可能な限り最大の努力をお互いにやろう、こういうことを――これはもうアラブ諸国との間に、回教徒の問題、いろいろ密接な問題があるわけでございますから、ひもつきの石油が来るとかいろいろな問題によって、少なくとも東南アジアの食糧自給が行なわれるような状態にするように日本は肥料の供給をしなければならない、こういうことを述べてきたのでございます。でございまして、この食糧基地の問題と日本の国内における三十万ヘクタール問題とは別でございます。別な問題ですが、大豆や飼料やその他、これらの基地が拡大されるごとによって、日本の外国に依存する農産物の備蓄には寄与し貢献することができるということは事実でございます。

 それから、原子力発電についてのお話がございましたが、原子力発電の推進には、安全性の確保が大前提でございます。このため、政府としましては、安全対策について万全の措置を講じますとともに、放射性廃棄物に関する対策、環境保全対策等について十分の措置を講じ、原子力発電の推進について国民の理解が得られるよう努力を重ねてまいる考えでございます。それから、新エネルギーの問題等につきましても、クリーンエネルギー、石炭エネルギーその他、日本の国内でできるもの、水力発電その他に対しても十分な考えをしてまいりたいと思います。ただ、発電所をつくることを促進するために、現在考えておるような消費税を転嫁して発電税にするようなことには反対であるということでございますが、そうじゃないのです。消費税は、これは減税をしていこうということでございます。もうすでに、一〇%であったものを、私が昭和三十八年、九年、四十年にわたって大蔵大臣在職中に一%ずつ減額をして七%とし、そして去年一%を減じて、現行六%になっておるわけですから、これは徐々に引き下げていこうということでございまして、これは野党の皆さんも賛成なのです。それとは別に発電税はつくろう、こういうのですから、ここらはよくひとつ分けて考えていただきたい。

 それから、教育の問題でございますが、教育は、心身ともに健康な国民の育成を期して行なわれなければならないことは言うまでもありません。これまでの学校教育の内容の改善に際しましても、単に知的な教育にのみ片寄ることなく、望ましい人間形成の上から、調和と統一ある教育を推進してきたところでございます。なお、青少年の愛情や人間性についての価値観は、単に学校教育の内容だけの問題ではなく、社会教育、家庭教育のあり方とも関連する問題でございます。したがって、総合的な見地から検討を加え、全人的教育が十分行なわれるように一そう配慮してまいりたいと考えます。現在、高等学校への進学率は九〇%に達し、また、進学希望者の九九%近くの者が実際に高等学校に入学をしており、事実上、希望者の全員が入学しているのが実情でございます。今後、地域の実態に即して高等学校の増設をはかりますとともに、定時制、通信制教育について格別の施策を講ずるなど、高等学校教育を希望する者に十分その機会が与えられるようつとめてまいりたいと考えます。

 なお、大学の運営に関する臨時措置法が施行された当時とは、今日、実態が変わってきてはおりますが、学園内における党派的対立や暴行等の威圧行為により、正常な教育研究が阻害されている事例は少なくないことは、御承知のとおりでございます。このような事態を防止し、学問の府にふさわしい秩序ある学園環境を確立するには、大学当局の努力を助けるための何らかの法律は引き続き必要だと考えておるのであります。しかし、大学の運営に関する臨時措置法の廃止期限までにはなお期間がありますので、その間慎重に考え、善処してまいりたいと考えております。

 最後に一言、週休二日制の問題に対して申し上げますが、方向としては推進の方向でございますが、実施に対しては、日本の国情に合うように、慎重かつ周到な配慮が必要だと思います。その理由は、申すまでもなく、世界には例のない中小零細企業という特殊な業態が存在するということが一つございます。それからもう一つ、現在のような社会制度のもとで週休二日ということはほんとうに望ましいことなのかどうかという問題をいろいろな面から検討しますと、国土総合開発法というものが実施されて、ちゃんと庭つきのうちというものが提供されてからでないと、部屋もないところでおやじに二日も休まれたらたいへんであるという現実的問題も存在することを十分考えていただきたいと思います。(拍手、発言する者あり)これは事実です。事実を申し述べている。

 なお、第三の問題で申し上げるのは、石油の値が上がる、その上に労働賃金も上がる、それで就業時間も削減されるということは、ひいては物価高騰を直接招くことにもなる。だから、周到なる配慮のもとに、日本の実情に合うようにと申し上げておるのであります。特に、公務員から先に実施せよという議論がございますが、新憲法をとり出すまでもなく、公僕である公務員から先にかかる制度は行なうべきではないと考えております。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第10号(1974/01/24、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 金子満広君にお答えいたします。第一は、政治責任についてでございますが、わが国は、国民のたゆみない努力と勤勉によりまして驚異的な経済発展をなし遂げ、いまや、主要工業国の一員として国際的にも確固たる地位を占めるに至ったわけでございます。しかし、狭い日本の国土に短期間のうちに高度工業社会を築き上げましたわが国には、先進工業国が直面をいたしておりますと同じように、物価、公害、エネルギー、過密過疎などの問題が先鋭的にあらわれておることは事実でございます。また、国際経済秩序は、物価、通貨、資源・エネルギー、食糧、南北問題などに見られますように、いま苦痛に満ちた再編成の途上にあります。このような複雑かつきびしい情勢に対処するためには、過去の行きがかりにこだわることなく、経済運営、産業構造、制度、慣習、生活意識などに思い切った発想の転換をはかっていかなければならないということもまた事実だと思います。同時に、これまでたどってきた道を冷静かつ謙虚に振り返り、私たちが選んできた政策について率直な反省を加えて、将来に対して誤りのない施策を推進していくためのかてにしていきたいと思うのでございます。これが政局担当者として政治責任を果たすゆえんだと考えておるのでございます。

 物価、物不足等について申し上げます。政府は、あらゆる政策手段を活用しまして、異常な物価高を本年上期中に鎮静させるべく懸命な努力を重ねておるわけでございます。企業が便乗値上げや投機的行為に出ないよう強く自制を要請いたしますとともに、かりにこれらの不当な行為等によって過大な利益を得た者に対しては、国民生活安定法などの厳正な運用をもって対処してまいります。
 臨時利得税につきましては、いろいろ問題がございまして、各界の意見も広く聞いておるわけでございますが、いずれ結論が出されるものと考えております。過剰流動性吸収のための資産課税は、適当でないと考えております。公共料金につきましては極力抑制する方針でございまして、総需要抑制政策ではこれを堅持してまいります。

 四十九年度の防衛費につきましては、当面する内外の情勢を十分勘案いたしまして、総需要抑制の見地からも、必要最小限の経費計上にとどめておるわけでございます。国民生活の安定等についてでございますが、労働賃金については、わが国の賃金が近年とみに上昇をしてまいりましたことは、まことに喜ばしいことでございます。具体的に賃金交渉は、基本的には、労使が労使自治の原則に従いまして平和裏に、自主的に話し合いを進め、合理的な解決をはかっていくべきものであると考えておるのでございます。ただ、本年のわが国経済の前途はまことに多難でございまして、私としては、労使双方が、その影響の重大さを自覚し、国民経済的視野に立ってこの問題に対処されることを切望してやまないのでございます。中小企業に対しましては、小口需要者向けの原燃料等の確保のため、あっせん相談所を開設しております。また、無担保、無保証の中小企業経営改善資金貸し付けの資金量の増加、貸し付け限度額の二倍引き上げ、税負担の軽減などの施策を画期的に拡充いたしたわけでございます。

 国総法、農業政策、石炭政策等に御言及がございましたから申し上げますが、狭い国土に住む一億一千万人の国民に、自然と文化と産業が融和した住みよい生活環境、空間を提供するためには、国土の総合開発が絶対に必要でございます。また、地価凍結を含む土地の基本的役割りをになう国総法案については、そのすみやかな成立を期待いたしておるのでございます。国民の主要食糧のうち、国内生産が適当なものは極力国内でまかない、自給度の維持向上をはかってまいります。また、農産物、水産物を通じまして、流通諸施策を充実強化し、価格の安定をはかってまいりたいと考えております。他方、公共用地、住宅用地などの円滑な供給と地価抑制の観点から、三十万ヘクタールを一応の目標として、一定の期間をかけて農地の転用をはかってまいりたいと考えておるのでございます。政府としては、四十八年度からいわゆる第五次石炭対策を進めておるのでございますが、このようなエネルギー危機という状態に対処し、国内炭の最大限の活用をはかりますとともに、輸入炭を含めまして、石炭のより積極的活用をはかることを前提として、今後の石炭政策を進めてまいる所存でございます。なお、これまでの閉山につきましては、自然条件の悪化、可採炭量の枯渇等によるものが多かったと考えておるのでございますが、かりに相当の可採炭量を残して閉山をするような事例があれば、できるだけ閉山をしないような方向で指導をしてまいりたいと考えます。

 石油メジャーとの関係、中東政策等に対しての言及がございましたが、わが国といたしましては、石油輸入における自主性の拡大に努力する一方、メジャーの国際石油供給に占める機能の正当な評価を行ないつつ、それとの協力関係を維持してまいりたいと考えるのでございます。中東紛争についてのわが国の立場は、十一月二十二日の官房長官談話のとおり、明確でございます。

 東南アジア諸国との関係でございますが、このたび東南アジア諸国を歴訪いたしまして、お互いに必要とし合っている強い相互補完の関係で結ばれていることを痛感いたしたのでございます。東南アジア諸国の置かれた困難な事情に深い理解を持って、平和と繁栄につながる協力関係を一そう増進してまいらねばならないと考えておるのでございます。インドネシアにおける問題につきましては、昨日申し上げたとおり、インドネシアが困難な問題に当面をいたしておりまして、あのような事件は、日本の企業活動によって起こったものではないと私は考えております。それは国民の不満の一つの方向が日本人に向けられておるということを、すなおに認むべきでございます。いささかでも日本の企業の活動が原因であるとしたならば、正すべきは正さなければなりません。そうすることによって両国の末長き協調を継続していかねばならぬと考えておるのでございます。何でもかんでも日本人がみんな悪いという前提に立った考えは誤りであることを、この際申し上げておきます。(拍手)

 また、第二次大戦中における日本の立場等に対して言及がございましたが、当時の問題は歴史のかなたの問題でございまして、現在の日本は、新しい平和主義のもとに立って、国際協調の理念に従って行動しておることは、全世界の認むるところでございます。

 また、道徳教育の必要性についての御言及がございましたが、国の将来の発展のために、国家社会の一員として心身ともに健全な国民の育成を期することは、国政の基本でございます。道徳教育につきましては、すでに昭和三十三年以来、小学校及び中学校において道徳の時間を特に設け、道徳教育の推進をはかるとともに、単にその時間のみならず、学校教育活動の全体を通じて行なうことといたしておるところであり、今後ともその一そうの充実に努力をいたしたいと考えておるのでございます。

 なお、青少年の徳性の涵養につきましては、学校教育のほか、社会教育、家庭教育のあり方などとも関連をいたしまして総合的に推進する必要があり、今後ともこのような見地から十分配慮してまいりたいと考えます。なお、この際一言いたしますが、私の発言をお聞き違えのようでございますので申し上げますが、私が修身教育などをと言ったのではなく、五カ国を訪問したときに、かつての日本人は修身教育などをやっておったからりっぱでございます、その後の日本人は、自由ということはよく知っておられますが、自分の生活だけの自由であり、まことに閉鎖的であり、現地との交流が全くない、自分さえよければというような――自由のものの考え方が起こるとはどうしても思わない、なぜこんな人間ができたかというと、修身教育を日本がやめたからではないですかというのは、先方の国々の人が言っておるのでございますから、(拍手)そこらはひとつ間違えないでよく聞いていただきたい。

 それから政治資金規正法の問題につきましては、政治資金規正法改正の問題は、申すまでもなくきわめて重要な問題でございますが、過去において幾度か改正法案が国会に提案され、廃案になった経緯があることは、御承知のとおりでございます。これを今日の時点に立ってみると、金のかかる選挙制度をそのままにしてこれを具体化することにはいろいろと無理があることを示しておるように思われます。今後、政党本位の、金のかからない選挙制度の実現への動向も踏まえつつ、さらに検討と論議を積み重ねてまいりたいと考えておるのでございます。

 最後に、日米安全保障条約を廃棄するか堅持するか。もちろん堅持をするのでございます。(拍手)日米安全保障条約を廃棄するような状態の中で真の民主的な日本が成長するとは思っておりません。日米安全保障条約を堅持することによって、国民の負担を最小限にとどめながら、独立と平和を守り、真の日本の民主政治を確立してまいりたい、これが政府の基本であります。(拍手)
 竹入義勝君にお答えをいたします。まず第一は、物価対策でございますが、政府は、石油関係二法等あらゆる政策手段を活用いたしまして、異常な物価の騰勢を本年上期中に鎮静をさせるべく、全力を傾注しておる次第でございます。なお、生活必需品が大量に退蔵されておるというような事実の指摘がございましたが、そのような場合は直ちに調査を開始し、国民の期待にこたえたいと考えておるのでございます。

 次は、独禁法の強化、改正についてのお話がございましたが、管理価格などの寡占対策、カルテルの排除措置の強化等につきまして、現在公取内部において検討中であり、政府といたしましては、その結果を見ながら対処をしてまいりたいと考えるのでございます。それから、繰り延べ等に対しての問題、国土総合開発等の問題に対しての長期的展望について御指摘がございましたが、政府といたしましては、きびしい経済社会の現状に緊急に対処するための諸施策を強力に講ずる一方、国土の総合開発につきましては、長期的展望に立ちまして、着実に取り組んでいかなければならないと考えておるのでございます。また、現段階におきましては、昭和四十八年度公共事業費の繰り延べに相当する額について、四十九年度において執行のたな上げまたは再繰り延べを行なう必要はないものと、現時点では考えておるわけでございます。また、総需要抑制策の一環といたしまして、現在の金融引き締めの体制を堅持してまいる方針でございます。なお、中小企業金融につきましては、金融引き締めの影響が本格的に浸透する段階を迎えているので、これから一そう弾力的な対応策が必要であると考えておるわけでございます。なお、勤労者財産形成制度につきましては、利子の非課税限度額の拡大、積み立て期間七年以上の財形住宅貯蓄につきまして税額控除の拡大等の措置を講じまして、その拡充をはかっておる次第でございます。ただ、御提案の割り増し金の導入につきましては、何ぶんにもわが国では類例のない全く新しい制度でありまして、これが他の施策に及ぼす影響、将来の財政負担の増加の程度など、さらに検討すべき問題が多いのでございます。

 社会保障につきましては、社会福祉施設入所者の処遇につきまして、毎年改善をはかってきておるところでございますが、昭和四十九年度におきましても、物価の動向、消費支出等を総合勘案しまして、その処遇費につきまして二〇%の大幅引き上げを行ない、あわせて、その他の経費につきましても、きめこまかな改善をはかっておることは、御承知のとおりでございます。生活保護基準につきましては、従来より、国民生活の動向に対応し、実情に応じた改善をはかっており、明年度におきましても、二〇%の引き上げを行なうこととしておるわけでございます。

 福祉年金につきましては、昭和四十九年度において、老齢福祉年金を現在の五千円から七千五百円に五〇%引き上げるなど、大幅な年金額の引き上げを行なうことにいたしております。これは、かつて国会で申し述べましたとおり、四十八年度には五千円、四十九年度には七千五百円、五十年度には一万円という公約を実行しておるのであります。

 年金の財政方式につきましては、今後、年金受給者の急激な増加に対応して、将来にわたり、五万円年金の実質価値を維持しつつ、その給付の確保をはかっていくためには、現行の方式を維持していくことが適当であると考えておるのでございます。 なお、野党四党案の年金額は、退職者の年金額としては著しく高い額となり、勤労者の収入との均衡上、とり得ないと考えておるのでございます。また、年金額のスライド制につきましては、年金額の実質価値を維持するために、昨年の改正で自動的な物価スライド制の導入をはかったところでございますが、財政再計算の際には、従来どおり、賃金や生活水準の向上を勘案して改善をはかることとなしておるのでございます。

 児童手当制度につきましては、四十九年度において段階的実施の最終年度に入ることになっておるのでございます。最近の国民の生活水準及び消費者物価の上昇にかんがみ、とりあえず現在の月額三千円から四千円に引き上げることにいたした次第でございます。

 政府は、土地取得に関する融資の抑制、法人の土地譲渡益に対する課税の強化、特別土地保有税の新設等、各般にわたる施策の展開をはかってきたところでございます。さらに、地価凍結を含む土地対策のいわば基本法として、国土総合開発法案を御審議いただいておるところでございます。また、宅地の大量供給促進のための制度の整備、宅地開発公団の創設などを推進してまいりたいと考えております。御提案にかかわる空閑地税につきましては、空閑地の認定をめぐるむずかしい問題があり、また、土地の再評価益に対する課税につきましても、投機のため最近取得した土地の税負担は軽く、昔から保有している土地の税負担は重いという問題があり、土地対策としては必ずしも有効ではないと考えておるのでございます。

 公害対策について御答弁を申し上げます。窒素酸化物の低減を目的とするいわゆる五十一年度の自動車排出ガス規制につきましては、すでにその方針を示してございます。この目的を達成するためには、排出ガス防止技術の開発が必要であり、今後さらに自動車メーカーの防止技術開発を促進させる所存でございます。なお、硫黄酸化物による大気汚染につきましては、いわゆる総量規制を導入するため、大気汚染防止法の一部改正を今国会に提案、御審議をいただきたいと考えております。

 次に、中小企業対策についての御発言に答えます。政府としては、これまでも、物不足に対しては、あっせん相談所を開設し、小口需要者向けの原燃料等の確保につとめておることは、御承知のとおりでございます。また、金融逼迫に対しましては、昨年来、政府関係中小企業金融三機関等に対して大幅な財投の追加を行なったことも事実でございます。今後とも、中小企業の事業活動に支障を生じないよう、事態の推移を注意深く見守りつつ、金融その他所要の処置をタイムリーにとってまいりたいと考えておるのでございます。

 賃金問題について申し上げます。間々申し上げておりますとおり、わが国の労働賃金は近年とみに増加しておることは、はなはだ喜ばしいことでございます。賃金交渉は労使の自主的な話し合いによって決定さるべきものでございますが、労使双方は、その影響の重大さを十分自覚し、国民経済的視野に立って、節度ある態度をとられるよう強く望んでおるのでございます。春闘に対しましては、私がいずれ機会を見まして労使の代表とよく懇談をして、労働賃金が急激に引き上げられるというようなことや、もしも伝えられておるようなゼネストのような事態が起こって、さなきだに苦しい国民生活が一そう混乱するようなことのないように、格段の配慮を懇請する予定でございます。

 農業問題についての御発言がございましたから申し上げます。国民の主要食糧のうち、国内生産が適当なものは自給度の維持向上をはかることが重要であり、生産の停滞している麦、大豆等につきまして生産奨励措置を講じますとともに、未利用地域における農用地の開発、畜産等の大規模生産基地の建設を進めてまいりたいと考えております。農地の転用につきましては、公共用地、住宅用地等の需要に応じ、必要な用地を円滑に供給し、地価の上昇を抑制するという観点から、一応三十万ヘクタールの目標を立てて、計画的に農地の転用をはかるべく考えておるのでございます。

 なお、外国との問題でございますが、今度のASEAN諸国訪問のおりもそうでございました、またその他の国々との接触においてもそうでございますが、なるべく、外地においても、食糧基地としての機能が発揮できるところについては、日本と現地との協力によって食糧基地とし、その国の食糧をまかない、また、場合によっては日本の備蓄にも充て、また、日本米を緊急援助に回しておるようなところに対する援助米の基地ともしたいというようなことで、各国との間にいろいろな相談をいたしておるわけでございます。しかし、あくまでも、日本の食糧につきましては、国内で自給できるものは自給度を引き上げるべく最善の努力をすることは申すまでもありません。そしてわが国の安全と確保をはかるとともに、友邦諸国との間に合理的な協力を進めてまいりたいというのが考え方でございます。

 それから、外交方針等についての御発言がございましたが、世界が直面いたしておりますエネルギー危機、通貨不安等の諸問題が、一国で解決のつく問題でないことは申すまでもないのでございます。これは各国の理解と国際協力によって初めて克服できる問題でございます。さればこそ、私は、一昨年来の首脳外交において、世界的視野に立つわが国外交を強力に推進をしてまいったのでございまして、対米追随などの指摘は当たらないわけでございます。しかしながら、米国との緊密な関係の維持はわが国外交の重要な柱であり、かかる認識のもとに、等距離中立外交などではなく、自主積極の外交を展開してまいりたいと考えておるのでございます。

 東南アジア諸国の多くは、いまだ独立後日なお浅く、国づくりの過程にあって、多くの困難に直面をしておることは、私が間々申し上げておるとおりでございます。わが国は、東南アジア諸国のかかる立場に深い同情と十分な理解を持ち、相互補完の強いきずなで結ばれているこれらの国々とのよき隣人関係の樹立につとめなければならないと思っておるのでございます。

 わが国の経済協力、企業活動のあり方についても御発言がございましたが、これはいつも申し上げておりますように、量的に拡大をし、活発の度合いが深まっているだけに、相手国の負担を軽減するための条件の緩和、相手国の民生に役立つものの選定、現地との協調、融和の確保等について、絶えずきめのこまかい見直しをしていくことが不可欠でございます。

 私は、かつて日本と朝鮮半島が合邦時代が長くございましたが、その後韓国その他の人々の意見を伺うときに、長い合邦の歴史の中で、いまでも民族の心の中に植えつけられておるものは、日本からノリの栽培を持ってきてわれわれに教えた、それから日本の教育制度、特に義務教育制度は今日でも守っていけるすばらしいものであるというように、やはり経済的なものよりも精神的なもの、ほんとの生活の中に根をおろすものということが非常に大切だということで、今度のASEAN五が国訪問で、しみじみたる思いでございました。これはかっての台湾統治の中でも、そのようなほんとうに民族的に相結ばれる心の触れ合いというものが、いまでも高く評価をされておるという一事をもってしても言えるものでございます。だから、大都市における企業活動というものよりも、山の中に入って、一日一本、二本というラワンの木を切っておるような人たちと住民との間には、非常に、兄弟以上の、さすがに日本人なりという高い評価があることを忘れてはなりません。われわれはそういうこまかい配慮をもって、真に信頼をし、真に理解を得られるような協力の実をあげなければならない、こう考えておるのでございます。(拍手)

 当面する外交課題のうち、日中航空協定に関しての御発言がございましたが、日中航空協定に関連する問題につきましては、先般大平外務大臣が訪中をして、基本的理解が得られたと考えられますので、早急に国内の結論を出すよう努力しておる次第でございます。できるだけすみやかに、中国側と協定交渉を行ない、今国会にも提出したいと考えておるのでございます。

 また、日米安全保障条約にかわって、日米友好不可侵条約をもってしてはどうかとの御指摘がございましたが、これは日米安全保障条約を堅持すると申し上げておるのでございまして、御理解をいただきたいと思います。また、対韓経済協力の適正なあり方につきましては、これまでも十分留意してまいりましたが、一そう遺漏なきを期するため、対韓経済協力の実態について近く調査団を韓国に派遣したいと考えておるのでございます。間々申し上げておりますが、日韓というものは歴史的にも長い友好関係がございますし、かつて一つの国をつくっておったお互いでございますし、隣国である韓国の民生の安定、経済の向上ということに対しては深い関心を持ち、協力をするのが日本の立場でもあると考えておるわけでございます。北朝鮮との関係につきましては、漸進的に積み上げていく所存でございますことは、たびたび申し上げておるとおりでございます。

 最後に、防衛関係費等について申し上げますが、わが国防衛費の一般会計歳出予算に占める割合は、ここ二十年間ほぼ一貫して低下しており、国民総生産に占める比率も諸外国に比してはるかに低位に置かれているのが実態でございます。総需要抑制の見地から、四次防の主要項目にかかる装備品の一部について調達を繰り延べることにいたしましたが、四次防を中止をすることは考えておらないのでございます。

 なお、平和愛好国としてわが国のイメージは定着をしており、私が歴訪したいずれの国におきましても、日本が軍国主義復活のごときことは一切聞かれませんでした。だから、やはり日本人も自信を持って、私は、日本は真の平和愛好国家として世界の平和に寄与したい、こう言ったら、皆拍手しておるわけでございますから、平和に対してはみずからが自信を持つことであります。(拍手)そして、この大目的達成のために邁進をすること以外にないということを申し上げて、答弁を終わります。(拍手)
 春日一幸君にお答えをいたします。第一に、政治責任と今後の政策路線についての御発言について答えます。物価情勢はきわめて憂慮すべき事態を迎えていることは、間々申し上げておるとおりでございます。政府は、あらゆる政策手段を活用しまして、本年上期中に鎮静化さすべく全力を傾注しておるのでございます。この難局を切り抜けまして国民生活を安定に導くことが、政治責任を果たすゆえんであると考えておるのでございます。この難局に対処する努力を通じて、これまでの資源多消費型の技術、産業構造、生活様式などを省資源型なものに一大転換するという、社会体質改善の長期的課題とも取り組んでまいりたいと考えます。そして、使い捨ての生活様式から訣別し、よいものを大切に、心を込めて使うという伝統を見つけつつ、量の豊かさから質の豊かさへ、物質的豊かさから心の豊かさへと、軌道修正を行なってまいりたいと考えておるのでございます。これは単なる耐乏生活への復帰ではなく、新しい安定と繁栄の設計であり、真に豊かな福祉社会を創造する努力にもつながるものと確信をしておるのであります。
 列島改造論の撤回ということについての御発言でございますが、列島改造論に私はこだわって御答弁を申し上げるつもりはございません。ございませんが、狭隘な国土と乏しい資源という制約条件の中で、一億をこえる国民が長い将来にわたって豊かな生活を享受するためには、長期的展望に立って国土利用の再編成をはかり、過密過疎を解消して国土の均衡ある発展をはかることが必要であることは、言うまでもないのでございます。当面、総需要抑制という現実がございますが、しかし、そうかといって、当面に目を奪われて、あすのこと、十年後のこと、わが子の時代のことを考えないわけにはまいらないわけでございます。

 あとから御質問がございました土地の利用計画と一緒に申し上げますと、政府が二、三日前に経済見通しで発表した人口の総数は、一億一千万人でございます。しかし、東京を中心とする関東だけにも、国民の約三分の一、三千五百万人近い人が住んでおるのでございます。しかも、東京、大阪、名古屋という五十キロ圏という小さなところに総人口の三分の一以上が集中しておって、きれいな水、きれいな緑、それから地価を下げる、交通の混乱を排除していくということが、一体可能であるかどうかということをよくお考えになっていただきたい。それでは高層をやろうといえば、日照権の問題があって、高層は反対、大規模な改造にも反対と言われておったのでは、どうして一体理想の生活を築くのか。第一、このような過密の中では、人心は荒廃して、心の豊かさを養うことはできません。そういう意味で、狭いながらも、十年後、二十年後を考えながら、日本の全国土を改造しでいかなければならぬ、総合的利用をしていかなければならぬ。これはもう算術問題であって、私はそんなむずかしい問題だと思っていないのです。絶対に必要なんです。(拍手)これはそういう意味で、春日さん、よく知っているはずです。どうぞひとつそこは十分お考えになっていただいて、列島改造などという論文だけにとらわれないで、あの中には、一〇%、八・五%、七%、五%のときのことまでちゃんと書いてあるのですから、どうも攻撃するための数字だけを読んで――そうじゃないでしょう、みんな読んでいるんだが、そこだけ取り上げて演説をするということでは、国民のための政治にはならないのであります。(拍手)

 それから、今次の石油問題を契機にして、いままでの考えを変えてはどうだということでございますが、それはそのとおりでございまして、反省すべきは反省しておる、転換すべきは転換すると言っておるのです。春日さんも時を同じくして議席を持ったわけですし、同じようにしていろいろな問題を検討し、討議をしてきたからおわかりでありますが、敗戦後のあの状態はどうだったでしょう。無資力、無資源、まず職場を得ることが国会の最大の議題であったじゃありませんか。まずわれわれが職を得なければならない、国際競争力をつちかわなければならない、そうすることによってわれわれの生活基盤を確立する以外にないと言ったじゃありませんか。そのためにお互いは与野党で毎日毎日全精力をあげて議論をしてきたじゃありませんか。日本人の勤勉さは、あの困難を乗り越えて今日をちゃんとつくり上げてきたのです。(拍手)だから、この政策は間違いはないのです。

 ただ、第一の敗戦経済から第二の自立経済を越して、今度は国際経済であって、自分だけが太るようなことが許されないときになったのと、東南アジアの友邦諸国に対しても、日本の肥料を削っても東南アジアに対して肥料を輸出しなければ、東南アジアの友邦の食糧事情は日本以上に困難なんですと、こういう状態に日本が置かれておるのでありますから、だから日本は、そういう国際的な現実を踏まえて、日本の産業構造も徐々に変えてまいらなければなりません。しかも、資源多消費型の産業から知識集約的な産業、公害を出さないようなきれいな産業に変えていかなければなりませんと、こう訴えておるじゃありませんか。しかし、いかに知識集約産業に転換しようといっても、われわれのまわりにある友邦が、鉄鋼をどうしても必要とするんだ、肥料を必要とするんだ、塩ビの原料を必要とするんだという事実がある限り、それを供給するだけの工業生産はやはりどうしても維持しなければならぬのが、国際協力の上から日本に課せられた使命でもあります。われわれが果たさなければならない責務でもあるということを十分考えながら、ただ机の上の議論で、構造改善をいますぐできるんだということではないのでございます。ですから、長期的な展望と、現在置かれておる国際的な中における日本の地位と、国内的にどうしなければならないかということを区別しながら判断をし、そうしてその調和をとることによって新しき道を求めていくべきでございます。

 物価はいつごろかといいますから、物価は今年上期中には鎮静をさせるべく最大の努力をいたしておりますと、こう述べておるのでございますが、国民生活必需物資はいつごろになったら安心して供給できるのか、これは政府の責任でもございますし、そのためにこそ三法を成立さしていただいたわけでございますから、これらの法律運用をきびしく的確に行なうことによって、国民生活に不安をなからしめるように全精力を傾けてまいりたいと思います。これは一カ月とか二カ月じゃありません、いっときも早くそういう事態をつくらなければならぬ。これはもう何カ月なんという問題じゃありません、これは一日も早く、いっときも早く正常な状態をつくり上げるために全力を傾注してまいります。それは自民党や政府だけよりも、野党の皆さんからも御声援と御協力を得ることによってなおうまくいくのでございますから、そこらはひとつ十分お考えをいただきたい。

 自主外交の推進問題、経済協力の問題、国際連帯の問題等に対して春日さん御言及がございましたが、今日の世界が直面しております諸困難は、一国のみで解決できるものではなく、国際協調によらなければ克服できないものばかりでございます。このような観点から、私は、各国首脳との会談を重ね、幅広い自主外交を推進してまいりました。今後とも多方面との協力関係を築き上げ、錯綜した国際情勢に対し十分対応できるようにしていきたいと思っておるのでございます。

 お説の海外経済協力憲章等については、十分勉強さしていただきたいと思うわけでございます。経済協力体制に万全を期さなければならないことは当然でございます。相手国の立場に立つ心の通った国際協力は、単に物の移動によって期し得るものではなく、そのにない手である人にかかっており、かかる人材の養成、確保を真剣に考えてまいりたいと思っておるのでございます。 国際連帯の良識を呼びかけるとの趣旨は、理解いたすところであり、わが国外交は長期的視野に立つ健全な良識によって推進されなければならないと考えておるのでございます。

 中東紛争につきましては、関係国の話し合いによって、兵力引き離し等、部分的曙光が見られつつあることは、歓迎すべきことでございます。わが国といたしましても、公正かつ永続的な解決がもたらされるよう、三木特使を派遣しましたが、引き続きできるだけの寄与を行なってまいりたいと思っております。なお、本件に関して数点の御質問がございましたが、具体的、詳細については、外務大臣より答弁をいたします。

 国際経済協力につきましての御指摘がいろいろございましたが、端的に申し上げますと、いままでは民間企業を中心にして日本は行なってまいったわけでございます。その意味で、数字の上から見ますと、技術や経済の協力の金額は、GNPに対する一%をこえておるのでございまして、先進工業国に何ら遜色のないところでございますが、御承知のとおり、民間企業優先というところに幾らかの問題が存在するわけでございます。その意味で、日本も利益を得、しかも相手国も大きな利益を得ており、相互補完の関係にありながら、経済的な専門分野だけでお互いが交流を始めたという結果についていささか摩擦も生じておることは、確かにございます。

 そういう意味で、政府が、このたびの国会に、国際経済協力担当大臣、また、農業とか文化とか教育とか、いろいろな面から広範にわたって、長きにわたる両国の友好親善ということをはかり得るようにするために、国際協力公団の設立をお願いしているのは、この意味でございます。そうすれば、政府がやるものは――政府のやるものと別々でやっちゃだめなんです。政府、海外経済協力基金、輸銀、それから各民間の銀行や商社が行なうシンジケート等が、総合的にお互いに政府間で理解をされ、計画が立てられ、青写真がかかれ、工程表がかかれるということによって、お互いがいままでのような紛争がなくなる、こう考えておるのでございまして、それはUNCTADの会議において、GNPの〇・七%まで政府間ベースの援助を拡大し、アンタイイングを進めますと、全世界に先がけて宣言をしたのは、このような理由によるものであることを理解をしていただきたいと思うわけでございます。

 土地問題に対しましては、さっき言ったとおり、これはどう考えても――私はこだわるわけじゃございませんが、狭い日本なんですから、地下にもぐるわけにはいきません、空まで行くわけにはいきません、海を埋めるわけにいかないのです。日本人に与えられた、カリフォルニア州一州よりも小さいけれども、まだまだ利用価値は十分ある、水もある、緑もある、豊かな生活の基盤もできる日本全土をやはり視野にして、俯瞰的、鳥瞰的な立場から日本を見ていただかなければ、土地問題の真の解決はないのだ。国総法は早く通してください、だからもう、与野党でもって十分話し合いをして、これを通していただければ、土地問題の基本的な解決にはなるのです。こう申し上げておるわけです。――どうもおかしいんですな。(拍手、笑声)

 食糧政策に対して申し上げます。今後の世界の食糧の需給動向は、人口の増加等の諸事情から見て、きびしいものになることが予想せられることは当然でございます。そのため、国民の主要食糧のうち、国内生産が適当なものは自給度の維持向上をはかることが重要であり、生産の停滞しておる麦、大豆等につきましては、生産奨励措置を講じますとともに、畜産等の大規模な生産基地の建設を進めてまいりたいと思うわけでございます。

 海外に依存せざるを得ない農産物につきましては、備蓄政策、国際協力の一環として開発輸入政策等、長期輸入取りきめなどを進めて、その安定的な供給を確保してまいりたいと思うのでございます。三十万ヘクタールの農地の転換に対しては、御指摘もございましたが、いまでも一年間に七、八万ヘクタールずつの転換があるわけでございますが、これは必要なところ、必要であるという理由によって転換をしておりますから、一貫性も計画性もないわけでございます。そうすれば、その三年分、四年分、五年分を計画的に青写真をつくって、それをどのようにして市街地に、どのようにして住宅地に、どのようにして緑地に、どのように公用地として考えて転換をはかるということは、けだしこれはあたりまえのことだと思っておるのです。そういうことで、もう少し角度を変えて考えていただきたい、こう思うのでございます。

 しかも、この必要な食糧につきましては、大豆とか、それから飼料とか、そういうものに対しては、もうこの間参りましても、フィリピン、インドネシア等でもって、これを基地にして日本の備蓄にもなるように、自分たちの食糧供給基地にもなるように、そうして隣の友邦で米を必要としておるところに、日本の高い米を、国際価格で倍もする米を半値で渡すよりも、ここでもってバングラデシュなど二百五十万トンも不足なところへ幾ばくかでも供給できるような基地としたいという提案もありました。しかも、これは豪州からもあります。ニュージーランドからもあります。ブラジルからも、アルゼンチンからも、カナダからもあるのでございます。そういうような国際的な意味で、これは南北問題の主目的である国際分業というまでにいかない、その手前の段階において、日本が国内でできるものは国内でやる、しかし、お互いが協力をしてジョイントベンチャー形式をとることによって国際的な義務も果たし、日本の備蓄にもなる、そうして日本の農村にも影響がないとしたならば、やはりその道も選ぶべきだと考えておるのでございます。

 それから物価安定国民会議の問題についてでございますが、物価問題の解決には、政府の努力に加えて、国民各層の理解と協力を得ることが不可欠であります。このような観点から、広く国民各層の意見を聞くことを目的として、すでに物価安定政策会議が設置してございます。また、全国に物価モニターを配置して、地域的な物価事情等についての民間による監視体制の整備にもつとめておるわけでございます。また、こうして国会で御審議を賜わっておること自体が、国民の声がすなわち一堂に集約されるというために国会は存在するわけでございます。そういう意味で、当面、御指摘のような会議を設けるという考えはないわけでございます。

 最後に、今後の政局の展望その他、野党に政権を譲ってはどうかという――そこまで言われなかったかもしれませんが、そのような御発言でございます。明確にお答えをいたします。われわれは、戦後四半世紀にわたり政権を担当し、国民とともに、大地を匍匐前進するような苦労をしながら困難を乗り切り、今日の繁栄を築き上げるため、微力をいたしてまいったつもりでございます。この困難を乗り切ってきた責任政党としての自信と伝統は、新しい難局に直面をしている現在にあっても、必ずや国民の負託にこたえ、国民とともに考え、ともにこの試練を乗り切り得るものと確信をいたしておるのでございます。そして議会制民主主義の確固たる基盤に立った協調と連帯の新時代を切り開いていくことができるものと確信をいたしておるのでございます。(拍手)民主政治の前進には健全なる野党が必要であることは、また当然でございます。野党が健全に政策に対してきびしい批判をするとともに、是々非々の立場に立って、国民のために是なりと思ったら勇敢にこれを支援せられることを切に願いたいのでございます。(拍手) 現在、私たちは、これは社会主義政党に日本の政権がいますぐ移動するとは考えておりません。自由民主党が当分の間国民の負託にこたえていかなければならない、全力を傾けなければならない、こういう考えでございます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第14号(1974/02/22、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 山田耻目君にお答えいたします。第一は、税に対する基本姿勢でございます。所得税の基本が総合累進課税にありますことは申すまでもございませんが、各種の政策的要請から総合課税とされていないものがあることは、御指摘のとおりでございます。たとえば、利子、配当につきましては、貯蓄の奨励、個人株主の育成という見地から、納税者の選択によって分離課税とすることが認められておるのであります。また、土地の譲渡所得に対する分離課税につきましては、税制調査会の答申も明確に指摘をいたしておりますとおり、税負担の公平を犠牲にしても、土地供給の促進をはかることが必要であるとの判断のもとに創設をされたわけでございます。したがいまして、現在の制度を直ちに廃止することは適当ではなく、さしあたり、制度の期限到来、すなわち昭和五十年末までの期間に慎重な検討を続けることが適当であると政府は考えておるのであります。

 第二は、年金及び生活保護費を一カ月程度前払いすべしという御指摘でございますが、年金受給者につきましては、拠出年金について、年金額の実質価値を維持するために、昭和四十九年度から年金額のスライドを実施することといたしております。福祉年金につきましては、その額を五〇%引き上げるなど、大幅な年金額の引き上げを行なうことといたしておるわけでございます。

 年金制度は、一定の受給要件に従い、一定水準の給付を規則的に行なうものでございまして、受給権の確定していない将来の期間に対する給付を前払いすることは、制度の趣旨から見て適当ではないと考えるのであります。

 生活保護世帯につきましては、昭和四十八年度におきましても、物価の動向等を勘案いたしまして、二回にわたる特別措置を行ないましたが、今後も情勢の変化に応じた対応措置を必要とするようなことがあれば、敏速に所要の措置を講じてまいりたいと考えております。

 また、年収二百万円以下の者に対し、年度内に三万円税額控除の戻し税減税を行なってはどうかという御提案でございますが、現在の経済情勢のもとにおいて、政府は財政金融政策の総力をあげて物価の安定につとめておるところでございます。この意味から、減税を年度内に繰り上げて実施することは考えておりません。残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 佐藤観樹君にお答えをいたします。まず第一に、法人税率につきましてでございますが、法人税率につきましては、昭和二十七年に引き上げられて後は、昭和四十五年に暫定措置として一・七五%引き上げ、三六・七五となったわけでございます。ここまでは一貫して引き下げの方向で推移をしてまいったわけでございます。これは、わが国企業の体質を改善、強化し、国際競争力をつけるためにとられた措置であり、民間企業活動を軸としたその後の急速な経済成長と、これに伴う国民生活の向上を実現させる大きなささえとなったものと考えておるのであります。今回、法人税率を四〇%に引き上げることといたしましたが、この結果、地方税込みの実効税率はほぼ五〇%に達し、主要諸外国の水準ともバランスのとれたものとなるわけでございます。法人の税負担のあるべき水準としては妥当なものだと考えております。

 第二は、超過利得税課税に対する政府の方針についての御発言でございますが、この問題につきましては、このほど野党各党の案が発表をせられておることは承知いたしております。政府与党たる自民党の案も、近く本ぎまりになると思うわけでございます。各党案の間にはなおかなりの相違がございますが、今後与野党間で精力的に意見調整が行なわれることを切に期待いたしておるわけであります。

 所得政策について申し上げますが、政府は、現下のきわめて深刻な物価情勢に対処するため、総需要抑制策の厳格な実施、国民生活安定緊急措置法の弾力的運用など、最大限の政策努力を傾けておるところであります。
 いわゆる所得政策につきましては、わが国においては、その実施について国民的コンセンサスが必ずしも形成されておりませんので、慎重に考えるべきものと存じております。しかしながら、今後、経済の実勢を無視した高率の賃金上昇が続くならば、物価上昇や失業の増大などを招くおそれも強いのであります。したがいまして、労使双方におきましても、いたずらな便乗値上げや賃金の過度の引き上げは、国民生活を脅かし、経済社会の基盤を危うくすることであることを十分認識して、節度ある行動をとられるよう望むものであります。

 次は、法人の所有する土地についての臨時再評価税の御提案でございますが、法人の現に所有するあらゆる土地について強制的に再評価をさせ、その評価益に課税をするということになると、最近において投機目的のために取得をした土地には税負担が相対的に低く、古くから保有し、本来の事業の用に供しておる土地ほど税負担が重くなる等、種々困難な問題が起こるわけでございまして、現在、御提案のような政策をとることは考えておりません。

 次は、寄付金に対する課税強化のため、損金算入額を圧縮せよとの御提言でございますが、間々申しておりますとおり、法人の支出をする一般の寄付金につきましての損金算入限度は、法人が事業を営んでいく上には、ある程度の寄付を行なうことも必要であるとの見地に立って認められておるものであり、これを引き下げることは考えておりません。

 政治資金の明朗化につきましては、本会議でも申し述べておりますとおり、選挙制度その他と関連がございますので、一括検討しておるわけでございます。(拍手) 
 平田藤吉君にお答えいたします。まず第一は、超過利得税法案についてでございますが、この問題につきましては、このほど野党各党の案が発表せられておることは、先ほど申し上げたとおりでございます。自民党の案も近く本ぎまりになると存じておるのでございます。これを議員立法にするか、あるいは政府提案とするかというような問題を考える前に、まずその内容をどうすればよいかについて、与野党間で精力的に意見調整が行なわれることを期待いたしておるのであります。

 次は、所得税につきましては、標準世帯で年収二百万円まで課税最低限を引き上げよということでございますが、来年度の所得税減税におきましては、特に給与所得者の負担軽減を中心に行なうことといたしております。その結果、夫婦子二人の給与所得者の課税最低限は、現行百十五万円から百七十万円と、大幅に引き上げられることになるわけでございます。このような引き上げは、従来の課税最低限引き上げのテンポと比べても、まさに画期的な引き上げであると確信をいたしておるのでございます。なお、住民税の課税最低限につきましても、標準世帯で八十六万円から百一万円に引き上げることになっておることは御承知のとおりでございます。ちなみに、課税最低限につきまして、諸外国の例を見ますと、イギリスは七十九万二千円、西ドイツは八十七万六千円、フランスは百二十六万二千円、最も高いアメリカでも百二十九万円となっておりますので、御参考まで、念のため申し添えておきたいと存じます。

 次は、年度内に所得税減税を実施せよということでございますが、現在の経済情勢のもとにおいては、政府は財政金融政策の総力をあげて物価の安定につとめておるところでございまして、所得税の年度内減税を行なうことは考えておりません。 残余の問題につきましては、関係大臣から答弁をいたします。(拍手)
 田中昭二君にお答えをいたします。企業の超過利得の吸収のための措置につきましては、政府も早急に成案を得たい考えでせっかく検討を続けておる次第でございます。しかし、与野党の間でもこれが立法化につきまして努力が傾けられておることも事実でございます。野党各党案はすでに公にされております。政府与党たる自由民主党におきましても鋭意作業を進めておるのであります。私は、この種案件について、国民の期待にこたえて、与野党間に意見の調整が行なわれることを心から期待をいたしておるのであります。なお、税法改正案中、各項にわたっての御指摘、御質問につきましては、大蔵大臣及び関係閣僚からお答えをいたします。

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第15号(1974/02/28、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 山田芳治君にお答えを申し上げます。第一は、超過負担問題等についてでございますが、政府は、従来から地方公共団体の超過負担につきましてその解消につとめてまいったわけでございます。昭和四十七年度におきまして、公立文教施設整備等六事業について実態調査を行ない、その結果に基づいて、四十八年度に引き続き四十九年度において所要の是正措置を講ずることといたしておることは、御承知のとおりでございます。また、最近の建設資材の価格の急騰に対処いたしますために、四十九年度予算では、公立文教施設整備費等の予算単価を引き上げる等の措置を講じておるわけでございます。

 次は、地方財政計画についての御発言でございますが、昭和四十九年度の地方財政計画は、総需要抑制の見地から歳出を極力圧縮しておることは、御承知のとおりでございます。また、財源の重点的配分と支出の効率化につとめて、地域住民の生活の安定と福祉の充実をはかるための施策を推進することを基本といたしておるのであります。したがいまして、教育、社会福祉、生活環境施設等地域住民の生活に直結した施設の整備にかかる単独事業費につきましては、その拡充をはかることにいたしております。

 第三点は、国庫支出金の予算編成にあたって、自治大臣の権限を強化せよという趣旨の御発言についてでございますが、国と地方との間の事務配分、財源配分が適切に保たれ、国の財政と地方財政との間に適切な財政秩序が確立さるべきであることは言うまでもありません。政府といたしましても、従来からこの点について特に配意し、予算編成をはじめとして、機会あるごとに自治省及び関係省の間で隔意なき意見交換を行なっておるところであります。これを通じまして地方団体の意見は国の財政運営に適切に反映されておるものと確信をいたしておるのでございます。 残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 小川省吾君にお答えいたします。第一は、市町村財源の拡充についての御発言でございますが、生活環境施設、福祉行政の充実等、市町村の財政需要の増大は、御指摘のとおり著しいものがございます。昭和四十九年度におきましては、市町村民税法人税割の税率を三%引き上げることとなし、また、自動車取得税の税率の引き上げ等によりまして市町村道路目的財源の充実をはかるなど、市町村税源の充実強化をはかることといたしておるのであります。

 次は、社会福祉施設の拡充についての御発言に対してお答えをいたします。心身障害児者や老人など、手厚い援護を必要とする人々に対する社会福祉施策につきましては、従来より、年金制度の改善、福祉施設の拡充、在宅福祉サービスの強化など、施策全般にわたりその充実につとめてまいったところでございます。特に、来年度予算におきましては、これらの社会福祉施策について、重点的に拡充強化をはかることとしておるのでございます。御指摘の都道府県の地方コロニー建設にあたりましては、国としても、国庫補助及び融資制度の面でできるだけの配慮をなしておるわけでございます。また、乳幼児等の医療につきましては、未熟児、小児ガンなど特別の医療を必要とする場合については、すでに医療費の公費負担を実施しておるところであります。昭和四十九年度におきましても、その対象疾病の拡大をはかっておるわけであります。なお、公費負担医療の対象を、このような特別の医療以外の一般の疾病についてまで拡大することについてはどうかという御指摘でございますが、医療保障制度全般の問題とも関連いたしますので、慎重な検討を要するものと考えておるのであります。

 次は、地方交付税についてでございますが、地方交付税の税率につきましては、御指摘のとおり、昭和四十一年度に二九・五%から現行の三二%に引き上げられたわけでございます。その間、経済成長に伴いまして、地方交付税の総額は毎年相当程度の伸びを示し、地方財政の体質改善に寄与しておるわけであります。今後とも、地方税、地方交付税、地方債等を総合的に勘案いたしまして、必要な地方財源の充実を期してまいりたいと考えておるのであります。(拍手)
 三谷秀治君にお答えをいたします。第一は、国庫補助単価についてでございますが、国庫補助単価につきましては、超過負担の実態調査をもとにして是正をはかっておるわけでございます。特に、最近における物価の上昇に対処するため、単価の改善を行ない、実態に近づけるよう努力をしておるところでございます。今後とも国庫補助単価の改善につとめ、これにあわせて地方交付税及び地方債の単価を是正したいと考えておるのであります。

 次は、地方交付税の減額についてでございますが、今回の地方交付税の減額調整措置は、当面する物価問題に対処し、中央、地方が相協力して、歳出規模を圧縮し、総需要の抑制をはかる必要からとられた措置でございます。明年度の地方財政は、地方交付税の減額調整後においても、これに地方税、地方譲与税を合わせた地方一般財源は、前年度を上回る増加となるものと見込まれており、国の財政の基調に準じて地方財政が運営せられる限り、その運営が困難になる心配はないものと考えておるわけでございます。

 なお、今回減額する千六百八十億円という金額は、交付税特別会計の借り入れ金の残高に相当する額でありまして、いわば地方の借り入れ金を繰り上げ返済したのと同様であり、これをもって地方交付税制度の本質に反するとは考えておらないのであります。
 次は、事業税についての御発言でございますが、所得金額課税を収入金額課税方式に改める場合には、各企業の負担に相当の変動が生ずることになり、とりわけ経営基盤の脆弱な中小企業に及ぼす影響が大きい等の問題がありますので、これらの点につきましては、税制調査会の審議をわずらわしつつ、慎重に検討してまいりたいと考えておるのでございます。

 次は、事務所事業所税についてでございますが、事務所事業所税の創設につきましては、今回の税制改正にあたりまして、種々検討を重ねたところでございます。昭和四十九年度は、御承知のとおり法人税率や法人住民税率を引き上げましたので、法人の負担の適正化をこのようなことによってはかったわけでございます。また、昨年の秋以来、経済情勢に急激な変動があったことなどから、諸般の情勢から、今度の事務所税や事業所税ということの実現には至らなかったわけでございます。この問題は、今後引き続き検討してまいりたいと存じます。 残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 小川新一郎君にお答えいたします。第一は、住民の立場に立つ財政計画についての御発言についてお答えいたします。昭和四十九年度の地方財政計画は、総需要抑制の見地から、歳出を極力圧縮いたすことにいたしておるわけでございます。このような中にありましても、地域住民の生活安定と福祉充実をはかるための施策につきましては、福祉優先の見地から、引き続きこれを重点的に推進してまいりたいと考えております。このため、生活保護、児童福祉、老人福祉等、社会福祉施策の充実をはかるとともに、地方団体における消費者行政の推進等をはかるための施策を拡充しておるのであります。

 国と地方の事務、財源配分についての御発言でございますが、国、地方を通ずる税財源の配分のあり方につきましては、事務再配分等の問題もあわせ総合的に検討すべき問題でございますから、地方制度調査会、税制調査会等の意見も伺いながら、今後も研究を続けてまいりたいと考えます。

 次は、地方交付税についてでございますが、四十九年度に地方交付税交付金について千六百八十億円を減額調整することといたしておりますのは、先ほども申し述べましたように、総需要の抑制をはかるため、中央、地方が相協力して歳出の規模を圧縮する必要があることによるものでございます。四十九年度には、地方税が三割近い伸びを示すなど、一般財源の増加が見込まれる情勢にあることは、御承知のとおりでございます。また、歳出面では、国の公共事業費等にかかる地方負担の増加が著しく小さいなど、歳出規模の拡大がおのずから小幅にとどまる要因がありますほか、各地方団体におきましても、行政需要の抑制、繰り延べ等につとめることが期待せられますので、これらの事情を総合すれば、地方交付税の減額が四十九年度の地方財政に支障となるとは考えられないのであります。

 次に、国債の一定割合を交付税に上乗せしてはどうかとの御発言でございますが、さきの質問に自治大臣から申し述べましたように、国の公債収入を租税収入と同一視して、国、地方聞の財源配分に調整を加える必要があるとする考え方には問題があります。その意味で、にわかに賛同しがたいのであります。

 次は、超過負担についてでございますが、政府は、従来から、地方公共団体の超過負担についてその計画的な解消につとめてきたことは、さきにも申し述べたとおりでございます。また、最近の建設資材の価格の急騰に対処するため、昭和四十九年度予算においては、公立文教施設整備費等の予算単価を引き上げるなど、各般の措置を講じておるわけでございます。

 最後に、地方債についてのお尋ねでございますが、地方債の許可制度は、資金の公平な配分と財政の健全性の確保の見地から設けられておるものでありますから、その廃止は考えておりません。また、地方債に充てる資金については、従来から政府資金の重点的な配分につとめておるところでございます。昭和四十九年度においては、地方債計画に占める政府資金の比率は六〇・三%でございまして、一兆四千百億円となっておるわけでございます。残余の質問については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第19号(1974/03/22、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 川俣健二郎君にお答えいたします。まず第一は、雇用保険法案は既得権の侵害にならないかという趣旨の発言でございますが、本法案は、失業保険制度を改善、発展させ、失業保険機能の強化をはかっておるわけでございます。また、真に対策を必要とする失業者に手厚い措置を講ずることとしており、さらに、雇用機会の不足している地域は積極的に安定した雇用機会を創出し、不安定な雇用を解消する等、雇用構造の改善も積極的に推進する考えであります。

 次は、現在の情勢下でなぜ本法案を出すのかというお問いでございますが、雇用保険法案は、高齢化社会への移行やエネルギー問題に見られるような、内外要因による経済変動に伴う雇用問題にも的確に対処し得るよう、今後の経済、社会の動向に即して、失業保障機能について格段の強化をはかっておるわけであります。たとえば、給付日数を就職の難易度に応じて決定するとともに、全国の失業水準が悪化した場合においては給付日数を一律に延長することや、雇用改善事業として一時帰休に対する援助を行なうなどが措置されておるわけでございます。したがって、今後不測の事態が起こった場合にも十分対処し得るものと考えておるのであります。

 次は、雇用対策諸事業は、国の手、すなわち、一般会計で行なうべきであるとの趣旨の御発言でございますが、雇用構造の改善、労働者の能力の開発向上等の諸事業は、保険事故である失業の発生の防止とその早期解消に大きく資するものであり、これらに要する財源については、労働保険特別会計において支出することが適当であると考えておるのであります。他方、従来から一般会計の支出によって実施してきた雇用施策もあり、両者は、それぞれの役割りに応じて相互に補完しつつ雇用対策の円滑な実施に貢献しておるわけでございます。今後ともこの方針によって措置してまいりたいと考えるわけであります。

 最後は、農林漁業従事者と農政の問題について御発言がございましたが、雇用保険の被保険者となる農林漁業従事者の多くは、短期雇用特例被保険者として一時金の支給対象となると思われますが、一時金制度を採用することは、これらの労働者の生活実態から考えて、現段階では最も適当な措置であると考えておるのでございます。

 なお、農政の基本としては、出かせぎのない農業経営が望ましいことはもちろんでございまして、政府としても、この線に沿って、従来から農業経営の近代化、農地保有の合理化など構造政策には特に留意をしてきたところでございます。また、これとあわせて農村地域に工業導入を促進するなど、兼業農家の所得の確保をはかっていくつもりでございます。特に一言申し上げますが、出かせぎ農民をなくする道は、国土総合開発を促進し、農工商三位一体の調和ある政策の推進が絶対に必要でありますことを念のため申し添えておきます。(拍手)
 中川利三郎君にお答えいたします。まず第一は、今回の法改正と憲法との関係等についての御発言でございますが、本法案は、全産業の雇用労働者を適用対象にしており、また、失業給付につきましては、最近の雇用失業情勢に即した改善を行なうほか、付帯的に労働者の雇用福祉のための諸事業を行なうこととなっておるわけでございます。その内容は、憲法に定める生存権、職業選択の自由及び勤労権の趣旨に即して、これをよりよく実現しようとするものであります。雇用保険法案では、現行失業保険制度を改善発展させ、雇用に関する総合的機能を持った雇用保険制度を創設することとしておるわけであります。その中において、失業保険機能は一そう充実強化することとしており、制度の基本的性格を変えるものでないことは明らかでございます。本法案では、真に対策を必要とする失業者に手厚い措置を講ずるとともに、たとえば雇用機会の不足している地域に積極的に安定した雇用機会を創出し、これらの地域の季節労働者その他不安定な雇用を解消する等の雇用構造の改善も積極的に推進する考えでございます。

 次は、季節的受給者に対する扱いについてでございますが、本法案におきましては、季節的受給者の雇用の安定のための施策を拡充強化しております。また、農林水産業への適用拡大にあたり、従来から問題のあった季節的受給者について、その生活の実態を十分考慮しつつ、給付と負担の面で特例措置を講ずることといたしておるわけであります。出かせぎ労働者につきましては、基本的には、できるだけ地元で就労することができるようにすることが必要であり、農村地域における雇用機会の確保や通年雇用の促進をはかるとともに、安定就労の促進と福祉の増進につとめているところであります。要は、出かせぎがなくて済むように、国土の均衡ある発展をはかることが政治の目標でなければならぬことは、申すまでもありません。

 次は、働く婦人の扱いについての御発言に対して答えますが、若年の婦人につきましては、出産、育児等の理由により退職する者も多いが、政府としては、婦人がその希望に応じて就業し得る環境を確保するため、その職業能力の開発向上をはかりますとともに、保育施設の増設等につとめているところであり、今後ともこれらの施策の充実につとめてまいりたいと考えます。また、本法案におきましては、妊娠、出産、育児等の理由のため職業につけない場合には、本人の申し出により受給期間を延長し、その理由がやんだ後に受給できるように措置していることは、御承知のとおりでございます。

 第四点目、本法案を撤回する意思がないか、撤回せよとのことでございますが、先ほど労働大臣が申し上げたとおり、本法律案は必要があって御審議を願っておるのでございますから、撤回の意思はございません。早急に御審議、御可決のほどをお願いいたします。(拍手)
 大橋敏雄君にお答えいたします。まず第一は、雇用保険法は、失業保険法を変質させるものではないかという趣旨の発言でございますが、本法案は、高齢化社会への移行やエネルギー問題に見られるような、内外要因による経済変動に伴う雇用問題にも的確に対処し得るよう、今後の経済社会の動向に処して失業保険機能について格段の強化をはかったものでございます。したがって、今後不測の事態が起こった場合にも、十分対処し得るものと考えておるのでございます。なお、政府は、現段階において、所得政策の導入は考えておりません。

 次は、完全雇用の達成についてでございますが、雇用保険法案は、雇用構造の改善、労働者の能力開発の推進、労働者の福祉の増進などにより、質量両面にわたる完全雇用の実現をめざすものでございます。このような考え方に立って、真に対策を必要とする失業者に手厚い措置を講ずるとともに、たとえば雇用機会の不足している地域に積極的に安定した雇用機会を創出し、これらの地域の季節労働者その他不安定な雇用を解消する等の雇用構造の改善も、雇用保険における事業の一環として積極的に推進する考えであります。

 今後の農政についての御発言に対して答えますが、農政の基本としては、出かせぎのない農業経営が望ましいことであり、政府としても、この線に沿って、従来から農業経営の近代化、農地保有の合理化等、構造政策には特に留意してまいったところであります。また、これとあわせて、農村地域への工業導入を促進し、兼業農家の所得の確保をはかってまいりたいと考えます。要は、出かせぎをしなくて済むよう、工業の全国的再配置、中核都市の建設などにより、国土の均衡ある発展をはかることが必要だと考えておるのであります。残余の質疑に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第20号(1974/03/26、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 岡田哲児君にお答えいたします。まず第一は、国際石油情勢と外交のあり方についての御発言についてでございますが、今回の石油危機は、昨年十月の中東紛争を契機として発生したものでございますが、その背景としては、一九六〇年代から七〇年代における石油需給事情の変化、石油エネルギー需要の急速な増加や、原子力エネルギー、核融合エネルギー等石油にかわるエネルギー利用の促進、開発の状況等、種々の要因が重なっていると考えられるのであります。いずれにいたしましても、現下の石油情勢は、単にエネルギー問題にとどまらず、世界の経済、貿易、通貨に大きな影響を与える問題となっておるわけであります。しかも、その解決は一国のみでは困難でございまして、産油国、消費国が調和ある関係の樹立にそれぞれ努力して初めて達成されるものであります。わが国としては、かかる観点から、ワシントンでのエネルギー会議及びその後の会合に参加をしておる次第であり、今後とも産油国との実りある対話の実現につとめてまいる所存であります。

 次は、開発公団を石油公団とせよとの御趣旨のようでございますが、石油開発公団は、設立以来、民間企業に対する探鉱投融資、債務保証等の業務を行ない、わが国の海外石油開発の中核的推進母体として活躍をしてまいったわけであります。公団みずから利権取得をなし、探鉱、開発、輸入、備蓄、精製、販売まで一貫して行なうような機関に改組せよという御提案につきましては、政府と民間との分担体制のあり方を含む石油政策全般にかかわる重要な問題でございますので、慎重な検討を要するものと考えておるのであります。このため、現在、総合エネルギー調査会において進められております石油政策の見直しの一環として、本問題についても検討を加えていきたいと考えております。

 次は、自主開発の推進についての御発言についてでございます。わが国の海外石油開発は、アラビア石油株式会社のように先駆的な例はございましたが、従来、原油市場が供給過剰ぎみに推移をしていたこと、わが国石油業の経営基盤が脆弱であったことなどもございまして、自主原油開発に着手する時点が、他の先進国に比しおくれたことは事実であります。昭和四十二年に石油開発公団が設立せられて以来、石油の探鉱のため八百四十八億円にのぼる投融資を行なってきたわけでございますが、一般に石油探鉱には長期間にわたる努力を要し、かつ、探鉱から生産開始までの期間も長いため、これらの開発努力の成果が十分あらわれるのはなお将来のこととなるわけであります。政府としましては、今回の石油危機を教訓として、今後自主開発の推進のため一そうの努力を傾けてまいりたいと考えておるのであります。

 次は、政府の備蓄政策についての御発言でございますが、政府は、これまで四十九年度末までの三年間で十五日分原油備蓄を増強し、六十日分保有することを目途に、その達成につとめてまいったわけであります。昨年末の石油危機に際し、この民間備蓄を取りくずし、石油の安定供給につとめてきたことは、御承知のとおりであります。したがって、当面目標の六十日分の備蓄を確保することに全力を傾けてまいるつもりでございますが、今後の石油備蓄のあり方等につきましては、現在、総合エネルギー調査会に検討を依頼しておりますので、その結果をまって政府の施策をきめてまいりたいと考えております。次は、石油の価格を法的根拠に基づく認可制にせよという御趣旨の御発言でございますが、石油製品の価格につきましては、今回行政指導を行なうことといたしましたのは、国際石油情勢の激変に伴い原油価格が急騰した実情を受けて、その国内物価への影響を最小限にとどめるために、緊急対策として行なったものであります。石油製品の価格対策は、石油をめぐる内外情勢が鎮静化するに伴い、一部国民生活に密接な関連を有するものについての配慮は残しますとしても、人為的な価格介入は極力避けて、正常な市場機能による価格形成に復することが望ましいと考えておるのであります。残余につきましては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 小宮武喜君にお答えいたします。まず第一は、過去のエネルギー政策についてでございますが、国際収支上の問題、また、国際収支上の制約等もございまして、経済性に重点を置くのあまり、自主開発、国際共同開発への参加、開発権利の取得などにあたりまして、慎重にすぎたきらいがあります。エネルギー問題につきましては、総合的、長期的な視野に立って、誤りなき施策を進めてまいりたい、こう存じます。

 第二の問題は、石油情報の収集体制等についての御発言がございましたが、石油政策に万全を期する上で、国際的な石油情勢に関する情報を迅速かつ正確に入手することがきわめて重要なことは、御指摘のとおりでございます。従来から政府におきましては、民間企業の情報のみならず、広く在外公館を通ずるのほか、ジェトロや石油開発公団等の海外事務所などをも通じまして、相手国政府、関係公団、企業等の情報を収集いたしますとともに、OECD等の国際機関の場や国際的資源関連企業等との接触による情報及び意見の交換を幅広く行なっており、さらに国内外の文献及び信頼できる各国の資源問題専門家から最新の個別情報の収集につとめておるわけでございます。今後とも一そうの努力を傾け、正確かつ迅速な情報の収集をはかってまいらねばと考えておるわけでございます。

 総合エネルギー政策についての御発言でございますが、まず、石油につきましては、海外資源の自主開発をはじめ、わが国周辺大陸だなの開発を強力に推進いたしてまいりたいと考えます。また、電力につきましては、原子力発電の積極的な推進、多目的ダムを利用した水力発電所の建設及び既存ダムの再開発を推進いたしますほかに、地熱発電の開発及び活用、液化天然ガスの導入促進をはかってまいりたいと考えております。さらに、わが国のエネルギー供給の長期安定化をはかりますために、核融合の技術開発をいたしますとともに、太陽エネルギー、地熱エネルギー、合成天然ガス、水素エネルギー等の豊富かつ無公害の新エネルギー技術の開発を、ナショナルプロジェクト、サンシャイン計画といたしまして昭和四十九年度から発足をさせ、推進することとしておるわけでございます。これらのエネルギー供給の位置づけ及び確保の具体的な方針につきましては、現在、政府の諮問機関でございます総合エネルギー調査会等の場で審議を願っておるわけでございますので、この審議の結果をまって具体的な推進を考えてまいりたいと考えるわけであります。

 資源エネルギー省を設置してはどうかという御発言でございますが、一つの見識だと思います。しかし、政府は、昨年七月、通商産業省が分離して所掌していました石油政策、石炭政策、電力・ガス政策、原子力政策、海洋開発政策等を統合いたしまして、資源エネルギー庁を設置し、長期的かつ国際的な観点に立って、総合的な資源エネルギー政策を推進いたしておるわけでございます。

 総合エネルギー政策の実施にあたりましては、通商貿易政策との斉合性、産業政策との一体化等、関係部局との密接なる連絡調整を要する事項が多いのでございます。しかも、これを効率的に処理することが要請されておることは申すまでもないことでございます。したがいまして、現行のように、現時点におきましては、通商産業省の外局としての資源エネルギー庁を置く体制が適当であると考えておるわけでございます。しかし、これらの行政機関の問題は、世界的にもいろいろな企画もございますし、現に行なわれておるものもございますので、事態に即応できるような、効果のあげられるような問題に対しては、絶えず勉強してまいりたいと考えておるわけであります。以上。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第21号(1974/03/28、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 唐沢俊二郎君にお答えいたします。 第一は、不当事項の根絶についての御発言でございますが、予算の執行にあたりましては、各省各庁において、その衝に当たる関係職員が、法令等の定めるところにより、適正かつ効率的な処理を行なうよう、十分留意をいたしておるところであります。四十七年度におきましても、相当件数につきまして不当事項の指摘を受けておることは、まことに遺憾でございます。今後とも、予算執行にあたりましては、適正な処理を行なうよう指導の徹底をはかりますとともに、会議、研修等により関係職員の資質の向上につとめ、再び同じような誤りを繰り返さないよう、姿勢を正してまいるつもりでございます。

 春闘に対する態度についての御発言でございますが、わが国は御指摘のとおり法治国家であり、法の順守は、国民全体にひとしく課せられた義務であります。政府としては、従来から、職員の経済的要求に対しましては、極力前向きに取り組むとの姿勢を貫いておるところであります。また、公正なる第三者機関である公労委の下す仲裁裁定につきましては、これを完全に実施いたしておるのが現状であります。

 国鉄の一部組合は、このような政府の基本方針にもかかわらず、あえて話し合いによる平和的な解決を捨て、政治的目的のためにストを計画し、違法なスケジュール闘争を行なっておることは事実であります。これは国民に多大の迷惑をかけるばかりではなく、法を無視する行為が継続されていることは、まことに遺憾であります。政府としましては、このような争議行為に対しては、法に照らし厳正な態度で臨む所存であります。(拍手)政府、国民が一体となって物価問題の解決に取り組んでいる現段階において、しかも国鉄財政が危機に瀕している現在、このような違法な争議を繰り返すことは、まことに遺憾であり、組合員諸君の深い自重を求めたいのであります。(拍手)

 公営住宅建設費の繰り越し問題等について言及がございましたが、公営住宅の建設につきましては、近年特に東京、大阪等の大都市地域における事業の実施が著しくおくれておることは、御指摘のとおりでございます。その結果、四十七年度事業につきましては、全国合計で三百六十一億円の繰り越しを余儀なくせられておるのが現状でございます。この原因としましては、住宅建設に関する地元市町村、地区住民との調整の難航、用地の確保難等がそのおもなものと考えられます。かかる事態に対処するために、基本的には、大都市地域における宅地供給対策の拡充をはかりますとともに、既成市街地における再開発事業の促進策を講ずることとしておるわけでございます。また、緊急的な施策としましては、国、公有地の活用、また区画整理事業の推進、既存公営住宅建てかえ事業の促進、市街地内空閑地の利用促進等の措置を講じ、公営住宅建設事業を推進し、予算の適切な執行に努力をしてまいりたいと考えます。特に大都市における公営住宅について申し述べますと、住宅建設の直接の責任は当該地方自治体が主体であることに責任を感じ、政府と相協力してこれが建設促進に努力されるよう切に望みたいのであります。(拍手)
 稲葉誠一君にお答えいたします。まず第一は、経済運営の基本についてでございますが、昨年二月に策定せられた経済社会基本計画におきましては、国民共通の目標である福祉社会の実現を目ざしまして、社会保障の画期的充実、生活関連社会資本の拡充、自然環境の保全等、国民生活優先の資源配分を進めていくこととなしておるわけであります。政府としましては、このような国民福祉優先の経済運営の方向をさらに具体化し、その実施を強力に推進をしてまいるつもりでございます。

 議院証言法についての御発言がございましたが、この法律は昭和二十二年十二月公布のものでありますが、これは占領軍政策の中でも有名なメモランダムケースのものであることは、御承知のとおりでございます。憲法との関係につきましては、憲法第三十八条第一項は、何人も、自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について、供述を強制されないことを保障したものであることは、稲葉さんも御承知のとおりであります。しかも、同項の保障は、刑事上の責任に関係がない一般の不利益の供述にも及ぶという議論のあることも、御承知のことだと思います。ところが、議院証言法では、刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項、及び恥辱に帰すべき事項に関するときは、証言を拒むことができることになっておりますが、その運用のいかんによっては、証人として喚問された者が、あらゆる事項について証言を強制されるということも考えられるのであります。そのようなことでは、憲法の規定との関係で問題があるという意見があったことを述べたものでございます。また、刑事訴訟法との関係につきましては、刑事裁判における証人は被告人以外の第三者であるのに対し、議院証言法における証人は、問題となっている事案の本人である場合が多く、また、運用のいかんによっては被疑者または被告人のような立場に置かれることにもなりかねないことは、申すまでもないのであります。したがって、議院証言法の証人が、実際上このような立場にあるという点に着目すれば、一般的に黙秘権が認められている刑事訴訟法の場合に比べ、きびし過ぎるという考え方もあり得るわけで、議院証言法について、そのような考え方があったことを、きびし過ぎるという意見があったと述べたものであります。これらの観点に加え、議会制民主主義擁護の立場から、私は、この法律の適用は慎重であるべき旨を機会あるごとに申し述べておるわけであります。

 次は、物価上昇によるひずみの是正等について、いろいろ意見を交えての御発言がございましたが、物価の上昇は、経済活動の各面や国民各層に均質的な影響を与えるわけではなく、所得の配分や資源利用の適切さを妨げる面があることは否定できません。
 このため、政府としましては、従来から生活扶助基準、年金などについて、一般世帯の生活水準の向上、物価上昇等経済社会環境の変化に応じ、できる限りの措置を講じてきておるところであります。四十九年度予算におきましても、厚生、国民両年金に物価スライド制を実施することとしておるわけであります。

 それから、企業の自己資本比率の低下について一言ございましたが、わが国企業の自己資本比率が、一五%台と、戦前の六一%に比べてしごく低位にあることは、御指摘のとおりでございます。わが国の企業が金融等間接資本にウエートがかかり過ぎておるという事実につきましては、先進工業国の例にも徴し、自己資本比率向上、強化のために施策を進めていく必要があると考えておるわけであります。

 それから、銀行に対する政府の方針についての話でございますが、銀行は一国の信用秩序の根幹をなすものであるため、その経営が安定し、強固であることが要請せられることは、言うをまちません。このような見地から、銀行の経営の健全性を確保し、できるだけ内部留保を厚くしておくことが望ましいと考えられるわけであります。しかし、同時に、公共性の高い銀行が過度の利潤追求に走るようなことがあってはならないことは、言うまでもありません。したがって、今後とも、適度の競争を通じて経営の効率化と銀行機能の向上をはかりますとともに、その成果を預金、貸し出し、為替等の業務全般を通じまして広く国民一般に還元していくよう指導してまいりたいと考えております。

 独禁法の改正についての御指摘でございますが、御指摘の価格引き下げ命令を含めまして、現在公取委員会において独禁法の改正強化を検討中でございます。政府は、その検討結果をまちまして、前向きに対処してまいるつもりでございます。

 君が代、日の丸についての御発言がございましたが、日の丸、君が代が国旗、国歌であるという認識は広く国民の間に定着をいたしております。しかし、教育の場で、国旗、国歌問題をめぐって混乱が生じておる状況にあることから見て、法制化の問題について真剣に検討する必要があると考えておるのでございます。各方面の意見も伺いまして、慎重に結論を出してまいりたいと考えます。なお、現行憲法との問題にお触れになりましたが、現行憲法におきましても、私が申し上げるまでもなく、天皇は日本国の象徴でございまして、日本国民統合の象徴でありますから、君が代が国歌であることは、何ら差しつかえがないということであります。

 教育勅語についての御発言がございましたが、教育に関する勅語は、およそ半世紀にわたってわが国教育の根本理念とされてまいりましたことは、承知のとおりであります。戦後の諸改革が行なわれた中で、昭和二十三年六月十九日、衆議院において排除の決議が行なわれ、また、参議院において失効の決議が行なわれたことは、そのとおりでございます。したがいまして、これを復活することは考えておりません。しかし、その中には、多くの普遍的な人倫の大本を示した部分があることもまた事実でございます。でありますから、形式を越えて現代にも通ずるものがあるという事実に徴し、それらについては、国民の共感を得られるような状態で世論に問うべきではないかという考え方を持っておるのでございます。政治資金規正法による問題の御発言については、御指摘のとおり、法律の定めるところによって公表せられておることを御承知いただきたい。以上。(拍手)
 庄司幸助君にお答えいたします。まず第一には、物価上昇の原因等についての御発言でございますが、毎々申し上げておりますように、昨年来の物価上昇は、コスト要因としての海外物価高、需給要因としての国内総需要の拡大など、多くの要因が複雑にからみ合って生じたものでありますことは、申し上げておるとおりでございます。社会資本の整備や社会保障の充実によりまして国民福祉を向上させることは、国民の強い要望であること、また、円の対ドル実質三〇%の切り上げに耐え、中小零細企業の倒産を防ぎ、かつ、国際収支の黒字幅を減少させるために、財政金融政策で積極的な施策が進められたことは、十分国民の理解を得られるものと考えます。これにアラブ諸国からの原油供給削減や原油公示価格の大幅な引き上げによる物価上昇圧力が加わり、昨年末の異常な上昇を招いたものと考えておるのでございます。政府としては、このような観点から、従来より財政金融両面からの引き締めを推進いたしますとともに、個別対策の一そうの推進等をはかるなど、諸般の政策を着実に実施することによって、物価の安定をはかってまいりたい。

 次は、国総法関係についての御発言でございます。毎度の御発言でございますが、国土総合開発の推進は、真の福祉日本を建設するために絶対必要なものであり、本件については、近視眼的な視野による固定的な見解を改められ、真に国民の必要とする政策であるとの認識に立って、切に御協力を願いたい。

 次は、資源エネルギーの対米依存から脱却せよとの、意見を含めての御発言でございますが、石油を中心とした資源エネルギーの安定的な供給を確保するためには、その供給量を増大すること、供給源を多角化することなどが必要であることは、申すまでもありません。しかし、現実の世界の石油市場における米系メジャーの地位は依然として高く、わが国の石油輸入の約半分をこれら米系メジャーに依存しておることも事実であります。今回の石油危機の体験を生かし、また、現在の産油国の立場の強化、メジャーの地位の相対的低下の状況下にあって、今後わが国としては、従来にも増して、資源保有国と消費国とが相互に対決することなく、共存共栄の見地に立って、石油等、資源エネルギーの安定的供給及び増産を行ない得るような状況をつくり出すことにつとめてまいりたいと考えるのであります。

 社会福祉、社会保障についての御発言がございましたが、これはもう常に申し上げておりますとおり、昭和四十九年度予算におきましては、物価の安定を最大の課題とするとともに、社会保障の充実には思い切った財源の投入を行ない、その結果、一般会計の伸び率一九・七%の二倍に近い三六・七%増の社会保障関係費予算を計上しておることは、御承知のとおりでございます。
 具体的には、福祉年金の五〇%引き上げ、拠出制年金の物価スライドによる給付改善、生活扶助基準や施設入所者の生活費の二〇%引き上げなど、手厚い保護を必要とする人々の生活の安定と福祉の向上をはかることに努力を傾けておるのであります。今後とも、わが国の社会保障の充実につきましては、長期的視点に立って、着実な努力を積み重ねてまいりたい。

 経済援助のあり方についての御発言がございましたが、わが国の経済協力は、開発途上国の民生安定、経済発展に寄与し、それぞれの自助努力を支援するために行なわれておりますので、これが対米肩がわりとか新植民地主義とかいうことは、全く当たらないことでございます。残余の問題については、関係閣僚から答弁いたします。(拍手)
 坂井弘一君にお答えいたします。税法の守秘義務について、また、反社会的行為と見られる脱税事案については一定の基準を定めて国会に報告してはどうかという趣旨の御発言でございますが、いまもお述べになられましたように、現行法上、税務職員に対して厳格な守秘義務が課せられておる以上、税務執行機関がこれを公表することはできないわけであります。かりにそのような報告を行なうこととなした場合、反社会的行為の範囲をどのように考えるかについて困難な問題があるほかに、納税者の基本的人権の保護にもかかわる問題でもあり、慎重な検討を要するものと考えておるのであります。なお、悪質な脱税事案につきましては、告発によって司直の手にゆだねられ、刑事上の罰則の適用があることは申すまでもないわけでございます。

 次は、老人施設並びに学校施設等の予算執行についての御発言でございますが、老人ホーム等の社会福祉施設及び公立文教施設の整備につきましては、重点施策としてその推進につとめており、年々予算の拡充をはかりますとともに、その執行についても適正を期しておるところでございます。また、その建築補助単価につきましては、毎年度所要の是正を行ない、実情に即した単価の設定につとめてきたところでございます。特に四十八年度におきましては、両三度にわたり単価の改正を行なったところでございます。さらに四十九年度予算におきましても、公立文教施設の単価を大幅に引き上げ、また、社会福祉施設の単価につきましても、実情に即して定め得るよう配意をしておるところであります。政府としましては、総力をあげて総需要の抑制につとめており、建設資材の価格などは漸次鎮静化するものと考えており、事業は円滑に進むものと期待をいたしておるのであります。

 次は、公取委の権限強化等についての御発言でございますが、公正取引委員会の権限強化につきましては、現在、独占禁止法の強化、改正を公正取引委員会において検討中であります。政府としましては、その結果をまって対処する所存であります。なお、独占禁止法違反事件の取り締まりに当たる審査部職員の増員等につきましても、法改正との関連も考慮しながら、実情に沿うよう十分検討したいと考えておるのでございます。残余に関しては、関係閣僚から答弁いたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第23号(1974/04/04、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 和田貞夫君にお答えをいたします。 まず第一に、海外経済協力の件でございますが、申すまでもなく、人類世界の平和を真に確保するため最大の政策は、南北問題の解決にあるわけでございます。先進工業国と開発途上国とが相携えて平和の確保に努力すべきであることは、申すまでもないことでございます。特に、わが国は資源を持たない国でございまして、その大半を海外より輸入し、これを加工し、その製品を輸出することによって国民生活の向上をはからねばならない、これは過去も現在も将来も変わらない現実でございます。その意味で、対外経済援助は、開発途上国の発展に寄与するとともに、あわせてわが国の利益も確保しなければならないという、過去も現在も、またあしたも、変わらない最重要な問題でございます。その意味で、これが円滑に行なわれるように、合理的に執行せられるように、重大な関心を持ち、これら機関の整備をはかってまいる必要性は、私が申すまでもないことでございます。

 次は、東南アジア訪問の際の問題についての御言及でございますが、国家間の関係が密接化すればするほど、調整を要する問題が生じてくることもまた当然であります。したがいまして、見直すべき点は、わが国としても十分これを反省して対処しなければなりません。しかし、東南アジアの友邦諸国とわが国とは、基本的に相互補完の友好関係にあり、一部のデモ等の現象にのみとらわれるのではなく、より長期的な視野に立ち互恵の道を求め合う関係にあると考えるのであります。わが国の資源政策についての批判等に対しての御発言がございましたが、すなおに見まして、わが国は開発途上国の天然資源に関心を持つものでございますが、これを開発する際には、相手国の発展、繁栄を考慮することなく対処できないことは理の当然でございます。経済協力担当大臣の新設をはかったのも、よりきめのこまかい、機動的な、相手国の立場に立つ援助の促進をはかるためなのでございます。経済協力担当大臣を新設する理由についての御言及がございましたが、最近における内外情勢の推移に迅速かつ適切に対処するためには、国政の機動的な運営を強化する必要がございます。特に経済協力につきましては、開発途上国との間に平和と繁栄を分かち合うという基本方針のもとに、それぞれの国の実情に即した施策を一そう積極的に推進をしていく考えでございます。

 現在、経済協力の執行体制は関係各省にまたがっており、その機動的、能率的な運営を確保する上で、その推進に専念できる国務大臣を新たに設ける必要があると考えるのであります。このため、国務大臣の定数を一人増加し、経済協力の積極的な推進に当たることとするものでございます。経済協力担当大臣新設の経緯と閣議の機能等についての御発言がございましたが、今回の経済協力担当の国務大臣の増員につきましては、関係閣僚の意見も打診した上、予算化及び法制化に当たったものであります。国務大臣の定数は、内外情勢の推移、行政需要の変化その他、内閣の運営をめぐる事情の変化に即応して考えらるべきであることは当然と存じます。複雑専門化する行政の推移に対応して、国務大臣の定数を適正なものとしていく必要がありますが、半面、合議制機関としての内閣の機能を阻害しないよう留意しなければならないこともまた言うをまちません。今回の内閣法改正案は、上述のような視点を踏まえて慎重に検討した結果、国務大臣の定数を一人増加し、経済協力の積極的推進に当たることといたしたものでございます。なお、閣議の問題に対して御発言がございましたが、閣議の前には事務次官会議も開いておりますし、その前には各省の連絡も十分やっておりますし、政府与党である自由民主党との調整も慎重、十分に行なっておることは、御承知のとおりでございます。その上に立って、閣議はしごく円満、合理的に運営せられておることを、念のため申し上げておきます。(拍手)
 河上民雄君にお答えいたします。まず第一は、東南アジア訪問の際の抗議デモ等についての御発言でございますが、先ほどもお答えしたとおり、東南アジアの友邦諸国とわが国とは、基本的に相互補完の友好関係にございますが、国家間の関係が緊密化すればするほど、調整を要する問題が生じてくることは当然なことであります。したがいまして、正当な理由のある批判についてはすなおに耳を傾け、改めるべきは改めていかねばなりません。しかしながら、対日感情の背景、理由等は現地の事情をも反映し、それぞれ複雑であり、誤解に基づく面もあり得るので、相手国政府とも相協力し、長期的視野に立って、冷静かつ現実的な態度で忍耐強く対処していくことが必要であることは申すまでもありません。(拍手)

 一月二十四日の本会議における私の発言の真意は、間々申し上げておりますとおり、経済協力には心と心との触れ合いによる現地との精神的理解が重要であることを強調したものであります。なお、経済協力の基本理念について申し上げますが、資源に乏しく、狭い国土に一億をこす人口をかかえるわが国は、四方の海を越えて資源を輸入し、それに付加価値を加え、製品として輸出をするという貿易形態をとっておることは、申すまでもない事実であります。

 海洋国家である日本は、世界の平和なくして生きていけないし、わが国経済は自由な国際経済環境のもとでのみ発展することが可能なのであります。そのため、わが国は、永続的な世界平和の創造と新しい世界秩序の再建のために、これまでに蓄積をした経済力、技術力などを活用、投入して積極的な国際協力を推進し、開発途上国の経済発展と国民福祉の向上のための自助努力に協力をしていかねばなりません。政府としては、このような基本的認識のもとに、従来の経済協力の一そうの効率化をはかるため、国際協力事業団を設立いたすことにいたしたわけであります。

 経済協力担当大臣を新設する理由と事業団との関係等について御発言がございましたが、最近における内外情勢の推移に迅速かつ適切に対処するためには、国政の機動的な運営を強化する必要があります。特に、経済協力につきましては、開発途上国との間に、平和と繁栄を分かち合おうという基本方針のもとに、それぞれの国の実情に即した施策を一そう積極的に推進していく考えであります。

 現在、経済協力の執行体制は関係各省にまたがっており、その機動的、能率的な運営を確保する上で、その推進に専念できる国務大臣を新たに設ける必要があると考えておるのでございます。相手国と緊密な連絡をとり、意思の疎通をはかり、真の対外協力の実をあげることには、専念できる国務大臣が必要であるということは、何人も理解し得るところでございます。先般、石油問題でアラブに使いするときに、ときには三木副総理、ときには中曽根通産大臣、ときには小坂特使というような状態でございますが、これは国会の都合もございますし、いろいろな任務を持っておりますから、これらの問題に専念できないという事情もあります。このような一事をもってしても、海外協力担当大臣が必要であるということは理の当然であります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第25号(1974/04/11、33期)に於ける田中角榮発言は次の通り。
 柴田健治君にお答えをいたします。まず第一は、世界的食糧需給の動向についての御発言でございますが、一昨年秋ごろから穀物等の国際需給が逼迫しましたが、昨年は主要生産国の生産の回復が進み、異常な需給の逼迫事態は緩和の方向に向かっております。しかしながら、今回の需給逼迫で払底した各国の在庫回復の必要や、一部の開発途上国における食糧輸入需要が続いておることなどから、当面、供給状態が数年前のような過剰基調に戻ることはなく、国際価格は不安定に推移するものと予想せられるのであります。

 次は、領海の問題等についての御発言でございますが、第三次国連海洋法会議を前にして、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの発展途上国を中心として、最大限二百海里に及ぶ排他的管理権を沿岸国に認めよとの主張が強く行なわれていることは、御承知のとおりでございます。このような主張が国際的に制度化される場合には、わが国漁業に及ぼす影響はきわめて重大であります。わが国としましては、従来から、沿岸国による排他的な管轄権は認められないとの立場で対処してきておるわけであります。情勢としましてはきびしいものがございますが、政府としましては、あらゆる場を通じて、わが国漁業の長期的利益を確保するため最大限の努力を払うとともに、関係国との相互理解及び共存共栄の立場のもとに、わが国漁場の確保をはかってまいる所存でございます。

 次は、日本農業の位置づけについての御質問でございますが、農業は、土地、水等の国土資源を活用しつつ、国民生活の基礎物資である食糧を供給するという重要な使命を果たしておるわけであります。また、農業及び農村は、食糧供給という役割りだけではなく、国土と自然環境を保全し、健全な地域社会を維持する上で重要な役割りを果たしておるのであります。また、国民食糧の安定的供給をはかるためには、国土資源を有効に活用して、国内生産の可能なものはできるだけ国内でまかなうことが重要であると考えます。このような観点に立って、主要農産物である米、野菜、果実、牛乳、乳製品、肉類、鶏卵等については、完全自給ないし八割以上の自給率を確保することとなしておるわけであります。このため、農業生産基盤の整備、麦、大豆、飼料作物の生産奨励措置、未利用地における大規模な畜産基地の建設などの施策を総合的に実施をしておるわけであります。

 次は、農業の後継者対策についてでございますが、近年における農業労働力の減少傾向とその老齢化傾向にかんがみ、わが国農業の供給力の維持、強化をはかるためには、農業生産の中核的にない手の確保、育成をはかることがきわめて重要であることは、御指摘のとおりでございます。このため、農業を魅力ある産業として確立するとともに、住みよい農村環境の整備をはかり、あわせて、近代的農業を担当し得る農業後継者を育成するための諸施策を一そう充実強化してまいりたいと考えます。

 次は、米の備蓄に対してでございますが、古米持ち越しにつきましては、その数量をふやすと、その分だけ消費者に古米の消費を引き受けてもらわなければならなくなるわけであります。したがって、その数量にはおのずと限界があるのでございます。従来、米穀年度末の古米持ち越しにつきましては、百万トン程度が適当と考えておりましたが、本年はさらにゆとりを持たせることとなし、明年十月末の古米持ち越しは約百五十万トンにふやすよう計画をいたしておるところであります。また、このほかに、例年十月末には二百五十万トン以上の新米が買い入れ済みとなりますから、米の需給には全く不安はないわけであります。農業関係法制の抜本的再検討と農業基本法の改正に対しての御言及でございますが、政府としましては、今後とも、農業及びそれをめぐる諸情勢の推移を見きわめつつ、農業に関する施策の展開に応じ、関係法令の一そうの整備をはかってまいる所存でございます。農業基本法に定められています農政の基本的目標及びその目標を達成するための施策の基本は、現在の情勢においても不変であると考えておるのであります。したがいまして、今後とも、農業基本法の差し示す基本的方向に沿いつつ、内外の諸情勢に対応しながら農政を展開していく所存であり、農業基本法を改正することは考えておりません。また、農業基本法の示す方向に従って、政府は、農村総合整備モデル事業、農村地域への工業導入、農業者年金制度の改善等の施策を進め、農業者及び農村の福祉の向上につとめてまいりたいと考えております。

 最後に、法律を守れということでございますが、法律は十分守っておるわけでございます。ゴルフ場におけるヤードというようなものは、これはメートルにしても一向差しつかえないわけでございますが、ヤードやポンドやフィートというのは、国際的にそれぞれ使われておることでございまして、法律をもってヤードをメートルに変えなければならないというたぐいのものではないことは、御承知のとおりでございます。(拍手)
 阿部助哉君にお答えいたします。まず第一は、原子力発電の安全性の確保についてでございますが、原子力発電の開発を進めるにあたりましては、安全性の確保と環境の保全が大前提であることは言うまでもないわけであります。特に、放射能による影響を防止することにつきましては、原子炉の設置の許可に際し、十分な安全審査を行なっておるところであります。原子力発電所の安全対策につきましては、そもそも事故を起こさないで安全に運転すること、そして万一事故が起きても、その影響を最小限に食いとめて、周辺の一般公衆に被害を及ぼさないことを基本方針にいたしておるわけであります。また、日米原子力協定についての御発言でございますが、日米原子力協定は、わが国の原子力基本法の趣旨に沿い、原子力の平和利用の実現を目ざす研究及び開発を行なうための相互協力を目的として締結をせられたものであります。また、わが国の原子力研究開発は、一貫して原子力基本法の趣旨を体して実施しており、基礎研究をはじめ、新型動力炉開発、濃縮ウラン技術開発、原子力船開発等について、従来からも自主開発の推進に格段の努力を傾注いたしておるところでございます。電源開発促進税というものが、地域に対して札束でものを解決するというような御発言でございますが、現在のエネルギー危機に対処するため、電源の開発は刻下の急務であることは、申すまでもないことでございます。電源開発促進税は、原子力、火力発電所等の周辺地域住民の福祉の向上をはかることなどを通じまして、発電所の立地対策を積極的に進めることとなし、その財源に充てるために創設しようとするものでございまして、法案のすみやかな成立を期待いたしておるのでございます。

 
なお、原子力発電所というものに対しては、長期的視野で考えなければならないと考えておりまして、いま世界でどのくらいの発電が行なわれておるかと申し上げますと、一九五四年にソ連で初めて原子力発電が実用化されたわけでございますが、それ以来、世界各国で原子力発電の実用化が急速に進展し、現在世界で運転中のものは、合計百三十二基、四千万キロワットをこえておるわけでございます。さらに、建設計画中のものを加えますと、合計四百六十八基、三億一千五百万キロワットに達しておるわけでございます。わが国の原子力発電も、このような世界各国における最近の原子力発電の開発の趨勢に合致するものであり、今後とも、安全の確保に一そうの留意を払いながら、積極的にその推進をはかってまいらなければならないことを御理解いただきたいと思うのであります。残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 小沢貞孝君にお答えをいたします。まず第一は、省エネルギー産業構造への転換構想等についての御発言でございますが、経済社会基本計画におきましては、エネルギー資源の有限性を強く認識して、その安定供給の確保、エネルギーの多様化あるいは電源開発の円滑化等を進めることにいたしておるわけでございます。さらに、資源エネルギー多消費型産業への依存度をできる限り減少させますとともに、他方、いわゆる知識集約産業へのウエートを高めていくことによりまして、全体として省資源、省エネルギー型の産業構造へ転換していく必要性を強調いたしておるわけでございます。

 政府としましては、省資源、省エネルギー型産業構造のより具体的な姿、及びその実現のための総合的政策体系の方向などにつきましては、現在鋭意検討を進めておるわけでございます。これらの問題を、経済社会基本計画のフォローアップ作業を通じまして明らかにいたしてまいりたい、こう考えるわけでございます。

 
原子力の安全性確保についての御言及でございますが、原子力発電の推進にあたって安全の確保が必要なことは、申すまでもないことでございます。政府といたしましては、安全審査の実施、原子炉等規制法の施行等を厳正に行なうことによりまして、かねてから安全の確保には万全を期しておるわけでございます。しかし、先ほども科学技術庁長官から述べましたとおり、安全性確保に対しては、政府も従来から努力をいたしておりますし、また、世界的な趨勢としましても、原子力発電所は不可避の状態になっておるわけでございます。御承知のとおり、フランスは、新規発電所は全部原子力発電所に切りかえようという計画さえ進めておるわけでございますし、私が訪ソいたしましたときには、旧樺太地区に四百万キロないし五百万キロの原子力発電所を設置して、電力を海底送電線によって日本に供給してもけっこうだとさえ言われておるのでございます。

 世界的の趨勢はそのようになっておるわけでございますが、しかし、新しいエネルギー開発でございますから、安全性に対しては事情を十分国民にPRをし、国民の理解を得てこのような新しい発電所が進められなければならないということは、申すまでもありません。そういう意味で、従来政府がとってきた安全性のPRに対して遺憾がなかったかということについては、まあ万全でなかったともいい得るわけでございますので、安全性に関する広報活動等については、政府も今後万全の体制で努力してまいりたい、こう考えるわけでございます。

 なお、原子力村の建設につきましての御発言がございましたが、確かに、北欧では、原子力発電所の電力を使い、また多量に排出する温排水を使って、特定地域にニュータウンを建設し、冷暖房を供給しておるという理想的なものがございます。現在、柏崎の原子力発電所等につきましても、非常に水分の多い、質の悪い雪がたくさん降るところでございますので、原子力発電所建設の過程においてニュータウンをつくり、理想的な生活環境を確保したいという計画もあるように聞いておるわけでございます。北海道などで原子力発電所がつくられるとすれば、これはいま御指摘になられたような、全く理想的なニュータウンというものを計画できるわけでございますので、これらの問題に対しても、広範な立場で検討してまいりたいと考えます。


 
最後に、ストによる輸送難で野菜類の価格に深刻な影響があるが、これに対してどう対処するかという御発言でございますが、ストによる交通事情の悪化に対しましては、国鉄からトラックへの振りかえ輸送、それからタマネギ、バレイショなど貯蔵性のある野菜の繰り上げ輸送、野菜価格安定基金が輸入の上、保管をいたしております台湾産のタマネギの緊急放出等の措置を実施しておるわけでございますが、私も、テレビや新聞その他で報道せられておるように、一部において生鮮食料品の急騰等がございますので、関係各省庁を督励しまして、ストによって生鮮食料品等国民生活に影響をできるだけ及ぼさないよう、全力を傾けてまいりたいと存じます。なお、民間の自動車を動員してなどという御提案もございましたが、そういう必要があれば、遺憾なき処置をとってまいりたい、こう考えます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第30号(1974/05/14、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 井上泉君にお答えいたします。第一は、農業危機と農業基本法についての御発言でございますが、世界的な食糧需給の基調から見ましても、わが国の食糧自給率の維持向上をはかることは重要な課題でございます。農業基本法に定められております農政の目標、及びその目標を達成するための施策の基本が、現在の情勢に適合しなくなったことは考えておらないのであります。したがいまして、今後とも、内外の諸情勢に対応しながら、国内自給度の維持向上、農業従事者の所得の増大等をはかるため、積極的な農政を展開してまいりたいと考えます。

 次は、食糧の自給率についての御発言でございますが、最近における世界的な食糧需給の状況から見ても、国民の基礎的な生活物資である食糧につきましては、その安定的確保をはかっていくととがきわめて重要であり、安易に外国に依存すべきでないと考えておるのであります。この観点に立って、主要な農産物につきましては、できる限り完全自給ないしは八割以上の自給率を確保し得るよう、これに必要な施策を講じてまいりたいと考えます。特に、昭和四十九度年がらは、麦、大豆、飼料作物につきまして特段の生産奨励措置を講ずるとともに、未利用地域における畜産等の大規模な生産基地の建設などを進めてまいりたいと考えておるのでございます。

 また、国土、資源等の制約から海外に依存せざるを得ない農林産物につきましては、その安定的な輸入を確保するため、輸入先の多角化、海外における農林業の開発の促進等につとめてまいりたいと考えます。四十九年産米の買い入れ価格についての御発言でございますが、生産者米価は、従来から、七月ごろに決定するのが通例であります。これを早くすれば、生産者米価決定のために必要なデータが出そろわないという問題もありますので、これらのデータが出そろった上で、米価審議会に諮問の上、適正な生産者米価を決定いたしたいと考えております。

 最後に、国土利用計画等に対して御言及がございましたが、国民福祉の向上を進めなければならぬことは言うをまちません。ところが、現在は、人口も産業も、すべてのものが大都市に集中しておるのが現状でございます。長き将来的展望に立って国民福祉の向上を考えるときに、狭いながらも全国土の高度の利用を考えなければならぬことは言うをまちません。その意味で、現在及び将来展望に立って国土の合理的利用計画を立てたいというのであります。(拍手)
 多田光雄君にお答えいたします。まず、食糧の自給率等についてでございますが、先ほど申し述べましたように、世界的な食糧需給の状況から見ましても、自給率を上げなければならないということは、先刻申し上げたとおりでございます。そのような意味で、米や野菜、果実、牛乳、乳製品、肉類、鶏卵等につきましては、できるだけ完全自給を目標とし、ないしは八割以上の自給率を確保しようと考え、これに必要な施策を講じてまいりたいと考えております。また、特に四十九年度からは、麦や大豆、飼料作物等につきましても、特段の生産奨励措置を講じておるわけでございます。なお、未利用地域における畜産等の大規模な生産基地の建設なども進めておるわけでございます。しかし、国土、資源の限られたわが国におきましては、国内自給にはおのずと限度があることは、御承知のとおりでございます。飼料穀物、大豆等の、海外に依存せざるを得ない農産物につきましては、安定的な輸入を確保するために、輸入先の多角化、海外における農林業の開発の促進等につとめてまいらなければならぬことは、論をまたないところでございます。なお、バッツ・アメリカ農務長官との会談では、アメリカは世界の食糧供給者としての立場と責任を認識し、その責任遂行のため努力すべきであると申したのに対し、米国側としましては、今後信頼し得る供給者となるよう努力する考えであることを表明したわけでございます。

 三十万ヘクタール転用構想でございますが、農地転用の問題につきましては、公共用地及び工場、住宅用地等の需要に応じ、必要な用地を円滑に供給し、地価の上昇を抑制するという観点から、三十万ヘクタールを一応の目標として、一定の期間をかけて農地の転用を促進するということにいたしておるわけでございます。なお、農地にできるようなところは二百万ヘクタール近くあるのでございますから、農地を他に転用するだけではなく、農用地を拡大するということもあわせて行なうわけでありますから、その程度のことは御理解いただきたい。その実施については、優良農地の確保に十分配慮を払ってまいることは言うまでもありません。

 なお、宅地新法を撤回せよということでございますが、政府は今国会に大都市地域における住宅地等の供給の促進に関する特別措置法案を提出いたしております。この法律案は、三大都市圏において必要な住宅地の供給を促進するため、農林漁業との調整に十分配慮しながら、農地所有者等の関係権利者の意向に沿った事業の実施をはかることにいたしておるわけでございます。したがって、この法律案を撤回する考えはありません。

 出かせぎ農業をどうするかということでございますが、出かせぎ農業をなくするためにも、大都市集中の政策を改めて、流れを変えて、国土の総合的利用をしなければならない、こう間々申し上げておるわけでございます。(拍手)そのような意味で、大都市におきましては、大都市で住宅を提供せよ、地価を安定させよ、そう言って、しかし、立体化をしようとすれば、立体化には反対である。そういうことを言いながら、では全国的な土地の総合利用を行なおうとすれば、それは反対である。そういうことは、地域地域で別々に御発言になると、なかなか理由があるようには思われますが、同時に同時刻でお話しになると、これはできない相談でございます。(拍手)これは国土を総合的に利用し、農工商三位一体のバランスのとれた状態をつくる以外にないじゃありませんか。そういうことで、政府は具体的施策を提案し、御審議をいただいておるのであります。(拍手)
 林孝矩君にお答えいたします。今後の農業政策についてまず申し上げますが、政府は、これまで、均衡のとれた経済発展と国民生活の向上をはかるため、最大の努力を傾けてまいったわけであります。特に農業につきましては、食糧の安定的供給の確保という基本的役割りに加え、健全な地域社会としての農村が国民経済全体の中で健全に発達し得るよう、生産性の高い農業の育成と高福祉農村の建設を基本といたしまして、各般の施策を積極的に講じてまいりたいと考えております。

 次は、農業基本法についてでございますが、農業基本法は、農業生産について、生産の選択的拡大、生産性の向上及び総生産の増大を施策の基本といたしておるわけでございます。これは、国民食糧の安定確保をはかるため、国内で生産可能なものは、生産性を高めながら極力国内でまかなうべきであるという考え方を基本にいたしておるわけでございます。政府は、このような線に沿いまして、今後とも国内自給度の維持向上をはかるための施策を推進してまいりたいと考えます。

 第三は、三十万ヘクタールの農地転用についてでございますが、先ほどもお答えをいたしましたとおり、農地転用の問題については、公共用地及び工場、宅地用地等の需要に応じまして、必要な用地を円滑に供給し、地価の上昇を抑制するという観点から、三十万ヘクタールを一応の目標として、一定の期間をかけて農地の転用を促進することにいたしておるわけでございます。その実施につきましては、優良農用地の確保に十分配慮を払ってまいることは言うまでもございませんし、また、先ほど申し上げましたとおり、二百万ヘクタールに近い、農用地に供することのできる土地もあるわけでございますので、これらの問題に対しても十分対処してまいりたいと考えるわけでございます。

 次は、生産者米価についてでございますが、従来から、七月ごろ決定するのが通例でございます。先ほども述べましたとおり、これは早くしようとすれば、生産者米価決定のために必要なデータがそろわないという問題があるのでございまして、これらのデータが出そろった上で、米価審議会に諮問をして適正に決定をいたしたいと、こう考えておるわけでございます。

 最後は、経済協力等についてでございますが、わが国は、相手国の立場を十分尊重しつつ、資源収奪ではなく、互恵の原則に立ちつつ、開発途上国の経済社会の発展のため協力を行なおうとするものでございます。当面、開発途上国にとって重要なのは、輸出指向型の一次産品開発の振興でございますが、同時に、その加工化や関連産業の育成、さらには工業化についても協力していかなければならないと考えるわけでございます。残余の質問については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第31号(1974/05/17、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 佐藤敬治君にお答えいたします。まず第一は、三割自治を解消せよという問題でございますが、生活環境施設の整備、福祉行政の充実等についての住民の要請はきわめて強いものがありまして、地方公共団体の財政需要は著しく増大をしておるのであります。政府としては、従来から、地方公共団体の自主財源の充実強化のための努力を重ねてきておるところでございまして、今後とも努力を続けてまいりたいと存じます。

 次は、公害対策経費についての御発言でございますが、国の公害対策予算の充実には格段の努力を傾けておることは、御承知のとおりでございます。その規模は、四十六年度千十五億円から、四十九年度には三千六十二億円と、約三倍の大幅な増加を示しております。今後とも国の経費の拡充に努力を重ねてまいることは、申すまでもないことであります。失業保険制度の改革により、農村の過疎化がさらに促進されるのではないかという御発言でございますが、今国会に提案をしております雇用保険法案による特例一時金制度は、出かせぎ労働者の実態に、より一そう即応したものでありまして、その生活に激変を与えるようなものでないことは、申すまでもありません。

 次は、超高層ビルの建設について、これを規制してはどうかということでございますが、超高層ビルというのは、世界の大都市における一つの趨勢でございます。一定の高さに押えておったパリでも、特定地域をきめて超高層を許可せざるを得ないということを申し上げれば、おわかりのとおりでございます。建築物の容積を一定に押えた上で高層化すれば、オープンスペースが確保でき得ますので、市街地環境を整備する上で望ましいことであり、ある意味では真にやむを得ない問題でございます。最近建設が進んでおります超高層ビルは、大都市における土地利用を積極的にはかるものであります。ただ、防災上の問題につきましては、建築基準法、消防法等の法令によるほか、行政指導によりまして安全上の措置を講じさせることが必要であることは、言うまでもありません。

 ごみ処理、水不足、交通混雑等、大都市の過密化の問題は、全国土の有効利用によって大都市への人口流入を抑制する以外に解決の道がないことは、私が間々申し上げておるとおりでございます。ただ、御指摘のように、建築基準法や都市計画法によって適法であるとはいいながら、超高層ができれば、車の流れや、ごみや、いろいろな問題が変わってくるわけでございますから、都市機能を完ぺきにするために、区画整理その他が随伴して行なわれることが望ましい、より効果的であるということは、これは事実でございます。そういう意味で、超高層というものは不可避なものであり、また、力学的にも、また災害防除の上からも当然可能な問題でございますので、技術的な問題は別として、自然的に発生する状況の変化に対応できるような環境の整備が随伴して行なわれなければならない。言うなればそれが前提条件でもあるというふうに、法令の整備その他を必要とするということに対しては、私も同感でございます。

 
原子力発電所の安全性及び電力開発に必要な発電税についての御発言でございますが、これは、時代の趨勢というよりも、全人類的な問題でございます。しかも、原子力発電所は、現に二億キロワット以上も全世界で発電せられておるのであります。特に、御承知のとおり、フランスは、これからの発電のすべてを原子力発電によろうという決定さえしておるのでございます。特に、この間ソ連を訪問しましたときに、日本では原子力発電所がたいへんめんどうなようであるということで、そのために濃縮ウランの輸入等ができないというならば、南樺太に四百万キロないし五百万キロの原子力発電所をつくって電気を日本に供給するから、合意を得たいとさえいわれておるのでございますから、原子力発電所というものがもう全世界的な問題であり、まきからろうそくに、ろうそくから電気に、電気はやがて原子力にと移っているということは、これはもう事実でございますので、そういう大前提で考えていただきたい。

 
国民生活に不可欠なエネルギーの長期的、安定的確保のため、原子力発電を強力に推進することは、国家的課題であります。政府としては、原子炉等規制法の施行を厳正に行なうことによりまして、かねてから安全の確保には万全を期しておるところであり、原子力発電の安全性については十分に自信を持っております。今後、さらに安全性を向上させるため、原子力施設の安全研究の強化をはじめ、安全審査、検査体制の拡充になお一そうの努力を払ってまいりたいと考えます。なお、原子力施設の安全性については、これを十分周辺地域住民に周知徹底し、地元住民の協力を得て、その開発を積極的に推進してまいりたいと考えております。なお、発電税につきましては、地方自治体のほとんどがこれを請願し、要望し、熱望しておるということを御理解の上御協力ください。そして、早期に成立のために御尽力賜わらんことを切に願って、答弁といたします。残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 中山利生君にお答えいたします。地方財源の強化についての御発言でございますが、豊かな国民生活と活力ある福祉社会の実現をはかっていくためには、国と地方公共団体とが一体となって諸般の施策を強力に推進していくごとが肝要であることは、言うまでもありません。中でも、住民の日常生活に直結した行政のにない手である地方公共団体の果たすべき役割りは、ますます重要となっておるのであります。地方公共団体が地域の実情に応じて住民福祉の向上をはかっていくことができるよう、地方税源の充実、地方交付税の安定確保等を通じまして、地方財源の充実強化をはかってまいりたいと考えております。残余の問題につきましては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第33号(1974/05/23、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 佐野進君にお答えいたします。まず第一は、物価動向等についてでございますが、政府は、物価の抑制を政策の最優先課題と考え、財政金融政策を中心とする総需要抑制策、生活関連物資等の価格抑制のための緊急対策等、あらゆる政策努力を集中してまいったわけでございます。最近の経済情勢を見ますと、総需要抑制策の効果が浸透し、需給は緩和に向かっておるのであります。輸入物価動向、今春闘の賃上げによるコスト上昇圧力等、楽観を許さない面もありますものの、卸売り物価などには落ちついた動きも見られておるわけであります。今後とも、政府といたしましては、引き続き総需要抑制策を堅持しつつ、その範囲内で、中小企業や将来の供給力確保のための投資等への選別的配慮を加えてまいる考えであります。なお、今回の電気料金改定の製品価格に及ぼす影響につきましては、一般的に見た産業の生産額に占める電力コストの割合は一%程度でございまして、全体として大きなコストアップ要因ではないと思うわけでございます。しかしながら、産業によっては影響が大きくあらわれることも考えられますし、このほかにも、人件費等、種々のコストアップ要因もございますので、今後の価格動向につきましては十分監視をしてまいりたいと考えておるのであります。

 次は、当面の中小企業対策についての御発言でございますが、現下の中小企業をめぐる経済環境は著しくきびしくなっております。これに対処するために、政府としては、これまでにも、政府関係中小企業金融三機関の貸し出しワクについて、四十八年度末におきまして追加五百億円を行なったことは、御承知のとおりでございます。また、最近におきましても、当面の措置といたしまして、第一・四半期の当初ワク五千五百億円を千五百億円だけ増額いたしたのであります。また、民間金融機関に対しましても、従来から、中小企業金融の円滑化に特段の配慮を払うよう、強く要請してきたところでございます。今後とも、中小企業者に不当なしわ寄せが及ぶことのないよう、鋭意各般の施策を講じてまいる所存であります。

 次は、中小企業関係予算を増額せよとの趣旨の御発言でございますが、中小企業施策につきましては、政府の最重点施策の一つとして、従来から積極的にその拡充強化をはかっておるのでございます。四十九年度一般会計予算においては、総需要抑制等の観点から予算全体を緊縮した中にあって、中小企業対策費は二七・一%増額いたしてあるわけでございます。また、中小企業関係一般会計予算において、中小企業振興事業団に対する出資をはじめとする融資のための予算措置の比重が重いことは、融資という資金の性格上、金額がかさむという点では当然の面もあると考えます。しかし、各種補助金、事業費、調査費等につきましても、小規模事業対策推進費の四四%増をはじめとして、その拡充に格段の配慮を加えておるのであります。今後とも、融資関係であるとそれ以外であるとを問わず、中小企業予算の質量両面における拡充強化に十分配慮してまいりたいと考えます。

 次は、独禁法改正についてでございますが、現行独禁法のワク内では、必ずしも今日の経済社会の情勢に対処し得ない面もあると考えられます。したがって、御指摘の不当な事業能力の格差の排除等の点を含め、公正取引委員会におきまして、現在、独禁法改正を検討いたしておるのでございます。政府としましては、公取委の検討結果を待って対処してまいりたいと考えます。

 最後は、中小企業省設置の問題でございますが、御指摘のとおり、中小企業省設置の問題につきましては、過去においてもその設置の要求が院の内外において強く存在いたしておりましたことは事実でございます。昨年来、中小企業省構想も含めまして、中小企業行政機構の拡充強化策についく予算編成の過程において鋭意検討を進めてまいったことは事実でございます。できるならば中小企業省の設置に踏み切りたいということで検討を進めてきたわけでございますが、各省にわたる中小企業対策を一本化した中小企業省の設置につきましては、各種行政の分断を招くという一つの考え方がございまして、また他方、現在の中小企業行政において、まず現在の法制の中で、現在の体系の中で機構の拡充強化をはかるべきであるというような議論もございまして、今般の中小企業庁設置法の改正案を国会に提案をいたしまして、まず成立さしていただいたわけでございます。もとより、行政機構のあり方につきましては、常に経済社会の実情の推移に応じまして行政需要にこたえ、見直しを行ない、所要の改正をはかっていくべきであることは当然でございます。したがって、今後の中小企業行政機構のあり方につきましては、その重要性にもかんがみ、今般の機構改正の成果も見ながら、重要な課題として真剣に検討してまいりたい、こう考えるわけでございます。

 中小企業省の問題につきましては、与野党の中に強い要求があるにもかかわらず、なぜ今日まで実現しなかったか、四十九年度予算編成の過程において政府も各省間で積極的に検討を進めながら、実現しなかったかということは、大企業と中小企業、零細企業を分けるというような観念的な問題だけで中小企業省の設置に踏み切った場合、真に中小企業省設置を要求しておるような実効があがるかどうかというような問題が存在いたすわけでございます。しかし、非常に重要な問題でございますし、中小零細企業というこのような状態は、世界各国に例を見ない特殊な状態でもございますので、この問題につきましては、引き続いて院の内外の意見を十分聞きまして、真剣に検討を進めてまいりたいということで御了解をいただきたいと思います。残余の問題に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 宮田早苗君にお答えいたします。第一は、都市銀行の中小企業に対する融資比率を五〇%まで高めるために、銀行法を改正したらどうかという御所論でございますが、わが国経済において中小企業の果たす役割りはきわめて重要であることは、申すまでもありません。都市銀行といたしましても、中小企業に対する貸し出しには格段の努力をしており、その総貸し出しに占めるシェアは、最近では三三%に達しておるのでございます。また、現下の金融引き締め下におきましても、健全な中小企業が不当なしわ寄せをこうむることのないよう、中小企業のための緊急融資ワクを設定いたしておりますことも、御承知のとおりでございます。このような状況でありますし、また中小企業専門の金融機関もございます。すなわち、相互銀行とか信用金庫とか信用組合というような民間金融機関もございますし、なお、政府の中小企業に対する機関も存在するわけでございます。そういうような状態から考えますと、都市銀行のみにつきまして、中小企業に対する融資比率を法定するという問題、いつも議論があることは承知をいたしておりますが、このような現状でございますので、この御提案には、遺憾ながら、にわかに賛成できないということで御了承いただきたい、こう思います。

 第二は、大企業の中小企業分野への進出に対処するため、中小企業の事業活動の確保を法制化してはどうかという御発言でございますが、大企業や大商社等が特定分野に進出することによりまして、中小企業者の事業活動に支障を来たすようなことがあれば問題であります。ただ、この問題は、中小企業の存立にかかわる重要事項でありますとともに、他方関連消費者への影響なども十分考慮に入れなければならない問題でございます。基本的には、現行法の運用と適切な行政指導によりまして、大企業と中小企業との調和のとれた発展をはかってまいりたいと考えておるわけでございます。なお、中小企業、なかんずく小規模企業従事者の年金を創設してはどうかという御提案でございますが、農業者年金制度と類似の小規模企業者年金制度を創設することにつきましては、現行の各種制度との調整のほか、事務の処理方法、年金として成立するかどうか等、種々な問題があることは、御承知のとおりでございます。したがいまして、現在のところ、小規模企業の従業員等に関しては、厚生年金または国民年金が適用されておりますので、これら年金の充実をはかっていくことが現実的な対応策であろう、こう考えておるわけでございます。残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第1号(1973/12/01、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 第七十二回国会が開かれるにあたり、当面緊急を要する諸問題について所信の一端を申し述べます。(拍手) 中東戦争を契機とする石油の生産と供給の制限は、世界各国に対して大きな影響を与えております。なかんずく、エネルギーの大半を海外の石油に依存しているわが国産業経済に与える影響は大きく、国民生活の安定向上を妨げることのないよう緊急な施策を必要とする事態を迎えておるのであります。政府は、この事態に対応するため、十一月十六日、内閣に緊急石油対策推進本部を設置し、石油緊急措置を取りまとめ、率先して石油、電力等の消費節約につとめるとともに、産業に対してもその節減を要請し、強力な行政指導を実施しております。また、広く一般国民に対しましても、不要不急のエネルギー消費に対する自粛を求めておるのであります。

 石油消費の抑制により、諸製品が減産を余儀なくされ、その結果、供給不足を招き、物価は必然的に上昇するという推論が一部でなされております。そして、それがまた物価値上がりの誘因ともなっております。しかし、生活必需品については、生産段階にも、流通経路にも相当量の在庫が存在しており、一部商品については、すでに在庫の放出を行なってまいりました。また、総需要の抑制をはかる一方、国民生活の安定に必要な部門については電力等のエネルギーを優先的に供給いたしますので、買占め、売惜しみのごとき風潮を生まない限り、需給の安定は十分確保できると考えております。わが国は現在、国民総生産の約一〇%を輸出しており、供給力にも余裕があります。しかも、石油事情について長期的見通しを立て得るまでの暫定期間について、生活必需品の緊急輸入等を行なうのに必要な外貨を十分保有しておるのであります。

 しかしながら、たとえどのような事態が生じても、国民経済の混乱を未然に防止し、必要物資の安定的供給を確保するためには、最小限の法的措置が必要であります。このため、物資の需給、価格の調整等に関する緊急措置を規定した国民生活安定緊急措置法案を今国会に提出いたします。また、事態の推移に応じて、石油の消費節減及び配分の適正化を機動的かつ効果的に実施できるよう、緊急時における指導、規制措置を定めた石油需給適正化法案も今国会に提出いたします。これらの運用にあたっては、特に分配や負担の公正を期するとともに、異常な価格の上昇、買いだめ、売惜しみ等による不当利得を得る者が生じないよう万全を期してまいりたいと考えます。

 世界のすべての国にとって、有限な資源を福祉の向上と繁栄のためにいかに有効に開発し、利用するかは、次第に深刻な問題となってきております。資源を海外に大きく依存しておるわが国の実情にかんがみ、私は、かねてからその安定的供給の確保と供給先の多元化の必要性を痛感し、これまでも資源保有諸国からの供給確保に努力を重ねてまいりました。私は、内閣を組織して以来、欧米、ソ連各国首脳との会談を通じて、資源の共同開発、安定供給について積極的に話し合いを行なってまいりました。資源問題は、わが国外交の重要な一つの要素であります。外交は、もとよりわが国益に立脚すべきものでありますが、同時に、関係国の立場を十分理解する互恵の精神と世界の平和と繁栄に貢献する精神に基づいて行なわなければなりません。かかる精神を基調として先般豪州首脳と資源開発につき会談をいたしました。また、来春早々の東南アジア諸国訪問にあたっても、これら諸国との長期にわたる友好親善を深め、各国の国づくりに貢献しつつ、資源の共同開発や備蓄を行なうことなどについても、各国首脳と会談し相互の理解を深めたいと考えておるのであります。(拍手)

 中東問題に関して、政府は十一月二十二日にその態度を明らかにいたしましたが、これは、中東の恒久的平和の確保が世界の平和と繁栄にとり重要であるとの基本認識に立って、この平和の実現に寄与しようとの意図に出たものであります。また、中東諸国との関係を一そう緊密化するため、近く政府の特使を派遣する等、着実な外交努力の積み重ねをはかってまいります。

 物価の安定は、当面する最重要課題であります。比較的安定的に推移してきた卸売り物価は昨年秋以降高騰し、また、消費者物価も本年初めから上昇を続けております。これは、第一に、ドル不安に端を発した国際物価の値上がり、輸入原材料価格の高騰に加え、ここ二、三年来の世界的な不作により農産物の価格が高騰したこと、第二に、外貨準備の急増に伴う外国為替資金特別会計の大幅払い超に加え、国際収支の不均衡是正のため、輸出から内需への転換をはかる観点から金融緩和策がとられ、これらの結果として企業に過剰流動性が生じたこと、第三に、本年度五十兆円をこえる賃金給与所得によって消費購買力が充実をし、個人消費が拡大したことなどの要因が複合して生じたものであります。その上、今次の原油の供給制限と輸入価格の上昇が、物価問題の解決を一そう困難なものにしようとしております。政府は、これらの要因を総合的に把握、分析し、有効適切な物価対策に総力を結集いたします。

 物価騰貴を抑制するためには、総需要の抑制をはかることが基本であります。これまで累次にわたる物価安定対策を講じ、財政執行の繰り延べ、金融引き締めの強化等を行なうとともに、民間設備投資及び大規模な民間建築の抑制、消費者信用の調整等の措置を実施してまいりました。これらの措置は、その効果が末端まで浸透し、物価動向に好影響を与えるまで堅持することはもとより、石油情勢の進展など今後の事態の推移に応じて、さらに強化する考えであります。来年度予算の編成にあたっても、景気や物価の動向に十分配慮し、慎重に対処してまいります。また、個人貯蓄の増強をはかるため、利子非課税制度の拡大を含む貯蓄優遇策を実施する考えであります。

 総需要の抑制と並んで、個別物資の需給関係の調整もきわめて重要であります。政府は、需給逼迫の著しい建設資材、品薄となった生活必需物資について、関係業界に緊急増産や出荷指導を実施するなど機動的な調整措置を講じております。また、生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律に基づき、灯油、ガソリン、紙等国民生活に関係の深い物資を特定物資として指定し、投機的取引の防止につとめておりますが、この際、同法を改正し、特定物資の範囲の拡大、売り渡し命令の創設等規制措置の強化をはかる考えであります。

 物価騰貴の最大の弊害は、所得及び資産の不公平な分配をもたらすことであります。政府は、先般、厚生年金、国民年金等の給付水準の実質価値を維持するため、物価スライド制を導入するとともに、物価動向等を勘案して生活保護の基準及び社会福祉施設に入所している老人、児童等の生活費の引き上げなどの措置を講じたのであります。今後とも、経済的に弱い立場にある人々のために社会保障給付の改善などきめこまかい施策を講じてまいります。

 土地問題の解決も緊急の課題であります。政府は、すでに法人の土地譲渡益に対する課税の強化、特別土地保有税の新設、三大都市圏の市街化区域内農地の宅地並み課税の実施等を行なうとともに、土地取得に関する金融の抑制、都市緑地保全法の制定等による土地利用規制の強化など土地問題の解決に鋭意取り組んでおります。しかしながら、現下の地価上昇の原因は基本的には宅地需給の不均衡にあり、供給の増大なしには地価の抑制は不可能なのであります。将来における国土利用の全体的な展望のもとに全国的に土地利用計画を確立し、これに即して公共優先の立場から土地の所有、利用の両面にわたって規制、誘導を強化し、投機と乱開発を排除しつつ、国土の総合的な開発、利用を進めるとき、宅地の確保と地価抑制は可能となるのであります。国土総合開発法案は、このような観点から提案したものであり、地価凍結を含む土地対策の基本法的性格を有するものであります。 政府は、人事院勧告に基づく公務員給与の改善、生産者米価の引き上げに伴う食糧管理特別会計繰り入れ等、当面財政措置を必要とする諸案件につき、所要の補正予算及び法律案を今国会に提出いたします。

 わが国は、これまで、豊富で安価な石油エネルギーを使えるという利点を最大限に生かして、生産の増強と雇用の拡大を達成してきました。しかし、今日の事態は、資源の制約の中で新しい豊かさを追求するといういまだかつて経験したことのない試練に当面しておるのであります。これは、経済的にも社会的にも、わが国にとって一つの歴史的転換期ともいえるのであります。この際、創造力と適応力に富む国民の総力を結集して、産業活動においては省資源、省エネルギーへの構造的対応をなし遂げ、国民生活においては生活感覚を転換させて、資源の浪費を排し、節約は美徳の価値観を定着させていかなければなりません。さらに、原子力の開発、水力発電の見直し、石炭その他国内資源の活用、太陽エネルギー、水素エネルギー等の無公害の新エネルギーの開発を推進し、エネルギー源の多様化につとめることが必要であり、かつ、それをなし遂げ得ると信じます。

 政府は、全力をあげて国民経済の混乱を未然に防ぎ、国民生活の安定を確保するため、内政、外交のあらゆる面にわたり、冷静な判断と敏速果断な行動をもって対応し、この転換期を乗り切る決意であります。しかし、いかなる政策も、国民の理解と支持がなければその効果をあげることはできません。(「だれが信用するか」と呼び、その他発言する者あり)国民各位も、当面する事態を冷静に受けとめ、高次の社会連帯感のもとに一人一人が慎重に対処し、福祉社会の実現という共通の目標に向かって協力されるよう期待してやみません。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第2号(1973/12/03、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 勝間田君にお答えをいたします。第一は、物価騰貴の原因とその責任等についてでございます。演説でも申し上げましたように、その要因の第一は、海外における物価高騰の影響、特に世界的な不作による農産物の価格高騰でございます。第二は、外為会計の大幅払い超に加え、輸出から内需への転換をはかるための金融緩和策がとられた結果、企業に過剰流動性が生じ、急速な国内需要の拡大につながったことであります。第三に、賃金、給与の所得の上昇によりまして、先ほども御指摘がございましたとおり、個人消費が拡大をしたことなどの要因が複合して生じたものであると考えます。その上、今次の原油の供給制限と輸入価格の上昇が物価問題の解決を一そう困難なものにしておると考えるのでございます。

 物価の高騰を抑制するためには、総需要の抑制をはかることが基本であることは御指摘のとおりだと思います。そのため従来からの財政執行の繰り延べ、金融引き締め等の総需要抑制措置をとってきたところでございますが、これらの措置は、その効果が末端まで浸透し、物価動向に好影響を与えるまで堅持することはもとより、石油情勢の進展など今後の事態の推移に応じましてさらに強化する考えでございます。来年度予算の編成にあたりましても、物価動向に十分配慮をし、慎重に対処してまいりたいと考えます。また、個別物資の需給調整につきましても、特に生活必需物資を中心として緊急増産、出荷指導、投機的取引の防止など機動的措置を講じておるところでございます。さらに、今次の石油供給削減等の事態に対処しまして、必要物資の安定的供給を確保するため、今国会に石油需給適正化法案、国民生活安定緊急措置法案等を提出することといたしておるのでございます。政府は物価の安定を当面する最重要課題として、これら各般にわたる物価対策を総力を結集して推進をしてまいりたいと考えます。

 列島改造論についてでございますが、間々申し上げておりますとおり、列島改造論は私の私的な論文のたぐいでございます。その中には、昭和四十五年度を基準といたしまして、一〇%成長すればどうなるか、八・五%成長の場合はどうか、七%の場合はどうか、五%の場合はどうか、これらの数字を試算数字として国民の前に提供し、これらに対して検討を求めたわけでございます。しかし、昭和六十年に人口が一億二千万人に増加することを前提にいたしますれば、三大都市圏への人口集中を放置したままで水、電気が不足し、住宅難や交通混雑が一そうひどくなり、ゴミ処理、流通施設なども能力を突破して、環境水準や社会生活水準が一そう悪化することは明白であります。他方において、中核都市や農山漁村の整備を行なって、人口や産業を定着させるとともに、巨大都市における人口や産業を抑制して、国土の均衡ある発展をはかることが私の構想の骨子となっておるのであります。言うまでもなく、この国土総合開発構想は短時間に実現できるものではなく、昭和六十年展望に立って着実に施策を積み上げていくべきものでありますから、短期的な景気動向に即してその実施のテンポを調整すべきこともまた当然であります。総需要の抑制を緊急課題とする現状においては、大規模プロジェクト等の実施テンポをスローダウンさせることが必要であると考えておるのでございます。

 新幹線や本四架橋についてでございますが、新幹線につきましては、年間三百万台ないし四百万台の割合で車がふえ、道路整備が追いつかないのが現状でございます。国土の八五%が山岳地帯であるというわが国の地形、地勢上の特性から見て、大量高速輸送機関として鉄道の整備が必要なことは言うをまたないところでございます。また、本四架橋につきましては、学識経験者によって十分論議の末、決定されたものでありまして、本州、四国を一体化し、瀬戸内海の汚染を防止する上でも必要な計画だとしておるのでございます。しかし、新幹線も本四架橋も、昭和六十年展望の長期的計画によってその実現をはかるものでございまして、先ほど申し上げましたように、当面経済情勢の推移を見ながら、その建設工程について慎重な配慮を加えてまいることもまた当然だと考えております。(拍手)

 公共料金凍結と安定カルテルの問題について御発言がございましたが、公共料金につきましては、従来から極力抑制的に取り扱ってきたところでございます。現に、国鉄運賃の改定を本年度末とし、米の政府売り渡し価格を本年度内据え置いておるのでございます。しかし、恒常的に公共料金を据え置くということは、結果として財政負担を増大させることになりまして、予算規模を極力圧縮せよという現下の要請に相反することにもなるのでございます。政府としては、鉄道運賃、米麦の売り渡し価格を白紙に戻す考えはございません。

 物価抑制のため、たとえば国が標準的な末端価格を定めた場合に、所管大臣の行政的指示、監督に基づきまして、業者がこれを取引先に守らせるよう協力することは必要かつ有効でございまして、このような協力措置は独禁法に抵触するものだとは考えておりません。

 減税についてでございますが、昭和四十九年度におきまして、所得税について課税最低限の大幅引き上げ、税率の緩和を含む減税を実施したいと希望いたしております。その総額を二兆円、こういっておるわけでございますが、この減税案の来年度における実施の細目等につきましては、来年度の予算規模、国債発行額等を総合的に勘案をして最終的に決定することとなるわけでございます。現在、大蔵省で鋭意検討をしておるところでございます。できるだけ国民の要望にこたえられるようなものにしたいと考えておるのであります。

 また、減税の恩典を受けない階層に対する施策につきましては、従来から社会保障の面で配慮をしてまいりましたが、四十九年度予算におきましても、生活保護、福祉年金その他の給付の改善について十分考慮してまいりたいと考えます。

 防衛費の削減、四次防の計画を中止せよとのことでございますが、間々申し上げておりますとおり、日本の防衛力は最小限のものを目標といたしております。しかし、防衛は国の基本であり、国民の生命、財産を守り抜くため最も重要なものでございます。(拍手)その意味で、四次防を中止する考えはございません。

 また、農地の転用計画についての御発言にお答えをいたしますが、市街地区域内における農地だけでも二十八万八千ヘクタール余存在することは御承知のとおりでございます。地価の上昇を押えるには、まず土地の供給をふやすことが肝要でございます。宅地、公共用地等の需要に応じて必要な用地を円滑に供給するために、三十万ヘクタールを一応の目標として農地の転用を考えておるわけでございます。もちろん、その実施にあたりましては、食糧生産に支障が生ずることのないよう、優良農地を十分確保してまいりたいと考えます。念のため申し添えますと、現在でも一般農地の公共用地その他への転用は、年間おおむね六、七万ヘクタール程度が実施をされておるということでございます。

 次は、石炭対策について申し上げますが、石炭につきましては、現在エネルギー調査会等で勉強をいただいておりますので、この協力を得てまいりたいと考えておるのでございます。石油危機に伴うわが国外交についてでございますが、政府は近く三木副総理をアラブ諸国に派遣をいたしまして、わが国の中東紛争に対する態度を先方に十分説明して、理解を求めるのみならず、アラブ諸国の事情を十分に聴取し、わが国とアラブ諸国との友好協力関係の長期的観点からの確保につとめたいと考えておるのであります。

 韓国の政変についてでございますが、韓国は事実上の内閣改造を行なったと聞いておるのでございます。しかし、この改造によって日韓友好関係は全く不変でございます。日韓閣僚会議につきましては、年内開催の方針に変更はございません。

 最後に、今後の対ソ、対韓、対中国、対ベトナム等に対する外交方針に対しての言及がございましたので、一括して申し上げたいと存じます。先般、訪ソをいたしました際、ブレジネフ書記長との会談におきまして、北方領土四島の返還問題が平和条約締結によって解決さるべき問題であることにつき確認を見ておるのであります。今後とも国民の支持を背景に、ねばり強く対ソ交渉を継続していく所存であります。シベリア開発につきましても、ブレジネフ書記長との間に、互恵平等の原則に基づき推進をすることに基本的合意を見ておりますので、これを契機に当事者間の交渉が一そう進展することを期待しておるのであります。

 現在の朝鮮問題の国連審議、南北話し合い等の進展ぶりにかんがみまして、北朝鮮とは文化、経済等の分野における交流を積み上げていく所存でございます。また、日中間の相互理解は、国交正常化以来、格段の深まりを見ており、貿易協定は近く締結の運びとなっており、航空協定その他の実務協定につきましても、できる限り早く締結にこぎつけるべく、せっかく努力中でございます。 日中両国間の平和友好関係を強固にするための日中平和条約の締結につきましても、中国と十分話し合っていく所存でございます。

 ベトナムにおいては、南ベトナム共和国政府に加え、最近ベトナム民主共和国との外交関係を設定いたしました。したがいまして、わが国は南北両ベトナムの政府に対して、人道上その他経済復興のための援助を行なうことにいたしておるのでございます。
 中ソを含むアジアの平和保障体制の確立は、御趣旨としてはけっこうでございますが、これを大きく前進させるためには、まず中ソ両国がそのいわゆる対立を解消し、話し合いができるような情勢が醸成されることが大きな前提と考えざるを得ないのでございます。残余の問題につきましては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 石田博英君にお答えをいたします。まず第一は、外交の基本的態度についてでございますが、外交の基本的態度につきましては、原則を確立し、具体的に明確にすべきであるとの御指摘はもっともなことでございまして、御提示のあった諸原則は、わが国のこれまでの外交の基本を貫くものとして同感の意を表する次第でございます。すなわち、私が内閣を組織いたしまして以来、中国とは国交を正常化し、ドイツ民主共和国、ベトナム民主共和国とも外交関係を設定し、社会体制を異にする国家との交流を通じ、東西間の緊張緩和に貢献することをわが外交の基本の一つとしておるのでございます。南北問題につきましても、まさに相手国の立場に立ち、その発展と民生の向上に寄与することを前提にしなければならず、右を踏まえまして、近く東南アジアの諸国を訪問し、親善友好の実をあげたいと考えておるのであります。平和憲法をいただき、平和外交の推進を外交の根幹とするわが国といたしましては、武力による領土の獲得及び占領は許容できないところでございます。これこそ歴代自民党政府の戦後一貫した外交の柱なのであります。なお、人事を含めて先進国偏重の外交姿勢についての御指摘でございますが、先進国に対する外交と開発途上国に対する外交とは相互に密接な関連があり、そのいずれかに偏重するということでは、変革する世界の情勢に対応できなくなっております。それぞれに対する外交を一体として適正な措置を講ずるというのがわれわれの外交姿勢であります。このような観点から、開発途上国に対する外交実施体制が必ずしも十分でなかった点は反省し、人員、機構の拡充、通信連絡体制の整備を含め、外交実施体制の充実のため諸施策を強力に推進をしてまいりたいと考えます。

 石油対策及び資源エネルギー対策等についての御発言がございましたが、石油危機の解消のためには、中東問題の早急な解決をはかることが基本的な道だと考えておるのであります。政府としましては、十一月二十二日、中東問題に関するわが国の態度を明確にいたしましたことは御存じのとおりでございます。また、中東諸国との関係を一そう緊密にするため、近く政府の特使として三木副総理を派遣することといたしておるのであります。わが国としましては、今後ともアラブ諸国がわが国の立場を十分理解するよう、一そう努力を払いますとともに、産油国と消費国とが相互に対決することなく、共存共栄の見地に立って、石油の安定的供給及び増産を行ない得るような状況をつくり出すことにつとめることが肝要であると存じておるのであります。このため、わが国としましては、産油国の事情に応じ、工業化をはじめとする経済開発に積極的に協力をしてまいりたいと考えております。

 石油、電力節約のための御発言につきましては、政府は率先して石油、電力の節約を行なうように取り計らっておりますし、特に、一般国民に対しても、不要不急等の問題を含めて石油の節減、電力の節減をお願いをいたしておるのでございます。また、御指摘のとおり、代替資源の開発につきましては、海外及び大陸だなにおける石油資源の開発を強力に推進する一方、原子力発電の積極的な推進、水力発電の見直し、地熱発電、石炭火力発電の開発及び活用等に対して・いま諸般の政策を練っておるのが実情でございます。さらに、核融合、太陽エネルギー、水素エネルギー等、豊富かつ無公害の新エネルギー技術の開発の促進を行なっておるのでございます。

 また、シベリア資源開発についての御発言がございましたが、チュメニの石油開発、ヤクートの天然ガス開発等のプロジェクトにつきまして、日ソ当事者間で交渉が進められております。本件につきましては、日ソの間で、お互いが協力をし合いながら開発をいたそうという基本的な合意がなされておることは御承知のとおりでございます。訪ソの際、ブレジネフ書記長と私との間に、互恵平等の原則に基づき、シベリア開発を推進することにつきまして基本的な合意を見ておりますから、当事者間の交渉は、漸次進展をしておるわけでございます。

 また、日本政府としましては、各プロジェクトについて、両当事者が合意をすれば、必要な信用供与や、また政府間取りきめを付与するというように、前向きに対処する方針でございます。また、大規模なプロジェクトにつきましては、日ソだけではなく、米国その他第三国の参加を否定しないことになっておるわけでございます。これらにつきましては、アメリカとの間に、いま米ソ、日米、日ソというような形で、緊密な連絡がとられておりますので、三国共同の形でこれらのプロジェクトが具体するものと考えておるのであります。
 次は、核融合の問題についての御発言がございましたが、核融合は、将来にわたって最大の可能性を秘めた無限の新エネルギーであることは御指摘のとおりでございます。幸い今日までのわが国の研究成果は、世界水準に比肩し得る段階にありますことは、そのとおりでございます。今後の研究推進に大いに期待すべきものがあると考えておるのであります。政府は、原子力委員会の考え方に沿って、格段の努力を傾注してまいりたいと考えます。

 わが国の産業構造等についての御指摘がございましたが、御指摘のとおり資源、エネルギーは有限なものでございます。無限というべき新エネルギーが開発されない限り、エネルギーや資源は有限なものという前提に立って、多消費型の産業から省資源型の産業に転換をしていかなければならぬことは、間々申し上げておるとおりでございます。先回の国会でも、重化学中心の工業から知識集約型産業、付加価値の高い産業に転換をしなければならない、それが公害を除去し、日本の新しい産業構造の前提でございますと述べてきたわけでございますが、今次石油危機を契機にして、なお一そうその感を深くしておるのでございます。

 それから、物価対策と総需要の抑制についての御発言でございますが、現下の経済情勢にかんがみまして、物価問題の解決こそがすべてに優先して取り上ぐべきであるということは、先ほども申し上げたとおりでございまして、政府はこれに全力を投入してまいりたいと考えております。物価騰貴を抑制するためには、総需要の抑制をはかることが基本であることも、先ほど申し述べたとおりでございますが、そのため、年初以来、各般の施策に加えまして、財政金融政策、民間設備投資等について、一そう抑制的な運営につとめてまいりたいと考えております。昭和六十年展望の大型プロジェクト等につきましても、当面は総需要抑制との関係から大幅なスローダウンを考慮したいと考えております。政府は、これら総需要の抑制をはじめとする有効適切な物価対策の推進によりまして、物価の安定をはかり、勤労者の貯蓄の価値が失われることのないよう、全力を傾注してまいりたいと考えておるのであります。

 次は、減税についてでございますが、減税につきましては、先ほど勝間田君の質問にお答えをしたとおりで御理解をいただきたいと思います。ただ、後段言及されました、減税の恩恵を受けない階層に対する施策につきましては、従来から社会保障の面で配慮してまいりましたが、四十九年度予算においても、生活保護、福祉年金その他の給付の改善につきまして、十分考慮をしてまいりたいと考えるのでございます。

 次は、生産第一主義から国民生活第一主義へということでございますが、四十八年度予算編成の冒頭申し述べましたとおり、戦後の生産第一主義、輸出中心主義ということによって、それなりの大きなメリットはあったわけであります。あの敗戦から今日の経済復興をなし遂げることができました。そして、国民に職場を提供することができたのであります。それで、なお輸出力も培養せられました。先ほども述べたとおり、外貨も相当量保有することができたのでございます。国難ともいうべきこの石油危機に対応して、国民生活に絶対不可欠のものについては、輸入する外貨の余力もございますということを一言にして述べておるとおり、これは戦後の国民のたゆまない努力の成果であることは申すまでもないのでございます。

 しかし、先ほども述べましたとおり、輸出第一、重化学中心のというような工業から、知識集約的産業に移行しなければならないということと同時に、国民生活重点、社会保障の充実を重点とした、豊かな、この国に生まれたことを真に喜び合えるような国につくり上げるように方針を変えなければならないということは、前段から申し上げておるとおりでございます。(拍手)そのためには、これから大きな困難もあると思いますが、国民的な支持と理解を得ながら、政府も新しい国づくりのために全力を傾けてまいりたいと存じます。そのためには国民の声を聞かなければなりません。政府も懸命な努力を傾けますが、政党政治でもございますし、党は国民との第一線にあるわけでございますから、格段の御協力を切にお願いをいたします。(拍手)
 藤田高敏君にお答えをいたします。現在の経済状況はインフレかどうか、物価騰貴の責任、総需要の抑制策等についての御発言でございますが、インフレへの厳密な定義はむずかしいと思います。現在の物価上昇が憂慮しなければならない段階にあることは事実でございます。物価高騰を抑制をいたすために、政府は、総需要の抑制措置の強化、生活必需物資を中心とする個別物資の需給調整の強化、緊急二法案の提出などによりまして、物価の抑制をはかってまいるという決意を申し上げておるのでございます。また、長期的には、経済社会基本計画にのっとり、持続的な安定成長のもとで国民福祉の充実と物価の安定をはかるため、一そうの政策努力を払う所存でございます。

 また、列島改造計画及び国総法の撤回問題等に対してお触れになりましたが、先ほども述べましたとおり、日本列島改造ということは、この文字は私の個人的な一つの提案でございます。ただ、国土総合開発というものの推進は、政府及び与党の決定に基づく政策であります。大都市及びその周辺地域における過密、公害問題、及び地方における過疎問題をともに解決し、全国土にわたって健康で文化的な生活環境を整備し、国民の福祉の向上をはかることの必要性は、今日の情勢下においても基本的には何ら変わらないものであります。しかし、このような長期の展望と現下の経済政策とを混同した議論が起こらないよう、政府も国民の理解を求むべきことは当然だと考えておるのであります。

 国土総合開発法案は、国土資源の有限性に着目し、公共の福祉と自然環境の保全を優先するという原則に立って、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある開発をはかるため、住民の意向をただしながら、地域の諸条件に即応して地方主導型の生活環境開発を進めるために策定されたものであることは、御承知のとおりであります。

 さらに、国土の総合開発と表裏一体の関係にある土地問題に対処するため、土地利用基本計画を策定し、これに即して土地取引の規制、土地利用の調整を行ない、地価の暴騰、投機的行為等、異常事態に対処する特別規制地域制度を創設することとしておりまして、地価凍結を含む土地対策の基本法的性格を有するものであります。したがいまして、本法案は、ぜひとも成立が必要である、こう考えておるのであります。

 次は、予算編成方針等についてでございますが、国民福祉の向上は、わが国の当面する最も重要な政策課題の一つでございまして、政府は、従来から国民福祉向上のための施策の推進に十分配慮をしておるところであります。四十九年度予算の編成にあたりましては、最近の経済情勢にかんがみ、予算規模を極力抑制する必要があると考えておるのでございます。が、しかし、その中にあっても、財源の重点的配分をはかりつつ、国民福祉の向上のための施策に遺憾のないようつとめてまいりたいと考えます。

 それから、全国一律の最低賃金制の新設等についての御指摘がございましたが、先般の年金制度の改正によりまして、厚生年金、国民年金について年金額の水準及び最低保障額を大幅に引き上げるとともに、物価スライド制を導入し、年金額の実質価値の維持をはかることとしたところでございます。御承知のように、現行の年金制度におきましては、その対象者の実態や年金による保障の仕組みに差があり、これを無視して全国一律の最低保障年金を設けることは必ずしも適法ではないと考えておるのであります。

 石油問題とわが国外交についてお答えをいたします。このたびの石油問題の発生は、中東紛争とアラブ産油国の石油政策に起因するものでございまして、わが国は、十一月二十二日の官房長官談話に見られるとおり、中東紛争に対するわが国の立場を明確にいたしますとともに、近く三木副総理をアラブ諸国に派遣して、アラブ諸国の十分なる理解を求めることにいたしておるのであります。
 産業構造転換の問題については、先ほどもお答えを申し上げたとおり、資源を持たないわが国でございますので、いままでのように資源多消費型、エネルギー多消費型の産業構造から、省資源、省エネルギー、知識集約的産業に転換のため全力を傾けてまいりたいと思うわけでございます。

 それから、公害防止の問題でございますが、石油問題が起こったので公害防止基準というものを緩和してしまうんじゃないかという御心配のようでございますが、中東戦争を契機とする石油供給の削減が、わが国経済の各分野に大きなショックを与えておることは事実でございます。しかし、環境政策といたしましては、人の生命及び健康を最優先とするものでなければなりません。その意味で、従来の基本方針には何ら変更はございません。

 また、原子力の開発についての御発言がございましたが、先ほども述べましたとおり、原子力開発が必要であるということは事実であります。そしてそれを推進しなければならぬということもまた焦眉の急であります。しかし、安全性確保については万全の策を講じてまいりたい、こう考えるわけでございます。

 なお、当面、資源を生活必需物資に優先的に供給し、かつ、買占め売惜しみ法の改正強化をはかれば足りるというような御発言でございますが、今回の石油供給削減の事態に対処しまして、物価の安定をはかるためには、生活関連物資等の生産の増強や供給のあっせんを行なうとともに、買占め等防止法の強化をはかることも必要であると思うのでございます。その意味で、買占め売惜しみの防止法だけではなく、生産及び供給のあっせん等ができるようにいたすために法律を作成し、御審議を得たいと考えておるのでございます。たとえどのような事態が生じましても、国民経済の混乱を未然に防止し、必要物資の安定的供給を確保するためには、最小限の法的措置が必要だと考えております。このような見地から、国民生活安定緊急措置法案、石油需給適正化法案を提出いたす次第でございますから、御理解の上、可及的すみやかに御審議をいただきたいと思うのでございます。なお、法の運用にあたりましては、極力、官僚統制色になることを避けまして、民間の自主性を活用しつつ、総ワクとしては、政府の規制のもとに、石油需給の適正化及び国民生活の安定に努力してまいりたいと考えておるのでございます。残余の質問については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第72回国会衆議院本会議第3号(1973/12/04、33期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 瀬長亀次郎君にお答えをいたします。まず第一問は、成長政策、列島改造論、国総法等についてでございますが、これまでも申し上げておりますとおり、わが国経済は、国民のたゆみない努力によって、世界に例を見ないほどの経済の発展をなし遂げ、その過程で国民の生活水準も格段と向上し、国際社会でのわが国の地位もとみに重要性を加えておることは事実でございます。しかし、今日の事態は、資源の制約の中で新しい豊かさを追求するという、いまだかつて経験したことのない試練に当面をしておることもまた事実であります。したがいまして、今後の経済運営にあたりましては、物価の安定、国際収支の均衡維持に加えまして、資源及び環境面からの制約に十分配慮しつつ、適正な成長を維持していくという基本的姿勢が肝要であると考えておるのであります。列島改造論は、私が昨年提案をした試案であることは、間々申し上げておるとおりでございますが、全国土にわたって、健康で文化的な生活環境を整備し、国民の福祉の向上をはかることの必要性は、今日の情勢下においても基本的には変わらないものであります。地価凍結を含む土地対策の基本的性格を有する国総法案は、ぜひとも必要であると考えておるのであります。経済社会基本計画は、国民的合意となっている福祉社会の実現を目ざして策定をせられたものであり、その基本的方向は、今後の政策運営の指針として、現在その役割りを果たしているものと考えておるのであります。

 物価に関連をした諸問題についてでございますが、わが党政府は、戦後四半世紀にわたりそのほとんどの期間、国民の支持を得て政治の責任をになってきたのであります。その間、わが国の平和と国民生活の向上が実現されてきたことは、何人も否定できない事実であります。(拍手)わが国の経済成長と雇用の拡大は、自由主義経済下に実現をされたものでありまして、経済活動に対する政府の関与、統制は、必要最小限にとどめらるべきであります。現下の経済情勢にかんがみ、国民経済の混乱を防止し、必要物資の安定的供給を確保するため、緊急二法案を提出することといたしておるのであります。公共料金は、極力抑制的に取り扱ってまいりましたし、今後もこの方針に変わりはありません。

 石油、電力、資源対策等について申し上げますが、石油の供給削減に対処し、総需要の抑制をはかる一方、国民生活の安定に必要な部門については、電力等のエネルギーを優先的に供給し、必要物資の需給の安定をはかるべきことは当然であります。また、新聞用紙の確保につきましては、できるだけ配慮をしてまいります。沖繩海洋博についての御質問でございますが、海洋博につきましては、当面の経済情勢に対処し、これを繰り延べるかどうか慎重に検討中でございます。なお、サトウキビ価格につきましては、生産出荷奨励金を合わせトン当たり一万円となりまして、対前年四三・九%の大幅増になっておりますので、この告示価格を御指摘のとおり改定する考えは全くありません。

 また、外交問題について申し上げますと、第四次中東紛争発生に伴い、米軍は警戒態勢に入ったことがございますが、その段階では通報を受けておりません。また、わが国の中東問題に対する態度は、官房長官談話で明らかにいたしておるとおりであります。また、日韓閣僚会議につきましては、昨日も申し述べましたとおり、定期的に開催をすることにいたしております。なお、韓国はどんな国かということでございますが、韓国は自由主義、民主主義を目ざす国であるとの認識は全く変わっておりません。ベトナム問題との関連では、去る九月、ベトナム民主共和国と外交関係を設定をしたことは御承知のとおりであります。最後に、小選挙区制についての御発言でございますが、現行の選挙制度については種々の弊害が指摘をせられておりますので、現行制度を抜本的に改善し、政党本位の選挙、金のかからない選挙を実現する必要があると考えておるのであります。また、この問題について、選挙制度審議会においても、昨年十二月に報告が行なわれたところでございます。このような審議会の審議の経緯を踏まえ、各方面の意見を聞きながら慎重に検討してまいりたいと考えます。残余の問題については、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 正木良明君にお答えいたします。第一はインフレの問題でございますが、インフレの厳密な定義はむずかしいが、現在の物価上昇が憂慮しなければならない段階にあることは事実であります。また、物価騰貴の要因は、海外物価の値上がりによる輸入原材料価格の上昇、外為会計の大幅払い超に加え、輸出を内需に転換するためとられた金融緩和策によって企業の手元流動性が増大し、国内需要の拡大につながったことなど、さまざまな要因が複合して生じたものであります。国際収支の均衡回復がわが国にとって急務であったこと、三〇%を上回る円の対ドル実質切り上げによって中小零細企業の相次ぐ倒産といった事態を回避する必要があったことを考えれば、当時とられた財政金融政策について国民の理解が得られるものだと考えておるのであります。

 列島改造論につきましては、間々申し上げておるとおりでありますが、昭和六十年にわが国人口が一億二千万人に増加することを前提とすれば、三大都市圏の過密の進行をそのまま放置するわけにはいかないのであります。全国土の均衡ある発展をはかることが、国民福祉の向上のため必要であることは論をまちません。国総法は特に土地利用基本計画の策定と、土地取引の規制を含む土地対策の基本法的性格を持つものであり、その可及的すみやかな成立が望まれるのであります。言うまでもなく、この国土総合開発構想は、短時日に実現できるものではなく、昭和六十年展望に立って着実に施策を積み上げていくべきものであります。総需要の抑制をしなければならない現状において、その実施テンポを調整すべきこともまた当然のことでございます。

 社会的、歴史的転換についての御発言がございましたが、従来のように産業の発展や国民生活の向上を、豊富で低廉な石油エネルギーに依存することには多くの制約を伴うことが明らかになりました現在、産業の構造や国民生活の内容を新しい観点から見直し、産業活動の省資源、省エネルギーを進める必要があることもまた当然でございます。さらに進んでは、石油にかわる新しいエネルギー源の開発も積極的に推進し、また、国民生活におきましても、資源節約は美徳であるという新たな価値観を定着させて、生活感覚を転換させていかねばなりません。これは、資源等からの制約に十分配慮しつつ、適正な成長を維持していくということを意味しておるのであります。

 また、国民の必需物資の確保についての御発言がございましたが、石油供給削減に伴う波及効果により生活必需物資等の逼迫が生ずることのないよう、各業界の協力を得て、これらの物資の供給確保につとめてまいりたいと考えます。特に国民生活に関連の深い一般家庭用はじめ、農林漁業用、鉄道等の公共輸送機関用、病院、学校等の公共性の高い施設の使用する石油、電力等は、その適正な必要量の確保につとめるよう、行政指導等に際して万全の配慮を行なっているところでございます。また、今後の生活必需品の生産、緊急輸入等につきましては、適切なる処置をいたしたいと考えます。国鉄運賃及び米穀の政府売り渡し価格についての御発言がございましたが、これはもう問々申し上げておりますとおり、これを撤回するような考えはございません。また、消費者米価を物統令の適用をはかれというような御趣旨でございますが、消費者米価につきましては、物統令を再適用することは考えておりません。

 次は、社会保障の長期計画についてでございますが、社会保障の拡充が必要であり、社会保障につきましては、長期計画をつくって実施をしてまいりますということは、本院においても明らかにいたしております。ただ、御説のとおり、これから五年間にヨーロッパ各国並みにせよという御説とは別に、最もわが国に適合したものをつくってまいりたいと考えておるのでございます。なぜならば、ヨーロッパ諸国並みというようなものにすれば、国民の税負担もヨーロッパ並みになっていいのかという問題が出てくるわけでございます。いま日本の保険料及び税金の負担の合計は二四・一%でございますが、ヨーロッパ主要国、特に北欧三国等を入れて見ますと、いまの社会保障の水準を維持するために、国民は、国民所得の四八・五%ないし五五%の負担をしいられておるというのが現状でございますので、国民負担を増大しないようにして、しかも、日本に適合するよりよい社会保障を拡充するということでなければなりません。(拍手)

 主要食糧の自給率の向上等の農業ビジョン等についての御質問でございますが、食糧は国民生活の基礎をなすものであり、今回の世界的な食糧需給逼迫の事態から見ましても、国内生産が可能なものは極力国内でまかなうべきであることは当然でございます。安易に外国に依存すべきではないという御説には賛成でございます。このような観点に立って、主要農産物である米、野菜、果実、牛乳、肉類、鶏卵等については、できる限り完全自給ないし八割以上の自給率を確保し得るよう、これに必要な施策を講じてまいりたいと考えております。しかし、国内ではどうしても完全自給ができない大豆等につきましては、輸入に依存せざるを得ないわけでございますので、その安定的な供給を確保するため、長期的展望に基づいて、輸入先の多様化、商品協定、長期輸入取りきめの締結、在庫増大をはかる備蓄政策、国際協力の視点にも立った海外農林業開発等に積極的に取り組んでまいりたいと考えます。それから、石油危機に伴う外交問題等に対しては、関係大臣からお答えいたします。

 日米安保条約を破棄せよといろことでございますが、政府としては、従来どおり、米国をはじめとする自由主義体制の諸国、社会体制を異にする国々など、あらゆる国との友好関係を増進するとの多角的自主外交を展開しております。米国との友好関係の維持もその一環をなすものであり、安保体制を破棄するなどは全く考えておりません。

 東南アジア歴訪の目的、反日感情の原因等に対してどう思うかという趣旨の御発言でございますが、私は、東南アジア諸国との間に平和と繁栄を分かち合うよき隣人同士の関係を育成強化したいとのわが国の熱望を各国首脳に披瀝して、友好親善の実をあげるため、諸国を訪問いたしたいと考えておるのであります。同じアジアと申しましても、気候、風土、習慣、社会的基盤の相違から、多くの誤解ないしは対日批判が生ずることはあり得ることであります。その原因がわがほうに由来するものにつきましては、十分反省をして、改めていかなければならぬことは当然でございます。人と人との心の通った交流に相つとめるならば、克服できない問題ではないと信じておるのであります。

 最後に、四次防を中止せよといろことでございますが、きのうも申し上げましたとおり、防衛は国の基本であります。特に、独立と真の平和を確保し、国民の生命財産を守り抜くために最も重要なものであります。四次防の中止は考えておりません。残余の質問に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
 塚本三郎君にお答えをいたします。物価問題、列島改造その他に対して御意見をまじえて御発言がございましたが、物価問題が重要であるということに対しては、もうきのうから十分申し述べておりますので、御理解をいただきたいと思います。しかも、この物価問題を解決し、国民生活を安定的に確保するために、緊急二法案の御審議をお願いするわけでございますので、その間の事情は御了解の上、御協力をいただきたいと思うわけでございます。予算委員会ではございませんから申し上げるまでもないと思いますが、物価問題を押えるのは列島改造政策というものをやめればいいんだというようなお話が、どうも各党の代表の方々からいつでも出ておりますから、この際、明確に国民の前に明らかにいたしておきます。

 列島改造論というのは田中角榮の著書でございます。しかし、いま国会で御審議をいただいておるものは、方向は同じでございますが、国土総合開発法の改正案でございます。しかも、この国土総合開発法が制定をせられたのは、昭和二十五年であります。閣法という名になってはおりますが、これは一党を除く与野党の議員大多数の賛成により制定されたもので、実質的には議員立法であります。この法律の成立の経過を見ればおわかりになるとおり、これは議員立法を便宜閣法に転換をしたにすぎないのであります。

 そしてその後、この国土総合開発が必要であるということで、これを土台にしまして、道路三法が制定され、北海道、東北、九州、四国の地域開発法が制定をされ、高速道路建設促進法となり、新産業都市建設促進法になり、新幹線建設促進法になり、水資源開発促進法になり、電源開発促進法になり、愛知用水公団法になり、八郎潟建設法になったじゃありませんか。(拍手)これは歴史的事実であります。しかも、それだけじゃありません。これらのときにはダム特別会計法、道路特別会計法、水の特別会計法、港湾特別会計法、離島振興法、山村振興法、農業地帯工業導入法案、すべてこの国土開発法の実体法として制定をされておるのであります。(拍手)しかも、国土総合開発法は……(発言する者あり)国土総合開発法は、都市政策大綱の名において、すでに四十三年自由民主党の党議になるものであります。

 しかも、選挙法は思いつきだというふうに言われますが、しかし……(○議長(前尾繁三郎君) 静粛に願います)二十四年間、日本の在野の審議会、調査会の委員が七次審まで行なって答申を出したものを国会の議題にも供さないということになれば、これはいろいろな批判があるにしても、自分が審議に入らない前から、反対だから、これを提案しようとするまじめな立場の政府の態度を思いつきだと言うに至っては、何をか言わんやであります。(拍手)

 第三は、訪欧の際のキッシンジャー構想についてでございますが、仏、英、独三国の首脳とは相互の関係緊密化及び先進民主主義国間の幅広い協力関係の促進について、広い視野に立って意見を交換しましたが、特定の構想の代弁ないし売り込みは行なっておりません。

 訪ソの成果につきましては、北方領土問題についてソ連は従来一貫して解決済みとの態度をとってまいりましたが、訪ソにより、この問題は平和条約締結によって解決すべき戦後の未解決の問題であることが確認をざれ、解決への端緒を開いたと考えておるのであります。

 また漁業につきましては、北洋漁業の長期安定化につき原則的合意を見、安全操業問題についても交渉継続につき意見の一致を見ておることは御承知のとおりであります。

 公共料金の値上げストップについてでございますが、公共料金につきましては、従来から極力抑制的に取り扱ってきたところでございます。現に、国鉄運賃の改定を本年度末とし、米の政府売り渡し価格を本年度内据え置いておるのであります。しかし、恒常的に公共料金を据え置くことは、結果として財政負担を増大させることになり、予算規模を極力圧縮せよといら現下の要請に相反することにもなります。

 財政の引き締めの断行と大型公共投資の中止あるいは延期に対しての発言に答えます。物価安定をはかるためには、総需要を抑制することが基本であることはかねて申し上げておるところであります。財政、金融政策についてもこのような観点から今後一そう抑制的に運営してまいる所存でございます。公共事業につきましても極力その抑制につとめてまいりますが、その具体的規模、内容等につきましては、今後予算編成の過程で慎重に検討してまいりたいと存じます。残余に対しては関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)





(私論.私見)